説明

銅貼り端子

【課題】アルミ送電線を変電所の銅ブスバーに接続するための、耐腐食性に富んだ銅貼り端子を提供する。
【解決手段】アルミ本体10は、アルミ送電線を嵌合圧縮接続する嵌合部12と、銅板20と同形状の銅板接合部14とを有し、アルミ本体10と銅板20とは、回転圧入ツールにより金属結合され、回転圧入ツールは、棒状のツール本体40の先端にショルダー部45と、棒状のピン部43とを有し、アルミ本体10の銅板接合部14と銅板20とが合わされて回転圧入ツール台47に置かれ、銅板20の面上からピン部43が回転圧入されながら、所望の部所を直線状に移動することにより、銅板接合部14と銅板20とに金属結合部が形成されて成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミ送電線を変電所構内の銅ブスバーに接続するための端子に係り、詳しくは、耐腐食性に富んだ銅貼り端子に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は、従来の銅貼り端子の取付け状態を示す端子取付け図である。図5において、鉄塔80を経由して変電所構内70に引き込まれたアルミ送電線60の先端は、図4に示す従来の銅貼り端子200の嵌合部12に嵌合圧縮され、ボルト穴30にボルト(図示せず)が貫通されて、変電所構内70の銅ブスバー50に締付けられている。
【0003】
図4は、従来の銅貼り端子の構造を示す銅貼り端子構造図である。図4a、bにおいて、従来の銅貼り端子200は、アルミ本体10の銅板ロー付け部16と銅板20とに、中間合金(BF合金)である合金層27を介在させ、ロー付けされて形成されている。ところで、従来の銅貼り端子200が、図5に示す変電所構内70のような屋外で使用される場合、雨水によりアルミと銅の異種金属による電触が進行し、合金層27の密着性が弱いため、剥離事故が発生していた。また合金層27を溶融させるための製造コストが、無視できなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、アルミ送電線を変電所の銅ブスバーに接続するための、耐腐食性に富んだ銅貼り端子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の銅貼り端子は、アルミ送電線を変電所構内の銅ブスバーに接続するための銅貼り端子であって、アルミ本体と銅板とを有し、アルミ本体は、アルミ送電線を嵌合圧縮接続する嵌合部と、銅板と同形状の銅板接合部とを有し、アルミ本体と銅板とは、ボルトにより、銅ブスバーに締付けられて接続されるための、複数のボルト穴をそれぞれ具備し、アルミ本体と銅板とは、回転圧入ツールにより金属結合され、回転圧入ツールは、棒状の回転圧入ツール本体の先端にショルダー部と、棒状のピン部とを有し、ショルダー部は、回転圧入ツール本体の先端の円周部から、ピン部の根元に向かって、凹面を形成し、ピン部の側面は雄ネジ構造を有し、アルミ本体の銅板接合部と銅板とが合わされて回転圧入ツール台に置かれ、銅板の面上から回転圧入ツールのピン部が回転圧入されながら、所望の部所を直線状に移動することにより、銅板接合部と銅板とに金属結合部が形成されて成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、アルミ送電線を変電所の銅ブスバーに接続するための、耐腐食性に富んだ銅貼り端子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明による銅貼り端子の構造を示す銅貼り端子構造図。
【図2】本発明による金属結合ツールの構造図。
【図3】本発明による銅貼り端子の製作工程図。
【図4】従来の銅貼り端子の構造を示す銅貼り端子構造図。
【図5】従来の銅貼り端子の取付け状態を示す端子取付け図。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0008】
本発明の実施の形態について、図を用いて説明する。図1は、本発明による銅貼り端子の構造を示す銅貼り端子構造図である。図1a、bにおいて、本発明の銅貼り端子100は、アルミ本体10と銅板20とを有している。アルミ本体10は、アルミ送電線60を嵌合圧縮して接続する嵌合部12と、銅板20と同形状の銅板接合部14とを有している。アルミ本体10と銅板20とは、ボルトにより銅ブスバー50に締付けられて接続されるための、複数のボルト穴30をそれぞれ具備している。
