説明

鋼管鉄塔における腹材内除錆装置

【課題】腹材内に発生した錆を除去する技術を提供することにある。
【解決手段】腹材用鋼管P2aの端部から挿入可能な径の支持本体部2と、回動部3と、ホルダ部4と、グラインダ5とを備え、支持本体部2、回動部3、ホルダ部4、グラインダ5は支持本体部2の外周面2aの径以下であり、固定ユニット6は固定シュー61を腹材用鋼管P2aの内周面に押し付けて支持本体部2を腹材用鋼管P2aに固定すべく駆動され、回動部3は連結部31の回りに回動駆動され、ホルダ部4は揺動ブラケット42及び支持ブラケット34に挿通するヒンジピン30の回りに揺動駆動され、グラインダ5はモータ部51、研削ヘッド52とを有し、固定ユニット6、回動部3、ホルダ部4は可撓索71、72、73によって駆動され、可撓索71、72、73は腹材用鋼管P2aの外側に延在する構成になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主材を構成する鋼管に比して径の細い鋼管を備えた腹材内の錆を取り除くための鋼管鉄塔における腹材内除錆装置に関する。
【背景技術】
【0002】
送電用鉄塔や通信用鉄塔等を鋼管によって構成したものがある。例えば通信用鋼管鉄塔としては、図11に示すような鋼管鉄塔Tを用いたものが知られている。この鋼管鉄塔Tは、複数の主材P1が複数の腹材P2によって連結された構造になっている。各主材P1は、主材用鋼管P1aを上下に複数連結したもので構成されている。腹材P2は、図11及び図12(a)に示すように、水平材aや斜部材b等として用いられるようになっており、腹材用鋼管P2aと、この腹材用鋼管P2aの両端部に溶接により設けられた継手P2bとを備えた構成になっている。
【0003】
腹材用鋼管P2aは、主材用鋼管P1aに比して径の細いものが採用されている。継手P2bとしては、図12(b)に示すように、例えば鋼板をU字形状に湾曲成形したものが用いられている。腹材用鋼管P2aの各端部には、図12(c)に示すように、継手P2bの両側に開口部P2cが形成された状態になっている。各開口部P2cは、腹材用鋼管P2aの端部内周縁と、継手P2bの一方又は他方の面とによって弓形状に形成されていると共に、継手P2bを介して左右対称に形成されている。
【0004】
また、主材P1には、腹材P2の継手P2bとの連結を図るための例えばガセットプレートP1bが溶接により設けられている。ガセットプレートP1bと継手P2bとは、ボルト及びナットによって連結されるようになっている。
【0005】
ところで、上述した主材P1や腹材P2等の各部材については、溶融亜鉛鍍金等により、十分な防錆処理が施されているが、長期にわたって使用することにより、主材P1や腹材P2の内外面に錆が生ずることがある。外面に発生した錆については比較的簡単に取り除くことができるが、内面に発生した錆については何らかの装置を用いない限り簡単に取り除くことはできない。そこで、本出願人は、主材P1に関して、その内面の錆を除去する特殊な除錆装置を開発し提供している(例えば特許文献1)。
【0006】
しかし、上記除錆装置は、比較的径の太い主材用鋼管P1aを備えた主材P1に適用する上では好適であるが、主材用鋼管P1aより径の細い腹材用鋼管P2aを備えた腹材P2内の錆を除去することができなかった。即ち、主材用鋼管P1aより径の細い腹材用鋼管P2aを備えた腹材P2内に発生した錆を除去するためには、更に新たな技術の開発が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−286114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、主材用鋼管より径の細い腹材用鋼管を備えた腹材内に発生した錆を除去することのできる鋼管鉄塔における腹材内除錆装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、主材用鋼管に比して径の細い腹材用鋼管を備えた腹材内の錆を除去するための鋼管鉄塔における腹材内除錆装置であって、
前記腹材用鋼管の端部から当該腹材用鋼管内に挿入可能な径で細長く形成された支持本体部と、この支持本体部の長手方向の一端部に回動自在に設けられた回動部と、この回動部に揺動自在に設けられたホルダ部と、このホルダ部によって保持されたグラインダとを備え、前記支持本体部、前記回動部、前記ホルダ部及び前記グラインダが直線状に延在した状態において、全体が支持本体部の外周面の径以下の径となるように構成されてなり、前記支持本体部は、当該支持本体部を腹材用鋼管に固定する固定ユニットを有しており、前記固定ユニットは、前記支持本体部の外周面における周方向の少なくとも3つの位置に配置された固定シューを有し、当該各固定シューを前記腹材用鋼管の内周面に押し付けることにより、当該支持本体部を腹材用鋼管内の所定の位置に固定するように駆動されるようになっており、前記回動部は、前記支持本体部に対して回