説明

銀を含有する熱電気的な合成物

本発明は、一般式がAg1−xM’Q2+mで示される、熱電気的な物質に関するものである。MはPb,Sn,Ca,Sr,Baなどの2価の遷移金属とそれらの組み合わせのうちから選択されるものであり、M’はBi,Sbとそれらの組み合わせのうちから選択されるものであり、QはSe,Te,Sとそれらの組み合わせから選択されるものである。また、8≦m≦24であり、0.01≦x≦0.7である。発明の実施例では、この複合物はn型半導体の性質を示した。実施例では、xは0.1から0.3であり、mは10から18である。複合物は、Ag,M,M’,Qの原料を化学式通り反応容器に加え、原料を加熱し、充分な時間溶解し、反応物を冷却する速度を調整して冷却することによって合成した。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔スポンサーシップ〕
本発明はOffice of Naval Research の提供を受けている。交付金番号はGAAG 55-97-1-0184およびN00014-01-1-0828である。本発明に対して、政府も権利を有している。
【0002】
〔発明の属する技術分野〕
本発明は熱電気的な物質に関するものである。本発明は特に、様々な熱電気的な装置に使うことのできる銀を含有する半導体物質に関するものである。
【0003】
〔従来技術および課題〕
発電を行ったり、冷却や加熱を行ったりするための、熱電気的な物質を用いる様々な熱電気的な装置が知られている。熱電気的な装置はさまざまな応用範囲において、明確に有利な点を有する。例えば、熱電気的な物質を基にした発電機は、伝統的な発電機のようには可動部品を用いない。この特徴は、可動部品の機械的な磨耗と、これに対応する停電を回避することができることによって、熱電気的な装置の信頼性を高めている。この特徴はメンテナンスの費用を抑えることができる。熱電気的な装置はまた、非常に厳しい環境、例えば人が介在することのできない高温度条件(900℃など)で動作することが可能である。唯一熱電気的な物質のみが持つ特徴点は環境にやさしいという点である。即ち産業排熱や自然にある熱源が用いられて発電を行うことができる。
【0004】
熱電気的な物質とは、熱エネルギーを電気エネルギーに変換できる、若しくは電気エネルギーを熱エネルギーに変換できる金属、半金属、半導体物質などである。エネルギー変換による、一般的な熱電気的効果は、ゼーベック効果またはペルチェ効果である。ゼーベック効果は熱エネルギーを電気エネルギーに変換する現象であり、熱電気的な発電に用いられている。熱電気的な物質が温度差のあるところに置かれると、ゼーベック効果によって熱電気的な物質を横切って電圧が生じ、外部の負荷を駆動することができる。これと対照的な効果が、ペルチェ効果である。ペルチェ効果は、熱電気的な冷却に用いられ、また二つの異なる物質の接点に電流を流す事によって熱を吸収することとも関係している。電圧をかけると、熱電気的な半導体はペルチェ効果の長所によって、温度差を発生させるように外部負荷を加熱若しくは冷却するように動作する。
【0005】
ゼーベック効果およびペルチェ効果はさまざまな物質で広く見られる現象であるが、効果の強さ(ゼーベック係数 S=dV/dT、Vは電圧、Tは温度)は殆どの物質でとても小さく、実際的な応用はできなかった。幾つかの物質のみが、重要な熱電気的効果を生じることが知られていた。熱電気的な物質のあるものは半導体であり、あるものは半金属である。これらの物質は2種類のキャリアーを用いて電気を導く。そのキャリアーは電子とホールとである。結晶中の原子が、より大きい原子価の原子と置き換えられたとき、置き換えられた原子からの余分な電子は化学結合ボンドには必要なく、結晶中を動き回ることができる。このような物質をn型半導体という。一方、もし結晶中の原子が少ない原子価の原子と置き換えられた場合には、化学結合ボンドが空のまま残り、正の電荷を帯びたホールが作られる。ホールはキャリアーとして電気を導く。このような物質をp型半導体という。
【0006】
最も単純な形態としては、熱電気的モジュールは他端に電気伝導物質(たいていは銅版)と結合する半導体ペレットの周囲に形成される。図1aはこのようなモジュールの例である。熱が、回路上の電荷のキャリアーが動く方向に動くということに注意することが重要である。この例では、n型半導体物質は、(負の電荷を持った)電子が熱電気的な効果を引き起こすための電荷のキャリアーになるように、ペレットを形成する。p型の半導体ペレットは、図1bのように用いられる。
【0007】
単純な熱電気的な装置が、一種類の半導体ペレットによって作られているうちには、このような単純な熱電気的な装置は大量の熱エネルギーを電気エネルギーに変換することはできなかった。有効な熱電気的な容量を提供するために、複数のペレットが共に用いられる。それ故、熱電気的な変換機は、多数のn型とp型の半導体素子を交互に持つ。上記多数のn型とp型との半導体素子はモジュールを形成するために金属による相互接続によって電気的に直列につながれていて、かつ、熱的には伝導するが電気的には絶縁されている2枚のセラミック板によって熱的に平行に挟まれている。温度勾配が上記モジュールを横切って維持されているとすると、電力が外部端子に供給される。上記装置は発電機として動作する。一方、電流が上記モジュールを流れる場合には、熱は上記モジュールの一方の表面から吸収され、他方の表面に排出される。上記装置はヒートポンプとして動作する。
【0008】
このような装置中での熱電気的な物質の効率は、熱電性能指数ZTによって特徴づけられる。ZTは無次元の係数であり、次のように定義される。
ZT=(Sσ/κ)T
