説明

鉛蓄電池および鉛蓄電池の製造方法

【課題】寿命性能と高率放電性能とを向上させた鉛蓄電池を提供する。
【解決手段】本発明の鉛蓄電池は、正極活物質ペーストが充填された格子体を化成してなる正極板を備える。本発明の鉛蓄電池の正極板においては、正極活物質の細孔体積の合計が0.10cm/g以上0.13cm/g以下であり、かつ、直径が0.1μm未満である細孔の体積の合計が0.05cm/g以上であるとともに、直径が0.1μm以上4.0μm以下である細孔の体積の合計が0.07cm/g以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛蓄電池および鉛蓄電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ペースト式鉛蓄電池の高率放電性能を向上させる方法として、ペースト中の水分量を増加したり、黒鉛を添加する方法が知られている。
これらの方法によれば、正極活物質の細孔体積を増加させることで、電解液の拡散性が向上し、活物質の利用率を向上させることができ、その結果、放電容量の高い鉛蓄電池(以下、「電池」ともいう)を得ることができる。
【0003】
しかしながら、これらの方法によれば、正極活物質の細孔体積を増加させるとともに活物質密度が低下するため、充放電を繰り返すうちに活物質間の結合力が低下し、活物質の軟化や脱落が起こりやすくなり、早期に寿命に至ってしまうという問題があった。
【0004】
そこで、細孔体積の分布を調整することで、高率放電性能と寿命特性のバランスをとる方法が提案されている(特許文献1を参照)。
特許文献1においては、正極板の全細孔体積が0.14cm/g〜0.18cm/gであり、かつ、直径が0.01以上0.1μm未満である細孔の体積の合計が0.02cm/g以上であり、直径が0.1μm以上4.0μm以下である細孔の体積の合計が0.13cm/g以下に設定された鉛蓄電池が提案されている。
【0005】
特許文献1に記載の構成の鉛蓄電池は、マンニトールと硫酸ヒドラジンとを含む希硫酸中で化成充電する方法により製造することができ、マンニトールの添加量により正極板の細孔構造が制御される。
【特許文献1】特許第3505972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の鉛蓄電池について検討したところ、正極板の全細孔体積が大きい(例えば0.18cm/g)場合には、正極板全体としての活物質密度が低いので、活物質間の結合力が低く、活物質の軟化・脱落が起こりやすく、充分な寿命性能が得られなかった。
【0007】
また、所望する細孔構造の正極板を作製するために、マンニトールの添加量を決定するのは困難であり、特に、直径が0.1μm未満である細孔を増量させた正極活物質を有する正極板を製造するのは困難であった。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、寿命性能と高率放電性能とを向上させた鉛蓄電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、化成後の正極活物質において、細孔直径が0.1μm未満の微細な細孔を増やすことで、高率放電時の電流が分散されて電流密度を低下させ、電池の高率放電性能を向上できるということを見出した。
なお、本発明において細孔直径とは、水銀圧入法により算出される細孔直径をいう(本明細書においては、細孔径ともいう)。水銀圧入法では、まず、圧力がPのときに細孔に浸入する液量Vを、圧力値を変えて測定しすることによりP−V曲線(縦軸V、横軸P)を得る。次に、横軸の圧力Pを、下記式(1)を用いて、細孔直径(D)に置き換えて、縦軸Vと横軸Dとの関係のグラフにしてから細孔分布を算出する。
PD=−4σcosθ(1)(式中、σは表面張力、θは水銀の接触角を示し、これらは定数とする。)
実施例にデータはないが、従来の正極活物質の細孔分布を、図1に示した。図1において実線で示したグラフは細孔径(横軸)とlog微分細孔体積(縦軸)との関係を示すグラフであり、点線で示したグラフは細孔径(横軸)と積算細孔体積(縦軸)との関係を示すグラフである。
