説明

鋼板の溶融金属鍍金装置

【課題】プリメルトポットから鍍金槽に溶融金属を供給する際、溶融金属の成分を偏析させず、優れた鍍金品質を有する製品を得ることができる鋼板の溶融金属鍍金装置を提供する。
【解決手段】複数の成分を含む溶融金属浴2を保持する溶融鍍金槽1と、前記溶融鍍金槽1に溶融金属浴成分を供給するための一つ又は複数のプリメットポット5と、前記溶融鍍金槽1内の溶融金属浴2と前記各プリメルトポット5内の溶融金属2aを連通する連結管6を備える鋼板の溶融金属鍍金装置において、前記連結管6の溶融金属浴成分を前記溶融鍍金槽1内の溶融金属浴2中に導出する開口部12を、前記溶融鍍金槽1の鋼板侵入部側に鋼板最大幅以上となるように間隔をあけて設置することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板の溶融金属鍍金装置に関し、より詳しくは溶融金属を鍍金する溶融金属槽に、溶融金属浴成分の補給を行なうプリメルトポットを備える鋼板の溶融金属鍍金装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融金属(例えば、Zn、Al、Mn、Pb及びその合金)鍍金鋼板の一般的な製造方法は以下の通りである。すなわち、冷延鋼板の表面を前処理工程で洗浄してから、該鋼板を非酸化性あるいは還元性雰囲気中で加熱焼鈍し、ついで鍍金に適した温度に酸化させることなく冷却した後、鍍金浴中に連続的に浸漬させる。該浴中で鋼板表面に付着した過剰な溶融金属は、ガスワイピング等の付着量調整装置により除去してその付着量を調整し、冷却する。
【0003】
そして、該鍍金鋼板の製造は、通常、主成分である溶融金属中に、別種の金属を添加して行なわれる。例えば、代表的な製品に、溶融亜鉛鍍金(合金化溶融亜鉛鍍金鋼板を含む。)では主成分である溶融Zn中に微量のAlが添加され、また溶融アルミニウム鍍金では、主成分である溶融Al中に微量のSiが一般に添加される。それの添加理由は、溶融金属と素地鋼板との界面に硬くて脆い合金層が成長するのを抑制し、鍍金密着性を向上するためである。しかし、該合金層成長を適度に抑制するためには、その添加量を適正範囲に管理しなければならない。
【0004】
溶融亜鉛鍍金鋼板の場合で述べると、添加されたAlは、溶融亜鉛浴中でZnよりも優先的に鋼板と反応し、鍍金層と素地鋼板界面にAl富化層(Fe−Al金属間化合物)を生成することで、Fe−Znの合金化反応を抑制し、これによって密着性の良好な合金化溶融亜鉛鍍金鋼板を製造することができるようになる。良好な密着性を発現させるには溶融亜鉛浴中のAl濃度を所定の濃度範囲に管理することが必要である。
【0005】
溶融亜鉛鍍金浴は、鋼板に付着して鍍金槽外へ持ち出されて減少するだけでなく、ドロスの鍍金槽外への排除等によっても減少するので、その減少分を鍍金浴へ補給する必要がある。Alは、(1)優先的なAl富化層の生成、(2)ドロスの生成等に消費されることから、減少割合がより多くなる。従って、その補給方法としては、従来より、目標とするあるいはそれより高濃度のAl量を含有したZnインゴット及び純Znインゴットを該鍍金浴中に投入して行なわれていた。
【0006】
しかし、該インゴットによるAlの補給方法では、鍍金浴に投入されたインゴットが鍍金浴中で溶解、拡散して、均一な鍍金浴になるまでに時間がかかったり、またインゴットが全て溶解、拡散してから次のインゴット投入までは、該浴中のAl濃度は減少し続けるため、インゴットを投入するピッチに対応して、鍍金浴中のAl濃度が大きく変動するという問題があった。つまり、上記のごとく鍍金浴中のAl濃度が変動すると、前述したAl富化層の生成が不均一となり、安定した鍍金品質を得ることができなかった。
【0007】
