説明

銅含有液の処理方法

【課題】銅含有液から銅を高除去率で除去でき、これにより銅濃度の低い処理液が得られるとともに、硫酸イオン濃度が高い場合でも生成する汚泥の濃度が高く、脱水性が良好で、汚泥の脱水速度が速く、ケーキ含水率の低い脱水汚泥が得られ、汚泥発生量を減少させることができる銅塩含有液の処理方法および装置を提供する。
【解決手段】銅含有液L1を第1反応槽1に導入し、アルカリと返送汚泥の混合汚泥L8を供給してpH6〜7.5で反応させ、第1反応槽1の反応液を第2反応槽2に導入しpH8〜11に調整してさらに反応させ、第2反応槽2の反応液を凝集槽3に導入して凝集させ、凝集処理液を固液分離槽4において固液分離し、分離汚泥の一部L11を混合装置5に返送してアルカリL6を混合し、得られたアルカリ混合汚泥L8を第1反応槽1に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅含有液をアルカリと反応させ、難溶性析出物を析出させて分離、除去する銅含有液の処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
硫酸銅メッキ工程排水、銅板や銅線等の酸洗排水、銅精錬排水などの銅含有液から銅を除去する処理方法として、銅含有液に水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等のアルカリを添加してpH8〜11に調整し、難溶性の水酸化銅析出物を析出させ、これを分離、除去する処理方法が行われている。この方法では、一般に安価な水酸化カルシウムが使用されるが、硫酸イオン濃度が高くなると水酸化銅とともに石膏が析出するため、脱水ケーキの発生量が多くなるばかりでなく、脱水ケーキから銅を回収する場合においては、不純物である石膏が多いことは脱水ケーキ回収価値の低下を招く。そのため水酸化ナトリウムを中和剤として使用するケースが多くなっている。
【0003】
一方、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等のアルカリの別に関係なく、回収利用時には脱水ケーキの水分の低い方が有価物としての価値が高くなるため、脱水ケーキの水分を低減させる方法として、HDS法(High Density Solids)と呼ばれる中和法が行われている。この方法は、水酸化銅等の難溶性析出物を析出させる場合において、分離汚泥を返送してアルカリと混合し、このアルカリ混合汚泥を反応槽に供給して被処理液と反応させて中和する方法であり、これにより脱水性に富む汚泥を生成させることができる。この方法は返送汚泥を結晶の析出核として利用する方法であり、難溶性析出物の析出により結晶が成長し、脱水性に富む汚泥が生成する。しかし、銅含有液の硫酸イオン濃度が高い場合には、HDS法の効果が低く、脱水性に富む汚泥が生成しない。
【0004】
この問題点を解決するため、特許文献1には、硫酸濃度が高い銅含有液に水酸化カルシウム等を反応させて石膏を析出させ、析出した石膏を分離除去した後、HDS法による反応を行い、難溶性析出物を析出させて結晶を成長させ、脱水性に富む汚泥を生成する方法が示されている。しかしこの方法は、硫酸イオンの影響を軽減するものであるが、固液分離槽が増加して装置が複雑になり、また運転、維持管理等が複雑になるという問題点がある。
【特許文献1】特開平9−1154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、銅含有液から銅を高除去率で除去でき、これにより銅濃度の低い処理液が得られるとともに、硫酸イオン濃度が高い場合でも生成する汚泥の濃度が高く、脱水性が良好で、汚泥の脱水速度が速く、ケーキ含水率の低い脱水汚泥が得られ、汚泥発生量を減少させることができる銅塩含有液の処理方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、次の硫酸銅塩含有液の処理方法および装置である。
