説明

鉄鉱石ペレットの製造方法

【課題】キルン排鉱部のペレットの採取およびその気孔率の測定をしなくても、常に的確
なキルンでのペレット焼成の制御ができる鉄鉱石ペレットの製造方法を提供する。
【解決手段】(1) キルン最高温度部でのペレットまたはキルン内壁の温度を測定すると共
に、キルン排鉱部でのペレットまたはキルン内壁の温度を測定し、前者の温度の測定値と
後者の温度の測定値との差から、クーラーからキルン排鉱部への冷風の侵入の程度を推定
し、この冷風の侵入の程度が目標の気孔率を有する鉄鉱石ペレットが得られなくなる程に
大きくなったとき、あるいはそれ以前に、この冷風の侵入の程度を低減させることを特徴
とする鉄鉱石ペレットの製造方法、(2) この製造方法においてペレットの温度またはキル
ン内壁の温度が光温度計により測定されるもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鉱石ペレットの製造方法に関する技術分野に属するものであり、より詳細
には、グレートキルン方式による鉄鉱石ペレットの製造方法に関する技術分野に属するも
のである。
【背景技術】
【0002】
グレートキルン方式による鉄鉱石ペレットの製造方法は、下記のような方法である。即
ち、造粒機で球状(通常、直径:7〜15mm程度)の生ペレットを製造し、これをグレート
炉のトラベリンググレート、即ち、無端状をなす連続移動火格子(以下、グレート)に所
定のペレット層厚さ(通常、15〜50cm)となるように装入して乾燥、予熱操作を行い、所
定の強度に高める。この操作後のペレット(以下、予熱ペレット)を焼成用ロータリキル
ン(以下、キルン)に装入して所定の焼成温度(通常、1200〜1400℃)で焼成し、次いで
クーラーに装入して冷却して、溶鉱炉で使用する鉄鉱石ペレット(以下、成品ペレットと
もいう)を得るというものである(特開2000−87149号公報、特開2000−8
7150号公報、特開2005−60762号公報等参照)。
【0003】
この製造方法に用いられる装置の一例を図1に示す。図1において、付番の1はグレー
ト炉、2はグレート、3は乾燥室(ゾーン)、4は離水室、5は予熱室、6は風箱群、7
は吸引ファン、8は予熱室バーナ、9はキルン、10はキルンバーナ、11はクーラー、GPは
生ペレットを示すものである。なお、離水室4は、鉱石中に結晶水を含む場合に用いられ
る。図1の装置を用いる場合、ペレットは図の左から右へ移動し、生ペレットから予熱ペ
レット、そして成品ペレットとなる。
【0004】
成品ペレットの品質(被還元性、圧潰強度等)に影響する物性として成品ペレットの気
孔率が重要である。この成品ペレットの気孔率を制御する上で、キルンでのペレット焼成
の制御が最も重要である。
【0005】
従来は、キルンの長さ方向における最高温度部(以下、キルン最高温度部)でのペレッ
トあるいはキルン内壁(煉瓦)の温度を測定すると共に、キルンの排鉱部(ペレット排出
部)のペレットを定期的に採取し、急冷し、その気孔率を測定し、これらの測定値に基づ
いて、キルンバーナの燃焼を調整すること等によりキルンでのペレット焼成を制御してい
る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−87149号公報
【特許文献2】特開2000−87150号公報
【特許文献3】特開2005−60762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記クーラーでのペレットの冷却は、クーラー下部の風箱から空気をクーラー内のペレ
ット層に向けて送り込むことにより行われる。このとき、ペレットを冷却し、熱交換によ
り高温となった空気はキルンに送り込まれ、キルンでの焼成の熱源として利用される。し
かし、空気をクーラー内のペレット層に向けて送り込んでも、その空気の中にはペレット
