説明

鉛蓄電池で使用される活性プレート作製のための固相反応からの四塩基性硫酸鉛の生成

高温での固相反応によって四塩基性硫酸鉛を生成することにより、粒径が10μm未満の粉末を形成することが可能となる。単一の高温処理中に、酸化鉛と硫酸化合物の間で化学反応が起こる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願の相互参照
本出願は、2004年3月19日出願の米国特許出願第10/803,491号の利益を主張する。米国特許出願第10/803,491号の開示全体を、参照により本明細書に組み込む。
【0002】
(発明の分野)
本出願は、一般に、四塩基性硫酸鉛の生成に関し、より詳細には、鉛蓄電池で使用される活性プレート作製のための固相反応からの四塩基性硫酸鉛の生成に関する。
【0003】
(背景)
鉛蓄電池用の活性電極または活性プレートの作製は、3つのステップ、すなわち、a)支持格子にペーストを塗布するステップと、b)ペーストが塗布された格子を乾燥し硬化させるステップと、c)充電された鉛蓄電池で使用される活性材料を生成するために、硬化した格子を電気化学的に形成するステップを含む。電池の形成は通常、電極に電流を流すことによって行われ、その結果、二酸化鉛のペレットを有する正のプレート、および金属鉛のペレットを有する負のプレートがもたらされる。四塩基性硫酸鉛4PbO・PbSOは、鉛蓄電池用の正電極の作製に非常に有用な出発材料である。米国特許第3,765,943号および米国特許第3,899,349号によれば、この硫酸塩で作製され、制御された量の二酸化炭素ガスの存在下で硬化させた電池プレートまたは電池電極は、製品歩留まりの増大、より長い寿命、製品の化学的および物理的特性のより高い再現性、および電池動作により適した結晶形態を伴う。正電極も負電極も共に四塩基性硫酸鉛で形成することができるが、この材料は好ましくは正のプレートに使用される。Pavlov,D.and Papazov,G.,Journal of Applied Electrochemistry 6,1976,pp.339−345、ならびにPavlov,D.and Kapkov,N.J.,Electrochemical Society 137(1),1990,pp.16−28も参照のこと。
【0004】
鉛蓄電池の作製プロセスにおいて、四塩基性硫酸鉛は通常、含鉛酸化物(遊離鉛を含むαおよびβ−PbO)、硫酸および水を必要量混合することにより生成される。この手順は、非常に単純であるように見えるが、その重要な変形のいくつかが、主に特許文献で報告されている。
【0005】
たとえば、米国特許第3,765,943号は、鉛蓄電池用の正電極の作製方法を開示している。これらの電極はペーストで充填された格子から形成され、この方法は、水性懸濁液中の斜方晶系の酸化鉛を80〜100℃で硫酸と反応させて四塩基性硫酸鉛を生成するステップを含む。この鉛含有材料は、少なくとも90重量%の酸化鉛を含有し、反応が起こる水性懸濁液は、酸化鉛の添加前にpH1〜3.5の範囲に予め酸性にしておき、硫酸の添加が完了した後1時間以内に水性懸濁液から四塩基性硫酸鉛が分離される。
【0006】
米国特許第4,324,768号は、一般式nPbO・PbXで表される組成を有する非水溶性の鉛化合物を調製する方法を開示しており、式中、Xは無機酸基を表し、xは基Xの価数を示し、nは0〜5の数である。この方法は、反応系の最初のpH値が7より高くならないような条件の下、ヒドロキシルアミンの存在下で湿式法により一酸化鉛を無機酸または有機酸と反応させることを含む。この一般式で表される鉛化合物は、クロム酸鉛などのオルト塩または四塩基性硫酸鉛(4PbO・PbSO)などの塩基性塩でよい。さらに、この鉛化合物は、ケイ硫酸鉛(lead silicosulfate)など少なくとも2つの酸基を含有する塩でもよい。
【0007】
