説明

鋼の製造設備の制御方法および制御装置

組織最適化の計算プログラムにより決定される設備の運転パラメータによって影響され組織に依存する定められた材料特性を有する鋼の製造設備の制御方法において、同時に、鋼の化学組成の目標値が組織最適化の計算プログラムにより決定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織最適化の計算プログラムにより決定される設備の運転パラメータによって影響され組織に依存する定められた材料特性を有する鋼の製造設備の制御方法に関する。
【0002】
鋼は顧客によって望まれた材料特性を有するように製造されなければならない。鋼の重要な材料特性は例えば引張強さ、弾性限界および伸び率である。これらの材料特性は、鋼が例えば車体板金または飲料缶の製造時に深絞り用として用いられる場合には重要である。
【0003】
鋼の材料特性は鋼の組織構造から生じ、その組織構造はここでも製造プロセスの生産規程によって影響を及ぼされ、決定される。
【0004】
製造時には、鋼の化学組成がその都度の目標値に合致することが保証されなければならない。これらの目標値は化学的な実験室分析によってチェックすることができる量割合に相応する。
【0005】
設定に相応する鋼を生産するためには、更に、定められた運転パラメータを守ることが必要である。これらの運転パラメータには、溶解、鋳造、加熱、圧延および冷却の各段階の目標値が含まれる。これらは例えば温度、圧力、速度またはそれらの時間的変化である。
【0006】
1つの成分の定められた量割合の目標値または運転パラメータの目標値は、ターゲット値と下限値および上限値とからなり、下限値と上限値との間に許容範囲が存在する。
【0007】
製鋼所または圧延工場においては、生産の適切な目標値を、できるだけ低コストで危険の少ない生産条件のもとで最終生産物において所望の材料特性が生じるように決定することがしばしば困難である。例えば、特定の用途のために規格化された鋼品質を注文する顧客の要求は、製鋼所において使用される生産方法を考慮して置き換えられなければならない。鋼品質のための工場規格ならびに個々の生産ステップのターゲット値および許容範囲はその生産方法の一部である。
【0008】
しかしながら、実際上、生産からの実際値は製造プロセスの目標値から常にはずれている。連続ステップにおいては、要求された材料特性、例えば引張強さの最小値が達成されるように、生産ステップの実際値の偏差に対して反対動作が行なわれなければならない。この最小値がもはや達成できない場合には、当該鋼材料(溶湯、スラブまたはコイル)の予定された注文にはもはや使用できない。この場合、注文のこの部分の加工は再び最初の生産ステップから開始しなければならず、これは金銭的な損害をもたらし、場合によっては納入遅れももたらす。
【0009】
生産の適切な目標値の決定は一般に計画部門によって技術的な注文組入れの枠内で行なわれる。加工者は、顧客の注文を工場の適切な生産手順に移すために、データ処理装置に記憶されている種々の技術テーブルを利用する。この場合に、この生産手順は定められた目標値に関連付けられている。
【0010】
鋼のために個々の成分の量割合が決定される。この量割合は化学的な実験室分析によってチェックすることができる。この目標値セットは鋼種(steel brand;鋼ブランドとも言われている)とも呼ばれる。同様に個々の生産ステップの目標値が決定される。製鋼所においては溶湯およびそれから鋳造されたスラブの製造が行なわれる。炉においてスラブが圧延プロセスのために加熱される。熱間圧延設備においてスラブが圧延されてコイルに形成され、場合によっては冷間圧延設備において更なる圧延もしくはコイルの焼き戻しによる鋼質の調整および場合によっては小さなサイズへの分割が行なわれる。
【0011】
特定の注文を、テーブルから生じる複数の代替的な目標値セットによって生産可能である場合がしばしば生じる。所望の特性を得るために、加工者はこれらの可能な目標値セットを決定しなければならない。なぜならば、生産部門への生産指令は1つの目標値セットしか許さないからである。加工者は生産経験に基づいて1つの特定の目標値セットを決める。品質部門によって面倒をみられるこの技術的なテーブルには、生産プロセスに関する会社のノウハウ全体がつぎ込まれている。このテーブルへの新たな登録および変更は、長年の生産経験によって、ならびに少しずつ変更された目標値セットを有する試験生産からもたらされる。
【0012】
過去に鋼の材料特性の計算のための数学的な方法が開発されている。この方法は、製造プロセスの物理学的・冶金学的なモデルを含み、各生産ステップのために鋼の組織構造の変化を求め、それから材料特性を算出する。
【0013】