層を通らずに、冷風のままキルンへ到達するもの(漏風)がある。特に、円筒状の外側壁
および内側壁を有し、両側壁間の底板(床)が回転する円形クーラーの場合、円形クーラ
ーの側壁とクーラー内のペレット層との間は空隙率が大きくなり易く、このため漏風しや
すい。更に、円形クーラー内のペレット層の高さが偏り、側壁に近い個所で低くなりがち
であり、その個所では送り込んだ空気とペレット層との熱交換距離が短いため、その空気
はあまり高温とならずに、キルンに送り込まれる。また、クーラーのシール部のシールが
あまくなり、そこから空気が入ってキルン内へ到達する。
【0008】
このような漏風(冷風)があると、キルンバーナの燃焼条件を一定に制御していても、
キルンの加熱温度、特にキルンの排鉱部の加熱温度が低下するため、成品ペレットの気孔
率を目標の気孔率に制御することができなくなる。このままにしておくと、以降、目標の
気孔率を有する成品ペレットが得られなくなってしまう。このような支障が生じることの
ないように、キルンでのペレット焼成の制御を行うことが必要である。
【0009】
前述の従来法では、キルン最高温度部でのペレットあるいはキルン内壁の温度を測定す
るだけでなく、キルンの排鉱部のペレットを定期的に採取し、急冷し、その気孔率を測定
しているので、上記のような漏風の有無や程度を定期的には推定可能と考えられるが、常
時推定可能ということにはなり得ない。従って、常に的確なキルンでのペレット焼成の制
御ができるとはいえない。
【0010】
前述の従来法では、キルンの排鉱部のペレットを定期的に採取する必要がある。このペ
レット採取の作業は、高温のキルンの排鉱部近辺での作業であり、非常に熱くて過酷で厳
しい環境下での作業である。そこで、このペレット採取の頻度を少なくしたいところでは
あるが、この頻度を少なくすると、その分、ペレットの気孔率が時々しか確認できないの
で、時々しか的確なキルンでのペレット焼成の制御ができなくなり、目標の気孔率を有す
る成品ペレットが得られる頻度が減ってしまう。この反対に、ペレット採取の頻度を多く
すると、その分、ペレットの気孔率の確認頻度が増えるので、的確なキルンでのペレット
焼成の制御ができる機会が増え、目標の気孔率を有する成品ペレットが得られる頻度が増
えるが、前述のような作業上の問題が増大する。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、キルンの排鉱部
のペレットの採取およびその気孔率の測定をしなくても、常に的確なキルンでのペレット
焼成の制御ができる鉄鉱石ペレットの製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成するため、鋭意検討した結果、本発明を完成するに至っ
た。本発明によれば上記目的を達成することができる。
【0013】
このようにして完成され上記目的を達成することができた本発明は、鉄鉱石ペレットの
製造方法に係わり、請求項1〜2記載の鉄鉱石ペレットの製造方法であり、それは次のよ
うな構成としたものである。
【0014】
即ち、請求項1記載の鉄鉱石ペレットの製造方法は、グレートキルン方式による鉄鉱石
ペレットの製造方法であって、キルンの長さ方向における最高温度部でのペレットまたは
キルン内壁の温度を測定すると共に、キルンの排鉱部でのペレットまたはキルン内壁の温
度を測定し、前者の温度の測定値と後者の温度の測定値との差から、キルンで焼成された
ペレットの冷却用クーラーからキルンの排鉱部への冷風の侵入の程度を推定し、この冷風
の侵入の程度が目標の気孔率を有する鉄鉱石ペレットが得られなくなる程に大きくなった
とき、あるいはそれ以前に、この冷風の侵入の程度を低減させることを特徴とする鉄鉱石
ペレットの製造方法である。
【0015】
