説明

鋳造装置および鋳造方法

【課題】 多様で高度な鋳造を実行できる装置を提供する。
【解決手段】
金型20は、型締め状態で車両用ホイール成形空間を形成する。金型20の下方には第1溶湯保持炉50が配置され、金型20の下方から離れた位置に複数の第2溶湯保持炉60が配置されている。第1溶湯保持炉50の溶湯は出湯管35を介して金型20のセンターゲート25に供給される。第2溶湯保持炉60には密閉ポット65が収容されており、この密閉ポット65の底部近傍には開閉可能な出湯口及び給湯口が設けられている。密閉ポット65での吸引動作により第2溶湯保持炉60の溶湯が密閉ポット65に導入され、この密閉ポット65での加圧動作により密閉ポット65内の溶湯が出湯管36を介して金型20のサイドゲート26に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ホイール等の鋳造品を鋳造する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、アルミ合金製(軽合金製)の車両用ホイールを鋳造する低圧鋳造装置が開示されている。この装置では、金型の成形空間がディスク部成形空間とリム部成形空間とを有しており、ディスク部成形空間の中央にセンターゲートが連なり、リム部成形空間には周方向に離れた複数のサイドゲートが連なっている。
【0003】
上記センターゲートと複数のサイドゲートには、それぞれ出湯管(ストーク)が接続されており、この出湯管の下端部は、1つの溶湯保持炉内の溶湯に浸漬されている。そして、鋳造時には、溶湯保持炉内に加圧気体を導入することで、溶湯表面を所定圧力で加圧して溶湯保持炉内の溶湯が複数の出湯管およびセンターゲート,サイドゲートを介して金型の成形空間に充填される。
【特許文献1】特開2001−287015号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の低圧鋳造装置では、溶湯保持炉内に保持された所定組成の溶湯を、所定温度で保持し、全てのゲートに対して一括して同条件、すなわちストーク内における湯面位置,上昇開始時期及び上昇速度が同一で金型に供給するようになっている。そのため、高度な鋳造を行なうことができなかった。車両ホイールの鋳造を例にとって説明する。車両ホイールのディスク部とリム部では、要求される鋳造特性や機械的特性が異なる。ディスク部では、形状が複雑であるため溶湯の高い流動性が必要であるが、靭性はリム部より低くてもよい。これに対してリム部では、形状が単純であるため溶湯の流動性はディスク部より低くてもよいが、路面からの振動荷重を受けるため高い靭性が要求される。
【0005】
しかし、特許文献1の鋳造装置で鋳造される車両ホイールは全領域にわたって同一組成となるため、ディスク部に要求される高い鋳造特性とリム部に要求される高い機械的特性を共に満足させる溶湯組成を選択するのが困難であり、各部位で要求される最大限の特性を得るのが困難であった。
また、例えば、車両ホイールの鋳造に際しては、ディスク部形成空間に溶湯が充満する前に、サイドゲートから溶湯が注がれて、ディスク部形成空間内の溶湯上に落ちる現象が生じる結果、溶湯中に気泡が残ったり、湯面の酸化膜が破壊されて溶湯内部に入り込み、さらに新たに酸化膜が形成される等により、鋳造品の品質向上を図るうえの阻害要因となっていた。
さらに、上記低圧鋳造装置では、溶湯保持炉内の溶湯面高さは、1回の鋳造完了毎に順次低下することになるが、鋳造サイクルは一定にする必要がある。そのため、溶湯保持炉内の溶湯表面に付与する加圧力を順次高くする制御が行なわれ、その圧力制御系が複雑になるばかりか、圧力制御装置が高価になる。