動自在に連結された連結部と、ヒンジピン嵌合用の孔が形成された支持ブラケットとを有し、前記連結部の回りに回動するように駆動されるようになっており、前記ホルダ部は、前記ヒンジピンと嵌合する孔が形成された揺動ブラケットを有し、当該揺動ブラケット及び前記支持ブラケットの各孔に挿通された前記ヒンジピンの回りに揺動するように駆動されるようになっており、前記グラインダは、前記ホルダ部より保持されるモータ部と、このモータ部によって回転駆動され、前記ホルダ部の揺動によって少なくとも前記腹材用鋼管の内周面に当接することになる研削ヘッドとを有しており、前記固定ユニット、前記回動部及び前記ホルダ部は、それぞれに対応するように設けられた可撓索によって個々に駆動されるようになっており、前記各可撓索は、前記腹材用鋼管内に挿入された状態の支持本体部を介して当該腹材用鋼管から外側に延在するように長く形成されていることを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記固定ユニットは、前記支持本体部に軸方向に移動自在に設けられた移動部材と、中間部がピンを介して前記支持本体部に揺動自在に連結され、一端部が前記移動部材と共に移動すべく当該移動部材に係合され、他端部が前記固定シューに連結された揺動アームとを備えており、前記固定ユニットを駆動する前記可撓索は、一端部が前記移動部材に連結され、他端側が前記支持本体部の長手方向の他端部から外側に導かれるように設けられており、前記支持本体部の外部から前記移動部材を移動駆動することによって、前記揺動アームを前記ピンの回りに揺動させ、前記固定シューを前記支持本体部の外周面の位置から前記腹材用鋼管の内周面の位置に移動させることが可能になっていることを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記回動部は、前記連結部と同軸状に形成されたプーリ部を有しており、前記回動部を駆動する前記可撓索は、中間部が前記プーリ部に巻回され、一端側及び他端側が前記支持本体部の外周面に形成された案内溝部を介して当該支持本体部の長手方向の他端部から外側に導かれるように設けられており、前記支持本体部の外部から前記プーリ部を回動駆動することによって、前記回動部を連結部の回りに回動させることが可能になっていることを特徴としている。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記支持本体部には軸方向に貫通孔が形成され、前記回動部には前記貫通孔に連通する開口部が形成されており、前記ホルダ部を駆動する前記可撓索は、一端部が当該ホルダ部の基端部に連結され、他端側が前記開口部及び貫通孔を通って支持本体部の長手方向の他端部から外側に導かれるように設けられており、前記支持本体部の外部から前記ホルダ部の基端部を移動駆動することによって、前記ホルダ部を前記ヒンジピンの回りに揺動させることが可能になっていることを特徴としている。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れかに記載の発明において、前記各可撓索のそれぞれをそれぞれの長手方向に変位させる操作レバーを有する制御装置を備えていることを特徴としている。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れかに記載の発明において、前記固定シューが前記支持本体部の外周面から外側に遠ざかる方向に移動するのを許容し、当該遠ざかる方向に対して逆方向に移動するのを阻止する逆動阻止手段と、この逆動阻止手段による逆動阻止状態を解除する逆動阻止解除手段とを備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、腹材用鋼管の端部から当該腹材用鋼管内に挿入可能な径で細長く形成された支持本体部と、この支持本体部の長手方向の一端部に回動自在に設けられた回動部と、この回動部に揺動自在に設けられたホルダ部と、このホルダ部によって保持されたグラインダとを備え、支持本体部、回動部、ホルダ部及びグラインダが直線状に延在した状態において、全体が支持本体部の外周面の径以下の径となるように構成されているので、その全体を腹材用鋼管の端部から当該腹材用鋼管内に挿入することができ、腹材用鋼管の内周面や、例えば腹材用鋼管に設けられた継手の当該腹材用鋼管内の部分に生じた錆をグラインダによって除去することができる。
【0016】
また、支持本体部は、当該支持本体部を腹材用鋼管に固定する固定ユニットを有しており、固定ユニットは、支持本体部の外周面における周方向の少なくとも3つの位置に配置された固定シューを有し、当該各固定シューを腹材用鋼管の内周面に押し付けることにより、当該支持本体部を腹材用鋼管内の所定の位置に固定するように駆動されるようになっているので、当該固定ユニットによって、支持本体部を腹材用鋼管内の所定の位置に確実に固定することができる。
【0017】
