鋼管曲げ加工装置及び鋼管曲げ加工方法
【課題】ワイヤロープの曲げ直径を十分に大きくすることができ、ワイヤロープの疲労寿命の向上ができる、更に加工後の管の減肉率や曲げ半径の制御が容易な鋼管曲げ加工装置及び鋼管曲げ加工方法を提供することを目的とする。
【解決手段】鋼管1の外周面の一部を環状に加熱する加熱手段12と、前記加熱部に圧縮力を付加する圧縮力付加手段7、9と、前記加熱手段により加熱される加熱部近傍を環状に冷却する冷却手段17と、前記圧縮力の方向を前記加熱部の軸方向と平行に保つとともに、前記圧縮力付与手段の力点の位置を前記鋼管の加熱部の軸を挟んでその両側に保つための圧縮力案内部材4と、曲げられた鋼管が所定の曲げ半径を保つように前記鋼管を拘束する拘束部材6と、前記曲げられた鋼管と前記加熱手段と前記冷却手段とを、未だ曲げられていない鋼管の軸方向へ相対移動させる駆動手段とからなることを特徴とする鋼管曲げ加工装置。
【解決手段】鋼管1の外周面の一部を環状に加熱する加熱手段12と、前記加熱部に圧縮力を付加する圧縮力付加手段7、9と、前記加熱手段により加熱される加熱部近傍を環状に冷却する冷却手段17と、前記圧縮力の方向を前記加熱部の軸方向と平行に保つとともに、前記圧縮力付与手段の力点の位置を前記鋼管の加熱部の軸を挟んでその両側に保つための圧縮力案内部材4と、曲げられた鋼管が所定の曲げ半径を保つように前記鋼管を拘束する拘束部材6と、前記曲げられた鋼管と前記加熱手段と前記冷却手段とを、未だ曲げられていない鋼管の軸方向へ相対移動させる駆動手段とからなることを特徴とする鋼管曲げ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管曲げ加工装置及び鋼管曲げ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
外径50mm以下の小口径ボイラーチューブを外径と同等あるいはそれ以下の小さな半径で曲げる従来の曲げ加工方法は図11に示すように曲げ半径の内側だけを加熱し、金型を用いて回転引き曲げ法により曲げている。しかしこの方法は偏加熱により曲げ半径外側の肉厚減少を抑えようとするものであるから、金属組織的にも好ましいものではなく肉厚減少の抑制も顕著とは言えなかった。このような小口径ボイラーチューブを外径と同等あるいはそれ以下の小さな半径で曲げる加工に於いて、本出願人の発明した例えば、特許文献1の曲げ方法を適用しようとすると、機械設計上極めて小さな曲率でワイヤロープを曲げることになり、ワイヤロープのメーカーが推奨する曲率に適合させることが難しい。
【0003】
図12に本出願人の発明になる特許文献1の曲げ技術を用いてパイプを曲げるときのワイヤロープの位置を示す。ワイヤロープの位置は、曲げようとする側の「D/2」の範囲の中に設定している。
【0004】
ワイヤロープメーカーのガイドブックによれば、図13および図14のようにワイヤロープの曲げを案内する円板外周の溝(シーブ)の径をAとし、ワイヤロープの上素線径をδ(mm)としたときに、δ/Aが大きいと(A/δが小さいと)ワイヤロープの曲げ応力が大きくなり、ロープには早く疲労破断が生じて寿命が短くなることから次のような目安を提示している。
【0005】
希望値 (A/δ)>1,000
推奨値 (A/δ)> 600
最低値 (A/δ)> 450
限度値 (A/δ)> 300
上記の目安を元にしてワイヤロープ径とシーブ径の関係を算出すると、表1となる。
【0006】
例えば、ロープ径10mmを用いる場合は、シーブ径Aを570mmより大きくすることを提示している。
【0007】
【表1】
【特許文献1】特許第3793762号公報
【特許文献2】特許第2967482号公報
【特許文献3】特許第3400767号公報
【非特許文献1】東京製綱株式会社発行 ワイヤロープ(No.18)63ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記図12の特許文献1の曲げ技術を用いて、ワイヤロープ(δ=10.0mm)の設定位置eを曲げようとする側の「パイプ外径/2」の範囲内に設定して(例えば12.5mm)外径50mm以下の小口径ボイラーチューブを、その外径と同等の50mmあるいはそれ以下の曲げ半径で曲げようとすると、パイプの曲げ半径Rとワイヤロープの曲げ直径Aの関係はA=2・(R−e)であるから、ワイヤロープの曲げ直径はA=75mmとなる。この値は前表に提示した(A/δ)>300の目安値によるシーブ径(ワイヤロープの曲げ直径)171mmよりも更に厳しい使用条件となるから、疲労寿命が早期に訪れることが予想される。
【0009】
このような事態を設計の段階で回避するには、より細い上素線径δを持つ細いワイヤロープを複数列配置することで改善が可能であるが、特許文献1の装置及び方法においては、ワイヤロープの設定位置eを、曲げようとする側の「パイプ外径/2」の範囲内に限定しているために、ワイヤロープ径を細くすることによる改善効果も限定されていた。また、ワイヤロープ以外の索条としてチェーンも検討したが、パイプを曲げるに十分な強さのチェーンのコマは寸法も大きくなるので、チェーンの位置を曲げようとする側の「パイプ外径/2」の範囲に納めることができなかった。このようなことから、小口径でかつ小半径の曲げ加工を肉厚減少を抑制しながら曲げるには、ワイヤロープの位置を曲げようとする側の「パイプ外径/2」の範囲の外側に置くことができる装置及び方法を開発しなければならなかった。