Sは熱強度もしくはゼーベック係数であり、σは電気伝導度(S/cm)であり、κは熱伝導度(W/m−K)であり、Tは温度(K)である。熱電性能指数は、物質中の電気的な効果と熱的な効果との結合を表現している。ZTが大きければ、熱電気的な物質のエネルギー変換効率が高いことを示している。熱電気的な物質の効率が、大きなゼーベック係数を持つということは、高い電気伝導率と、低い熱伝導性を持つということである。
【0009】
PbTe,BiTe,BiSbや、化学式Bi2−xSbTe3−ySeなどの合金からなる熱電気的な物質が広く知られている。しかしながら、これらの物質を用いた熱電気的な装置の効率は比較的低く、約5〜8%のエネルギー変換効率である。−100℃から1000℃の温度範囲では、上記熱電気的な物質のZTの最大値は約1に限定されている。さらに、PbTeやBiTeなどの物質では、同じ組成の複合物の数は限られており、また異なる温度間で最大の効率を得るために特性を最適化する可能性についても限られている。
【0010】
それゆえ、最近の研究での目標の一つは、熱電気的な特性を拡大する新しい物質を見つけることになっている。幾つかの区分が研究されており、それらの区分には3番目もしくは4番目の混合物にカルコゲンを含むもの、3番目の混合物にスクテルダイドを含むもの、半ホイスラー合金を含むもの、3番目の混合物に金属酸化物を含むもの、金属を包接するクラスレートを含むもの、ペンタテルライド(pentatelluride)を含むものなどに分類されている。上記物質は以下の文献に記載されている。Kanatzidis著、 Semicond Semimet誌、69号、51-100頁(2000年); Sales らによる共著、Science誌 272(5266)号、1325-1328頁、(1996年); Poon著、Semicond Semimet誌、70号、37-75頁、(2001年); Terasakiらによる共著、Jpn J Appl Phys誌、240(1AB)号、L65-L67頁、(2001年); Salesらによる共著、J Solid State Chem誌、146号、528-532頁、(1999年); Nolasらによる共著、Semicond Semimet誌、69号、255-300頁、(2001年); Latturnerらによる共著、Solid State Chem誌、151号、61-64頁、(2000年); Trittらによる共著、Semicond Semimet誌、70号、179-206頁、(2001年)。ZTを同様の対照物より特に増大させる他の方法としては、人為的な超格子構造の薄膜(artificial superlattice thin film structure)をBiTe/SbTeの化学蒸散析出法(chemical vapor deposition)によって成長させる方法や、PbSe0.98Te0.02/PbTeによるモレキュラービームエピタシー(MBE: molecular beam epitaxy)によって成長させる方法が記載されている。上記物質は以下の文献に記載されている。Venkatasubramanian らによる共著、J Cryst Growth誌、170号、817-821頁、(1997年); Harman らによる共著、J Electron Mater誌、25号、1121-1127頁、(1996年); Beyerらによる共著、Appl Phys Lett誌、80号、1216-1218頁、(2002年); Venkatasubramanian らによる共著、Nature誌、413号、597-602頁、(2001年); Harman らによる共著、J Electron Mater誌、29(1)号、L1-L4頁、(2000年)。それにもかかわらず、この分野においてのより望ましい進歩は、バルク状態の物質のZTの値と同様の値を発生する新しい複合物の生産方法の発見になるだろう。なぜなら、殆ど全ての応用例は、大量のバルク状態の物質を必要とするためである。
【0011】
結果的に、熱電気的な物質が高い熱電性能指数を持つ必要性が残る。上記のような物質を用いることによって、高効率の熱電気的な装置を作ることができる。さらには、半導体物質が電気的によい伝播を行うだけではなく、幅広い応用例に適合するバンドギャップの幅を持つことが望ましい。さらには、バンドギャップが応用例にあわせて調整できる物質が、より望まれている。これらの物質は、熱的にも化学的にも安定である必要がある。
【0012】
本発明は、一般式Ag1−xM’Q2+mの熱電気的な物質を提供する。ここにMはPb,Sn、Ca,Sr,Ba,などの2価遷移金属からなる群およびそれらの組み合わせのうちから選択されるものであり、M’はBi,Sbおよびそれらの組み合わせから選択されるものであり、QはSe,Te,Sとおよびそれらの組み合わせから選択されるものである。また、8≦m≦24であり、0.01≦x≦0.7である。発明の実施例では、この複合物はn型半導体の性質を示した。実施例では、xは0.1から0.3であり、mは10から18である。
【0013】
別の実施例では、本発明によるn型半導体とp型半導体とからなる熱電気的なモジュールを提供する。上記熱電気的なモジュールは、ペルチェ効果とゼーベック効果とによって動作する、さまざまな熱電気的な装置を作るために用いられる。より好ましい実施例としては、上記モジュールは発電に用いられるものである。本発明は熱電気的な装置を使う方法に関しても含んでいる。
【0014】
本発明による物質と、装置と、方法とは、よく知られている熱電気的な物質全般に対して有効性を提供することができる。この有効性は、効率の向上、高い熱電性能指数、さまざまな装置における幅広い汎用性、安い費用、安定性、生産のしやすさなどである。さらなる範囲の応用性と有効性は以降の詳細な記載により明らかになるであろう。発明の実施例における詳細な記載と個別の例はそれぞれについて記載したものであって、発明の範囲を限定することを意図してはいない。
