説明

鋼管塗装方法

【課題】塗膜を短時間で乾燥させることができ、また平滑で均一な膜厚の塗膜が得られる鋼管塗装方法を提供する。
【解決手段】電縫鋼管製造ラインで造管され連続して送られてくる鋼管3に塗装を施す鋼管塗装方法であって、連続して送られてくる鋼管3を、当該鋼管3を囲む誘導コイル4aに高周波電流を通電することで当該鋼管3に渦電流を流して加熱する高周波誘導加熱装置4で予熱し、その鋼管3に水溶性アルキド樹脂クリヤー塗料を流し塗り方式で塗布(塗装部5)し、その下流に配置した、鋼管外径に概ね等しい内径の穴6aをあけたスポンジ6の前記穴6aを通過させて、鋼管表面の塗料をならし塗膜を調整する。塗料塗布前に予め鋼管を高周波誘導加熱装置で予熱するので、塗膜に対する加熱が有効に行われ、塗膜を短時間で乾燥させることができる。また、平滑でかつ均一な膜厚の塗膜が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電縫鋼管製造ラインで造管され連続して送られてくる鋼管に塗装を施す鋼管塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より電縫鋼管製造ラインの付帯設備として塗装装置を設置し、造管され連続して送られてくる鋼管に塗装を施すことが行われている。この種の従来の塗装方法は、塗料を塗布した後、熱風炉を通して塗料を乾燥させるという一般的な塗装方法を採用している。その塗装に用いる塗料として、水溶性のアルキド樹脂クリヤー塗料を用いる場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
造管され連続して送られてくる鋼管に塗装を施す場合、塗料の乾燥が不十分であると、取り出された製品の結束時に塗膜が損傷するので、塗料を短時間に乾燥させることが求められる。
上記の水溶性のアルキド樹脂クリヤー塗料は乾燥時間の短い塗料ではあるが、例えば毎分50m等の送り速度で連続して送られてくる鋼管に対して塗装する場合のものとしては、必ずしも乾燥時間が十分短いとは言えず、熱風炉を通過する時間がある程度必要であり、熱風炉の長さをある程度長くする必要があった。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、連続して送られてくる鋼管に水溶性のアルキド樹脂クリヤー塗料を塗布する場合に、送り速度に対応可能な程度に早く乾燥させることが可能な鋼管塗装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する請求項1の発明は、電縫鋼管製造ラインで造管され連続して送られてくる鋼管に塗装を施す鋼管塗装方法であって、
連続して送られてくる鋼管を、当該鋼管を囲む誘導コイルに高周波電流を通電することで当該鋼管に渦電流を流して加熱する高周波誘導加熱装置で予熱し、その鋼管に水溶性アルキド樹脂クリヤー塗料を流し塗り方式で塗布し、その下流に配置した、鋼管外径に概ね等しい内径の穴をあけたスポンジの前記穴を通過させて、鋼管表面の塗料をならし塗膜を調整することを特徴とする。
【0006】
請求項2は、請求項1の鋼管塗装方法において、塗料塗布の後、前記スポンジの位置より上流側に配置した、鋼管外径に概ね等しい内径の穴をあけたフェルトの前記穴を通過させて、鋼管表面の塗料を予備的にならすことを特徴とする。
【0007】
請求項3の発明は、電縫鋼管製造ラインで造管され連続して送られてくる鋼管に塗装を施す鋼管塗装方法であって、
連続して送られてくる鋼管を高周波誘導加熱装置で予熱し、その鋼管に水溶性アルキド樹脂クリヤー塗料を流し塗り方式で塗布し、その下流位置で鋼管外周にエアーを吹き付けて鋼管表面の塗料をならして塗膜を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、鋼管に塗料を塗布する前に予め鋼管を高周波誘導加熱装置で予熱するので、塗布された塗料を直接接触による鋼管の熱で内側から加熱することになり、したがって、塗膜に対する加熱が有効に行われ、塗膜を短時間で乾燥させることができる。したがって、取り出された塗装鋼管の塗膜は、製品結束に耐える程度に十分硬化したものとなる。そして、鋼管外径に概ね等しい内径の穴を持つスポンジを通して鋼管表面の塗料をならすことで、平滑でかつ膜厚が均一にされた塗膜を得ることができる。
