説明

鉱質コルチコイド受容体アンタゴニストおよび使用方法

本発明は下式の化合物


またはその薬学的に受容可能な塩;化合物(I)を適切な担体、希釈剤、または賦形剤と組み合わせて含む医薬組成物;および、化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩を投与する工程を含む、生理障害、特に鬱血性心不全、高血圧、糖尿病性腎症、または慢性腎疾患を治療する方法、を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療薬として有用な三環式化合物と、その化合物を含む医薬組成物と、患者における生理障害を治療する化合物を使用する方法と、その化合物の合成において有用な中間体および工程に関する。
【背景技術】
【0002】
アルドステロン(一次性内因性鉱質コルチコイド)は、鉱質コルチコイド受容体(MR)との相互作用後におけるナトリウムと水の再吸収およびカリウム排出を促進する。アルドステロンの役割は電解質と水とのバランスを維持することにあるため、MRアンタゴニストは、多くの生理障害(例えば、高血圧、低カリウム血症、心筋不整脈、バーター症候群、および、一次性または二次性の高アルドステロン症状(例えば、コン症候群)の障害)の治療に用いられてきた。より最近は、MRアンタゴニストは、鬱血性心不全および急性心筋梗塞の治療に用いられている。加えて、MRアンタゴニストは、更に、腎疾患の前臨床モデルにおいて有効であり、腎障害(例えば糖尿病性腎症を含む慢性腎疾患)に苦しむ患者においてタンパク尿を減少させる標準的な治療との組み合わせにおいても有効であることが証明されている。
【0003】
しかしながら、既存のステロイド性MRアンタゴニストは、それらの安全性および/または有効性を制限する随伴効果を発生させてしまう。例えば、スピロノラクトンは、他の生理学的プロセスを媒介する他の核ホルモン受容体(例えば、アンドロゲン受容体(AR)、プロゲステロン受容体(PR)、または、糖質コルチコイド受容体(GR))に対して、非選択性であり、かつ、交差反応する。スピロノラクトン治療はまた、高カリウム血症に関連しており、更に、女性化乳房、勃起障害、性欲減退、月経不順、および、胃部不快感とも関連している。エプレレノンは、他の核ホルモン受容体と比較してMRに選択的であるものの、同様に、高カリウム血症に関連している。したがって、現在のMRアンタゴニスト治療の代替治療が当該技術分野において未だ必要とされている。
【0004】
本発明の目的は、MRアンタゴニスト活性を有する非ステロイド性MRリガンドを提供することである。より具体的には、AR、PR、およびGRと比較してより大きな親和性にてMRと結合する非ステロイド性MRリガンドを提供することが目的である。より具体的な実施形態として、本発明の目的は、AR、PR、およびGRと比較してより大きな親和性にてMRと結合し、かつ、腎臓(reno)または心臓(cardio)の防御効果活性を有する非ステロイド性MRリガンドを提供することである。更により具体的な実施形態として、AR、PR、およびGRと比較してより大きな親和性にてMRと結合し、かつ、腎臓または心臓の防御効果活性を有するが、高カリウム血症の低い発生率または発生可能性を有する非ステロイド性MRアンタゴニストを提供することが目的である。
【0005】
三環式MRリガンドは、当該技術分野において公知である。例えば、特許文献1および特許文献2は、鉱質コルチコイド受容体または糖質コルチコイド受容体の調節の影響を受けやすい疾患を治療するのに有用な三環式ステロイドホルモン受容体調節因子を開示している。本発明は、以下に示す化合物(I)として与えられた特定のジベンゾオキセピンに関する。ここで、化合物(I)は、鉱質コルチコイド受容体アンタゴニスト治療に応答する疾患の治療または予防における効用を有することを示す、インビトロ活性およびインビボ活性のプロファイルを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第04/052847号パンフレット
【特許文献2】国際公開第05/066161号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明は、下式の化合物、
【化1】

または、その薬学的に受容可能な塩を提供する。
【0008】
特定の実施形態として、本発明は、結晶形態における化合物(I)、またはその薬学的に受容可能な塩を提供する。
【0009】
別の実施形態において、本発明は、有効量の化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩を、それを必要とする患者に対して投与する工程を含む、鬱血性心不全、糖尿病性腎症、慢性腎疾患、高血圧、低カリウム血症、心筋不整脈、バーター症候群、一次性または二次性の高アルドステロン症状、あるいは、コン症候群を治療または予防する方法を提供する。より特定の態様として、本発明は、有効量の化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩を、それを必要とする患者に対して投与する工程を含む、鬱血性心不全、高血圧、糖尿病性腎症、または慢性腎疾患を治療または予防する方法を提供する。
【0010】
本発明は、更に、治療に用いられる化合物(I)、またはその薬学的に受容可能な塩を提供する。更に、本発明は、鬱血性心不全、糖尿病性腎症、慢性腎疾患、高血圧、低カリウム血症、心筋不整脈、バーター症候群、一次性または二次性の高アルドステロン症状、またはコン症候群の治療または予防において用いるための、化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩を提供する。より具体的には、本発明は、鬱血性心不全、高血圧、糖尿病性腎症、または慢性腎疾患の治療または予防において用いられるための、化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩を提供する。
【0011】
別の実施形態において、本発明は、鬱血性心不全、糖尿病性腎症、慢性腎疾患、高血圧、低カリウム血症、心筋不整脈、バーター症候群、一次性または二次性の高アルドステロン症状、またはコン症候群を治療または予防する医薬を製造するための、化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩の使用を提供する。より具体的には、本発明は、鬱血性心不全、高血圧、糖尿病性腎症、または慢性腎疾患を治療または予防する医薬を製造するための、化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩の使用を提供する。
【0012】
加えて、本発明は、化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩を、1つ以上の薬学的に受容可能な担体、希釈剤、または賦形剤と組み合わせて含む医薬組成物を提供する。より具体的には、本発明は、化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩を含む、鬱血性心不全、高血圧、糖尿病性腎症、または慢性腎疾患を治療または予防するための医薬組成物を、1つ以上の薬学的に受容可能な担体、希釈剤、または賦形剤と組み合わせた状態で提供する。本発明は、また、化合物(I)の合成に有用な新規中間体および工程を包含する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、化合物(I)の薬学的に受容可能な塩および化合物(I)の溶媒和物、または、その薬学的に受容可能な塩に関する。そのため、本願明細書において用いられる場合、用語「化合物(I)」は、その意味の範囲内で化合物の任意の溶媒和物を含む。薬学的に受容可能な塩およびそれらの調製方法の例は、当該技術分野において周知である。例えば、以下の文献を参照のこと。Stahlら,「Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection and Use」,VCHA/Wiley−VCH,(2002);Gould,P.L.,「Salt selection for basic drugs」,International Journal of Pharmaceutics,33:201−217(1986);およびBastinら,「Salt Selection and Optimization Procedures for Pharmaceutical New Chemical Entities」,Organic Process Research and Development,4:427−435(2000)。特に記載すべきは、化合物(I)のトシラート塩により作られたものであるが、化合物(I)の遊離塩基が好ましいことが理解されるべきである。
【0014】
用語「R」および「S」は、キラル中心の特定の構造を示すための有機化学において一般的に用いられるように本願明細書において用いられる。用語「(±)」、「R/S」または「RS」は、キラル中心のラセミ構造を意味する。立体化学における優先順位の部分的なリストおよび議論は、「Nomenclature of Organic Compounds:Principles and Practice」,(J.H.Fletcherら,eds.,1974)」に含まれている。本願明細書において用いられるように、記号
【数1】

