説明

鋼管の継手構造

【課題】輸送効率のよい小型化された機械式継手を提供し、さらに、施工現場における鋼管の接続作業を効率よく迅速かつ低コストで実施できる機械式継手を提供する。
【解決手段】2つの鋼管を直列に接続する継手構造であって、2つの鋼管の端部にそれぞれ設けられた、鋼管の外周面よりも外側に突出する一対の突出部と、2つの鋼管の端部同士を突き合わせた状態において、前記一対の突出部の外側から装着され、内周面に前記一対の突出部を受容させる溝が形成された複数の接続部材と、前記一対の突出部に装着された前記複数の接続部材の外側に装着される筒状の固定部材を備えることを特徴とする、鋼管の継手構造を提供する。これにより、ネジ・ボルト等を用いずに、構造が簡単で、コスト削減を図ることが可能となる鋼管の継手構造が提供される。また、施工現場における鋼管の接続作業を効率よく迅速に低コストで実施することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭などに使用する鋼管を直列に接続する機械式の継手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、鋼管杭は、建設現場等の施工現場において複数の鋼管を長手方向に直列に接続することにより製造される。この場合、鋼管同士の接続には溶接が利用されている。しかし、施工現場における鋼管の溶接には、火気の使用が制限される施工現場では作業が難しいことや、気象条件や溶接工等の技術者の技能に影響される部分が大きいこと、さらに、溶接作業や溶接後の溶接部分の検査等に多くの手間や時間がかかるという問題があった。
【0003】
そこで、近年、溶接作業を行うことなく、機械式継手を用いて複数の鋼管同士を接続する方法が実施されている。例えば、特許文献1にはあらかじめ鋼管の端部に取り付けられた継手鋼管と円弧状継手およびボルト等を用いて、機械的に鋼管同士を接続させる鋼管の継手構造が記載されている。また、非特許文献1には、端板、接続プレートおよび接続ボルトを用いたトリプルプレートジョイントが公開されている。さらに、非特許文献2には、油圧ジャッキ、内リングおよび外リングを用いたペアリングジョイント(無溶接継手)が公開されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−291543号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】トリプルプレートジョイント(日本ヒューム株式会社カタログ)
【非特許文献2】ペアリングジョイント(ジャパンパイル株式会社カタログ)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載された鋼管の継手構造を用いて鋼管を接続する場合、鋼管に取り付けられた継手にボルト用の穴を設け、ボルトを取り付けている。また、上記非特許文献1に記載されたトリプルプレートジョイントを用いて鋼管を接続する場合、接続のためのプレートを鋼管端部の端板に穴をあけて、ボルトによって取り付けている。しかし、これらの継ぎ手構造では、ボルトとボルト穴の位置あわせに手間がかかる。加えて、鋼管接続部に穴を開けることによる鋼管および鋼管接続部の強度の低下が懸念され、さらに、ボルト部分への応力集中による接続後の鋼管の強度の低下が懸念されるといった問題点がある。
【0007】
また、上記非特許文献2に記載されたペアリングジョイントを用いて鋼管を接続する場合、くさびを油圧ジャッキを用いて押し込み、内リングおよび外リングを固定するため、油圧ジャッキが施工で必要になり、施工に手間がかかるという問題点がある。
【0008】
さらに、建設現場等において鋼管を直列に接続する場合、継手部で折れ曲がったようになるいわゆる「角折れ」等の発生による鋼管の強度の低下を生じないように、接続後の鋼管にはある程度以上の直線性を保持させる必要がある。そのため、上記特許文献1、非特許文献1および非特許文献2に記載された鋼管の継手構造では、接続時、鋼管端部の接続用端板(突出部)の製作精度や取り付け精度に高い精度が要求されていた。しかし、接続用端板の製作精度や取り付け精度を上げることは、製作の効率化の妨げとなり、またコスト上昇の原因となるといった問題点がある。
【0009】
そこで、上記問題点に鑑み、本発明の目的は、製作・輸送の効率がよく、ネジ・ボルト等を用いない小型化された機械式継手を提供し、さらに、施工現場における鋼管の接続作業を効率よく迅速に実施できる鋼管の継手構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、2つの鋼管を直列に接続する継手構造であって、2つの鋼管の端部にそれぞれ設けられた、鋼管の外周面よりも外側に突出する一対の突出部と、2つの鋼管の端部同士を突き合わせた状態において、前記一対の突出部の外側から装着され、内周面に前記一対の突出部を受容させる溝が形成された複数の接続部材と、前記一対の突出部に装着された前記複数の接続部材の外側に装着される筒状の固定部材を備えることを特徴とする、鋼管の継手構造が提供される。
【0011】
前記突出部は、前記鋼管の端部に取り付けられた円盤状部材、リング状部材あるいは円弧状部材により構成されることとしてもよい。
【0012】
前記複数の接続部材は円弧形状を有しており、各接続部材を組み合わせることにより、鋼管の外周面を囲む円環形状が構成されることとしてもよい。
【0013】
前記固定部材の上端には、前記突出部に装着された接続部材の上面に当接可能な係止部が設けられていることとしてもよい。
【0014】
前記一対の突出部の一方の対向面には凸部が設けられ、他方の対向面には前記凸部を受容可能な凹部が設けられていることとしてもよい。
【0015】
前記固定部材の下端には、前記突出部に装着された接続部材の下面に架け留める突起部が設けられていることとしてもよい。
【0016】
また、前記一対の突出部の対向面は互いに適合する形状であり、一方の対向面は凹球面形状、他方の対向面は凸球面形状であってもよい。
【0017】