このようにして個々の生産ステップをコンピュータにおいてシミュレーションすることができる。通常の鋼種については、算出された材料特性が実際に測定された値とよく一致することが証明されている。
【0014】
欧州特許出願公開第0901016号明細書から鋼の特性を決定するための数学的方法が知られている。弾性限界、引張強さ、伸び率、硬度などのような典型的な値をニューロンネットにより決定しようとするものである。
【0015】
国際公開99/24182号パンフレットから鋼またはアルミニウムを製造するための冶金工学的設備の制御方法が知られており、この方法においては組織に依存する定められた材料特性を有する鋼が製造される。材料特性は設備を運転する運転パラメータに依存する。運転パラメータの決定は、組織最適化手段により、鋼の所望の材料特性に依存して行なわれる。組織最適手段はニューロンネットを使用する組織最適化の計算プログラムである。
【0016】
しかしながら、生産指令ごとに1つの目標値セットが決定されているので、生産計画はしばしば良好な生産プログラムすなわち良好な順序を作成することができないという欠点がある。その例は溶解計画であり、これは、異なる鋼種および規模を有する多くの生産指令を溶解およびシーケンス、すなわち技術的に協調性のある溶解順序にまとめなければならない。1つの溶解においては1つの鋼種の指令のみが処理され、1つのシーケンスにおいては協調性のある鋼種を有する溶解のみが相前後して行なわれ得る。しばしば指令ストックには多数の質的に似た少量の指令が存在するが、しかしこれらの指令は異なる鋼種を持っている。この状況はしばしば悪い生産プログラムをもたらす。なぜならば、プログラムにおける可能な溶解の個数が少なく、個々の溶解はしばしばいわゆる倉庫指令により補充されなければならない。なぜならば、顧客注文に適する品質が不足しているからである。
【0017】
目標値セットを材料特性および生産コストへの要求に関して最適化するためには、品質部門は多大な金と時間を使わなければならないという欠点がある。変更された目標値セットを用いた多くの必要な生産試験と、この生産試験にその都度引き続いて行なわれる実験室試料による材料特性テストとが大きな費用を招く。従って、多数の目標値セットは、達成しようと努められるターゲット値および許容範囲に関して、不十分な回数の生産試験から導き出されなければならなかった信頼性妥協案である。特定の材料特性のためのより大きな許容範囲およびより低コストのターゲット値は、鋼種の長年の生産に基づいてはじめて置き換えることができる。
【0018】
基本的には個々の生産単位の調節システムはその出力量の目標値を、たとえ入力値すなわち先のステップの実際値がずれていても守ろうとする。スラグが冷えすぎて炉から圧延路に到着すると、圧延路の調節システムは、それにもかかわらず圧延されたストリップの出口温度の目標値を調節システムの操作量の適切な変化によって達成しようとする。これは、なおも影響を及ぼし得る目標値、例えばある程度まで変化させられる誤った温度または規模についてのみ働く。しかしながら、誤った化学分析、すなわち合金成分の誤った量割合を有する鋼を後続の圧延装置において更に変化させることはできない。
【0019】
例えば、化学分析における個々の成分が限界値を侵害したので、偏差を許容することができない場合、現在の中間生産物はこの注文に対しては放棄される。生産計画を通して高い優先順位で材料が再生産されなければならないが、しかしこれは時間遅れを招く。現在の中間材料は、他の適切な注文へ結びつけ変更され、つまり、非常の場合には顧客の結びつけなしに在庫へ回され、あるいは生産から取出されて中間倉庫へ収容される。後者の可能性は材料をスクラップと称して再び資源循環に戻すことである。
【0020】
本発明の課題は、注文をフレキシブルに計画に組入れることができかつ目標値からの偏差にフレキシブルに反応することができる鋼の製造設備の制御方法を提供することにある。
【0021】
この課題の解決のために、冒頭に述べた方法において、同時に、鋼の化学組成の目標値が組織最適化の計算プログラムにより決定されることが提案される。
【0022】
公知の方法と違って、材料特性への影響を持つ運転パラメータが組織最適化の計算プログラムにより決定されると共に、同時に鋼の化学組成の目標値も決定される。用語「同時に」は、例えば第1の計算過程において化学組成の目標値が求められ、続いて第2の計算過程において運転パラメータが求められるか、またはその逆である方法も含む。個々の計算過程は相前後して経過することができ、常に化学組成の目標値および運転パラメータが考慮される。それにより解決のために著しく多い自由度がもたらされる。なぜならば、注文ごと、予め決定された唯一の目標値セットだけでなく、複数の目標値セットが利用可能であるからである。従来は目標値セットを修正することはできなかった。なぜならば、操作者は生産ユニットにおいて後続の生産ステップへのその後に必要な作用を求めること又は予め与えることができなかったからである。しかしながら、組織最適化の計算プログラムにより、後続の組織最適化ステップに必要な目標値適合化を、従来の生産結果から、要求された材料特性の考慮のもとにオンラインで計算することができる。