更に、回動部は、支持本体部に対して回動自在に連結された連結部と、ヒンジピン嵌合用の孔が形成された支持ブラケットとを有し、連結部の回りに回動するように駆動されるようになっており、ホルダ部は、ヒンジピンと嵌合する孔が形成された揺動ブラケットを有し、当該揺動ブラケット及び支持ブラケットの各孔に挿通されたヒンジピンの回りに揺動するように駆動されるようになっており、グラインダは、ホルダ部によって保持されるモータ部と、このモータ部によって回転駆動され、ホルダ部の揺動によって少なくとも腹材用鋼管の内周面に当接することになる研削ヘッドとを有しているので、ホルダ部を揺動駆動することにより、研削ヘッドを少なくとも腹材用鋼管の内周面に簡単に押し当てることができると共に、回動部を回動駆動することにより、研削ヘッドを少なくとも腹材用鋼管の内周面における周方向の異なる位置に簡単に移動することができる。従って、少なくとも腹材用鋼管の内周面に発生した錆を簡単に取り除くことができる。
【0018】
また、固定ユニット、回動部及びホルダ部は、それぞれに対応するように設けられた可撓索によって個々に駆動されるようになっており、各可撓索は、腹材用鋼管内に挿入された状態の支持本体部を介して当該腹材用鋼管から外側に延在するように長く形成されているので、腹材用鋼管の外側から各可撓索を操作することにより、固定ユニット、回動部及びホルダ部のそれぞれを個々に駆動することができる。
【0019】
しかも、これらの固定ユニット、回動部及びホルダ部を駆動する力は各可撓索を介して供給することができ、固定ユニット、回動部及びホルダ部にこれらを駆動するためのモータ等のアクチュエータを設ける必要がないので、固定ユニットを備えた支持本体部の小径化及び小型化を図ることができると共に、回動部及びホルダ部の小径化及び小型化を図ることができる。従って、より小径の腹材用鋼管を有する腹材内の錆を除去することができるという顕著な効果を奏する。
【0020】
請求項2に記載の発明によれば、固定ユニットは、支持本体部に軸方向に移動自在に設けられた移動部材と、中間部がピンを介して支持本体部に揺動自在に連結され、一端部が移動部材と共に移動すべく当該移動部材に係合され、他端部が固定シューに連結された揺動アームとを備えており、固定ユニットを駆動する可撓索は、一端部が移動部材に連結され、他端側が支持本体部の長手方向の他端部から外側に導かれるように設けられており、支持本体部の外部から移動部材を移動駆動することによって、揺動アームをピンの回りに揺動させ、固定シューを支持本体部の外周面の位置から腹材用鋼管の内周面の位置に移動させることが可能になっているので、可撓索をその長手方向に移動すべく駆動するだけで簡単に、固定シューを支持本体部の外周面から腹材用鋼管の内周面まで大きく変位させることができると共に、当該固定シューを腹材用鋼管の内周面に押し付けることができる。即ち、可撓索をその長手方向に移動駆動するだけで簡単に、支持本体部を腹材用鋼管に固定することができる。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、回動部は、連結部と同軸状に形成されたプーリ部を有しており、回動部を駆動する可撓索は、中間部がプーリ部に巻回され、一端側及び他端側が支持本体部の外周面に形成された案内溝部を介して当該支持本体部の長手方向の他端部から外側に導かれるように設けられており、支持本体部の外部からプーリ部を回動駆動することによって、回動部を連結部の回りに回動させることが可能になっているので、可撓索を一端から他端に向けて又は他端から一端に向けて移動すべく駆動するだけで簡単に、回動部を左方向又は右方向に回動することができる。即ち、可撓索をその長手方向の一方又は他方に移動駆動するだけで簡単に、研削ヘッドを少なくとも腹材用鋼管の内周面における周方向の一方又は他方に移動することができる。
【0022】
請求項4に記載の発明によれば、支持本体部には軸方向に貫通孔が形成され、回動部には貫通孔に連通する開口部が形成されており、ホルダ部を駆動する可撓索は、一端部が当該ホルダ部の基端部に連結され、他端側が開口部及び貫通孔を通って支持本体部の長手方向の他端部から外側に導かれるように設けられており、支持本体部の外部からホルダ部の基端部を移動駆動することによって、ホルダ部をヒンジピンの回りに揺動させることが可能になっているので、可撓索をその長手方向に移動すべく駆動することにより簡単に、ホルダ部を揺動させることができる。即ち、可撓索をその長手方向に移動駆動するだけで簡単に、研削ヘッドを少なくとも腹材用鋼管の内周面に当接させて、その内周面から錆を取り除くことができる。
【0023】
請求項5に記載の発明によれば、各可撓索のそれぞれをそれぞれの長手方向に変位させる操作レバーを有する制御装置を備えているので、各可撓索に対応する操作レバーを操作するだけで、支持本体部を腹材用鋼管内の所定の位置に固定することができ、また研削ヘッドを少なくとも腹材用鋼管の内周面に押し当てることができ、更に当該研削ヘッドを少なくとも腹材用鋼管の周方向の所定の位置に移動することができる。即ち、各操作レバーを操作することによって腹材内に生じた錆を簡単に除去することができる。