【0015】
〔発明の実施形態〕
本発明は銀(Ag)を含む熱電気的な物質を提供する。実施例の一つとして、熱電気的な物質は化学式Ag1−xM’Q2+mをもつ。ここに(a)Mは少なくともPb(鉛),Sn(錫),Ca(カルシウム),Sr(ストロンチウム),Ba(バリウム),2価遷移金属およびこれらの組み合わせの中から選択される1つの元素である。(b)M’は少なくともBi(ビスマス),Sb(アンチモン)およびこれらの組み合わせの中から選択される1つの元素である。(c)Qは少なくともSe(セレン),Te(テルル),S(硫黄)およびこれらの組み合わせの中から選択される1つの元素である。(d)8≦m≦24、および0.01≦x≦1である。
【0016】
実施例では、0.05≦x≦0.6が好ましく、0.1≦x≦0.3がさらに好ましい。また、10≦m≦24が好ましく、12≦m≦22がより好ましく、15≦m≦20がさらに好ましい。(ここで用いている「好ましい」という言葉は、ある状況下での効果を説明するための発明の実施例について引用している。しかしながら、他の実施例では、同じ、もしくは他の状況が好ましくなるであろう。さらにいえば、一つもしくは複数の好ましい実施例についての詳説は、発明の範囲にある他の実施例が有効でない、および発明の範囲にある他の実施例を意図をしていないことを意味するものではない。)
ここで用いる2価金属遷移元素はTi(チタン),V(バナジウム),Cr(クロム),Mn(マンガン),Fe(鉄),Co(コバルト),Ni(ニッケル),Cu(銅),Zn(亜鉛),Pd(パラジウム),Cd(カドミウム),Pt(白金),Hg(水銀),およびこれらの混合物を含む。第1行の遷移シリーズ(周期表の4行目)が好ましく、Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cuおよびそれらの組み合わせを含む群から選択されることが好ましい。Fe,Co,Mn,Cu,V,Crおよびそれらの組み合わせを含む遷移金属が特に好ましい。(ここで用いられる、「含まれる」という言葉とその類義語に関して、リスト中の物品の列挙が本発明の物質、複合物および方法において有用である他の物品を排除するということとしては制限されない)
好ましい実施例としては、MはPbである。M’はSb,BiもしくはSbとBiの任意の割合での組み合わせが好ましい。SbとBiの割合は単位あたりSbBi1−nを加える。好ましい実施例としては、M’はSb(n=1)である。好ましくは、QはTeを含む。本発明の熱電気的な物質はAg1−xPb12M’Q14;Ag1−xPb14M’Q16;Ag1−xPb16M’Q18;Ag1−xPb18M’Q20;およびこれらの組み合わせからなる群を含むことが好ましい。特に、Ag0.84Pb18SbTe20;Ag0.81Pb18SbTe20;Ag0.84Pb18SbSe20;Ag0.75Pb18SbTe20;Ag0.76Pb18SbTe20;およびこれらの組み合わせからなる群を含むことが好ましい。
【0017】
本発明の実施例では、熱電気的な物質は、一般的にNaCl型の直方体格子結晶構造を持つ。陽イオン(例えばAg、M,M’などの金属)がNaの位置に配置され、陰イオン(Q)がClの位置に配置される。電荷は異なるが、陽イオンは大きさが同じであり、構造全体でランダムに置換される傾向にある。xがゼロより大きいので、本発明の実施例では直方体構造中の陽イオンの場所の幾つかは空になる。直方体構造は、xとmの値には依存せず、熱電気的な物質を構成する元素にのみ依存する。ある好ましい実施例での特徴は、少ない異方性の形態学である。立方体構造は、比較的高いキャリアー伝導性と結晶成長と構築の容易性とを与える。本発明の複合物は比較的高い融点温度をもち、比較的高い構造安定性をもっている。本発明の実施例では、融点は約850℃以上である。
【0018】
本発明の実施例では、熱電気的な物質はn型半導体の性質を示す。組成式Ag1−xM’Q2+mで記載されるように、これらの物質は電気的にバランスしていない。少なくともMとM’がそれぞれほぼ+2と+3とをもつときには電気的にバランスしていない。しかしながら、理論どおり結合はしていないのであるが、実施例中では、電荷バランスの数的な欠如は、物質中の「他の」電子によって補償されていると考えられていて、それ故上記物質はn型半導体として形成されると考えられている。
【0019】
本発明の実施例では、熱電気的な物質は調整可能なバンドギャップの性質を示す。「バンドギャップ」という用語は、物質中に最も電子が占有している電子状態と、最も電子が占有していない電子状態とのエネルギー差のことを指す。さらに、「調整可能な」という用語は、このエネルギー差が要求するバンドギャップを得るように調整することができるということを意味する。実施例では、バンドギャップはnとmとの値を変化させることによって調整されている。別の実施例では、バンドギャップはQを選ぶことによって調整されている。応用例に依存して、適当なバンドギャップを選ぶことができる。
【0020】
別の実施例では、本発明の熱電気的な物質を組み合わせることについて提供する。このような組み合わせはソリッドソリューションであることが好ましい。「ソリッドソリューション」という用語は、1つの、固体であって、2種類もしくは多くの化学種を含む、比較的均一の結晶状態を指す。複合物中のnとmとの値がバンドギャップを調整する粗いダイヤルの役割を果たし、ソリッドソリューション中での混ざり具合がバンドギャップを調整する細かいダイヤルの役割を果たしている。
【0021】