請求項2記載の鉄鉱石ペレットの製造方法は、前記ペレットの温度が光温度計により測
定されるペレット面の温度であり、前記キルン内壁の温度が光温度計により測定されるキ
ルン内壁面の温度である請求項1記載の鉄鉱石ペレットの製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る鉄鉱石ペレットの製造方法によれば、キルンの排鉱部のペレットの採取お
よびその気孔率の測定をしなくても、常に的確なキルンでのペレット焼成の制御ができる
ようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】グレートキルン方式による鉄鉱石ペレットの製造に用いられる装置の一例を示す模式図である。
【図2】キルンの長さ方向(入口から排鉱部)における温度分布の一例を示す図である。
【図3】ペレットの気孔率の変化(生ペレット、予熱ペレット、排鉱部ペレット、成品ペレットの気孔率)の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る鉄鉱石ペレットの製造方法は、前述のように、グレートキルン方式による
鉄鉱石ペレットの製造方法であって、キルンの長さ方向における最高温度部でのペレット
またはキルン内壁の温度を測定すると共に、キルンの排鉱部でのペレットまたはキルン内
壁の温度を測定し、前者の温度の測定値と後者の温度の測定値との差から、キルンで焼成
されたペレットの冷却用クーラーからキルンの排鉱部への冷風の侵入の程度を推定し、こ
の冷風の侵入の程度が目標の気孔率を有する鉄鉱石ペレット(成品ペレット)が得られな
くなる程に大きくなったとき、あるいはそれ以前に、この冷風の侵入の程度を低減させる
ことを特徴とするものである。
【0019】
キルンの長さ方向における最高温度部(以下、キルン最高温度部)およびキルンの排鉱
部(以下、キルン排鉱部)でのペレットの温度と得られる成品ペレットの気孔率とは密接
な関係があり、キルン最高温度部およびキルン排鉱部でのペレットの温度を制御すること
によって成品ペレットの気孔率を制御できる。上記ペレットの温度とキルン内壁の温度と
は同一もしくは略同一であるので、上記ペレットの温度をキルン内壁の温度と読み替えた
場合も、上記と同様のことがいえる。
【0020】
本発明に係る鉄鉱石ペレットの製造方法では、キルン最高温度部でのペレットまたはキ
ルン内壁の温度(以下、PK温度ともいう)を測定すると共にキルン排鉱部でのPK温度
を測定しているので、キルン最高温度部およびキルン排鉱部でのPK温度を制御できる。
キルンで焼成されたペレットの冷却用クーラー(以下、クーラー)からキルン排鉱部への
冷風の侵入がないときは、キルンバーナの燃焼条件を一定に制御することにより、キルン
最高温度部およびキルン排鉱部でのPK温度を一定に制御できるので、常に的確なキルン
でのペレット焼成の制御ができる。
【0021】
クーラーからキルン排鉱部への冷風の侵入があると、キルン排鉱部の雰囲気温度が低下
するので、キルン排鉱部でのPK温度が低下する。この冷風の侵入の程度(冷風の量)が
大きいほど、キルン排鉱部でのPK温度の低下の程度が大きい。この程度によっては、成
品ペレットの気孔率を目標の気孔率に制御できなくなり、このままにしておくと、以降、
目標の気孔率を有する成品ペレットが得られなくなってしまう。
【0022】
本発明に係る鉄鉱石ペレットの製造方法では、キルン最高温度部でのPK温度を測定す
ると共にキルン排鉱部でのPK温度を測定しているので、これらの温度の変化がわかり、
従って、クーラーからキルン排鉱部への冷風の侵入の程度を推定できる。即ち、キルン最
高温度部でのPK温度が一定のとき、キルン排鉱部でのPK温度の変化(低下)の程度か
ら上記冷風の侵入の程度を推測できる。このキルン排鉱部でのPK温度の変化(低下)の
