説明

銀糸生地

【課題】寝具類に付着し易いダニや各種細菌の増殖を抑制し、衛生的に管理できるようにするとともに、寝具類の表面に銀糸特有の輝きと美麗さが得られ、かつ保温性や通気性の良好な銀糸生地を提供する。
【解決手段】本発明に係る銀糸生地は、基材フィルム2aの両面又は片面に純度の高い銀2bを真空蒸着し、保護フィルム2cで覆って細条にカットして得た銀糸2を経糸に、マルチフィラメント糸3を緯糸にして製織したものある。経糸の銀糸2は銀蒸着面が表面になるように整経する限り、製織中に撚られることなく織上がる。緯糸がマルチフィラメント糸であると扁平化するため銀糸の輝きを損なわせることがない。しかも、銀のもつ固有のイオン効果により、黄色ブドウ球菌に対して優れた抗菌力を発揮する。したがって、本願生地を寝具類に応用することにより汗の腐敗を抑え、不快な臭いをやわらげることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布団の側(カワ)、ベット用パットの側、まくらの側などの寝具類又はベビーカーの中敷きマットなどに適用して好適な銀糸生地に関するものである。
【背景技術】
【0002】
毎日の生活環境の中には、人体から分泌される汗や老廃物に含まれる細菌が生息している。銀は古くからこれらの細菌に対する殺菌効果に卓越なことが知られている。特に、悪臭の原因となる黄色ぶどう球菌を殺菌して臭いを除去する機能を有することが知られている。また、銀固有の光と銀イオンは昆虫らが嫌がるので、ダニの忌避性(テストの結果では、平均忌避率が90〜95%位)に卓越した効能を有している。
【0003】
従来、このような銀の効能を布団の側などの寝具類に応用する幾つかの技術があった。第1は、特開平8−35173号公報のもので、銀メッキした繊維をナイロン繊維などに1重量%以上混ぜて糸を得、この糸で織物を製織してなるもの、第2は、特開2000−27056号公報のもので、編み生地にその編成過程で銀糸を任意の割合で編み込んでなるものである。
【特許文献1】特開平8−35173号公報
【特許文献2】特開2000−27056号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前者(特開平8−35173号公報)に記載の生地は、銀メッキした繊維の混合率が極めて低い上に、ナイロン繊維などに埋没してしまうために抗菌機能が十分でなかった。特に、銀固有の光と銀イオンによるダニの忌避性については殆ど期待出来なかった。また、後者(特開2000−27056号公報)に記載の生地は、編み生地の編成過程で銀糸を編み込むために銀糸が撚れてしまい、生地表面に銀糸特有の輝き(光沢)が得られるものではなかった。
【0005】
本発明は、上記の問題点を解消するためのもので、その目的とするところは、寝具類に付着し易いダニや各種細菌の増殖を抑制し、衛生的に管理できるようにするとともに、寝具類の表面に銀糸特有の輝きと美麗さが得られ、かつ保温性や通気性の良好な銀糸生地を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明に係る銀糸生地は、基材フィルムの両面又は片面に銀を真空蒸着し、該銀蒸着面を保護フィルムで覆い細条にカットしてなる銀糸を経糸に、マルチフィラメント糸を緯糸にして製織してなることを特徴とし、全表面に銀特有の輝き(光沢)が得られるように構成した。
【0007】
また、請求項2に記載の発明に係る銀糸生地は、前記基材フィルムがPETフィルムであることを特徴とし、純度の高い銀の蒸着性を良好にするとともに、銀糸の伸度及び引張強度を補って優れた寸法安定性が得られるように構成した。
【0008】