そこで、係る問題を解決するために、特許文献1は、補給成分を予め溶融、保持する複数個のプリメルトポットを用い、必要な補給成分の濃度及び鍍金浴の減少量に対する該プリメルトポットから成分を鍍金槽に補給することを特徴とする、又は補給成分を予め溶融、保持した少なくとも一つのプリメルトポット及び補給成分の金属塊あるいは金属粉粒を入れた少なくとも一つのホッパを用い、必要な補給成分の濃度及び鍍金浴の減少量に対応するように前記プリメルトポット及びホッパから成分を鍍金槽に補給することを特徴とする鍍金浴への成分補給方法を開示している。
【0008】
また特許文献2は、補給成分を予め溶融、保持した複数個のプリメルトポット又は少なくとも一つのホッパを用い、必要な補給成分の濃度及び鍍金浴の減少量に対応するように、鍍金浴内に設けた混合槽に前記プリメルトポット、又はプリメルトポット及びホッパから成分を供給し、該混合槽内から噴射ノズルを用いて鍍金浴内へ噴射して成分を補給することを特徴とする鍍金浴への成分補給方法を開示している。
【0009】
しかしながら、特許文献1および特許文献2の方法では、鍍金浴に補給成分を供給するための供給場所近傍とそれ以外の場所では成分濃度がばらついて、めっき槽内の濃度分布が不均一になり、鋼板全体で鍍金品質が不均一になるという問題が生じた。
【0010】
また、鍍金浴への成分補給方法として特許文献3に開示されるプリメルトポット又は混合槽から、溶融鍍金金属を被鍍金鋼板が該鍍金浴に侵入する部分の板幅方向全域に供給する方法が開示されているが、鋼板が侵入する部分への溶融金属の直接供給により侵入波面の揺らぎによりアッシュ、スリキズなどの欠陥が発生する。
【0011】
なお、これまで鍍金浴に付随するプリメルトポットに関する先行技術は多数存在するが、その多くはプリメルトポットから鍍金浴へ溶融金属供給する際のプリメルトポット内での成分濃度調整方法等が開示されてきたが、鍍金浴内での浴内設備の配置を鑑みて最適な溶融金属供給装置に関するものは見られないのが現状である。
【特許文献1】特開平1−165753号公報
【特許文献2】特開平2−104649号公報
【特許文献3】特開平7−238358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前記した従来技術の問題点を解決し、プリメルトポットから鍍金槽に溶融金属を供給する際、溶融金属の成分を偏析させず、優れた鍍金品質を有する製品を得ることができる鋼板の溶融金属鍍金装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記目的を達成するために、従来の鍍金浴の設備を鋭意検討した。
その結果、鍍金槽内での流動が成分濃度均一化のために非常に重要であることに気づき、その対策としてプリメルトポットから鍍金槽に溶融金属を補給する連結管を適切に配置することを着想した。本発明はこの着想に基づくものである。
【0014】
上記課題を解決する本発明の要旨は次のとおりである。
【0015】
(1)複数の成分を含む溶融金属浴を保持する溶融鍍金槽と、前記溶融鍍金槽に溶融金属浴成分を供給するための一つ又は複数のプリメットポットと、前記溶融鍍金槽内の溶融金属浴と前記各プリメルトポット内の溶融金属を連通する連結管を備える鋼板の溶融金属鍍金装置において、前記連結管の溶融金属浴成分を前記溶融鍍金槽内の溶融金属浴中に導出する開口部を、前記溶融鍍金槽の鋼板侵入部側に鋼板最大幅以上となるように間隔をあけて設置することを特徴とする鋼板の溶融金属鍍金装置。
【0016】
(2)前記連結管の溶融金属浴成分を前記溶融鍍金槽内の溶融金属浴中に導出する開口部を、溶融金属浴内のスナウト浸漬深さより深い位置に設置することを特徴とする(1)の鋼板の溶融金属鍍金装置。
【0017】
