説明

銘板

【課題】より多くの情報を記録できるような銘板を提供する。
【解決手段】RFIDユニット20と、RFIDユニット20を収容する樹脂部材11、14と、樹脂部材のRFIDユニット20が覆われるようにその樹脂部材へ接合される金板12とを備えている。この銘板10によると、情報を記録し、無線信号として発信できるRFIDユニット20を銘板10と一体化させている。よって、これまでの銘板10よりもより多くの情報を記録させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銘板に関する。
【背景技術】
【0002】
銘板の多くは、金属を素材とし、色材や刻印によって識別コード等の情報をその表面に記した上で、商品や機材などの被管理物に装着される。特許文献1には、この種の銘板の作成方法が開示されている。この文献1に開示された銘板作成方法は、陽極酸化皮膜を有するアルミニウム基板上にレーザを照射することによって、その表面に情報を記録するようになっている。
【特許文献1】特開平11−78245
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年、銘板を装着する各種被管理物の製造年月日、規格、仕様、耐用年数などといった各種属性を一元管理することにより、それらの被管理物の製造、出荷、廃棄などの工程を効率化する試みがなされている。しかしながら、これまでに提案されてきた銘板は、色材や刻印などによって限られた文字数の情報しか記録できないため、そのような効率化の要請に十分に応え得るものではないという問題がある。
【0004】
本発明は、このような背景の下に案出されたものであり、より多くの情報を記録できるような銘板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の好適な態様である銘板は、RFIDユニットと、RFIDユニットを収容する樹脂部材と、樹脂部材のRFIDユニットが覆われるようにその樹脂部材へ接合される金板とを備えていることを特徴とする。この態様によると、これまでの銘板よりもより多くの情報を記録させることができる。
【0006】
この態様において、樹脂部材は、扁平な略直方体をなし、中央に凹部を有する樹脂フレームと上記凹部に入る樹脂板とで形成され、金板は、樹脂板の上面に接合される第1の金板と、樹脂フレームの下面に接合される第2の金板とを有してもよい。これによると、2つの金板に挟持されることにより、より剛性の高い銘板を実現できる。
【0007】
また、樹脂フレーム、樹脂板、第1の金板、および第2の金板を上下方向に貫く一又は複数の孔が形成されていてもよい。これによると、その一又は複数の孔をビス止めすることにより、被管理物へより確実に装着することができる。
【0008】
また、金板は、自身の面の一部分が樹脂部材に接合され、樹脂部材の外側に伸びる部分に一又は複数の孔が形成されていてもよい。これによると、金板の孔をビス止めすることにより、被管理物へより確実に装着することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、情報を無線信号として発信できるRFIDユニットを銘板と一体化させている。よって、これまでの銘板よりもより多くの情報を記録させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(発明の実施の形態)
本発明の実施形態について、以下、図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1は、本実施形態にかかる銘板10の平面図である。図2(A)は、図1のA−A部分断面図であり、図2(B)は、図1のB−B部分断面図である。図3は、銘板10を上側やや前方から見た図である。また、図4は、銘板10を前方から見た正面図である。この銘板10は、RFID(Radio Frequency IDentification)ユニット(図5参照)を収容した樹脂フレーム11の上面と下面に第1金板12と第2金板13をそれぞれ接合した構造をなしている。
【0012】
樹脂フレーム11は、ABS(acrylonitrile butadiene styrene)樹脂を扁平な略直方体状に成形した部材である。この樹脂フレーム11の上面には、前後左右の縁の僅かな厚さを残してその内側が下面側にやや凹んだ凹部11aが設けられている。そして、その矩形状に凹んだ凹部11aのほぼ中央には、RFIDユニット20を収容する四角状の空間11b(以下、「RFID収容空間」と呼ぶ)が形成されている。
【0013】