は、ページの領域から前方へ突き出る結合を意味し、一方で、記号
【数2】

は、ページの領域から後方へ突き出る結合を意味する。
【0015】
当業者に理解されるように、炭素−炭素または炭素−窒素二重結合を含む分子は、幾何異性体として存在し得る。2つの方法が、特定の異性体を指定するために一般的に用いられる。「シス−トランス」法および「EとZ」法は、二重結合された各原子に結合している基が同一であるか異なるかに依存する。幾何異性の議論および特定の異性体の名前付けは、March,「Advanced Organic Chemistry」,John Wiley & Sons,1992,Chapter4」において見出される。
【0016】
化合物(I)は、医薬組成物の一部として調製され得る。そのため、薬学的に受容可能な担体、希釈剤、または賦形剤と組み合わせた、化合物(I)を含む医薬組成物またはその薬学的に受容可能な塩は、本発明の重要な実施形態である。医薬組成物およびそれらの調製方法の例は、当該技術分野において周知である。例えば、「REMINGTON:THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY(A.Gennaroら,eds.,19thed.,Mack Publishing(1995))」を参照のこと。化合物(I)を含む例示的な組成物としては、例えば、0.5%カルボキシメチルセルロース、0.25%ポリソルベート80および2.7%NaClを含む懸濁液中の化合物(I)、または1%カルボキシメチルセルロースおよび0.25%ポリソルベート80を含む懸濁液中の化合物(I)、1%カルボキシメチルセルロース、0.25%ポリソルベート80、および精製水中0.05%AntiFoam 1510(商標)を含む懸濁液中の化合物(I)、1%ナトリウムカルボキシメチルセルロース、0.25%ポリソルベート80、および精製水中0.05%AntiFoam 1510(商標)を含む懸濁液中の化合物(I)(ジェットミル処理済)、1%ヒドロキシエチルセルロース、10%ビタミンE TPGS(d−アルファ−トコフェロールポリエチレングルコール1000コハク酸エステル)、および精製水中の0.05%AntiFoam 1510(商標)を含む懸濁液中の化合物(I)(ジェットミル処理済)、10%ビタミンE TPGSおよび精製水中の0.05%AntiFoam 1510(商標)を含む懸濁液中の化合(I)(ジェットミル処理済)、ならびに20%Captisol(登録商標)、25mMリン酸緩衝液(pH約2)および1等量(eq.)HClを含む溶液(15mg/ml)中の化合物(I)が挙げられる。しかしながら、本発明の好ましい組成物が、カプセルまたはタブレット中に調製された、化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩を含むことは理解されるだろう。
【0017】
化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩、あるいは、化合物(I)を含む組成物またはその薬学的に受容可能な塩は、経口および非経口経路を含む、化合物を生物学的に利用可能とする任意の経路によって投与され得る。しかしながら、経口経路が好ましいことが理解されるだろう。
【0018】
当業者は、粒径が薬剤のインビボ溶解に影響を及ぼし得、続いて、その薬剤の吸収にも影響を及ぼし得ることを理解するだろう。本願明細書において用いられる「粒径」は、従来技術(例えば、レーザー光散乱、レーザー回折、ミー散乱、沈降場流動分画、光子相関分光法等)によって決定された薬剤の粒子の直径を意味する。薬剤が低い溶解性を有する場合、小さいまたは低減された粒径は溶解を促進し得、よって、その薬剤の吸収を増加させる(Amidonら,Pharm.Research,12;413−420(1995))。粒径を低減または制御する(微粉化(micronization))方法は、従来技術であり、ボールミル粉砕、ピン粉砕(pin milling)、ジェットミル(jet milling)、湿式粉砕などが挙げられる。粒径を制御する別の方法は、ナノ懸濁液中で薬剤を調製することを含む。本発明の特定の実施形態は、化合物(I)または化合物(I)の薬学的に受容可能な塩、あるいは、化合物(I)を含む医薬組成物またはその薬学的に受容可能な塩を含む。ここで、当該化合物または塩は、約10μmよりも小さいd90粒径(すなわち、粒径の90%以下のサイズ)を有する。
【0019】
薬剤が特定の物理的特性を有することが望まれることは当業者により理解されるだろう。具体的には、安定で結晶固体である薬剤が望ましく、それらは、化学合成、精製、保存、および、調製物または投与形態の開発といった従来のパラダイムの影響を特に受けやすい。本願明細書において用いられる「結晶形(Crystalline form)」または「結晶形態(crystal form)」は、化学種の結晶調製物を意味する。
【0020】
特定の結晶形体は、粉末X線回折(XRPD)、分光法(例えば、赤外線(IR)または核磁気共鳴(NMR)分光法)、および、熱的手法(例えば、示差走査熱量測定(DSC)、熱重量分析(TGA)、または示差熱分析(DTA))を含む従来技術を用いて同じ化学種の他の固体形から特徴付けられ得、そして、区別され得る。XRPDが化学種の結晶形態を特徴付けるのに特に有用な手法である一方で、X線パターン中の実際のピーク強度は、同じ結晶形態の分析であっても分析ごとに変化し得、分析されたサンプル、および、使用された装置、溶媒、または手順に依存することが理解されるだろう。加えて、°2θにおいて測定される所与の結晶形態の分析から得られた正確なピーク位置は、分析ごとに変化し得る(たとえば、±0.1°)一方で、ピーク位置の相対パターンは、同じスペクトル間で実質的に維持されることも理解される。
【0021】
本発明は結晶形態の化合物(I)を提供する。より具体的には、本発明は、約10.5、13.0、15.5および19.7の°2θにて特性ピークを有する結晶形態の化合物(1)の遊離塩基(本明細書中の実施例の遊離塩基式I)を提供する。さらに、本発明は、約11.3、12.1、18.8および21.0の°2θにて特性ピークを有する結晶形態の化合物(I)の遊離塩基(本明細書中の実施例の遊離塩基式II)を提供する。
【0022】
本明細書中で使用される用語「患者」は、イヌ、ネコ、ウシ、サル、ウマ、またはヒツジのようなヒトまたは非ヒト哺乳動物を示す。より具体的には、用語「患者」は、ヒトを示す。本明細書中で使用される用語「処置すること」(あるいは「処置する」または「処置」)は、既存の症状または疾患の進行または重篤度を、妨げること、予防すること、抑えること、遅滞させること、停止させること、または逆転させることを含む。本明細書中で使用される用語「予防すること」(あるいは「予防する」または「予防」)は、症状または疾患の発生または出現を、妨げること、抑えること、または阻害することを示す。当業者によって理解されるように、生理的障害が、「慢性」状態、または「急性」症状の発現として存在してもよい。このように、障害の処置は、急性症状の発現および慢性状態の両方を意図する。急性症状の発現において、化合物は症状の発症時に投与され、症状が消失した場合、停止され、一方、慢性状態は疾患の期間全体にわたって処置される。
【0023】
本明細書で使用される用語「有効量」は、患者への単回または複数回の投薬の際に、診断または処置下の患者に所望の効果を提供する、化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩の量または投薬量を示す。有効量は、当業者として、哺乳動物の種;その大きさ、年齢、および一般的健康;関連する特定の疾患;疾患の度合いまたは重篤度;個々の患者の反応;投与された特定の化合物;投与の様式;投与された調製物の生物学的利用能特性;選択された投薬養生法;ならびに何らかの併用薬の使用のような多くの因子を考慮することにより、担当の診断医によって容易に決定されることができる。
【0024】
本発明の方法および使用と併せて使用される場合、本発明の化合物および組成物は、単独、または特定の障害もしくは状態を処置するのに使用される従来の治療薬と共に投与されてもよい。例えば、化合物(I)、または化合物(I)を含む組成物は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤またはアンジオテンシン受容体遮断薬(ARB薬物)などの高血圧、糖尿病性ネフロパシーまたは慢性腎疾患を処置するための従来の薬剤と共に投与されてもよい。本発明の化合物または組成物が、併用薬の一部として使用される場合、化合物(I)、または化合物(I)を含む組成物は、別個に、または併用される治療剤を含む製剤の一部として投与されてもよい。
【0025】
生物学的活性の測定
本明細書中で使用される場合、「Kd」は、リガンド−受容体複合体についての平衡解離定数を示し;「Ki」は、薬物−受容体複合体についての平衡解離定数を示し、かつ、平衡状態で結合部位の半数に結合する薬物の濃度の指標であり;「Kb」は、アンタゴニスト−受容体複合体についての平衡解離定数を示し;「IC50」は、薬剤について考えられうる最大阻害応答の50%を生じる薬剤の濃度、あるいは、受容体へのリガンド結合の50%変位を生じる薬剤の濃度を示し;「EC50」は、薬剤について考えられうる最大応答の50%を生じる薬剤の濃度を示し;そして「ED50」は、薬剤についての最大応答の50%を生じる、投与された治療剤の投薬量を示す。
【0026】
A.ステロイド核ホルモン受容体結合アッセイ
ヒトMR(鉱質コルチコイド受容体)、GR(糖質コルチコイド受容体)、AR(アンドロゲン受容体)、またはPR(プロゲステロン受容体)を過剰発現するヒト胎児腎臓HEK293細胞からの細胞溶解物を、Ki値を決定するための受容体−リガンド競合結合アッセイのために使用する。
【0027】
簡単に言うと、ステロイド受容体競合結合アッセイを、20mM HEPES緩衝液(pH=7.6)、0.2mM EDTA、75mM NaCl、1.5mM MgCl、20%グリセロール、20mMモリブデン酸ナトリウム、0.2mM DTT(ジチオスレイトール)、20μg/mLアプロチニン、および20μg/mLロイペプチン(アッセイ緩衝液)を含有する緩衝液中で行う。典型的には、ステロイド受容体結合アッセイは、1ウェル毎に、放射線標識されたリガンド(例えば、MR結合について0.25nM[H]−アルドステロン、GR結合について0.7nM[H]−デキサメタゾン、AR結合について0.36nM[H]−メチルトリエノロン、およびPR結合について0.29nM[H]−メチルトリエノロン)、および20μg 293−MR溶解物、20μg 293−GR溶解物、22μg 293−AR溶解物、または40μg 293−PR溶解物のいずれかを含む。アッセイは、典型的には96ウェル形式で行う。競合する試験化合物を、約0.01nM〜10μMの範囲の種々の濃度で添加する。非特異的結合を、MR結合について500nMアルドステロン、GR結合について500nMデキサメタゾン、またはARおよびPR結合について500nMメチルトリエノロンの存在下で決定する。結合反応物(140μL)を、4℃で一晩インキュベートし、次いで、70μlの冷炭デキストラン緩衝液(50mlのアッセイ緩衝液毎に0.75gの炭と0.25gのデキストランを含有する)を、各反応物に添加する。プレートを、4℃で、オービタルシェーカー上で8分間混合する。プレートを、次いで、10分間4℃で、3,000rpmで遠心分離する。結合反応混合物の120μlのアリコートを、次いで、別の96ウェルプレートに移し、175μlのWallac Optiphase Hisafe 3(商標)シンチレーション液を各ウェルに添加する。プレートを密封し、オービタルシェーカー上で激しく撹拌する。2時間のインキュベーション後、プレートを、Wallac Microbeta計数器で読み取る。
【0028】
データを、推定IC50および10μMでの阻害率を計算するために使用する。MR結合についての[H]−アルドステロン、GR結合についての[H]−デキサメタゾン、AR結合についての[H]−メチルトリエノロン、またはPR結合についての[H]−メチルトリエノロンに対するKを、飽和結合によって決定する。化合物に対するIC50値を、Cheng−Prusoff方程式を使用してKiに変換する。
【0029】
本質的に上記に記載される手順にしたがって、化合物(I)は、約0.40nMのMR結合アッセイにおけるKiを示したので、化合物(I)がヒトMRの有効なリガンドであることを実証する。さらに、化合物(I)は、約1170nM、669nM、および478nMのそれぞれAR、GRおよびPR結合アッセイにおけるKiを示したので、化合物(I)がMRについての選択的リガンドであることを実証する。
