説明

【課題】比較的固い物を切断するときの負荷の低減を図ることができる連刃式鋏を提供する。
【解決手段】本発明は、複数対の切断用刃(110、120、130)を備えており、前記複数対の切断用刃における第一の対の切断用刃(120)と、前記第一の対の切断用刃(120)に隣接する第二の対の切断用刃(110、130)とでは、前記切断用刃の噛み合わせの開始のタイミングが相互にずれている鋏(100)を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鋏に関し、より詳細には、複数対の切断用刃を有する鋏に関する。
【背景技術】
【0002】
切断対象物を一度に細かく切断するために、複数対の切断用刃を有する鋏が種々提案されている。
【0003】
例えば、特開平10−118355号には、3対の切断用刃を有する3連刃式鋏が開示されている。
【0004】
上記公報に開示されている3連刃式鋏を用いることにより、一度に3個の切り筋を切断対象物(例えば、紙)に入れることができる。
【特許文献1】特開平10−118355号公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の3連刃式鋏においては、3対の切断用刃は同時に噛み合いを開始し、切断対象物を切断する。
【0006】
このため、紙その他の柔らかい物を切断する場合には支障はないが、厚紙や樹脂などの比較的固い物を切断する場合には、切断時の負荷が大きくなるという問題があった。すなわち、3対の切断用刃が同時に噛み合いを開始するため、各対の切断用刃に作用する負荷の3倍の負荷が鋏を握っている使用者の手にかかることになり、3連刃式鋏では比較的固い物は切りにくいという問題があった。
【0007】
このような問題は、3連刃式鋏に限らず、4対以上の切断用刃を有する鋏に共通する問題である。
【0008】
本発明は、従来の連刃式鋏における上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、比較的固い物を切断するときの負荷の低減を図ることができる連刃式鋏を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下に、「発明の実施の形態」において使用される参照符号を用いて、上述の課題を解決するための手段を説明する。これらの参照符号は、「特許請求の範囲」の記載と「発明の実施の形態」の記載との間の対応関係を明らかにするためにのみ付加されたものであり、「特許請求の範囲」に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いるべきものではない。
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明は、複数対の切断用刃(110、120、130:210、220、230)を備えており、前記複数対の切断用刃(110、120、130:210、220、230)が相互に平行に並列に配置されている鋏(100、200)であって、前記複数対の切断用刃(110、120、130:210、220、230)における第一の対の切断用刃(120:210)と、前記第一の対の切断用刃(120:210)に隣接する第二の対の切断用刃(110、130:220、230)とでは、前記切断用刃の噛み合わせの開始のタイミングが相互にずれていることを特徴とする鋏(100、200)を提供する。
【0011】
例えば、一対の切断用刃における噛み合わせが最も端部に位置する一対の切断用刃(110)から始まり、順次、隣接する一対の切断用刃(120、130)における噛み合わせが開始するように設定することができる。
【0012】
あるいは、一対の切断用刃における噛み合わせが中央に位置する一対の切断用刃(210)から始まり、順次、隣接する一対の切断用刃(220、230)における噛み合わせが開始するように設定することができる。
【0013】
さらに、本発明は、複数対の切断用刃(110、120、130:210、220、230)を備えており、前記複数対の切断用刃(110、120、130:210、220、230)が相互に平行に並列に配置されている鋏であって、前記複数対の切断用刃(110、120、130:210、220、230)における各対の切断用刃毎に切断用刃の高さ(A、B、C)が異なることを特徴とする鋏を提供する。
【0014】