【0024】
請求項6に記載の発明によれば、固定シューが支持本体部の外周面から外側に遠ざかる方向に移動するのを許容し、当該遠ざかる方向に対して逆方向に移動するのを阻止する逆動阻止手段と、この逆動阻止手段による逆動阻止状態を解除する逆動阻止解除手段とを備えているので、支持本体部を腹材用鋼管に固定する操作を行うだけで簡単に、その固定状態を維持することができると共に、逆動阻止解除手段を操作することによりその固定状態を簡単に解除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施例として示した鋼管鉄塔における腹材内除錆装置の要部断面図である。
【図2】同鋼管鉄塔における腹材内除錆装置を示す正面図である。
【図3】同鋼管鉄塔における腹材内除錆装置を示す平面図である。
【図4】同鋼管鉄塔における腹材内除錆装置を示す図であって、(a)は固定ユニットを示す要部断面図であり、(b)は同固定ユニットにおける移動部材と揺動アームとの係合部分を示す断面図であり、(c)は同係合部分を示す図であって(b)のC−C線に沿う断面図である。
【図5】同鋼管鉄塔における腹材内除錆装置を示す図であって、(a)は回動部を示す断面図であり、(b)は(a)のB−B線に沿う断面図である。
【図6】同鋼管鉄塔における腹材内除錆装置を示す図であって、(a)は回動部とホルダ部との連結部分を示す断面図であり、(b)は同連結部分を示す平面図である。
【図7】同鋼管鉄塔における腹材内除錆装置を示す図であって、図3のVII−VII線に沿う断面図である。
【図8】同鋼管鉄塔における腹材内除錆装置の固定操作レバー及び揺動操作レバーを示す制御装置の断面図である。
【図9】同鋼管鉄塔における腹材内除錆装置の回動操作レバーを示す制御装置の断面図である。
【図10】同鋼管鉄塔における腹材内除錆装置の制御装置を示す正面図である。
【図11】同鋼管鉄塔における腹材内除錆装置によって錆を除去する対象としての腹材を有する鋼管鉄塔を示す正面図である。
【図12】同鋼管鉄塔を示す図であって、(a)は主材及び腹材を示す要部拡大正面図であり、(b)は(a)のB矢視図であり、(c)は(b)のC矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明を実施するための形態を一実施例に基づいて詳細に説明する。
【0027】
この実施例で示す鋼管鉄塔における腹材内除錆装置1は、図1〜図3、図11及び図12に示すように、鋼管鉄塔Tの主材P1を構成する主材用鋼管P1aに比して径の細い腹材用鋼管P2aを備えた腹材P2内の錆を除去するためのものであり、腹材用鋼管P2aの端部の開口部P2cから当該腹材用鋼管P2a内に挿入可能な外径及び軸方向の長さを有することにより外観上細長く形成された支持本体部2と、この支持本体部2の長手方向の一端部に回動自在に設けられた回動部(旋回部)3と、この回動部3に揺動自在に設けられたホルダ部(除錆アーム)4と、このホルダ部4によって保持されたグラインダ5とを備え、支持本体部2、回動部3、ホルダ部4及びグラインダ5が直線状に延在した状態において、全体が支持本体部2の外周面2aの径以下の径となるように形成されている。
【0028】
支持本体部2は、図1〜図3に示すように、当該支持本体部2を腹材用鋼管P2a内の所定の位置に固定するための固定ユニット6を備えている。固定ユニット6は、支持本体部2の略円筒状の外周面2aにおける周方向にほぼ三等分した各位置に配置された固定シュー61を備えており、各固定シュー61を腹材用鋼管P2aの内周面に押し付けることにより、当該支持本体部2を腹材用鋼管P2a内の所定の位置に固定するようになっている。そして、この固定ユニット6は、図1に示すように、各固定シュー61を腹材用鋼管P2aの内周面に押し付けるべく、固定用ワイヤ(固定ユニット6を駆動する可撓索)71によって駆動されるようになっている。
【0029】
即ち、固定ユニット6は、図1及び図4(a)に示すように、固定シュー61と、支持本体部2に軸方向(長手方向)に移動自在に設けられた移動部材62と、一端部と他端部との間の中間部がピン65を介して支持本体部2に揺動自在に連結され、一端部が移動部材62と共に移動すべく当該移動部材62に係合され、他端部が固定シュー61に回動自在に連結された揺動アーム(保持アーム)63と、移動部材62を支持本体部2の一端側に移動すべく付勢(弾性力を付与)し、自由状態において固定シュー61を支持本体部2内に収納した状態に維持するコイルスプリング(弾性部材)64とを備えている。
【0030】
固定シュー61は、図1〜図3に示すように、所定の幅に形成されていると共に、支持本体部2の軸方向に長い棒状に形成されたのものであり、支持本体部2の外周面2aに形成された凹部に収納されるようになっている。この固定シュー61の外周面61aは、図2及び図3に示すように、当該固定シュー61が支持本体部2の凹部に収納された状態において、その支持本体部2の外周面2aと共にほぼ同一の径の外周面を構成するように形成されている。
