説明

鋼管接続用治具、およびその治具を用いた鋼管の接続方法

【課題】下作業を必要とすることなく、非常に容易に鋼管同士を接続することができる上、接続後の鋼管のスムーズな立て込みを可能とする実用的な鋼管接続用治具を提供する。
【解決手段】接続用治具1は、帯状の金属板Pを丸めることによって先端を窄めた扁平な円筒状に形成されており、丸められた金属板Pの端縁同士の間に所定間隔の隙間Gが形成されている。また、外周面の同一の高さの位置において、複数の突起体3,3,3が、円筒状の金属板Pの中心から放射方向へ外向きに突出するように等間隔で設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟弱地盤の改良工事等に用いられる鋼管(あるいは鋼管杭)同士を接続するための治具、およびその接続用治具を用いた鋼管の接続方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
軟弱地盤を強固な地盤に改良するための方法として、セメントミルクを流し込んだ穴の中に筒状の鋼管あるいは鋼管杭を立て込む方法が開発されている。かかる鋼管(鋼管杭)の立て込みによる軟弱地盤の改良には、10mを超えるような長尺な鋼管が必要とされることもあるが、汎用の鋼管は、5〜6m程度の長さのものが多い。したがって、鋼管の立て込みによる軟弱地盤の改良においては、鋼管を立て込んだ後に、その立て込んだ鋼管の上方に、同一径の別の鋼管を溶接によって接続した後にさらに深く立て込む方法が広く採用されている。
【0003】
かかる鋼管の溶接による接続の際には、上下の鋼管の長手方向を精度良く合致させることが必要であるため、立て込んだ鋼管の内部に、鋼管の径より若干小径で幅が20〜100mm程度の扁平な内接管を嵌入して仮止めし(部分的に溶接し)、その内接管の上側部分に、継ぎ足す別の鋼管内を外嵌し、上下2つの鋼管を溶接するという方法が採用されている。また、上下の鋼管を完全に接合させた状態で溶接すると、溶接部分の強度が低くなってしまうため、上下の鋼管の間に数個のスペーサを挟んで、上下の鋼管の間を所定の間隔(3〜10mm程度)だけ離した状態で、溶接が行われる。
【0004】
しかしながら、上記従来の鋼管の接続方法においては、溶接の間中、上下の鋼管の間に数個のスペーサを挟み込んだ状態で保持し続けなければならないため、かかる作業が大変面倒であった。それゆえ、出願人は、扁平な円筒状に形成された支持体から複数のピンを放射方向へ突出させた鋼管接続用治具について提案した(特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−68503号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特開2004−68503号公報に記載された鋼管接続用治具によれば、先に埋設された第一の鋼管と第二の鋼管との溶接を容易なものとすることが可能となる。しかしながら、支持体と各ピンとを別個に製造しなければならないため、製造コストが必ずしも安価であるとは言えない。また、上下の鋼管を溶接する際には、支持体のピン挿通孔内にピンを一つ一つ挿入しなければならず、作業が煩わしい面もある。また、ピンの長さが長いと、鋼管の外周よりも外側へ突出してしまい、さらに鋼管を深くまで立て込む際に抵抗力が生じてしまう。
【0007】
本発明の目的は、上記従来の鋼管接続用治具が有する問題点を解消し、下作業を必要とすることなく、非常に容易に鋼管同士を接続することができる上、接続後の鋼管のスムーズな立て込みを可能とする実用的な鋼管接続用治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる本発明の内、請求項1に記載された発明の構成は、2つの鋼管のそれぞれの端縁から内部へ挿入し、それらの鋼管を接続するための鋼管接続用治具であって、帯状の金属板を丸めることによって先端を窄めた扁平な円筒状に一体的に形成されており、丸められた金属板の端縁同士の間に所定間隔の隙間が形成されているとともに、外周面の同一の高さの位置において、複数の突起体が外向きに突設されていることを特徴とするものである。なお、丸められた金属板の端縁同士の間に設ける隙間の長さは特に限定されるものではなく、1mm以上100mm以下の範囲内で適宜選択することができる。
【0009】