さらにまた、金型の成形空間への溶湯供給量は一定にすることが、安定した品質を有する鋳造品を得るために重要であるが、加圧気体による加圧面積が溶湯保持炉内の溶湯表面全体となるため、一定の溶湯量を安定して金型の成形空間へ供給することが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、鋳造装置において、(ア)成形空間と、この成形空間に連なる第1ゲートおよび第2ゲートを有する金型と、(イ)上記金型の下方に配置された第1溶湯保持炉と、(ウ)上記金型の下方から離れた位置に配置された第2溶湯保持炉と、(エ)一方端が上記第1ゲートに連通し、他方端が上記第1溶湯保持炉内の溶湯中に浸漬する第1出湯管と、(オ)上記第1溶湯保持炉内に加圧気体を供給して、第1溶湯炉内の溶湯を上記第1ゲートに送る加圧気体供給手段と、(カ)上記第2溶湯保持炉に収容され、溶湯中に浸漬する部位に開閉可能な給湯口と出湯口とを備えた密閉ポットと、(キ)一方端が上記第2ゲートに接続され、他方端が上記出湯口に接続される第2出湯管と、(ク)上記出湯口を閉じ上記給湯口を開いた状態で、上記密閉ポット内を負圧にして、第2溶湯保持炉内の溶湯を密閉ポット内に流入させる吸引手段と、(ケ)上記出湯口を開き上記給湯口を閉じた状態で、上記密閉ポット内に加圧気体を供給して密閉ポット内の溶湯を第2出湯管を介して第2ゲートに送る加圧気体供給手段と、を備えたことを特徴とする。
また、他の態様の鋳造装置では、(ア)成形空間と、この成形空間に連通する第1ゲートおよび第2ゲートを有する金型と、(イ)上記第1ゲートへの供給溶湯を貯留する第1溶湯保持炉と、(ウ)上記第2ゲートへの供給溶湯を貯留する第2溶湯保持炉と、(エ)上記第1溶湯保持炉及び第2溶湯保持炉にそれぞれ収容され、溶湯中に浸漬する部位に開閉可能な給湯口と出湯口とを備えた密閉ポットと、(オ)一方端が上記第1ゲートに連通し、他方端が対応する上記出湯口に接続される第1出湯管と、(カ)一方端が上記第2ゲートに接続され、他方端が対応する上記出湯口に接続される第2出湯管と、(キ)上記出湯口を閉じ上記給湯口を開いた状態で、上記密閉ポット内を負圧にして、溶湯保持炉内の溶湯を密閉ポット内に流入させる吸引手段と、(ケ)上記出湯口を開き上記給湯口を閉じた状態で、上記密閉ポットに加圧気体を供給して密閉ポット内の溶湯を対応する出湯管を介して対応するゲートに送る加圧気体供給手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、第1溶湯保持炉と第2溶湯保持炉を備え、これら複数の保持炉から第1,第2ゲートへ溶湯を供給するので、多様で高度な鋳造を行なうことができる。例えば、溶湯の組成,温度,供給圧力,溶湯供給時期の選択等を溶湯保持炉毎に行なうことができる。
【0008】
好ましくは、上記金型が、固定された下型と、昇降可能な上型と、これら下型と上型との間に配置された複数の横型とを備え、下型の中央に第1ゲートとしてセンターゲートが形成され、横型間に第2ゲートとして複数のサイドゲートが形成され、上記下型には上記サイドゲートにそれぞれ連なる複数の湯道が形成されており、上記第2溶湯保持炉が複数配置され、これら第2溶湯保持炉内の密閉ポットと上記湯道がそれぞれ第2出湯管を介して連なっている。
この構成では、複数の第2溶湯保持炉を用いることにより効率良く鋳造を行なうことができる。
【0009】
本発明は、上記鋳造装置を用いた鋳造方法も提供する。この鋳造方法は、上記第1溶湯保持炉および第2溶湯保持炉に異なる組成の溶湯を保持させ、これら溶湯保持炉の溶湯を上記第1,第2出湯管を経て金型に供給することにより、部位によって異なる組成の鋳造品を得る。
この方法によれば、鋳造品の各部位で要求される鋳造特性や機械的特性等に応じて溶湯成分を選択でき、これら要求に高レベルで答えることができる。
【0010】
好ましくは、上記第1溶湯保持炉および第2溶湯保持炉では、溶湯の組成に対応して溶湯温度を制御する。これにより、組成が異なる溶湯に対応して円滑な鋳造を行なうことができる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように本発明では、多様で高度な鋳造を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図示の装置は、アルミ合金製(軽合金製)の車両用ホイール(鋳造品)を低圧鋳造する装置である。車両用ホイールは、周知のようにディスク部とディスク部の周縁に一体に形成されたリム部とを有している。