【0023】
本発明は、要求された材料特性を達成するために、目標値の決定に、個々の生産ステップのみならず、目標値の変化のための可能性のある解決手段全体を考慮するという認識に基づいている。相互にかつ生産ステップを越えて互いに依存する複数の目標値を有するこの解決手段には、従来使用されていたよりも遥かに多くの自由度およびそれに応じた解決可能性が含まれている。
【0024】
組織最適化の計算プログラムが同時に鋼の化学組成の目標値および運転パラメータを決定するために使用されることによって、生産計画が著しくフレキシブルに構成される。その上、個々の生産ステップの期間中に一貫したオンライン品質管理を実施することができる。この改善された生産計画により、目標値の全ての可能な変化を計算に取込むことができるので、存在する指令ストックから改善された生産プログラム、すなわち溶解のより長いシーケンスおよび溶解内への少ない投入指令が生じ得る。
【0025】
本発明による方法によれば、生産中に目標値からの個々の実際値の偏差が後続の目標値の必要な変化の算出によって補償されるので、従来許容できなかった偏差も許容することができる。当然の帰結として、本発明による方法によれば、鋼に含まれた成分の量割合の許容範囲が拡大される。
【0026】
化学組成の目標値と特定の鋼用途のために場合によってはその目標値に合わせて算出された運転パラメータとがその都度1つのデータセットに統合されると望ましい。最適化計算の結果として、生産計画において計画すべき注文のそれぞれの鋼用途のためのデータセットの最適な組み合わせが選択されることによって、特定の鋼用途のためのデータセットが計算プログラムにより選択されて出力される。
【0027】
本発明による方法においては、鋼の化学組成の実際値および運転パラメータの実際値が目標値と比較され、組織最適化の計算プログラムが偏差存在時に新たに実行される。この計算の結果、実際値により良好に適合する他の目標値セットが選択される。それによって、可能な組み合わせの個数が遥かに高められ、実際値と目標値との間に偏差がある場合、他の生産ステップが変更された目標値セットで実施されることによって、鋼生産が大きな確率をもってなおも意図された目的のために使用可能である。
【0028】
本発明による方法の一構成によれば、目標値に下限および上限の間にある許容範囲が割り付けられ、許容範囲を外れた際に、組織最適化の計算プログラムが鋼の化学組成および/または運転パラメータの目標値を決定するために新たに実行される。
【0029】
組織最適化の計算プログラムは、1つまたは複数の最適化量に関して目標値を最適化する。材料コストおよび/または生産コストのターゲットを有する最適化計算を実行すると望ましい。例えば、特定の処理ステップを変更された温度で実行することによって、特定の高価な合金成分を節約するとよい。
【0030】
本発明による方法においては、生産ステップ期間中および/または生産ステップ後に組織最適化の計算プログラムにより目標値と実際値との比較による品質管理が実行されると特に有利である。それによって、比較的緩慢で費用のかかる実験室テストを省略することができ、いずれにせよその訴える力には多くのケースにおいて限界がある。組織最適化の計算プログラムによって、溶湯、スラブまたはコイルのような鋼生産品全体が連続的に材料特性および目標値維持に関して検査されるので、例えば引張テストの形での真の材料検査は時々の管理試験に低減可能である。
【0031】
熱間圧延設備において品質管理が生産経過中の種々の点で行なわれるのがよい。このために、スラグ倉庫での生産指令へのスラグ結びつけ、加熱炉の出口、粗圧延機の出口、生産ライン終端の巻取機の出口が特に適している。各監視点において、組織最適化の計算プログラムが、そのときまでの既知の生産実際値ならびに割り当てられた目標値を有する後続のプロセスから、予想される材料特性を計算する。要求された材料特性が後続のステップにおいて現在の目標値では達成できない場合、組織最適化手段が自動的に目標値適合化を試みる。計算が肯定的結果をもたらす場合、品質管理手段が目標値適合化を作動させる。計算が結果をもたらさない場合、品質管理手段は、組織最適化の計算プログラムにより、注文ストックの目標値リスト内で、低コストの適切な目標値セットを探索し、中間材料をこの注文へ結び付け変更する。それによって後続の生産ステップの新たな目標値も決定される。