【0009】
図2は、本発明による回転圧入ツールの構造図である。図2において、当該ツールは、棒状の回転圧入ツール本体40と、その先端にショルダー部45と、棒状のピン部43とを有している。ショルダー部45は、回転圧入ツール本体40の先端の円周部から、ピン部43の根元に向かって、凹面を形成している。ピン部43の側面は雄ネジ構造を有している。
【0010】
図3は、本発明による銅貼り端子の製作工程図である。図3aにおいて、アルミ本体10の銅板接合部14と銅板20とが合わされて回転圧入ツール台47に置かれる。銅板20の面上から、回転圧入ツールのピン部43が、矢印で示されるように、高速回転して圧入される。これにより、銅板20は、摩擦熱による軟化を生じ、金属結合部25となる塑性流動域が発生する。
【0011】
つぎに、図3bにおいて、金属結合部25となる塑性流動域は、ピン部43の回転に引きずられて回転塑性流動を生じ、ピン部43の側面が雄ネジ構造であるため、回転しながらネジに沿ってピン部43の先端へと流動する。銅板接合部14と銅板20とが合わされた面を越えて、銅板接合部14側の領域にピン部43の先端が回転圧入されると、この流動領域では、金属間界面の酸化膜が分断され、金属的に結合した状態となる。その後、ピン部43は所望の部所を直線状に移動するよう、矢印の横方向へと移動する。
【0012】
つぎに、図3cにおいて、ピン部43が所望の部所を直線状に移動し、例えば、図1に示される金属接合部25が、銅板接合部14と銅板20とが合わされた周辺端部に形成されると、ピン部43は矢印の上方向に移動され、作業は終了する。このようにして作製された銅貼り端子100は、図5に示されるように、その嵌合部12にアルミ送電線60が嵌合圧縮されて接続され、変電所構内70の銅ブスバー50にボルトにより締付けられて接続されて使用される。
【0013】
以上説明したように本発明によれば、アルミ本体10の銅板接合部14と銅板20とが、金属結合した状態となり、雨水による電触の進行が抑制され、剥離事故を防止することができる。このため、アルミ送電線を変電所の銅ブスバーに接続するための、耐腐食性に富んだ銅貼り端子を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0014】
10 アルミ本体
12 嵌合部
14 銅板接合部
16 銅板ロー付け部
20 銅板
25 金属接合部
27 合金層
30 ボルト穴
40 回転圧入ツール本体
43 ピン部
45 ショルダー部
47 回転圧入ツール台
50 銅ブスバー
60 アルミ送電線
70 変電所構内
80 鉄塔
100 本発明による銅貼り端子
200 従来の銅貼り端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミ送電線を変電所構内の銅ブスバーに接続するための銅貼り端子であって、
アルミ本体と銅板とを有し、
前記アルミ本体は、前記アルミ送電線を嵌合圧縮する嵌合部と、前記銅板と同形状の銅板接合部とを有し、
前記アルミ本体と前記銅板とは、ボルトにより、前記銅ブスバーに締付けられて接続されるための、複数のボルト穴をそれぞれ具備し、
前記アルミ本体と前記銅板とは、回転圧入ツールにより金属結合され、
前記回転圧入ツールは、棒状のツール本体の先端にショルダー部と、棒状のピン部とを有し、
前記ショルダー部は、前記ツール本体の先端の円周部から、前記ピン部の根元に向かって、凹面を形成し、
前記ピン部の側面は雄ネジ構造を有し、
前記前記アルミ本体の前記銅板接合部と前記銅板とが合わされて回転圧入ツール台に置かれ、前記銅板の面上から前記回転圧入ツールの前記ピン部が回転圧入されながら、所望の部所を直線状に移動することにより、前記銅板接合部と前記銅板とに金属結合部が形成されて成ることを特徴とする銅貼り端子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−160318(P2012−160318A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18627(P2011−18627)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000117010)旭電機株式会社 (127)
【Fターム(参考)】