また、一方の前記突出部の対向面には鋼管の中心に向かって深くなる勾配を有する十字型形状溝が形成され、他方の前記突出部の対向面には前記十字型形状溝に適合する形状であり、鋼管の中心に向かって高くなる勾配を有する十字型凸部が形成されていてもよい。
【0018】
また、一方の前記突出部の対向面には鋼管の中心に向かって浅くなる勾配を有する十字型形状溝が形成され、他方の前記突出部の対向面には前記十字型形状溝に適合する形状であり、鋼管の中心に向かって低くなる勾配を有する十字型凸部が形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ネジ・ボルト等を用いずに、構造が簡単で、かつ直線性の調整が容易にでき、コスト削減を図ることが可能となる鋼管の継手構造が提供される。本発明によれば、施工現場における鋼管の接続作業を効率よく迅速に低コストで実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる継手構造1を斜め上方から見た斜視図である。
【図2】鋼管10の中央部分における、継手構造1の縦断面図である。
【図3】上に配置された鋼管10の下端と下に配置された鋼管10の上端を突き合わせた状態を示す説明図である。
【図4】上下の突出部11の外側から接続部材15を装着した状態を示す説明図である。
【図5】接続部材15の外側に筒状の固定部材20を装着した状態を示す説明図である。
【図6】突出部11として上下の各鋼管10にあらかじめ設ける部材の例を示す説明図である。
【図7】突出部11として上下の各鋼管10にあらかじめ設ける部材の例を示す説明図である。
【図8】第2の実施の形態にかかる鋼管10の機械式継手1’の継手構造を斜め上方から見た斜視図である。
【図9】鋼管10の中央部分における、継手構造1’の縦断面図である。
【図10】第3の実施の形態にかかる鋼管10の継手構造1’’を斜め上方から見た斜視図である。
【図11】図10に示した固定部材20’のA−A断面図である。
【図12】図10に示した鋼管10に取り付けられた接続部材15’のB−B断面図である。
【図13】図10に示した鋼管10の中央部分における、継手構造1’’の縦断面図である。
【図14】第4の実施の形態にかかる継手構造50の説明図である。
【図15】第5の実施の形態にかかる継手構造60の説明図である。
【図16】第6の実施の形態にかかる継手構造70の説明図である。
【図17】第7の実施の形態にかかる継手構造80の説明図である。
【図18】第8の実施の形態にかかる継手構造90の説明図である。
【図19】第9の実施の形態にかかる継手構造100の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0022】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる継手構造1を斜め上方から見た斜視図である。この継手構造1により、上下に直列に配置された2つの円筒形状の鋼管10の端部同士(上に配置された鋼管10の下端と下に配置された鋼管10の上端)が接続され、図1は、継手構造1を分解した状態を示している。図2は、鋼管10の中央部分における、継手構造1の縦断面図である。図3〜5は、継手構造1によって2つの鋼管10を接続する工程の説明図であり、図3は、上に配置された鋼管10の下端と下に配置された鋼管10の上端を突き合わせた状態を示し、図4は、上下の突出部11の外側から接続部材15を装着した状態を示し、図5は、接続部材15の外側に筒状の固定部材20を装着した状態を示している。
【0023】
上に配置された鋼管10の下端と下に配置された鋼管10の上端には、各鋼管10の外周面よりも外側に突出する突出部11が対をなして設けられている。この実施の形態では、外径が鋼管10の外径よりも大きく、内径が鋼管10の内径よりも小さいリング状部材12が、上に配置された鋼管10の下端と下に配置された鋼管10の上端にそれぞれ取り付けてあり、これらリング状部材12の外側部分が、上下の鋼管10の外周面よりも外側に突出する突出部11となっている。
【0024】
これら突出部11の周りには、4つの接続部材15が配置される。各接続部材15は円弧形状を有しており、これら各接続部材15を組み合わせることにより、鋼管10の外周面を囲む円環形状を構成することができる。これら各接続部材15の内周面には、上下一対の突出部11を重ね合わせた状態で、それら一対の突出部11を一体的に受容させる溝16がそれぞれ設けられている。各接続部材15を組み合わせて鋼管10の外周面を囲む円環形状を構成した際には、各接続部材15の内周面に設けられた各溝16が、一つの環状の溝を形成することとなる。
【0025】
上に配置された鋼管10には、円筒状の固定部材20が、上下動自在に取り付けてある。この固定部材20の内径は、先に説明した各接続部材15を組み合わせることにより構成される円環形状の外側に固定部材20を装着できる大きさを有しており、各接続部材15により構成された円環形状を、固定部材20の内部に保持できるようになっている。
【0026】
固定部材20の上端には、固定部材20の内面から内方へ突出する係止部21が設けられている。この係止部21の先端は、先に説明した各接続部材15を組み合わせることにより構成される円環形状の上面に当接可能な位置まで内側に突出している。
【0027】
以上のように説明してきた構成要素によって構成される本発明の第1の実施の形態にかかる鋼管10の継手構造1において、先ず、図3に示されるように、上下の鋼管10の端部同士を突き合わせる。すると、上下の鋼管10の端部に設けられた突出部11(リング状部材12)が一体化させられることとなる。
【0028】
次に、図4に示されるように、突出部11の周りに配置された4つの円弧状接続部材15に設けられた溝16に、上記一体化させられた突出部11を受容させるように突出部11に接続部材15をかぶせる。すると、一体化させられた突出部11が溝16に受容されることによって、鋼管10長手方向に関して接合されることとなる。
【0029】