【0032】
本発明による方法は鋼の製造設備の生産計画に結合されているとよい。生産計画および品質管理は、生産制御システム(Manufacturing Execution System、製造実施システム)のモジュールである。それに従って、本発明による方法は、鋼の製造設備の生産制御システムと直接に結合可能である。
【0033】
本発明は上述の鋼の製造設備の制御方法を実施するための装置にも関する。本発明によれば、組織最適化の計算プログラムが、同時に鋼の化学組成の目標値とその目標値に適した運転パラメータとを決定するように構成されている。
【0034】
以下において図面を参照しながら説明する実施例から本発明の他の利点および詳細を明らかにする。
図1は組織最適化手段の動作態様の概略図を示し、
図2は温度および成分含有量に依存する鋼の機械的性質の変化を示し、
図3は生産制御システムと組織最適化手段との協働を示し、
図4は個々の方法ステップを有するフローチャートを示し、
図5は生産中における品質管理の実施を示し、
図6は全生産工程の最適な目標値の算出を示す。
【0035】
図1は合金コストを最適化する際の組織最適化手段の動作態様の概略図である。以下において組織最適化手段1と呼ばれる組織最適化の計算プログラムは化学組成の目標値2および目標プロセスの運転パラメータの目標値3を含んでいる。目標値2,3は一緒にいわゆる鋼種をもたらす。鋼種は経験に基づいており、かつその都度の注文の生産に必要である全ての情報を含んでいる。製造された鋼の材料特性は設備の運転パラメータによって影響を及ぼされる。運転パラメータには処理温度および圧力が含まれ、場合によってはそれらの時間的導関数も含まれる。組織最適化手段1において、材料特性を模擬し各生産ステップのために鋼の組織構造の変化を求める数学モデルが実現されている。組織最適化手段1はニューロンネットの手法でも動作する。結果として組織最適化手段1は最適化計算の実行後に鋼の化学組成の変更された目標値4を供給し、この目標値4は目標値2に比べて低コストの生産を可能にする。例えば、材料特性の劣化の発生なしにニオブ、マンガンまたはチタンの如き比較的高価な合金材料を低減することを達成するよう努められるとよい。化学組成の変更された目標値に、生産プロセスの変更された目標値5が結合されている。目標値4,5は生産の基礎である共通な1つの目標値セットを形成している。
【0036】
図2は温度および成分含有量に依存する成分の機械的性質を示す。
【0037】
組織最適化手段1は生産コストを最適化すなわち最少化しようとするものである。コスト低減の可能性の1つは、1つの特定の化学的成分、特に1つの合金成分の成分含有量を低減することにある。図2において、水平軸には1つの特定の成分の成分含有量が取られている。垂直軸には温度が取られている。図2に書き込まれている線6は同じ機械的性質を有する成分含有量と温度との組み合わせを示す。特定の鋼はこれまで点7によって示された成分含有量により製造されていた。しかし、点7を矢印方向に点8まで移動しても、例えば強度である図2に書き込まれた特性は一定に維持されることが分かっている。実際上これは、それぞれの合金成分の含有量が低減でき、同時に定められた生産ステップの温度目標値が高められなければならないことを意味する。この成分の量割合の低減によってコスト低減がもたらされ、その場合に鋼の機械的性質は同じままである。
【0038】
図3は、組織最適化手段1と生産制御システムとの協働を示す。製造実施システム(MES)とも呼ばれる生産制御システム9はとりわけ生産計画および品質管理を含む。組織モニタは入力されたデータに基づいて強度または弾性限界などの材料特性を計算する計算モデルである。それによって、時間的に無駄のある実験室試料が大幅に置き換えられる。組織モニタの計算実行後に機械的性質を守ることができないことが確実である場合、組織最適化手段1により、その都度の鋼生産が目標値の変更によって許容範囲内にあるように処理され得るかどうかが分析される。組織モニタもしくは組織最適化手段1への入力量である実際値10は、個々の化学成分の量割合、プロセス温度などを含む。目標値11として、爾後の生産ステップの基礎である運転パラメータおよびプロセスパラメータが出力される。
【0039】
組織最適化手段1と生産制御システム9の平面との結合によってコスト低下が得られる。なぜならば、生産のために最適化された鋼種が使用されるからである。コイルの品質検査の際に時間が節約される。なぜならば、組織モニタが実験室試料の代わりをするからである。それにもかかわらず、各コイルの材料特性が算出されるので、誤りの確率が減少する。他の利点は、生産計画時により多くの自由度が得られることにある。従来では、各注文のために、圧延および冷却の予め設定された目標値を有する唯一の規格化された鋼種が存在する。それに対して、本発明による方法の場合には、注文ごとに、その都度要求される材料特性を満たす多数の設定が使用可能である。各設定は、圧延および冷却の目標値を含めて鋼種を指定する工場規格からなる。多数の設定から、組織最適化手段1によって最も少ない生産コストを生じさせる設定が算出されて選択される。
