説明

鋳片切断装置および連続鋳造設備

【課題】切断時に鋳片の側面に横膨れが生じない鋳片切断装置を提供する。
【解決手段】固定刃21と可動刃22には切断される鋳片Cの両側面Cs,Csに接触して鋳片Cの横膨れを防止する規制ブロック30,40が配置されている。鋳片Cを切断するとき、鋳片断面の上両側部と下両側部には横膨れbが発生しようとするが、規制ブロック30,40が鋳片Cの両側面Cs,Csに接触しているので横膨れbの発生は抑制される。搬送テーブル上で密着運搬が可能となり、圧延ラインでの噛み込みも生じず、生産性を高くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳片切断装置および連続鋳造設備に関する。さらに詳しくは、連続鋳造設備から引き抜かれる鋳片を所望の長さに切断する鋳片切断装置、およびその鋳片切断装置を備える連続鋳造設備に関する。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造設備におけるビレット鋳込みは、生産性、冷却性などから高速鋳込みを行うため、連続鋳片の切断は、油圧駆動による鋏形の刃物による切断、いわゆる油圧シャーで行う。
油圧シャーには、ダイヤゴナル式と垂直式の2つのタイプがある。ダイヤゴナル式は油圧シャーを垂直線に対し斜めに設置し、かつV字形をした上刃と下刃とで角形鋳片を対角線方向に切断するものである(特許文献1参照)。垂直式は平刃の上刃と下刃とを垂直に配置し、角形鋳片をギロチン式に切断するものである(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4369304号公報
【特許文献2】特開2005−193290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、油圧シャーによる切断は、刃物で押し切りするので、鋳片の側面に横膨れが生じる。すなわち、垂直式油圧シャーの場合を例にとると、図9において、Cは鋳片であり、図(A)に示すように、下刃が当る断面では下方両側に横膨れb,bが生じ、図(B)に示すように、上刃が当る断面では上方両側に横膨れb,bが生ずることになる。各横膨れbの高さhは約20mmで、幅wは約6〜10mm位である。
そして、このような横膨れbが鋳片Cに生ずると、搬送テーブル上で鋳片の密着運搬ができにくいとか、圧延ラインでの噛み込み不良が生じる等の不具合が発生するので、生産性が低下する。
【0005】
本発明は上記事情に鑑み、切断時に鋳片の側面に横膨れが生じない鋳片切断装置、およびその鋳片切断装置を備える連続鋳造設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明の鋳片切断装置は、鋳片を所定長さに切断する鋳片切断装置であって、前記鋳片の側面に接触して鋳片の横膨れを抑制する規制手段を備えることを特徴とする。
第2発明の鋳片切断装置は、第1発明において、前記規制手段は、前記鋳片の両側面に接触する一対の規制部材からなり、該一対の規制部材の間隔を調整する間隔調整機構を備えることを特徴とする。
第3発明の鋳片切断装置は、第2発明において、前記鋳片を前記一対の規制部材の間に案内するガイド手段を備えることを特徴とする。
第4発明の鋳片切断装置は、第2または第3発明において、前記鋳片切断装置が可動刃を備えており、前記可動刃側に前記規制手段が配置されており、該規制手段の一対の規制部材の鋳片との接触面を、鋳片に対し接近離間し、鋳片との接触を解放する解放手段を備えることを特徴とする。
第5発明の鋳片切断装置は、第4発明において、前記解放手段は、前記間隔調整機構の調整速度よりも速い速度で、前記規制手段の一対の規制部材の鋳片との接触面の間隔を調整するものであることを特徴とする。
第6発明の鋳片切断装置は、第4または第5発明において、前記鋳片切断装置が可動刃と固定刃とを備えており、前記可動刃側と前記固定刃側のそれぞれに前記規制手段が配置されており、前記可動刃側に配置された規制手段に、前記解放手段が設けられていることを特徴とする。
第7発明の連続鋳造設備は、請求項1,2,3,4,5または6記載の鋳片切断装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
