説明

銀鏡用活性化処理液

【課題】活性化処理液の保存安定性が良好であり、且つ、活性化処理液の作成直後から長期間にわたり安定して銀鏡皮膜被形成表面に対する親水性を得ることができる活性化処理液を提供すること。
【解決手段】プラスチック、金属、ガラス等の基材の表面に銀鏡皮膜を形成するにあたり、前記基材の銀鏡皮膜被形成表面を活性化するための、第1スズ化合物を含有する活性化処理液において、過酸化水素を含有することを特徴とする銀鏡用活性化処理液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック、金属、ガラス、ゴム、陶磁器、木材、竹、皮革、発泡スチロール等の基材の表面に銀鏡皮膜を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車部品、屋内装飾品、釣具製品、家電製品、通信機器製品、仏具品、建築材等のプラスチック、金属、ガラス、ゴム、陶磁器、木材、竹、皮革、発泡スチロール等に使用される基材には、主として装飾を目的として、その表面に銀鏡皮膜を形成することがある。また銀鏡皮膜は電磁波を遮断する目的で、電磁波シールド品においても利用される場合がある。
【0003】
このような基材から成る製品の銀鏡皮膜の形成は通常、以下の方法を用いることが知られている。最初に各種基材の製品の表面を銀鏡皮膜が形成されるに適した表面(以下、「銀鏡皮膜被形成表面」という)とするための前処理を実施する。これによって得られた清浄な銀鏡皮膜被形成表面に銀鏡反応により銀を析出させるために塩化第1スズ等を含有する活性化処理液を接触させ、第1スズイオンを触媒として担持させる。その後、活性化処理された該基材表面に銀鏡めっきを施すことによって銀鏡皮膜を形成する。銀鏡用めっき液は一般に硝酸銀及びアンモニアを含有する銀溶液とホルマリン、ブドウ糖、グリオキザール、ヒドラジン等の還元剤を含有する液の混合物から成る無電解めっき液を用いる。そして洗浄を繰り返した後、乾燥し前記銀めっき層の表面に保護層を形成する。
【0004】
上記方法は、銀鏡皮膜と銀鏡皮膜被形成表面との間の接着性及び耐久性に優れ、また作業性が良好な簡易な方法により優れた性能の銀鏡皮膜を有する製品を得ることができる方法として知られている。
【0005】
上記方法に用いられる活性化処理液は、無電解めっき液中で銀イオンを金属銀として析出させるための触媒として働く第1スズ化合物を含有する水溶液である。しかし第1スズ化合物として例えば第1塩化スズを用いた場合、活性化処理液を数日間保存することにより塩化第1スズが水溶液中で水酸基(OH-)と反応して塩基性塩(Sn(Cl)OH)の白色沈殿が析出する。塩基性塩が析出すると活性化処理液中の第1スズイオン量が減少し銀鏡皮膜被形成表面に対する親水性が低下し、その後銀鏡めっき処理を実施すると得られた銀鏡皮膜にシミ、クスミのように見えるムラが発生する。
【0006】
上述した活性化処理液の保存安定性の問題点を改善する手段として、例えば特開2003−13240号公報(特許文献1)には第1スズ化合物及び塩化水素(塩酸)を含有する液に酸素を吹き込む活性化処理液が、また特開2003−129249号公報(特許文献2)には第1スズ化合物を含有する液に一定量の第2スズ化合物を添加した活性化処理液が開示されている。しかしながらこれら公報記載の活性化処理液の保存安定性は十分満足できるものではなかった。
【0007】
活性化処理液は液作製直後、いわゆる新液の状態では直後活性が不十分なため、満足できうる銀鏡皮膜を得るために、銀鏡皮膜被形成表面に対して活性化処理を繰り返し行う必要があった。あるいは活性化処理液を作製した後、ある一定期間保存することで銀鏡皮膜被形成表面に対する親水性が向上するのを待ち、活性化処理を行う必要があった。しかし保存期間が長すぎると第1スズ化合物の塩基性塩の生成に伴い銀鏡皮膜被形成表面に対する親水性が低下し、新液状態の時と同様に満足できうる銀鏡皮膜被形成表面に対する親水性が得られるまで活性化処理を繰り返し行う必要があり、更に最終的には第1スズ化合物の大半が沈殿し、活性化処理液としての効果が全く無くなってしまうものであった。