【0010】
更に、ワイヤロープの設定位置eを曲げようとする側の「パイプ径/2」の範囲内に設定しているため管の減肉率の制御や、曲げようとする管の半径Rの制御が非常に困難であるという問題があった。
【0011】
本発明は、以上の点に着目してなされたものでワイヤロープの曲げ直径を十分に大きくすることができ、ワイヤロープの疲労寿命の向上ができる、更に加工後の管の減肉率や曲げ半径の制御が容易な鋼管曲げ加工装置及び鋼管曲げ加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上述の目的を達成するため、以下(1)〜(5)の構成を備えるものである。
【0013】
(1)鋼管の外周面の一部を環状に加熱する加熱手段と、前記加熱部に圧縮力を付加する圧縮力付加手段と、前記加熱手段により加熱される加熱部近傍を環状に冷却する冷却手段と、前記圧縮力付加手段の力点の位置を、前記鋼管加熱部の軸を挟んでその両側に保ち、前記圧縮力の方向を前記加熱部の軸方向と平行に保ちながら、前記鋼管加熱部を挟んだその両側の鋼管の作用点に圧縮力を付与するための圧縮力案内部材と、曲げられた鋼管が所定の曲げ半径を保つように前記鋼管を拘束する拘束部材と、前記曲げられた鋼管と前記加熱手段と前記冷却手段とを、未だ曲げられていない鋼管の軸方向へ相対移動させる駆動手段とからなることを特徴とする鋼管曲げ加工装置。
【0014】
(2)前記圧縮力付加手段が、前記加熱された鋼管に圧縮力が付加されたときの塑性中立軸が所定の半径を形成するように、圧縮力を前記加熱された鋼管に付加するように制御されることを特徴とする前記(1)記載の鋼管曲げ加工装置。
【0015】
(3)前記圧縮力付加手段が、ワイヤロープ又はチェーンによって、前記加熱された鋼管に圧縮力を付加する手段であることを特徴とする前記(1)又は(2)記載の鋼管曲げ加工装置。
【0016】
(4)鋼管の外周面の一部を環状に加熱する工程と、前記加熱する工程により加熱された加熱部に、その軸方向の圧縮力を前記鋼管の軸を挟んでその両側から付加する工程と、前記加熱部近傍を環状に冷却する工程と、前記曲げられた鋼管が所定の曲げ半径を保つように前記鋼管を拘束する工程と、前記曲げられた鋼管と前記加熱部及び前記冷却手段により冷却された冷却部を、未だ曲げられていない鋼管の軸方向に相対移動させる工程とからなることを特徴とする鋼管曲げ加工方法。
【0017】
(5)前記加熱する工程により加熱された加熱部に、その軸方向の圧縮力を前記鋼管の軸を挟んでその両側から付加する工程が、前記加熱及び圧縮された部分の塑性中立軸が、所定の半径を有するように圧縮力を付加する工程であることを特徴とする前記(4)記載の鋼管曲げ加工方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明の鋼管曲げ加工装置及び方法は、ワイヤロープの位置を曲げようとする側の(パイプ外径/2)の範囲の外側に置くことができるので、ワイヤロープの曲げ直径Aを十分に大きくすることができ、ワイヤロープの疲労寿命の向上ができるという利点がある。ボイラー鋼管の曲げ加工において、本発明を用いることにより曲げ加工による肉厚減少を防止でき、均熱曲げができるので、材料の節減および曲げ後の熱処理が不要となった。また本発明は、小口径パイプの小半径曲げ加工に限定されることなく大口径パイプの曲げ加工においても適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例により詳しく説明する。
【実施例1】
【0020】
図3に、外径D、長さLのパイプが半径R、曲げ角度θで曲がったときの一般的な軸方向変形挙動を示す。曲げる前と曲げた後において、軸方向長さLが変化しない位置の半径を塑性中立半径bとする。半径bより大きい位置においては軸方向に伸びが生じ、半径bより小さい位置においては軸方向に圧縮されている。いま塑性中立半径bに注目すると、半径bの仮想円が仮想直線X−X′に接しながら互いに滑らずに転がることにより、曲げ半径R及び曲げ角度θで曲げられていると考えることができる。従ってこの運動は、半径bの円が直線X−X′に接しながらサイクロイド運動していると見ることができるのである。
【0021】
図4に半径bの円が直線X−X′に接しながら滑ることなく180°転がったときのサイクロイド運動の軌跡を示す。前記の図3に示した外径Dで長さLのパイプが、半径Rで曲がったときの塑性中立半径bの運動に注目して示している。
【0022】
図5では、半径aおよび半径bの2つの円が一体となって同心円に置かれたモデルを考える。その同心円が前記図4と同様に半径bの円が直線X−X′に接しながら互いに滑ることなく180°転がったときのサイクロイド運動の軌跡を示す。半径bの円が角度θだけ転がったときX方向の円板移動距離Sは、S=bθである。
【0023】
次に図5をXY座標上のサイクロイド運動として解析する。円板の半径をaとし曲げ管の塑性中立半径をbとする。パイプ先端は円板に固定されている。塑性中立半径bの円が直線X−X′と互いに滑ることなく右方向にころがるときの半径aの円板外周の座標(Xa、Ya)および塑性中立半径bの座標(Xb、Yb)のサイクロイド運動は次のように表すことができる。
【0024】
a:円板の半径、b:塑性中立半径、θ:ころがり角度、S:ころがり距離、λ:a/b、D:パイプ外径とすると、