請求項2に記載された発明の構成は、請求項1に記載された発明において、3個以上の突起体が円筒状の金属板の中心から放射方向へ略等角度間隔で設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3に記載された発明の構成は、請求項1、または請求項2に記載された発明において、突起体が、金属板を略コ字状に切断してその切断部分を外向きに折り曲げることによって形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4に記載された発明の構成は、第一の鋼管の上側に、第一の鋼管と略同径の第二の鋼管を接続するための接続方法であって、請求項1〜3のいずれかに記載の鋼管接続用治具を用い、第一の鋼管の上端の内部に、鋼管接続用治具の下側部分を挿入し、その鋼管接続用治具の各突起体を、第一の鋼管の上端面に載置させた状態で、第二の鋼管を鋼管接続用治具の上側部分に外嵌して、第一の鋼管の上端面と第二の鋼管の下端面とによって、鋼管接続用治具の各突起体を挟み込んだ状態で、第一の鋼管と第二の鋼管とを溶接することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載された接続用治具は、下作業を必要とすることなく、非常に容易に鋼管同士を接続することができる上、接続後に、鋼管の外周から外側へ突出する部分が形成されないため、接続後の鋼管をスムーズに立て込むことができる。さらに、請求項1に記載された接続用治具は、容易に外径を拡張させたり、収縮させたりすることができるので、鋼管のサイズのバラツキにも対応させることができる。
【0013】
請求項2に記載された接続用治具は、3個以上の突起体が円筒状の金属板の中心から放射方向へ略等角度間隔で設けられているため、第一の鋼管と第二の鋼管との間隔をそれらの鋼管の全周に亘って等間隔に保つことができるので、第二の鋼管を第一の鋼管に対して真っ直ぐに接続することができる。
【0014】
請求項3に記載された接続用治具は、突起体が、金属板を略コ字状に切断してその切断部分を外向きに折り曲げることによって形成されているため、金属板を切断して折り曲げ形成するだけで、きわめて容易にかつ安価に製造することができる。
【0015】
請求項4に記載された鋼管の接続方法によれば、第一の鋼管と第二の鋼管とを、長手方向が合致するように、しかも短時間の内に非常に容易に接続することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る鋼管接続用治具(以下、接続用治具という)、およびその接続用治具を用いた鋼管の接続方法の一実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0017】
図1〜3は、接続用治具1を示したものであり、接続用治具1は、幅が約70mmで厚さ約2mmの略帯状の金属板(鉄板)Pを丸めることによって、直径(上端際以外の部分の外径)が約105mmの扁平な円筒状に形成されている。そして、丸められた金属板Pの端縁同士の間に約5.0mmの隙間Gが形成された状態になっている。
【0018】
また、金属板Pの上端縁際には、略三角形状の3つの切り込み(切り込み深さ=約27mm)2,2,2が、等間隔(円筒の中心を軸として120度間隔)に形成されている。さらに、それらの切り込み2,2,2の設けられた上端縁際の部分が絞り加工によって窄められており、上端部分の直径が約100mmになっている。
【0019】
さらに、金属板Pの下端縁から約15mmの位置においては、金属板Pを略コ字状に切断してその切断部分を外向きに折り曲げることによって、3個の板状の突起体3,3,3が等間隔に形成された状態になっている。そして、それらの突起体3,3,3が、外周面の同一の高さの位置において、等間隔で(円筒の中心を軸として120度間隔で)外向きに突出した状態になっている。
【0020】
以下、上記接続用治具1を用いて、2つの鋼管を接続する方法について、図4〜図9にしたがって説明する。図4は、先に地盤に立て込む第一の鋼管(鋼管杭)P1、および立て込まれた第一の鋼管P1の上方に接続する第二の鋼管P2を示したものである。第一の鋼管P1の先端際には、螺旋翼5が取り付けられており、第一の鋼管P1の先端には、バイト6,6が取り付けられている。また、第一の鋼管P1、第二の鋼管P2とも、長さ約6mで、外径約110mm、内径約105mmの円筒状に設計されている。なお、接続される第一の鋼管P1の上端際、第二の鋼管P2の下端際の部分には、薄肉になるようにテーパ4が設けられている。
【0021】