(3)前記連結管の溶融金属浴成分を前記溶融鍍金槽の溶融金属浴中に導出する開口部と、スナウトおよび鋼板の間に、前記開口部から導出された溶融金属浴成分の流れを規制する邪魔板を設置することを特徴とする(1)または(2)の鋼板の溶融金属鍍金装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、溶融金属浴成分を溶融鍍金槽内の溶融金属浴中に導出する開口部を、溶融金属浴の鋼板侵入部側に鋼板最大幅以上となるように間隔をあけて設置したことで、プリメルトポットから溶融鍍金槽に溶融金属浴を補給したときに起こる溶融鍍金槽内の溶融金属成分濃度の不均一や溶融金属浴面の揺らぎ発生の問題を防止でき、その結果、鋼板の鍍金品質を安定化でき、またアッシュ、スリキズなどの欠陥の発生を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
図1は本発明の実施の形態に係る鋼板の溶融金属鍍金装置の要部を示す概略断面図、図2は図1のA−A部矢視断面図である。図3は連結管の溶融鍍金槽内部分の構造を説明する概略図で、図1のB−B部断面図である。図1〜図3において、1は溶融鍍金槽、2は溶融金属浴、3はスナウト、4はシンクロール、5はプリメルトポット、6は連結管、7は邪魔板、8は金属インゴット、9はストリップ(鋼板)、11、12は各々連結管6のプリメルトポット5側開口部、溶融金属槽1側開口部である。金属インゴット8は、図示されていない金属インゴット投入装置の吊具によって昇降可能に保持されている。
【0021】
溶融鍍金槽1は溶融金属浴2を保持し、鋼板9を浸漬通板させて鋼板9に溶融鍍金する。プリメルトポット5は溶融鍍金槽1に補給する溶融金属浴成分を溶解し、溶解した溶融金属浴2aを保持する。プリメルトポット5は溶融鍍金槽1の側方に配置され、溶融鍍金槽1の溶融金属浴2とプリメルトポット5の溶融金属浴2aは連結管6で連通されている。
【0022】
連結管6の溶融鍍金槽1側は、該溶融鍍金槽1壁面に沿って鋼板9幅方向に分岐した分岐管を備え、各分岐管端部に開口部12を備える。本発明では、開口部12は、該開口部12同士の間隔が鋼板最大幅以上となるように配置される。すなわち、各開口部12は最大幅の鋼板端部より外側に位置するように配置される。ここで、外側とは、パスラインの鋼板幅方向中心(図2の二点鎖線C−C)を基準として、鍍金装置の上方からみてより離れた位置にあるという意味である(以下の説明でも同様である。)。
【0023】
溶融鍍金槽1の溶融金属浴2とプリメルトポット5の溶融金属浴2aは連結管6で連通されているため、プリメルトポット5から溶融金属浴槽1に溶融金属2aを補給していないときは、溶融鍍金槽1の液位とプリメルトポット5の液位は同じレベルになる。プリメルトポット5から溶融金属浴槽1に溶融金属浴2aを補給するときは、プリメルトポット5の金属インゴット8を降下させる。金属インゴット8を降下させると、プリメルトポット5の液位が上昇して溶融鍍金槽1とプリメルトポット5間に液位差が生じ、プリメルトポット5内の溶融金属2aは開口部11から連結管6内に導入され、開口部12から溶融鍍金槽1内へ導出される。溶融鍍金槽1の液位とプリメルトポット5の液位が同じ液位になるとこの液の移送は停止する。また金属インゴットのプリメットポット5中に浸漬された部分が溶解する。この液の移送は溶融鍍金槽1とプリメルトポット5の液位差を利用したものであるので、この液の移送によって溶融金属浴槽1内の溶融金属浴2に波面の揺らぎが生ぜず、スナウト3内の波面の揺らぎによって発生するアッシュ付着やスリキズなどの欠陥が発生しなくなる。
【0024】
溶融金属鍍金では、鋼板1が溶融金属槽1内に浸入するスナウト3近傍の溶融金属浴成分が均一であることが安定した鍍金品質を得る上で特に重要である。
【0025】