【0008】
また上記の特許文献1及び2の発明はいずれも塩酸を必須としているが、一般に活性化処理液中に添加される塩酸は、銀鏡皮膜の変色及び腐食等のいわゆる「シケ」と呼ばれる腐食が生じることが知られており、特に美麗な外観が要求される商品においては、「シケ」は意匠性の著しい低下を招き、商品価値を損なうことがある。
【0009】
活性化処理液に用いられる塩酸は、例えば塩化第1スズが水溶液中で水酸基(OH-)と反応して塩基性塩(Sn(Cl)OH)の白色沈殿の析出を防止する目的で用いられることは周知である。このことは例えば金属表面技術便覧(金属表面技術協会編集、昭和52年 日刊工業新聞社発行)にも記載されている。従って、「シケ」の防止を目的に活性化処理液中から塩酸を無添加とすることは、従来の技術では前述したように塩基性塩の白色沈殿の析出が顕著となり、活性化処理液の保存安定性を著しく低下させるため困難であった。また一方で、塩酸は、スプレーガン等の装置を腐食することもあって、可能な限り使用しない、あるいは少量の使用であることが望まれている。
【特許文献1】特開2003−013240号公報
【特許文献2】特開2003−129249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、基材の表面を活性化処理して銀鏡皮膜を形成するにあたり、活性化処理液の保存安定性が良好であり、且つ、活性化処理液の作製直後から長期間にわたり安定して銀鏡皮膜被形成表面に対する親水性を得ることができる活性化処理液を提供することにある。本発明の別の目的は、塩酸を使用しなくても、保存安定性が良好で、作製直後から長期間にわたり安定して銀鏡皮膜被形成表面に対する親水性を得ることができる活性化処理液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、基材の表面に銀鏡皮膜を形成するにあたり、前記基材の銀鏡皮膜被形成表面を活性化するための、第1スズ化合物を含有する活性化処理液において、過酸化水素を含有することを特徴とする銀鏡用活性化処理液により達成された。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、活性化処理液の保存安定性が良好であり、また活性化処理液の作製直後から長期間にわたり良好且つ安定した銀鏡皮膜被形成表面に対する親水性を得ることができる。また本発明によれば、実質的に塩酸を使用する必要がないので、「シケ」の問題を生じることなく、保存安定性が良好で、作製直後から長期間にわたり安定して銀鏡皮膜被形成表面に対する親水性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の活性化処理液には、第1スズ化合物を含有する。第1スズ化合物の量は、水1リットルあたり約0.005〜約0.3モル、好ましくは約0.01〜約0.25モルである。
【0014】
本発明に用いる第1スズ化合物としては、塩化第1スズ、酸化第1スズ、硫酸第1スズ、及びこれらの混合物を用いることができる。
【0015】
本発明の活性化処理液には第1スズ化合物に加えて過酸化水素を含有する。過酸化水素の量は、水1リットルあたり約0.005〜約1.0モル、好ましくは約0.01〜約0.50モルである。
【0016】
本発明の活性化処理液は、過酸化水素を用いるため、塩酸を実質的に使用しなくても第1スズ化合物を容易に溶解することができ、更に第1スズ化合物の塩基性塩の生成を回避することができるという特徴を有しているが、必要に応じて塩酸を用いることもできる。塩酸を使用する場合の量は、活性化処理液の使用液1リットルあたり約0.001モル〜約0.5モルの範囲で用いることができる。茲で、塩酸を実質的に含有しないとは、全く含有しないことが好ましいが、塩酸による前述したような欠点があまり生じない程度の量、例えば活性化処理液の使用液1リットルあたり約0.1モル以下の量の塩酸は含んでもよいことを意味する。
【0017】