Xa=b(θ−λsinθ)、Ya=b(λcosθ−1)
Xb=b(θ―sinθ)、Yb=b(cosθ−1)
図6には半径aおよび半径bの円板が一体となって同心円に置かれたモデルを考える。このモデルにおいて半径bの円が直線X−X′に接しながら互いに滑ることなく角度θだけ転がったときのサイクロイド運動を示す。このとき半径aの円板の外周にはワイヤロープを案内する溝があり、その溝に沿ってワイヤロープが巻かれている。転がる前のワイヤロープの両端末をFおよびGとし、円板が角度θだけ転がった後のワイヤロープの両端末をF′およびG′とする。端末Fの移動距離は(a+b)θであり、端末Gの移動距離は(a−b)θである。従って逆に言えば、端末Fを(a+b)θだけ引張り、端末Gを(a−b)θだけ繰り出せば、半径bの円板は直線X−X′に接しながら滑ることなく角度θだけ転がり、S=bθだけ移動することになる。従って以上のことから、図5のようにワイヤロープを操作すれば図1の曲げ加工が実行できることがわかる。以下、具体的にその方法について述べる。
【0025】
図7に本発明の課題であった、「ワイヤロープの位置を曲げようとする側の(パイプ外径/2)の範囲の外側に置く」ための原理を示す。パイプの両端に押圧板を置き、パイプを高周波加熱コイルにより円環状に加熱する。次に(パイプ外径/2)の範囲の外側に圧縮荷重WFおよびWGを負荷する。圧縮荷重WFおよびWGの総和W=WF+WGは、パイプ加熱部を十分に圧縮できる大きさの荷重である。圧縮荷重WFによる押圧板の移動量ΔLFおよび圧縮荷重WGによる押圧板の移動量ΔLGの関係は、ΔLF>ΔLGである。このようにしてパイプを軸方向に圧縮すると、パイプは曲げ角度θに曲げられる。次にこの原理を具体化した装置の構造を以下に説明する。
【0026】
図1に本発明の構造を示す。外径Dのパイプ1はクランプ2により半径aの円板4に固着されている。高周波加熱コイル11によりパイプ1の外周を円環状に加熱し、同コイルからパイプ1の外周を円環状に冷却するための冷却水17が噴出している。円板4の外周にはワイヤロープ7を案内する溝が掘られており、そのワイヤロープ7の両端はジャッキ8およびジャッキ9と結合されている。いま、ジャッキ8および9に引張り力を発生させて円板4を図の右方向に引き寄せるとパイプ1には軸方向の圧縮力が発生する。するとパイプ加熱部12の変形抵抗は隣接している非加熱部のパイプ1の変形抵抗よりも小さいので、加熱部12にのみ塑性変形が集中する。このときジャッキ8および9の操作は次の様にして行う。
【0027】
半径bの仮想円が図の右方向に反時計回りで転がるときの直線移動距離をSとすると、半径bの仮想円が直線X−X′に接しながら互いに滑らないで、S=bθの関係をもって反時計回りで転がるようにジャッキ8および9の操作すると同時に、加熱コイル11をSだけ右へ移動する。するとパイプ1は曲げ半径R、曲げ角度θで曲がり、長さbθだけ加熱コイルを通過して曲げられるのである。尚、曲げが進行するに従って曲がり部の外側半径部に順次に拘束板6を装着することにより、曲げ部の変形を防止する。
【0028】
前記の操作は半径bの仮想円が、これと接する仮想直線と互いに滑らずに反時計回りに転がるようにジャッキ8および9を操作することであるから、半径bの仮想円板がサイクロイド運動をしていることになる。従って、半径bの仮想円板をサイクロイド運動させるためのジャッキ8および9の操作を
ジャッキ8の引張り長さ ΔLF=(a+b)θ
ジャッキ9の繰り出し長さΔLG=(a−b)θ
とすることにより実現される。
【0029】
前記までは半径bの仮想円が、これと接する仮想直線と「すべらないで」反時計回りに転がるようにジャッキ8および9を操作した。次に応用として、半径bの仮想円が、これと接する仮想直線と「すべりながら」時計回りに転がるようにジャッキを操作することもできる。
【0030】
すべりながら転がる態様としてはS>bθおよびS<bθの2つがある。
【0031】
S>bθとする場合はΔLFおよびΔLGの長さを同じ比率で増加させる。すると塑性中立半径bが増大し、パイプを押し縮める効果が増大するので曲がり部の肉厚は、S=bθの場合より増加する。
【0032】
S<bθとするときはΔLFおよびΔLGの長さを同じ比率で減少させる。すると塑性中立半径bが減少し、パイプを押し縮める効果が減少するので曲がり部の肉厚は、S=bθの場合より減少する。さらにもう一つのすべりながら転がる態様としては、ΔLFおよびΔLGの長さをそれぞれ異なる比率で減少あるいは増加させることもできる。
【0033】
図2は、図1と構造が同じである。図1においては架台10を固定し円板4を移動させているが、図2はこれと逆に架台10を距離Sだけ移動させ、円板4は固定したものである。図1および図2ともにジャッキ8および9の運動は同じである。
【0034】
本発明は以上述べたような構造であるから、ワイヤロープの配置位置を、曲げようとする側の(パイプ外径/2)の範囲の外側に置くことができるので、ワイヤロープの曲げ直径A=2aを十分に大きくすることが可能となった。これによりワイヤロープの疲労寿命を向上することとなる。
【0035】
更に、従来に比較して加工後の管の減肉率と曲げ半径の制御が容易な鋼管曲げ加工装置及び鋼管曲げ加工方法を提供することができる。
【実施例2】
【0036】