さらに請求項3に記載の発明に係る銀糸生地は、前記銀糸が断面四角形であることを特徴とし、整経ビームへの整経時に銀糸の向きが揃え易くなるように構成した。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基材フィルムの両面又は片面に純度の高い銀を真空蒸着し、保護フィルムで覆って細条にカットして得た銀糸を経糸に、マルチフィラメント糸を緯糸にして製織したものであるから、経糸の銀糸は銀蒸着面が表面になるように整経する限り、製織中に撚られることなく織上がるとともに、緯糸のマルチフィラメント糸は細く丈夫であり断面扁平化するため銀糸の輝きを損なわせることがない。しかも、銀のもつ固有のイオン効果により、黄色ブドウ球菌に対して優れた抗菌力を発揮する。したがって、本願生地を特に寝具類に応用することにより汗の腐敗を抑え、不快な臭いをやわらげることが可能となるばかりでなく、銀糸の蓄熱効果、遠赤外線効果を発揮し、冬温かく就寝できる上に、通気性が良好のため、夏涼しく就寝できるなど各種の優れた効果を奏するものである。
【0010】
また、請求項2に記載の発明によれば、基材フィルムがPETフィルムであることから純度の高い(純度99.9%)銀の蒸着性を良好にし、しかも、銀糸の伸度及び引張強度を補って寸法安定性に優れた生地を得るので、寝具類に応用して寝返りなどによって生地が部分的に伸びたり、変形したりすることがないなど各種の優れた効果を奏するものである。
【0011】
さらに、請求項3に記載の発明によれば、断面四角形の銀糸は整経ビームへの整経時に銀面が表面になるように揃え易く、いったん整経した後の経糸は製織時に撚られることが殆どなく、生地表面を銀特有の輝き(光沢)にて覆うことができる。しかも銀面は製糸段階で保護フィルムにより保護(酸化防止)されているため、銀の光沢は半永久的に保たれるなど各種の優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明を実施の態様を図面に基いて説明する。図1は本願生地を用いたベット用パットとその一部を拡大した略示的外観斜視図、図2は本願生地に用いる銀糸の拡大断面図である。
【0013】
1は本願生地で、該本願生地1は銀糸2を経糸に、マルチフィラメント糸3を緯糸にして製織してなる。銀糸2を経糸に用いたのは、本願生地1の表面を銀糸2の銀面で覆うことが簡易にできるようにするためである。仮に、銀糸2を緯糸として使用した場合には糸が撚られないようにするにはレピア織機のような特殊な織機を用いて織り上げなければならないからである。
【0014】
前記銀糸2は、基材フィルム(好ましくはPETフィルム)2aの両面(片面のみの場合もある)に純度の高い銀2bを一定の熱雰囲気中で真空蒸着し、該蒸着面を酸化防止機能等を備える保護フィルム2cで覆い細条にカットしてなる。該カットはカッティング機(図示せず)にて所望の幅に機械的に行い、順次、整経ビーム(図示せず)に巻き取られるようにするとよい。すなわち、銀糸2の製造と整経とを同時的に行うことがすぐれている。
【0015】
前記銀糸2はそのカッティング機によるカット時、図2の如く、断面四角形にされる。これはカッティング機の機能にもよるが、整経ビームへの整経時に銀面が表面を構成するように揃え易いためである。また、銀糸2の銀面を保護フィルム2cで覆ったのは、高純度の銀2bの酸化防止のためであり、銀特有の輝き(光沢)を半永久的に保つために有効である。
【0016】
前記銀糸2を巻いた整経ビームは、本願生地を製織するための織機(図示せず)にセットされる。そして、整経ビームより引き出した各銀糸は、前記織機の筬及び綜絖(共に図示せず)を経て巻取ビーム(図示せず)に結着される。かくして経糸準備を完了したならば、一定の織ソフトに基づいて織機を作動すると、前記綜絖により経糸の開口と、その開口内へのマルチフィラメント糸3の横入れと、筬打ちとが行われて製織される。この場合の織組織は平織がよい。すなわち、平織は生地を丈夫にする上に、生地の表裏に銀面を平等に表わす点で好ましいからである。
【0017】
前記緯糸となるマルチフィラメント糸3は、複数のフィラメントを加撚することなく集合させたものである。該マルチフィラメント糸3として具体的にはポリエステルフィラメントが好適である。ポリエステルからなるマルチフィラメント糸3は、銀糸2の銀面上に重なっても糸自身が偏平化するため、図1の拡大部分からも判るように銀面の特有の輝き(光沢)を阻害させるなどの影響を与えない点で有効である。
【0018】