【0031】
移動部材62は、円筒状に形成されたものであり、図1に示すように、支持本体部2内を軸方向に貫通する摺動孔(貫通孔)2bに嵌合して、当該支持本体部2の軸方向に移動自在となっている。この移動部材62には、図4に示すように、揺動アーム63の一端部が挿入されて係合状態となる係合孔62aが形成されている。
【0032】
係合孔62aには、コイルスプリング64の弾性力を揺動アーム63の一端部に、当該一端部の左右に設けた転輪631、631を介して付与するように形成された第1の段部62b、62b(図4(c)参照)が形成されていると共に、移動部材62がコイルスプリング64の弾性力に逆らって支持本体部2の他端側に移動させられた際に、揺動アーム63の一端部に、転輪631、631を介して力を作用させる第2の段部62c、62cが形成されている。
【0033】
揺動アーム63は、図1及び図4に示すように、支持本体部2の周方向における各固定シュー61に対応する位置に配置されていると共に、当該支持本体部2の軸方向に所定の間隔をおいた二位置に配置されており、合計六つのものが支持本体部2に設けられている。各揺動アーム63は、ピン65によって支持本体部2に揺動自在に連結される角部を境にして、一端側と他端側とがほぼ直角に屈曲した形状になっている。そして、支持本体部2の軸方向に配置された二つの各揺動アーム63の他端部で、一つの固定シュー61を支持することにより、固定シュー61を平行に維持しながら腹材用鋼管P2aの内周面まで移動すると共に、当該固定シュー61を腹材用鋼管P2aの内周面に押し当てることが可能になっている。なお、揺動アーム63の他端部は、ピン66を介して固定シュー61の内面部分に回動自在に連結されている。また、移動部材62の係合孔62aは、六つの揺動アーム63の各一端部に対応する位置に配置されている。
【0034】
固定用ワイヤ71は、一端部が移動部材62の基端部にピンを介して連結され、他端側が支持本体部2の長手方向の他端部に設けたワイヤ案内部21から外側に導かれるように設けられており、支持本体部2の外部から移動部材62を支持本体部2の他端側に移動させるべく駆動することによって、第2の段部62cを転輪631に押し当て、揺動アーム63をピン65の回りに揺動させ、固定シュー61を支持本体部2の外周面から腹材用鋼管P2aの内周面に移動させるようになっている。なお、ワイヤ案内部21は、支持本体部2の他端部を構成するものであり、当該支持本体部2と同等の外径に形成されている。
【0035】
また、固定用ワイヤ71は、図8に示すように、その他端部が制御装置8のケース8a内に導かれた上で、当該ケース8a内に設けた固定操作レバー81に連結されている。固定用ワイヤ71におけるワイヤ案内部21とケース8aとの間の部分は、屈曲自在な管状のアウターケーブル71a内に挿入されている。また、固定用ワイヤ71の他端部は、固定操作レバー81における揺動支持軸81aから当該固定操作レバー81の軸方向に所定の間隔をおいた位置にピンを介して連結されている。
【0036】
制御装置8には、固定操作レバー81の部位に、固定シュー61の逆動を阻止する逆動阻止機構85(逆動阻止手段)及び逆動阻止を解除する逆動阻止解除機構86(逆動阻止解除手段)が備えられている。
【0037】
逆動阻止機構85は、固定操作レバー81の操作方向が一の順方向に移動するのを許容し、逆方向に移動するのを阻止することによって、固定シュー61が腹材用鋼管P2aの内周面に近づく方向に移動するのを許容し、当該固定シュー61が腹材用鋼管P2aの内周面から離れる方向に逆動するのを阻止するようになっている。
【0038】
この場合、逆動阻止機構85は、固定操作レバー81と逆動阻止及び解除レバー84との共同作用により、逆動阻止の機能を発揮するようになっており、固定操作レバー81に形成された爪81bと、逆動阻止及び解除レバー84に形成された複数の歯84bとを備えた構成になっている。爪81bは、固定操作レバー81が順方向に移動する際には複数の各歯84bを容易に乗り越えることが可能な形状に形成され、逆方向に移動する際には各歯84b間の谷部に食い込んで当該歯84bを乗り越えることが不可能な形状に形成されている。一方、複数の各歯84bは、爪81bが揺動支持軸81aを中心として円弧を描くように移動することから、その円弧に沿って互いに隣接するように配置されていると共に、固定操作レバー81が順方向に移動した際には爪81bが容易に乗り越えることが可能な形状に形成され、固定操作レバー81が逆方向に移動した際には爪81bが谷部に食い込むことによって乗り越えることが不可能となる形状に形成されている。
【0039】