例えば、最も端部に位置する一対の切断用刃(110)が最も大きい高さ(A)を有しており、隣接する一対の切断用刃(120、130)は順次小さくなる高さ(B、C)を有していることが好ましい。
【0015】
あるいは、中央に位置する一対の切断用刃(210)が最も大きい高さ(A)を有しており、隣接する一対の切断用刃(220、230)は順次小さくなる高さ(B、C)を有しているものとすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る鋏によれば、複数対の切断用刃の各々が相互に異なるタイミングで噛み合わせを開始し、従って、相互に異なるタイミングで切断対象物との切断を開始する。
【0017】
従来の3連刃式鋏においては、3対の切断用刃が同時に噛み合いを開始するため、使用者の手にかかる負荷が大きいという問題点があった。
【0018】
これに対して、本発明に係る鋏においては、複数対の切断用刃の各々が相互に異なるタイミングで切断を開始するため、使用者の手にかかる負荷は分散され、大きな負荷が一度に使用者の手にかかることはない。このため、切断対象物が比較的固い物であっても、本発明に係る鋏によれば、従来の3連刃式鋏と比較して、スムーズに切断することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(第一の実施形態)
図1は本発明の第一の実施形態に係る鋏100の平面図、図2は本発明の第一の実施形態に係る鋏100の側面図である。
【0020】
本実施形態に係る鋏100は、3対の切断用刃110、120、130と、一対の把手140と、回転中心軸150と、2個の止め軸160と、を備えている。
【0021】
図2に示すように、3対の切断用刃110、120、130は相互に平行に並列に配置されており、一対の切断用刃120が中央に位置し、その両側に他の二対の切断用刃110、130が配置されている。
【0022】
一対の把手140の各々は中央に位置する一対の切断用刃120の各々の端部(図1の右側の端部)に固定的に取り付けられている。
【0023】
一対の切断用刃120の両側に位置する二対の切断用刃110、130は、3対の切断用刃110、120、130の回転中心において、回転中心軸150を介して、それぞれ一対の切断用刃120に対して固定的に取り付けられている。
【0024】
さらに、一対の切断用刃120の両側に位置する二対の切断用刃110、130は、それらの端部において、二つの止め軸160を介して、一対の切断用刃120に対して固定的に取り付けられている。すなわち、二対の切断用刃110、130の各々における一方の切断用刃は一方の止め軸160を介して一対の切断用刃120の一方の切断用刃に固定され、二対の切断用刃110、130の各々における他方の切断用刃は他方の止め軸160を介して一対の切断用刃120の他方の切断用刃に固定されている。
【0025】
このため、3対の切断用刃110、120、130は相互に同期して動作を行う。具体的には、鋏100の使用者が把手140を相互に離れる方向に回動させると、3対の切断用刃110、120、130の各々における一方の切断用刃が他方の切断用刃から離れる方向に回動し、鋏100の使用者が把手140を相互に近づく方向に回動させると、3対の切断用刃110、120、130の各々における一方の切断用刃は他方の切断用刃に対して近づく方向に回動する。
【0026】
図3は、3対の切断用刃110、120、130の各々における一方の切断用刃(図1に示す鋏100において下側に位置する切断用刃)を示す平面図である。
【0027】
図3に示すように、3対の切断用刃110、120、130の各々の切断用刃は相互に異なる高さを有している。ここに、「高さ」とは、鋏100の中心線と直交する方向H(図1参照)における任意の位置での切断用刃の長さを指す。
【0028】
具体的には、図3に示すように、中央に位置する一対の切断用刃120の一方の側に位置する一対の切断用刃110は高さAを、中央に位置する一対の切断用刃120は高さBを、中央に位置する一対の切断用刃120の他方の側に位置する一対の切断用刃130は高さCをそれぞれ有している。高さAが最も大きく、次いで、高さBが大きく、高さCが最も小さい(A>B>C)。
【0029】
すなわち、3対の切断用刃110、120、130は、切断用刃110、切断用刃120、切断用刃130の順に大きな高さを有している。
【0030】