(1)銅含有液をアルカリ混合汚泥とpH6〜7.5で反応させる第1反応工程と、
第1反応工程の反応液をpH8〜11に調整してさらに反応させる第2反応工程と、
第2反応工程の反応液を固液分離する固液分離工程と、
固液分離工程で分離された分離汚泥の一部を返送する汚泥返送工程と、
返送汚泥にアルカリを混合してアルカリ混合汚泥とする混合工程と、
アルカリ混合汚泥を第1反応工程に供給する混合汚泥供給工程と
を含む硫酸銅含有液の処理方法。
(2)第1反応工程の反応液がpH6〜7.5になるように、混合工程で混合するアルカリの量を調整する上記(1)記載の方法。
(3)第2反応工程と固液分離工程間に凝集工程を含む上記(1)または(2)記載の方法。
(4)銅含有液をアルカリ混合汚泥とpH6〜7.5で反応させる第1反応槽と、
第1反応槽の反応液をpH8〜11に調整してさらに反応させる第2反応槽と、
第2反応槽の反応液を固液分離する固液分離装置と、
固液分離装置で分離された分離汚泥の一部を返送する汚泥返送路と、
返送汚泥にアルカリを混合してアルカリ混合汚泥とする混合装置と、
アルカリ混合汚泥を第1反応槽に供給する混合汚泥供給路と
を含む銅含有液の処理装置。
(5)混合装置および第2反応槽に、それぞれアルカリを注入する第1アルカリ注入路および第2アルカリ注入路を含む上記(4)記載の装置。
(6)第1反応槽に第1アルカリ注入路のアルカリ注入量を制御するpH計、および第2反応槽に第2アルカリ注入路のアルカリ注入量を制御するpH計を備えた上記(5)記載の装置。
(7)第2反応槽と固液分離槽間に凝集槽を含む上記(4)ないし(6)のいずれかに記載の装置。
【0007】
本発明において処理の対象となる銅含有液は、硫酸銅メッキ工程排水、銅板や銅線等の酸洗排水、銅精錬排水などの銅を含有する液である。この銅含有液は、銅を銅イオンとして含有するものが一般的であるが、反応の時に銅イオンとして解離するものであればよく、通常は解離しない状態のものであってもよい。銅イオンとしては2価のものが処理対象として適しているが、これに限定されない。これらの銅は硫酸銅として含まれるものが一般的であるが、硫酸以外の対イオンが含まれていてもよい。本発明では、硫酸イオン濃度が高い銅含有液が処理対象として適しているが、これに限定されず、硫酸イオン濃度が低い銅含有液であってもよい。被処理液に含まれる銅および硫酸イオンの濃度は制限されないが、銅の濃度は50〜5,000mg/L程度、硫酸イオンの濃度は2,000〜20,000mg/L程度の液の処理に適用でき、高濃度の場合には希釈して反応させてもよい。
【0008】
本発明では第1反応工程として、第1反応槽において、銅含有液をアルカリ混合汚泥とpH6〜7.5で反応させる。アルカリ混合汚泥は後続の混合工程において得られるもので、分離汚泥の一部を返送した返送汚泥とアルカリの混合物である。返送汚泥と混合するアルカリは、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムなどの一般の中和剤として用いられるアルカリが使用できるが、特に水酸化ナトリウムのような硫酸イオンと反応して難溶性の析出物を生成しないアルカリが好ましい。銅と反応させるアルカリの量は、被処理液中の銅と反応して水酸化銅、または水酸化銅と硫酸銅のような難溶性の析出物を汚泥表面で生成させ、結晶を成長させるのに必要な量である。このようなアルカリの量は、第1反応工程の反応液がpH6〜7.5になるような量であり、第1反応工程の反応液がpH6〜7.5になるよう注入量を制御すると、このような量のアルカリが注入される。分離汚泥と混合するアルカリは、固体の状態で添加してもよいが、5〜25重量%の水溶液として添加することができる。
【0009】