第1発明によれば、鋳片を切断するとき、刃が最初に接触する鋳片断面の側部には横膨れが発生しようとするが、規制手段が鋳片の側面に接触しているので横膨れの発生は抑制される。このため、切断された鋳片の断面形状は保たれるので、搬送テーブル上で密着運搬が可能となり、圧延ラインでの噛み込みも生じず、生産性を高くすることができる。
第2発明によれば、間隔調整機構により、一対の規制部材の間隔が変えられるので、鋳片の断面寸法の変化に対応できる。また、間隔を微調整することができるので、横膨れを効果的に防止できる。
第3発明によれば、ガイド手段が鋳片を一対の規制部材の間に案内するので、鋳片の導入時に突っかえが生ずることなく円滑に導入できる。
第4発明によれば、解放手段により、可動刃側に配置された規制手段の接触面は切断動作時には鋳片の両側面に接触する位置に進出して、切断時における鋳片の横膨れを防止する本来の機能を果たす。そして、可動刃の退避動作時には鋳片の両側面から離間させ、鋳片との接触を解放しておき、可動刃の動きによって鋳片をつれ動くことがないようにできる。このため、鋳片切断後の移送動作に直ちに移ることができ、生産性が向上する。
第5発明によれば、鋳片は速い速度で進行するので、切断は速い動作で行わなければならず、鋳片との接触面の間隔の調整も速くなければならないが、解放手段は間隔調整機構の調整速度よりも速い速度で調整するので、このような動作に適している。
第6発明によれば、解放手段により、可動刃側に配置された規制手段の接触面は切断動作時には鋳片の両側面に接触する位置に進出して、切断時における鋳片の横膨れを防止する本来の機能を果たす。そして、可動刃の退避動作時には鋳片の両側面から離間させ、鋳片との接触を解放ておき、可動刃の動きによって鋳片をつれ動くことがないようにできる。このため、鋳片切断後の移送動作に直ちに移ることができ、生産性が向上する。
第7発明によれば、切断された鋳片の断面形状は保たれるので、搬送テーブル上で密着運搬が可能となり、圧延ラインでの噛み込みも生じず、生産性を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係る鋳片切断装置の要部側面図である。
【図2】図1のII−II線矢視平面図である。
【図3】図2のIII−III線矢視正面図である。
【図4】図2のIV−IV線矢視背面図である。
【図5】可動側規制ブロックの切断動作時の状態説明図である。
【図6】可動側規制ブロックの退避動作時の状態説明図である。
【図7】本発明に係る鋳片切断装置を設けた連続鋳造設備の説明図である。
【図8】鋳片切断装置の基本構造の説明図であり、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【図9】角形鋳片の切断時に生ずる横膨れの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
まず、本発明に係る鋳片切断装置が設けられる連続鋳造設備Xの全体構成について説明する。
図7に示すように、取鍋1には溶鋼が収納されており、この取鍋1の下部に連結されるタンデイッシュ2の底部に形成された複数のタンディッシュノズルから各モールド3に溶鋼が流入される。溶鋼はロールガイド部4を移動する間に冷却され、断面角型の鋳片Cに成形される。鋳片Cはテーブル5上を移動し、鋳片切断装置Aで所定長さに切断されて引き出される。鋳片Cの長さはメジャーリングロール6により検出され、所定長さ毎に鋳片切断装置Aに切断指令を出すようになっている。
【0010】
図8は鋳片切断装置の基本構造を示している。この鋳片切断装置はフレーム10の下部に設けられた固定部11と、フレーム10内を昇降する可動部12とを備えている。フレーム10の上部には油圧シリンダ13が設けられている。可動部12は油圧シリンダ13のロッド13aに連結されており、油圧シリンダ13の動作により昇降するようになっている。
【0011】
固定部11において、鋳片Cが通されるパスラインPの下流側の面には下刃21が取り付けられており、その刃先は固定部11の上面に位置している。下刃21はパスラインPの下方に位置しており、上下動しないように固定されている。可動部12のパスラインP上流側の面には上刃22が取り付けられており、その刃先は可動部12の底面に位置している。上刃22は可動部12の昇降動作に伴って、パスラインPを垂直方向に横切るように昇降するようになっている。すなわち、本鋳片切断装置は下刃21が固定刃であって、上刃22が可動刃である。