【0013】
図1に示すように、低圧鋳造装置は、支持フレーム10と、金型20と、第1溶湯保持炉50と、複数(本実施形態では4つ)の第2溶湯保持炉60とを基本構成要素として備えている。
【0014】
上記支持フレーム10は、中間高さに固定台11を有し、この固定台11の上方に昇降台12を有している。
【0015】
上記金型20は、上記固定台11に固定された下型21と、上記昇降台12に固定された上型22と、周方向に複数(本実施形態では4つ)に分割された横型23とを備えている。
【0016】
図2に示すように、上記金型20の型締め状態では、横型23の側面同士が互いに当たり、横型23の下面が下型21に当たり、横型23の上面が上型22に当たっており、内部に車両ホイールを鋳造するためのホイール成形空間40が形成される。このホイール成形空間40は、ディスク部成形空間40aとその周縁に連なるリム部成形空間40bとを有している。
【0017】
上記下型21の中央には、上記ディスク部成形空間40aの中央に連なるセンターゲート25(第1ゲート)が形成されている。また、隣接する横型23の側面間には、上記リム部成形空間40bに連なるサイドゲート26(第2ゲート)が形成されている。本実施形態では、横型23が4分割されており、サイドゲート26が4つ形成されている。なお、横型23が2分割されている場合にはサイドゲート26は2つ形成される。これらサイドゲート26は下型21に形成された湯道27に連なっている。
【0018】
図1に示すように、固定台11には、上記センターゲート25に接続される出湯管35(第1出湯管)の上端部(下流端部)が固定されるとともに、4つの湯道27にそれぞれ接続される出湯管36(第2出湯管)の下流端部が固定されている。
【0019】
上記第1溶湯保持炉50は、金型20の下方に配置されており、断熱容器51と、断熱容器51内に収容された坩堝52と、断熱容器51の内周に配置されたヒータ53とを有している。上記センターゲート25に接続された出湯管35は、垂直に下方に延びて断熱容器51の蓋部51aを貫通し、その下端が坩堝52内の溶湯に浸漬されている。
【0020】
上記断熱容器51の蓋部51aには給排気管57も貫通しており、この給排気管57には、電磁三方弁58(弁手段)を介して加圧気体供給手段59が接続されている。この加圧気体供給手段59は、加圧気体源と圧力制御手段(いずれも図示せず)を含んでいる。
【0021】
4つの第2溶湯保持炉60は、上記金型20の下方から離れ、上記第1溶湯保持炉50の近傍に配置されている。これら第2溶湯保持炉60も第1溶湯保持炉50と同様に、断熱容器61と、断熱容器61内に収容された坩堝62と、断熱容器61の内周に配置されたヒータ63とを有している。
【0022】
上記第2溶湯保持炉60において、断熱容器61の蓋部61aには密閉ポット65の上端部が固定されている。この密閉ポット65は垂直に垂れ下がって坩堝62内の溶湯に浸漬されている。密閉ポット65の上端開口は封止部材65aで封止されている。
【0023】
図3に示すように、各密閉ポット65の底部には給湯口65xが形成されている。この給湯口65xは、シリンダ72に連結されたロッド形状の遮断弁71(開閉手段)の昇降により開閉される。
【0024】
図1に示すように、各出湯管36の下流端部は湯道27に接続されるようにして固定台11に固定され、ここから放射状に延びて対応する第2溶湯保持炉60に至り、その断熱容器61の蓋部61aを垂直に貫通し、下方に延びて坩堝62内の溶湯中に浸漬されている。さらに、この出湯管36の上流端部36aは、水平に延びて密閉ポット65の底部近傍の周壁を貫通して密閉ポット65内に入り込んでおり、密閉ポット65の一部を構成している。
【0025】