米国特許第5,096,611号は、電池ペーストを作製するための方法を開示している。この方法は、遊離鉛の含有量が少ない酸化鉛を水性スラリの状態で硫酸と反応させることによってペースト混合物を形成する最初のステップと、その後、部分的に反応したスラリを脱水してペースト材料を得ることを含む。記載されている一実施形態では、連続撹拌槽型反応器で、鉛蓄電池の電極における活性材料としての使用に適した一塩基性または数塩基性の硫酸鉛を含有するスラリが形成される。このスラリが反応器から回収され、ベルトプレスに供給され、そこでスラリの含水率が所望のレベルにまで低減される。前記発明に従って生成された電池ペーストは、格子から正および負の電池プレートを大量生産するために、ペースタに連続供給することができる。この方法では、任意の結晶構造の、バートン(Barton)酸化物、含鉛および非含鉛酸化物を含めた様々な酸化鉛を使用することができ、またこの方法により、三塩基性硫酸鉛、四塩基性硫酸鉛、または特定の比率のそれらの混合物を含有するペーストを生成することができる。この電池ペースト中の四塩基性硫酸鉛の量は、ペースト形成中に決定され、後で調整する必要はない。遊離鉛を除去または酸化することもでき、硬化ステップは鉛蓄電池の作製方法から除かれている。米国特許第5,290,359号は、米国特許第5,096,611号に開示されている方法に従って電池ペーストを作製するための装置を開示している。
【0008】
米国特許第5,252,105号は、従来の硬化ステップなしで鉛蓄電池用の電極を作製する連続的な方法を開示している。電極を作製するための一般的な手順は、活性材料の前駆体、硫酸塩を含有する酸および抑制剤を含むペースト混合物を調製することを含む。この活性材料の前駆体は、少なくとも10重量%の酸化鉛をPb(鉛丹)の形で有し、少なくとも約0.8m/g、望ましくは約1.00〜1.50m/grain、好ましくは約1.0〜1.25m/gのBET表面積を有する酸化鉛を含む。抑制剤(好ましくは単糖、または炭素原子当たり少なくとも1つの水酸基を有する関連化合物)は、高い温度以外では(四塩基性硫酸鉛は、通常80℃を超える温度でのさらなる処理で形成される)、前駆体材料および硫酸塩を含有する酸から三塩基性硫酸鉛および四塩基性硫酸鉛が形成されるのを阻止する。ペーストを電極格子に塗布し、約5〜約30分間高い温度で反応させて、正電極および負電極両用の電極活性材料を形成する。次いで、プレートを組み立てて電池にし、充電する。負電極は、主に使用される添加剤が正電極と異なる。
【0009】
米国特許第5,273,554号は、9.3〜12の範囲のpHで酸化鉛をかなり過剰の硫酸塩反応物質と反応させることによって四塩基性硫酸鉛が生成される、電池を作製する方法を開示している。得られる材料は、一般に3〜1μmの範囲の幅を有する針状構造をもたらす。比較的幅の狭いこれらの針は、鉛蓄電池の正電極に利用すると、形成効率を向上させ、正のプレートとの優れた接着性を提供し、電池の寿命を延ばし、さらに、優れた活性材料1グラム当たりの容量をもたらす。一実施形態では、過剰の硫酸塩の存在下で酸化鉛を硫酸と反応させてペーストを形成し、そのペーストを格子に塗布し続いて硬化させることによって前駆体を調製する。反応媒質中の温度を60℃未満に制御し、硫酸塩の過剰分を制御すると、70℃よりも高い温度および100%の湿度で硬化させた後、非常に均一な斜方晶寸法の四塩基性硫酸鉛を含み、均一な細孔分布を有する正のプレートがもたらされる。最も特筆すべきことに、これらの結晶の幅は非常に狭く、平均寸法が1〜2μmの範囲であり、そのため、前駆体から酸化鉛への迅速な変換が可能となり、さらに接着性および電流容量特性が高まる。したがって、変換後に得られる酸化鉛は、平均結晶幅が2.5μm未満の斜方晶系結晶を有する。第2の実施形態では、過剰の硫酸塩を含有する撹拌した水溶液中で60℃より高い温度で酸化鉛を硫酸と反応させて、速やかに四塩基性硫酸鉛を形成させるだけで、比較的小さい斜方晶寸法の四塩基性硫酸鉛が実現される。この四塩基性硫酸鉛を水と混合してペーストを形成する。このペーストを鉛格子に塗布することによって作製され、酸化鉛に変換された正のプレートは、より高い電流容量特性をも有する。米国特許第5,660,600号は、米国特許第5,273,554号に開示されている方法に従って作製される電池について言及しており、またそれら電池で有用な材料についても言及している。
【0010】
米国特許第6,454,977号は、鉛蓄電池用の連続的なペースト作製方法を開示している。この方法は、水を酸化鉛と混合するステップと、酸(通常は硫酸)を混合物中の酸化鉛と反応させて酸化鉛−硫酸鉛化合物を生成するステップと、これらの酸化鉛−硫酸鉛化合物からインターロックしている(interlocking)塩基性硫酸鉛錯体結晶を含むペーストを形成するステップとを含む。これらの混合、反応および結晶形成ステップは、押出し成形装置または高剪断連続処理装置内で行われる。この方法は、押出し成形装置から格子メッシュへとペーストを押し出すステップも含み、そこでペーストを乾燥して鉛蓄電池の電池プレートが形成される。