次に、図5に示されるように、上の鋼管10に上下動自在に取り付けられた筒状の固定部材20を、突出部11を一体化させた後の接続部材15を外側から覆うように装着する。すると、固定部材20によって、接続部材15は鋼管10に固定させられることとなる。このとき、固定部材20には、上端に固定部材20の内面から内方へ突出する係止部21が設けられているため、係止部21が接続部材15の上端に当接し、固定部材20が接続部材15から落下してしまうことはない。
【0030】
上述した作業の結果、接続部材15および固定部材20によって、溶接あるいはネジ等を利用することなく、簡単な構成で上下の鋼管10の接続が効率的にできる継手構造1が構成されることとなる。
また、鋼管10の長手方向端部にリング状部材12が取り付けられた状態で鋼管10同士が接続部材15によって接続されるため、鋼管10端部の潰れが防止され、かつ鋼管長手方向にかかる圧縮力を効率よく伝達することが可能となる。
一方、上下の鋼管10同士はリング状部材12が接続部材15によって一体化され、さらに接続部材15が固定部材20により鋼管10に固定されるため、鋼管長手方向に引張荷重がかかった場合であってもその引張荷重が各鋼管10に伝達されることとなる。
【0031】
つまり、実際に施工現場において鋼管10を用いて作業を行う場合に、本実施の形態にかかる鋼管10の継手構造1を用いて上下の鋼管10同士を接続すると、鋼管長手方向にかかる圧縮力および引張荷重を十分に伝達するような鋼管10の接続がなされ、接続された鋼管10を杭等として用いることができる。その際、鋼管長手方向にかかる圧縮力および引張荷重を十分に伝達するため、利用する鋼管10の部材数を削減することができる。さらに、本実施の形態にかかる鋼管10の継手構造1を用いることで、溶接等と比べ特殊技術を必要とせず、低コストでコンパクトな継手構造により、簡単かつ迅速に鋼管10同士を接続することができる。
【0032】
なお、本実施の形態においては、突出部11として上下の各鋼管10にあらかじめ設ける部材をリング状であるリング状部材12として説明してきたが、本発明はこれに限られるものではない。
そこで、図6および図7において、突出部11として上下の各鋼管10に設ける部材の例を示す。例えば、突出部11として上下の各鋼管10に取り付けられる部材は、図6に示されるような円盤状部材17や、図7に示されるような円弧状部材18であってもよい。
また、本実施の形態おいて、接続部材15の形状として円弧状であるとし、その数は4つであるとして説明してきたが、接続部材15は上下それぞれの鋼管10端部の突出部11を一体化させるような溝16を有するものであれば良く、その形状は円弧状に限られず、またその数は4つに限定されるものではない。
【0033】
(第2の実施の形態)
図8は本発明の第2の実施の形態にかかる鋼管10の機械式継手1’の継手構造を斜め上方から見た斜視図である。この継手構造1’により、上下に直列に配置された2つの鋼管10の端部同士(上に配置された鋼管10の下端と下に配置された鋼管10の上端)が接続され、図8は、継手構造1を分解した状態を示している。図9は、鋼管10の中央部分における、継手構造1’の縦断面図である。
なお、本実施の形態においては、上記第1の実施の形態での鋼管10の端部に突出部11を有する部材として取り付けられたリング状部材12に相当する部分にのみ上記第1の実施の形態との相違点があり、他の部分の部材等は同様であるためそれらの説明については省略する。
【0034】
接続対象である2つの鋼管10のうち上の鋼管10には、凹部25’を備えた凹付リング状部材25があらかじめ取り付けられている。また、もう一方の下の鋼管10には、凸部26’を備えた凸付リング状部材26があらかじめ取り付けられている。ここで、凹部25’は凸部26’を挿入できる大きさを有している。なお、各リング状部材25および26の径方向端部は、上記第1の実施の形態と同様に鋼管10の外周面よりも外側に突出する突出部11を有している。
【0035】
以上のように説明してきた構成要素によって構成される本発明の第2の実施の形態にかかる鋼管10の継手構造1’において、接続対象である2本の鋼管10の端部にあらかじめ取り付けられた凹付リング状部材25と凸付リング状部材26が重なり合うように2本の鋼管10の端部を突き合わせる。その際に、凹部25’に凸部26’が受容されるように凹付リング状板25と凸付リング状部材26を重ねる。
【0036】
その後、接続部材15に設けられた溝16に凹付リング状部材25および凸付リング状部材26の各鋼管10の外周面からの突出部11をはめ込み、上下それぞれの鋼管10に設けられている突出部11を一体化させる。そして、その後、固定部材20を接続部材15の外周を覆うように取り付ける。このとき、固定部材20には上記第1の実施の形態同様、上端に固定部材20の内面から内方へ突出する係止部21が設けられているため、固定部材20の上端の係止部21が接続部材15の上端に当接し、固定部材20が接続部材15から離隔してしまうことはない。さらに、凹部25’と凸部26’が一体的に重なり、かみ合っているため、上の鋼管10が回転した場合に、下の鋼管10も回転することとなる。
【0037】
上述してきた第2の実施の形態にかかる鋼管の継手構造1’を利用し複数の鋼管10を接続し、施工現場において、杭等としてその接続した複数の鋼管10を地盤に回転させながら打ち込んでいく場合がある。このとき、接続した複数の鋼管10のうちの1本を回転させた場合に、その回転が杭全体(接続された全ての鋼管10)に伝わることとなり、効率よく杭等を地盤に打ち込むことが可能となる。
【0038】
(第3の実施の形態)
図10は、本発明の第3の実施の形態にかかる鋼管10の継手構造1’’を斜め上方から見た斜視図である。この継手構造1’’により、上下に直列に配置された2つの円筒形状の鋼管10の端部同士(上に配置された鋼管10の下端と下に配置された鋼管10の上端)が接続され、図10は、継手構造1’’を分解した状態を示している。
【0039】