【0040】
注文の計画組入れは、各注文のための溶解計画に、材料特性および付加的にこれに適合し組織最適化手段1によって計算された目標値を得るための代替の工場規格のリストを提供する。それによって、溶解計画にとって非常に多い自由度がもたらされる。大きなシーケンスが形成され、鋼種取換えの回数が低減される。同様に溶解内での投入指令が低減される。生産は、注文固有の特性が計算された圧延および冷却の規則によって調整されることによって少ない個数の鋼種によって実施される。注文の計画組入れは溶解計画に、良好な生産プログラムを得るための同じ鋼種を有する多くの注文をもたらす。組織最適化手段は注文固有の材料特性の適切な目標値を算出する。
【0041】
図4は熱間圧延設備の例における個々の方法ステップを有するフローチャートを示す。
【0042】
生産開始前にコストが化学的分析に関してオフラインで最適化される。この最適化の結果は、ステップ12において、生産制御システムの基本データを変更するために使用される。注文の計画組入れ13は、溶解計画の指令ごとに、計画のために鋼種の幅広い選択を提供される。溶解計画14は生産計画においてコストを材料特性に関して最適化する。注文へのスラブの結びつけを維持するか又はスラブをオンラインで結びつけを変更するオンライン品質管理15が行なわれる。他のオンライン品質管理16が炉での加熱後もしくは粗圧延機での圧延後に行なわれる。巻取機の後における他のオンライン品質管理17に基づいて、コイルをただちに解放させることができ、それによって方法が終了する。
【0043】
図5は生産中の品質管理の実施を示す。
【0044】
炉もしくは粗圧延機18から生産制御システム(MES)9へ現在のプロセスデータが到来する。ステップ19において、要求された材料特性が達成可能であるかどうかがチェックされる。結果が「はい」の場合には現在の目標値による生産が継続される。結果が「いいえ」である場合には、ステップ20において指令の目標値の適合化が行なわれなければならない。このために生産制御システム9は、組織モニタおよび組織最適化手段1と協働し、変更された目標値を獲得する。変更された目標値に基づいて、ステップ21では、変更された目標値を有する強度が達成可能であるかどうかがチェックされる。強度が達成可能である場合には、変更された目標値で生産が実行される。強度が達成可能でない場合には、スラブを他の注文に結びつけ変更するために結びつけ変更要求が出力される。結びつけ変更要求の回数が低減され、目標値変更によって、スラブは多くの場合に本注文のために維持される。本注文に適していないスラブまたはコイルは、爾後の製造ステップが実行されることなく直ちに結びつけ変更に回される。
【0045】
図6は全生産工程の最適な目標値の算出をダイアグラムにて示す。
【0046】
この方法によって全生産工程の最適な目標値が求められ、製造経過の個々の動作および処理ステップがコンピュータによりモデル化され、シミュレーションされる。最適化計算の基礎は化学分析22であり、この結果が連続鋳造23の入力量である。これに熱間圧延24および冷間圧延25が続く。組織の改善のために冷間圧延後に焼き戻しプロセス26が行なわれる。個々の処理ステップ全体は組織最適化手段1の数学的モデルに流れ込むので、組織最適化手段1は生産経過全体を考慮して最適な目標値を求めることができる。組織最適化手段1はここでも生産制御システム(MES)9に結合され、従って生産は組織最適化手段1の結果に依存して制御可能である。全体として、本方法によって著しいエネルギーコストおよび材料コストが節約される。付加的にプロセス全体に関する専門知識が構築される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】組織最適化の動作態様の概略図
【図2】温度および成分含有量に依存する鋼の機械的性質の変化を示すダイアグラム
【図3】生産制御システムと組織最適化手段との協働を示すブロック図
【図4】個々の方法ステップを有するフローチャート
【図5】生産中における品質管理の実施を示すフローチャート
【図6】全生産工程の最適な目標値の算出を示すブロック図
【符号の説明】
【0048】
1 組織最適化手段
2 目標値(化学組成、「高価」)
3 目標値/目標プロセス
4 変更された目標値(化学組成、「低コスト」)
5 変更された目標値(生産プロセス)
6 線
7 点
8 点
