説明

鋼・コンクリート合成推進管

【課題】コンクリート製の推進管本体の外周面に鋼板を一体に設けてなる鋼・コンクリート合成推進管において、前記鋼板の使用によりコスト高になる不都合を防止し、同程度の機能を保ちつつそのコストの低減を図ることである。
【解決手段】推進管本体1の外周面に一体に設けられた鋼板2に多数の突出部11を所定の間隔で設けることにより、曲げ強度等の大きさを従来の場合と同程度に保ちつつ、従来の場合より薄い鋼板2が使用できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、推進工法に用いられる鋼・コンクリート合成推進管に関し、特にその外周面に装着された鋼板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄筋によって補強されたコンクリート製の推進管本体の外周面に円筒形鋼板を一体に設けた鋼・コンクリート合成推進管が従来から知られている(特許文献1)。前記の合成推進管は、鋼板による補強効果によって、大きな曲げ強度が得られるため長距離推進や急曲線推進に適し、多くの施工実績がある。
【特許文献1】特許第3423967号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記の鋼・コンクリート合成推進管は、前記のようなメリットがある一方、鋼板を用いることからコンクリート単体の推進管に比べコスト高になる難点があった。また、前記従来の合成推進管は、コンクリート製の推進管本体と鋼板との一体化を図るため、鋼板の内面にジベルを設ける必要があり、これもコスト高の一要因となっていた。
【0004】
そこで、この発明は、機能の低下を伴うことなく、製造コストの低減を図った鋼・コンクリート合成推進管を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の課題を解決するために、この発明は、推進管本体の外周面に一体化に設けた鋼板にその外周面から内周面に向けて、又はこの反対方向に向けて打ち出しによる多数の突出部を全体に均等かつ分散状に形成したものである。
【0006】
上記の突出部は鋼板自体の有効断面積を増大するとともに、加工硬化により鋼板の剛性を増大させる。また推進管製造時にコンクリートが突出部の外周又は突出部の内部に流入固化するため鋼板の一体化を図る機能を有する。
【発明の効果】
【0007】
この発明は、前記のように打ち出しによる多数の突出部を鋼板の全体にわたり均等に設けたことにより、従来の鋼板より薄い低コストの鋼板を使用しても、合成推進管全体の曲げ強度その他の機能を同等に維持することができる。また、ジベルが不要となるので、鋼板の低コスト化と合わせて合成推進管全体の製造コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0009】
〔実施形態1〕
実施形態1の合成推進管は、図1に示したように、鉄筋で補強(図示省略)されたコンクリート製の推進管本体1、その円筒部外周面に一体に設けられた鋼板2、推進管本体1の差し口3の外周面に一体に設けられた差し口カバー鋼板4、推進管本体1の後端部に設けられた受け口鋼板5とからなる。
【0010】
前記の差し口カバー鋼板4の先端内周面に差し口3の先端面を保護するリング状の面板6が一体に設けられる。差し口3の外周面にはシール部材の装着のための凹凸7が設けられ、差し口カバー鋼板4にその凹凸7に沿った装着溝8が形成される。差し口カバー鋼板4の後端は前記鋼板2の先端に溶接される。
【0011】
また、受け口鋼板5の前端内周面に推進管本体1の後端面を保護するリング状の面板9が一体に設けられる。受け口鋼板5は前記鋼板2の後端に溶接される。
【0012】
前記の鋼板2には、その全体にわたり多数の突出部11が均等かつ分散状に設けられる。この突出部11は、鋼板2の外周面から内周面に向けて打ち出しによって設けたものであり、図2(a)〜(c)に示したように、一定の長さA、一定の幅B及び一定深さCをもち、かつその長さ方向が推進管本体1の中心線に平行となるよう形成された一字形のものである。突出部11の長さ方向の両端部にはテーパA1が形成され、また幅方向の両側面にもテーパ面B1が形成される。
【0013】
前記突出部11は、周方向に一定間隔をおいて推進管本体1の中心線と平行な線Xを仮想したとき、各突出部11はその線X上に間隔D(<A)をおいて一定ピッチで配置され、隣接する他の線X上の各突出部11は半ピッチだけずらせ、前記の間隔Dの部分を周方向にみたとき、その間隔Dにオーバラップするように隣接する線X上の突出部11が配置される。
【0014】
実施形態1の合成推進管20は以上のようなものであり、これを地盤中のトンネル21内に推進工法で送り込んだ状態を図3(a)(b)に示す。図3(b)から分かるように、推進管本体1のコンクリート部分が鋼板2の突出部11の相互間に入るため、突出部11がジベルの作用をなし、推進管本体1と鋼板2が一体化される。
【0015】
また、突出部11はトンネル21の周辺地盤22に対して凹入しているので、その内部に地盤の一部が入ることにより推進抵抗が多少増大することがあり得るが、推進作業に大きな影響を与える要因になることはない。
【0016】