上刃22が下降することにより、パスラインPを通過する鋳片Cを下刃21と上刃22で所定長さに切断できるようになっている。
【0012】
(第1実施形態)
つぎに、本発明の一実施形態に係る鋳片切断装置Aについて説明する。
鋳片切断装置Aは、図8に示す鋳片切断装置の基本構造に、以下に示す規制ブロックを取り付けたものである。
鋳片切断装置Aは、固定刃である下刃21側に固定側規制ブロック30が配置され、可動刃である上刃22側に可動側規制ブロック40が配置されている。
なお、固定側規制ブロック30および可動側規制ブロック40は、特許請求の範囲の記載の「規制手段」に相当する。
【0013】
図1、図2、図3に示すように、下刃21が取り付けられた固定部11には固定側規制ブロック30が配置されている。固定側規制ブロック30は略直方体の固定側右ブロック31と固定側左ブロック32とからなり、固定側右ブロック31はパスラインPの進行方向右側に、固定側左ブロック32はパスラインPの進行方向左側に位置している。固定側右ブロック31および固定側左ブロック32は、固定部11の上面に位置しており、パスラインP下流側の面が下刃21の刃先と同位置、あるいは若干上流側に位置している。
なお、固定側右ブロック31および固定側左ブロック32は、特許請求の範囲に記載の「規制部材」に相当する。
【0014】
固定側右ブロック31および固定側左ブロック32の底面には、それぞれ右スライド部33、左スライド部34が突設されている。一方、固定部11の上面の左右両側にはパスラインPに対して垂直な溝11a,11bが形成されており、その溝11a,11bにスライド部33,34が嵌められている。溝11a,11bの底面および側面にはローラが組み込まれており、スライド部33,34が溝11a,11b内で移動自在となっている。
【0015】
また、スライド部33,34にはネジ孔が形成されており、それらのネジ孔に1本のスクリュー軸35が螺合されることにより、固定側右ブロック31と固定側左ブロック32とが連結されている。スクリュー軸35は中央を境に一方が右ネジ、他方が左ネジとなっている。そのため、スクリュー軸35を一方に回せば固定側右ブロック31と固定側左ブロック32との間隔が狭くなり、他方に回せば間隔が広くなる。
【0016】
スクリュー軸35は固定部11にベアリング等を介して軸支されており、その一端にスクリュー軸35を正・逆回転させる電動機36が接続されている。電動機36はフレーム10に取り付けられている。
また、スクリュー軸35は、固定部11の内部に形成された、両側の溝11a,11bに連通する孔11cに通されているため、固定部11の上面を通過する鋳片Cの熱等の影響を受けにくくなっている。
【0017】
以上の様な構成であるから、スクリュー軸35を正・逆回転させることにより、固定側右ブロック31と固定側左ブロック32をパスラインPに接近離間できる。したがって、固定側右ブロック31および固定側左ブロック32の双方のパスラインPに対向する面(接触面31t,32t)の間隔を調整し、鋳片Cの両側面Cs,Csに接触する位置で固定することができる。すなわち、鋳片Cの幅寸法に合わせて固定側右ブロック31と固定側左ブロック32との間隔を調整することができる。
【0018】
なお、スクリュー軸35を正・逆回転させることが可能なものであれば、電動機36に代えて、油圧モータや手動ハンドルを接続する実施形態としてもよい。
スライド部33,34、スクリュー軸35、電動機36は、特許請求の範囲に記載の「間隔調整機構」に相当する。間隔調整機構は固定側右ブロック31と固定側左ブロック32との間の間隔を調整できればよく、上記機構に代えてリンク機構等の機構で実現してもよい。
【0019】
固定側右ブロック31と固定側左ブロック32には、パスラインP上流側の角に鋳片Cの導入を案内する一対のガイドローラ37,37が取り付けられている。このガイドローラ37,37は、回転しながら鋳片Cの側面Csに接触するので、鋳片Cに幅方向の曲がりや蛇行が生じても、固定側右ブロック31と固定側左ブロック32との間に案内して、位置決めし、固定側規制ブロック30に突っかえることがなく円滑に導入できる。
なお、ガイドローラ37,37は、特許請求の範囲に記載の「ガイド手段」に相当する。