【0030】
B.ステロイド核ホルモン受容体調節の機能的アッセイ
アルドステロンは、鉱質コルチコイド受容体との相互作用によりそれに生理的効果を与える。MRに対するアルドステロン細胞結合の後、リガンド受容体複合体は、それがDNA上のホルモン応答エレメントに結合する細胞核へ移行して、標的遺伝子の発現を開始する。本発明の化合物がステロイドホルモン受容体の活性を調節する(すなわち、作用する、部分的に作用する、部分的に拮抗する、または拮抗する、のいずれか)能力を実証するために、核受容体タンパク質およびホルモン応答エレメント−受容体遺伝子構築物で一時的にトランスフェクトされた細胞における標的遺伝子発現の機能的調節を検出するバイオアッセイを実施する。機能アッセイにおいて利用される溶媒、試薬、およびリガンドは、商業的供給源から容易に利用可能であり、または、当業者によって調製されることができる。
【0031】
1.核ホルモン受容体パネルスクリーン
ヒト胎児腎臓HEK293細胞を、Fugene(商標)などの適切なトランスフェクション試薬を使用して、ステロイドホルモン受容体およびレポーター遺伝子プラスミドでトランスフェクトする。簡単に言うと、ルシフェラーゼレポーターcDNAの上流のプロバシン(probasin)AREおよびTK(チミジンキナーゼ)プロモーターの2つのコピーを含有するレポータープラスミドを、ウイルス性CMV(サイトメガロウイルス)プロモーターを使用して、ヒトアンドロゲン受容体(AR)を構成的に発現するプラスミドでHEK293細胞中にトランスフェクトする。ルシフェラーゼレポーターcDNAの上流のGREおよびTKプロモーターの2つのコピーを含有するレポータープラスミドを、ウイルス性CMVプロモーターを使用して、ヒト糖質コルチコイド受容体(GR)、ヒト鉱質コルチコイド受容体(MR)、またはヒトプロゲステロン受容体(PR)のいずれかを構成的に発現するプラスミドでトランスフェクトする。細胞を、T150cmフラスコにおいて5%活性炭処理済(charcoal−stripped)ウシ胎仔血清(FBS)を有するDMEM培地中でトランスフェクトする。一晩のインキュベーション後、トランスフェクトされた細胞をトリプシン処理し、96ウェル皿において5%活性炭処理済FBSを含有するDMEM培地中に平板培養し、4時間インキュベートし、次いで、約0.01nM〜10μMの範囲の種々の濃度の試験化合物に曝露する。アッセイのためのアンタゴニスト様式において、各々の受容体に対して低濃度のアゴニストを培地に添加する(MRについて0.08nM アルドステロン、GRについて0.25nM デキサメタゾン、ARについて0.66nMのメチルトリエノロン、PRについて0.08nMのプロメゲストン)。試験化合物との24時間のインキュベーション後、細胞を溶解させ、標準的な技術を使用してルシフェラーゼ活性を決定する。
【0032】
データを、EC50値を決定するために4パラメータフィットロジスティック曲線に当てはめる。有効性率(飽和最大応答を有する化合物)または最大刺激率(飽和していない最大応答を有する化合物)を、以下の参照アゴニストで得られた最大刺激と比較して決定する:MRアッセイについて30nM アルドステロン、ARアッセイについて100nM メチルトリエノロン、PRアッセイについて30nM プロメゲストン、およびGRアッセイについて100nM デキサメタゾン。IC50値を、アンタゴニスト様式アッセイのデータを使用して同様に決定する。アンタゴニスト様式において、阻害率を、低濃度のアゴニスト(MRについて0.08nM アルドステロン、GRについて0.25nM デキサメタゾン、ARについて0.66nMのメチルトリエノロン、およびPRについて0.08nMのプロメゲストン)の存在下での試験化合物活性と、試験化合物の非存在下での同じ低濃度のアゴニストによって生じる応答とを比較することによって決定する。
【0033】
本質的に上記に記載される手順に従って、化合物(I)は、MR、PR、GR、およびARアッセイ(アンタゴニスト様式)において、それぞれ、約21nM、924nM、>10000nM、および>10000nMのIC50値を示し、アゴニスト様式において、MR、PR、GR、およびARの各々について>10000nMのEC50を示した。従って、化合物(I)はhMRの選択的機能的アンタゴニストである。
【0034】
2.hMR競合アンタゴニストアッセイ
ヒト胎児腎臓HEK293細胞を、核ホルモン受容体パネルスクリーンについて上記と同じトランスフェクション試薬、プラスミド、プロモーター、レポーター構築物、緩衝液、および手順を使用してヒトMRでトランスフェクトする。トランスフェクトした細胞をトリプシン処理し、5%活性炭処理済FBSを含有するDMEM培地中で96ウェル皿に平板培養し、4時間インキュベートし、次いで、アルドステロンの種々の濃度(10個の希釈物)(約0.001nM〜0.03μMの範囲)に曝露する。hMRを刺激するアルドステロンの能力を、一定濃度の試験化合物の非存在下および存在下で決定し、標準的技術を使用してルシフェラーゼ活性を測定することによってモニターする。次いで、試験化合物Kを、式:Log(DR−1)=Log[アンタゴニスト]−LogKを使用してアンタゴニスト濃度のlogに対するSchild解析プロットログ(用量比−1)を使用して決定することができる(ここで、用量比(DR)は、試験化合物の存在下でのアルドステロンEC50対試験化合物の非存在下でのアルドステロンEC50の比を表す)。
【0035】
本質的に上記に記載される手順に従って、化合物(I)は、MR競合アンタゴニストアッセイにおいて約5.1nMのKを示したので、化合物(I)がヒトMRの有効なアンタゴニストであることを実証する。
【0036】
C.アルドステロン媒介性腎疾患のインビボモデル
雄の腎摘出を行っていないSprague Dawleyラット(240〜280g)を、1週間、収容所の水(house water)および齧歯動物5001食餌を自由に取らせて個々に収容する。順化後、ベースライン24時間尿サンプルを回収し、全尿タンパク質およびクレアチニンを解析する。動物を体重およびベースライン尿タンパク質によって研究群に無作為に選ぶ。ベースライン血清を尾クリップにより取得し、血中尿素窒素(BUN)、クレアチニン、および電解質を解析する。ベースラインサンプルを取得後、コントロール群を除いた全てのラットを、研究期間にわたって6%塩を含む食餌、および0.3%KClを含む飲料水で維持する。コントロール動物を、研究期間にわたって5001食餌および収容所の水で維持し、アルドステロンを与えない。0.75μg/hにて2.5μl/h×28日の0.01%DMSO中のd−アルドステロンを皮下送達するためにAlzaミニポンプを、イソフルラン麻酔下で非コントロール動物(例えば試験化合物群およびビヒクルのみの群)に埋め込む。次いで、1%カルボキシメチルセルロース(CMC)/0.25%ポリソルベート80を含むビヒクル中の試験化合物、またはビヒクルのみを、アルドステロン注入の日後に開始して1日1回強制経口投与(10mL/kg)する。繰り返し尿サンプルを、化合物またはビヒクル単独投与の2および4週間後に回収し、全尿タンパク質およびクレアチニンを解析する。研究終了時に、薬物動態サンプルを8時点(0.5、1、2、3、6、8、12および24時間)で得る。さらに、心臓および腎臓を除去し、心臓および腎臓組織における構造的損傷を検出するためのヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)ならびにマッソントリクローム染色のために10%緩衝化ホルマリン中で固定することができる。血清もまた、血清BUN、クレアチニン、および電解質のさらなる解析のために研究終了時に心穿刺により取得できる。
【0037】
本質的に上記に記載される手順に従って、10mg/kg/日×28日で投与する場合、化合物(I)は、ビヒクル処置した動物と比べて尿タンパク排泄を約60%減少させたので、化合物(I)はインビボでの腎保護活性において有効であることを実証する。
【0038】
化合物が抗高血圧効果を有することを実証するために、以下のモデルを利用することができる。
【0039】
D.アルドステロン媒介性高血圧のインビボモデル
雄の腎摘出を行っていないSprague Dawleyラット(240〜280g)を、1週間、収容所の水および齧歯動物5001食餌を自由に取らせて個々に収容する。順化後、動物に、28日まで2.5μl/hにて0.25μg/hのアルドステロンを皮下送達するためにAlzetポンプを埋め込み、研究期間にわたって6%NaClを含む食餌および0.3%KClを含む飲料水で維持する。遠隔測定装置もまた、動脈圧をモニターするために埋め込む。例えば、各動物からのシグナルを、研究にわたって10分ごとにサンプリングする。24時間にわたって収集した全ての値の平均(±SEM)は、各動物についての日平均動脈血を表す。次いで、ポンプ埋め込み後の日に、1%中間粘度ナトリウムカルボキシメチルセルロース/0.25%ポリソルベート80/0.05%Antifoam1510(商標)を含むビヒクル中の試験化合物、またはビヒクル単独を、1日に1回経口強制投与(10mL/kg)する。
【0040】
本質的に上記に記載される手順に従って、1日に1回(1〜30mg/kg/日)×14日、経口投与した場合、化合物(I)は、ビヒクルと比べて塩の存在下においてアルドステロンの血圧上昇効果を用量依存的に低下させるので、化合物(I)は降圧効果を有することが実証される。
【0041】
化合物が、高カリウム血症の発生または高カリウム血症を生じる可能性を低下させることを実証するために、以下のモデルを利用することができる。
【0042】
E.電解質調節のインビボアッセイ
雄のSprague Dawleyラット(240〜280g)の副腎を摘出し、次いで、手術後、5001齧歯動物食餌および1%NaCl飲料溶液で6日間維持する。次いで、動物を一晩絶食させ、1%生理食塩水飲料水を収容所の自由に取れる水と置き換える。その研究の朝、絶食させた動物を無作為に選んで、絶食させた体重に基づいて処置する。コントロール動物(例えばアルドステロンまたは試験化合物を与えていないもの)に、0.5%CMC/0.25%ポリソルベート80/2.7%NaClを含む10mL/kgの試験化合物ビヒクルを強制経口投与により与え、1mL/kgのアルドステロンビヒクル(0.01%DMSO/水)を皮下注射により与える。ビヒクル動物に同じ試験化合物ビヒクルを強制経口投与により与え、アルドステロン3μg/kgを皮下注射により与える。試験物質はカルボキシメチルセルロース/NaClビヒクルに懸濁する。試験化合物処置群に、カルボキシメチルセルロース/NaClビヒクルに懸濁した試験物質およびアルドステロン3μg/kgを皮下に与える。投与後すぐに、動物を、収容所の水を自由に取ることができる代謝ラックに置く。尿サンプルを用量投与から5時間後に回収し、電解質排泄をアッセイする。データは、副腎を摘出したビヒクル処置した動物に対するlogNa/K排泄比またはNa/K比の%として示す。化合物Iは種々の用量で試験することができ、どの程度化合物が尿のNa/K比(高い血清カリウム濃度の指標)の増加を誘発するかを決定する。
【0043】
本質的に上記に記載される手順に従って、30mg/kgで経口投与した場合、化合物(I)は、ビヒクル処置した動物と比べて尿のNa/K排泄比を約30%のみ増加させ、これは、化合物(I)が、高カリウム血症の発生または高カリウム血症を生じる可能性を低下させ得ることを実証する。
【0044】
さらに綿密にせずに、当業者は、前述の説明を使用して本発明を十分に実施することができると考えられる。以下の調製物および実施例は、さらに詳細に本発明を例示し、化合物(I)の典型的な合成を表すために提供する。試薬および出発物質は容易に入手可能であるか、または当業者により容易に合成され得る。当業者は、実施例に記載される手順から適切なバリエーションを即座に理解するだろう。本発明の化合物名は、概して、ChemDraw Ultra(登録商標)バージョン10.0によって提供される。
【0045】
本明細書中で使用される場合、以下の用語は以下に示す意味を有する:「DMSO」とはジメチルスルホキシドを指し;「DMAC」とはN,N−ジメチルアセトアミドを指し;「tBOC」または「boc」とはtert−ブトキシカルボニルを指し;「TLC」とは薄層クロマトグラフィーを指す。
【0046】
(調製例1)
1−ブロモ−4−フルオロ−2−(2−ヨード−ベンジルオキシ)−ベンゼン
【化2】