図1のlog微分細孔体積のグラフにおいては、細孔の直径(細孔径ともいう)0.1μm〜1.0μmの範囲に第1のピーク(図中X)が存在し、細孔径が0.01μm〜0.1μmの範囲に第2のピーク(図中Y)が存在する。ここでいう細孔分布は、水銀圧入法によって測定される積分細孔体積を基に、細孔体積の差分(dV)を細孔径の対数の差分[d(logD)]で除することにより算出されるため、単純に積算しても積分細孔体積の値とは一致しないが、広範囲の孔径における分布状態を視覚的に表現するのに通常用いられる。
高率放電性能を向上させるために、従来の正極活物質よりも細孔径0.1μm以上の細孔の分布を増加させることにより、電解液の拡散性を向上する方法を採ると、活物質の密度を大きく低下させるため寿命低下の原因となる。そこで第2のピークの存在する範囲、すなわち細孔径が0.1μm未満の範囲の細孔の分布を増加させて電流密度を下げることにより、高率放電性能を向上させる方法に着目した。
【0009】
また、本発明者は、化成後の正極活物質の細孔体積の合計が0.10cm/g以上0.13cm/g以下とすることで、活物質密度の低下を抑えて寿命性能を向上できるということを見出した。なお、本願発明において細孔体積の合計は小数点第3位を四捨五入した値を用いた。
【0010】
さらに、本発明者は、鉛粉に、平均粒子径が0.1μm以下のカーボンブラック(A)を含むカーボンブラックを混合した活物質ペーストを用いることで、化成後の正極活物質中において、直径が0.1μm未満の細孔を容易に増加させることができるということを見出した。
【0011】
すなわち、本発明は、正極活物質ペーストが充填された格子体を化成してなる正極板を備える鉛蓄電池であって、前記正極板においては、正極活物質の細孔体積の合計が0.10cm/g以上0.13cm/g以下であり、かつ、直径が0.1μm未満である細孔の体積の合計が0.05cm/g以上であるとともに、直径が0.1μm以上4.0μm以下である細孔の体積の合計が0.07cm/g以下であることを特徴とする鉛蓄電池、および、正極活物質ペーストが充填された格子体を化成してなる正極板を備える鉛蓄電池の製造方法であって、前記正極活物質ペーストは、一酸化鉛を主成分とする鉛粉とカーボンブラックとを混合した混合粉末と、希硫酸と、水とを混練して作製され、前記カーボンブラックには、平均粒子径が0.1μm以下のカーボンブラック(A)が含まれることを特徴とする鉛蓄電池の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、化成後の正極活物質の細孔体積の合計が0.10cm/g以上0.13m/g以下であり、かつ、細孔のうち、直径が0.1μm未満の細孔の体積の合計が0.05cm/g以上であるとともに、直径が0.1μm以上4.0μm以下の細孔の体積の合計が0.07cm/g以下であるから、直径が0.1μm未満の細孔を増加させて、細孔体積の合計が小さくなるように設定されている。
【0013】
その結果、活物質の密度が高くなって活物質間の結合力の低下を抑制するから、軟化・脱落を防止して寿命性能が向上し、直径が0.1μm未満の微細な細孔を増加することで電流密度を低下させ、高率放電性能を向上させることができる。
【0014】
また、本発明において正極板を製造する際には、鉛粉と平均粒子径が0.1μm以下のカーボンブラック(A)を含むカーボンブラックとを鉛粉に混合した混合粉末と、希硫酸と、水とを混合して正極活物質ペーストを作製する。
【0015】
カーボンブラックは化成電流により分解されてCOなどのガスとして極板外へ排出されるので、化成前にカーボンブラックが存在した部分には、化成により細孔が形成される。
【0016】
本発明においては、平均粒子径が0.1μm以下のカーボンブラック(A)が含まれているカーボンブラックを用いるので、化成前にカーボンブラック(A)が存在した部分には、化成により直径0.1μm未満の細孔が形成されやすい。その結果、本発明によれば、化成後の正極活物質において、直径が0.1μm未満の細孔を容易に増加させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の鉛蓄電池は、正極活物質ペーストが充填された格子体を化成してなる正極板を備える。
