説明

鉄道車両

【課題】吹出し口から吹き出した調和空気が車内に効率よく送り込まれるようにした鉄道車両を提供すること。
【解決手段】空調装置60からの調和空気CAを車内に吹出す吹出し口20A,20Bと、車内の空気を吸い込むリターン口30とが天井に形成されたものであって、リターン口30に並んで位置する吹出し口20Aが形成された吹出し部51Aは、空調装置60から送られた調和空気CAをリターン口30から遠ざかる方向に吹き出させる吹出し手段56を有する鉄道車両1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調装置を搭載した鉄道車両に関し、特に、吹出し口とリターン口とを車内の天井に配設し、リターン口と並んだ吹出し口からの吹き出し方向を調整した鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、鉄道車両には、車内に調和空気を送風する空調装置が搭載されており、例えば、特許文献1に開示された鉄道車両では、空調装置で調整した調和空気を車内に吹出す吹出し口と、車内の空気を空調装置内に吸入するリターン口とが天井に配設されている。吹出し口は、車両の前後方向に2列に配置され、空調装置からダクトを通じて吹出し部に送風された調和空気が、吹出し口から車内に向けて吹き出すようになっている。一方、車内の空気はリターン口から吸い込まれる。
【0003】
【特許文献1】特開2002−347617号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の鉄道車両では、調和空気が天井の吹出し口から床に向けて真下に吹き出されるが、リターン口が並んで配設され吹出し口かの調和空気は、一部がそのままリターン口に吸い込まれてしまう。従って、こうした短絡現象が生じることにより、空調装置からの調和空気がそのまま排気されてしまい無駄が生じてしまうとともに、冷気や暖気である調和空気が車内の乗客に十分に届かないことによって、空調システムの効率を低下させていた。
【0005】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、吹出し口から吹き出した調和空気が車内に効率よく送り出されるようにした鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る鉄道車両は、空調装置からの調和空気を車内に吹出す吹出し口と、車内の空気を吸い込むリターン口とが天井に形成されたものであって、前記リターン口に並んで位置する吹出し口が形成された吹出し部は、前記空調装置から送られた調和空気を前記リターン口から遠ざかる方向に吹き出させる吹出し手段を有するものであることを特徴とする。
また、本発明に係る鉄道車両は、前記吹出し部が、前記空調装置からの調和空気を送るダクトに連通した空間であって、その内部に前記リターン口から遠ざかる方向に流れるように調和空気を導く整流板が設けられたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
よって、本発明の鉄道車両によれば、一部の吹出し口では、吹出し部から送風する調和空気の吹出し方向がリターン口から遠ざかる方向であるので、吹出し口から送風した調和空気のうち、一部の調和空気が、そのままリターン口に向かって空調装置内に戻されること、いわゆる短絡現象の発生を回避することができる。したがって、リターン口と並んだ吹出し口からでも、そこから吹き出した冷気や暖気の調和空気が十分に車内に送り出される。また、本発明の鉄道車両では、吹出し部に整流板を設けるだけの簡単な構成によって安価に上記効果を達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明にかかる鉄道車両の一の実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。図1は、鉄道車両の車内の天井を示す図であり、車内側から見た平面図である。図2は、図1のA−A矢視断面図であるが、図1において中心線CLで左右対称であるため左半分のみ示している。図3は、図1のB−B矢視断面図であるが、図2と同様に左半分のみ示している。
【0009】
本実施形態の鉄道車両1は、図2に示すように、車内11の天井には天井板10と屋根構体40との間に空間10Sが構成され、車両長手方向に直線状に延びるダクト52が設置されている。ダクト52は、空調装置60からの調和空気CAを送るためのものであって、分割された複数の吹出し部51へ、仕切り板53の流入孔53Hを通して連通している。そして、調和空気CAが吹き出る吹出し口20は、図1に示すように中心線CLを挟んだ2列で構成され、鉄道車両1の天井に車内全体にわたってのびている。これに対し、車内の空気を吸い出すリターン口30は、中心線CLから見て吹出し口20の外側にあって、所定の間隔をあけて長手方向の2カ所に配置されている。
【0010】
ここで、複数の吹出し口20のうち、リターン口30と隣り合ったものを吹出し口20Aとし、そうでないリターン口30と離れた位置にあるものを吹出し口20Bとして区別がされている。本実施形態では、こうして区別した吹出し部20Aと20Bとで調和空気CAの吹出し方向が異なる方向になるように構成されている。
【0011】
先ず、吹出し口20Aが形成された吹出し部51Aでは、調和空気CAの吹出し方向FDが、図2に示すように、リターン口30から遠ざかる中心線CL側に向くように構成されている。具体的には、吹出し部51Aには、中心線CL側に傾斜した整流板56が設けられている。この整流板56は、仕切り板53に固定して形成され、その傾斜に沿ってリターン口30から遠ざかる中心線CL側へと調和空気CAの流れをつくるようにしたものである。