程度は、キルン最高温度部でのPK温度とキルン排鉱部でのPK温度の差の変化(増大)
の程度に等しいので、この温度の差の変化(増大)の程度から上記冷風の侵入の程度を推
測できるともいえる。キルン最高温度部でのPK温度の経時変化があり、それに伴ってキ
ルン排鉱部でのPK温度が変化する場合は、キルン最高温度部でのPK温度とキルン排鉱
部でのPK温度の差の変化(増大)の程度から、上記冷風の侵入の程度を推測できる。つ
まり、いずれの場合も、キルン最高温度部でのPK温度とキルン排鉱部でのPK温度の差
を求めておけば、この温度の差から上記冷風の侵入の程度を推測できる。そこで、キルン
最高温度部でのPK温度の測定値とキルン排鉱部でのPK温度の測定値との差から、クー
ラーからキルン排鉱部への冷風の侵入の程度を推定し、この冷風の侵入の程度が目標の気
孔率を有する鉄鉱石ペレット(成品ペレット)が得られなくなる程に大きくなったとき、
あるいはそれ以前に、この冷風の侵入の程度を低減させるようにしている。
【0023】
このように冷風の侵入の程度を低減させると、キルン排鉱部でのPK温度が上昇し、目
標の気孔率を有する成品ペレットが得られる温度条件になるので、以降、成品ペレットの
気孔率を目標の気孔率に制御でき、目標の気孔率を有する成品ペレットが得られるように
なる。
【0024】
従って、本発明に係る鉄鉱石ペレットの製造方法によれば、常に的確なキルンでのペレ
ット焼成の制御ができる。
【0025】
本発明に係る鉄鉱石ペレットの製造方法では、キルン排鉱部のペレットの採取およびそ
の気孔率の測定をする必要がない。従って、本発明に係る鉄鉱石ペレットの製造方法によ
れば、キルン排鉱部のペレットの採取およびその気孔率の測定をしなくても、常に的確な
キルンでのペレット焼成の制御ができる。ひいては、作業性の改善および目標気孔率の成
品ペレットの生産性(歩留り)の向上がはかれる。
【0026】
本発明において、PK温度の測定方法は特には限定されないが、光温度計による測定方
法が簡便であって実用し易いので、この測定方法を用いるのがよい。この測定方法を用い
る場合、ペレットの温度はペレット層の最上部に位置するペレットの表面温度、即ち、光
温度計により測定されるペレット面の温度であり、キルン内壁の温度はキルン内壁の表面
温度、即ち、光温度計により測定されるキルン内壁面の温度である。PK温度としては、
このような光温度計により測定されるPK温度を用いるのが簡便性および実用性の点から
よい。
【0027】
キルンの長さ方向とは、キルンの回転軸方向のことであり、キルンのペレット入口部か
ら排鉱部への方向のことであるともいえる。図1の場合でいえば、キルン9の左右方向の
ことである。
【0028】
キルンの長さ方向における温度分布の一例を図2に示す。これは温度分布をイメージ的
に示すものであり、縦軸に温度の値は示しておらず、横軸に距離の値は示していない。こ
の温度は、光温度計により測定されるペレット面の温度である。排鉱部から10mほどのと
ころに最高温度部があり、ペレット入口部および排鉱部では温度が低い。キルン最高温度
部(キルンの長さ方向における最高温度部)とは、このような最高温度部のことである。
なお、前記ペレット面の温度と、光温度計により測定されるキルン内壁(煉瓦)面の温度
や雰囲気温度とは大差なく、略同様である。
【0029】
キルン最高温度部の位置はキルンバーナの燃料の種類により異なり、石炭、COG、重
油の順でキルンバーナに近づく。燃料によりフレーム温度やフレーム形状が異なるためで
ある。
【0030】
ペレットの気孔率の変化(生ペレット、予熱ペレット、排鉱部ペレット、成品ペレット
の気孔率)の一例を図3に示す。この図3の場合、生ペレットの気孔率は26%、予熱ペ
レットの気孔率は36%、排鉱部ペレットの気孔率は25.5%、成品ペレットの気孔率
は26%である。
【0031】