図8に第2の実施例を示す。曲げようとするパイプ1は前部押圧板2と後部押圧板3に固着されており、前部押圧板2は円板4に固着され、後部押圧板3は架台10に固着されている。円板4は台車13に載せられており、円板の外周はスプロケット加工されていてチェーン7を介して引張りジャッキ8および繰り出し9につながれている。引張りジャッキ8および繰り出しジャッキ9は架台10に固定されており、引張りジャッキ8は引張り速度V1Fおよび引張り力WFを発生し、繰り出しジャッキ9は繰り出し速度V1Gおよび引張り力WGを発生することによりパイプ1を軸方向に圧縮する。このときジャッキ8の引張り速度V1Fはジャッキ9の繰り出し速度V1Gよりも大きく設定している。台車13はレール15の上を車輪14で自在に走行できる。加熱コイルおよび冷却コイルは、パイプの円周を局部的に狭い幅で加熱冷却しながら図外の移動装置により速度V2でパイプの軸方向に移動することにより、加熱部12を狭い幅に保っている。すると加熱部12は集中的に軸圧縮されるのであるが、加熱部断面の軸方向圧縮速度は不均等な傾きを与えられているので、圧縮速度の傾きによる圧縮量の傾きに応じて圧縮されるから、加熱部は曲げ角度θ曲げ半径Rをもつ形状に曲がる。このような局部的な圧縮加工が連続的に行われるので曲げ加工は連続して進行する。円板4には拘束板6を挿入する穴5があり、曲がり部の外側半径部分に拘束板6を挿入することにより曲がり部の変形を防止している。図9は円板4が1枚で構成された実施例であって、パイプ1を片持ちで支えている。図10は円板4が2枚で構成された実施例であって、パイプ1を両持ちで支えている。
【0037】
以上述べたように、チェーンを使用した場合においても、本発明の鋼管曲げ加工装置及び鋼管曲げ加工方法を実現でき、同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施例1の装置を示す図
【図2】本発明の実施例1の他の装置を示す図
【図3】曲げ加工によるパイプの軸方向長さ変化量と塑性中立半径の説明図
【図4】塑性中立半径bのサイクロイド運動の説明図
【図5】半径aおよびbからなる同心円のサイクロイド運動説明図
【図6】半径aの円板を操作して半径bの円板をサイクロイド運動させる説明図
【図7】パイプ圧縮荷重の力点を(パイプ外径/2)の外側に置く説明図
【図8】本発明の実施例2の装置を示す図
【図9】実施例2において、円板4を1枚の構成とした装置の説明図
【図10】実施例2において、円板4を2枚の構成とした装置の説明図
【図11】従来の小口径パイプの曲げ加工方法を示す図
【図12】特許文献1のワイヤロープ位置の説明図
【図13】ワイヤロープの曲げ直径Aの説明図である。
【図14】ワイヤロープの断面形状と上素線径の説明図
【符号の説明】
【0039】
1 パイプ
2 前部押圧板
3 後部押圧板
4 円板
5 拘束板挿入穴
6 拘束板
7 ワイヤロープ、チェーンなどの索条
8 引張りジャッキ
9 繰り出しジャッキ
10 架台
11 高周波加熱コイル
12 加熱部
13 走行台車
14 車輪
15 レール
16 サポートローラー
17 冷却水
a 円板4の半径
A ワイヤロープの曲げ直径
b 塑性中立半径
R 曲げ半径
θ 曲げ角度
D パイプの外径
e 特許文献1のワイヤロープ偏心位置
WF 引張りジャッキ8の引張り荷重
WG 繰り出しジャッキ9の引張り荷重
W 引張りジャッキ8の引張り荷重と繰り出しジャッキ9の引張り荷重の和
ΔLF 引張りジャッキ8の引張り長さ
ΔLG 繰り出しジャッキ9の繰り出し長さ
V1F 引張りジャッキ8の引張り速度
V1G 繰り出しジャッキ9の繰り出し速度
V2 パイプと高周波加熱コイルの相対移動速度および走行台車の移動速度
S パイプと高周波加熱コイルの相対移動距離および走行台車の移動距離
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管曲げ加工装置及び鋼管曲げ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
外径50mm以下の小口径ボイラーチューブを外径と同等あるいはそれ以下の小さな半径で曲げる従来の曲げ加工方法は図11に示すように曲げ半径の内側だけを加熱し、金型を用いて回転引き曲げ法により曲げている。しかしこの方法は偏加熱により曲げ半径外側の肉厚減少を抑えようとするものであるから、金属組織的にも好ましいものではなく肉厚減少の抑制も顕著とは言えなかった。このような小口径ボイラーチューブを外径と同等あるいはそれ以下の小さな半径で曲げる加工に於いて、本出願人の発明した例えば、特許文献1の曲げ方法を適用しようとすると、機械設計上極めて小さな曲率でワイヤロープを曲げることになり、ワイヤロープのメーカーが推奨する曲率に適合させることが難しい。
【0003】
図12に本出願人の発明になる特許文献1の曲げ技術を用いてパイプを曲げるときのワイヤロープの位置を示す。ワイヤロープの位置は、曲げようとする側の「D/2」の範囲の中に設定している。
【0004】
ワイヤロープメーカーのガイドブックによれば、図13および図14のようにワイヤロープの曲げを案内する円板外周の溝(シーブ)の径をAとし、ワイヤロープの上素線径をδ(mm)としたときに、δ/Aが大きいと(A/δが小さいと)ワイヤロープの曲げ応力が大きくなり、ロープには早く疲労破断が生じて寿命が短くなることから次のような目安を提示している。
【0005】