図5は、RFIDユニット20の概略構成を示す図である。図5に示すように、RFIDユニット20は、アンテナコイル21と半導体チップ25とを有する。アンテナコイル21は、薄板状のコア部材22に銅線23を巻回させている部材である。アンテナコイル21は、第1金板12よりも前後方向および左右方向の幅の寸法が僅かに短くされた長四角形状とされ、RFID収容空間11bへ収容される。半導体チップ25は、CPU(Central Processing Unit)26、メモリ27、送受信機28、およびコンデンサ29を集積回路としてワンチップ化したものである。
【0014】
このRFIDユニット20のアンテナコイル21は、図示しないリーダライタから無線信号を受信すると、コア部材22を貫く磁束を発生させる。そして、その磁束の変化の作用を受けて得られる電気信号が送受信機28からCPU26へ伝達され、また、コンデンサ29に電力が蓄電される。CPU26は、コンデンサ29に蓄電された電力を用いてメモリ27からデータを読み出し、読み出したデータを送受信機28からアンテナコイル21を介して発信する。
【0015】
図2(A)および図2(B)に示すように、樹脂フレーム11には、透明樹脂板14が接合され、さらにその透明樹脂板14の上面には第1金板12が接合されている。透明樹脂板14は、透明な樹脂であるメタアクリル樹脂を樹脂フレーム11の凹部11aの形状に合わせて成形した部材である。この透明樹脂板14の前後方向および左右方向の幅の寸法は、樹脂フレーム11の凹部11aの前後方向および左右方向の幅の寸法よりもやや短くなっている。そして、この透明樹脂板14は、樹脂フレーム11の凹部11aに嵌め込まれ、接着剤によってその凹部11aへ接合される。この透明樹脂板14の接合により、凹11aのほぼ中央のRFID収容空間11bは第2金板13との間で封止された状態になる。
【0016】
第1金板12は、ステンレスを板状に加工した部材である。この第1金板12の前後方向および左右方向の幅の寸法は、透明樹脂板14の前後方向および左右方向の幅の寸法とほぼ同じである。そして、この第1金板12は、自らの前後左右の縁が透明樹脂板14のそれと揃うように、透明樹脂板14の上面へ接着剤によって接合されている。これにより、樹脂フレーム11のRFID収容空間11bに収容されているRFIDユニット20は、透明樹脂板14を挟んでその上の第1金板12に覆われた状態になる。この第1金板12は、色材によって管理情報などの文字を記した際にその文字が見易いように、光沢を抑えた表面加工が施してある。
【0017】
第2金板13は、第1金板12と同様に、ステンレスを板状に加工した部材である。この第2金板13の前後方向および左右方向の幅の寸法は、樹脂フレーム11の前後方向および左右方向の幅の寸法とほぼ同じである。そして、この第2金板13は、自らの前後左右の縁が樹脂フレーム11のそれと揃うように、樹脂フレーム11の下面へ接着剤によって接合されている。つまり、この銘板10は、第2金板13、樹脂フレーム11、透明樹脂板14、および第1金板12を下から順に積層し、樹脂フレーム11のほぼ中央のRFID収容空間11bへRFIDユニット20を収容した構造になっている。
【0018】
そして、図1および図3に示すように、第1金板12の左右の縁よりもやや内側の位置には、第1金板12の上面から、透明樹脂板14、樹脂フレーム11、第2金板13を貫いてその裏側に達するビス止め用の孔15,16,17,18がそれぞれ穿設されている。よって、被管理物である商品や機材の一面にこの銘板10の第2金板13の裏面を当接させ、第1金板12の側から、孔15,16,17,18をビス止めすることにより、それらの被管理物へ銘板10を装着させることができる。
【0019】
また、RFIDユニット20は、透明樹脂板14に接着剤で固定され、第2金板13に固定されていない状態とされている。ただし、コア部材22は、表面が接着性を有しているので、銅線23がコア部材22の表面内に沈み込むことで、コア部材22の接着性を有する表面が第2金板13に当接し、ある程度固定されることになる。また、樹脂フレーム11の凹部11cに入り込むシール材50によって、水や油などがRFID収容空間11bに混入するのを防止し、RFIDユニット20の動作不良の発生を防いでいる。
【0020】
また、第1金板12の上面と、樹脂フレーム11の凹部11a以外の上面は、全て同じ高さになっており、銘板10の上面が平らになっている。さらに、樹脂フレーム11と透明樹脂板14との間には、銘板10の長手方向(左右方向)の両側にわずかな隙間S1が設けられ、短手方向(前後方向)の両側にもわずかな隙間S2が設けられている。この隙間S1,S2は、接着剤の逃げ場として作用するとともに、透明樹脂板14を凹部11aに入れ易くする作用を奏している。なお、隙間S1,S2は、S1>S2とされ、樹脂フレーム11と透明樹脂板14のそれぞれの変形や形状精度を考慮している。
【0021】