【0011】
明らかに、四塩基性硫酸鉛は鉛蓄電池業界にとって不可欠な原材料である。驚くべきことに、上述したもの以外には、四塩基性硫酸鉛の生成のための合成方法はほんのわずかしか科学文献には報告されていない。
【0012】
たとえば、Burbank J.,Journal of The Electrochemical Society 113(1),1996,pp.10−14は、PbOと希硫酸を反応させることによって一塩基性、三塩基性および四塩基性硫酸鉛を調製する方法を開示している。X線回折によって結晶相が同定され、電子顕微鏡検査により、これら3種がすべて斜方晶の針からなることが示された。これら3種の塩基性硫酸塩がペレットにプレスされ、純鉛のフレーム中で、比重が1.050の硫酸中で陽極酸化された。X線回折により各々α−二酸化鉛に変換されたことが示された。四塩基性硫酸鉛製のペレットから形成されるPbOは、大きな結晶のインターロックによって機械的強度が高くなるように形成された。
【0013】
Vilhunen,Journal of Power Sources 39,1992,pp.59では、調製技術または出発材料の故に、四塩基性硫酸鉛の含有量が多い正の活性材料において生じる相違点が評価された。湿式化学分析、X線回折、透過型および走査型電子顕微鏡検査法を使用して材料が特徴付けられた。四塩基性硫酸鉛は、溶液法またはペースト法によって含鉛酸化物および正方晶のPbOから作製された。ペーストを用いると、溶液法によって生じる大きな単結晶状の粒子よりも小さく、より不規則でもある結晶がもたらされた。これらの結果は、長サイクル寿命に最も役立つ、条件付きプレートにおける結晶構造を実現するための選択肢を提供する。
【0014】
最後に、Grugeondewaele et al.,Journal of Power Sources 72(2),1998,pp.126−131では、三塩基性硫酸鉛および四塩基性硫酸鉛が、反応性粉砕によって調製された。得られる相の性質および形態的特徴に対する様々な実験パラメータ(化学量論比、出発化合物の含水量(hygrometry)、機械的処理の継続時間)の影響が調査された。水が過剰であると、三塩基性硫酸鉛のみが生成されたが、乾燥剤を用いると、四塩基性硫酸鉛がもたらされた。いずれの場合も、粒径が小さく、反応性が高いサンプルが得られた。粉砕によって生成されたこのようなサンプルの電気化学的性能に形態が及ぼす影響を評価するために、容量が測定され、従来の三塩基性硫酸鉛および四塩基性硫酸鉛サンプルの容量と比較された。
【0015】
要するに、四塩基性硫酸鉛の生成に利用可能な方法は、複雑であり、費用がかかり、あるいは不均一な結晶サイズをもたらす。
【0016】
(概要)
本発明は、高温での固相反応によって四塩基性硫酸鉛を生成する際に使用され、粒径が10μm未満の粉末状硫酸塩化合物を形成することを可能にする様々な方法に関する。本発明によれば、以下の反応を利用して四塩基性硫酸鉛を得る。
【0017】
4PbO+PbSO+熱処理→4PbO・PbSO
3PbOPbSOO+PbO+熱処理→4PbO・PbSO+H
5PbO+HSO+熱処理→4PbO・PbSO+H
4PbO+PbCO+HSO+熱処理→4PbO・PbSO+CO+H
5PbO+(NHSO+処理→4PbO・PbSO+2NH
本発明に示す手順により、寸法が10μm未満の四塩基性硫酸鉛の粒子を得ることが可能となり、それにより、材料のそれ以上の粉砕が回避され、乾燥条件下または懸濁液中で行うことができる分散プロセスの利用しか必要でなくなる。
【0018】
本発明で特許請求される方法においては、酸化鉛と様々な硫酸化合物の間で起こる化学反応が、単一の高温処理中に起こる。
【0019】
本発明の方法に従って得られる四塩基性硫酸鉛は、鉛蓄電池ペーストの生成に使用することができ、前記ペーストで鉛蓄電池プレートを生成し、続いてそれらのプレートで鉛蓄電池を生成することができる。
【0020】
(発明の詳細な説明)
本発明は、高温での固相反応によって四塩基性硫酸鉛を生成する際に使用され、粒径が10μm未満の粉末状硫酸塩化合物を形成することを可能にする様々な方法に関する。本発明によれば、以下の反応を利用して四塩基性硫酸鉛を得る。
【0021】
4PbO+PbSO+熱処理→4PbO・PbSO