【0012】
その一方で、吹出し口20Bが形成された吹出し部51Bでは、吹出し口20Bから車内11に吹出す調和空気CAの吹出し方向FDは、図3に示すように、真下に向けた方向となっている。すなわち、ダクト52から流入孔53Hを通じて吹出し部51Bに流入した調和空気CAは、その空間からそのまま吹出し口20Bを通って車内11に吹出すため、真下に向けた流れになっている。
【0013】
よって、本実施形態の鉄道車両では、空調装置60で生成された調和空気CAはダクト52を介して各吹出し部51A,51Bへと送り込まれ、そこから吹出し口20A,20Bを介して車内へ吹き出される。その際、裾広がりになった吹出し口20Bからは、車体幅方向に広がるようになりながらも、真下に向けた流れを主流として調和空気CAが車内11に吹き出される。
【0014】
そして、同様にダクト52を介して調和空気CAが送り込まれた吹出し部51Aでは、整流板56によって調和空気CAの流れがつくられ、吹出し口20Aからは、リターン口30から遠ざかる中心線CL側への流れを主流とした調和空気CAが車内11に吹き出される。従って、近い位置でリターン口30から車内空気の吸い込みを行っているが、吹出し口20Aから吹出された調和空気CAは、従来のようにその多くがリターン口30に吸い取られてしまうことなく、車内11に吹き出されるようになった。なお、仕切り板53が、整流板56に連続する流入孔53Hの面板(53Hの符号が付されたもの)と90度である場合に良い結果が得られた。
【0015】
よって、吹出し口20Aから吹き出された調和空気CAも、他の吹出し口20Bから吹き出された調和空気CAと同様に、適量が車内11下方の座席に座る乗客の位置までも届くようになり、乗客にとって快適な環境を提供することができる。
ここで、図4は、吹出し口20Aから吹き出した調和空気(冷気)CAの流れと温度分布との関係についてシュミレーション結果を示した図である。吹出し口20Aから吹き出された調和空気CAの流れを矢印で示すと共に、吹出し口20A部分の断面において生じた車内の温度分布がA〜G層で示されている。温度分布はA〜G層にかけて温度が高くなっている。
【0016】
図示した矢印から分かるように、左右両側の吹出し口20Aから幅方向中央に向けた吹出し方向FDの調和空気CAは、互いにぶつかり合って乗客の居る下方に降り、中央から窓側13へと回り込んでリターン口30へと吸い上げられる流れがつくられている。そして、温度分布からは、中央部分に吹き出された冷気が下方に降りるとともに窓側13に広がって車内11全体を効率良く冷やしていることが分かる。また、本実施形態では、こうした効果が、吹出し部51Aに設けた整流板56による簡単且つ安価な構成によって達成できる。
【0017】
そして、詳しく図示しないが、リターン口30が隣にない吹出し口20Bからは、調和空気CAが真下に吹き出され、同じように乗客の居る下方へと降りて窓側13へと回り込んでリターン口30へと吸い上げられ、温度分布は、中央部分から下方に降りる際に窓側13へと広がって車内11全体を効率良く冷やしている。よって、本実施形態の鉄道車両では、リターン口30の影響を受けた空調ムラをなくし、車内全体を快適にすることが可能になった。
【0018】
以上、本発明に係る鉄道車両について実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、実施形態では、リターン口20を天井板10に4箇所設けた鉄道車両1を例示したが、リターン口の数量や、リターン口を配置する位置は、適宜変更可能である。
また、吹出し部51Aに整流板56を設けることにより吹出し方向FDを調整するようにしたが、ダクト52から吹出し口20Aへの流路を形成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】鉄道車両の車内の天井板を示した車内側から見た平面図である。
【図2】本実施形態に係る鉄道車両において中心線より左側部分のみを示した図1のA−A断面図である。
【図3】本実施形態に係る鉄道車両において中心線より左側部分のみを示した図1のB−B断面図である。
【図4】図1のA−A断面における調和空気の流れと温度分布を示した図である。
【符号の説明】
【0020】
1 鉄道車両
10 天井板
11 車内
20 吹出し口
20A,20B 吹出し口
30 リターン口
51 吹出し部
56 整流板
60 空調装置
FD 吹出し方向
CA 調和空気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調装置からの調和空気を車内に吹出す吹出し口と、車内の空気を吸い込むリターン口とが天井に形成された鉄道車両において、
前記リターン口に並んで位置する吹出し口が形成された吹出し部は、前記空調装置から送られた調和空気を前記リターン口から遠ざかる方向に吹き出させる吹出し手段を有するものであることを特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄道車両において、
前記吹出し部は、前記空調装置からの調和空気を送るダクトに連通した空間であって、その内部に前記リターン口から遠ざかる方向に流れるように調和空気を導く整流板が設けられたものであることを特徴とする鉄道車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−113656(P2009−113656A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−289504(P2007−289504)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】