更に本発明の活性化処理液には、第2スズ化合物を第1スズ化合物に対して約5〜約75モル%の範囲で添加していてもよく、また前記の特許文献1に記載のように第1スズ化合物を含有する溶液に酸素を吹き込んでもよい。第2スズ化合物としては塩化第2スズ、酸化第2スズ、及びこれらの混合物を用いることができる。
【0018】
本発明の活性化処理液は、長期保存を目的として例えば2倍希釈して用いるに相当するスズ化合物を有する等の、いわゆる濃縮液として作製することもできる。
【0019】
次に、本発明の活性化処理液を使用する銀鏡皮膜方法の具体例について説明する。
【0020】
本発明において、銀鏡皮膜が形成される基材としては、金属、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂等のプラスチック樹脂、ゴム、木材、皮革、ガラス板、陶磁器など、様々なものが使用できる。
【0021】
これらの基材は以下に述べる各処理工程に先立ち、前処理としてその表面を清浄化して銀鏡皮膜被形成表面を形成することが好ましい。すなわち、基材が、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂等のプラスチック樹脂、ゴム、木材、皮革の場合には、表面の油、その他の汚れをイソプロピルアルコール、洗剤等の素材を傷めない前処理剤を用いて脱脂し、充分に乾燥させる。基材がガラスである場合には、エチルアルコールで脱脂する。基材が陶磁器である場合には、ガラスと同様の前処理でよいが、多孔質の場合には、上記のプラスチックと同様の前処理を行うことが好ましい。基材が金属である場合には、表面が油、錆び等で汚染されていることが多いので、十分に脱脂、脱錆した後、必要に応じてプラスチックと同様の前処理を行うことが好ましい。
【0022】
更に、清浄化した後の基材の表面には、予め、アンダーコート層を設けておくことが好ましい。アンダーコート層としては、例えば特開2002−256454号公報や特開平10−309774号公報に記載されている如き、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、2液硬化型ポリウレタン樹脂等からなるアンダーコート層、あるいはアルコキシチタニウムエステル並びにエポキシ基を有するシランカップリング剤及びエポキシ樹脂のうちの少なくとも一方を含有する塗料からなるアンダーコート層が挙げられる。このようにして、各基材表面に清浄な銀鏡皮膜被形成表面を形成することができる。
【0023】
続いて、この清浄な銀鏡皮膜被形成表面に対して、本発明の活性化処理液を用いて活性化処理を行う。前記活性化処理液を用いて処理する方法としては、前記活性化処理液中に銀鏡皮膜被形成表面を形成した基材を浸漬するか、又は銀鏡皮膜被形成表面に本発明の活性化処理液をスプレー塗布することにより実施する。特にスプレー塗布は好適である。
【0024】
次いで、本発明の活性化処理液による活性化処理工程で基材表面に余分に付着した活性化処理液を脱イオン水又は精製蒸留水で洗浄することが好ましい。この洗浄液には例えば特開平6−38860号公報に記載されたような界面活性剤を含んでいてもよい。
【0025】
上記の洗浄の後、金属塩化合物による処理を行うことが好ましい。前記金属塩化合物として好ましいものは銀であり、特に硝酸銀が好適である。
【0026】
この処理工程は、上記金属塩化合物の水溶液に基材を浸漬するか、あるいは金属塩化合物の水溶液を基材表面にスプレー塗布することにより実施される。特に、スプレー塗布は好適である。
【0027】
続いて、銀鏡用めっき液を使用する銀鏡反応処理の工程に進む。この工程では、例えば以下の銀鏡用めっき液を使用することにより、均一な光沢を有し、しかも、特に、ラッカーもしくは二液反応型塗料を塗布したアンダーコート層を有する銀鏡皮膜被形成表面に対する強固な密着性を発現することができる。
【0028】