N,N−ジメチルホルムアミド(750mL)中の2−ヨードベンジルブロミド(90g,0.29mol)、2−ブロモ−5−フルオロフェノール(57.9g,0.29mol)、および炭酸カリウム(63g,0.46mol)の混合物を、室温で16時間、攪拌する。水(1L)を加え、得られた混合物を1時間攪拌し、固形物を濾過し、水でリンスし、真空オーブン(20mm Hg/60°C)中で乾燥させ、標題の化合物を得る(121g,>100%)。H NMR(400MHz,DMSO−d)δ 5.11(s,2H),6.81(t,1H),7.13(t,1H),7.19(dd,1H),7.46(t,1H),7.59(d,1H),7.62(t,1H),7.93(d,1H)。
【0047】
(調製例2)
3−[2−(2−ブロモ−5−フルオロ−フェノキシメチル)−フェニル]−アクリル酸エチルエステル
【化3】

55〜60°Cにて、1−ブロモ−4−フルオロ−2−(2−ヨード−ベンジルオキシ)−ベンゼン(117.4g,0.29mol)、酢酸ナトリウム(36.1g,0.44mol)、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド(90.3g,0.29mol)、酢酸パラジウム(II)(1.8g,8mmol,3mol%)、およびN−メチルピロリジノン(900mL)の混合物に、N−メチルピロリジノン(200mL)中のアクリル酸エチルの水溶液(34.3mL,0.32mol)を、滴下して加える。この反応混合物を室温まで冷却し、水(2L)およびメチルtert−ブチルエーテル(2L)で処理する。珪藻土に反応物を通し、酢酸エチル(1L)を加え、層を分離させ、水(2L)で洗浄する。無水硫酸ナトリウムで有機部分を乾燥させ、濾過し、濃縮する。得られた固形物をヘキサン(1L)中で懸濁し、2時間冷蔵し、濾過し、低温のへキサン(500mL)で洗浄する。真空オーブン(50°C/20mm Hg)中で乾燥させ、標題の化合物を淡黄色の固形物として得る(104.4g,95%)。LC−MS m/z 381.0[M+H]
【0048】
(代替手順)
窒素下で、無菌の乾燥した100ガロンの反応器に、攪拌しながら、新鮮なN−メチルピロリジノン(72L)、酢酸ナトリウム(2721g,33.17mol),1−ブロモ−4−フルオロ−2−(2−ヨード−ベンジルオキシ)−ベンゼン(9000g,22.11mol)およびテトラブチルアンモニウムブロミド(7128g,22.11mol)を加える。攪拌を開始し、完全な真空下で30分間、反応混合物からガスを抜き、窒素でパージする。反応器を窒素下で大気圧まで戻し、ガス抜きの手順を繰り返す。酢酸パラジウム(II)(180g,2%/重量)を反応混合物に加え、60°Cまで加熱する。60°Cにて、N−メチルピロリジノン(18L)中の溶液として、アクリル酸エチル(2258g,22.55mol)を添加漏斗を介して反応混合物にゆっくりと加える。添加を終えた後、反応混合物を70℃まで加熱する。70℃で最低でも2時間、攪拌を続ける。反応混合物の内部温度を5℃〜10℃に調整する。別個の無菌の適切な大きさの反応器に、水(225L)を充填し、激しい攪拌を開始し、内部温度を5℃以下まで冷却する。最低でも1時間に亘り、反応混合物を激しく攪拌した水に移す。得られた懸濁液を30分から1時間、周囲温度で攪拌する。ポリプロピレンのフィルターパッドで濾過し、薄い紫色の固形物を回収する。水(25L)でフィルターケーキを洗浄し、ラバーダムを用いて、フィルタ上で吸引乾燥する。固形物を、水(45L)と共に反応器へ再充填し、30分から1時間、懸濁液を攪拌する。固形物をポリプロピレンのフィルターパッド上で再濾過し、水(25L)を用いてフィルターケーキを洗浄する。ラバーダムを用いて、フィルタ上で吸引乾燥する。薄い紫色の物質を乾燥したトレイに移し、最低でも24時間、ドラフト中で空気乾燥する。真空下で、50℃未満にて、固形物をオーブンで乾燥させて、標題の化合物を得る(8.4kg,100%)。
【0049】
(調製例3)
(E)−(3−フルオロ−6H−ジベンゾ[b,e]オキセピン−11−イリデン)−酢酸エチルエステル
【化4】