実施例では、本発明の物質は外部からドープすることはなく、ドープすることは事実上ない。ここでは「事実上ない」という用語は、外部からドープする物質を含まない、もしくはドープされた量が物質の重要な熱電気的な特徴に影響しないという意味として用いられている。上記のような物質は重量にして0.0001%以下で含むことが望ましい。
【0022】
別の実施例では、物質はドープされる。選択的な不純物によってドープされ、p型とn型との導電性をもつように作られる。上記導電性が、特に望む熱電気的な特徴、例えばゼーベック係数を増加させたり、熱電性能指数(ZT)を増加させたりするように行われる。n型の導電性を増加させるには、1つの原子をより電子価の大きい他の原子の置き換える。余分の電子は化学結合に必要がなく、自由に結晶中を移動する。原子の割合として1%以下で、同じ価電子の陰イオンの不純物、即ちSやSeはTeのかわりに、SはSeのかわりに用いられることが行われる。ドーピングが行われる複合物の別の例としては、ハロゲン化合物のSbX,BiX,Hg,DXなどがあり、Xは塩素,臭素,ヨードおよびこれらの混合物から選択される。またDはクロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、マグネシウム、およびこれらの混合物から選択される。一方、p型の伝導性は、複合物中の同種の構造原子を荷電子の少ない原子、すなわち電子の少ない原子と置き換えることによって形成される。化学結合がなくなり、この部分は「ホール」と呼ばれる。陽イオン部分であるBiやSb(V族)とPbやSn(VI族)とを、電子が一つ不足したIV族(Ge,Sn,Pb)やIII族(Al,Ga,In,Tl)とそれぞれ置き換えることによって、電気的な特性を補償する、より多くのホールキャリアーを作ることができる。これらのことは、ドーピングを用いる複合物の例であり、これに限定されるものではない。
【0023】
本発明と同種の複合物へのドーピングは、望む量の不純物を合成のときに導入することで行われる。化学式通りの量の不純物を原料に加える。交互に、目的の複合物と不純物を一緒に溶かし、再冷却する事によって本発明の複合物はドープされる。不純物の量は重量比で約0.0001%から約4%であることが好ましい。
【0024】
〔合成〕
本発明の半導体物質は、純物質を含む、さまざまな原料から合成することができる。実施例では、原料はAgQ,M,M’,Qを含んでいる。また別の実施例では、原料はAgQ,M’,M,Qである。ここでMとQは、以下に記載するように、MQを形成することができる。また別の実施例として、正しい化学式通りの割合の純物質Ag,M,M’,Qは、本発明の熱電気的な物質の合成に用いることができる。
【0025】
上記の方法では、AgQは反応総量に応じて、純物質Ag(2モル)と、純物質Q(1モル)が例えば液化アンモニア中に準備される。反応が終了すると、アンモニアは常温にて蒸発させることによって簡単に除去することができる。終物質は乾燥させ、挽いて均一の粉にする。
【0026】
一般的にM’は、反応総量に応じて純物質BiもしくはSb(2モル)と、純物質Q(3モル)が、800℃、常圧もしくは減圧環境下で約1〜3日反応させて用いられる。一方で、テルル化ビスマスは、例えばJohnson Matthey/AESAR Group, Seabrook, New Hampshire,USAから商品として購入可能である。またセレン化ビスマスは、例えばCerac, Inc, Milwaukee, Wisconsin, U.S.A.から商品として購入可能である。
【0027】
MQは、例えば完全に化学式の量(1モルごと)のQと、純物質の鉛および随意の他の2価遷移金属と、を混ぜ、混合物をシリカのチューブに詰め、好ましくは10−4Torrかそれ以下の減圧下で合成することができる。混合物は例えば800℃以上で24時間加熱され、さらに24時間温度が維持される。混合物はそれから水中につけて冷却され、産物のインゴットは細かい粉に砕かれる。上記の粉は石英のチューブに詰められ、800℃以上で24時間加熱される。混合物の温度はさらに24時間800℃に保たれ、300℃まで4℃/時間の割合で徐々に冷されたのち、50℃まで約6時間をかけて徐々に冷やされる。出来上がったインゴットは、本発明の複合物を合成するときに先立って、挽かれて細かい粉にされる。
【0028】
原料の個々の複合物を形成したので、本願発明と同じ構造をもつ複合物が以下のように合成される。選択された原料が全て混合され、カーボンコートされたシリカに入れるか、グラファイトのチューブによって覆われたのち、10−4Torr以下にされる。すなわち、選択された原料はAgQ、金属M、金属M’、および元素Qであるか、AgQ、M’、MQである。混合物は700℃まで、1時間あたり30℃の割合で加熱される。700℃に達した後、約3日間加熱され、その後混合物は300℃になるまで1時間あたり5℃の割合で冷却され、続いて50℃になるまで約12時間かけて冷却される。終物質はジメチルホルムアミド)で洗浄、ガス抜きをし、窒素雰囲気に入れる。ジエチルエーテルでさらに洗浄した後乾燥させ、本発明の複合物と同じ構造の複合体が直方体の結晶構造を示す、きらめくシルバーブラックの塊として得られる。
【0029】
本発明の熱電気的な物質は純物質から合成することもできる。望む複合物を得るための適切な純物質、即ちAg,M,M’,Qが正しい化学的な割合で混ぜられる(即ち、Agは1−x、Pbと随意の他の2価遷移金属はm、Bi/Sbは1、Qはm+2)。そして石英のチューブに真空環境下、例えば10−3Torr以下で封入される。複合物はその後、溶解するまで直接火にかけられ、加熱される。引き続いて溶解した産物を冷却し、複合物を得る。
【0030】
また、一形態において、化学式に従った適切な量の原料、即ちAg、M、M’、Qを反応容器に加える工程と、原料が溶解し、複合物を形成するための反応が起こっている間、ある温度である時間加熱する工程と、によって熱電気的な物質を得ることができた。その後、上記物質は調整された割合で冷却される。