このケースでは、4PbOとPbSOを反応させることによって四塩基性硫酸鉛を生成するための固相反応法が提案される。この方法は、4PbOとPbSOの化学量論比の混合物を混合するステップと、4PbOとPbSOの化学量論比の混合物を500〜700℃の温度で3〜8時間加熱するステップと、最後に、得られる四塩基性硫酸鉛を脱凝集させ、ふるいにかけるステップとを含む。
【0022】
(実施例1)
5モルの酸化鉛を4モルの硫酸鉛とよく混ぜ合わせた。この反応混合物を600℃で4時間加熱処理することにより、95%の変換率を実現することが可能となった。
【0023】
3PbOPbSOO+PbO+熱処理→4PbO・PbSO+H
このケースでは、3PbO・PbSO・HO+PbOを反応させることによって四塩基性硫酸鉛を生成するための固相反応法が提案される。この方法は、3PbO・PbSO・HO+PbOの化学量論比の混合物を混合するステップと、3PbO・PbSO・HO+PbOの化学量論比の混合物を500〜700℃の温度で3〜8時間加熱するステップと、最後に、得られる四塩基性硫酸鉛を脱凝集させ、ふるいにかけるステップとを含む。
【0024】
(実施例2)
1モルの三塩基性硫酸鉛と1モルの酸化鉛の混合物を、600℃で5時間熱処理することによって、83.4%の四塩基性硫酸鉛への変換率が実現された。
【0025】
四塩基性硫酸鉛を生成するためのこの化学的経路の代替方法は、以下の通りである。
【0026】
鉛蓄電池プレートの作製に使用されるペーストに由来する、または再生鉛蓄電池プレートに由来する活性材料を使用することによる。このケースでは、3PbO・PbSO・HO+PbOを反応させることによって四塩基性硫酸鉛を生成するための固相反応法が提案される。この方法は、鉛蓄電池プレートの作製に使用されるペースト、または再生鉛蓄電池プレートから回収されたペーストを混合するステップと、その混合物を500〜700℃の温度で3〜8時間加熱するステップと、最後に、得られる四塩基性硫酸鉛を脱凝集させ、ふるいにかけるステップとを含む。
【0027】
(実施例3)
再生鉛蓄電池プレートに由来する活性材料を、650℃で5時間熱処理することによって、93%の四塩基性硫酸鉛への変換率が実現された。
【0028】
5PbO+HSO+熱処理→4PbO・PbSO+H
このケースでは、5PbO+HSOを反応させることによって四塩基性硫酸鉛を生成する固相反応法が提案される。この方法は、このPbOを、比重が1.100〜1.400g/cmの範囲である1モルのHSO水溶液とミッシングするステップと、それに続いて、その化学量論比の混合物を500〜700℃まで昇温させるステップと、この混合物をその温度で3〜8時間保持するステップと、最後に、得られる四塩基性硫酸鉛を脱凝集させ、ふるいにかけるステップとを含む。
【0029】
(実施例4)
5モルのPbOと、比重が1.150g/cmである1モルのHSO水溶液の混合物を、600℃で6時間熱処理することによって、72.9%の四塩基性硫酸鉛への変換率が実現された。
【0030】
4PbO+PbCO+HSO+熱処理→4PbO・PbSO+CO+H
このケースでは、4PbO+PbCO+HSOを反応させることによって四塩基性硫酸鉛を生成する固相反応法が提案される。この方法は、4PbO+PbCOの化学量論比の混合物を混合するステップと、続いて、比重が1.100〜1.400g/cmの範囲である1モルのHSO水溶液を添加するステップと、次いで、4PbO+PbCO+HSOの化学量論比の混合物を500〜700℃の温度で3〜8時間加熱するステップと、最後に、得られる四塩基性硫酸鉛を脱凝集させ、ふるいにかけるステップとを含む。
【0031】
(実施例5)
4モルのPbOと、1モルのPbCOと、比重が1.150g/cmである1モルのHSO水溶液との混合物を、650℃で6時間熱処理することによって、86%の四塩基性硫酸鉛への変換率が実現された。
【0032】
5PbO+(NHSO+処理→4PbO・PbSO+2NH
このケースでは、5PbO+(NHSOを反応させることによって四塩基性硫酸鉛を生成するための固相反応法が提案される。この方法は、5PbO+(NHSOの化学量論比の混合物を混合するステップと、次いで、5PbO+(NHSOの化学量論比の混合物を500〜700℃の温度で3〜8時間加熱するステップと、最後に、得られる四塩基性硫酸鉛を脱凝集させ、ふるいにかけるステップとを含む。
【0033】
(実施例6)