希望値 (A/δ)>1,000
推奨値 (A/δ)> 600
最低値 (A/δ)> 450
限度値 (A/δ)> 300
上記の目安を元にしてワイヤロープ径とシーブ径の関係を算出すると、表1となる。
【0006】
例えば、ロープ径10mmを用いる場合は、シーブ径Aを570mmより大きくすることを提示している。
【0007】
【表1】
【特許文献1】特許第3793762号公報
【特許文献2】特許第2967482号公報
【特許文献3】特許第3400767号公報
【非特許文献1】東京製綱株式会社発行 ワイヤロープ(No.18)63ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記図12の特許文献1の曲げ技術を用いて、ワイヤロープ(δ=10.0mm)の設定位置eを曲げようとする側の「パイプ外径/2」の範囲内に設定して(例えば12.5mm)外径50mm以下の小口径ボイラーチューブを、その外径と同等の50mmあるいはそれ以下の曲げ半径で曲げようとすると、パイプの曲げ半径Rとワイヤロープの曲げ直径Aの関係はA=2・(R−e)であるから、ワイヤロープの曲げ直径はA=75mmとなる。この値は前表に提示した(A/δ)>300の目安値によるシーブ径(ワイヤロープの曲げ直径)171mmよりも更に厳しい使用条件となるから、疲労寿命が早期に訪れることが予想される。
【0009】
このような事態を設計の段階で回避するには、より細い上素線径δを持つ細いワイヤロープを複数列配置することで改善が可能であるが、特許文献1の装置及び方法においては、ワイヤロープの設定位置eを、曲げようとする側の「パイプ外径/2」の範囲内に限定しているために、ワイヤロープ径を細くすることによる改善効果も限定されていた。また、ワイヤロープ以外の索条としてチェーンも検討したが、パイプを曲げるに十分な強さのチェーンのコマは寸法も大きくなるので、チェーンの位置を曲げようとする側の「パイプ外径/2」の範囲に納めることができなかった。このようなことから、小口径でかつ小半径の曲げ加工を肉厚減少を抑制しながら曲げるには、ワイヤロープの位置を曲げようとする側の「パイプ外径/2」の範囲の外側に置くことができる装置及び方法を開発しなければならなかった。
【0010】
更に、ワイヤロープの設定位置eを曲げようとする側の「パイプ径/2」の範囲内に設定しているため管の減肉率の制御や、曲げようとする管の半径Rの制御が非常に困難であるという問題があった。
【0011】
本発明は、以上の点に着目してなされたものでワイヤロープの曲げ直径を十分に大きくすることができ、ワイヤロープの疲労寿命の向上ができる、更に加工後の管の減肉率や曲げ半径の制御が容易な鋼管曲げ加工装置及び鋼管曲げ加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上述の目的を達成するため、以下(1)〜(5)の構成を備えるものである。
【0013】
(1)鋼管の外周面の一部を環状に加熱する加熱手段と、前記加熱部に圧縮力を付加する圧縮力付加手段と、前記加熱手段により加熱される加熱部近傍を環状に冷却する冷却手段と、前記圧縮力付加手段の力点の位置を、前記鋼管加熱部の軸を挟んでその両側に保ち、前記圧縮力の方向を前記加熱部の軸方向と平行に保ちながら、前記鋼管加熱部を挟んだその両側の鋼管の作用点に圧縮力を付与するための圧縮力案内部材と、曲げられた鋼管が所定の曲げ半径を保つように前記鋼管を拘束する拘束部材と、前記曲げられた鋼管と前記加熱手段と前記冷却手段とを、未だ曲げられていない鋼管の軸方向へ相対移動させる駆動手段とからなることを特徴とする鋼管曲げ加工装置。
【0014】
(2)前記圧縮力付加手段が、前記加熱された鋼管に圧縮力が付加されたときの塑性中立軸が所定の半径を形成するように、圧縮力を前記加熱された鋼管に付加するように制御されることを特徴とする前記(1)記載の鋼管曲げ加工装置。
【0015】
(3)前記圧縮力付加手段が、ワイヤロープ又はチェーンによって、前記加熱された鋼管に圧縮力を付加する手段であることを特徴とする前記(1)又は(2)記載の鋼管曲げ加工装置。
【0016】
(4)鋼管の外周面の一部を環状に加熱する工程と、前記加熱する工程により加熱された加熱部に、その軸方向の圧縮力を前記鋼管の軸を挟んでその両側から付加する工程と、前記加熱部近傍を環状に冷却する工程と、前記曲げられた鋼管が所定の曲げ半径を保つように前記鋼管を拘束する工程と、前記曲げられた鋼管と前記加熱部及び前記冷却手段により冷却された冷却部を、未だ曲げられていない鋼管の軸方向に相対移動させる工程とからなることを特徴とする鋼管曲げ加工方法。
【0017】
(5)前記加熱する工程により加熱された加熱部に、その軸方向の圧縮力を前記鋼管の軸を挟んでその両側から付加する工程が、前記加熱及び圧縮された部分の塑性中立軸が、所定の半径を有するように圧縮力を付加する工程であることを特徴とする前記(4)記載の鋼管曲げ加工方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明の鋼管曲げ加工装置及び方法は、ワイヤロープの位置を曲げようとする側の(パイプ外径/2)の範囲の外側に置くことができるので、ワイヤロープの曲げ直径Aを十分に大きくすることができ、ワイヤロープの疲労寿命の向上ができるという利点がある。ボイラー鋼管の曲げ加工において、本発明を用いることにより曲げ加工による肉厚減少を防止でき、均熱曲げができるので、材料の節減および曲げ後の熱処理が不要となった。また本発明は、小口径パイプの小半径曲げ加工に限定されることなく大口径パイプの曲げ加工においても適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例により詳しく説明する。