【0031】
伝導性終物質の熱電性能指数ZTは、合成のパラメータ、即ち冷却の割合と同じように、加熱の温度や時間などによって難解に影響を受けている。多くの場合、形成した物質は特徴的なZTをもつことが望ましい。他の場合では、最適なZTを与えるパラメータの組を見つけることが望まれる。また別の場合では、ある許容範囲のZTを与え、反応時間、反応のコスト、もしくは他の特徴点に関して最適化するパラメータの組を見つけることが望まれる。
【0032】
それゆえ、本発明は化学式Ag1−xM’Q2+mで示される特徴的な組成を備えた熱電気的な物質の形成方法を提供する。即ち、(a)MはPb,Sn,Ca,Sr,Ba,2価遷移金属およびこれらの組み合わせの中から少なくとも1つの元素を選択し、(b)M’はBi,Sbおよびこれらの組み合わせの中から少なくとも1つの元素を選択し、(c)QはSe,Te,Sおよびこれらの組み合わせの中から少なくとも1つの元素を選択し、(d)8≦m≦24であり、0.01≦x≦1とする。そして、(e)化学式に従った量の原料、Ag、M、M’、Qを反応容器に加え、(f)上記原料をある温度まで加熱し、全ての上記原料が完全に溶解するまでのある時間加熱し、(g)上記原料を調整された割合で冷却し、(1)上記組成を有する上記物質の複数のサンプルを、上記工程で、上記温度と上記時間とによって作るとともに、上記サンプルを作るために上記冷却の割合を上記サンプルを作る過程で変更し、(2)上記サンプルのZTを比較し、(3)要求されるZTをもつ物質を得るために、温度、時間、冷却の割合を選ぶ。上記のような方法では、ある原料を用いて複数のサンプルを作り、得られたサンプルが望ましいZTをもつことによってパラメータが見つけられる。即ちひと揃えの合成が上記工程によってなされ、パラメータが変更され、サンプルのZTの値が比較される。好ましくは、変化させられるパラメータは、統計を用いた実験方針から選択されることが望ましい。
【0033】
〔物質の使い方〕
本発明の熱電気的な物質はさまざまな熱電気的な装置に用いられる。上記装置には発電機、ヒーター、熱電対、温度センサおよび放射性元素を用いた熱電気的な発電機などがある。これらの装置はさまざまに応用されて使用される。例えば廃熱再生システム、自動車、遠隔発電機、電界効果トランジスタなどの進歩した電子部品のための冷却器などとして用いられる。
【0034】
特に、本発明の熱電気的な物質は、赤外、および近赤外の観測装置、レーザー、太陽電池などの光電素子などといった、光学分野において用いることができる。光学分野では、異なるバンドギャップをもつ、少なくとも2つの物質が、望ましい光学的特徴を持つようにするために、層状に積み重ねられる。本発明の熱電気的な物質は、上記のような光学分野において、最適な効果を与えるために精密に調整できるバンドギャップの幅が広い。本発明と同種の組成は多重分光センサにも用いることができる。多重分光センサ(即ち長波長と短波長の)は、クラッター除去の改良の可能性や、認識できる範囲の改良の可能性を与える。
【0035】
実施例としては、本発明の熱電気的な物質は熱電気的な装置に使われることが好ましい。上記の装置として、加熱、冷却、温度安定、発電、温度センサなどに用いられる。上記の熱電気的な装置は、本質的には機械式のヒートポンプや冷蔵庫、その他熱エネルギーを変換する機械と同じく、熱力学に従うヒートポンプであり、発電機である。原理的な違いは、伝統的な機械的/液体加熱装置もしくは冷却装置に比べて、熱電気的な装置は、固体状態の電子部品(または熱電対)において機能する点である。
【0036】
能率のよい熱電気的な装置は2種類の物質から組み立てることができる。即ちn型導電体とp型導電体とからである。これらの物質は最適な熱電性能指数ZTに基づいて、別々に選ぶ。これらの熱電気的な装置は、電気的に直列に結合され、熱電対を形成しているn型の半導体とp型の半導体とからなる回路で構成された、熱電気的な素子を含んでいることが好ましい。n型およびp型の半導体は、半導体結晶中でp−n結合を形成しているか、半導体の端面で導体に結合している。n型の物質と、p型の物質とは相補的な特徴を持つものから選ばれることが好ましく、例えば半導体結合を行ったときに、一方の半導体物質の物理的な特徴がもう一方の半導体物質の物理的な特徴を制限しない物質を選ぶことが好ましい。
【0037】
複数の熱電対は、お互いに電気的に直列につながれ、熱的には並列につながれ、固体状態のヒートポンプとして、もしくは熱電気的な発電機として作用する、熱電気的な装置(もしくは熱電池)を形成する。一般的に、p型とn型との半導体は、例えばウエハもしくはペレットの形をとって、例えば金属化された基質の間に挟まれることによってアレイ上に形成される。加熱装置、もしくは冷却装置において、熱電気的なモジュールを直流(DC)電源回路に接続することによって、熱は装置の一方の端から吸収される。それによって冷却している間、熱が上記装置のもう一方の端から排出される。発電機では、熱勾配が上記装置を横切るようにすることで、外部回路に電流が発生する。
【0038】
熱電気的な装置を構成するいくつかの方法が開発されている。上記の方法は機械的な締め付け、エポキシボンド付け、貼り付けること、スパッター、直接半田付けなどの方法に限らない。応用のために個別に必要となることは、一般的にはどの方法が最も適切かということによって決定される。実施例としては、機械的な締め付けによる方法が好ましい。どのような設置方法を用いたとしても、モジュールへの度を越した機械的な負荷を回避することは重要である。
【0039】