本発明の鉛蓄電池の正極板においては、化成後の正極活物質の細孔体積の合計が0.10cm/g以上0.13cm/g以下とされる。化成後の正極活物質の細孔体積の合計が0.13cm/gを超えると、活物質密度が低くなって活物質の軟化・脱落が起こりやすくなり寿命性能が低下し、化成後の正極活物質の細孔体積の合計が0.10cm/g未満であると、全体として活物質密度が高くなり、電解液の拡散が抑制され高率放電性能が低下するからである。
【0018】
本発明において、化成後の正極活物質の細孔分布は、直径が0.1μm未満の細孔の体積の合計が0.05cm/g以上であるとともに、直径が0.1μm以上4.0μm以下の細孔の体積の合計が0.07cm/g以下とされる。
【0019】
化成後の正極活物質において、直径が0.1μm未満の細孔の体積の合計が0.05cm/g未満である場合には高率放電性能が低下し、直径が0.1μm以上4.0μm以下の細孔の体積の合計が0.07cm/gを超える場合には、寿命性能が低下するからである。
【0020】
次に本発明の鉛蓄電池の製造方法について説明する。
本発明においては、まず、一酸化鉛を主成分とする鉛粉と、化成電流により分解して消失する添加剤(以下、単に「添加剤」ともいう)とを混合した混合粉末と、希硫酸と、水とを混合して作製した正極活物質ペーストを鉛合金製の格子体に充填する。
化成電流により分解して消失する添加剤を含む正極活物質ペーストが充填された格子体を化成すると、添加剤が化成電流により分解されて極板外へ排出され、その結果、化成前に添加剤が存在した部分には、細孔が形成される。
【0021】
本発明において、添加剤として平均粒子径が、0.1μm以下の添加剤(a)を含むものを用いると、化成により直径0.1μm未満の細孔が形成されやすい。すなわち平均粒子径が0.1μm以下の添加剤(a)の混合量を増やすと、化成後の正極活物質中の直径0.1μm未満の細孔を容易に増やすことができるのである。したがって、本発明においては、平均粒子径が0.1μm以下の添加剤(a)を含む添加剤を用いるのが好ましい。
【0022】
本発明においては、平均粒子径が0.1μm以下の添加剤(a)を単独で使用してもよいが、平均粒子径が0.1μmより大きい添加剤(b)とともに用いてもよい。
添加剤の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製:SALD−2200)を用いて測定することができる。なお、本発明において、「平均粒子径」とは、粒子体積基準における50%粒子径(メジアン径)を示す。
【0023】
本発明において、添加剤としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラックを使用するのが好ましい。カーボンブラックとしては、平均粒子径が0.1μm以下のカーボンブラック(A)が含まれているものを用いるのが特に好ましい。
【0024】
本発明において、添加剤の混合量は、鉛粉100質量部に対して、0.4〜1.2質量部であるのが好ましい。
なお、正極活物質ペーストには、必要に応じて、有機短繊維などの添加物を添加してもよい。
【0025】
次に、上記方法により作製した正極活物質ペーストを充填した格子体を、熟成乾燥して未化成の正極板を作製する。当該未化成の正極板と、常法により作製した負極板とをセパレータを介して交互に組み合わせて極板群を作製して電槽に挿入した後、希硫酸を注液して化成を行うことで、本発明の鉛蓄電池を得ることができる。
なお、本発明において、未化成の正極板の化成方法は、極板化成でも電槽化成のいずれでもよい。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を具体的に適用した実施例について説明する。
<ペースト式鉛蓄電池の作製>
試験番号1〜36の鉛蓄電池を以下の手順で作製した。
(1)正極板の作製
直径が0.1μm未満の細孔の体積の合計と、直径が0.1μm以上4.0μm未満の細孔の体積の合計を種々に変えたものを検討するため、表1に示す量の2種類のアセチレンブラックと、一酸化鉛を主成分とする鉛粉とを混合して混合粉末とした。
【0027】
アセチレンブラックとしては平均粒子径が0.1μmのアセチレンブラック(A)と、平均粒子径が0.5μmのアセチレンブラック(B)とを用いた。
次に、上記混合粉末に、鉛粉100質量部に対して12質量部の水と、鉛粉100質量部に対して10質量部の希硫酸[25℃、比重1.40(20℃)]とを加えて、混練機を用いて混練して正極活物質ペーストを作製した。
