説明

鋳型搬送台車

【課題】 本発明は、継ぎ目に隙間が設けられた左右一対のレール上を左右の前後輪の転動によって円滑に走行可能な鋳型搬送台車を提供する。
【解決手段】 左右一対のレール11上を転動する鋳型搬送台車20の左右の前輪23fl,23frの車軸22、及び左右の後輪23rl,23rrの車軸22が走行方向に夫々ずらされている。これにより、左右の前輪又は左右の後輪が左右一対の移動レール18と左右一対の固定レール11との間の継ぎ目19、又は分割された固定レール11間の継ぎ目12を通過するときに同時に継ぎ目の隙間に落ち込むことがなく、左右の前輪及び左右の後輪が時間差を置いてレールの継ぎ目を通過するので、鋳型搬送台車がレールの継ぎ目を通過するときに受けるショックを緩和することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右一対のレール上を左右の前輪及び左右の後輪の転動によって走行する鋳型搬送台車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、鋳型1を載置されて注湯ライン12の左右一対のレール32上を左右の前輪及び後輪の転動によって走行する鋳型搬送台車20が記載されている。トラバーサ29は鋳枠合せ位置27と注湯ライン12の入口位置31との間で往復動される。トラバーサ29の上面には、入口位置31において、注湯ライン12のレール32と整列する一対のレール30が設けられている。トラバーサ29が入口位置31に移動されると、鋳型搬送台車20は、トラバーサ29のレール30から注湯ライン12のレール32に乗り移され、注湯ライン12を走行する間に鋳型1に注湯される。
【0003】
トラバーサ29は移動されるので、トラバーサ29のレール30と注湯ライン12のレール32との継ぎ目にはある程度の隙間が設けられている。また、注湯ライン12のレール32は製作上、分割して基台上に固定されているが、製作公差、熱膨張を考慮して継ぎ目に隙間が設けられている。
【特許文献1】特開2006−326660号公報(段落〔0012〕、〔0013〕、〔0017〕、及び〔図1〕、〔図2〕)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の鋳型搬送台車では、左右の前輪及び左右の後輪の車軸が夫々走行方向において同一軸線上に配置されているので、左右の前輪又は左右の後輪がレールの継ぎ目を通過するとき隙間に同時に落ち込み、鋳型搬送台車が瞬間的に沈んで強いショックが発生する。特に、往復動するトラバーサのレールとライン側のレールとの継ぎ目の隙間は大きくてショックが大きくなるので、鋳型搬送台車に載置された注湯前の鋳型に砂崩れが生じ砂噛みを生じる虞があった。また、レールの継ぎ目部分が該ショックにより早く摩耗、変形して段差が発生し、益々ショックが助長される。そして、かかるショックによる車輪、レールの損傷に費やす保全費用が高くなる問題があった。
【0005】
本発明は、継ぎ目に隙間が設けられた左右一対のレール上を左右の前輪及び左右の後輪の転動によって円滑に走行可能な鋳型搬送台車を提供することである。
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1に記載の発明の構成上の特徴は、左右一対のレール上を左右の前輪及び左右の後輪が夫々転動して移動する鋳型搬送台車において、前記左右の前輪の車軸、及び前記左右の後輪の車軸が前記左右一対のレールの継ぎ目の隙間より大きい所定距離だけ走行方向に夫々ずらされていることである。
【発明の効果】
【0007】
上記のように構成した請求項1に係る発明においては、左右一対のレール上を転動する鋳型搬送台車の左右の前輪及び左右の後輪の車軸が前記左右一対のレールの継ぎ目の隙間より大きい所定距離だけ走行方向に夫々ずらされているので、左右の前輪又は左右の後輪がレールの継ぎ目を通過するときに同時に隙間に落ち込むことがなく、左右の前輪が時間差を置いてレールの継ぎ目を通過し、同様に、左右の後輪も時間差を置いてレールの継ぎ目を通過するので、鋳型搬送台車がレールの継ぎ目を通過するときに受けるショックを緩和することができる。これにより、鋳型搬送台車に載置された注湯前の鋳型の砂崩れを防止することができ、さらに、レールの継ぎ目での摩耗、変形が減少して車輪、レールの保全費用を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下本発明の実施の形態に係る鋳型搬送台車を図1乃至図3に基づいて説明する。10は、例えば注湯ラインで、注湯ライン10には、左右一対の固定レール11が基台13上に所定間隔を置いて長手方向で分割して固定されている。分割された固定レール11の継ぎ目12は基台13上に配置され、継ぎ目12には隙間α1が設けられている。
【0009】
注湯ライン10の入口側には、一対のトラバーサ用レール14が一対の固定レール11と直角な方向に延設されている。15は、往復動されるトラバーサで、トラバーサ15の4隅に回転可能に支承された車輪16がトラバーサ用レール14上を転動して図略の鋳枠合せ位置と注湯ライン10の入口と整列する入口位置17との間で往復動される。トラバーサ15の上面には、入口位置17において、注湯ライン10の一対の固定レール11と整列する左右一対の移動レール18が設けられている。トラバーサ15は往復動するので、トラバーサ15の一対の移動レール18と注湯ライン10の一対の固定レール11との継ぎ目19の隙間α2は隙間α1より大きく設定されている。