図3に示すように、出湯管36の上流端部36aには、出湯口36xが形成されている。 上記出湯口36xは、シリンダ74に連結されたロッド状の遮断弁73(他の開閉手段)の昇降により開閉されるようになっている。
【0026】
図3に示すように、上記密閉ポット65の上端開口を封止する封止部材65aには給排気管80(連通路)が貫通しており、この給排気管80には電磁弁81(弁手段)を介して吸引ポンプ82(吸引手段)が接続されるとともに、電磁弁83(弁手段)を介して加圧気体供給手段84が接続されている。この加圧気体供給手段84は、加圧気体源と圧力制御手段(いずれも図示せず)を含んでいる。
【0027】
なお、上記出湯管35,36において外部に露出された部位にはヒータ(図示しない)が巻かれている。
【0028】
上記構成の装置を用いた車両ホイールの低圧鋳造方法について詳述する。第1溶湯保持炉50の坩堝52内には、通常の車両ホイールの鋳造に用いられるJIS規格AC4CHのアルミ合金の溶湯を約700°Cで保持させ、第2溶湯保持炉60の坩堝62内には、JIS規格6000系たとえば6061のアルミ合金の溶湯を約720°Cで保持させる。
なお、第2溶湯保持炉60においては、鋳造作業の開始に先立って、出湯口36xおよび給湯口65xの開閉、密閉ポット65内の加減圧が行なわれ、出湯管36における溶湯が定湯面レベルCに保持される。
【0029】
第1溶湯保持炉50から金型20への溶湯供給は、給排気管57と加圧気体供給手段59とを連通させるように三方弁58を作動させ、加圧気体供給手段59からの加圧気体を坩堝52に供給することにより実行される。坩堝52内の溶湯は、この加圧気体に押され、出湯管35,センターゲート25を経てディスク部成形空間40aに供給されて、充填が完了する。そして、溶湯の充填状態を維持したままで、所定時間が経過すると、加圧気体の供給を停止させるとともに、三方弁58を作動させて坩堝52内を大気に開放させる。これにより、センターゲート25における湯切れを行う。
【0030】
一方、第2溶湯保持炉60では、坩堝62の溶湯を直接に金型20に供給するのではなく、密閉ポット65を介して供給する。鋳造作業開始時は、前記したように、出湯口36xおよび給湯口65xが閉じられて、出湯管36の溶湯が定湯面レベルCに維持されている状態である。この状態で、給湯口65xを開き、開閉弁83を閉じ、開閉弁81を開くとともに、吸引ポンプ82を作動させることにより、密閉ポット65内を負圧にし、坩堝62内の溶湯を密閉ポット65に流入させる。密閉ポット65内の溶湯のレベルが所定レベルHに達したら、これをフロースイッチ等のレベル検知手段で検知して、遮断弁71が下降して給湯口65xを閉じるとともに、吸引ポンプ82を停止し、開閉弁81を閉じる。
【0031】
次に、給湯口65xを閉じた状態で、出湯口36xを開くととともに、開閉弁83を開くことにより、加圧気体を密閉ポット65に供給する。これにより、密閉ポット65内の溶湯が出湯管36を通り、湯道27,サイドゲート26を経てリム部成形空間40bに供給される。密閉ポット65の溶湯のレベルが所定レベルLまで下がったら、これをレベル検知手段で検知して加圧気体の供給を停止させるとともに、このときの密閉ポット65内の圧力を維持する、そして、所定時間が経過すると、密閉ポット65内の圧力を降下し、出湯管36内の溶湯を若干量密閉ポット65内へ戻して湯切りした後、遮断弁71を下降させて出湯口36xを閉じる。
【0032】
なお、出湯管36内に不活性ガスを供給して湯切れを行ってもよい。
【0033】
出湯口36xを閉じた後に、再び給湯口65xを開き、所定のタイミングで上述の吸引動作を行ない、次回の鋳造に備える。
【0034】
湯切り終了後に出湯口36xを閉じるので、溶湯は密閉ポット65に戻らず出湯管36に残留しており、ヒータの加熱により溶湯のまま維持されている。したがって、次の鋳造時には、出湯管36から直ぐにサイドゲート26に溶湯を供給することができる。
【0035】