【0020】
図1、図2、図4に示すように、上刃22が取り付けられた可動部12には可動側規制ブロック40が配置されている。可動側規制ブロック40は略直方体の可動側右ブロック41と可動側左ブロック42とからなり、可動側右ブロック41はパスラインPの進行方向右側に、可動側左ブロック42はパスラインPの進行方向左側に位置している。可動側右ブロック41および可動側左ブロック42は、可動部12の底面に位置しており、パスラインP上流側の面が上刃22の刃先と同位置、あるいは若干下流側に位置している。
なお、可動側右ブロック41および可動側左ブロック42は、特許請求の範囲に記載の「規制部材」に相当する。
【0021】
可動側右ブロック41および可動側左ブロック42の上面には、それぞれ右スライド部43、左スライド部44が突設されている。一方、可動部12の底面の左右両側にはパスラインPに対して垂直な溝12a,12bが形成されており、その溝12a,12bにスライド部43,44が嵌められている。溝12a,12bの上面および側面にはローラが組み込まれており、スライド部43,44が溝12a,12b内で移動自在となっている。
【0022】
また、スライド部43,44にはネジ孔が形成されており、それらのネジ孔に1本のスクリュー軸45が螺合されることにより、可動側右ブロック41と可動側左ブロック42とが連結されている。スクリュー軸45は中央を境に一方が右ネジ、他方が左ネジとなっている。そのため、スクリュー軸45を一方に回せば可動側右ブロック41と可動側左ブロック42との間隔が狭くなり、他方に回せば間隔が広くなる。
【0023】
スクリュー軸45は可動部12にベアリング等を介して軸支されており、その一端にスクリュー軸45を正・逆回転させる電動機46が接続されている。電動機46は可動部12に取り付けられている。
また、スクリュー軸45は、可動部12の内部に形成された、両側の溝12a,12bに連通する孔12cに通されているため、可動部12の底面に接触する鋳片Cの熱等の影響を受けにくくなっている。
【0024】
以上の様な構成であるから、スクリュー軸45を正・逆回転させることにより、可動側右ブロック41と可動側左ブロック42をパスラインPに接近離間できる。したがって、可動側右ブロック41および可動側左ブロック42の双方のパスラインPに対向する面(接触面41t,42t)の間隔を調整し、鋳片Cの両側面Cs,Csに接触する位置で固定することができる。すなわち、鋳片Cの幅に合わせて可動側右ブロック41と可動側左ブロック42との間隔を調整することができる。
【0025】
なお、スクリュー軸45を正・逆回転させることが可能なものであれば、電動機46に代えて、油圧モータや手回ハンドルを接続する実施形態としてもよい。
スライド部43,44、スクリュー軸45、電動機46は、特許請求の範囲に記載の「間隔調整機構」に相当する。間隔調整機構は可動側右ブロック41と可動側左ブロック42との間の間隔を調整できればよく、上記機構に代えてリンク機構等の機構で実現してもよい。
【0026】
可動側右ブロック41と可動側左ブロック42の鋳片Cへの接触面41t,42tは、圧接パッド47,47となっている。圧接パッド47,47は、可動側右ブロック41もしくは可動側左ブロック42の本体との間に設けられた油室に圧油を供給・排出することで、鋳片Cの側面Csに対し接近離間することができるようになっている。
【0027】
圧油の給排は、可動側右ブロック41と可動側左ブロック42にホース等を介してポンプやアキュムレータ等の油圧源とタンクに接続し、途中に圧油の供給と排出を制御する制御弁を取り付けておけばよい。図5は圧接パッド47が突出した状態であり、図6は圧接パッド47が退避した状態である。
なお、圧接パット47,47およびその油圧回路は、特許請求の範囲に記載の「解放手段」に相当する。
【0028】
つぎに、鋳片切断装置Aの切断動作について説明する。
まず、固定側右ブロック31と固定側左ブロック32の接触面31t,32tの間隔を、鋳片Cの両側面Cs,Csに接触する位置に調整し固定する。可動側右ブロック41と可動側左ブロック42の接触面41t,42tの間隔(圧接パッド47,47の間隔)も同様に、鋳片Cの両側面Cs,Csに接触する位置に調整し固定する。このとき、圧接パッド47は、圧油を供給して鋳片Cの側面Csに対し接近した状態としておく。