【0010】
注湯ライン10の固定レール11上には、複数の鋳型搬送台車20が走行可能に装架されている。各鋳型搬送台車20上には、鋳型25が載置されている。鋳型搬送台車20の下面4隅には、車軸固定部21が下方に突出して一体的に設けられ、各車軸固定部21には車軸22が水平横方向に突設されている。前方の車軸22には左右一対の前輪23fl,23frが軸受により回転可能に支承され、後方の車軸22には左右一対の後輪23rl,23rrが軸受により回転可能に支承されている。左前輪23flの車軸22が右前輪23frの車軸22より走行方向にトラバーサ15の一対の移動レール18と注湯ライン10の一対の固定レール11との継ぎ目19の隙間α2より大きい所定距離aだけ前方にずらされており、左後輪23rlの車軸22が右後輪23rrの車軸22より走行方向に所定距離aだけ前方にずらされている。所定距離aは、鋳型搬送台車20が走行するレールに設けられた継ぎ目の最大の隙間より大きく、かつ鋳型搬送台車20の走行に支障をきたさない距離とする。また、左右前輪23fl,23frで車軸22がずらされる所定距離と後輪23rl,23rrで車軸22がずらされる所定距離とが相違してもよい。
【0011】
次に、上記実施の形態の作動を説明する。トラバーサ15が図略の鋳枠合せ位置に停止されると、トラバーサ15の一対の移動レール18上に装架された鋳型搬送台車20上に鋳型25が載置される。その後、トラバーサ15が入口位置17に移動されると、一対の移動レール18が一対の固定レール11と整列され、一対の移動レール18及び一対の固定レール上に装架された複数の鋳型搬送台車20が搬送装置によって一ピッチ移動される。これにより、トラバーサ15上の鋳型搬送台車20は、トラバーサ15の一対の移動レール18から注湯ライン12の固定レール11に乗り移され、注湯ライン12では注湯前の鋳型が載置された鋳型搬送台車20が注湯位置に移動されて注湯される。
【0012】
鋳型搬送台車20では、左右の前輪23fl,23frの車軸22、及び左右の後輪23rl,23rrの車軸22が、トラバーサ15の一対の移動レール18と注湯ライン10の一対の固定レール11との継ぎ目19の隙間α2より大きい所定距離aだけ走行方向に夫々ずらされているので、左右の前輪23fl,23fr又は左右の後輪23rl,23rrが、一対の移動レール18と一対の固定レール11との継ぎ目19、又は分割された固定レール11間の継ぎ目12を通過するときに同時に隙間α2又は隙間α1に落ち込むことがない。このように、左右の前輪23fl,23fr、及び左右の後輪23rl,23rrが時間差を置いて継ぎ目19,12を通過するので、鋳型搬送台車20がレールの継ぎ目19,12、特に隙間α2が大きい継ぎ目19を通過するときに受けるショックを緩和することができる。これにより、鋳型搬送台車20に載置された注湯前鋳型25の砂崩れを防止することができ、さらに、固定レール11と移動レール18との間の継ぎ目19及び分割された固定レール12間の継ぎ目12での摩耗、変形が減少して車輪23、固定レール11及び移動レール18の保全費用を低減することができる。
【0013】
図4に示す他の実施の形態では、左前輪23flの車軸22が右前輪23frの車軸22よりトラバーサ15の一対の移動レール18と注湯ライン10の一対の固定レール11との継ぎ目19の隙間α2より大きい所定距離aだけ走行方向後方にずらされており、左後輪23rlの車軸22が右後輪23rrの車軸22より所定距離aだけ走行方向前方にずらされている。他の構成は上記実施の形態と同じであるので説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態に係る鋳型搬送台車を備えた鋳造ラインの一部を側方から見た図。
【図2】図1の鋳造ラインをA−A方向から見た図。
【図3】図1のB方向から見た図。
【図4】他の実施の形態を示す図。
【符号の説明】
【0015】
10…注湯ライン、11…左右一対の固定レール、12,19…継ぎ目、13…基台、15…トラバーサ、17…入口位置、18…左右一対の移動レール、20…鋳型搬送台車、21…車軸固定部、22…車軸、23fl,23fr…左右の前輪、23rl,23rr…左右の後輪、25…鋳型、α1,α2…隙間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対のレール上を左右の前輪及び左右の後輪が夫々転動して移動する鋳型搬送台車において、前記左右の前輪の車軸、及び前記左右の後輪の車軸が前記左右一対のレールの継ぎ目の隙間より大きい所定距離だけ走行方向に夫々ずらされていることを特徴とする鋳型搬送台車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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