100℃〜110℃にて、6時間、N−メチルピロリジノン(850mL)中で、3−[2−(2−ブロモ−5−フルオロ−フェノキシメチル)−フェニル]−アクリル酸エチルエステル(94g,0.25mol)、酢酸ナトリウム(30g,0.37mol)、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド(81g,0.25mol)、および酢酸パラジウム(II)(1.7g,7mmol,3mol%)の混合物を加熱する。室温まで冷却し、水(1L)で希釈し、珪藻土で濾過し、酢酸エチル(2L)で洗浄する。濾液を分液漏斗に移し、水(500mL)を加え、層を分離する。有機層を水(2×1.5L)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、シリカパッドで濾過し、酢酸エチル(1.5L)で洗浄し、濃縮して乾燥する。残余の固形物にヘキサン(1L)を加え、2時間、冷蔵し、濾過し、ヘキサン(500mL)でリンスし、50°C/20mm Hgで乾燥し、標題の化合物(64.3g,87%)を得る。LC−MS m/z299.0[M+H]
【0050】
(代替手順)
窒素下で、無菌の乾燥した100ガロンの反応器に、攪拌しながら、N−メチルピロリジノン(83.4L)、酢酸ナトリウム(2.706kg,32.98mol)、3−[2−(2−ブロモ−5−フルオロ−フェノキシメチル)−フェニル]−アクリル酸エチルエステル(9.256kg,21.99mol)およびテトラブチルアンモニウムブロミド(7.088kg,21.99)を加える。攪拌を開始し、30分間、完全な真空下で反応混合物をガス抜きし、窒素でパージする。反応器を窒素下で大気圧まで戻し、ガス抜き手順を繰り返す。酢酸パラジウム(II)(167g,2%重量)を反応混合物に加える。100℃から125℃の間で反応物を加熱し、最低でも3時間から5時間、攪拌する。酢酸エチル(100L)を加え、30分間、攪拌する。水(100L)を加え、30分間、攪拌する。攪拌を止め、最低でも1時間、層を分離させる。有機層を回収し、酢酸エチル(50L、次いで25L)で水層を抽出する。有機部分を合わせ、水(40L)、20%の塩化ナトリウム水溶液(2×20L)で洗浄し、各々最低でも30分間、攪拌し、層を分離するために少なくとも30分攪拌する。硫酸マグネシウム(8.0kg)で有機水溶液を乾燥し、活性炭(2.0kg)およびシリカゲル60(2.0kg)を加え、最低でも1時間、攪拌する。濾過して固形物を取り除く。濾液を濃縮し、35℃未満で、真空下で乾燥する。メタノール(20L)を固形の残留物に加え、混合物を加熱して、50℃〜60℃にて、透明な溶液とした。ヘプタン(40L)を加え、20℃から25℃の間まで冷却する。反応混合物を、最低でも3時間、−10℃にまで、さらに冷却を続ける。最低でも12時間、−10℃にて攪拌する。濾過して、残留した固形の生成物を回収し、ヘプタン:メタノール(75:25)(2×20L)の混合液で洗浄する。40℃未満で、真空下で固形物を乾燥し、一定重量にし、標題の化合物を得る(3.7kg,64%)。
【0051】
(代替手順2)
N−メチルピロリジン(250mL)中で、1−ブロモ−4−フルオロ−2−(2−ヨード−ベンジルオキシ)−ベンゼン(50g,0.123mol)、酢酸ナトリウム(30.2g,0.369mol)、テトラブチルアンモニウムブロミド(39.6g,0.123mol)、および酢酸パラジウム(1g)を60℃に加熱する。アクリル酸エチル(12.91g,0.129mol)を、N−メチルピロリジン(50mL)中に、20分間、滴下して加える。添加が完了した後、反応混合物を3時間、145℃まで加熱する。反応混合物を室温まで冷却し、珪藻土で濾過し、メチルt−ブチルエーテル(2×150mL)で固形物を洗浄する。濾液をメチルt−ブチルエーテル(0.5L)で希釈し、水(0.5L)で洗浄する。有機層を分離し、水層をメチルt−ブチルエーテル(2×300mL)で抽出する。合わせた有機層を水(2×200mL)で洗浄する。有機部分を硫酸マグネシウムで乾燥し、炭で処理し、濾過し、メチルt−ブチルエーテル(100mL)で固形物を洗浄し、濃縮する。真空にせずに、55℃のビュッヒフラスコ中に、イソプロパノール(20mL)中で残留物をスラリーにする。攪拌しながら、ヘプタン(100mL)を加える。暗い懸濁液を冷温の部屋で一晩置く。固形物を濾過し、低温のヘプタン/イソプロパノール(9:1,2×100mL)、次いで、ヘプタン(50mL)でリンスし、乾燥し、35℃にて、真空オーブン内で、一定重量にし、標題の化合物を黄褐色の粉末として得る(22.25g,61%)。
【0052】
(調製例4)
(E)−11−ブロモメチレン−3−フルオロ−6,11−ジヒドロ−ジベンゾ[b,e]オキセピン
【化5】

イソプロパノール(725mL)中の(3−フルオロ−6H−ジベンゾ[b,e]オキセピン−11−イリデン)−酢酸エチルエステル(69.5g,0.23mol)の懸濁液に、水(125mL)中の水酸化リチウム(12.0g,0.53mol)の水溶液を加え、70℃まで、4時間、加温する。混合物を40℃まで冷却させ、次いで、氷酢酸(0.44mol,25mL)で処理する。15分間、攪拌した後、N−ブロモスクシンイミド(0.25mol,44g)を加える。泡立ちが続いて起き、温度が45℃まで上昇し、数分後に固形物を形成する。40℃〜45℃で混合物を1時間、攪拌し、室温まで冷却する。水(150mL)中の亜硫酸水素ナトリウム(4.5g)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(150mL)、および水(450mL)を加える。得られた懸濁液を濾過し、低温の1:1のイソプロパノール/水(300mL)でリンスする。固形物を60°C/20mm Hgで一晩乾燥し、標題の化合物を得る(65.8g,93%)。H NMR(400MHz,DMSO−d)δ 4.9−5.4(br d,2H),6.63(dd,1H),6.77(dt,1H),7.13(s,1H),7.32−7.46(m,4H),7.52(dd,1H)。
【0053】
(代替手順)
無菌の乾燥した100ガロンの反応器に、攪拌しながら、窒素下で、イソプロパノール(125L)、(E)−(3−フルオロ−6H−ジベンゾ[b,e]オキセピン−11−イリデン)−酢酸エチルエステル(13.857kg,46.42mol)、および水(54L)中の水酸化リチウム(3.896kg,92.84mol)水溶液を充填する。反応混合物を80℃まで加熱し、2時間、攪拌する。反応混合物を40℃まで冷却し、20分間に亘って40℃から45℃の間で酢酸(5.575kg,92.84mol)を加える。45℃未満で、30分に亘って、N−ブロモスクシンイミド(48.74mol,8.676kg)を少しずつ加える。反応物を室温まで冷却し、最低でも12時間攪拌する。亜硫酸水素ナトリウム水溶液(約37.7L)を加え、15分間、攪拌する。炭酸水素ナトリウム水溶液(約37.7L)を加え、15分間、攪拌する。水(129L)を加え、30分間、攪拌する。得られた固形物を濾過して回収し、イソプロパノール:水(1:1,2×20L)で洗浄する。真空化で、32℃にて固形物を乾燥し、一定の重量とし、標題の化合物を得る(13.8kg,97%)。
【0054】
(調製例5)
(E)−2−((3−フルオロジベンゾ[b,e]オキセピン−11(6H)−イリデン)メチル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン
【化6】

1,4−ジオキサン(250mL)中の(E)−11−(ブロモメチレン)−3−フルオロ−6,11−ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン(15g,49mmol)およびビス(ピナコラト)ジボロン(16g,64mmol)の攪拌した混合物に、酢酸カリウム(15g,150mmol)を加える。窒素で混合物を洗い流し、ジクロロ[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−フェロセン]パラジウム(II)ジクロロメタンアダクト(1.80g,2.46mmol)を加え、一晩、65℃で加熱する。室温まで冷却し、珪藻土で濾過し、酢酸エチルで洗浄し、真空内で濾液を濃縮する。メタノール(200mL)を加え、真空せずにロータリーエバポレータで1時間、混合物を回転し、茶色の固形物を形成する。暗褐色の結晶を濾過により回収し、真空化で一晩乾燥し、標題の化合物を得る(7.28g,42%)。濾液を濃縮し、カラムクロマトグラフィーにより精製し、ヘキサン中の0%〜16%の酢酸エチルで溶出し、標題の化合物を黄色の固形物(3.46g,20%)として得る。反応物の全収率は10.7g(62%)である。H NMR(300MHz,CDCl)δ 7.36(dd,J=8.8,6.8Hz,1H),7.32−7.27(m,4H),6.64−6.57(m,1H),6.48(dd,J=10.3,2.6Hz,1H),5.98(s,1H),5.20(br s,1H),1.15(s,12H)。
【0055】
(代替手順)
機械的攪拌器、熱電温度計、窒素入り口、および還流冷却器を有する50Lの三つ口丸底フラスコを用意する。加熱マントルに配置する。フラスコを、ジオキサン(13.5L)、(E)−11−ブロモメチレン−3−フルオロ−6,11−ジヒドロ−ジベンゾ[b,e]オキセピン(1.600kg,5.24mol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(1.731kg,6.82mol)、酢酸カリウム(823g,8.38mol)、水(20mL)、トリシクロヘキシルホスフィン(29.5g,0.105mol)、およびトリス(ジベンジリデンアセトン)ジ−パラジウム(48g,0.052mol)で充填する。混合物を80℃〜85℃まで加熱する。最低でも6時間、反応物を85〜90℃に維持する。室温まで冷却する。珪藻土(2−3中)のパッドで反応混合物を濾過する。酢酸エチル(2×3.5L)で濾液を洗浄する。50℃〜55℃で、ロータリーエバポレータ上で濾液を濃縮する。ヘプタン(2×3.5L)で共蒸留し、懸濁液を形成する。50℃で、メタノール(2.5L)をスラリーに加える。10〜15分間、攪拌する。スラリーを20〜30分間、−10℃〜0℃に冷却する。固形物を濾過する。回収した固形物を、低温(−10°C)のメタノール(2×1.5L)で洗浄し、次いで、ヘプタン(2×1.5L)で洗浄する。真空化で、周囲温度で固形物を乾燥し、標題の化合物を灰色がかった白色の固形物として得る(1.408kg,76%)。
【0056】
(調製例6)
(2R,4R)−4−ヒドロキシ−ピロリジン−2−カルボン酸塩酸塩
【化7】

Tetrahedron:Asymmetry,14,(2003)3141−3152に実質的に記載された手順に従って、50℃で、無水酢酸(1.437kg,5.65eq)および酢酸(4.225L)の混合物に、30分に亘って、少しずつ、トランス−4−ヒドロキシ−L−プロリン(331g,2.49mol)を加える。90℃で、5.5時間、反応混合物を加熱し、次いで、室温まで冷却する。反応物を室温で一晩攪拌し、次いで濃縮する。2N塩酸(4.57L)中で残留物を溶解し、3時間、還流する。反応混合物を室温まで冷却し、珪藻土で濾過し、真空下で、70℃で約700mLまで濃縮する。物質を室温まで冷却し、一晩静置させる。エーテル(1L)で得られたスラリーを希釈し、結晶を濾過し、エーテルで洗浄し、真空化で乾燥し、標題の化合物(340g)を得る。固形物を高温のエタノール(2.5L)で溶解し、冷却し、35℃でゆっくりと攪拌し、エーテル(2.5L)をゆっくりと、少しずつ、1時間に亘って加える。2時間攪拌し、得られた白色の固形物を濾過し、一晩、真空オーブン内で乾燥し、標題の化合物(270.6g,65%)を得る。[α]D20+12.0(メタノール中、c=1.0)。H NMR(400MHz,DO),δ 2.34−2.39(m,1H),2.45−2.53(m,1H),3.38(dd,1H),3.45(d,1H),4.50(dd,1H),4.58(br s,1H)。
【0057】
(調製例7)
(2R,4R)−4−ヒドロキシ−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸1−tert−ブチルエステル2−メチルエステル
【化8】