図11は、図10に示した固定部材20’のA−A断面図である。固定部材20’の外周下端部に突起部41が4箇所設けられ、その突起部41同士の間隔は均等となっている。
また、図12は、図10に示した鋼管10に取り付けられた接続部材15’のB−B断面図である。図12に示すように、4つの接続部材15’は鋼管10にスリット42を設けた状態でリング状部材12を固定している。このときスリット42は、図11に示すように、突起部41に対応するように、鋼管10外周部に4箇所、各スリット42間が均等となるように設けられている。
また、図13は、鋼管10の中央部分における、継手構造1’’の縦断面図である。
【0040】
なお、本実施の形態においては、上述した第1および第2の実施の形態と異なる部分についてのみ説明し、共通する各構成等については省略する。ここでは、第3の実施の形態における接続部材15’および固定部材20’について説明する。
【0041】
2本の鋼管10があらかじめ結合部材として取り付けられたリング状部材12を重ねた状態になっており、上記第1および第2の実施の形態同様、4つの円弧状である接続部材15’が、2枚のリング状部材12を固定する状態となっている。ただし、第3の実施の形態において接続部材15’は、鋼管10に取り付けた際に、図10に示すように、各接続部材15’同士の間にスリット42が設けられるような大きさおよび形状となっている。また、上に配置された鋼管10には、あらかじめ円筒状の固定部材20’が用意されており、固定部材20’外周部には、鋼管長手方向および鋼管の径中心方向に突出した突起部41が設けられている。ここでスリット42の幅は、突起部41の幅よりも広くなっている。
【0042】
上記のように構成された本発明の第3の実施の形態にかかる鋼管の機械式継手1’’の継手構造において、4つの接続部材15’によって2本の鋼管10のリング状部材12が一体的に固定される。そして、固定部材20’が接続部材15’を覆うことによって、接続部材15’が鋼管10に固定され、鋼管10同士が接続されることとなる。この固定部材20’が接続部材15’を覆う際に、固定部材20’に設けられた突起部41をスリット42に通過させることによって固定部材20’を接続部材15’にかぶせることが可能となる。さらに、固定部材20’を接続部材15’にかぶせた後に、固定部材20’を回転させて突起部41の位置をスリット42の位置とずらす。これにより、突起部41が接続部材15’の下面に架け留めて、接続部材15’は鋼管10に固定されることとなる。
【0043】
その結果、図13に示されるように、リング状板20を有する2本の鋼管10は、接続部材15’および固定部材20’を介して接続され、さらに鞘状の固定部材20’に設けられた係止部21および突起部41によって、接続部材15’が上下から抑えられることにより、鋼管10接続部に固定され、より外れにくくなる。
【0044】
(第4の実施の形態)
図14は、本発明の第4の実施の形態にかかる継手構造50の説明図である。図14(a)は継手構造50を斜め上方から見た斜視図である。継手構造50により、上下に直列に配置された2つの円筒形状の鋼管10の端部同士(上に配置された鋼管10の下端と下に配置した鋼管10の上端)が接続される。図14(a)は、継手構造50を分解した状態を示している。また、図14(b)は鋼管10の接続時の継手構造50の鋼管水平方向断面図であり、図14(c)は鋼管10接続時の継手構造50の鋼管長手方向断面拡大図である。即ち、図14(b)は図14(c)におけるA−A断面を示している。なお、本実施の形態においては、上記第1の実施の形態での鋼管10の端部に突出部11を有する部材として取り付けられたリング状部材12に相当する部分にのみ上記第1の実施の形態との相違点があるため、他の部材等についての説明は省略する。
【0045】
上に配置された鋼管10の下端と下に配置された鋼管10の上端には、各鋼管10の外周面よりも外側に突出する突出部11が対を成して設けられている。第4の実施の形態では、外径が鋼管10の外径よりも大きく、接合対象面が球面形状である凸球面円盤51と凹球面円盤52が鋼管10の端部に取り付けられている。なお、上に配置された鋼管10の下端には凸球面円盤51が下に凸となるように取り付けられ、下に配置された鋼管10の上端には凹球面円盤52が上に凹となるように取り付けられる。ここで、凸球面円盤51と凹球面円盤52の形状は、これらを重ね合わせて接合した場合に適合するような形状となっている。即ち、凸球面円盤51と凹球面円盤52の接合対象面の曲率は等しい。なお、凸球面円盤51と凹球面円盤52の外側部分が、上下の鋼管10の外周面よりも外側に突出する突出部11となっている。また、凸球面円盤51と凹球面円盤52の曲率は、継手構造50を構成する鋼管10の材質や断面積等によって好適なものを適宜定めればよい。
【0046】
以上のように説明した構成要素によって構成される本発明の第4の実施の形態にかかる継手構造50において、接続対象である2本の鋼管10の端部にあらかじめ取り付けられた凸球面円盤51と凹球面円盤52が重なり合うように上下2本の鋼管10の端部(上に配置された鋼管10の下端と下に配置した鋼管10の上端)を突き合わせる。
【0047】
その後、接続部材15に設けられた溝16に凸球面円盤51と凹球面円盤52の各鋼管10の外周面からの突出部11をはめ込み、上下それぞれの鋼管10に設けられている突出部11を一体化させる。そして、固定部材20を接続部材15の外周を覆うように取り付ける。このとき、固定部材20には上記第1の実施の形態同様、上端に固定部材20の内面から内方へ突出する係止部21が設けられているため、固定部材20の上端の係止部21が接続部材15の上端に当接し、固定部材20が接続部材15から離隔してしまうことはない。
【0048】