【0028】
次に、正極活物質ペーストを鉛ーカルシウム系合金からなる格子体に充填した後、熟成乾燥することで未化成の正極板を得た。この未化成の正極板を、温度35℃、比重1.23(20℃)の希硫酸中で通電して化成し、化成後の正極板を得た。
なお、試験番号1においては、アセチレンブラックを添加せずに正極板を作製し、試験番号2〜8においては、平均粒子径が0.1μmのアセチレンブラック(A)は添加せず、平均粒子径が0.5μmのアセチレンブラック(B)のみを添加して正極板を作製した。
【0029】
表1中、アセチレンブラックの添加量の欄の下の「(A)」、「(B)」との記載は、それぞれ、「平均粒子径0.1μmのアセチレンブラック(A)の混合量」、「平均粒子径0.5μmのアセチレンブラック(B)の混合量」を示す。なお、(A)の混合量および(B)の混合量は、鉛粉100質量部に対する量(質量部)として記載した。
【0030】
(2)化成後の正極活物質の細孔体積の分析
化成後の各正極板について、水銀ポロシメーター(株式会社島津製作所製、商品名「オートポアIII 9405」)を用いて、水銀圧入法により正極活物質の細孔体積の合計(cm/g)、直径が0.1μm未満の細孔の体積の合計(cm/g)および直径が0.1μm以上4.0μm以下の細孔の体積の合計(cm/g)を測定し、表1に示した。
表1中、「既化活物質細孔体積合計」とは「化成後の正極活物質の細孔体積の合計」を意味し、既化活物質細孔体積合計の欄の下の「0.1μm未満」、「0.1μm〜4.0μm」との記載は、それぞれ、「直径0.1μm未満の細孔の体積の合計」、「直径0.1μm以上4.0μm以下の細孔の体積の合計」を意味する。
【0031】
試験番号23の電池に用いる正極活物質については、その細孔分布を、図2に示した。図2において実線で示したグラフは細孔径(横軸)とlog微分細孔体積(縦軸)との関係を示すグラフであり、点線で示したグラフは細孔径(横軸)と積算細孔体積(縦軸)との関係を示すグラフである。
図2のグラフと前述の図1のグラフとを対比すると0.1μm〜1.0μmの範囲に存在する第1のピーク(図中X’)は図1における第1のピークよりもシャープになっており、細孔径が0.01μm〜0.1μmの範囲に存在する第2のピーク(図中Y’)は図1における第2のピーク(Y)よりもシャープなピークとなっている。図2と図1との対比により、試験番号23の電池に用いる正極活物質では、細孔径0.01μm〜0.1μmの範囲の細孔体積の合計が、図1に示す従来の正極活物質よりも増加していることがわかる。
【0032】
(3)鉛蓄電池の作製
(1)で作製した正極板1枚と公知の方法で作製した負極板2枚とをセパレータを介して組み合わせ、電槽に挿入し、比重1.28(20℃)の希硫酸電解液を注液した後、公称容量2V−6Ahの鉛蓄電池を作製した。
【0033】
<電池性能評価試験>
上記の手順で作製した、試験No1〜36の鉛蓄電池について以下の試験を行った。
(1)高率放電性能試験
試験番号1〜36の電池をそれぞれ、公称容量に対して3Cの放電率で、終止電圧を1.0V/セルとして放電を行い、温度25℃での放電持続時間を測定し表1に示した。
放電持続時間が10分以上であれば、高率放電性が向上したと判断した。
【0034】
(2)寿命性能試験
試験番号1〜36の電池について、0.2Cの定電流放電で終止電圧を1.75V/セルとし、充電は0.2C定電流充電で直前の放電電気量に対して135%の電気量となるまでとした。寿命条件は初期の放電容量の50%以下となった時点で寿命終了とし、その時点のサイクル数を表1に示した。
寿命性能試験の結果が、60サイクル以上であれば寿命性能が向上したと判断した。
【0035】
【表1】

【0036】
<試験結果と考察>
(1)表1に示すように、正極活物質の細孔体積の合計が0.10cm/g以上0.13cm/g以下であり、かつ、直径が0.1μm未満である細孔の体積の合計が0.05cm/g以上であるとともに、直径が0.1μm以上4.0μm以下である細孔の体積の合計が0.07cm/g以下である本発明の電池(試験番号10〜12、16〜19、22〜24、27、28、32の電池)では、放電持続時間が10分以上であり、かつ、寿命サイクル数が60以上であった。すなわち本発明の鉛蓄電池では、放電性能と寿命性能がともに向上した。