5モルのPbOと1モルの(NHSOの混合物を、650℃で6時間熱処理することによって、80%の四塩基性硫酸鉛への変換率が実現された。
【0034】
本発明に従って得られた四塩基性硫酸鉛に特徴的なX線回折角を以下の表に示し、対応するピーク強度を図1に示す。
【表1】

【0035】
本発明に従って得られた粒子の形態および寸法は、図2に認められる。本発明に示す手順により、寸法が10μm未満の四塩基性硫酸鉛の粒子を得ることが可能となり、それにより、材料のそれ以上の粉砕が回避され、乾燥条件下または懸濁液中で行うことができる分散プロセスを利用するだけでよくなる。
【0036】
湿式手順を用いることによる四塩基性硫酸鉛の生成は、三塩基性硫酸鉛中間化合物の形成を含み、この中間化合物は、適切な熱処理によって四塩基性硫酸鉛に変換されなければならない。それとは対照的に、本発明で特許請求される方法においては、酸化鉛と様々な硫酸化合物の間で起こる化学反応が、単一の高温処理中に起こる。
【0037】
本発明の方法に従って得られる四塩基性硫酸鉛は、鉛蓄電池ペーストの生成に使用することができ、前記ペーストで鉛蓄電池プレートを生成し、続いてそれらのプレートで鉛蓄電池を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明による固相反応によって得られる四塩基性硫酸鉛に特徴的なX線回折パターンを示すグラフである。
【図2】本発明による固相反応によって得られる四塩基性硫酸鉛に特徴的な走査型電子顕微鏡写真を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4PbOとPbSOを反応させることによって四塩基性硫酸鉛を生成する固相反応法であって、
4PbOとPbSOの化学量論比の混合物を混合するステップと、
4PbOとPbSOの前記化学量論比の混合物を500〜700℃の温度で3〜8時間加熱するステップと、
得られる四塩基性硫酸鉛を脱凝集させ、ふるいにかけるステップとを含む固体反応法。
【請求項2】
3PbO・PbSO・HO+PbOを反応させることによって四塩基性硫酸鉛を生成する固相反応法であって、
3PbO・PbSO・HO+PbOの化学量論比の混合物を混合するステップと、
3PbO・PbSO・HO+PbOの前記化学量論比の混合物を500〜700℃の温度で3〜8時間加熱するステップと、
得られる四塩基性硫酸鉛を脱凝集させ、ふるいにかけるステップとを含む固体反応法。
【請求項3】
3PbO・PbSO・HO+PbOの前記混合物が、鉛蓄電池プレートの作製に使用されるペーストに由来するまたは再生鉛蓄電池プレートに由来する活性材料から得られる、請求項2に記載の固相反応法。
【請求項4】
5PbO+HSOを反応させることによって四塩基性硫酸鉛を生成する固相反応法であって、
5PbO+HSOの化学量論比の混合物を混合するステップと、
5PbO+HSOの前記化学量論比の混合物を500〜700℃の温度で3〜8時間加熱するステップと、
得られる四塩基性硫酸鉛を脱凝集させ、ふるいにかけるステップとを含む固体反応法。
【請求項5】
4PbO+PbCO+HSOを反応させることによって四塩基性硫酸鉛を生成する固相反応法であって、
4PbO+PbCO+HSOの化学量論比の混合物を混合するステップと、
4PbO+PbCO+HSOの前記化学量論比の混合物を500〜700℃の温度で3〜8時間加熱するステップと、
得られる四塩基性硫酸鉛を脱凝集させ、ふるいにかけるステップとを含む固体反応法。
【請求項6】
5PbO+(NHSOを反応させることによって四塩基性硫酸鉛を生成する固相反応法であって、
5PbO+(NHSOの化学量論比の混合物を混合するステップと、
5PbO+(NHSOの前記化学量論比の混合物を500〜700℃の温度で3〜8時間加熱するステップと、
得られる四塩基性硫酸鉛を脱凝集させ、ふるいにかけるステップとを含む固体反応法。
【請求項7】
請求項1に記載の前記方法に従って得られる前記四塩基性硫酸鉛からなる鉛蓄電池ペースト。
【請求項8】
請求項2に記載の前記方法に従って得られる前記四塩基性硫酸鉛からなる鉛蓄電池ペースト。
【請求項9】
請求項3に記載の前記方法に従って得られる前記四塩基性硫酸鉛からなる鉛蓄電池ペースト。
【請求項10】
請求項4に記載の前記方法に従って得られる前記四塩基性硫酸鉛からなる鉛蓄電池ペースト。
【請求項11】