【0029】
なお、固定側右ブロック31と固定側左ブロック32の接触面31t,32tの間隔、および、可動側右ブロック41と可動側左ブロック42の接触面41t,42tの間隔は、鋳片Cの幅寸法より若干の隙間を持たせて設定することが好ましい。この若干の隙間により、鋳片Cと各接触面31t,32t,41t,42tとの間に抵抗が発生することなく、鋳片CがパスラインPに沿って円滑に進行できるからである。また、この若干の隙間を設けておけば、鋳片Cの幅寸法に多少のバラツキがあっても、全ての鋳片Cが接触面31t,32t,41t,42tから抵抗を受けることなくパスラインPに沿って進行できる。
【0030】
パスラインPに鋳片Cが供給されると、鋳片Cはガイドローラ37,37により固定側右ブロック31と固定側左ブロック32との間に導かれ、位置決めされ、その両側面Cs,Csを接触面31t,32tに接触した状態で通過する。
【0031】
メジャーリングロール6からの切断指令により油圧シリンダ13が動作し、可動部12が下降する。そうすると、図5に示すように、可動側右ブロック41と可動側左ブロック42の間に鋳片Cが挟まった後に、下刃21と上刃22とで鋳片Cが切断される。
この切断時には、上刃22が最初に接触する鋳片C断面の上両側部と、下刃21が最初に接触する鋳片C断面の下両側部には横膨れbが発生しようとする。しかし、固定側規制ブロック30および可動側規制ブロック40が鋳片Cの両側面Cs,Csに接触しているので横膨れbの発生は抑制される。このため、切断された鋳片Cの先端断面と後端断面は四角形状に保たれるので、搬送テーブル上で密着運搬が可能となり、圧延ラインでの噛み込みも生じず、生産性を高くすることができる。
なお、鋳片Cと各接触面31t,32t,41t,42tとの間に若干の隙間を持たせる場合には、横膨れbがその隙間の分だけ発生するが、後の工程で問題とならない程度に最小限に抑制できる。
【0032】
切断後は油圧シリンダ13の動作により可動部12が上昇する。このとき、鋳片Cは可動側右ブロック41と可動側左ブロック42の間に挟まった状態であるので、このまま可動部12を上昇させると、鋳片Cがつれ動き上昇させる可能性がある。
そこで、図6に示すように、可動部12が下限に達した時に圧接パッド47から圧油を排出し、鋳片Cの側面Csに対し離間し、鋳片Cとの接触を解放した状態とする。これにより、可動刃22の退避動作時に鋳片Cをつれ動くことがないようにでき、鋳片C切断後の移送動作に直ちに移ることができ、生産性が向上する。
なお、圧接パッド47から圧油を強制的に排出し、鋳片Cの側面Csに対し離間させる方法以外にも、圧油の供給を停止し、圧油が排出し得る状態とする方法でも、鋳片Cを挟む力が無くなるので、退避動作時に鋳片Cをつれ動くことがないようにできる。
【0033】
可動部12を上昇させた後、圧接パッド47に再び圧油を供給して、次の切断に備える。以上で、切断動作が完了する。
【0034】
鋳片Cは速い速度で進行するので、切断は速い動作で行わなければならず、圧接パッド47,47の接近離間動作の速度も速くなければならない。圧接パッド47は油圧で動作するので、スクリュー軸等で動作させる場合に比べて動作が速く、このような動作に適している。
【0035】
断面寸法の異なる鋳片Cを切断する場合には、電動機36,46を動作させ、固定側右ブロック31と固定側左ブロック32の接触面31t,32tの間隔、および、可動側右ブロック41と可動側左ブロック42の接触面41t,42tの間隔を変更する。電動機36,46により、間隔が変えられるので、鋳片Cの断面寸法の変化に対応できる。また、間隔を微調整することができるので、横膨れbを効果的に抑止できる。
【0036】
(他の実施形態)
本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。
上記実施形態では鋳片Cを角型としたが、他の形状であってもよい。例えば、丸鋳片とする場合は、各ブロック31,32,41,42の接触面31t,32t,41t,42tの形状を丸鋳片に合うように正面視円弧状に形成すればよい。
【0037】
また、上記実施形態では下刃21を固定刃とし、上刃22を可動刃としたが、これに代えて、下刃21を可動刃とし、上刃22を固定刃とする実施形態としてもよい。この場合には、下刃21側には可動側規制ブロック40が配置され、上刃22側には固定側規制ブロック30が配置される。