以上説明した実施形態にかかる銘板10は、管理情報などの文字を記す第1金板12と、RFIDユニット20を収容した樹脂部材とを一体化している。よって、第1金板12の表面には記録しきれない量の情報をRFIDユニット20のメモリ27に記憶させ、その情報をリーダライタにより読み込んで適宜参照することにより、銘板10を装着する被管理物をより効率的に管理することができる。
【0022】
また、本実施形態にかかる銘板10は、樹脂フレーム11と透明樹脂14とからなる樹脂部材にRFIDユニット20を収容し、その樹脂部材を第1金板12および第2金板13によって挟み込む構造になっている。よって、第1金板12と第2金板13による十分な剛性を確保しつつ、リーダライタとの間の電磁波通信を良好に行うことができる。
【0023】
この作用について、図6を参照して詳述する。RFIDユニット20が、無線信号を受信したアンテナコイル21を貫くように形成される磁束の変化の作用を受けて通信を行うことは上述したところであるが、そのアンテナコイル21の近傍に金属材料がある場合、磁束がその金属材料と差交してその部分に渦電流が発生する。そして、金属材料に渦電流が流れると、アンテナコイル21を貫く磁束を打ち消す方向の磁束が発生し、結果として、無線信号の感度が著しく損なわれる。
【0024】
これに対し、本実施形態にかかる銘板10は、非導電体である樹脂フレーム11と透明樹脂板14とからなる樹脂部材によってRFIDユニット20を収容し、その樹脂部材を第1金板12および第2金板13によって挟持している。よって、第1金板12と第2金板13の間には、図6に示すような磁束漏洩路40を形成するに十分な隙間が確保され、この磁束漏洩路40から漏洩した磁束の変化から好感度の通信が得られる。本実施形態にかかる銘板10のアンテナコイル21は、コア部材22が第1金板12および第2金板13と平行な前後方向を向くようにしてRFID収容空間11bへ収容されており、そのような収容の向きが、図6に示す磁束漏洩路40の形成により一層寄与する。また、仮に無線信号の発信源となるリーダライタが銘板10の第1金板12の側にあったとしても、その方角から伝播される無線信号は回折現象によって磁束漏洩路40の磁束に作用するため、高感度の通信が維持される。なお、発明者らの検証によると、かかる構成の銘板10のRFIDユニット20の共振周波数を、近年普及しつつある13,56MHz帯の周波数に設定してリーダライタとの通信を試みたところ、その通信の感度は良好であったことが確認されている。
【0025】
(他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、種々の変形実施が可能である。
【0026】
例えば、第1金板12は、表面に凹凸を有する梨地状態のものとしたり、その一端に孔または凸部を設けたものとしてもよい。
【0027】
また、上記実施形態にかかる銘板10の第1金板12および第2金板13は、ステンレスにより形成されている。これに対し、銅、アルミニウム、コバルト、ニッケル、フェライト、クローム、およびそれらの合金などの他の金属によりそれらを形成してもよい。また、第1金板12と第2金板13が異なる金属により形成されていてもよい。また、樹脂部材を樹脂フレーム11と透明樹脂板14の2部材で形成せず、それらを一体化した一部材としてもよい。さらに、透明樹脂板14は、透明でなく、無透明の樹脂板としてもよい。
【0028】
上記実施形態にかかる銘板10の樹脂フレーム11は、ABS(acrylonitrile butadiene styrene)樹脂により形成され、透明樹脂板14は、メタアクリル樹脂により形成されている。これに対し、両部材を同一樹脂材としたり、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂などの他の熱可塑性樹脂によってそれらを形成してもよい。また、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂などの熱硬化性樹脂によってそれらを形成してもよい。
【0029】
上記実施形態にかかる銘板10は、第1金板12、透明樹脂板14、樹脂フレーム11、および第2金板13を貫く孔15,16,17,18をビス止めすることにより、被管理物へ装着されるようになっている。これに対し、そのような孔15,16,17,18を設けることなく、第2金板13を被管理物へ直接接着することにより、装着を行ってもよい。また、第2金板13を接合することなく、樹脂フレーム11自体の下面を被管理物へ接着することにより、装着を行ってもよい。
【0030】