鋼板の溶融金属槽1内への侵入に伴って生じる流れによってスナウト3近傍の溶融金属浴2はスナウト3側の鋼板通過領域(図2のスナウト3内の鋼板9とシンクロール4間のハッチング領域)に流れる。プリメルトポット5から補給された溶融金属2aが溶融鍍金槽1内の溶融金属浴2中に十分に拡散されないうちにスナウト3近傍の鋼板通過領域に流れると、例えば溶融亜鉛鍍金でみられるようにAl富化層の生成が不均一になるなど、安定した鍍金品質を得ることができなくなる。本発明の装置では、分岐管端部の開口部12同士の間隔を鋼板最大幅以上となるように設置することで、プリメルトポット5から補給された溶融金属2aが溶融鍍金槽1内の溶融金属浴2中に十分に拡散しないうちにスナウト3近傍の鋼板通過領域に流れることが抑制され、該鋼板通過領域へはプリメルトポット5から補給された溶融金属2aが溶融鍍金槽1内の溶融金属浴2中に十分に拡散混合したものが流れるようになる。その結果、プリメルトポット5から溶融鍍金槽1に溶融金属浴2aを補給したときに起こる鍍金金属成分の濃度の不均一が防止され、鋼板の鍍金品質を安定化できる。
【0026】
溶融鍍金槽1の溶融金属浴2とプリメルトポット5の溶融金属浴2aが連結管6で連通されていれば、連結管6の開口部11、12の鉛直方向位置は特に制限されない。開口部11、12の一部は浴面上にあってもよいが、プリメルトポット5から溶融鍍金槽1に補給された溶融金属浴2aが溶融金属浴2中に十分に拡散しないうちに鋼板の鍍金浴侵入部近傍に流れるのを抑制し、あるいはプリメルトポット5浴面上に存在するドロスなどが溶融鍍金槽1に持ち込まれるのを防止するなどのために、開口部11および開口部12の上端は浴面位置または浴中に没するように設けることが好ましく、さらに開口部12は、溶融金属浴2中のスナウト3の浸漬深さより深い位置に設置することがより好ましい。本装置では、連結管6のプリメルトポット5側開口部11は、その上端が浴面レベルとなる位置に設けられ、鍍金金属槽1側の開口部12は、溶融金属浴2内のスナウト3の浸漬深さより深い位置に設けられている。
【0027】
なお、連結管6の開口部11および12は本実施形態に係る装置のようにスナウト3後方の鋼板面に面する溶融鍍金槽1の壁面近傍に配置するだけでなく、フロント側(図1において、シンクロール4で通板方向変更後の鋼板9立ち上がり部の左方)に配置してもよい。
【0028】
連結管6は、プリメルトポット5で溶解する溶融金属、溶融鍍金槽1に保持される溶融金属に対して、耐食性、耐熱性を有する公知の材料、例えばセラミックス等を用いて作製できる。また、連結管6の浴外にある部分の外側は断熱構造としてもよい。連結管6の断面寸法・形状、開口部11および12の開口部寸法・形状は特に限定されない。補給する溶融金属成分量に応じて適宜のものを採用することができる。
【0029】
プリメルトポット5から溶融鍍金槽1に補給された溶融金属浴2aが溶融金属浴2内で十分に拡散しないうちに鋼板の鍍金浴侵入部近傍に流れるのを抑制する作用をさらに高めるためには、連結管6の開口部12と、スナウト3および鋼板9の間に、開口部12から導出された溶融金属浴の流れを規制する邪魔板7を設置することがより好ましい。
【0030】
邪魔板7は、上端が浴面または浴面上にあることが好ましく、下端は開口部12およびスナウト3よりも深い位置となるように設置することが好ましく、開口部12とシンクロール4と接するまでの浴中の鋼板走行路とを結ぶ線より下方にあるように設置することがさらに好ましい。開口部の設置場所が深くなると浴内の温度差が大きくなるので、その深さは浴面からシンクロール軸心深さ以内が好ましい。
【0031】
邪魔板7の幅方向端部は、該連結管6の開口部12より外側に配置され、またスナウト幅方向端部より外側に配置されるように設置、すなわち、邪魔板7の幅は、開口部12,12同士の最大寸法(外法寸法)以上で、またスナウト幅以上となるように設置することが好ましい。
【0032】
本装置では、邪魔板7は、スナウト3と連結管6の開口部12の間に配置され、その上端は浴面上で、その下端は開口部12より深くなるように設置され、また左右端部は溶融鍍金槽1の壁面に接するように設置されている。
【0033】
邪魔板7は、溶融鍍金槽1に保持される溶融金属に対して、耐食性、耐熱性を有する公知の材料、例えばセラミックス等を用いて作製できる。邪魔板7は、平板でなくても良い。開口部12の設置場所に応じて適宜の形状のものを採用できる。
