説明

鋼管ポールおよびその製造方法

【課題】鋼管柱の下部の外周に設けられた開口部の補強部材を溶接する必要がなく、補強部材が鋼管柱の外周に突出していない安全性、美観に優れた鋼管ポールおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】道路を照明する灯具と、該灯具を支持する鋼管柱とを有する鋼管ポールであって、前記鋼管柱の下部の外周に開口部を有し、該開口部の端部を鋼管柱の内側に折り曲げて、該鋼管柱の内側方向に連続して突出させたリブからなる補強部材を形成したことを特徴とする鋼管ポールおよびその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路を照明する灯具と、該灯具を支持する鋼管柱とを有する鋼管ポールおよびその製造方法に関する。
【0002】
具体的には、例えば、街灯、信号などに用いる円形鋼管を使用した鋼管ポールおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
街灯、信号などに用いる円形鋼管を使用した鋼管ポールは、電気部品等を収納するための開口部を有している。
【0004】
鋼管ポールに関しては従来から種々の提案がなされており、例えば、下記特許文献1には、道路を照明する灯具と、該灯具に電源を供給するソーラーパネルとマイクロ風力発電機を有する鋼管ポールであって、前記ソーラーパネルとマイクロ風力発電機から供給される電源により充電する携帯用非常灯を設置した非常灯ボックスを有することにより、悪天候の場合や、地震などにより電池が破損した場合でも鋼管ポールから離れた道路、事故車両、被災者などを照明することができる鋼管ポールが記載されている。
【0005】
しかし、特許文献1に記載された従来の鋼管ポールは、灯具の電気部品等を設置して操作するため、鋼管柱の下部の外周に設けられた開口部の補強部材を溶接するので疲労破断の原因となり得るうえ、補強部材が鋼管柱の外周に突出するため安全性、美観を損ねるという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−176935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前述のような従来技術の問題点を解決し、鋼管柱の下部の外周に設けられた開口部の補強部材を溶接する必要がなく、補強部材が鋼管柱の外周に突出していない安全性、美観に優れた鋼管ポールおよびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前述の課題を解決するために、鋼管柱の下部の外周に設けられた開口部の補強構造を鋭意検討の結果なされたものであり、その要旨とするところは特許請求の範囲に記載した通りの下記内容である。
(1)道路を照明する灯具と、該灯具を支持する鋼管柱とを有する鋼管ポールであって、前記鋼管柱の下部の外周に開口部を有し、該開口部の端部を鋼管柱の内側に折り曲げて、該鋼管柱の内側方向に連続して突出させたリブからなる補強部材を形成したことを特徴とする鋼管ポール。
(2)前記開口部に、着脱自在の蓋を設け、該蓋の外周面は、前記鋼管柱の外周面と段差がなく連続していることを特徴とする(1)に記載の鋼管ポール。
(3)(1)または(2)に記載の鋼管ポールの製造方法であって、鋼管柱の下部の外周に開口部を下穴加工した後、該開口部の端部をプレス加工により折り曲げて鋼管柱の内側方向に連続して突出させたリブからなる補強部材を形成することを特徴とする鋼管ポールの製造方法。
【0009】
<作用>
(1)の発明の鋼管ポールによれば、鋼管柱の下部の外周に開口部を有し、該開口部の端部を鋼管柱の内側に折り曲げて、該鋼管柱の内側方向に連続して突出させたリブからなる補強部材を形成したため、開口部の補強部材の溶接部が必要がないので疲労強度が高い。
(2)発明の鋼管ポールによれば、着脱自在の蓋を設け、該蓋の外周面は、前記鋼管柱の外周面と段差がなく連続しているので、補強部材が鋼管柱の外周に突出していないため安全性、美観に優れている。
(3)の発明の鋼管ポールの製造方法によれば、鋼管柱の下部の外周に開口部を下穴加工した後、該開口部の端部をプレス加工により折り曲げて鋼管柱の内側方向に連続して突出させたリブからなる補強部材を形成するため、開口部の補強部材の溶接が必要がないので疲労強度が高いうえ、補強部材が鋼管柱の外周に突出していないため安全性、美観に優れた鋼管ポールの製造コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、鋼管柱の下部の外周に設けられた開口部の補強部材を溶接する必要がなく、補強部材が鋼管柱の外周に突出していない安全性、美観に優れた鋼管ポールおよびその製造方法を提供することができ、産業上有用な著しい効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来の鋼管ポールを例示する図である。
【図2】本発明の鋼管ポールにおける開口部を例示する詳細図である。
【図3】本発明の鋼管ポールの実施形態を例示する横断面図である。
【図4】本発明の鋼管ポールの製造方法を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明を実施するための形態について、図1〜図3を用いて詳細に説明する。図1は、従来の鋼管ポールを例示する図である。図1において、1は灯具、2は鋼管柱、3は開口部、4はスイッチ取付け板を示す。
【0013】
図1に示すように、従来の鋼管ポールは、道路を照明する灯具1と、該灯具1を支持する鋼管柱2とを有し、灯具1の接続端子とブレーカー等を設置するスイッチ取付け板を設置して操作するため、鋼管柱2の下部の外周に開口部3が設けられており、その開口部3の補強部材を溶接していたので疲労破断の原因となり得るうえ、補強部材を鋼管柱2の外周に50mm程度突出させることによって断面二次モーメントを高める必要があり、安全性、外観を損ねるという問題点があった。