上記返送汚泥は、後続の固液分離工程において分離される分離汚泥をそのまま返送したものでもよいが、濃縮して返送したものでもよい。アルカリと混合する返送汚泥の量は、析出の核として用いるのに必要な量である。このような返送汚泥量とするための分離汚泥の返送量は、固液分離の方式によって異なるが、固液分離工程において沈降分離を採用する場合、流入被処理液量の0.2〜2容量倍、好ましくは0.5〜1容量倍とするのが好ましいが、これよりも多く返送してもよい。
【0010】
アルカリ混合汚泥は分離汚泥(反応析出物)とアルカリが濃厚状態で混合したものであり、アルカリが汚泥表面に吸着した状態であるため、銅含有液と混合されると、汚泥表面に吸着したアルカリが銅と反応し、反応により生成する水酸化銅、あるいは水酸化銅と硫酸銅の複塩のような難溶性の析出物は汚泥粒子を核として析出し、汚泥粒子の結晶が成長することになる。通常の中和による処理では、残留銅濃度を低くするために、銅とアルカリとを反応させてpH8〜11にして難溶性の析出物を析出させているが、HDS法を採用する場合、pH8〜11で反応させると、生成する汚泥の脱水性はあまり改善されない。本発明者が検討したところ、pH8〜11では反応液中にゲル状汚泥が析出し、結晶化が起きないため、生成する汚泥の脱水性はあまり改善されないが、pH6〜7.5で反応させると結晶の成長が進み、生成する汚泥の脱水性が改善されることがわかった。
【0011】
このため本発明では第1反応工程において、pH6〜7.5、好ましくはpH6.5〜7.5、より好ましくはpH6.5〜7となるように、銅含有液をアルカリ混合汚泥と反応させる。上記のpH6〜7.5のpHは第1反応工程における反応液のpHであり、反応終結時にはこのpH範囲になっている必要があるが、連続式の場合には第1反応工程における反応液がこのpH範囲になっていればよい。このような反応pHに調整するには、第1反応槽にpH計を設け、アルカリ混合汚泥を形成する段階で、第1反応槽における反応液のpHが6〜7.5となるようにアルカリの注入量を調整すると、難溶性の析出物の析出に適したアルカリの注入量とすることができる。またアルカリ混合汚泥を形成する段階では、一定量のアルカリを注入してアルカリ混合汚泥を形成し、別に第1反応槽にpH調整剤を注入してpH調整してもよい。
【0012】
第1反応工程として、pH6〜7.5で銅含有液をアルカリ混合汚泥と反応させると、銅とアルカリの反応により生成する難溶性の析出物は汚泥粒子を核として析出し、汚泥粒子の結晶が成長し、重質で脱水性の良い汚泥が得られる。しかしpH6〜7.5では銅の溶解度が大きく、そのまま固液分離しても銅濃度の低い処理水は得られない。このため本発明では第2反応工程として、第2反応槽において、第1反応工程の反応液をpH8〜11、好ましくはpH8〜10、さらに好ましくはpH8〜9に調整してさらに反応させる。pH調整は、第1反応工程で用いたアルカリを注入して行うことができる。この場合、第2反応槽にpH計を設け、第2反応槽における反応液のpHが8〜11となるようにアルカリの注入量を調整することができる。pH8〜11では銅の溶解度が小さいため、反応液中に存在する銅とアルカリの反応が進行して、水酸化銅が析出する。これにより反応液中の銅濃度は低くなるとともに、反応液中の有機物その他の不純物は水酸化銅の析出物中に抱き込まれて除去される。
【0013】
第2反応工程の反応液は固液分離工程で固液分離することにより、分離液と分離汚泥に分離する。固液分離としては、沈降分離、ろ過分離、膜分離など、従来より用いられている固液分離装置を用いて、それぞれの方法で行うことができる。分離された汚泥の一部は、汚泥返送工程において、アルカリと混合するために返送汚泥として汚泥返送路から混合工程に送り、残部は排汚泥として排出する。分離液はそのまま処理液として排出することができるが、後処理をして回収してもよい。