請求項5に記載の前記方法に従って得られる前記四塩基性硫酸鉛からなる鉛蓄電池ペースト。
【請求項12】
請求項6に記載の前記方法に従って得られる前記四塩基性硫酸鉛からなる鉛蓄電池ペースト。
【請求項13】
4PbOとPbSOの前記化学量論比の混合物を加熱する前記ステップが、約600℃の温度で行われる、請求項1に記載の固相反応法。
【請求項14】
4PbOとPbSOの前記化学量論比の混合物を加熱する前記ステップが、約4時間行われる、請求項13に記載の固相反応法。
【請求項15】
前記四塩基性硫酸鉛が10μm未満の粒径を有する、請求項1に記載の固相反応法。
【請求項16】
脱凝集させ、ふるいにかける前記ステップが分散プロセスである、請求項1に記載の固相反応法。
【請求項17】
前記分散プロセスが乾燥条件下で行われる、請求項16に記載の固相反応法。
【請求項18】
前記分散プロセスが懸濁液中で行われる、請求項16に記載の固相反応法。
【請求項19】
電池プレートを形成する方法であって、
4PbOとPbSOの化学量論比の混合物を混合すること、
4PbOとPbSOの前記化学量論比の混合物を約500〜700℃の温度で約3〜8時間加熱して四塩基性硫酸鉛を形成すること、
前記四塩基性硫酸鉛を脱凝集させ、ふるいにかけること、
前記四塩基性硫酸鉛を用いてペーストを形成すること、および
前記ペーストを電池プレート上に設けることを含む方法。
【請求項20】
4PbOとPbSOの前記化学量論比の混合物を加熱する前記ステップが、約600℃の温度で行われる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
4PbOとPbSOの前記化学量論比の混合物を加熱する前記ステップが、約4時間行われる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記四塩基性硫酸鉛が10μm未満の粒径を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
脱凝集させ、ふるいにかける前記ステップが分散プロセスである、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記分散プロセスが乾燥条件下で行われる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記分散プロセスが懸濁液中で行われる、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
4PbOとPbSOの化学量論比の混合物を混合すること、
前記化学量論比の混合物を500〜700℃の温度で約3〜8時間加熱して四塩基性硫酸鉛を形成すること、
前記四塩基性硫酸鉛を脱凝集させ、ふるいにかけること、
脱凝集され、ふるいにかけられた前記四塩基性硫酸鉛を用いてペーストを形成すること、および
前記ペーストを電池プレート上に設けることを含む方法によって作製される複数の電池プレートを備える電池を提供することを含む方法によって生成される鉛蓄電池。
【請求項27】
前記化学量論比の混合物を加熱する前記ステップが、約600℃の温度で行われる、請求項26に記載の鉛蓄電池。
【請求項28】
前記化学量論比の混合物を加熱する前記ステップが、約4時間行われる、請求項26に記載の鉛蓄電池。
【請求項29】
前記四塩基性硫酸鉛が10μm未満の粒径を有する、請求項26に記載の鉛蓄電池。
【請求項30】
前記化学量論比の混合物を加熱する前記ステップが、約600℃の温度で約4時間行われる、請求項29に記載の鉛蓄電池。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−529858(P2007−529858A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503447(P2007−503447)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【国際出願番号】PCT/IB2005/002373
【国際公開番号】WO2005/108298
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(506315549)ジーイーエス テクノロジーズ アイピー ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】