一般に、推進工法の施工時においては、推進管は先頭の掘進機において発生するトルクの反力を支える作用を行うが、推進管と地盤との間の摩擦によるトルク以上に大きいトルクが掘進機において発生した場合は推進管が支えきれず、ローリングする場合がある。前記の突出部11はトンネル21の地盤に対しては凹入しているので、地盤が食い込むことにより(図3(b)参照)回転方向の摩擦抵抗が多少増大し、ローリング防止にある程度寄与することができる。
【0017】
〔実施形態2〕
図4(a)(b)に示した実施形態2の合成推進管20は、前記実施形態1の場合とは逆に突出部11を鋼板2の内周面から外周面の方向に打ち出して形成したものである。突出部11の配列パターンは前記の場合(図2(a)から(c)参照)と同様である。この場合の突出部11は、推進管本体1のコンクリートが内部に入ることによりジベルと同様の機能が発揮される。また、回転方向への摩擦抵抗が大きくなりローリング防止機能が実施形態1の場合より増大する。
【0018】
〔実施形態3〕
図5は実施形態3の場合の突出部11の配列パターンを示している。この場合の突出部11は、前記実施形態1の場合と同様に外周面から内向きに、又は実施形態2の場合と同様に内周面から外周面の方向に打ち出して形成された一字形のものである。その配列は、線Xに対してθ(=45°)の傾きをもって一定ピッチで配列され、隣接する他の線Xにおいては−θの傾きをもち、かつ半ピッチだけずれて交互に配列される。この場合も突出部11は外周面から内周面に向け、又はこの反対に向けて打ち出され、ジベルと同様の機能、及びローリング防止機能を発揮する。
【0019】
〔実施形態4〕
図6(a)(b)は実施形態4の場合の突出部11の形状と配列パターンを示している。この場合の突出部11は、一定長さAと、一定幅Bと、一定深さCをもち、かつ長さ方向の中間でL形に屈曲され、そのL形屈曲部23が前記推進管の推進方向Pを向くようにX線上に間隔Dをおいて配列され、隣接する線X上の突出部11は半ピッチだけずらせて配列される。この場合も突出部11は外周面から内周面に向け、又はこの反対に向けて打ち出され、ジベルと同様の機能、及びローリング防止機能を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態1の断面図
【図2】(a)同上の一部拡大平面図、(b)(a)図のb−b線の断面図、(c)(a)図のc−c線の断面図
【図3】(a)実施形態1の使用状態における縮小断面図、(b)(a)図の一部拡大断面図
【図4】(a)実施形態2の一部断面図、(b)(a)図のb−b線の断面図
【図5】実施形態3の一部拡大平面図
【図6】(a)実施形態4の一部拡大平面図、(b)(a)図のb−b線の断面図
【符号の説明】
【0021】
1 推進管本体
2 鋼板
3 差し口
4 差し口カバー鋼板
5 受け口鋼板
6 面板
7 凹凸
8 装着溝
9 面板
11 突出部
20 合成推進管
21 トンネル
22 地盤
23 L形屈曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
推進管本体の外周面に円筒形の補強用鋼板を一体に設けてなる鋼・コンクリート合成推進管において、前記鋼板にその外周面から内周面に向けた打ち出しにより多数の突出部を全体にわたり均等に形成したことを特徴とする鋼・コンクリート合成推進管。
【請求項2】
推進管本体の外周面に円筒形の補強用鋼板を一体に設けてなる鋼・コンクリート合成推進管において、前記鋼板にその内周面から外周面に向けた打ち出しによる多数の突出部を全体にわたり均等に形成したことを特徴とする鋼・コンクリート合成推進管。
【請求項3】
前記突出部の形状が一定幅と、その幅より長い一定長さと、一定深さを有し、かつその長さ方向が前記推進管本体の中心線と平行になるよう形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼・コンクリート合成推進管。
【請求項4】
前記突出部の形状が一定幅と、その幅より長い一定長さと、一定深さを有するように形成され、前記突出部は前記推進管本体の中心線に対し平行でかつ周方向に一定間隔をおいて存在する仮想線上に配列され、一つの仮想線上の該突出部の長さ方向が前記仮想線に対し45°の傾斜をもち、これに隣接した他の仮想線上の突出部が−45°の傾斜をもって形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼・コンクリート合成推進管。
【請求項5】
前記突出部の形状が一定幅と、一定長さと、一定深さをもち、かつ長さ方向の中間でL形に屈曲され、そのL形屈曲部が前記推進管本体の推進方向を向くように一定間隔をおいて配列されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼・コンクリート合成推進管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−51499(P2007−51499A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−238503(P2005−238503)
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【出願人】(000163419)株式会社きんでん (37)
【出願人】(000158769)機動建設工業株式会社 (41)
【出願人】(390000332)栗本コンクリート工業株式会社 (29)
【出願人】(394002981)株式会社岡本建設用品製作所 (10)
【Fターム(参考)】