また、逆動阻止及び解除レバー84は、その一端部が回動支持軸84aによって回動自在に支持されていると共に、捩りコイルばね84cによって各歯84bが固定操作レバー81の爪81bに当接する方向に付勢されている。即ち、捩りコイルばね84cは、逆動阻止及び解除レバー84に対し、各歯84bを固定操作レバー81の爪81bに常時当接させるように弾性力を付与するようになっている。
【0040】
更に、逆動阻止及び解除レバー84は、制御装置8の操作パネル8bの内面に沿って延在し、その先端部が略直角に屈曲して、当該操作パネル8bから突出するように形成されている。そして、その先端部としての逆動阻止及び解除レバー84の操作部を操作パネル8b内に押し込むように操作することにより、当該逆動阻止及び解除レバー84が回動支持軸84aを中心にして下方に揺動し、これにより爪81bが歯84bから外れることにより、逆動阻止状態が解除されるようになっている。即ち、逆動阻止及び解除レバー84、回動支持軸84a及び捩りコイルばね84cは、逆動阻止機構85の構成要素となっていると共に、逆動阻止解除機構86の構成要素ともなっている。
【0041】
以上のように、逆動阻止及び解除レバー84は、固定操作レバー81と共同して作用することにより、固定操作レバー81を一の順方向に移動するのを許容し、逆方向に移動するのを阻止することによって、固定シュー61が腹材用鋼管P2aの内周面に近づく方向に移動するのを許容し、当該固定シュー61が腹材用鋼管P2aの内周面から離れる方向に逆動するのを阻止するようになっている。また、逆動阻止及び解除レバー84は、固定操作レバー81と共同して作用することにより、上記逆動阻止を解除するようにもなっている。
【0042】
回動部3は、図1及び図5に示すように、支持本体部2の一端部に回動自在に連結された連結部31と、この連結部31の一端側に当該連結部31と同軸状に形成されたプーリ部32と、このプーリ部32の一端側に当該プーリ部32と同軸状に形成されたフランジ部33と、このフランジ部33の一端側に当該フランジ部33の回転中心に対して偏心した位置に形成された支持ブラケット34とを一体に備えたもので構成されている。なお、支持ブラケット34は、後述するウエブプレート34aがフランジ部33の軸線と平行に延在している。
【0043】
連結部31は、支持本体部2に対してベアリングを介して円滑に回動するようになっている。支持ブラケット34は、図6に示すように、ヒンジピン30が嵌合する孔を有している。また、図1、図5及び図6に示すように、回動部3における連結部31、プーリ部32及びフランジ部33の回転中心部を貫通するように開口部3aが形成されている。開口部3aは、図1に示すように、支持本体部2の摺動孔2bに連通すると共に、移動部材62の軸心部を貫通する孔に連通している。この場合において、摺動孔2b及び移動部材62を貫通する孔は、支持本体部2において軸方向に延在する貫通孔となっている。そして、その貫通孔と、回動部3に形成された開口部3aは、同軸状に連通した状態になっている。
【0044】
また、回動部3は、図5に示すように、プーリ部32に巻回された回動用ワイヤ(回動部3を駆動する可撓索)72によって、連結部31の軸心回りに回動駆動されるようになっている。
【0045】
回動用ワイヤ72は、その中間部がプーリ部32に略一回半巻回された上で、その巻回部分の両側がガイドローラ22を介して支持本体部2の外周面に形成された案内溝部2cに導かれ、図1及び図9に示すように、当該案内溝部2cを介して支持本体部2の長手方向の他端部に導かれ、更にワイヤ案内部21を介して支持本体部2の外側に導かれるように設けられており、支持本体部2の外部から回動部3を連結部31の軸心回りに回動するようになっている。
【0046】
また、回動用ワイヤ72は、図9に示すように、一端部及び他端部が制御装置8のケース8a内に導かれた上で、当該ケース8a内に設けた回動操作レバー82に連結されている。回動用ワイヤ72におけるワイヤ案内部21とケース8aとの間の部分は、一端側及び他端側のそれぞれが屈曲自在な管状の各アウターケーブル72a内に挿入されている。また、回動用ワイヤ72の一端部及び他端部は、回動操作レバー82における揺動支持軸82aから当該回動操作レバー82の軸方向に所定の間隔をおいた位置であって、当該回動操作レバー82の揺動方向の左右の各位置にピンを介して連結されている。
【0047】
支持ブラケット34は、図6に示すように、四角形状に形成されたウエブプレート34aと、このウエブプレート34aの左右の各側縁に沿って平行に設けられたフランジプレート34bとによって断面コ字状に形成されており、ウエブプレート34a及び各フランジプレート34bの基端部がフランジ部33に一体的に連結され、各フランジプレート34bの先端部にヒンジピン30の嵌合する孔が同軸状に形成されている。
【0048】
ホルダ部4は、グラインダ5のモータ部51を保持する保持部41と、この保持部41の基端部41aにおける偏心した位置に設けられ、ヒンジピン30と嵌合する孔が形成された揺動ブラケット42とを有し、その揺動ブラケット42及び支持ブラケット34の各孔に挿通されたヒンジピン30の回りに揺動するようになっている。