なお、鋳造に際して、上記溶湯保持炉50,60から金型20への溶湯供給はほぼ同時期に行なわれ、ほぼ同時期に終了する。これら溶湯の供給圧力や供給時期に関しては、適宜個別に調節することができる。第2溶湯保持炉60に関しては、共通の開閉弁81,83,吸引ポンプ82,加圧気体供給手段84を用いてもよい。
【0036】
上記センターゲート25からディスク部成形空間40aに充填されるアルミ合金の溶湯はAC4CHであり、シリコンを多く含んでいる。そのため、溶湯の流動性が高く、ディスク部成形空間40aが複雑であっても、迅速かつ円滑に溶湯充填がなされる。しかも、シリコンを多く含むため凝固の際の収縮率が小さく、厚いディスク部の成形において寸法の収縮を最小限にすることができる。
【0037】
上記サイドゲート26からリム部成形空間40bに充填されるアルミ合金の溶湯は6000系であり、ディスク部成形空間40aに充填されるAC4CHよりシリコンが少ない。そのため、成形されたリム部は高い靭性を有することができる。この溶湯はAC4CHより流動性が低いが、リム部成形空間40bは比較的単純な形状であるので、充填に支障をきたすことは無い。また、この溶湯はAC4CHより収縮率が高いが、リム部成形空間40bが薄いので、寸法の収縮は小さく問題にならない
【0038】
図4は、第2実施形態にかかわる鋳造装置を示し、第1実施形態に対応する構成部には同番号を付してその詳細な説明を省略する。
この鋳造装置では、第1溶湯保持炉50内に第2溶湯保持炉60と同様に密閉ポット65を配置している。そして、ディスク部成形空間40aへの溶湯供給は、第2溶湯保持炉と同様にして出湯管35、センターゲート25を経て行なわれる。
【0039】
本発明は上記実施形態に制約されず、種々の形態を採用可能である。例えば、上記実施形態では、複数の第2溶湯保持炉60に保持する溶湯を同一組成としたが、第2溶湯保持炉60毎に溶湯の組成を異ならせることも可能である。また、第1溶湯保持炉と第2溶湯保持炉の溶湯成分を同じにし、溶湯温度制御や溶湯供給圧力,溶湯供給開示時を異ならせるようにしてもよい。
【0040】
複数のサイドゲート26への溶湯組成が同じ場合には、共通の第2溶湯保持炉60を用いてもよい。すなわち、複数のサイドゲート26に接続される複数の出湯管36を、共通の第2溶湯保持炉60内の複数の密閉ポット65に接続する。
【0041】
金型のリム成形部は、最終製品のリム部よりはるかに厚いリム部を成形するものであってもよい。この場合、鋳造後にリム部をスピニング加工することにより、最終製品形状またはそれに近い形状にする。
【0042】
本発明は、車両ホイールの他に、部位毎に異なる特性を要求される鋳造品の鋳造に適用することができる。
上記実施形態では、溶湯保持炉を坩堝型保持炉で構成したが、図5に示すようにバス型保持炉で構成してもよい。なお、53Aは横型浸漬ヒータを示す。
また、上記実施形態では、出湯管36の上流端部36aを密閉ポット65内に位置させ、遮断弁71,73を密閉ポット65内に配置したが、図6に示すように、遮断弁71,73を密閉ポット65外に配置する構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1実施形態に係わる車両用ホイールの低圧鋳造装置の縦断面図である。
【図2】同装置の金型の要部を型締め状態で示す拡大断面図である。
【図3】同装置の第2溶湯保持炉の要部拡大断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態をなす低圧鋳造装置の要部縦断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態をなす低圧鋳造装置の要部縦断面図である。
【図6】本発明の第4実施形態をなす低圧鋳造装置の要部縦断面図である。
【符号の説明】
【0044】
20 金型
25 センターゲート(第1ゲート)
26 サイドゲート(第2ゲート)
35 第1出湯管
36 第2出湯管
36x 出湯口
40 車両ホイール成形空間
40a ディスク部成形空間