地盤に立て込まれた第一の鋼管P1の上方に、第二の鋼管P2を接続する場合には、まず、図5、図6の如く、第一の鋼管P1の内部に、接続用治具1の下側部分を挿入する(外周面が第一の鋼管P1の内周面と接合するように嵌め込む)。なお、接続用治具1の金属板Pの端縁同士には、約5.0mmの隙間Gが形成されているので、接続用治具1の直径を小さくするように窄めることによって、接続用治具1を非常に容易に第一の鋼管P1内に挿入することができる。また、接続用治具1は、窄められて第一の鋼管P1内に挿入された後には、金属板Pの弾性によって、外周面が第一の鋼管P1の内周面と接合する。
【0022】
次に、図7の如く、扁平な直方体状に形成された鉄製のスペーサ7を、工具を利用して、接続用治具1の金属板Pの隙間Gに嵌め込む(一部が第一の鋼管P1内に入り込んむように圧入する)。なお、スペーサ7を嵌め込む際には、各スペーサ7の上端を、突起体3,3の上端よりも上方に位置させるとともに、各スペーサ7の下端を、突起体3,3,3の下端よりも下方に位置させる。そのように、スペーサ7を隙間Gに嵌め込むことによって、接続用治具1の径が拡張され、接続用治具1の外周面と第一の鋼管P1の内周面との密着性が向上する。しかる後に、第一の鋼管P1の内部に挿入された接続用治具1の下側部分を、アーク溶接等の方法によって第一の鋼管P1の内周面に強固に溶接する。
【0023】
そして、図8の如く、第一の鋼管P1の内部に挿入された接続用治具1の上側部分に、第二の鋼管P2を外嵌して(外周面が第二の鋼管P2の内周面と接合するように外嵌して)、第一の鋼管P1の上方に、第二の鋼管P2を配置させる。そのように第二の鋼管P2を配置させることによって、第一の鋼管P1の上端面と第二の鋼管P2の下端面とが、接続用治具1の突起体3,3,3の厚み分の間隔を隔てて対峙した状態となる。また、かかる状態においては、第一の鋼管P1と第二の鋼管P2との間に位置した隙間Gは、スペーサ7によって塞がれた状態になっている。
【0024】
さらに、第一の鋼管P1の上端面と第二の鋼管P2の下端面との間に接続用治具1の突起体3,3,3を挟み込んだ状態で、図9(a)の如く、第一の鋼管P1と第二の鋼管P2とを、突起体3,3,3と離れた2,3箇所において溶接する(斜線部Y,Y)。しかる後、図9(b)の如く、第一の鋼管P1と第二の鋼管P2との隙間を埋めるように、外周全体に亘って十分に溶接を行うことによって(斜線部Y)、第一の鋼管P1と第二の鋼管P2との接続を完了する。なお、第一の鋼管P1と第二の鋼管P2との間に位置した突起体3,3,3は、溶接する際に溶けてしまい、第一の鋼管P1と第二の鋼管P2との隙間を埋める金属となる。
【0025】
上記した接続方法によれば、第一の鋼管P1と第二の鋼管P2とを、長手方向が合致するように(くの字に折れ曲がらないように)、しかも短時間の内に非常に容易に接続することが可能となる。
【0026】
また、接続用治具1は、帯状の金属板Pを丸めることによって先端を窄めた扁平な円筒状に形成されており、丸められた金属板Pの端縁同士の間に隙間Gが形成されているとともに、外周面の同一の高さの位置において、複数の突起体3,3,3が外向きに突設されている。したがって、接続用治具1によれば、下作業を必要とすることなく、非常に容易に鋼管同士を接続することができる上、接続後に、鋼管P1,P2の外周から外側へ突出する部分が形成されないため、接続後の鋼管P1,P2をスムーズに立て込むことができる。さらに、接続用治具1は、容易に外径を拡張させたり、収縮させたりすることができるので、鋼管のサイズのバラツキにも対応させることが可能である。
【0027】
さらに、接続用治具1は、3個の突起体3,3,3が円筒状の金属板Pの中心から放射方向へ略等角度間隔で設けられているため、第一の鋼管P1と第二の鋼管P2との間隔をそれらの鋼管P1,P2の全周に亘って等間隔に保つことができるので、第二の鋼管P2を第一の鋼管P1に対して真っ直ぐに接続することができる。
【0028】
加えて、接続用治具1は、突起体3,3,3が、金属板Pを略コ字状に切断してその切断部分を外向きに折り曲げることによって形成されているため、金属板Pを切断して折り曲げ形成するだけで、きわめて容易にかつ安価に製造することができる。
【0029】