【0014】
混合工程は、固液分離工程で分離された汚泥を、混合装置においてアルカリを添加して混合し、アルカリ混合汚泥を形成する。ここで混合する分離汚泥およびアルカリの種類、量等は前述のとおりである。混合装置としては、混合槽を用いるのが好ましいが、ラインミキサーを用いてもよく、また汚泥返送路にアルカリ供給路を合流させる構成とし、返送汚泥中にアルカリを供給して混合してもよい。
混合汚泥供給工程は、混合工程で得られたアルカリ混合汚泥を、混合汚泥供給路により第1反応工程の第1反応槽に供給する。
【0015】
第2反応工程と固液分離工程間に、凝集工程として凝集槽を設け、第2反応工程反応液に凝集剤を注入して凝集処理を行うのが好ましい。ここで用いる凝集剤は、第2反応工程で液中に析出する微細な析出物および有機物その他の不純物を、成長した結晶を含む返送汚泥とともに凝集させて、フロックを形成させる凝集剤であり、通常は高分子凝集剤が用いられるが、他の凝集剤でもよい。高分子凝集剤としては、ポリアクリルアミド、ポリアクリルアミド部分加水分解物、ポリアクリル酸ナトリウムなど、無機固形物の凝集に用いられている高分子凝集剤を用いることができるが、銅の析出物の凝集に適したものであれば、アニオン性、ノニオン性、カチオン性のいずれでもよい。凝集の操作も、凝集剤を注入して攪拌を行うなど、通常の凝集操作が採用される。この場合、必要により、注入する凝集剤に適したpHに調整することができる。
【0016】
第1反応槽、第2反応槽、凝集槽および混合装置は、それぞれの反応等を行える構成および大きさであればよく、またこれらには、攪拌を行うための攪拌装置、その他の設備を設けることができる。混合装置にはアルカリを注入する第1アルカリ注入路を設け、第1反応槽にpH計を設け、このpH計のpH値が6〜7.5となるようにポンプ等を制御して、第1アルカリ注入路のアルカリ注入量を制御することができる。また第2反応槽にアルカリを注入する第2アルカリ注入路を設け、第2反応槽にpH計を設け、このpH計のpH値が8〜11となるようにポンプ等を制御して、第2アルカリ注入路のアルカリ注入量を制御することができる。
【0017】
本発明の処理では、第1反応工程として、pH6〜7.5で銅含有液をアルカリ混合汚泥と反応させると、このpH6〜7.5が結晶の成長に適しているため、銅とアルカリの反応により生成する難溶性の析出物は汚泥粒子を核として析出し、汚泥粒子の結晶が成長し、重質で脱水性の良い汚泥が生成する。この場合、硫酸イオンが多量に存在していても、難溶性の析出物が析出し、結晶が成長する。難溶性の析出物の成分は水酸化銅、あるいは水酸化銅と硫酸銅の複塩などであり、この成分は各成分の濃度、pH等によって変化すると推測されるが、成分の差は重要でなく、上記pH範囲では難溶性の析出物として結晶に析出し、結晶が成長する。
【0018】
しかしpH6〜7.5では銅の溶解度が大きく、そのまま固液分離しても銅濃度の低い処理水は得られないので、第2反応工程として、第1反応工程の反応液をpH8〜11に調整してさらに反応させることにより、反応液中に残留する少量の銅がアルカリと反応し、水酸化銅として析出するものと推測される。これにより反応液中の銅濃度は低くなるとともに、反応液中の有機物その他の不純物は水酸化銅の析出物中に抱き込まれて除去される。反応液中に析出する水酸化銅の析出物はゲル状であるが、第1反応工程で成長した結晶に付着することにより、第2反応工程で生成する全体の汚泥の分離性、脱水性はよい。
【0019】
このため第2反応工程の反応液を、必要により凝集処理を行った後、固液分離することにより、銅濃度の低い分離液と、脱水性の良好な分離汚泥に分離することができる。これにより分離液は銅濃度の低い処理液として排出することができる。分離汚泥は一部を返送し、これを繰り返し行うことにより、汚泥中の結晶の大きさを成長させることができる。排出する分離汚泥は濃度が高く、脱水性が良好であるため、汚泥の脱水速度が速く、ケーキ含水率の低い脱水汚泥が得られ、汚泥発生量を減少させることができる。