下刃21と上刃22の双方を可動刃としてもよい。この場合には、下刃21側にも上刃22側にも可動側規制ブロック40が配置される。
また、上記実施形態ではパスラインP上流側の刃を下刃21とし、下流側の刃を上刃22としたが、これに代えて、上流側の刃を上刃22とし、下流側の刃を下刃21とする実施形態としてもよい。この場合にも、可動刃となる上刃22もしくは下刃21、またはその両方に可動側規制ブロック40が配置される。
【0038】
また、上刃と下刃とを垂直に配置したものではなく、左刃と右刃とを水平方向に配置した実施形態としてもよい。
さらに、垂直式油圧シャーに限らず、油圧シャーを垂直線に対し斜めに設置したダイヤゴナル式油圧シャーにも適用できる。ダイヤゴナル式油圧シャーは垂直式油圧シャーに比べ、鋳片C切断時に発生する横膨れは小さいものの、横膨れを抑制する規制手段を設けることで、より横膨れを効果的に抑止できる。また垂直式油圧シャーは、モールドから切断位置までの長さが各ストランドで同じとなり、切断位置における鋳片温度が同じとなるので、ダイヤゴナル式油圧シャーに比べ切断形状を均一に維持できる。
【0039】
また、上記実施形態では、規制ブロック30,40を略直方体のブロック31,32,41,42で構成したが、これに代えて、L字形状や板状の部材で構成してもよい。要するに、鋳片Cの側面Csに接触して横膨れを抑制できる部材であればよい。
【0040】
また、上記実施形態では、固定側ブロック31,32に一対のガイドローラ37,37を取り付けたが、ガイドローラ37,37に代えて、弧状に曲げた板や、パスラインP下流側にいくにしたがって幅寸法が狭くなる開口部を有するブロック部材等、他のガイド手段を設けてもよい。ガイド手段は固定側ブロック31,32に設ける以外にも、固定側ブロック31,32よりパスラインP上流側に別個の部材として設けてもよい。
【符号の説明】
【0041】
X 連続鋳造設備
A 鋳片切断装置
C 鋳片
11 固定部
12 可動部
13 油圧シリンダ
21 下刃
22 上刃
30 固定側規制ブロック
31 固定側右ブロック
32 固定側左ブロック
33 右スライド部
34 左スライド部
35 スクリュー軸
36 電動機
37 ガイドローラ
40 可動側規制ブロック
41 可動側右ブロック
42 可動側左ブロック
43 右スライド部
44 左スライド部
45 スクリュー軸
46 電動機
47 圧接パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳片を所定長さに切断する鋳片切断装置であって、
前記鋳片の側面に接触して鋳片の横膨れを抑制する規制手段を備える
ことを特徴とする鋳片切断装置。
【請求項2】
前記規制手段は、前記鋳片の両側面に接触する一対の規制部材からなり、
該一対の規制部材の間隔を調整する間隔調整機構を備える
ことを特徴とする請求項1記載の鋳片切断装置。
【請求項3】
前記鋳片を前記一対の規制部材の間に案内するガイド手段を備える
ことを特徴とする請求項2記載の鋳片切断装置。
【請求項4】
前記鋳片切断装置が可動刃を備えており、
前記可動刃側に前記規制手段が配置されており、
該規制手段の一対の規制部材の鋳片との接触面を、鋳片に対し接近離間し、鋳片との接触を解放する解放手段を備える
ことを特徴とする請求項2または3記載の鋳片切断装置。
【請求項5】
前記解放手段は、前記間隔調整機構の調整速度よりも速い速度で、前記規制手段の一対の規制部材の鋳片との接触面の間隔を調整するものである
ことを特徴とする請求項4記載の鋳片切断装置。
【請求項6】
前記鋳片切断装置が可動刃と固定刃とを備えており、
前記可動刃側と前記固定刃側のそれぞれに前記規制手段が配置されており、
前記可動刃側に配置された規制手段に、前記解放手段が設けられている
ことを特徴とする請求項4または5記載の鋳片切断装置。
【請求項7】
請求項1,2,3,4,5または6記載の鋳片切断装置を備える
ことを特徴とする連続鋳造設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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