【0037】
化成後の活物質の細孔体積の合計が、0.10cm/g未満の電池(試験番号1、2、9の電池)では、高率放電性能が低く、細孔体積の合計が0.13cm/gよりも大きい電池(試験番号7、8、14、15、20、21、25、26、29〜31、33〜36の電池)では寿命性能が低かった。
正極活物質の細孔体積の合計が0.10cm/g以上0.13cm/g以下ではあるが、直径が0.1μm未満である細孔の体積の合計が0.05cm/g未満の電池(試験番号3〜6の電池)や、直径が0.1μm以上4.0μm以下である細孔の体積の合計が0.07cm/gを超える電池(試験番号5、6、13の電池)では、放電性能と寿命性能がともに向上したものはなかった。
【0038】
以上より、本発明によれば、放電性能と寿命性能とを向上させた鉛蓄電池を提供することができる。
【0039】
(2)また、平均粒子径が0.1μm以下のアセチレンブラック(A)の添加量を増やすと、化成後の正極活物質中の、直径が0.1μm未満である細孔が増加するという結果が得られた。
この結果から、本発明の製造方法によれば、化成後の正極活物質において、直径が0.1μm未満の細孔を容易に増加させることができる。
【0040】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例では、平均粒子径が0.1μm以下のアセチレンブラック(A)を鉛粉100質量部に対して0.4重量部、0.6質量部、0.8質量部、1.0質量部、1.2質量部混合したがアセチレンブラック(A)を0.7質量部、0.9質量部、1.1質量部添加してもよい。
【0041】
(2)上記実施例では、平均粒子径が0.1μmのアセチレンブラックと平均粒子径が0.5μmのアセチレンブラックとを用いたが、カーボンブラックの平均粒子径は0.1μmや0.5μmのものに限定されない。要は、化成後の正極活物質の細孔体積の合計が0.10cm/g以上0.13cm/g以下であり、かつ、直径が0.1μm未満である細孔の体積の合計が0.05cm/g以上であるとともに、直径が0.1μm以上4.0μm以下である細孔の体積の合計が0.07cm/g以下であればよく、このような細孔分布とするために平均粒子径が0.1μm以下のカーボンブラックが含まれていればよい。
【0042】
(3)上記実施例ではアセチレンブラックを用いたが、化成電流により分解して消失する添加剤であればよく、例えばケッチェンブラックなどの他のカーボンブラック類であっても、同様の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】従来の正極活物質の細孔分布
【図2】試験番号23の鉛蓄電池の正極活物質の細孔分布
【符号の説明】
【0044】
X’…第1のピーク
Y’…第2のピーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質ペーストが充填された格子体を化成してなる正極板を備える鉛蓄電池であって、
前記正極板においては、正極活物質の細孔体積の合計が0.10cm/g以上0.13cm/g以下であり、
かつ、直径が0.1μm未満である細孔の体積の合計が0.05cm/g以上であるとともに、直径が0.1μm以上4.0μm以下である細孔の体積の合計が0.07cm/g以下であることを特徴とする鉛蓄電池。
【請求項2】
正極活物質ペーストが充填された格子体を化成してなる正極板を備える鉛蓄電池の製造方法であって、
前記正極活物質ペーストは、一酸化鉛を主成分とする鉛粉とカーボンブラックとを混合した混合粉末と、希硫酸と、水とを混練して作製され、
前記カーボンブラックには、平均粒子径が0.1μm以下のカーボンブラック(A)が含まれることを特徴とする鉛蓄電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−158286(P2009−158286A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334985(P2007−334985)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(304021440)株式会社ジーエス・ユアサコーポレーション (461)
【Fターム(参考)】