熱的な抵抗は、組み立てられた個々の界面で引き起こされ、システム全体の効率に影響を与える。機械的に締め付けされたシステムでは、界面の平坦さは0.03mm以内が望ましい。好ましい実施例では、上記界面の平坦さの度合いであっても、界面の物質は小さな温度のギャップに抑えたほうがよい。そのような界面の物質として、シリコンを基にした熱グリース、グラファイトの箔、熱伝導パッドなどを特に選ぶことができる。設置している間一様な圧力がかかるように特別な手当てが保障される必要がある。設置場所とモジュールの表面とは砂やごみ、バリなどをきれいにすることが好ましい。
【0040】
単純な熱伝対を図2に示す。本発明のn型半導体(10)と、p型の半導体(11)とが、一方を導体(12)と結合させ、熱電対(13)を形成している。半導体装置(15)はもう一方の端を外部回路に接続し、第2の導体(15)がリードワイヤに接触して外部回路(14)に接続している。
【0041】
外部回路(14)は、本発明の熱電気的な素子を内蔵している熱電気的な装置の使用目的によって、さまざまな形態である。例えば、外部回路がDC電源を含んでいた場合、熱電気的な装置はペルチェ効果によるヒートポンプとして動作する。別の例としては、外部回路(14)が電気の負荷回路を含んでいた場合、熱電気的な装置はゼーベック効果による発電機として動作する。
【0042】
本発明の熱電気的な装置を組み込んだヒートポンプには限らない、実施例を図3aに示す。ヒートポンプ(30)は上方のセラミックの支持層(31)と、下方のセラミックの支持層(32)とを有する。上方のセラミックの支持層(31)の外部表面(即ち、半導体アレイの接している表面の反対側)は冷やすための物体(33)の表面に接していて、下方のセラミックの支持層(32)の外部表面は、吸収した熱を放散させるためのヒートシンク(34)に接している。本発明のn型半導体(35)およびp型半導体(36)は、上方のセラミックの支持層(31)と下方のセラミックの支持層(32)との間に備えられている。電気伝導層(37)はセラミックの支持層(31および32)の内側に接していて、n型半導体とp型半導体とが近接して、電気的に結合している。すなわち、半導体は電気的に直列に接続されている。直流電源(38)が伝導層(37)に接続される。電流の流れる方向は装置を熱が流れる方向である。
【0043】
上記動作において、熱は、電気伝導層(37)がDC電源(38)に接続されると、図3aに図示するように、ペルチェ効果によって、第1のセラミックの支持層(31)で吸収され、第2のセラミックの支持層(32)でヒートシンク(34)を通して排出される。ヒートポンプ(30)において熱が流れる方向は、伝導層に流れる電流の方向を反転させることによって、反転させることができる。このような熱電気的な装置の変換により、第1のセラミックの支持層(31)に熱的に接する物体(33)をペルチェ効果によって熱することができる。ヒートポンプを示すこの応用例では、さまざまな応用例を提供することができる。それは例えば小型レーザーダイオードの冷却器、固体状態の電子素子の冷却、ポータブル冷蔵庫、理化学的な温度調節機構、および液体冷却器などである。
【0044】
熱電気的なシステムは、さまざまな容量の熱を輸送するように設計することができる。例えばワット、またはBTU(British Thermal Unit)/hourなどである。輸送する熱の容量はさまざまな要素、例えば、周囲の温度、用いている熱電気的なモジュールの物理的、電気的な特性、熱の放散システムの効率および熱の放散システムの深さによって影響を受ける。典型的な熱電気的な応用例では、数ミリワットから数100ワットの範囲の熱負荷を輸送することができる。
【0045】
実施例としては、本発明は熱電気的な発電機であることが好ましく、熱電気的な発電機としての機能はゼーベック効果によってなされる。熱源がp型とn型との半導体物質の組を含む熱電気的な素子に与えられたとき、電流が、外部の回路に発生する。装置による正味の効果は、熱エネルギーを電気エネルギーに変換することである。熱はさまざまなところからやってきており、例えば灯油の明かり、薪、自動車の排気熱、静止型燃焼エンジンの排気熱、および90Srなどの放射線源などがある。
【0046】
本発明の熱電気的な発電機について、図3bに概略的に例示する。このシステムは、図3aの冷却/加熱システムと同様であり、電圧供給部が電気的な負荷に置き換えられている。本発明のn型半導体(35)とp型半導体(36)とは伝導層(37)によって電気的に直列に結合されている。電極は導線によって負荷(40)につながれている。半導体は熱的に並列に配置され、冷たい接点の上方のセラミックの支持層(31)と、熱い接点の下方のセラミックの支持層(32)との間にはさまれている。熱電気的な発電機は、熱い接点がヒーター(41)によって温度tに温められることによって電流を発生する。冷たい接点は、冷却ファン(42)によって、温度tよりも低い温度tに冷やされている。装置を横切る電圧差はゼーベック効果によって起こる。もし、負荷抵抗(40)が回路であれば、電極間の電位差によって電流が発生する。この場合、図3bに図示した熱電気的な発電機は、熱エネルギーを負荷抵抗によって電気エネルギーに変換する。
【0047】
以下は発明を限定する例ではない。
【0048】
〔実例〕
本発明の熱電気的な物質であり、組成式としてAg1−xPb18SbTe20を有し、x=0.24である物質は、適切な化学式による量のAg,Pb,Sb,Teを反応容器に入れ、加熱することによって作られた。特に、Agを0.128グラム、Pbを5.823グラム、Sbを0.1901グラム、およびTeを3.9846グラムを13mmのシリカチューブに入れ、真空下(約10−4torr)で封入した。上記チューブを石釜に配置した。釜は980℃まで1800時間以上かけて加熱された。釜の温度を980℃に固定して4時間加熱した。釜の温度の固定を解き、釜は1時間当たり10℃の割合で550℃まで冷やされた。それから、釜は1時間あたり25℃の割合で50℃まで冷やされた。産物は光沢のあるインゴットであり、X線回折によってNaCl型の構造をもつことがわかった。