9 生産制御システム
10 実際値
11 目標値
12 ステップ
13 注文の計画組入れ
15 オンライン品質管理
16 オンライン品質管理
17 オンライン品質管理
18 粗圧延機
19 ステップ
20 ステップ
21 ステップ
22 化学分析
23 連続鋳造
24 熱間圧延
25 冷間圧延
26 焼き戻し

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織最適化の計算プログラムにより決定される設備の運転パラメータによって影響され組織に依存する定められた材料特性を有する鋼の製造設備の制御方法において、同時に、鋼の化学組成の目標値が組織最適化の計算プログラムにより決定されることを特徴とする鋼の製造設備の制御方法。
【請求項2】
化学組成の目標値と特定の鋼用途のために場合によってはその目標値に合わせて算出された運転パラメータとがその都度1つのデータセットに統合されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
組織最適化の計算プログラムによって、生産計画において計画すべき注文のそれぞれの鋼用途のためのデータセットの最適な組み合わせが選択されることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
鋼の化学組成の実際値および運転パラメータの実際値が目標値と比較され、組織最適化の計算プログラムが偏差存在時に新たに実行されることを特徴とする請求項1乃至3の1つに記載の方法。
【請求項5】
目標値に下限および上限の間にある許容範囲が割り付けられ、許容範囲を外れた際に、組織最適化の計算プログラムが鋼の化学組成および/または運転パラメータの目標値を決定するために新たに実行されることを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】
組織最適化の計算プログラムができるだけ僅かの材料コストおよび/または生産コストのターゲットを有する目標値を決定することを特徴とする請求項1乃至5の1つに記載の方法。
【請求項7】
生産ステップ期間中および/または生産ステップ後に組織最適化の計算プログラムにより目標値と実際値との比較による品質管理が実行されることを特徴とする請求項1乃至6の1つに記載の方法。
【請求項8】
熱間圧延設備における品質管理が、生産指令へのスラブ結びつけ時にスラブ倉庫で、加熱炉の出口で、粗圧延機の出口で、生産ライン終端の巻取機の出口でのいずれかにおいて実行されることを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
組織最適化の計算プログラムは、要求された材料特性が後続の生産ステップにおいて現在の目標値により達成可能かどうかを検査することを特徴とする請求項1乃至8の1つに記載の方法。
【請求項10】
計算プログラムは、要求された材料特性が後続の生産ステップにおいて達成可能でない場合には目標値を適合させることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項11】
鋼の製造設備の生産計画に結合されていることを特徴とする請求項1乃至10の1つに記載の方法。
【請求項12】
鋼の製造設備の生産制御システムに結合されていることを特徴とする請求項1乃至11の1つに記載の方法。
【請求項13】
注文に対する鋼種の決定時に運転パラメータの算出された変化を生じさせることによって工場の鋼種の個数が低減されることを特徴とする請求項1乃至12の1つに記載の方法。
【請求項14】
運転パラメータの変化によって鋼種の化学成分の許容範囲が拡大されることを特徴とする請求項1乃至13の1つに記載の方法。
【請求項15】
組織最適化の計算プログラムにより決定される設備の運転パラメータによって影響され組織に依存する定められた材料特性を有する鋼の製造設備を制御するための請求項1乃至14の1つに記載の制御方法を実施するための装置において、
組織最適化の計算プログラムが鋼の化学組成の目標値の決定も行なうように構成されていることを特徴とする鋼の製造設備の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−504355(P2007−504355A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524245(P2006−524245)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008347
【国際公開番号】WO2005/021811
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】