また、上述したように接続された継手構造50においては、凸球面円盤51と凹球面円盤52を重ね合わせて2本の鋼管10を接続しているため、接続後の鋼管10の継手部において上下鋼管の角折れが発生した場合にも、上側の鋼管10を凹球面円盤52に沿って滑らせるように動かし、直線性を保持するように簡単に矯正することが可能となる。なお、本実施の形態では、上に配置された鋼管10の下端に凸球面円盤51が下に凸となるように取り付けられ、下に配置された鋼管10の上端には凹球面円盤52が取り付けられる事としたが、本発明はこれに限られず、上に配置された鋼管10の下端に凹球面円盤52が取り付けられ、下に配置された鋼管10の上端に凸球面円盤51が取り付けられてもよい。但し、上下鋼管の角折れが発生した際の矯正作業の容易性から、上に配置された鋼管10の下端に凸球面円盤51が下に凸となるように取り付けられ、下に配置された鋼管10の上端には凹球面円盤52が取り付けられることが好ましい。
【0049】
(第5の実施の形態)
図15は、本発明の第5の実施の形態にかかる継手構造60の説明図である。図15(a)は継手構造60を斜め上方から見た斜視図である。継手構造60により、上下に直列に配置された2つの円筒形状の鋼管10の端部同士(上に配置された鋼管10の下端と下に配置した鋼管10の上端)が接続される。図15(a)は、継手構造60を分解した状態を示している。また、図15(b)は鋼管10の接続時の継手構造60の鋼管水平方向断面図であり、図15(c)は鋼管10接続時の継手構造60の鋼管長手方向断面拡大図である。即ち、図15(b)は図15(c)におけるB−B断面を示し、図15(c)は図15(b)におけるB’−B’断面を示している。なお、本実施の形態においては、上記第1の実施の形態での鋼管10の端部に突出部11を有する部材として取り付けられたリング状部材12に相当する部分にのみ上記第1の実施の形態との相違点があるため、他の部材等についての説明は省略する。
【0050】
第5の実施の形態では、外径が鋼管10の外径よりも大きく、内径が鋼管10の内径よりも小さく、鋼管接続時に突き合わせる面(接合対象面)が球面形状である凸球面リング61と凹球面リング62が鋼管10の端部に取り付けられている。上に配置された鋼管10の下端には凸球面リング61が下に凸となるように取り付けられ、下に配置された鋼管10の上端には凹球面リング62が上に凹となるように取り付けられる。ここで、凸球面リング61と凹球面リング62の形状は、これらを重ね合わせて接合した場合に適合するような形状となっている。なお、凸球面リング61と凹球面リング62の外側部分が、上下の鋼管10の外周面よりも外側に突出する突出部11となっている。また、凸球面リング61と凹球面リング62の曲率は、継手構造60を構成する鋼管10の材質や断面積等によって好適なものを適宜定めればよい。
【0051】
以上のように説明した構成要素によって構成される本発明の第5の実施の形態にかかる継手構造60において、接続対象である2本の鋼管10の端部にあらかじめ取り付けられた凸球面リング61と凹球面リング62が重なり合うように上下2本の鋼管10の端部(上に配置された鋼管10の下端と下に配置した鋼管10の上端)を突き合わせる。その後の鋼管10同士の接続過程については上記第4の実施の形態と同様なので説明は省略する。
【0052】
上述したように接続された継手構造60においては、凸球面リング61と凹球面リング62を重ね合わせて2本の鋼管10を接続しているため、接続後の鋼管10の継手部において上下鋼管の角折れが発生した場合にも、上側の鋼管10を凹球面リング62に沿って滑らせるように動かし、直線性を保持するように簡単に矯正することが可能となる。
【0053】
(第6の実施の形態)
図16は、本発明の第6の実施の形態にかかる継手構造70の説明図である。図16(a)は継手構造70を斜め上方から見た斜視図である。継手構造70により、上下に直列に配置された2つの円筒形状の鋼管10の端部同士(上に配置された鋼管10の下端と下に配置した鋼管10の上端)が接続される。図16(a)は、継手構造70を分解した状態を示している。また、図16(b)は鋼管10の接続時の継手構造70の鋼管水平方向断面図であり、図16(c)は鋼管10接続時の継手構造70の鋼管長手方向断面拡大図である。即ち、図16(b)は図16(c)におけるC−C断面を示し、図16(c)は図16(b)におけるC’−C’断面を示している。なお、本実施の形態においては、上記第1の実施の形態での鋼管10の端部に突出部11を有する部材として取り付けられたリング状部材12に相当する部分にのみ上記第1の実施の形態との相違点があるため、他の部材等についての説明は省略する。
【0054】
第6の実施の形態では、外径が鋼管10の外径よりも大きく、十字形状の十字形突起71が形成され、接合対象面が平面である凸十字突起付円盤72と、十字形状の十字溝73が形成された平面形状である凹十字溝付円盤74が鋼管10の端部に取り付けられている。なお、上に配置された鋼管10の下端には凸十字突起付円盤72が、十字形突起71が下に凸となるように取り付けられ、下に配置された鋼管10の上端には凹十字溝付円盤74が、十字溝73が上に凹となるように取り付けられる。ここで、凸十字突起付円盤72と凹十字溝付円盤74の形状は、これらを重ね合わせて接合した場合に適合するような形状となっている。また、凸十字突起付円盤72と凹十字溝付円盤74の外側部分が、上下の鋼管10の外周面よりも外側に突出する突出部11となっている。ここで、十字形突起71・十字溝73の形状は、継手構造70を構成する鋼管10の材質や断面積等によって好適なものを適宜定めればよい。本実施の形態では十字形突起71の形状は鋼管10の中心に向かって高くなる勾配が形成される形状とし、十字溝73の形状は鋼管10の中心に向かって深くなる勾配が形成される形状としている。
【0055】
以上のように説明した構成要素によって構成される本発明の第6の実施の形態にかかる継手構造70において、接続対象である2本の鋼管10の端部にあらかじめ取り付けられた凸十字突起付円盤72と凹十字溝付円盤74を、十字形突起71と十字溝73が重なり合うように突き合わせる。即ち、図16(a)に示すように、上下2本の鋼管10の端部(上に配置された鋼管10の下端と下に配置した鋼管10の上端)を突き合わせる。このとき、十字形突起71は十字溝73にはめ込まれるように凸十字突起付円盤72と凹十字溝付円盤74は重ね合わされる。なお、その後の鋼管10同士の接続過程については上記第4の実施の形態と同様なので説明は省略する。