なお、本発明に係る接続用治具の構成は、上記実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、金属板、隙間、突起体、切り込み等の構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。また、接続用治具を用いた鋼管の接続方法の構成も、上記実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、第一の鋼管(鋼管杭)、第二の鋼管の形状、溶接する部位等の構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【0030】
たとえば、接続用治具は、3個の突起体を設けたものに限定されず、2個あるいは4個以上の突起体を設けたものでも良い。また、接続用治具は、上記実施形態の如く、金属板を丸めて形成したものに限定されず、所定の幅に切断した円筒状の金属パイプの先端際に絞り加工を施して上下にスリットを設けることによって形成したもの等に変更することも可能である。
【0031】
一方、本発明の接続用治具を用いた鋼管の接続方法は、第一の鋼管の内部に挿入した接続用治具の下側部分を第一の鋼管の内周面に溶接するものに限定されず、接続用治具の下側部分を単純に第一の鋼管の内部へ挿入するだけの方法に変更することも可能である。加えて、第一の鋼管は、先端に螺旋翼やバイトを付設したものに限定されず、螺旋翼やバイトのないものでも良い。すなわち、本発明に係る鋼管の接続方法は、螺旋翼やバイト等を有さない単純な筒状の鋼管同士の接続にも好適に用いることができる。加えて、本発明に係る鋼管の接続方法は、立て込まれていない鋼管同士の接続にも好適に用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明に係る接続用治具は、上記の如く、優れた効果を奏するものであるから、軟弱な地盤の改良工事等において鋼管を接続する際の接続用治具として好適に用いることができる。また、本発明に係る鋼管の接続方法は、軟弱な地盤の改良工事等において鋼管を接続する方法として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】接続用治具を示す斜視図である。
【図2】接続用治具の平面図である。
【図3】接続用治具の正面図である。
【図4】第一の鋼管、第二の鋼管を示す説明図である。
【図5】第一の鋼管に接続用治具を挿入した状態を示す説明図である。
【図6】第一の鋼管に接続用治具を挿入した状態を示す説明図(平面図)である。
【図7】接続用治具の隙間にスペーサを嵌め込んだ状態を示す説明図(平面図)である。
【図8】接続用治具に第二の鋼管を外嵌した状態を示す説明図である。
【図9】第一の鋼管と第二の鋼管とを溶接する様子を示す説明図である。
【符号の説明】
【0034】
1・・接続用治具、P・・金属板、G・・隙間、3・・突起体、P1・・第一の鋼管、P2・・第二の鋼管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの鋼管のそれぞれの端縁から内部へ挿入し、それらの鋼管を接続するための鋼管接続用治具であって、
帯状の金属板を丸めることによって先端を窄めた扁平な円筒状に一体的に形成されており、丸められた金属板の端縁同士の間に所定間隔の隙間が形成されているとともに、
外周面の同一の高さの位置において、複数の突起体が外向きに突設されていることを特徴とする鋼管接続用治具。
【請求項2】
3個以上の突起体が円筒状の金属板の中心から放射方向へ略等角度間隔で設けられていることを特徴とする請求項1に記載の鋼管接続用治具。
【請求項3】
突起体が、金属板を略コ字状に切断してその切断部分を外向きに折り曲げることによって形成されていることを特徴とする請求項1、または請求項2に記載の鋼管接続用治具。
【請求項4】
第一の鋼管の上側に、第一の鋼管と略同径の第二の鋼管を接続するための接続方法であって、
請求項1〜3のいずれかに記載の鋼管接続用治具を用い、
第一の鋼管の上端の内部に、鋼管接続用治具の下側部分を挿入し、その鋼管接続用治具の各突起体を、第一の鋼管の上端面に載置させた状態で、第二の鋼管を鋼管接続用治具の上側部分に外嵌して、第一の鋼管の上端面と第二の鋼管の下端面とによって、鋼管接続用治具の各突起体を挟み込んだ状態で、第一の鋼管と第二の鋼管とを溶接することを特徴とする鋼管の接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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