塩化チオニル(233mL,3.10mol)を、0℃で、窒素雰囲気下で、乾燥したメタノール(3.5L)中の(2R,4R)−4−ヒドロキシ−ピロリジン−2−カルボン酸塩酸塩(355g,2.12mol)の溶液に、滴下して加える。完全に加えた後、反応混合物を室温まで加温し、6時間、攪拌する。減圧下で反応混合物を濃縮し、対応するメチルエステル塩酸塩をろう状の固形物として得る。乾燥したジクロロメタン(3.5L)中で、0℃にて、固形物を懸濁し、トリエチルアミン(640mL,4.66mol)を注意深く、30分間、加え、さらに30分間、攪拌する。N,N−ジメチルアミノピリジン(39g,0.32mol)および二炭酸ジ−tert−ブチル(500g,2.25mol)を連続して加える。反応混合物を室温まで加温し、18時間攪拌する。水溶液を、水(4L)、飽和炭酸水素ナトリウム(4L)、およびブライン(4L)で抽出する。有機層をエチレンジアミン(8mL)で処理し、15分間攪拌し、10%のクエン酸水溶液(4L)で逆抽出する。無水硫酸ナトリウムで有機層を乾燥し、濾過し、真空下で濃縮し、黄色の油状物(484g)を得て、これを一晩凝固する。メチルt−ブチルエーテル(1L)中で溶解し、少量まで濃縮する。ヘキサン(2L)を加え、混合物を1時間置く。白色の固形物を濾過し、ヘキサンで洗浄する。白色の固形物(20mm Hg/60°C)を一晩乾燥し、標題の化合物(354g,68%)を得る。[α]D20+56.3(メタノール中、c=1.0)。H NMR(400MHz,CDCl)δ 1.43(s,9H),1.46(s,9H),2.05−2.10(m,2H),2.26−2.35(m,2H),3.48−3.56(m,2H),3.58−3.61(m,1H),3.64−3.70(m,2H),3.77(s,3H),3.79(s,3H),4.27−4.29(m,1H),4.34−4.38(m,2H)。
【0058】
(調製例8)
(2R,4S)−4−ブロモ−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸1−tert−ブチルエステル2−メチルエステル
【化9】

0〜5℃で、ジクロロメタン(3.2L)中の(2R,4R)−4−ヒドロキシ−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸1−tert−ブチルエステル2−メチルエステル(320g,1.30mol)および四臭化炭素(540g,1.94mol)(ドライアイス/ジクロロメタンバス)の溶液に、トリフェニルホスフィン(1.95mol,514g)を少しずつ30分に亘り加え、室温で4時間攪拌する。エタノール(3.2L)を加え、さらに2時間攪拌する。反応物を18Lのカーボイに移し、沈殿が生じるまでエーテル(8L)を加える。混合物を一晩攪拌する。固形物を濾過し、エーテル層を濃縮する。ジクロロメタン中の油性の残留物を溶解し、生成物がTLCによって検出できなくなるまで、ジクロロメタンで溶出するシリカプラグで濾過する。ジクロロメタン層を濃縮し、ヘキサン(4L)中の5%酢酸エチルで処理し、白色の固形物を形成する。混合物を、ヘキサン中の5%酢酸エチルで溶出するシリカプラグに通し、所望の生成物を含む画分のみを回収する。溶液を濃縮し、ヘキサン(2L)中の5%酢酸エチルで溶解し、ヘキサン中の5%酢酸エチルで溶出する1kgのシリカゲルパッドで精製し、標題の化合物を黄色がかった油状物(372.4g,93%)として得る。[α]D20+53.6(メタノール中、c=1.0).H NMR(400MHz,DMSO−d)δ 1.33および1.39(2つのs,9H),2.40(m,1H),2.53(m,1H),3.35(m,1H),3.66(s,3H),3.80(m,1H),4.35(q,1H),4.73(m,1H)。
【0059】
(調製例9)
(2R,4R)−4−アジド−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸1−tert−ブチルエステル2−メチルエステル
【化10】

N,N−ジメチルホルムアミド(2.5L)中のアジ化ナトリウム(157g,2.39mol)を(2R,4S)−4−ブロモ−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸1−tert−ブチルエステル2−メチルエステル(370g,1.20mol)に加え、70℃〜75℃、16時間、窒素下で加熱する。室温まで冷却し、水(5L)で希釈し、酢酸エチル(3L)で抽出する。ブライン(2L)で洗浄する。ブライン層を酢酸エチル(3L)で抽出し、有機層を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濃縮し、油状物(324.5g)を得る。物質をエーテル(2L)中で溶解し、水(2×2L)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濃縮し、261.2gの暗黄色の油状物を得る。水層をエーテル(2×2L)で逆抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濃縮して、さらに7.3gの生成物を得る。全収率は268.5g(83%)である。[α]D20+39.5(メタノール中、c=1.0)。HNMR(400MHz,CDCl)δ 1.40−1.41(s,9H),2.09−2.13(m,1H),2.40−2.44(m,1H),3.37−3.45(m,1H),3.61−3.65(m,1H),3.67−3.69(s,3H),4.09−4.15(m,1H),4.25−4.38(m,1H)。
【0060】
(調製例10)
(2R,4R)−4−アジド−2−ヒドロキシメチル−ピロリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル
【化11】

水素化ホウ素リチウム(8.50g,351mmol)を、窒素下で、−30℃にて、エーテル(1L)中の(2R,4R)−4−アジド−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸1−tert−ブチルエステル2−メチルエステル(95g,351mmol)の溶液に加える。温度を1.5時間、0℃まで上昇させ、さらに2時間、攪拌する。−70℃まで冷却し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(1L)を滴下して加える。室温まで加温し、層を分離させ、エーテル(1L)で水溶層を抽出する。エーテル層を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濃縮する。得られた物質を高真空下で乾燥し、黄色の油状物(82g,96%)を得る。[α]D20+20.3(メタノール中、c=1.0).H NMR(400MHz,DMSO−d)δ 1.38(s,9H),1.99(brs,1H,OH),2.20(m,1H),3.34(m,1H),3.50−3.78(m,1H),4.29(m,1H),4.78(m,1H)。
【0061】
(調製例11)
(2R,4R)−4−アミノ−2−ヒドロキシメチル−ピロリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル
【化12】

15psiの水素にて、室温で16時間、メタノール(2.3L)中の(2R,4R)−4−アジド−2−ヒドロキシメチル−ピロリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(225g,0.93mol)および炭素上の10%のパラジウム(22.5g,トルエンで湿らせてある)の混合物を水素化する。触媒を濾過し、濾液を濃縮し、標題の化合物を油状物(198g,92%)として得る。H NMR(400MHz,DMSO−d)δ 1.38(s,9H),1.58(m,1H),2.16(m,1H),2.95(m,1H),3.20−3.58(m,6H),3.61(m,1H),3.65(brs,1H)。
【0062】
(調製例12)
(2R,4R)−4−(4−ブロモ−2−ニトロ−フェニルアミノ)−2−ヒドロキシメチル−ピロリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル
【化13】

激しく攪拌しつつ、窒素下で、16時間、酢酸エチル(2L)中の(2R,4R)−4−アミノ−2−ヒドロキシメチル−ピロリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(198g,0.92mol)、5−ブロモ−フルオロニトロベンゼン(224g,0.98mol)、トリエチルアミン(273mL,1.96mol)の混合物を還流する。室温まで冷却し、ブラインで洗浄する。ブライン層を酢酸エチル(1L)で逆抽出し、有機層を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濃縮する。暖かい酢酸エチル(2L)で得られた固形物を溶解し、約500mLまで濃縮し、結晶を形成し始めさせる。溶液をゆっくりとヘキサン(2L)で処理し、混合物を室温で2時間、静置させる。黄色の固形物を濾過により回収し、ヘキサンで洗浄し、40°C/20mm Hgで乾燥し、227gの所望の生成物を得る。濾液を減圧下で濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(2:3:5酢酸エチル/ジクロロメタン/ヘプタンが2:3酢酸エチル/ヘプタンまで徐々に増加する)で精製し、さらに54gの所望の生成物を得る。全収率は281g(70%)である。[α]D20−81(メタノール中、c=1.0)。H NMR(400MHz,DMSO−d)δ 1.40(s,9H),1.90(m,1H),2.48(br s,1H),3.14(m,1H),3.45(m,1H),3.63(m,1H),3.81(m,2H),4.29(m,1H),5.12(m,1H),7.08(d,1H),7.65(dd,1H),8.15(d,1H),8.57(brd,1H,NH)。
【0063】
(調製例13)
(2R,4R)−[4−(4−ブロモ−2−ニトロ−フェニルアミノ)−ピロリジン−2−yl]−メタノール、塩酸塩
【化14】

ジクロロメタン(400mL)中の(2R,4R)−4−(4−ブロモ−2−ニトロ−フェニルアミノ)−2−ヒドロキシメチル−ピロリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(125.5g,0.301mol)の溶液に、ジオキサン(800mL)中の4N塩酸を加え、室温で4時間、攪拌する。濾過により沈殿物を回収し、エーテルで洗浄し、20mmHg/60°Cで乾燥し、標題の化合物(105.2g,99%)を得る。[α]D20−89.6(メタノール中、c=1.0)。H NMR(400MHz,DMSO−d)δ 1.80−1.85(m,1H),2.54−2.59(m,1H),3.43−3.51(m,3H),3.56−3.63(m,1H),3.69−3.72(m,2H),4.50−4.51(m,1H),5.60(brs,1H),7.10(d,1H),7.65(dd,1H),8.14(d,1H),8.95(br s,1H),9.91(br s,1H)。
【0064】
(調製例14)
(7R,8aR)−7−(4−ブロモ−2−ニトロ−フェニルアミノ)−テトラヒドロ−ピロロ[2,1−c][1,4]オキサジン−4−オン
【化15】