銀鏡用めっき液は、例えば以下のようにして調製される。すなわち、まず、水、好適には脱イオン水1リットルに対して、硝酸銀1〜20g、好ましくは3〜15gと、28%アンモニア水溶液2〜150g、好ましくは5〜75gと、例えば、モノエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1−アミノ−2−プロパノール、2−アミノ−1−プロパノール、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等のアミノアルコール化合物、及び、例えば、グリシン、アラニン、グリシンナトリウム等のアミノ酸又はその塩よりなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物0〜50g、好ましくは0〜10gとを含有する銀溶液(A)を調製する。
【0029】
別に、脱イオン水1リットルに対して、例えば、硫酸ヒドラジン又はヒドラジン水和物等のヒドラジン化合物1〜50g、好ましくは2〜15gと、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム0〜20g、好ましくは0〜10gと、上記銀溶液(A)と同様のアミノアルコール化合物及びアミノ酸又はその塩よりなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物0〜50g、好ましくは0〜10gとを含有する還元溶液(B)を調製する。
【0030】
また、銀溶液(A)及び/又は還元溶液(B)へのアミノアルコール化合物及びアミノ酸又はその塩よりなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物の配合量は、これらの液を混合して得られるめっき液において、めっき液1リットルあたり、合計量が1〜50g、好ましくは3〜10gとなるように調整することが好ましい。
【0031】
上記により得られた銀溶液(A)と還元溶液(B)とを別々の圧送タンクに収納しておき、各溶液用のスプレーガンによって、両溶液を同時に銀鏡皮膜被形成表面に吹き付けて銀鏡反応処理を行い、銀鏡皮膜を形成する。処理後、脱イオン水又は精製蒸留水で洗浄する。
【0032】
形成された銀鏡皮膜は、特開2004−169157号公報に記載されている処理、すなわち銀と反応もしくは親和性を有する有機化合物を含む溶液で処理することができる。この処理は、上記有機化合物の溶液に基材を浸漬するか、あるいは有機化合物の溶液を基材表面にスプレー塗布することにより実施される。処理後は、脱イオン水又は精製蒸留水で洗浄する。
【0033】
本発明においては、更に、この銀鏡皮膜上にトップコート層として、公知のクリヤーコーティングを施すことによって、耐密着性、耐食性、耐摩耗性、耐変色性等を一段と向上することができる。
【0034】
本発明においては、アンダーコート層又は/及びトップコート層に、前記特開2004−169157号公報に記載されている、銀と反応もしくは親和性を有する有機化合物を含有させることができる。
【0035】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。尚、部及び%は質量部、質量%を示す。
【実施例】
【0036】
ABS樹脂製品の脱脂、水洗、乾燥した表面に、銀鏡用のアンダーコート塗料(大橋化学工業株式会社製;アンダーブラックNo.0128)を、硬化剤及びシンナーと10:2:4〜5の重量割合で混合して塗布し、次いで、溶剤を揮発させた後、80℃で30分乾燥し、銀鏡皮膜被形成表面を得た。
【0037】
この銀鏡皮膜被形成表面を処理する活性化処理液として、水1リットルあたり、塩化水素として0.15モルの塩酸、0.06モルの塩化第1スズを含む比較の活性化処理液Aを作製した。
【0038】
活性化処理液として、水1リットルあたり、塩化水素として0.15モルの塩酸、0.05モルの塩化第1スズ、0.01モルの塩化第2スズを含む比較の活性化処理液Bを作製した。
【0039】
活性化処理液Aを調製後、活性化処理液A1リットルに1時間30リットルの酸素吹き込み速度で1時間曝気処理して比較の活性化処理液Cを作製した。
【0040】
活性化処理液として、水1リットルあたり、塩化水素として0.15モルの塩酸、0.06モルの塩化第1スズ、0.15モルの過酸化水素を含む本発明の活性化処理液Dを作製した。