【0014】
図2は、本発明の鋼管ポールにおける開口部を例示する詳細図であり、図3はその横断面図であり、図2および図3において、2は鋼管柱、3は開口部、4 はスイッチ取付け板、5は蓋、6はボルト、7はアース端子、8は補強部材、9はパッキンを示す。
【0015】
図2および図3に示すように、本発明の鋼管ポールは、道路を照明する灯具1と、該灯具1を支持する鋼管柱2とを有する鋼管ポールであって、前記鋼管柱2の下部の外周に開口部3を有し、該開口部3の端部を鋼管柱2の内側に折り曲げて、該鋼管柱2の内側方向に連続して突出させたリブからなる補強部材を形成したことを特徴とする。
【0016】
即ち、従来の開口部3の補強部材の代わりに、鋼管柱2の下部の外周に開口部3を有し、該開口部3の端部を鋼管柱2の内側に折り曲げて、該鋼管柱の内側方向に連続して突出させたリブからなる補強部材8を形成することによって、鋼管柱2の下部の外周に設けられた開口部の補強部材を溶接する必要がなく、補強部材が鋼管柱2の外周に突出していない安全性、美観に優れた鋼管ポールを提供することができる。
【0017】
図2及図3に示す開口部3は、作業員がブレーカー等の設置作業を行い易いように、開口部3の中心が地面から0.5〜1mの位置に設けられている。また、図3に示すように、開口部3の端部には、片部8´が形成され、引き続いて鋼管柱2の内側にV字状に折り曲げられて、横断面の左右対称な位置に、鋼管柱の内側方向に連続して突出させた互いに平行なリブからなる補強部材8を設ける。本発明においては、補強部材8の設置方向は問わないが、プレス加工を容易にするため、補強部材8の設置方向は開口部3に対して垂直方向とすることが好ましい。
【0018】
本発明においては、補強部材8のサイズは問わないが、その幅Wは鋼管柱2の外形Dの0.1〜0.3倍で、板厚は鋼管柱2と等しくすることが好ましい。幅Wを鋼管柱2の外形Dの0.1倍以上とすることにより、開口部3による断面係数の補強を行う一方で、幅Wが鋼管柱2の外形Dの0.3倍を超えるとブレーカー等の設置作業に支障を生じる可能性があるからである。
【0019】
また、図2および図3に示すように、開口部3を覆う着脱自在の蓋5をゴム製のパッキン9を介しボルト6を用いて着脱自在に設け、該蓋5の外周面は、前記鋼管柱の外周面と段差がなく連続していることが好ましい。
【0020】
本発明においては、鋼管ポールの製造方法は問わないが、鋼管柱2の下部の外周に打ち抜き等の下穴加工により開口部3を形成した後、該開口部3の端部を金型を用いたプレス加工により折り曲げて鋼管柱2の内側方向に連続して突出させたリブからなる補強部材を形成することにより、開口部の補強部材の溶接が必要がないので疲労強度が高いうえ、補強部材が鋼管柱の外周に突出していないため安全性、美観に優れた鋼管ポールの製造コストを低減することができる。
【0021】
図4は、本発明の鋼管ポールの製造方法を例示する図であり、(a)はプレス加工前の状態、(b)はプレス加工の第1段階、(c)はプレス加工の第2段階を示す。まず、(a)に示すように、機械加工等によって、下穴加工を施した鋼管柱2を水平にしてプレス加工機にセットする。次に、(b)に示すように、プレス加工の第1段階として、押し型10全体を押し下げて開口部3を押圧して片部を形成する。そして、(c)に示すように、プレス加工の第2段階として、斜線で示す押し型10の中央部分をさらに押し下げて開口部3の先端部を押圧してリブからなる補強部材を形成する。上記のプレス加工によって加工硬化が生じるので、鋼管柱の強度を向上させることができる。
【実施例】
【0022】
図2〜図3に示す本発明の鋼管ポールを図4に示す製造方法を用い下記条件で実施した。
<実施条件>
・鋼管柱下部の外径D : 139〜190mm、板厚:4.5mm
・鋼管柱先端部の外径D´: 75.0mm、板厚:4.5mm
・開口部長さL :600mm
・開口部加工方法 :機械加工
・ 補強部材(リブ)幅W:20〜40mm、板厚:4.5mm
【0023】
その結果、鋼管柱の下部の外周に設けられた開口部の補強部材を溶接する必要がなく、補強部材が鋼管柱の外周に突出していない安全性、美観に優れた鋼管ポールおよびその製造方法を提供することができ、本発明の効果が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の鋼管ポールは、実施計画中であり、安全性、美観に優れているため、今後、幅広い地方公共団体への適用拡大が期待される。
【符号の説明】
【0025】
1 灯具
2 鋼管柱
3 開口部
4 スイッチ取付け板
5 蓋
6 ボルト
7 アース端子
8 補強部材
8´片部
9 パッキン
10押し型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路を照明する灯具と、該灯具を支持する鋼管柱とを有する鋼管ポールであって、前記鋼管柱の下部の外周に開口部を有し、該開口部の端部を鋼管柱の内側に折り曲げて、該鋼管柱の内側方向に連続して突出させたリブからなる補強部材を形成したことを特徴とする鋼管ポール。
【請求項2】
前記開口部に、着脱自在の蓋を設け、該蓋の外周面は、前記鋼管柱の外周面と段差がなく連続していることを特徴とする請求項1に記載の鋼管ポール。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の鋼管ポールの製造方法であって、鋼管柱の下部の外周に開口部を下穴加工した後、該開口部の端部をプレス加工により折り曲げて鋼管柱の内側方向に連続して突出させたリブからなる補強部材を形成することを特徴とする鋼管ポールの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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