テトラヒドロフラン(375mL)および水(376mL)中の(2R,4R)−[4−(4−ブロモ−2−ニトロ−フェニルアミノ)−ピロリジン−2−イル]−メタノール、塩酸塩(54.5g,155mmol)の攪拌溶液に、pHが10〜12となるまで、5N水酸化ナトリウムを滴下して加える。30分に亘り、滴下漏斗を介して、塩化クロロアセチル(27.3mL,337mmol)を加える。別の滴下漏斗を用いて、内部pHが8〜12を維持するような速度にて、酸塩化物を加えている間、5N水酸化ナトリウムを加える。6時間攪拌し、濾過して形成された固形物を回収し、水で洗浄する。減圧下で濾液の有機成分を取り除き、濾過により固形物を回収する。2つの固形物のバッチを合わせ、60°C/20mm Hgで乾燥し、51.4gを得る。固形物をジクロロメタン(1.5L)中の2%メタノールで懸濁し、1時間、40℃でロータリーエバポレータ上で回転する。沈殿物を濾過により回収(11g)し、取り除く。濾液をジクロロメタンで溶出するシリカゲルプラグに通し、溶出液を濃縮し、標題の化合物を橙黄色の固形物として得る(32.8g,60%)。H NMR(400MHz,DMSO−d)δ 1.68(m,1H),2.42(m,1H),3.37(m,1H),3.49(m,1H),3.75−3.91(m,3H),4.10(m,2H),4.48(m,1H),7.18(d,1H),7.64(dd,1H),7.93(d,1H),8.19(s,1H)。
【0065】
(調製例15)
(7R,8aR)−(4−ブロモ−2−ニトロ−フェニル)−(ヘキサヒドロ−ピロロ[2,1−c][1,4]オキサジン−7−イル)−アミン
【化16】

(7R,8aR)−7−(4−ブロモ−2−ニトロ−フェニルアミノ)−テトラヒドロ−ピロロ[2,1−c][1,4]オキサジン−4−オン(32.1g,90.1mmol)を無水テトラヒドロフラン(450mL)に加え、0℃から−5℃で冷却する。ボラン−硫化ジメチル合成物(26mL,0.279mol)を10分に亘って加える。混合物を加熱し、3時間、還流する。氷槽で反応混合物を冷却し、注意深くメタノール(450mL)を滴下して加える。4N塩酸(450mL)を加え、2時間還流する。約40℃まで冷却し、5N水酸化ナトリウムを注意深く滴下して加えて、pHを10〜12に調節する。減圧下で有機溶媒を取り除く。水(1.2L)で水層を希釈し、ジクロロメタン(1.2L)で抽出する。硫酸ナトリウムで有機層を乾燥し、濾過し、濃縮し、油状物を得る。この時点で、油状物を、以前の同一の調製(30.2gのアミド出発物質で開始)からの粗物質と混合する。油状物を塩化メチレンで溶出するシリカゲルプラグに通し、より高いRf成分を取り除く。ジクロロメタン中の1%のメタノールで溶出し、濃縮し、固形物を得る(57.8g)。エーテル(1L)中に固形物を懸濁し、一晩静置させる。濾過による固形物を回収し、少量のエーテルで洗浄し、47.5gを得る。濾液を濃縮し、エーテル(100mL)中に懸濁し、室温で2時間静置させる。さらに3.1gの所望の生成物を濾過して回収する。濾液を濃縮して、シリカプラグ濾過により残留物を精製し、さらに2.9gのオレンジ色の固形物を得る。全ての固形物を混合し、標題の化合物(53.5g,89%)を得る。[α]D20−36(DMSO中、c=1.0)。H NMR(400MHz,DMSO−d)δ 1.21(m,1H),2.06(m,1H),2.18(m,1H),2.42(m,2H),2.87(d,1H),2.95(d,1H),3.18(t,1H),3.42(t,1H),3.73(d,1H),3.85(d,1H),4.19(m,1H),7.03(d,1H),7.66(dd,1H),8.01(d,1H),8.18(s,1H).LC−MSm/z342.0,344.0(1:1アイソトープ比)[M+H]
【0066】
(調製例16)
(E)−[4−(3−フルオロ−6H−ジベンゾ[b,e]オキセピン−11−イリデンメチル)−2−ニトロ−フェニル]−((7R,8aR)−ヘキサヒドロ−ピロロ[2,1−c][1,4]オキサジン−7−イル)−アミン
【化17】

フラスコにテトラヒドロフラン(1L)およびメタノール(500mL)中の(7R,8aR)−(4−ブロモ−2−ニトロ−フェニル)−(ヘキサヒドロ−ピロロ[2,1−c][1,4]オキサジン−7−イル)−アミン(50.9g,0.149mol)、(E)−2−((3−フルオロジベンゾ[b,e]オキセピン−11(6H)−イリデン)メチル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(57.5g,0.163mol)、トリフェニルホスフィン(10.1g,39mmol)およびナトリウムメトキシド(19.7g,0.346mol)を充填する。混合物に窒素を通して30分間、泡立てる。酢酸パラジウム(II)(3.00g,13mmol)を加え、さらに30分間、混合物に窒素を通して泡立てる。16時間、窒素下で還流(60℃)にて、加熱する。室温まで冷却し、珪藻土で濾過し、真空内で濃縮し、固形物を得る。1:1の酢酸エチル/ブライン(2L)中で溶解し、珪藻土のパッドに通す。パッドを1:1の酢酸エチル/ブライン(2×1L)で洗浄し、次いでジクロロメタン(4×1L)中の10%のメタノールで洗浄する。層を分離し、有機相を混合する。硫酸ナトリウムで有機部分を乾燥し、濾過し、濃縮し、油状物を得る。ジクロロメタン中で油状物を溶解し、シリカゲルパッドに通す。より高いRf TLC成分が取り除かれるまで、ジクロロメタンでパッドをリンスする。ジクロロメタン中の1%のメタノールで溶出し、真空内で濃縮し、発泡体を得る。酢酸エチル(2L)中で溶解し、約200mLまで濃縮する。ヘキサン(1.5L)を加え、懸濁液を室温で1時間、静置させる。濾過により、オレンジ色の固形物を回収し、50°C/20mm Hgで乾燥し、標題の化合物(53g,73%)を得る。[α]D20−26(DMSO中、c=1.0)。H NMR(400MHz,DMSO−d)δ 1.08(m,1H),2.02(m,1H),2.17(m,1H),2.41(m,2H),2.88(m,1H),3.17(m,1H),3.40(m,1H),3.73(d,1H),3.82(d,1H),4.12(m,1H),5.02(broad s,1H),5.59(broads,1H),6.60(d,1H),6.81(m,2H),6.96(s,1H),7.05(m,2H),7.28(t,1H),7.38(t,1H),7.60(m,2H),7.84(s,1H),8.05(d,1H).LC−MS m/z458.3[M+H]
【実施例】
【0067】
(実施例1)
5−((E)−(3−フルオロジベンゾ[b,e]オキセピン−11(6H)−イリデン)メチル)−1−((7R,8aR)−ヘキサヒドロ−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]オキサジン−7−イル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2(3H)−オン(式I)
【化18】