前記本願生地1を、図1の如く、ベット用パットの側4として適用すると、該ベット用パットの表面は、銀糸の銀面で形成されたような外観を呈し、銀特有の輝き(光沢)に包まれた見た目(外観上)の美しさを持つばかりでなく、銀糸2自体から発生する銀イオンによりは各種細菌の殺菌機能を有し、ベット用パットに寄生することがあるダニ、悪臭の原因となる黄色ぶどう球菌などを殺菌し、いつも清潔で衛生的に永く綺麗な状態を保つようになる。また、銀糸2は導電性にも優れた機能を有しており、人体に帯電した静電気を除去する除電効果も得られるなどの副次効果も期待できる。
【0019】
次に、前記本願生地1の抗菌試験について説明する。まず、PETフィルムの両面に銀(純度99.9%)を2150°Cで真空蒸着し、その蒸着面を酸化防止フィルムで覆い細条(0.5mm幅)にカットしてなる銀糸を経糸に、ポリエステル糸(マルチフィラメント糸)を緯糸にして製織して得た本願生地の小片(本願品)と、銀糸を用いていない綿糸からなる生地の小片(比較品)とを、財団法人日本化学繊維検査協会生物試験センターに持ち込み、黄色ブドウ球菌に対する抗菌試験(JIS L 1902、菌液吸収法)を依頼した。
【0020】
上記抗菌試験の結果、本願品(3×3cm)では、生菌数は600以下であったが、比較品(3×3cm)では、接種直後の生菌数で1.6×104 、18時間後の生菌数は、1.6×107 になった。
【0021】
上記抗菌試験の結果、本願生地で「生菌数は600以下」というのは限りなく「零」に近い値である。これは銀のもつ固有のイオン効果により、黄色ブドウ球菌に対して優れた抗菌力を発揮したことの左証である。したがって、本願生地を人体に触れるベット用パットや枕などの寝具類に応用することにより汗の腐敗を抑え、不快な臭いをやわらげることなどが可能となる。また、銀糸を用いていることにより蓄熱効果、遠赤外線効果をも発揮する。これに対して比較品の場合には、生菌数の増殖度合いが著しいことが判る。
【0022】
なお、上記実施態様においては、本願生地の使用例として寝具類の側を例示したが、これ以外の人体に触れるあらゆる織物製品、たとえば衣類、ベビーカーの中敷きマットなどにも応用できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本願生地は、布団、ベット用パット、枕などの寝具類に適用して抗菌性等の機能をよく発揮するばかりでなく、これら寝具類を汚れ防止カバーで覆っても銀の上記機能は損なわれることがなく、一般家庭での利用性は高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本願生地を用いたベット用パットの斜視図とその一部拡大図である。
【図2】本願生地に用いる銀糸の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 本願生地
2 銀糸
3 マルチフィラメント糸
2a 基材フィルム(PETフィルム)
2b 銀
2c 保護フィルム(酸化防止フィルム)
4 ベット用パットの側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの両面又は片面に銀を真空蒸着し、該銀蒸着面を保護フィルムで覆い細条にカットしてなる銀糸を経糸に、マルチフィラメント糸を緯糸にして製織してなることを特徴とする銀糸生地。
【請求項2】
前記基材フィルムが、PETフィルムであることを特徴とする請求項1に記載の銀糸生地。
【請求項3】
前記銀糸が、断面四角形であることを特徴とする請求項1又は2に記載の銀糸生地。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−28702(P2006−28702A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−212341(P2004−212341)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(304038161)有限会社エーエスケートレーディング (1)
【Fターム(参考)】