【0049】
保持部41は、図1に示すように、グラインダ5のモータ部51を基端側から挿入して、当該モータ部51の外周面を確実に保持することが可能なように筒状に形成されている。この保持部41には、モータ部51を当該保持部41に固定するための止めネジ411が設けられている。止めネジ411は、保持部41の軸方向に所定の間隔をおいた二つの各位置に、周方向に180度の間隔をおいて設けることが可能になっている。この実施例では、保持部41の軸方向の先端側の位置に、周方向に180度間隔をおいて設けた止めネジ411でモータ部51を固定した例を図示している。保持部41の基端部41aには、モータ部51への電力供給等の配線その他を挿通するための開口部が形成されている。また、保持部41の先端部外周には、図3及び図7に示すように、カメラ装置412及び照明装置413が設けられている。
【0050】
カメラ装置412は、保持部41によって保持されたグラインダ5の研削ヘッド52を連続して撮影することが可能であると共に、当該研削ヘッド52に対応する位置より少なくとも前方の腹材用鋼管P2aの内周面を連続して撮影することが可能であり、かつ研削ヘッド52で腹材用鋼管P2aの内周面の錆を除去する状況を連続して撮影することが可能なように保持部41の外周面の所定の位置に設けられている。一方、照明装置413は、研削ヘッド52を照らし出すと共に、当該研削ヘッド52に対応する位置より少なくとも前方の腹材用鋼管P2aの内周面を照らし出すことにより、腹材用鋼管P2aの内周面に発生した錆をカメラ装置412で発見することを可能にすると共に、研削ヘッド52で錆を除去する状況等をカメラ装置412で撮影すことを可能にするように保持部41の外周面の所定の位置に設けられている。
【0051】
また、カメラ装置412と照明装置413とは、図7に示すように、保持部41を一端側から見た場合に、当該保持部41の左右に配置されている。このため、保持部41の先端側の部分は、カメラ装置412及び照明装置413が当該保持部41の外周面から外側に突出した構造になっている。しかし、カメラ装置412及び照明装置413の径が保持部41の径より細く形成されていること、及び当該カメラ装置412及び照明装置413が保持部41の断面における軸心Cに対して一方の側に偏心量eだけずれた位置に配置されていることから、保持部41にカメラ装置412及び照明装置413を設けた部分は、弓形状の開口部P2cから腹材用鋼管P2a内に容易に挿入することが可能な断面形状となっている。
【0052】
特に、この実施例において、保持部41は、カメラ装置412及び照明装置413を取り付ける外周部である左右の側面が互いに平行な平面によって形成されていると共に、これらの側面間に位置する外周部が当該側面に直交する平面部41bによって形成されている。そして、カメラ装置412及び照明装置413は、それぞれ四角筒状のカバー部Aによって覆われていると共に、その各カバー部Aの一側面A1が平面部41bと同一面状となるように、保持部41に取り付けられている。このため、保持部41は、平面部41bを継手P2bの一つの面に向けることで、弓形状の開口部P2cへの挿入が容易になっている。
【0053】
なお、止めネジ411は、保持部41におけるカメラ装置412及び照明装置413との干渉を避ける位置に配置されている。
【0054】
揺動ブラケット42は、図6に示すように、四角形状に形成されたウエブプレート42aと、このウエブプレート42aの左右の各側縁に沿って平行に設けられたフランジプレート42bとによって断面がコ字状に形成されており、ウエブプレート42a及び各フランジプレート42bの基端部が保持部41の基端部41aに一体的に連結され、各フランジプレート42bの先端部にヒンジピン30の嵌合する孔が同軸状に形成されている。なお、揺動ブラケット42は、ウエブプレート42aの外側を向く面が保持部41の外周面としての平面部41bと同一面状となるように基端部41aに連結され、これにより保持部41の軸心Cに対して偏心した位置に設けられている。
【0055】
また、互いに平行に配置された各フランジプレート42bの外面間の間隔は同じく平行に配置されたフランジプレート34bの内面間の間隔より僅かに狭くなっている。これにより、各フランジプレート42bは、各フランジプレート34bの間に納まると共に、当該フランジプレート34bに対してヒンジピン30を介して回動自在となっている。
【0056】
また、ウエブプレート42aの先端面42cがウエブプレート34aの先端面34cに当接することにより、支持ブラケット34に対する揺動ブラケット42の揺動が停止し、ホルダ部4が支持本体部2に対して同軸の直線状に延在するようになっている。即ち、ウエブプレート34a、42aの各先端面34c、42cは、ホルダ部4を支持本体部2に対して直線状に延在した状態に停止させるためのストッパとして機能するようになっている。