【0056】
上述したように接続された継手構造70においては、接続後の鋼管10の継手部において上下鋼管10の設置ずれが発生した場合でも、十字形突起71および十字溝73の方向に沿って滑らせるように動かすことにより、上下互いの鋼管10が正しい位置に修正されやすくなる。また、十字形突起71と十字溝73が重なり合うように鋼管10同士が接続されているため、一方の鋼管10に加わった回転力が他方の鋼管10に効率的に伝達されることとなる。そのため、第2の実施の形態と同様、接続した複数の鋼管10を地盤に回転させながら打ち込んでいく場合に、効率的に杭等(接続された鋼管10)を打ち込むことができる。
【0057】
(第7の実施の形態)
図17は、本発明の第7の実施の形態にかかる継手構造80の説明図である。図17(a)は継手構造80を斜め上方から見た斜視図である。継手構造80により、上下に直列に配置された2つの円筒形状の鋼管10の端部同士(上に配置された鋼管10の下端と下に配置した鋼管10の上端)が接続される。図17(a)は、継手構造80を分解した状態を示している。また、図17(b)は鋼管10の接続時の継手構造80の鋼管水平方向断面図であり、図17(c)は鋼管10接続時の継手構造80の鋼管長手方向断面拡大図である。即ち、図17(b)は図17(c)におけるD−D断面を示し、図17(c)は図17(b)におけるD’−D’断面を示している。なお、本実施の形態においては、上記第1の実施の形態での鋼管10の端部に突出部11を有する部材として取り付けられたリング状部材12に相当する部分にのみ上記第1の実施の形態との相違点があるため、他の部材等についての説明は省略する。
【0058】
第7の実施の形態では、外径が鋼管10の外径よりも大きく、内径が鋼管10の内径よりも小さい、接合対象面が平面である凸突起付リング81と凹溝付リング82が鋼管10の端部に取り付けられている。凸突起付リング81には、接合対象面上の円周方向に90°間隔で4ヶ所に突起83が形成され、凹溝付リング82には、接合対象面上の円周方向に90°間隔で4ヶ所に溝84が形成されている。上に配置された鋼管10の下端には凸突起付リング81の突起83が下に凸となるように取り付けられ、下に配置された鋼管10の上端には凹溝付リング82の溝84が上に凹となるように取り付けられる。ここで、凸突起付リング81と凹溝付球面リング82の形状は、これらを重ね合わせて接合した場合に適合するような形状となっている。なお、凸突起付リング81と凹溝付リング82の外側部分が、上下の鋼管10の外周面よりも外側に突出する突出部11となっている。また、凸突起付リング81と凹溝付リング82の形状・大きさ等は、継手構造80を構成する鋼管10の材質や断面積等によって好適なものを適宜定めればよい。本実施の形態では突起83の形状は鋼管10の中心に向かって高くなる勾配が形成される形状とし、溝84の形状は鋼管10の中心に向かって深くなる勾配が形成される形状としている。
【0059】
以上のように説明した構成要素によって構成される本発明の第7の実施の形態にかかる継手構造80において、接続対象である2本の鋼管10の端部にあらかじめ取り付けられた凸突起付リング81と凹溝付リング82を付き合わせる。即ち、突起83と溝84が重なり合うように上下2本の鋼管10の端部(上に配置された鋼管10の下端と下に配置した鋼管10の上端)を突き合わせる。このとき、突起83は溝84にはめ込まれるように凸突起付リング81と凹溝付リング82は重ね合わされる。なお、その後の鋼管10同士の接続過程については上記第4の実施の形態と同様なので説明は省略する。
【0060】
上述したように接続された継手構造80においては、接続後の鋼管10の継手部において上下鋼管10の設置ずれが発生した場合でも、突起83と溝84の方向に沿って滑らせるように動かすことにより、上下互いの鋼管10が正しい位置に修正されやすくなる。また、突起83と溝84が重なり合うように鋼管10同士が接続されているため、一方の鋼管10に加わった回転力が他方の鋼管10に効率的に伝達されることとなる。そのため、第2の実施の形態と同様、接続した複数の鋼管10を地盤に回転させながら打ち込んでいく場合に、効率的に杭等(接続された鋼管10)を打ち込むことができる。
【0061】
(第8の実施の形態)
図18は、本発明の第8の実施の形態にかかる継手構造90の説明図である。図18(a)は継手構造90を斜め上方から見た斜視図である。継手構造90により、上下に直列に配置された2つの円筒形状の鋼管10の端部同士(上に配置された鋼管10の下端と下に配置した鋼管10の上端)が接続される。図18(a)は、継手構造90を分解した状態を示している。また、図18(b)は鋼管10の接続時の継手構造90の鋼管水平方向断面図であり、図18(c)は鋼管10接続時の継手構造90の鋼管長手方向断面拡大図である。即ち、図18(b)は図18(c)におけるE−E断面を示し、図18(c)は図18(b)におけるE’−E’断面を示している。なお、本実施の形態においては、上記第1の実施の形態での鋼管10の端部に突出部11を有する部材として取り付けられたリング状部材12に相当する部分にのみ上記第1の実施の形態との相違点があるため、他の部材等についての説明は省略する。
【0062】