【0049】
同様の方法によって、x=0.16の熱電気的な物質およびx=0.19の熱電気的な物質が作られ、実質上、同じ結果が得られた。また、同様の方法によって、組成式としてAg1−xPb18SbSe20を有し、x=0.24である物質が得られ、実質上、同じ結果が得られた。
【0050】
上記の例および他に記載した実施例は例であり、本発明の物質、装置、方法の範囲を限定することを意図していない。特定の実施例、物質、複合物、方法に関する同様の変化、変更、変形は実質的に同様の結果となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1a】図1aは簡潔な熱電気的な回路の概略図である。
【図1b】図1bは簡潔な熱電気的な回路の概略図である。
【図2】図2は熱電気的な電対の概略図である。
【図3a】図3aは熱電気的なヒートポンプ装置と発電装置との概略図である。
【図3b】図3bは熱電気的なヒートポンプ装置と発電装置との概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式Ag1−xM’Q2+mを持つ半導体物質であって、
Mは少なくともPb,Sn,Ca,Sr,Ba,2価遷移金属およびこれらの組み合わせの中から選択される1つの元素、
M’は少なくともBi,Sbおよびこれらの組み合わせの中から選択される1つの元素、
Qは少なくともSe,Te,Sおよびこれらの組み合わせの中から選択される1つの元素であるとともに、
8≦m≦24、および0.01≦x≦1であることを特徴とする半導体物質。
【請求項2】
上記xが0.05≦x≦0.6であることを特徴とする請求項1に記載の半導体物質。
【請求項3】
上記xが0.1≦x≦0.3であることを特徴とする請求項2に記載の半導体物質。
【請求項4】
上記mがm≧10であることを特徴とする請求項2に記載の半導体物質。
【請求項5】
上記MがPbであることを特徴とする請求項1に記載の半導体物質。
【請求項6】
上記M’がSbであることを特徴とする請求項1に記載の半導体物質。
【請求項7】
上記QがTeであることを特徴とする請求項1に記載の半導体物質。
【請求項8】
上記化学式がAg1−xPb10M’Q12であることを特徴とする請求項1に記載の半導体物質。
【請求項9】
上記化学式がAg1−xPb12M’Q14であることを特徴とする請求項1に記載の半導体物質。
【請求項10】
上記化学式がAg1−xPb14M’Q16であることを特徴とする請求項1に記載の半導体物質。
【請求項11】
上記化学式がAg1−xPb16M’Q18であることを特徴とする請求項1に記載の半導体物質。
【請求項12】
上記化学式がAg1−xPb18M’Q20であることを特徴とする請求項1に記載の半導体物質。
【請求項13】
上記半導体物質には、外部からの不純物を含まないことを特徴とする請求項1に記載の半導体物質。
【請求項14】
化学式Ag1−xM’Q2+mを持つ伝導物質の製造方法であって、
Mは少なくともPb,Sn,Ca,Sr,Ba,2価遷移金属およびこれらの組み合わせの中から選択される1つの元素、
M’は少なくともBi,Sbおよびこれらの組み合わせの中から選択される1つの元素、
Qは少なくともSe,Te,Sおよびこれらの組み合わせの中から選択される1つの元素、
8≦m≦24および、0.01≦x≦1であるとともに、
化学式に従った量の原料、Ag、M、M’、Qを反応容器に加える工程と、
上記原料を一定の温度で加熱し、全ての上記原料が完全に溶解するまでの時間加熱する工程と、
上記原料を調整された割合で冷却する工程と、を含むことを特徴とする伝導物質の製造方法。
【請求項15】
上記の原料は純物質であることを特徴とする請求項14に記載の伝導物質の製造方法。
【請求項16】
上記xが0.1≦x≦0.3であるとともに、上記mがm≧10であることを特徴とする請求項15に記載の伝導物質の製造方法。
【請求項17】
上記MがPbであり、上記M’がSbであり、上記QがTeであることを特徴とする請求項16に記載の伝導物質の製造方法。
【請求項18】
化学式Ag1−xM’Q2+mを持つ、特有の組成を備えた熱電気的な物質の製造方法であって、
Mは少なくともPb,Sn,Ca,Sr,Ba,2価遷移金属およびこれらの組み合わせの中から選択される1つの元素、
M’は少なくともBi,Sbおよびこれらの組み合わせの中から選択される1つの元素、
Qは少なくともSe,Te,Sおよびこれらの組み合わせの中から選択される1つの元素、
8≦m≦24、および0.01≦x≦1であるとともに、
化学式に従った量の原料、Ag、M、M’、Qを反応容器に加え、
上記原料をある温度まで加熱し、全ての上記原料が完全に溶解するまでの時間加熱し、
上記原料を調整された割合で冷却する工程を含み、
上記組成を有する上記物質の複数のサンプルを、上記工程で、上記温度と上記時間とによって作るとともに、上記サンプルを作るために上記冷却の割合を上記サンプルを作る過程で変更し、
上記サンプルのZTを比較し、
要求されるZTを有する物質を得るために、温度、時間、冷却の割合を選択することを特徴とする熱電気的な物質の製造方法。
【請求項19】
上記xが0.1≦x≦0.3であり、上記mがm≧10であることを特徴とする請求項18に記載の熱電気的な物質の製造方法。
【請求項20】
上記MがPbであり、上記M’がSbであり、上記QがTeであることを特徴とする請求項19に記載の熱電気的な物質の製造方法。
【請求項21】
化学式Ag1−xM’Q2+mを持つn型半導体物質であって、