通常、生ペレットの気孔率は約26%、予熱ペレットの気孔率は約36%であり、成品
ペレットの気孔率の目標値は約26%である。この場合、キルンでの焼成とクーラーでの
冷却により、目標として約10%焼き締めることになる。クーラーの冷却パターンは大き
く変化させることはできないので、クーラーでの気孔率の低下量は一定の約0.5%であ
る。従って、約9.5%分の焼き締めができるようにキルンでの焼成の制御を行うことに
なる。
【0032】
本発明に係る鉄鉱石ペレットの製造方法では、前述のように、キルン最高温度部でのP
K温度を測定すると共に、キルン排鉱部でのPK温度を測定し、このキルン最高温度部で
のPK温度の測定値とキルン排鉱部でのPK温度の測定値との差から、クーラーからキル
ン排鉱部への冷風の侵入の程度を推定する。この際、キルン最高温度部でのPK温度(T
1n〜T1n+α)が一定の場合は、このキルン最高温度部でのPK温度とキルン排鉱部での
PK温度(T2n〜T2n+β)との差の変化(増大)の程度はキルン排鉱部でのPK温度の
低下の程度と等しいので、キルン排鉱部でのPK温度(T2n〜T2n+β)の低下の程度か
ら、冷風の侵入の程度を推定することができる。これからわかるように、キルン最高温度
部でのPK温度(T1n〜T1n+α)が一定の場合、キルン排鉱部でのPK温度の低下の程
度から冷風の侵入の程度を推定することは、キルン最高温度部でのPK温度とキルン排鉱
部でのPK温度との差の変化(増大)の程度から冷風の侵入の程度を推定することと実質
的には同じことである。一方、キルン最高温度部でのPK温度の経時変化があり、それに
伴ってキルン排鉱部でのPK温度が変化する場合は、キルン排鉱部でのPK温度の低下の
程度から冷風の侵入の程度を推定することはできず、キルン最高温度部でのPK温度とキ
ルン排鉱部でのPK温度との差の変化(増大)の程度から冷風の侵入の程度を推定するこ
とができる。
【0033】
なお、キルン最高温度部でのペレットまたはキルン内壁の温度を測定すると共にキルン
の排鉱部でのペレットまたはキルン内壁の温度を測定するに際し、キルン最高温度部での
温度測定対象種とキルンの排鉱部での温度測定対象種との組合せは、これを限定する必要
は全くない。即ち、キルン最高温度部でのペレットの温度を測定すると共にキルンの排鉱
部でのペレットの温度を測定してもよいし、キルン最高温度部でのペレットの温度を測定
すると共にキルンの排鉱部でのキルン内壁の温度を測定してもよい。キルン最高温度部の
キルン内壁の温度を測定すると共にキルンの排鉱部でのキルン内壁の温度を測定してもよ
いし、キルン最高温度部のキルン内壁の温度を測定すると共にキルンの排鉱部でのペレッ
トの温度を測定してもよい。
【0034】
本発明に係る鉄鉱石ペレットの製造方法では、クーラーからキルン排鉱部への冷風の侵
入の程度が目標の気孔率を有する鉄鉱石ペレットが得られなくなるほどに大きくなったと
き、あるいはそれ以前に、この冷風の侵入の程度を低減させる。この際、クーラーからの
冷風の侵入の原因を調べ、それを改善することにより、この冷風の侵入の程度を低減させ
ることができる。例えば、クーラーでのペレット層の配置状況(ペレット層高さの不均一
性等)やクーラーのシール部シール状況を点検し、冷風の侵入の原因を見つけ、これを改
善すればよい。円形クーラーのペレット層の配置状況の改善手段としては、クーラー回転
速度の変更や掻き板の設置等が有効であり、これらによれば円形クーラーの側壁とクーラ
ー内のペレット層との間の空隙率の軽減や、円形クーラー内のペレット層高さの均一化が
はかれる。円形クーラーにレベル計を設けてペレット層の高さを監視すると、ペレット層
の配置状況を検知することができてよい。なお、クーラーからキルン排鉱部への冷風の侵
入の程度が目標の気孔率を有する鉄鉱石ペレットが得られなくなるほどに大きくなったと