【0020】
本発明では、第1反応工程の反応液がpH6〜7.5になるように、混合工程で混合するアルカリの量を調整することにより、注入するアルカリ量を適正に制御し、被処理液中の銅を効率よく除去することができる。この場合、混合装置および第2反応槽に、それぞれアルカリを注入する第1アルカリ注入路および第2アルカリ注入路を設けることにより、アルカリの注入を適正に行うことができる。また第1反応槽に第1アルカリ注入路のアルカリ注入量を制御するpH計、および第2反応槽に第2アルカリ注入路のアルカリ注入量を制御するpH計をアルカリの注入を効率よく行うことができる。この場合、ポンプによる注入量の制御をpH計の計測値と連動させることにより、正確に制御を行うことができる。
【0021】
さらに第2反応工程と固液分離工程間に凝集工程を設けると、凝集剤の凝集効果により、第2反応工程で析出したゲル状の水酸化銅を、第1反応工程で成長した結晶に付着させることができ、これらの除去率をさらに高くすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、第1反応工程において銅含有液をアルカリ混合汚泥とpH6〜7.5で反応させ、第2反応工程において第1反応工程の反応液をpH8〜11に調整してさらに反応させ、固液分離工程において第2反応工程の反応液を固液分離し、固液分離工程で分離された汚泥にアルカリを混合して、得られたアルカリ混合汚泥を第1反応工程に返送するようにしたので、銅含有液から銅を高除去率で除去でき、これにより銅濃度の低い処理液が得られるとともに、硫酸イオン濃度が高い場合でも生成する汚泥の濃度が高く、脱水性が良好で、汚泥の脱水速度が速く、ケーキ含水率の低い脱水汚泥が得られ、汚泥発生量を減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面により説明する。図1は本発明の実施形態による硫酸銅含有液の処理方法および装置を示すフロー図である。図1において、1は第1反応槽、2は第2反応槽、3は凝集槽、4は固液分離槽、5は混合装置である。L1は被処理液路、L2〜L4は移送路、L5は処理液路、L6〜L7はアルカリ注入路、L8は混合汚泥供給路、L9は凝集剤供給路、L11は汚泥返送路、L12は汚泥排出路である。P1〜P3はポンプ、pH1〜pH2はpH計であり、P1〜P2と連動している。M1〜M3、M5は攪拌器、M4はレーキである。
【0024】
上記の処理装置による銅含有液の処理方法は、第1反応工程として、被処理液路L1から第1反応槽1に被処理液(銅含有液)を導入し、混合汚泥供給路L8からアルカリ混合汚泥を供給し、被処理液中の銅とアルカリ混合汚泥と反応させる。このときpH計(pH1)で第1反応槽1のpHを計測し、第1反応槽1の反応液がpH6〜7.5を維持するように、ポンプP1の混合装置5へのアルカリ注入量を制御して反応を行う。反応により生成する水酸化銅、あるいは水酸化銅と硫酸銅の複塩のような難溶性の析出物は汚泥粒子を核として析出し、汚泥粒子の結晶が成長する。
【0025】
続いて第2反応工程として、第1反応槽1の反応液を移送路L2から第2反応槽2に導入し、pH調整剤路L7からpH調整剤を注入してpH8〜11に調整してさらに反応させる。このときpH計(pH2)で第2反応槽2のpHを計測し、第2反応槽2の反応液がpH8〜11を維持するように、ポンプP2のアルカリ注入量を制御して反応を行う。これにより残留する銅とアルカリが反応し、難溶性の水酸化銅が析出する。これにより反応液中の銅濃度は低くなるとともに、反応液中の有機物その他の不純物は水酸化銅の析出物中に抱き込まれて除去される。
【0026】