40b リム部成形空間
50 第1溶湯保持炉
60 第2溶湯保持炉
65 密閉ポット
65x 給湯口
71,73 溶湯遮断弁(開閉手段)
82 吸引ポンプ(吸引手段)
84 加圧気体供給手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(ア)成形空間と、この成形空間に連なる第1ゲートおよび第2ゲートを有する金型と、
(イ)上記金型の下方に配置された第1溶湯保持炉と、
(ウ)上記金型の下方から離れた位置に配置された第2溶湯保持炉と、
(エ)一方端が上記第1ゲートに連通し、他方端が上記第1溶湯保持炉内の溶湯中に浸漬する第1出湯管と、
(オ)上記第1溶湯保持炉内に加圧気体を供給して、第1溶湯炉内の溶湯を上記第1ゲートに送る加圧気体供給手段と、
(カ)上記第2溶湯保持炉に収容され、溶湯中に浸漬する部位に開閉可能な給湯口と出湯口とを備えた密閉ポットと、
(キ)一方端が上記第2ゲートに接続され、他方端が上記出湯口に接続される第2出湯管と、
(ク)上記出湯口を閉じ上記給湯口を開いた状態で、上記密閉ポット内を負圧にして、第2溶湯保持炉内の溶湯を密閉ポット内に流入させる吸引手段と、
(ケ)上記出湯口を開き上記給湯口を閉じた状態で、上記密閉ポット内に加圧気体を供給して密閉ポット内の溶湯を第2出湯管を介して第2ゲートに送る加圧気体供給手段と、
を備えたことを特徴とする鋳造装置。
【請求項2】
(ア)成形空間と、この成形空間に連通する第1ゲートおよび第2ゲートを有する金型と、
(イ)上記第1ゲートへの供給溶湯を貯留する第1溶湯保持炉と、
(ウ)上記第2ゲートへの供給溶湯を貯留する第2溶湯保持炉と、
(エ)上記第1溶湯保持炉及び第2溶湯保持炉にそれぞれ収容され、溶湯中に浸漬する部位に開閉可能な給湯口と出湯口とを備えた密閉ポットと、
(オ)一方端が上記第1ゲートに連通し、他方端が対応する上記出湯口に接続される第1出湯管と、
(カ)一方端が上記第2ゲートに接続され、他方端が対応する上記出湯口に接続される第2出湯管と、
(キ)上記出湯口を閉じ上記給湯口を開いた状態で、上記密閉ポット内を負圧にして、溶湯保持炉内の溶湯を密閉ポット内に流入させる吸引手段と、
(ク)上記出湯口を開き上記給湯口を閉じた状態で、上記密閉ポットに加圧気体を供給して密閉ポット内の溶湯を対応する出湯管を介して対応するゲートに送る加圧気体供給手段と、
を備えたことを特徴とする鋳造装置。
【請求項3】
上記金型が、固定された下型と、昇降可能な上型と、これら下型と上型との間に配置された複数の横型とを備え、下型の中央に第1ゲートとしてセンターゲートが形成され、横型間に第2ゲートとして複数のサイドゲートが形成され、上記下型には上記サイドゲートにそれぞれ連なる複数の湯道が形成されており、
上記第2溶湯保持炉が複数配置され、これら第2溶湯保持炉内の密閉ポットと上記湯道がそれぞれ第2出湯管を介して連なっていることを特徴とする請求項1または2に記載の鋳造装置。
【請求項4】
請求項1〜3に記載の鋳造装置を用い、上記第1溶湯保持炉および第2溶湯保持炉に異なる組成の溶湯を保持させ、これら溶湯保持炉の溶湯を上記第1,第2出湯管を経て金型に供給することにより、部位によって異なる組成の鋳造品を得ることを特徴とする鋳造方法。
【請求項5】
上記第1溶湯保持炉および第2溶湯保持炉では、溶湯の組成に対応して溶湯温度を制御することを特徴とする請求項4に記載の鋳造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−346719(P2006−346719A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−177264(P2005−177264)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【出願人】(000110251)トピー工業株式会社 (255)
【出願人】(391003727)株式会社トウネツ (12)
【Fターム(参考)】