【実施例1】
【0020】
図3に、外径D、長さLのパイプが半径R、曲げ角度θで曲がったときの一般的な軸方向変形挙動を示す。曲げる前と曲げた後において、軸方向長さLが変化しない位置の半径を塑性中立半径bとする。半径bより大きい位置においては軸方向に伸びが生じ、半径bより小さい位置においては軸方向に圧縮されている。いま塑性中立半径bに注目すると、半径bの仮想円が仮想直線X−X′に接しながら互いに滑らずに転がることにより、曲げ半径R及び曲げ角度θで曲げられていると考えることができる。従ってこの運動は、半径bの円が直線X−X′に接しながらサイクロイド運動していると見ることができるのである。
【0021】
図4に半径bの円が直線X−X′に接しながら滑ることなく180°転がったときのサイクロイド運動の軌跡を示す。前記の図3に示した外径Dで長さLのパイプが、半径Rで曲がったときの塑性中立半径bの運動に注目して示している。
【0022】
図5では、半径aおよび半径bの2つの円が一体となって同心円に置かれたモデルを考える。その同心円が前記図4と同様に半径bの円が直線X−X′に接しながら互いに滑ることなく180°転がったときのサイクロイド運動の軌跡を示す。半径bの円が角度θだけ転がったときX方向の円板移動距離Sは、S=bθである。
【0023】
次に図5をXY座標上のサイクロイド運動として解析する。円板の半径をaとし曲げ管の塑性中立半径をbとする。パイプ先端は円板に固定されている。塑性中立半径bの円が直線X−X′と互いに滑ることなく右方向にころがるときの半径aの円板外周の座標(Xa、Ya)および塑性中立半径bの座標(Xb、Yb)のサイクロイド運動は次のように表すことができる。
【0024】
a:円板の半径、b:塑性中立半径、θ:ころがり角度、S:ころがり距離、λ:a/b、D:パイプ外径とすると、
Xa=b(θ−λsinθ)、Ya=b(λcosθ−1)
Xb=b(θ―sinθ)、Yb=b(cosθ−1)
図6には半径aおよび半径bの円板が一体となって同心円に置かれたモデルを考える。このモデルにおいて半径bの円が直線X−X′に接しながら互いに滑ることなく角度θだけ転がったときのサイクロイド運動を示す。このとき半径aの円板の外周にはワイヤロープを案内する溝があり、その溝に沿ってワイヤロープが巻かれている。転がる前のワイヤロープの両端末をFおよびGとし、円板が角度θだけ転がった後のワイヤロープの両端末をF′およびG′とする。端末Fの移動距離は(a+b)θであり、端末Gの移動距離は(a−b)θである。従って逆に言えば、端末Fを(a+b)θだけ引張り、端末Gを(a−b)θだけ繰り出せば、半径bの円板は直線X−X′に接しながら滑ることなく角度θだけ転がり、S=bθだけ移動することになる。従って以上のことから、図5のようにワイヤロープを操作すれば図1の曲げ加工が実行できることがわかる。以下、具体的にその方法について述べる。
【0025】
図7に本発明の課題であった、「ワイヤロープの位置を曲げようとする側の(パイプ外径/2)の範囲の外側に置く」ための原理を示す。パイプの両端に押圧板を置き、パイプを高周波加熱コイルにより円環状に加熱する。次に(パイプ外径/2)の範囲の外側に圧縮荷重WFおよびWGを負荷する。圧縮荷重WFおよびWGの総和W=WF+WGは、パイプ加熱部を十分に圧縮できる大きさの荷重である。圧縮荷重WFによる押圧板の移動量ΔLFおよび圧縮荷重WGによる押圧板の移動量ΔLGの関係は、ΔLF>ΔLGである。このようにしてパイプを軸方向に圧縮すると、パイプは曲げ角度θに曲げられる。次にこの原理を具体化した装置の構造を以下に説明する。
【0026】
図1に本発明の構造を示す。外径Dのパイプ1はクランプ2により半径aの円板4に固着されている。高周波加熱コイル11によりパイプ1の外周を円環状に加熱し、同コイルからパイプ1の外周を円環状に冷却するための冷却水17が噴出している。円板4の外周にはワイヤロープ7を案内する溝が掘られており、そのワイヤロープ7の両端はジャッキ8およびジャッキ9と結合されている。いま、ジャッキ8および9に引張り力を発生させて円板4を図の右方向に引き寄せるとパイプ1には軸方向の圧縮力が発生する。するとパイプ加熱部12の変形抵抗は隣接している非加熱部のパイプ1の変形抵抗よりも小さいので、加熱部12にのみ塑性変形が集中する。このときジャッキ8および9の操作は次の様にして行う。
【0027】
半径bの仮想円が図の右方向に反時計回りで転がるときの直線移動距離をSとすると、半径bの仮想円が直線X−X′に接しながら互いに滑らないで、S=bθの関係をもって反時計回りで転がるようにジャッキ8および9の操作すると同時に、加熱コイル11をSだけ右へ移動する。するとパイプ1は曲げ半径R、曲げ角度θで曲がり、長さbθだけ加熱コイルを通過して曲げられるのである。尚、曲げが進行するに従って曲がり部の外側半径部に順次に拘束板6を装着することにより、曲げ部の変形を防止する。
【0028】