続いて凝集工程として、第2反応槽2の反応液を移送路L3から凝集槽3に導入し、凝集剤路L9から凝集剤を注入して凝集反応を行い、フロックを形成させる。このとき必要によりpH調整剤を注入する。続いて固液分離工程において、凝集槽3の凝集反応液を移送路L4から固液分離槽4に導入して固液分離し、分離液と汚泥に分離する。分離液は処理液として処理液路L5から排出する。分離汚泥は一部を汚泥返送路L11から混合装置5に返送し、残部を汚泥排出路L12から排出する。混合装置5では、アルカリ供給路L6からアルカリを供給して返送汚泥にアルカリを混合し、得られたアルカリ混合汚泥を混合汚泥供給路L8から第1反応槽1に供給する。このとき前述のように、pH計(pH1)で第1反応槽1のpHを計測し、第1反応槽1の反応液がpH6〜7.5を維持するように、ポンプP1のアルカリ注入量を制御する。
【実施例】
【0027】
以下、実験例、実施例および比較例により本発明の効果を説明する。
【0028】
実験例1:
硫酸銅1,000mg/L(Cuとして)を水道水に溶解した試料に、添加量を変えて硫酸を添加し、これを供試水として共存硫酸イオン(SO)の影響を検討した。硫酸銅1,000mg/L(Cuとして)は硫酸を添加しなくても元々硫酸イオンをSOとして1,500mg/L含む。この試料に水酸化ナトリウムを添加してpH9に調整し、一昼夜静置後の汚泥容積を表1に示す。表1中、SVは、メスシリンダーに汚泥を入れ、24時間静置したときの汚泥容積である。表1に示すように、硫酸イオンの共存量4,500mg/L以上では、汚泥容積は急激に増加しており、硫酸イオンが多量に共存する系では、汚泥の分離性、脱水性が悪いことがわかる。
【0029】
【表1】

【0030】
実験例2:
Cuおよび硫酸を多量に含む銅箔製造排水を被処理液としてHDS法処理を行った。被処理液の水質は、pH2、Cu:2,200mg/L、硫酸(SOとして):15,000mg/L、T−Cr:15mg/L、Ni:40mg/Lである。まず、本排水の処理特性を確認するため、被処理液に水酸化ナトリウム(NaOH)を添加してpH調整を行い、ろ紙No5Aでろ過後ろ液のCuを測定した。この結果を表2に示す。表2の結果から、処理水Cuを1mg/L未満にまで処理するためにはpH8以上にする必要があることがわかる。
【0031】
【表2】

【0032】
実施例1〜4、比較例1:
図1の装置および方法により、HDSの試験を行った。処理条件は、被処理液流入量:1L/h、汚泥循環量2L/h、第1反応槽1容量:1L、第2反応槽2容量:1L、固液分離槽4(沈殿槽)容量:5L、混合装置5容量:0.4Lである。pH調整は第1反応槽1および第2反応槽2に設置されたpH計による信号で、アルカリ注入用のポンプP1、P2を起動、停止させ制御した。凝集槽3には凝集剤としてポリアクリルアミド系のクリフロックPA331(栗田工業(株)製、登録商標)を4mg/L注入した。
【0033】
上記のHDS法による処理において、第1反応槽1の反応液pHを、実施例1〜4ではpH6.0〜7.5の各pHに調整し、比較例1ではpH8に調整し、第2反応槽2の反応液pHは実施例1〜4、比較例1のいずれもpH8.5に調整した。各例について、第1反応槽1および第2反応槽2の反応液の銅濃度を、ろ紙No5Aのろ液について測定し、Cu(mg/L)で表わした。また汚泥濃度は採取汚泥の24時間静置後の濃縮汚泥(g/L)で表わした。汚泥の脱水性は、ロールプレスを想定した試験機を使用し、ろ布は60メッシュ、圧搾圧力は2kg/cm2で脱水試験し、脱水ケーキのケーキ含水率(%)で表した。
【0034】
結果を表3に示す。表3において、汚泥濃度が安定した時点の結果を示す。表3に示すように、HDS法併用による二段中和の汚泥減容効果は顕著であり、第1反応槽1のpHを6〜7.5とすることにより含水率約60%以下、特にpHを6.5〜7とすることにより含水率50%以下の脱水ケーキが得られることがわかる。