【0009】
請求項2のように、塗料を塗布した鋼管を予め、穴あきフェルトの穴を通過させて鋼管表面の塗料を予備的にならした後に、穴あきスポンジの穴を通過させて、塗膜を調整すると、流し塗りされて鋼管表面を覆う余分な塗料が適度の硬さを持つフェルトにより除かれ、これに続く柔らかいスポンジにより塗膜調整が適切に行われるので、一層平滑でかつ膜厚が均一にされた塗膜を得ることができる。また、柔らかいスポンジの損傷が少なくなり、スポンジの寿命が長くなる。
【0010】
請求項3のように、塗膜を調整する手段として、鋼管の外周にエアーを吹き付けて鋼管表面の塗料をならす方法を採用すれば、消耗品が不要であり、メンテナンスが容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の鋼管塗装方法の実施例を図1〜図5を参照して説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は本発明の一実施例の鋼管塗装方法を模式的に説明するもので、同図において、1は電縫鋼管製造設備における複数段のサイジングロールの最終段ロールである。電縫鋼管製造設備自体については省略するが、ロール成形機により帯板を円形断面に近い形状まで湾曲成形した後、高周波誘導加熱方式又は高周波直接通電加熱方式の電縫溶接機で材料エッジを通電加熱しつつスクイズロールを通過させてエッジを突合せ溶接して円管とし、水冷により冷却し、続くサイジングロールで所望の正しい断面形状に整える(整形する)。2は案内ロールである。サイジングロールで整形された鋼管を3で示す。
【0013】
請求項1の発明では、連続して送られてくる鋼管3を、当該鋼管3を囲む誘導コイル4aに高周波電流を通電することで当該鋼管に渦電流を発生させて加熱する高周波誘導加熱装置4で予熱し、その鋼管3に水溶性アルキド樹脂クリヤー塗料を流し塗り方式で塗布し、次いで、図2にも示すようにその下流に配置した、鋼管外径に概ね等しい内径の穴6aをあけたスポンジ6の前記穴6aを通過させて、鋼管表面の塗料をならし塗料膜厚を調整する。4bは高周波誘導加熱装置4の高周波電源装置を示す。符号5は流し塗り方式で塗料を塗布するための塗装塗布装置を模式的に示したものである。符号7は走行切断機を模式的に示したもので、この走行切断機7は鋼管3の送り速度に同調して移動しながら鋼管3を切断し次いで復帰する動作を繰り返す。
なお、スポンジ6の材質は特に限定されないが、例えばポリウレタンスポンジ等を使用できる。また、スポンジ6の穴6aの内径は特に厳格に設定する必要はないが、通常の加工手段による加工精度で鋼管外径と同外径にするとよい。
【0014】
上記の塗装工程において、高周波誘導加熱装置4は、鋼管3を囲む誘導コイル4aに高周波電源装置4bによる高周波電流を通電することで、誘導コイル4aの内側にある鋼管3に渦電流を発生させ当該鋼管3を余熱するので、塗布された塗料を直接接触による鋼管の熱で内側から加熱することになり、したがって、塗膜に対する加熱が有効に行われ、塗膜を短時間で乾燥させることができる。したがって、走行切断機7で切断後に取り出された塗装鋼管の塗膜は、製品結束に耐える程度に十分硬化したものとなる。そして、鋼管外径に概ね等しい内径の穴6aをあけたスポンジ6の穴6aを通過させて、鋼管表面の塗料をならすことで、平滑でかつ膜厚が均一にされた塗膜を得ることができる。
高周波誘導加熱装置4による予熱温度は、鋼管の送り速度によもよるが、例えば50m/分の送り速度の場合、概ね60℃〜80℃程度とするのが適切である。
使用する水溶性アルキド樹脂クリヤー塗料は、防錆を目的とするものであるが顔料は含まないものである。塗装膜厚は特に限定されないが、例えば数μm〜十数μm程度である。
なお、高周波誘導加熱装置4は、電縫溶接機に用いられる高周波誘導溶接装置と基本的に同じ原理による加熱方式であるが、既にエッジが突き合わせ溶接されて管になっていることから周方向全体で発熱する点で、エッジが集中的に加熱される高周波誘導溶接装置の場合と異なる。
【0015】
また、図3に示すように、スポンジ6の位置より上流側に、鋼管外径に概ね等しい内径の穴16aをあけたフェルト16を配置し、このフェルト16の穴16aを通過させて、スポンジ6による塗膜調整の前に予め鋼管表面の塗料を予備的にならすことも有効である。