前記の操作は半径bの仮想円が、これと接する仮想直線と互いに滑らずに反時計回りに転がるようにジャッキ8および9を操作することであるから、半径bの仮想円板がサイクロイド運動をしていることになる。従って、半径bの仮想円板をサイクロイド運動させるためのジャッキ8および9の操作を
ジャッキ8の引張り長さ ΔLF=(a+b)θ
ジャッキ9の繰り出し長さΔLG=(a−b)θ
とすることにより実現される。
【0029】
前記までは半径bの仮想円が、これと接する仮想直線と「すべらないで」反時計回りに転がるようにジャッキ8および9を操作した。次に応用として、半径bの仮想円が、これと接する仮想直線と「すべりながら」時計回りに転がるようにジャッキを操作することもできる。
【0030】
すべりながら転がる態様としてはS>bθおよびS<bθの2つがある。
【0031】
S>bθとする場合はΔLFおよびΔLGの長さを同じ比率で増加させる。すると塑性中立半径bが増大し、パイプを押し縮める効果が増大するので曲がり部の肉厚は、S=bθの場合より増加する。
【0032】
S<bθとするときはΔLFおよびΔLGの長さを同じ比率で減少させる。すると塑性中立半径bが減少し、パイプを押し縮める効果が減少するので曲がり部の肉厚は、S=bθの場合より減少する。さらにもう一つのすべりながら転がる態様としては、ΔLFおよびΔLGの長さをそれぞれ異なる比率で減少あるいは増加させることもできる。
【0033】
図2は、図1と構造が同じである。図1においては架台10を固定し円板4を移動させているが、図2はこれと逆に架台10を距離Sだけ移動させ、円板4は固定したものである。図1および図2ともにジャッキ8および9の運動は同じである。
【0034】
本発明は以上述べたような構造であるから、ワイヤロープの配置位置を、曲げようとする側の(パイプ外径/2)の範囲の外側に置くことができるので、ワイヤロープの曲げ直径A=2aを十分に大きくすることが可能となった。これによりワイヤロープの疲労寿命を向上することとなる。
【0035】
更に、従来に比較して加工後の管の減肉率と曲げ半径の制御が容易な鋼管曲げ加工装置及び鋼管曲げ加工方法を提供することができる。
【実施例2】
【0036】
図8に第2の実施例を示す。曲げようとするパイプ1は前部押圧板2と後部押圧板3に固着されており、前部押圧板2は円板4に固着され、後部押圧板3は架台10に固着されている。円板4は台車13に載せられており、円板の外周はスプロケット加工されていてチェーン7を介して引張りジャッキ8および繰り出し9につながれている。引張りジャッキ8および繰り出しジャッキ9は架台10に固定されており、引張りジャッキ8は引張り速度V1Fおよび引張り力WFを発生し、繰り出しジャッキ9は繰り出し速度V1Gおよび引張り力WGを発生することによりパイプ1を軸方向に圧縮する。このときジャッキ8の引張り速度V1Fはジャッキ9の繰り出し速度V1Gよりも大きく設定している。台車13はレール15の上を車輪14で自在に走行できる。加熱コイルおよび冷却コイルは、パイプの円周を局部的に狭い幅で加熱冷却しながら図外の移動装置により速度V2でパイプの軸方向に移動することにより、加熱部12を狭い幅に保っている。すると加熱部12は集中的に軸圧縮されるのであるが、加熱部断面の軸方向圧縮速度は不均等な傾きを与えられているので、圧縮速度の傾きによる圧縮量の傾きに応じて圧縮されるから、加熱部は曲げ角度θ曲げ半径Rをもつ形状に曲がる。このような局部的な圧縮加工が連続的に行われるので曲げ加工は連続して進行する。円板4には拘束板6を挿入する穴5があり、曲がり部の外側半径部分に拘束板6を挿入することにより曲がり部の変形を防止している。図9は円板4が1枚で構成された実施例であって、パイプ1を片持ちで支えている。図10は円板4が2枚で構成された実施例であって、パイプ1を両持ちで支えている。
【0037】
以上述べたように、チェーンを使用した場合においても、本発明の鋼管曲げ加工装置及び鋼管曲げ加工方法を実現でき、同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施例1の装置を示す図
【図2】本発明の実施例1の他の装置を示す図
【図3】曲げ加工によるパイプの軸方向長さ変化量と塑性中立半径の説明図
【図4】塑性中立半径bのサイクロイド運動の説明図
【図5】半径aおよびbからなる同心円のサイクロイド運動説明図
【図6】半径aの円板を操作して半径bの円板をサイクロイド運動させる説明図
【図7】パイプ圧縮荷重の力点を(パイプ外径/2)の外側に置く説明図
【図8】本発明の実施例2の装置を示す図
【図9】実施例2において、円板4を1枚の構成とした装置の説明図
【図10】実施例2において、円板4を2枚の構成とした装置の説明図
【図11】従来の小口径パイプの曲げ加工方法を示す図
【図12】特許文献1のワイヤロープ位置の説明図
【図13】ワイヤロープの曲げ直径Aの説明図である。
【図14】ワイヤロープの断面形状と上素線径の説明図
【符号の説明】
【0039】
1 パイプ
2 前部押圧板
3 後部押圧板
4 円板
5 拘束板挿入穴
6 拘束板
7 ワイヤロープ、チェーンなどの索条
8 引張りジャッキ
9 繰り出しジャッキ
10 架台
11 高周波加熱コイル
12 加熱部
13 走行台車
14 車輪
15 レール
16 サポートローラー
17 冷却水
a 円板4の半径
A ワイヤロープの曲げ直径
b 塑性中立半径
R 曲げ半径
θ 曲げ角度
D パイプの外径