【0034】
上記で説明した装置では、連結管6全体がほぼ浴面下に没するように設置したが、図4に示すように、連結管6´の開口部11´および12´が浴面下に没するように設置すれば、連結管6´の開口部11´および12´以外の部分は浴面上に配置した構造であっても良い。
【0035】
本発明では、前記で説明したような連結管で溶融鍍金槽と連接されたプリメルトポットを製造する溶融鍍金鋼板種に応じて一つ又は複数設置する。
【0036】
以下、本発明の実施の形態に係る鋼板の溶融金属鍍金装置を用いて溶融亜鉛鍍金鋼板を製造する方法を説明する。
【0037】
図1の装置において、鋼板1はスナウト3から溶融鍍金槽1のめっき浴2中に浸漬通板され、浴中のシンクロール3で通板方向が変向された後鍍金浴2から引き上げられ、図示されていないガスワイピングノズルで亜鉛付着量を制御され、更に必要に応じて、スパングル調整処理、合金化処理等の処理が施されて、所望の溶融亜鉛鍍金鋼板とされる。
【0038】
溶融亜鉛鍍金の浴組成は、一例を挙げると、0.1〜0.2mass%Al−Znである。溶融金属槽1には、上記組成の溶融金属浴(以下鍍金浴)2が保持され、めっき浴2のAl濃度は上記濃度範囲に管理される。このようにして溶融亜鉛鍍金鋼板を製造すると、鍍金浴2は鋼板に付着して槽外に持ち出され、またドロスとして槽外に除去されるため、溶融鍍金槽1の液位が低下するので、その液位を一定に保持するために、鍍金浴を補充する必要がある。
【0039】
減少する鍍金浴の組成は溶融鍍金槽1に保持されている鍍金浴2と同じでない。Alは鍍金層と鋼板素地界面に生成するAl富化層として消費され、またFe2Al5となってドロスとして除去されるため、Znに比べてAlの減少割合が高くなる。そのため、補給する鍍金浴のAl濃度は、溶融鍍金槽1に保持されている鍍金浴2のAl濃度より高くする必要がある。
【0040】
鍍金浴はプリメルトポットから補充する。プリメルトポットは、2基設置し、第1プリメルトポットは、純亜鉛インゴットを溶解、保持し、第2のプリメルトポットはAl−Zn合金インゴットを溶解、保持する。第1プリメルトポットの連結管は図1の配置とし、第2プリメルトポットの連結管は図4の配置とする。
【0041】
Al−Zn合金としては、例えば0.3〜0.5mass%Al−Zn合金を用いる。第1プリメルトポット及び第2プリメルトポットから供給する溶融金属量の比を調整することで、溶融金属槽1に保持する鍍金浴2のAl濃度を制御するとともに、溶融鍍金槽1の液位を一定液位に保持する。その際、Znに比べて多く減少するAlの減少量を補償するように第2のプリメルトポットに保持されているAl−Zn合金の補給量の割合を多くする、たとえば補給する鍍金浴のAl濃度を8〜12mass%程度とすることで、溶融鍍金槽1に保持されている鍍金浴2のAl濃度を所定の濃度範囲内に制御することができる。
【0042】
本発明の装置を用いて、プリメルトポットから鍍金浴を補給すると、溶融鍍金槽1内の鍍金浴中のAl濃度の不均一がなくなるので、鍍金品質を安定化でき、また鍍金浴面の揺らぎが起こらないので、アッシュ、スリキズ等の欠陥の発生を防止できる。
【0043】
連続溶融鍍金ラインで、厚さ:0.4〜3.2mm×幅750〜1850mmの範囲内にある種々寸法の鋼板に溶融亜鉛めっきを行うにあたり、以下のI〜Vの条件の装置を用いて行い、それぞれの鍍金不良率を比較した。ここで、鍍金不良率は、溶融亜鉛めっきラインの出側にある表面検査室で目視により合金化不良箇所を確認し、以下の基準で算出した。
鍍金不良率(%)=鍍金不良鋼板重量(t)/製造鋼板重量(t)×100
[鍍金装置条件]
I:プリメルトポットを用いず、メインポットに直接インゴットを投入。