【0041】
活性化処理液として、水1リットルあたり、0.06モルの塩化第1スズ、0.15モルの過酸化水素を含む本発明の活性化処理液Eを作製した。
【0042】
活性化処理液として、水1リットルあたり、0.05モルの塩化第1スズ、0.01モルの塩化第2スズ、0.15モルの過酸化水素を含む本発明の活性化処理液Fを作製した。
【0043】
活性化処理液の保存安定性は以下に記す方法で評価した。前記活性化処理液のそれぞれを500ml準備し、内容量が約1リットルとして市販されているポリエチレン試薬瓶中へ入れ密閉した。これを設定温度50℃で1週間及び3週間の強制加温を実施し、活性化処理液の沈殿発生状況及び活性化処理液の活性度を調べた。
【0044】
活性化処理液の沈殿発生状況は加温後の活性化処理液を観察し、4段階で評価した。○は沈殿がない黄色の活性化処理液、○△は沈殿はないがやや白濁した活性化処理液、△は沈殿はないが白濁した活性化処理液、×は沈殿が発生した活性化処理液である。
【0045】
前記方法で得られた基材の清純な銀鏡皮膜被形成表面にそれぞれの活性化処理液をスプレーガンで吹き付けて活性化処理を行い、精製水にて洗浄した。
【0046】
活性化処理液の活性度は以下に記す方法で評価した。直後活性度及び保存活性度を調べるために、調液直後の活性化処理液及び3週間の強制加温した活性化処理液を銀鏡皮膜被形成表面(縦横それぞれ10cm角)に対しハンドスプレーを用いて噴霧する(一回の吐出量が約1ml)。続いて銀鏡皮膜は、脱イオン水1リットルに硝酸銀10gを溶解した水溶液(a)をスプレーガンで吹き付けて処理した後に下記の銀鏡用めっき液を付与して形成されるが、ハジキ、スジ、シミ、クスミのように見えるムラの発生がない良好な鏡面の銀鏡皮膜を得るために必要な活性化処理液の噴霧回数によって活性度を評価し表1中に記載した。
【0047】
銀鏡用めっき液は、次のようにして調製した。先ず、脱イオン水1リットルに硝酸銀20gを溶解して(1)液とし、別に、脱イオン水1リットルに28%アンモニア水溶液100g、モノエタノールアミン5gを溶解して(2)液とし、使用前に、これら(1)液及び(2)液を1対1で混合してアンモニア性銀溶液(A)とした。次に、脱イオン水1リットルに硫酸ヒドラジン10g、モノエタノールアミン5g及び水酸化ナトリウム10gを溶解して還元溶液(B)とした。
【0048】
このように調製した銀溶液(A)と還元溶液(B)とを、上記の銀鏡皮膜被形成表面に、2頭スプレーガンを使用して同時に吹き付けて銀鏡を形成させ、精製水にて洗浄した。このスプレーガンは、銀溶液と還元溶液とを同時に被処理面に到達させ、瞬時に銀イオンが還元されて銀鏡皮膜を形成することを可能にする。
【0049】
最後に銀鏡皮膜表面にトップコート剤として藤倉化成株式会社製の「PTC−02」をスプレー塗布し、約70℃の乾燥炉内で70分乾燥させることによりトップコート層を形成させた。
【0050】
【表1】

【0051】
表1の結果より、本発明の活性化処理液D〜Fは、活性化処理液の保存安定性が良好であり且つ活性化処理液の作成直後から長期間にわたり安定した銀鏡皮膜被形成表面に対する親水性を得ることができる。また本発明の活性化処理液E及びFは、塩酸を含有していないのでスプレーガン等の装置の腐食を生じない利点も有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に銀鏡皮膜を形成するにあたり、前記基材の銀鏡皮膜被形成表面を活性化するための、第1スズ化合物を含有する活性化処理液において、過酸化水素を含有することを特徴とする銀鏡用活性化処理液。
【請求項2】
塩化水素を実質的に含有しない請求項1記載の銀鏡用活性化処理液。

【公開番号】特開2007−197743(P2007−197743A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−15584(P2006−15584)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】