e 特許文献1のワイヤロープ偏心位置
WF 引張りジャッキ8の引張り荷重
WG 繰り出しジャッキ9の引張り荷重
W 引張りジャッキ8の引張り荷重と繰り出しジャッキ9の引張り荷重の和
ΔLF 引張りジャッキ8の引張り長さ
ΔLG 繰り出しジャッキ9の繰り出し長さ
V1F 引張りジャッキ8の引張り速度
V1G 繰り出しジャッキ9の繰り出し速度
V2 パイプと高周波加熱コイルの相対移動速度および走行台車の移動速度
S パイプと高周波加熱コイルの相対移動距離および走行台車の移動距離
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管の外周面の一部を環状に加熱する加熱手段と、
前記加熱部に圧縮力を付加する圧縮力付加手段と、
前記加熱手段により加熱される加熱部近傍を環状に冷却する冷却手段と、
前記圧縮力付加手段の力点の位置を、前記鋼管加熱部の軸を挟んでその両側に保ち、前記圧縮力の方向を前記加熱部の軸方向と平行に保ちながら、前記鋼管加熱部を挟んだその両側の鋼管の作用点に圧縮力を付与するための圧縮力案内部材と、
曲げられた鋼管が所定の曲げ半径を保つように前記鋼管を拘束する拘束部材と、
前記曲げられた鋼管と前記加熱手段と前記冷却手段とを、未だ曲げられていない鋼管の軸方向へ相対移動させる駆動手段とからなることを特徴とする鋼管曲げ加工装置。
【請求項2】
前記圧縮力付加手段が、前記加熱された鋼管に圧縮力が付加されたときの塑性中立軸が所定の半径を形成するように、圧縮力を前記加熱された鋼管に付加するように制御されることを特徴とする請求項1記載の鋼管曲げ加工装置。
【請求項3】
前記圧縮力付加手段が、ワイヤロープ又はチェーンによって、前記加熱された鋼管に圧縮力を付加する手段であることを特徴とする請求項1又は2記載の鋼管曲げ加工装置。
【請求項4】
鋼管の外周面の一部を環状に加熱する工程と、
前記加熱する工程により加熱された加熱部に、その軸方向の圧縮力を前記鋼管の軸を挟んでその両側から付加する工程と、
前記加熱部近傍を環状に冷却する工程と、
前記曲げられた鋼管が所定の曲げ半径を保つように前記鋼管を拘束する工程と、
前記曲げられた鋼管と前記加熱部及び前記冷却手段により冷却された冷却部を、未だ曲げられていない鋼管の軸方向に相対移動させる工程とからなることを特徴とする鋼管曲げ加工方法。
【請求項5】
前記加熱する工程により加熱された加熱部に、その軸方向の圧縮力を前記鋼管の軸を挟んでその両側から付加する工程が、前記加熱及び圧縮された部分の塑性中立軸が、所定の半径を有するように圧縮力を付加する工程であることを特徴とする請求項4記載の鋼管曲げ加工方法。
【請求項1】
鋼管の外周面の一部を環状に加熱する加熱手段と、
前記加熱部に圧縮力を付加する圧縮力付加手段と、
前記加熱手段により加熱される加熱部近傍を環状に冷却する冷却手段と、
前記圧縮力付加手段の力点の位置を、前記鋼管加熱部の軸を挟んでその両側に保ち、前記圧縮力の方向を前記加熱部の軸方向と平行に保ちながら、前記鋼管加熱部を挟んだその両側の鋼管の作用点に圧縮力を付与するための圧縮力案内部材と、
曲げられた鋼管が所定の曲げ半径を保つように前記鋼管を拘束する拘束部材と、
前記曲げられた鋼管と前記加熱手段と前記冷却手段とを、未だ曲げられていない鋼管の軸方向へ相対移動させる駆動手段とからなることを特徴とする鋼管曲げ加工装置。
【請求項2】
前記圧縮力付加手段が、前記加熱された鋼管に圧縮力が付加されたときの塑性中立軸が所定の半径を形成するように、圧縮力を前記加熱された鋼管に付加するように制御されることを特徴とする請求項1記載の鋼管曲げ加工装置。
【請求項3】
前記圧縮力付加手段が、ワイヤロープ又はチェーンによって、前記加熱された鋼管に圧縮力を付加する手段であることを特徴とする請求項1又は2記載の鋼管曲げ加工装置。
【請求項4】
鋼管の外周面の一部を環状に加熱する工程と、
前記加熱する工程により加熱された加熱部に、その軸方向の圧縮力を前記鋼管の軸を挟んでその両側から付加する工程と、
前記加熱部近傍を環状に冷却する工程と、
前記曲げられた鋼管が所定の曲げ半径を保つように前記鋼管を拘束する工程と、
前記曲げられた鋼管と前記加熱部及び前記冷却手段により冷却された冷却部を、未だ曲げられていない鋼管の軸方向に相対移動させる工程とからなることを特徴とする鋼管曲げ加工方法。
【請求項5】
前記加熱する工程により加熱された加熱部に、その軸方向の圧縮力を前記鋼管の軸を挟んでその両側から付加する工程が、前記加熱及び圧縮された部分の塑性中立軸が、所定の半径を有するように圧縮力を付加する工程であることを特徴とする請求項4記載の鋼管曲げ加工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−131867(P2009−131867A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−308706(P2007−308706)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(398008284)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(398008284)
【Fターム(参考)】
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