Mは少なくともPb,Sn,Ca,Sr,Ba,2価遷移金属およびこれらの組み合わせの中から選択される1つの元素、
M’は少なくともBi,Sbおよびこれらの組み合わせの中から選択される1つの元素、
Qは少なくともSe,Te,Sおよびこれらの組み合わせの中から選択される1つの元素であるとともに、
8≦m≦24、および0.01≦x≦1であることを特徴とするn型半導体物質。
【請求項22】
上記MがPbであることを特徴とする請求項21に記載のn型半導体物質。
【請求項23】
上記xが0.05≦x≦0.6であることを特徴とする請求項21に記載のn型半導体物質。
【請求項24】
上記xが0.1≦x≦0.3であることを特徴とする請求項21に記載のn型半導体物質。
【請求項25】
上記mがm≧10であることを特徴とする請求項21に記載のn型半導体物質。
【請求項26】
上記半導体物質には、外部からの不純物を実質的に含まないことを特徴とする請求項21に記載のn型半導体物質。
【請求項27】
n型半導体とp型半導体との一端が対になるように電気的に結合した、熱電気的な素子であって、
上記n型半導体は化学式Ag1−xM’Q2+mを持ち、
Mは少なくともPb,Sn,Ca,Sr,Ba,2価遷移金属およびこれらの組み合わせの中から選択される1つの元素、
M’は少なくともBi,Sbおよびこれらの組み合わせの中から選択される1つの元素、
Qは少なくともSe,Te,Sおよびこれらの組み合わせの中から選択される1つの元素であるとともに、
8≦m≦24、および0.01≦x≦1であることを特徴とする熱電気的な素子。
【請求項28】
上記xが0.1≦x≦0.3であることを特徴とする請求項27に記載の熱電気的な素子。
【請求項29】
上記MがPbであることを特徴とする請求項27に記載の熱電気的な素子。
【請求項30】
上記QがTeを含むことを特徴とする請求項27に記載の熱電気的な素子。
【請求項31】
上記M’がSbであることを特徴とする請求項27に記載の熱電気的な素子。
【請求項32】
上記mがm≧10であることを特徴とする請求項28に記載の熱電気的な素子。
【請求項33】
請求項27に記載の上記熱電気的な素子を備えていることを特徴とする熱電気的な発電機。
【請求項34】
熱エネルギーをゼーベック効果によって動作する熱電気的なモジュールに供給し、熱エネルギーから電流を発生させる方法であって、
上記熱電気的なモジュールは化学式Ag1−xM’Q2+mの組成をもつ半導体物質を含み、
Mは少なくともPb,Sn,Ca,Sr,Ba,2価遷移金属およびこれらの組み合わせの中から選択される1つの元素、
M’は少なくともBi,Sbおよびこれらの組み合わせの中から選択される1つの元素、
Qは少なくともSe,Te,Sおよびこれらの組み合わせの中から選択される1つの元素であるとともに、
8≦m≦24、および0.01≦x≦1であることを特徴とする熱エネルギーから電流を発生させる方法。
【請求項35】
上記xが0.05≦x≦0.6であることを特徴とする請求項34に記載の熱エネルギーから電流を発生させる方法。
【請求項36】
上記xが0.1≦x≦0.3であることを特徴とする請求項35に記載の熱エネルギーから電流を発生させる方法。
【請求項37】
上記mがm≧10であることを特徴とする請求項34に記載の熱エネルギーから電流を発生させる方法。
【請求項38】
上記MがPbであることを特徴とする請求項34に記載の熱エネルギーから電流を発生させる方法。
【請求項39】
上記M’がSbであることを特徴とする請求項38に記載の熱エネルギーから電流を発生させる方法。
【請求項40】
上記QがTeを含むことを特徴とする請求項38に記載の熱エネルギーから電流を発生させる方法。
【請求項41】
上記組成がAg1−xPb10M’Q12を含むことを特徴とする請求項38に記載の熱エネルギーから電流を発生させる方法。
【請求項42】
上記組成がAg1−xPb12M’Q14を含むことを特徴とする請求項38に記載の熱エネルギーから電流を発生させる方法。
【請求項43】
上記組成がAg1−xPb14M’Q16を含むことを特徴とする請求項38に記載の熱エネルギーから電流を発生させる方法。
【請求項44】
上記組成がAg1−xPb16M’Q18を含むことを特徴とする請求項38に記載の熱エネルギーから電流を発生させる方法。
【請求項45】
上記組成がAg1−xPb18M’Q20を含むことを特徴とする請求項38に記載の熱エネルギーから電流を発生させる方法。
【請求項46】
上記熱エネルギーは放射性元素同位体の崩壊によって供給されることを特徴とする請求項34に記載の熱エネルギーから電流を発生させる方法。
【請求項47】
上記熱エネルギーは太陽のエネルギーを捕らえることによって供給されることを特徴とする請求項34に記載の熱エネルギーから電流を発生させる方法。
【請求項48】
上記熱エネルギーは化石燃料の燃焼によって供給されることを特徴とする請求項34に記載の熱エネルギーから電流を発生させる方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【公表番号】特表2007−505028(P2007−505028A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526122(P2006−526122)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【国際出願番号】PCT/US2004/027536
【国際公開番号】WO2005/036660
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(506085181)ボード オブ トラスティース オペレイティング ミシガン ステイト ユニバーシティー (1)
【Fターム(参考)】