第8の実施の形態では、外径が鋼管10の外径よりも大きく、十字形状の十字形突起91が形成され、接合対象面が球面形状である凸十字突起付球面円盤92と、十字形状の十字溝93が形成された球面形状である凹十字溝付球面円盤94が鋼管10の端部に取り付けられている。ここで、図18(c)に示すように、十字形突起91は鋼管10の中心に近づくほど高さの上昇する曲線状の勾配を有しており、十字溝93は鋼管10の中心に近づくほど高さが低くなるような曲線状の勾配を有している。なお、上に配置された鋼管10の下端には凸十字突起付球面円盤92が下に凸となるように取り付けられ、下に配置された鋼管10の上端には凹十字溝付球面円盤94が上に凹となるように取り付けられる。ここで、凸十字突起付球面円盤92と凹十字溝付球面円盤94の形状は、これらを重ね合わせて接合した場合に適合するような形状となっている。なお、凸十字突起付球面円盤92と凹十字溝付球面円盤94の外側部分が、上下の鋼管10の外周面よりも外側に突出する突出部11となっている。また、凸十字突起付球面円盤92・凹十字溝付球面円盤94の曲率や、十字形突起91・十字溝93の形状は、継手構造90を構成する鋼管10の材質や断面積等によって好適なものを適宜定めればよい。本実施の形態では十字形突起91の形状は鋼管10の中心に向かって高くなる勾配が形成される形状とし、十字溝93の形状は鋼管10の中心に向かって深くなる勾配が形成される形状としている。
【0063】
以上のように説明した構成要素によって構成される本発明の第8の実施の形態にかかる継手構造90において、接続対象である2本の鋼管10の端部にあらかじめ取り付けられた凸十字突起付球面円盤92と凹十字溝付球面円盤94を、十字形突起91と十字溝93が重なり合うように突き合わせる。即ち、図18(a)に示すように、上下2本の鋼管10の端部(上に配置された鋼管10の下端と下に配置した鋼管10の上端)を突き合わせる。このとき、十字形突起91は十字溝93にはめ込まれるように凸十字突起付球面円盤92と凹十字溝付球面円盤94は重ね合わされる。なお、その後の鋼管10同士の接続過程については上記第4の実施の形態と同様なので説明は省略する。
【0064】
上述したように接続された継手構造90においては、上記第4および第5の実施の形態と同様、接続後の鋼管10の継手部において上下鋼管の角折れが発生した場合にも、上側の鋼管10を凹十字溝付球面円盤94に沿って滑らせるように動かし、直線性を保持するように簡単に矯正することが可能となる。また、接続後の鋼管10の継手部において上下鋼管10の設置ずれが発生した場合でも、十字形突起91と十字溝93の方向に沿って滑らせるように動かすことにより、上下互いの鋼管10が正しい位置に修正されやすくなる。さらに、十字形突起91と十字溝93が重なり合うように鋼管10同士が接続されているため、一方の鋼管10に加わった回転力が他方の鋼管10に効率的に伝達されることとなる。
【0065】
(第9の実施の形態)
図19は、本発明の第9の実施の形態にかかる継手構造100の説明図である。図19(a)は継手構造100を斜め上方から見た斜視図である。継手構造100により、上下に直列に配置された2つの円筒形状の鋼管10の端部同士(上に配置された鋼管10の下端と下に配置した鋼管10の上端)が接続される。図19(a)は、継手構造100を分解した状態を示している。また、図19(b)は鋼管10の接続時の継手構造100の鋼管水平方向断面図であり、図19(c)は鋼管10接続時の継手構造100の鋼管長手方向断面拡大図である。即ち、図19(b)は図19(c)におけるF−F断面を示し、図19(c)は図19(b)におけるF’−F’断面を示している。なお、本実施の形態においては、上記第1の実施の形態での鋼管10の端部に突出部11を有する部材として取り付けられたリング状部材12に相当する部分にのみ上記第1の実施の形態との相違点があるため、他の部材等についての説明は省略する。
【0066】
第9の実施の形態では、外径が鋼管10の外径よりも大きく、内径が鋼管10の内径よりも小さく、鋼管接続時に突き合わせる面(接合体正面)が球面形状である凸突起付球面リング101と凹溝付球面リング102が鋼管10の端部に取り付けられている。凸突起付球面リング101には、接合対象面上の円周方向に90°間隔で4ヶ所に球面突起103が形成され、凹溝付球面リング102には、接合対象面上の円周方向に90°間隔で4ヶ所に球面溝104が形成されている。上に配置された鋼管10の下端には凸突起付球面リング101が下に凸となるように取り付けられ、下に配置された鋼管10の上端には凹溝付球面リング102が上に凹となるように取り付けられる。ここで、凸突起付球面リング101と凹溝付球面リング102の形状は、これらを重ね合わせて接合した場合に適合するような形状となっている。また、図19(c)に示すように、球面突起103は鋼管10の中心に近づくほど高さの上昇する曲線状の勾配を有しており、球面溝104は鋼管10の中心に近づくほど高さが低くなるような曲線状の勾配を有している。なお、凸突起付球面リング101と凹溝付球面リング102の外側部分が、上下の鋼管10の外周面よりも外側に突出する突出部11となっている。また、凸突起付球面リング101と凹溝付球面リング102の曲率は、継手構造100を構成する鋼管10の材質や断面積等によって好適なものを適宜定めればよい。ここで、本実施の形態では球面突起103の形状は鋼管10の中心に向かって高くなる勾配が形成される球面形状とし、球面溝104の形状は鋼管10の中心に向かって深くなる勾配が形成される球面形状としている。
【0067】
以上のように説明した構成要素によって構成される本発明の第9の実施の形態にかかる継手構造100において、接続対象である2本の鋼管10の端部にあらかじめ取り付けられた凸突起付球面リング101と凹溝付球面リング102を付き合わせる。即ち、球面突起103と球面溝104が重なり合うように上下2本の鋼管10の端部(上に配置された鋼管10の下端と下に配置した鋼管10の上端)を突き合わせる。このとき、球面突起103は球面溝104にはめ込まれるように凸突起付球面リング101と凹溝付球面リング102は重ね合わされる。なお、その後の鋼管10同士の接続過程については上記第4の実施の形態と同様なので説明は省略する。
【0068】
上述したように接続された継手構造100においては、上記実施の形態と同様、接続後の鋼管10の継手部において上下鋼管の角折れが発生した場合にも、上側の鋼管10を凹溝付球面リング102に沿って滑らせるように動かし、直線性を保持するように簡単に矯正することが可能となる。また、球面突起103と球面溝104が重なり合うように鋼管10同士が接続されているため、一方の鋼管10に加わった回転力が他方の鋼管10に効率的に伝達されることとなる。そのため、第2の実施の形態と同様、接続した複数の鋼管10を地盤に回転させながら打ち込んでいく場合に、効率的に杭等(接続された鋼管10)を打ち込むことができる。