室温で、2時間、50psiにて、テトラヒドロフラン(450mL)中の(E)−[4−(3−フルオロ−6H−ジベンゾ[b,e]オキセピン−11−イリデンメチル)−2−ニトロ−フェニル]−((7R,8aR)−ヘキサヒドロ−ピロロ[2,1−c][1,4]オキサジン−7−イル)−アミン(52g,0.107mol)、トリエチルアミン(33mL,0.237mol)および5%の炭素上の白金(18g)の混合物を水素化する。触媒を濾過し、テトラヒドロフランでリンスし、濃縮し、茶色の発泡体を得る。無水テトラヒドロフラン(500mL)中で発泡体を溶解し、氷槽中で冷却する。トリホスゲン(31.5g,0.106mol)を、テトラヒドロフラン(450mL)中に、30分に亘って滴下して加え、16時間室温で攪拌する。溶液を濃縮し、ジクロロメタン中の5%メタノールで溶解し、短いシリカゲルプラグで精製する。濃縮して茶色の固体を得る。飽和炭酸水素ナトリウム(1.5L)中で固体を懸濁し、ロータリーエバポレータ上で1時間攪拌する。濾過し、真空内で乾燥する。暖かい1:1メタノール/ジクロロメタン(約6L)中に溶解し、ポリ(4−ビニルピリジン)2%の架橋樹脂(170g)で処理する。30分間、スラリーを攪拌し、珪藻土で濾過する。濾液を約1.5L体積に濃縮し、得られた固体を濾過して回収する。80°C/20mm Hgで一晩乾燥し、標題の化合物(38.1g,74%)を白色の固形物として得る。[α]D20−20.5(DMSO中、c=1.0)。H NMR(400MHz,DMSO−d)δ 1.48(m,1H),2.02(m,1H),2.19(m,2H),2.52(m,1H),2.91(d,1H),3.03(d,1H),3.25(t,1H),3.50(t,1H),3.79(d,1H),3.88(d,1H),4.95(m,1H),5.03(broad s,1H),5.60(broad s,1H),6.59(m,2H),6.78(m,2H),6.97(s,1H),7.02(d,1H),7.25(t,1H),7.38(t,1H),7.48−7.61(m,3H),10.72(s,1H,NH).LC−MS m/z 484.0[M+H]
【0068】
実施例1に記載されるように調製した物質を用い、X線粉末回折パターンを得、約10.5、13.0、15.5、および19.7の特徴的なピーク位置(°2θ値)を有する結晶形体(式I)を明らかにする。物質の融点特徴をDSCによって測定する。融点開始=298.9°C。
【0069】
(実施例1(a))
5−((E)−(3−フルオロジベンゾ[b,e]オキセピン−11(6H)−イリデン)メチル)−1−((7R,8aR)−ヘキサヒドロ−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]オキサジン−7−イル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2(3H)−オン(式II)
117.7mgの5−((E)−(3−フルオロジベンゾ[b,e]オキセピン−11(6H)−イリデン)メチル)−1−((7R,8aR)−ヘキサヒドロ−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]オキサジン−7−イル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2(3H)−オン(実施例1に記載されるように調製する)をバイアルに加え、溶解するまで、1000rpmで、攪拌プレート上で70℃で2.5mLのDMACで混合する。濁るまで水をサンプルにゆっくりと加え、次いで熱を取り除く。白色の固形物が溶液から沈殿するまで30分間攪拌を続ける。濾過により固形物を回収し、40℃で一晩乾燥する。
【0070】
実施例1(a)に記載されるように調製した物質を用い、X線粉末回折パターンを得、約11.3、12.1、18.8、および21.0の特徴的なピーク位置(°2θ値)を有する結晶形態(式II)を明らかにする。
【0071】
(代替手順)
(i)分液漏斗中の5%MeOH/CHCl溶液(5×100mL)で、1NのNaOH(200mL)中の5−((E)−(3−フルオロジベンゾ[b,e]オキセピン−11(6H)−イリデン)メチル)−1−((7R,8aR)−ヘキサヒドロ−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]オキサジン−7−イル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2(3H)−オン.4−メチルベンゼンスルホン酸塩(10.2g,15.55mmoles)(以下の実施例2に記載されるように実質的に調製する)の懸濁液を抽出する。ブラインで有機層を洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、プリーツのあるフィルタで濾過し、真空内で濃縮する。一晩、50℃の真空オーブンで残留物を乾燥し、白色の固形物(6.71g,90%回収)を得る。LC−MS(4min):RT=1.87分、100%M+H=484.2。
【0072】
(ii)上述の代替手順(i)からの物質の0.1gのサンプルを、1mLのDMAcで処理し、30分間、80℃の油浴中において得られた懸濁液を加熱する。15mLのAcCNを溶液に加え、80℃の油浴で30分間加熱し、次いで、攪拌しつつ室温まで冷却する。固形物を濾過して回収し、次いで50°Cの真空オーブンで一晩乾燥し、74.5mgの生成物を回収する。
【0073】
(iii)上述の代替手順(i)からの物質の0.1gのサンプルを、20mLのAcCNで処理し、得られた懸濁液を30分間、80℃の油浴中で加熱し、次いで、攪拌しつつ室温まで冷却する。固形物を濾過して回収し、次いで、一晩、50℃の真空オーブン中で乾燥し、81.8mgの生成物を回収する。
【0074】
(iv)上述の代替手順(i)からの物質の0.1gのサンプルを、20mLのIPAで処理し、得られた懸濁液を30分間、80℃の油浴中で加熱し、次いで、攪拌しつつ室温まで冷却する。固形物を濾過して回収し、次いで、一晩、50℃の真空オーブン中で乾燥し、92.8mgの生成物を回収する。
【0075】
上述の代替手順(i)に記載されるように調製した物質を用い、X線粉末回折パターンは、約11.3、12.1、18.8、および21.0(式II)の特徴的なピーク位置(°2θ値)を有する結晶形態を明らかにする。
【0076】
(実施例2)
5−((E)−(3−フルオロジベンゾ[b,e]オキセピン−11(6H)−イリデン)メチル)−1−((7R,8aR)−ヘキサヒドロ−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]オキサジン−7−イル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2(3H)−オン.トシレート塩
【化19】

30分間、40℃の油浴中のジメチルアセトアミド(50mL)中のp−トルエンスルホン酸一水和物(51.70mmol,9.98g)の溶液を加熱する。均質な溶液に、5g部中の5−((E)−(3−フルオロジベンゾ[b,e]オキセピン−11(6H)−イリデン)メチル)−1−((7R,8aR)−ヘキサヒドロ−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]オキサジン−7−イル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2(3H)−オン(51.70mmol,25.00g)を、激しく攪拌して加える。粉末漏斗およびコンテナボトルをジメチルアセトアミド(25mL)で洗浄し、懸濁液を40℃で、30分間、固形物が完全に溶解するまで攪拌する。30℃で一晩、窒素ガス流中の淡褐色の均質な溶液を静置させる。残留物を、アセトニトリル(200mL)で希釈し、20分間、水浴中で超音波処理する。3時間、60℃の油浴中で白色の固形物の懸濁液を加熱する。室温まで冷却し、濾過によって固形物を回収する。2日間、40℃で真空オーブン中において乾燥し、標題の化合物(32.88g,97%)を得る。H NMR(400MHz,DMSO−d)δ 2.00(m,0.5H),2.29(m,0.5H),2.44(s,3H),2.48(m,0.5H),3.1−4.2(m,7H),5.10(broad m,2H),5.55(broad s,1H),6.60(dd,1H),6.67(d,1H),6.78(m,2H),6.95(m,3H),7.08(d,2H),7.21(t,1H),7.33(t,1H),7.43(d,2H),7.57(m,2H),9.65(s,0.5H),10.25(s,0.5H),10.98(s,0.5H),11.14(s,0.5H).LC−MS m/z 484.2[M+H]
【0077】
(代替手順)
(a)ジメチルアセトアミド(2mL)中に85.8mg(0.177mmol)の5−((E)−(3−フルオロジベンゾ[b,e]オキセピン−11(6H)−イリデン)メチル)−1−((7R,8aR)−ヘキサヒドロ−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]オキサジン−7−イル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2(3H)−オン(実施例1において記載されるように実質的に調製する)を溶解する。p−トルエンスルホン酸一水和物(43mg,0.226mmol)を加え、混合物を透明な溶液となるまで攪拌する。アセトニトリル(7mL)を加え、蒸発し、透明な油状物を得る。水(2mL)を加え、サンプルを超音波処理する。白色の固形物が沈殿した後、サンプルを10分間、スラリーにする。濾過して乾燥し、固形物を得る。
【0078】
(b)2.5mLのDMAC中に98.0mgの5−((E)−(3−フルオロジベンゾ[b,e]オキセピン−11(6H)−イリデン)メチル)−1−((7R,8aR)−ヘキサヒドロ−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]オキサジン−7−イル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2(3H)−オン(実施例1に記載されるように実質的に調製する)を溶解する。1.2等量のp−トルエンスルホン酸一水和物を加え、溶液が透明になり、色がなくなるまで攪拌する。2mLの88%のアセトンを加え、次いで16mLの水を加え、次いで、蒸発させて溶媒を取り除く。得られた透明な油状物に、1mLのアセトンを加え、超音波処理する。得られたゲルを乾燥し、灰色がかった固形物を得る。固形物を再び、1:10のTHF:H2Oで溶解し、蒸発させ、透明な油状物を得て、次いで、5mLのアセトニトリルで超音波処理する。白色の固形物が沈殿した後、サンプルを一晩、スラリーにする。濾過して乾燥させ、固形物を得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
5−((E)−(3−フルオロジベンゾ[b,e]オキセピン−11(6H)−イリデン)メチル)−1−((7R,8aR)−ヘキサヒドロ−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]オキサジン−7−イル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2(3H)−オンである化合物、またはその薬学的に受容可能な塩。
【請求項2】
5−((E)−(3−フルオロジベンゾ[b,e]オキセピン−11(6H)−イリデン)メチル)−1−((7R,8aR)−ヘキサヒドロ−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]オキサジン−7−イル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2(3H)−オンである請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
結晶形である請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
約11.3、12.1、18.8、および21.0の°2θにおける特性ピークを有する結晶形の請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
治療に用いられる請求項1から4のいずれか1項に記載の化合物または塩。
【請求項6】
鬱血性心不全、高血圧、糖尿病性腎症、または慢性腎疾患の治療に用いられる請求項1から4のいずれか1項に記載の化合物または塩。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか1項に記載の有効量の化合物または塩を、それを必要とする患者に対して投与する工程を含む、鬱血性心不全、高血圧、糖尿病性腎症、または慢性腎疾患を治療する方法。
【請求項8】
有効量の5−((E)−(3−フルオロジベンゾ[b,e]オキセピン−11(6H)−イリデン)メチル)−1−((7R,8aR)−ヘキサヒドロ−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]オキサジン−7−イル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2(3H)−オンを、それを必要とする患者に対して投与する工程を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1から4のうちいずれか1項に記載の化合物または塩を、1つ以上の薬学的に受容可能な担体、希釈剤、または賦形剤と組み合わせて含む医薬組成物。
【請求項10】
5−((E)−(3−フルオロジベンゾ[b,e]オキセピン−11(6H)−イリデン)メチル)−1−((7R,8aR)−ヘキサヒドロ−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]オキサジン−7−イル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2(3H)−オンを、1つ以上の薬学的に受容可能な担体、希釈剤、または賦形剤と組み合わせて含む、請求項9に記載の医薬組成物。

【公表番号】特表2012−520302(P2012−520302A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−554083(P2011−554083)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際出願番号】PCT/US2010/026138
【国際公開番号】WO2010/104721
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(594197872)イーライ リリー アンド カンパニー (301)
【Fターム(参考)】