きに、この冷風の侵入の程度を低減させてもよいし、それ以前の時点で、冷風の侵入の程
度を低減させてもよく、後者の場合の方がより確実に目標の気孔率を有する成品ペレット
が得られ、目標気孔率の成品ペレットの生産性(歩留り)が高くなる。クーラーからキル
ン排鉱部への冷風の侵入の程度が小さい時点で、この冷風の侵入の程度を低減させること
は、目標気孔率の成品ペレットの生産性(歩留り)の点ではよいが、この冷風の侵入の程
度を低減させる処置を施す頻度が増大する。
【実施例】
【0035】
本発明の実施例を以下に説明する。なお、本発明はこの実施例に限定されるものではな
く、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、そ
れらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0036】
〔実施例1〕
鉄鉱石ペレットの製造装置としては、クーラーとして円形クーラーを用いた点を除いて
前述の図1に示す装置と同様のものを用いた。先ず、鉄鉱石を粉砕したもの、ドロマイト
、及び、石灰石を造粒機に入れ、この造粒機にて球状(直径:10mm)の生ペレットを製造
した。このとき、配合率は、鉄鉱石:91.5質量%、ドロマイト:1.5 質量%、石灰石:7.
0 質量%の割合となるようにした。
【0037】
上記生ペレットをグレート炉1のグレート2にペレット層厚さ:20cmとなるように装入
し、乾燥室3にて200 ℃雰囲気下で加熱して乾燥し、予熱室5にて1000℃雰囲気下で予熱
した後、このペレット(予熱ペレット)をキルン9に装入して焼成し、次いでクーラー11
に装入して冷却して、成品ペレットを製造した。この成品ペレットの製造(以下、第1段
階のペレット製造)に際し、キルン最高温度部でのペレットの温度およびキルン排鉱部で
のペレットの温度を光温度計により測定し、キルンバーナ10の燃焼条件を調整してキルン
最高温度部でのペレットの温度が1290〜1310℃となるようにした。このときのキルン排鉱
部でのペレットの温度は1040〜1060℃であった。上記成品ペレットの気孔率を測定したと
ころ、その気孔率は目標の気孔率(25.5〜26.5%)を満足するものであった。なお、この
気孔率の測定は通常の測定法(JIS M 8716の測定法)により行った。
【0038】
上記第1段階のペレット製造に引き続き、上記と同様の製造方法により成品ペレットの
製造(以下、第2段階のペレット製造)を行った。このとき、キルン最高温度部でのペレ
ットの温度およびキルン排鉱部でのペレットの温度を光温度計により測定し、この温度を
チェックすると共に、このキルン最高温度部でのペレットの温度とキルン排鉱部でのペレ
ットの温度との差から、クーラーからキルン排鉱部への冷風の侵入の有無およびその程度
を推定した。なお、キルンバーナ10の燃焼条件は上記第1段階のペレット製造の場合と同
様で一定である。
【0039】
第2段階のペレット製造の開始時点でのキルン最高温度部でのペレットの温度およびキ
ルン排鉱部でのペレットの温度は上記第1段階のペレット製造の場合と同様である。その
後、クーラーからキルン排鉱部への冷風の侵入(実験を促進するためにクーラーでのペレ
ット層の配置状態を変化させて冷風の侵入を起こさせた)により、キルン排鉱部でのペレ
ットの温度が低下し、この冷風の侵入の程度が大きくなるに伴ってキルン排鉱部でのペレ
ットの温度の低下の程度が大きくなり、それに伴ってキルン最高温度部でのペレットの温
度とキルン排鉱部でのペレットの温度との差が増大した。このことは、キルン最高温度部
でのペレットの温度とキルン排鉱部でのペレットの温度との差の増大の程度から、クーラ
ーからキルン排鉱部への冷風の侵入の程度が推定できることを示している。また、この段
階では、キルン排鉱部でのペレットの温度の低下の程度から、クーラーからキルン排鉱部