II:プリメルトポットでインゴットを溶解するようにし、プリメルトポットとメインポットとの連結管における、メインポット側開口部は、メインポット側壁の鋼板侵入側のスナウト浸漬深さよりも浅い位置に鋼板中央部に対向して配置。
III:プリメルトポットでインゴットを溶解するようにし、プリメルトポットとメインポットとの連結管における、メインポット側開口部は、メインポット側壁の鋼板侵入側のスナウト浸漬深さよりも浅い位置に、鋼板の最大幅以上の間隔を設けて、2箇所に配置(図2参照)。
IV:プリメルトポットでインゴットを溶解するようにし、プリメルトポットとメインポットとの連結管における、メインポット側開口部は、メインポット側壁の鋼板侵入側のスナウト浸漬深さよりも深い位置に、鋼板の最大幅以上の間隔を設けて、2箇所に配置(図2、図3参照)。
V:IVに対して、さらにスナウトとメインポット側開口部との間に、浴面から開口部より深い位置まで浸漬させた邪魔板を配置。
【0044】
それぞれの条件における鍍金不良率は、Iでは1.05%、IIでは0.95%、IIIでは0.62%、IVでは0.47%、Vでは0.29%であった。
【0045】
以上、本発明の装置を用いて溶融亜鉛鍍金鋼板を製造する例を説明したが、本発明の装置は、溶融亜鉛鍍金鋼板を製造するだけでなく、複数の成分を含む溶融金属鍍金鋼板、例えばZn、Al、Mn、Pb及びその合金等を含む溶融金属鍍金鋼板を製造する装置として広く使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の装置は、複数の成分を含む溶融金属鍍金鋼板、例えば、Zn、Al、Mn、Pb及びその合金等を含有する溶融金属鍍金鋼板を製造する装置として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態に係る鋼板の溶融金属鍍金装置の要部を示す概略断面図である。
【図2】図1のA−A部矢視断面図である。
【図3】連結管の溶融鍍金槽内の構造を説明する概略図である。
【図4】本発明の別の実施の形態に係る鋼板の溶融金属鍍金装置の要部を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 溶融鍍金槽
2、2a 溶融金属浴
3 スナウト
4 シンクロール
5 プリメルトポット
6、6´ 連結管
7 邪魔板
8 金属インゴット
9 鋼板
11、11´、12、12´ 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の成分を含む溶融金属浴を保持する溶融鍍金槽と、前記溶融鍍金槽に溶融金属浴成分を供給するための一つ又は複数のプリメットポットと、前記溶融鍍金槽内の溶融金属浴と前記各プリメルトポット内の溶融金属を連通する連結管を備える鋼板の溶融金属鍍金装置において、前記連結管の溶融金属浴成分を前記溶融鍍金槽内の溶融金属浴中に導出する開口部を、前記溶融鍍金槽の鋼板侵入部側に鋼板最大幅以上となるように間隔をあけて設置することを特徴とする鋼板の溶融金属鍍金装置。
【請求項2】
前記連結管の溶融金属浴成分を前記溶融鍍金槽内の溶融金属浴中に導出する開口部を、溶融金属浴内のスナウト浸漬深さより深い位置に設置することを特徴とする請求項1記載の鋼板の溶融金属鍍金装置。
【請求項3】
前記連結管の溶融金属浴成分を前記溶融鍍金槽内の溶融金属浴中に導出する開口部と、スナウトおよび鋼板の間に、前記開口部から導出された溶融金属浴成分の流れを規制する邪魔板を設置することを特徴とする請求項1または2記載の鋼板の溶融金属鍍金装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−270239(P2007−270239A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−96680(P2006−96680)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】