また図2に、実施例2の汚泥濃度の変化をpH7のプロットで示し、比較例1の汚泥濃度の変化をpH8.5のプロットで示す。いずれの場合も、通水時間と共に汚泥が改質され汚泥濃度が上昇していくが、実施例2の汚泥濃度は比較例1よりも高い状態で安定することが分かる。
【0035】
参考例1:
従来のアルカリ沈殿法で処理を行った。従って、図1における混合装置5、汚泥返送路L11は使用せず、第1反応槽1へのアルカリ注入は混合装置5を経由せず、pH計(pH1)の信号に応じ直接第1反応槽1へ添加した。pH設定値は第1反応槽1、第2反応槽2ともpH8.5とした。この処理結果を表3に示すが、比較例1よりも悪い結果が得られている。
【0036】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0037】
硫酸銅メッキ工程排水、銅板や銅線等の酸洗排水、銅精錬排水などの銅含有液をアルカリと反応させ、難溶性析出物を析出させて分離、除去するための処理方法および装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態による硫酸銅含有液の処理方法および装置を示すフロー図である。
【図2】実施例および比較例の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0039】
1 第1反応槽
2 第2反応槽
3 凝集槽
4 固液分離槽
5 混合装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅含有液をアルカリ混合汚泥とpH6〜7.5で反応させる第1反応工程と、
第1反応工程の反応液をpH8〜11に調整してさらに反応させる第2反応工程と、
第2反応工程の反応液を固液分離する固液分離工程と、
固液分離工程で分離された分離汚泥の一部を返送する汚泥返送工程と、
返送汚泥にアルカリを混合してアルカリ混合汚泥とする混合工程と、
アルカリ混合汚泥を第1反応工程に供給する混合汚泥供給工程と
を含む硫酸銅含有液の処理方法。
【請求項2】
第1反応工程の反応液がpH6〜7.5になるように、混合工程で混合するアルカリの量を調整する請求項1記載の方法。
【請求項3】
第2反応工程と固液分離工程間に凝集工程を含む請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
銅含有液をアルカリ混合汚泥とpH6〜7.5で反応させる第1反応槽と、
第1反応槽の反応液をpH8〜11に調整してさらに反応させる第2反応槽と、
第2反応槽の反応液を固液分離する固液分離装置と、
固液分離装置で分離された分離汚泥の一部を返送する汚泥返送路と、
返送汚泥にアルカリを混合してアルカリ混合汚泥とする混合装置と、
アルカリ混合汚泥を第1反応槽に供給する混合汚泥供給路と
を含む銅含有液の処理装置。
【請求項5】
混合装置および第2反応槽に、それぞれアルカリを注入する第1アルカリ注入路および第2アルカリ注入路を含む請求項4記載の装置。
【請求項6】
第1反応槽に第1アルカリ注入路のアルカリ注入量を制御するpH計、および第2反応槽に第2アルカリ注入路のアルカリ注入量を制御するpH計を備えた請求項5記載の装置。
【請求項7】
第2反応槽と固液分離槽間に凝集槽を含む請求項4ないし6のいずれかに記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−122817(P2006−122817A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−314615(P2004−314615)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】