これにより、流し塗りされて鋼管表面を覆う余分な塗料が適度の硬さを持つフェルト16により除かれ、これに続く柔らかいスポンジ6により塗膜調整が適切に行われるので、一層平滑でかつ膜厚が均一にされた塗膜を得ることができる。また、柔らかいスポンジ6の損傷が少なくなり、スポンジの寿命が長くなる。
なお、フェルト16の材質は特に限定されないが、化学繊維をフェルト収縮させたもの等を使用できる。また、フェルト16の穴16aの内径も特に厳格に設定する必要はなく、通常の加工手段による加工精度で鋼管外径と同外径にするとよい。
なお、単に熱風炉を通過させて乾燥させる従来方式と比較する比較実験を行なったが、出側での塗膜硬さは、従来の熱風炉による乾燥方式と比べて、指で触れて十分差異を感じる程度に硬くなっていた。また、平滑さや塗膜の均一さも優れていた。
【実施例2】
【0016】
鋼管表面の塗料膜厚を調整する手段として、図4、図5に示すように、鋼管3の外周を囲むエアーワイパー11により鋼管3にエアーを吹き付けて鋼管表面の塗料をならすことができる。図示例のエアーワイパーは、図示略の圧縮空気源から供給されるエアーを鋼管送り方向と逆方向の角度を付けて鋼管表面に吹き付けている。これにより平滑でかつ膜厚が均一にされた塗膜を得ることができる。なお、エアーワイパーの構造としては図示例のものに限らず、要するに鋼管の外周に角度を付けてエアーを吹付けることができるものであればよく、種々の構造を採用できる。
対象とする鋼管の断面形状として実施例では丸管について述べたが、本発明は角形鋼管にも当然適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例の鋼管塗装方法を説明する図である。
【図2】図1におけるスポンジによる膜厚調整部の断面図である。
【図3】塗膜調整手段としてスポンジとともにその上流側にフェルトを配置した実施例を示すもので、膜厚調整部の断面図である。
【図4】本発明の他の実施例の鋼管塗装方法を説明する図である。
【図5】図4におけるエアーワイパーによる膜厚調整部の断面図である。
【符号の説明】
【0018】
3 鋼管
4 高周波誘導加熱装置
4a 誘導コイル
4b 高周波電源装置
5 流し塗り方式の塗装装置
6 スポンジ
6a 穴
8 フェルト
9 フェルト貼りスポンジ
11 エアーワイパー
16 フェルト
16a 穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電縫鋼管製造ラインで造管され連続して送られてくる鋼管に塗装を施す鋼管塗装方法であって、
連続して送られてくる鋼管を、当該鋼管を囲む誘導コイルに高周波電流を通電することで当該鋼管に渦電流を流して加熱する高周波誘導加熱装置で予熱し、その鋼管に水溶性アルキド樹脂クリヤー塗料を流し塗り方式で塗布し、その下流に配置した、鋼管外径に概ね等しい内径の穴をあけたスポンジの前記穴を通過させて、鋼管表面の塗料をならし塗膜を調整することを特徴とする鋼管塗装方法。
【請求項2】
塗料塗布の後、前記スポンジの位置より上流側に配置した、鋼管外径に概ね等しい内径の穴をあけたフェルトの前記穴を通過させて、予め鋼管表面の塗料を予備的にならすことを特徴とする請求項1記載の鋼管塗装方法。
【請求項3】
電縫鋼管製造ラインで造管され連続して送られてくる鋼管に塗装を施す鋼管塗装方法であって、
連続して送られてくる鋼管を高周波誘導加熱装置で予熱し、その鋼管に水溶性アルキド樹脂クリヤー塗料を流し塗り方式で塗布し、その下流位置で鋼管外周にエアーを吹き付けて鋼管表面の塗料をならして塗膜を調整することを特徴とする鋼管塗装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−244948(P2007−244948A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−69064(P2006−69064)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(599078738)株式会社新三興鋼管 (6)
【Fターム(参考)】