への冷風の侵入の程度が推定できることをも示している。
【0040】
上記冷風の侵入によりキルン排鉱部でのペレットの温度が1010〜1030℃にまで低下した
時点では、キルン最高温度部でのペレットの温度は上記第1段階のペレット製造の場合と
同様であったが、目標の気孔率を有する成品ペレットが得られ難くなった。従って、この
時点では、上記冷風の侵入の程度が目標の気孔率を有する成品ペレットが得られなくなる
程に大きくなっているといえる。
【0041】
このままにしておくと、以降、目標の気孔率を有する成品ペレットが得られなくなって
しまう。そこで、上記冷風の侵入の程度を低減させた。これは、クーラーでのペレット層
の配置状態を改善することにより行った。この結果、キルン排鉱部でのペレットの温度が
上記第1段階のペレット製造の場合と同様の温度になった。このときのキルン最高温度部
でのペレットの温度は上記第1段階のペレット製造の場合と同様である。以降、目標の気
孔率を有する成品ペレットが得られた。
【0042】
以上からわかるように、実施例1に係る成品ペレットの製造方法によれば、キルン排鉱
部のペレットの採取およびその気孔率の測定をしなくても、常に的確なキルンでのペレッ
ト焼成の制御ができる。
【0043】
〔実施例2〕
実施例1に係る成品ペレットの製造に引き続き、これと同様の方法により、成品ペレッ
トの製造(以下、第1a段階のペレット製造)を行った。この製造の開始時点でのキルン
最高温度部でのペレットの温度およびキルン排鉱部でのペレットの温度は、実施例1の第
1段階のペレット製造の場合と同様である。その後、キルン最高温度部でのペレットの温
度およびキルン排鉱部でのペレットの温度が実施例1の第1段階のペレット製造の場合と
同様の温度であるにもかかわらず、目標の気孔率を有する成品ペレットが得られ難くなっ
た(実験を促進するために予熱ペレットの気孔率を変えた)ので、キルンバーナ10の燃焼
条件を変化させて目標の気孔率を有する成品ペレットが得られるようにした。このときの
キルン最高温度部でのペレットの温度は1310〜1330℃、キルン排鉱部でのペレットの温度
は1060〜1080℃であった。
【0044】
この後、引き続き成品ペレットの製造(以下、第2a段階のペレット製造)を行った。
このとき、実施例1の場合と同様、キルン最高温度部でのペレットの温度およびキルン排
鉱部でのペレットの温度を光温度計により測定し、この温度をチェックすると共に、この
キルン最高温度部でのペレットの温度とキルン排鉱部でのペレットの温度との差から、ク
ーラーからキルン排鉱部への冷風の侵入の程度を推定した。そして、この冷風の侵入の程
度が目標の気孔率を有する成品ペレットが得られなくなる程に大きくなったとき、上記冷
風の侵入の程度を低減させた。この結果、キルン排鉱部でのペレットの温度が上記第2a
段階のペレット製造の開始時点と同様の温度になった。このときのキルン最高温度部での
ペレットの温度は上記第2a段階のペレット製造の開始時点と同様である。以降、目標の
気孔率を有する成品ペレットが得られた。
【0045】
以上からわかるように、キルン最高温度部およびキルン排鉱部でのペレットの温度が目
標の気孔率を有する成品ペレットが得られる温度になっているにもかかわらず、目標の気
孔率を有する成品ペレットが得られ難くなった場合は、キルンバーナの燃焼条件を変化さ
せて目標の気孔率を有する成品ペレットが得られる温度(キルン最高温度部およびキルン
排鉱部でのペレットの温度)にして、目標の気孔率を有する成品ペレットが得られるよう
にし、以降、キルン最高温度部でのペレットの温度およびキルン排鉱部でのペレットの温
度を測定し、この温度をチェックすると共に、このキルン最高温度部でのペレットの温度
とキルン排鉱部でのペレットの温度との差から、クーラーからキルン排鉱部への冷風の侵