図4は、本実施形態に係る鋏100を用いて切断対象物としての紙170を切断する場合の、3対の切断用刃110、120、130の噛み合わせの開始のタイミングの関係を示す図である。
【0031】
一対の把手140を相互に離れる方向に開き、3対の切断用刃110、120、130の各々を相互に離れる方向に回動させた後、3対の切断用刃110、120、130の間に紙170を配置した場合を想定する。
【0032】
この場合、一対の把手140を相互に近づく方向に閉じ、3対の切断用刃110、120、130の各々を相互に近づく方向に回動させた場合の任意の瞬間における3対の切断用刃110、120、130の各々の切断用刃の間の間隔をW1、W2、W3とすると、図4に示すように、W1<W2<W3の関係となる。
【0033】
すなわち、上述のように、3対の切断用刃110、120、130の各々の高さA、B、Cの間にはA>B>Cの関係があるため、本実施形態に係る鋏100を用いて紙170を切断する場合、中央に位置する一対の切断用刃120の一方の側に位置する一対の切断用刃110が最初に噛み合わせを開始し、紙170の切断を開始する。一対の切断用刃110に続いて、中央に位置する一対の切断用刃120が噛み合わせを開始し、紙170の切断を開始する。最後に、中央に位置する一対の切断用刃120の他方の側に位置する一対の切断用刃130が噛み合わせを開始し、紙170の切断を開始する。
【0034】
以上のように、本実施形態に係る鋏100によれば、3対の切断用刃110、120、130の各々が異なるタイミングで噛み合わせを開始し、従って、異なるタイミングで切断対象物としての紙170の切断を開始する。
【0035】
従来の3連刃式鋏においては、3対の切断用刃が同時に噛み合いを開始するため、使用者の手にかかる負荷が大きいという問題点があったが、本実施形態に係る鋏100においては、3対の切断用刃110、120、130の各々が異なるタイミングで紙170の切断を開始するため、使用者の手にかかる負荷は分散され、大きな負荷が一度に使用者の手にかかることはない。このため、切断対象物が比較的固い物であっても、本実施形態に係る鋏100によれば、従来の3連刃式鋏と比較して、スムーズに切断することが可能である。
【0036】
(第二の実施形態)
図5は本発明の第二の実施形態に係る鋏200の平面図、図6は本発明の第二の実施形態に係る鋏200の側面図である。
【0037】
本実施形態に係る鋏200は5対の切断用刃を有する5連刃式鋏である。この点を除いて、本実施形態に係る鋏200は第一の実施形態に係る鋏100と同様の構造を有している。
【0038】
本実施形態に係る鋏200における5対の切断用刃のうち、中央に位置する一対の切断用刃210は第一の実施形態に係る鋏100における一対の切断用刃110と同じ高さAを有しており、一対の切断用刃210の両側に位置する二対の切断用刃220は第一の実施形態に係る鋏100における一対の切断用刃120と同じ高さBを有しており、二対の切断用刃220の両側に位置する二対の切断用刃230は第一の実施形態に係る鋏100における一対の切断用刃130と同じ高さCを有している。
【0039】
このため、本実施形態に係る鋏200を用いて紙170(図4参照)を切断する場合、中央に位置する一対の切断用刃210が最初に噛み合わせを開始し、紙170の切断を開始する。一対の切断用刃210に続いて、一対の切断用刃210の両側に位置する二対の切断用刃220が噛み合わせを開始し、紙170の切断を開始する。最後に、二対の切断用刃220の両側に位置する二対の切断用刃230が噛み合わせを開始し、紙170の切断を開始する。
【0040】
以上のように、本実施形態に係る鋏200によれば、第一の実施形態に係る鋏100と同様に、5対の切断用刃210、220、230の各々が異なるタイミングで噛み合わせを開始し、従って、異なるタイミングで切断対象物としての紙170の切断を開始する。
【0041】
このため、使用者の手にかかる負荷は分散され、大きな負荷が一度に使用者の手にかかることはない。従って、切断対象物が比較的固い物であっても、従来の3連刃式鋏と比較して、スムーズに切断することが可能である。
【0042】
上述の第一の実施形態に係る鋏100は3対の切断用刃を、第二の実施形態に係る鋏200は5対の切断用刃をそれぞれ備えているが、切断用刃の対の数は任意である。切断用刃の対の数としては、2以上の任意の数を選定することができる。
【0043】