上記実施形態にかかる銘板10は、第1金板12と透明樹脂板14の前後方向および左右方向の幅の寸法がほぼ同じであり、両者の前後左右の縁が揃うように接着されている。これに対し、第1金板12と透明樹脂板14の前後方向または左右方向の幅の寸法を違えてもよい。図7は、このような変形例にかかる銘板10Aの平面図である。この図に示す銘板10Aの第1金板12の前後方向の幅の寸法は、透明樹脂板14の前後方向の幅の寸法よりもやや短くなっている。また、その左右方向の幅の寸法は、透明樹脂板14の左右方向の幅の寸法とほぼ同じである。そして、この第1金板12は、透明樹脂板14の前後の縁からの距離をほぼ同じくする中央位置に、接着剤によって接合されている。このため、透明樹脂板14の前後の縁の側の一部は、第1金板12によって覆われずに露出している。また、透明樹脂板14の前後の縁からの距離をほぼ同じくする中央位置を第1金板12の外延と同じ形状に凹ませて接合凹部を形成し、その接合凹部へ第1金板12を嵌め込むようにして接合してもよい。このようにすると、透明樹脂板14の接合凹部以外の上面と、第1金板12の上面と、樹脂フレーム11の凹部11a以外の上面の高さが全て同じになり、銘板10の上面を平らにすることができる。
【0031】
上記実施形態にかかる銘板10は、樹脂フレーム11と第2金板13の前後方向および左右方向の幅の寸法がほぼ同じであり、両者の前後左右の縁が揃うように接着されている。これに対し、樹脂フレーム11および第2金板13の前後方向または左右方向の寸法を違えてもよい。例えば、この第2金板13の前後方向の幅の寸法と樹脂フレーム11の前後方向の幅の寸法とをほぼ同じにする一方で、その左右方向の幅の寸法を樹脂フレーム11の左右方向の幅の寸法よりも大きくし、第2金板13を、その左右の縁から樹脂フレーム11の左右の縁までの距離が等しくなり、かつ、その前後の縁同士がほぼ一致するように、樹脂フレーム11の下面へ接合するとよい。さらに、樹脂フレーム11の左右両側に延在する第2金板13の外側の部分に、ビス止め用の一又は複数の孔を穿設してもよい。このようにすることにより、第2金板13の孔をビス止めすることによって銘板10を被管理物へ装着することが可能となり、また、樹脂フレーム11、第1金板12、および透明樹脂板14を貫く孔を設ける必要がなくなるため、装着に用いるビスの長さをより短くすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態にかかる銘板の平面図である。
【図2】図1に示す銘板のA−A部分断面図およびB−B部分断面図である。
【図3】図1に示す銘板を上側やや前方から見た図である。
【図4】図1に示す銘板を前方から見た正面図である。
【図5】RFIDユニットの概略構成を示す図である。
【図6】磁束漏洩路が形成される様子を示す図である。
【図7】本発明の変形例にかかる銘板の平面図である。
【符号の説明】
【0033】
10…銘板、11…樹脂フレーム、11a…凹部、11b…RFID収容空間、12…第1金板、13…第2金板、14…透明樹脂板、20…RFIDユニット、21…アンテナコイル、25…半導体チップ、22…コア部材、23…銅線、26…CPU、27…メモリ、28…送受信機、29…コンデンサ、15,16,17,18…孔、40…磁束漏洩路、50…シール材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFIDユニットと、
上記RFIDユニットを収容する樹脂部材と、
上記樹脂部材の上記RFIDユニットが覆われるようにその樹脂部材へ接合される金板と、
を備えていることを特徴とする銘板。
【請求項2】
前記樹脂部材は、
扁平な略直方体をなし、中央に凹部を有する樹脂フレームと上記凹部に入る樹脂板とで形成され、
前記金板は、
上記樹脂板の上面に接合される第1の金板と、上記樹脂フレームの下面に接合される第2の金板とを有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の銘板。
【請求項3】
前記樹脂フレーム、前記樹脂板、前記第1の金板、および前記第2の金板を上下方向に貫く一又は複数の孔が形成されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の銘板。
【請求項4】
前記金板は、自身の面の一部分が前記樹脂部材に接合され、前記樹脂部材の外側に伸びる部分に一又は複数の孔が形成されている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の銘板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−276042(P2008−276042A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−121502(P2007−121502)
【出願日】平成19年5月2日(2007.5.2)
【出願人】(506118836)デジタル・インフォメーション・テクノロジー株式会社 (28)
【Fターム(参考)】