【0069】
以上、本発明の実施の形態の一例を説明したが、本発明は図示の形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0070】
例えば、上記第1〜第9の実施の形態において、接続部材15の形状を円弧状、固定部材20の形状を鞘状円筒形としたが、それぞれ鋼管10の外周形状等により適宜変更可能である。また、上記第6の実施の形態〜第9の実施の形態において、一方の突出部に設けられる突起の形状は鋼管の中心に向かって高くなる勾配を有する形状とし、他方の突出部に設けられる溝の形状は鋼管の中心に向かって深くなる勾配を有する形状としたが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、一方の突出部に設けられる突起の形状は鋼管の中心に向かって低くなる勾配を有する形状とし、他方の突出部に設けられる溝の形状は鋼管の中心に向かって浅くなる勾配を有する形状としてもよい。
また、上記第2の実施の形態においては、一方の凹付リング状部材25に凹部25’および凸付リング状板26に凸部26’が設けられることとしているが、凹部25’および凸部26’の数は1つに限定されることはなく、複数でもよい。また、その大きさ・形状についても、適宜、好適な大きさ・形状とすればよい。
第3の実施の形態においては、接続部材15’同士の隙間の4箇所をスリット42とし、それにあわせて固定部材20’の下端部に4つの突起部41を設けることとしたが、この突起部41およびスリット42の数は適宜変更可能である。
さらに、第1〜第9の実施の形態を上述してきたが、これらを組み合わせて用いることも当然考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、杭などに使用する鋼管の継手構造に適用できる。
【符号の説明】
【0072】
1、1’、1’’、50、60、70、80、90、100…継手構造
10…鋼管
11…突出部
12…リング状部材
15、15’…接続部材
16…溝
20、20’…固定部材
25…凹付リング状部材
25’…凹部
26…凸付リング状部材
26’…凸部
41…突起部
42…スリット
51…凸球面円盤
52…凹球面円盤
61…凸球面リング
62…凹球面リング
71…十字形突起
72…凸十字突起付円盤
73…十字溝
74…凹十字溝付円盤
81…凸突起付リング
82…凹溝付リング
83…突起
84…溝
91…十字形突起
92…凸十字突起付球面円盤
93…十字溝
94…凹十字溝付球面円盤
101…凸突起付球面リング
102…凹溝付球面リング
103…球面突起
104…球面溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの鋼管を直列に接続する継手構造であって、
2つの鋼管の端部にそれぞれ設けられた、鋼管の外周面よりも外側に突出する一対の突出部と、
2つの鋼管の端部同士を突き合わせた状態において、前記一対の突出部の外側から装着され、内周面に前記一対の突出部を受容させる溝が形成された複数の接続部材と、
前記一対の突出部に装着された前記複数の接続部材の外側に装着される筒状の固定部材を備えることを特徴とする、鋼管の継手構造。
【請求項2】
前記突出部は、前記鋼管の端部に取り付けられた円盤状部材、リング状部材あるいは円弧状部材により構成されることを特徴とする、請求項1に記載の鋼管の継手構造。
【請求項3】
前記複数の接続部材は円弧形状を有しており、各接続部材を組み合わせることにより、鋼管の外周面を囲む円環形状が構成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の鋼管の継手構造。
【請求項4】
前記固定部材の上端には、前記突出部に装着された接続部材の上面に当接可能な係止部が設けられていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の鋼管の継手構造。
【請求項5】
前記一対の突出部の一方の対向面には凸部が設けられ、他方の対向面には前記凸部を受容可能な凹部が設けられていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の鋼管の継手構造。
【請求項6】
前記固定部材の下端には、前記突出部に装着された接続部材の下面に架け留める突起部が設けられていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の鋼管の継手構造。
【請求項7】
前記一対の突出部の対向面は互いに適合する形状であり、一方の対向面は凹球面形状、他方の対向面は凸球面形状であることを特徴とする、請求項1〜6に記載の鋼管の継手構造。
【請求項8】
一方の前記突出部の対向面には鋼管の中心に向かって深くなる勾配を有する十字型形状溝が形成され、他方の前記突出部の対向面には前記十字型形状溝に適合する形状であり、鋼管の中心に向かって高くなる勾配を有する十字型凸部が形成されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の鋼管の継手構造。
【請求項9】
一方の前記突出部の対向面には鋼管の中心に向かって浅くなる勾配を有する十字型形状溝が形成され、他方の前記突出部の対向面には前記十字型形状溝に適合する形状であり、鋼管の中心に向かって低くなる勾配を有する十字型凸部が形成されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の鋼管の継手構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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