また、第一の実施形態に係る鋏100においては、一方の側の切断用刃から噛み合わせが開始され、以後、他方の側の切断用刃に向かって、順次、噛み合わせが開始され、第二の実施形態に係る鋏200においては、中央に位置する切断用刃から噛み合わせが開始され、以後、隣接する切断用刃が順次噛み合わせを開始するように構成されている。複数対の切断用刃における噛み合わせの開始順序は第一及び第二の実施形態における噛み合わせの開始順序に限定されない。複数対の切断用刃のうち、任意の一対の切断用刃とそれに隣接する一対の切断用刃との噛み合わせ位置が相互にずれており、従って、噛み合わせの開始のタイミングが相互に異なるものである限り、複数対の切断用刃の各々の噛み合わせの開始順序を任意に設定することが可能である。
【0044】
上述の第一及び第二の実施形態に係る鋏100、200においては、複数対の切断用刃における各々の切断用刃の高さを相互に異なるものにすることにより、複数対の切断用刃の噛み合わせの開始のタイミングを相互に異なるものにしているが、他の方法を用いて、複数対の切断用刃の噛み合わせの開始のタイミングを相互に異なるものにすることも可能である。
【0045】
例えば、中央に位置する一対の切断用刃に止め軸160を介して複数対の切断用刃を固定する際に、各対の切断用刃の取り付け角度をずらすことにより、複数対の切断用刃における各々の切断用刃の高さを相互に異なるものにすることと同等の効果を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る鋏の平面図である。
【図2】本発明の第一の実施形態に係る鋏の側面図である。
【図3】本発明の第一の実施形態に係る鋏における3対の切断用刃の各々における一方の切断用刃を示す平面図である。
【図4】本発明の第一の実施形態に係る鋏を用いて切断対象物としての紙を切断する場合の、3対の切断用刃の噛み合わせの開始のタイミングの関係を示す図である。
【図5】本発明の第二の実施形態に係る鋏の平面図である。
【図6】本発明の第二の実施形態に係る鋏の側面図である。
【符号の説明】
【0047】
100 本発明の第一の実施形態に係る鋏
110、120、130 第一の実施形態における一対の切断用刃
140 把手
150 回転中心軸
160 止め軸
200 本発明の第二の実施形態に係る鋏
210、220、230 第二の実施形態における一対の切断用刃

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数対の切断用刃を備えており、前記複数対の切断用刃が相互に平行に並列に配置されている鋏であって、
前記複数対の切断用刃における第一の対の切断用刃と、前記第一の対の切断用刃に隣接する第二の対の切断用刃とでは、前記切断用刃の噛み合わせの開始のタイミングが相互にずれていることを特徴とする鋏。
【請求項2】
一対の切断用刃における噛み合わせが最も端部に位置する一対の切断用刃から始まり、順次、隣接する一対の切断用刃における噛み合わせが開始することを特徴とする請求項1に記載の鋏。
【請求項3】
一対の切断用刃における噛み合わせが中央に位置する一対の切断用刃から始まり、順次、隣接する一対の切断用刃における噛み合わせが開始することを特徴とする請求項1に記載の鋏。
【請求項4】
複数対の切断用刃を備えており、前記複数対の切断用刃が相互に平行に並列に配置されている鋏であって、
前記複数対の切断用刃における各対の切断用刃毎に切断用刃の高さが異なることを特徴とする鋏。
【請求項5】
最も端部に位置する一対の切断用刃が最も大きい高さを有しており、隣接する一対の切断用刃は順次小さくなる高さを有していることを特徴とする請求項4に記載の鋏。
【請求項6】
中央に位置する一対の切断用刃が最も大きい高さを有しており、隣接する一対の切断用刃は順次小さくなる高さを有していることを特徴とする請求項4に記載の鋏。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−119322(P2008−119322A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−308173(P2006−308173)
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【出願人】(000139562)株式会社愛邦 (11)
【Fターム(参考)】