入の程度を推定し、この冷風の侵入の程度が目標の気孔率を有する成品ペレットが得られ
なくなる程に大きくなったとき、この冷風の侵入の程度を低減させればよく、これにより
、目標の気孔率を有する成品ペレットが得られるようになる。
【0046】
〔実施例3〕
キルン最高温度部でのペレットの温度に代えてキルン内壁の温度を測定し、キルン排鉱
部でのペレットの温度に代えてキルン排鉱部でのキルン内壁の温度を測定した。そして、
キルン最高温度部でのペレットの温度に代えてキルン内壁の温度を用い、キルン排鉱部で
のペレットの温度に代えてキルン排鉱部でのキルン内壁の温度を用いた。この点を除き、
実施例1の場合と同様の方法により、成品ペレットの製造を行った。
【0047】
その結果、実施例1の場合と同様、常に的確なキルンでのペレット焼成の制御をするこ
とができた。各時点でのキルン内壁の温度は、実施例1の場合のペレットの温度と略同様
であった。
【0048】
上記実施例においては生ペレットとして上述のような配合率で造粒されたものを用いた
が、配合率を変えたものや、配合材を変えたものを用いた場合も上記と同様の傾向の結果
が得られ、同様の効果を奏する。また、グレート炉1でのペレット層厚さ、乾燥室3での
加熱温度を変更しても、上記実施例と同様の傾向の結果が得られ、同様の効果を奏する。
また、予熱室5での予熱温度を変更しても、予熱ペレットの気孔率が大きく変わらない限
り、上記実施例と同様の傾向の結果が得られ、同様の効果を奏する。
【0049】
以上のように、本発明に係る鉄鉱石ペレットの製造方法によれば、キルン排鉱部のペレ
ットの採取およびその気孔率の測定をしなくても、常に的確なキルンでのペレット焼成の
制御ができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る鉄鉱石ペレットの製造方法によれば、キルン排鉱部のペレットの採取およ
びその気孔率の測定をしなくても、常に的確なキルンでのペレット焼成の制御ができるの
で、鉄鉱石ペレットの製造方法として好適に用いることができ、作業性の改善および目標
気孔率の鉄鉱石ペレットの生産性(歩留り)向上がはかれて有用である。
【符号の説明】
【0051】
1--グレート炉、2--グレート、3--乾燥室、4--離水室、5--予熱室、6--風箱群、
7--吸引ファン、8--予熱室バーナ、9--キルン、10--キルンバーナ、11--クーラー、
GP--生ペレット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グレートキルン方式による鉄鉱石ペレットの製造方法であって、キルンの長さ方向にお
ける最高温度部でのペレットまたはキルン内壁の温度を測定すると共に、キルンの排鉱部
でのペレットまたはキルン内壁の温度を測定し、前者の温度の測定値と後者の温度の測定
値との差から、キルンで焼成されたペレットの冷却用クーラーからキルンの排鉱部への冷
風の侵入の程度を推定し、この冷風の侵入の程度が目標の気孔率を有する鉄鉱石ペレット
が得られなくなる程に大きくなったとき、あるいはそれ以前に、この冷風の侵入の程度を
低減させることを特徴とする鉄鉱石ペレットの製造方法。
【請求項2】
前記ペレットの温度が光温度計により測定されるペレット面の温度であり、前記キルン
内壁の温度が光温度計により測定されるキルン内壁面の温度である請求項1記載の鉄鉱石
ペレットの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−127175(P2011−127175A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286550(P2009−286550)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】