【0057】
更に、ウエブプレート42a及びウエブプレート34aにおける内側を向く面(以下、内面という)側には、当該各内面に弾性力を付与することにより、先端面34c、42c同士を互いに当接させる方向に付勢する捩りコイルばね43が設けられている。この捩りコイルばね43は、そのコイル状に巻かれた部分をヒンジピン30に嵌合させることで、当該ヒンジピン30の位置に保持され、ウエブプレート42a及びウエブプレート34aの各内面に弾性力を付与するようになっている。
【0058】
更にまた、保持部41の基端部41aには、当該基端部41aと一体的にブラケット41cが設けられている。このブラケット41cは、保持部41の軸心Cに対して揺動ブラケット42とは反対側に偏心した位置に配置されている。
【0059】
そして、ホルダ部4は、ブラケット41cに接続された揺動用ワイヤ(ホルダ部4を駆動する可撓索)73によってヒンジピン30回りに揺動駆動されるようになっている。揺動用ワイヤ73は、一端部がブラケット41cにピンを介して連結され、他端側が回動部3の開口部3a、支持本体部2の摺動孔2b及び移動部材62の軸心部を貫通する孔を通って支持本体部2の長手方向の他端部からワイヤ案内部21を介して外側に導かれるように設けられており、支持本体部2の外部からホルダ部4の基端部41aを移動駆動することによって、捩りコイルばね43の付勢力に抗してホルダ部4をヒンジピン30の回りに揺動駆動するようになっている。
【0060】
また、揺動用ワイヤ73は、図8に示すように、その他端部が制御装置8のケース8a内に導かれた上で、当該ケース8a内に設けた揺動操作レバー83に連結されている。揺動用ワイヤ73におけるワイヤ案内部21とケース8aとの間の部分は、屈曲自在な管状のアウターケーブル73a内に挿入されている。また、揺動用ワイヤ73の他端部は、揺動操作レバー83における揺動支持軸83aから当該揺動操作レバー83の軸方向に所定の間隔をおいた位置にピンを介して連結されている。
【0061】
グラインダ5は、図1に示すように、ホルダ部4の保持部41よって保持されるモータ部51と、このモータ部51によって回転駆動され、ホルダ部4の揺動によって少なくとも腹材用鋼管P2aの内周面に当接することになる研削ヘッド52とを有している。
【0062】
上述した固定用ワイヤ71、回動用ワイヤ72及び揺動用ワイヤ73は、腹材P2内に挿入された状態の支持本体部2を介して当該腹材P2から外側に延在するように長く形成されており、腹材P2の外部に配置した制御装置8の固定操作レバー81、回動操作レバー82及び揺動操作レバー83にそれぞれ連結されている。
【0063】
制御装置8は、図10に示すように、操作パネル8bに、照明装置413の電源スイッチ88a及び照度を調整するツマミ88bが設けられていると共に、カメラ装置412で撮影した映像を表示するモニタ画面89が設けられている。また、操作パネル8bには、上述した操作レバー81、82、83及び逆動阻止及び解除レバー84の先端部(操作部)が突出されている。なお、操作パネル8bには、各操作レバー81、82、83の先端部が直線状に移動可能なようにスリット状の長孔が形成されている。
【0064】
各操作レバー81、82、83は、その先端部を直線方向に移動することにより、各ワイヤ71、72、73のそれぞれをそれぞれの延在する方向に変位させ、固定ユニット6、回動部3及びホルダ部4を駆動することが可能になっている。また、逆動阻止及び解除レバー84は、その先端部を下方(操作パネル8bの内方に押し込む方向)に押すことにより、逆動阻止解除機構86が作動して逆動阻止機構85による逆動阻止を解除し、固定シュー61を腹材用鋼管P2aの内周面から離して支持本体部2の外周面2aの凹部に収納するようになっている。また、逆動阻止及び解除レバー84の先端部を押す量を加減しながら、固定操作レバー81の位置を調整することにより、固定シュー61を適当な位置に停止させることも可能である。この場合、逆動阻止及び解除レバー84の各歯84bが操作パネル8bの外側から視認可能になっており、爪81bが噛み込んだ歯84bの位置から固定シュー61の位置を推定することが可能である
【0065】
なお、グラインダ5を駆動及び停止するための電源スイッチは、操作パネル8b上に設けてもよく、また制御装置8以外の部位に設けてもよい。
【0066】
上記のように構成された鋼管鉄塔における腹材内除錆装置1においては、腹材用鋼管P2aの端部から当該腹材用鋼管P2a内に挿入可能な径で細長く形成された支持本体部2と、この支持本体部2の長手方向の一端部に回動自在に設けられた回動部3と、この回動部3に揺動自在に設けられたホルダ部4と、このホルダ部4によって保持されたグラインダ5とを備え、支持本体部2、回動部3、ホルダ部4及びグラインダ5が直線状に延在した状態において、全体が支持本体部2の外周面の径以下の径となるように構成されているので、その全体を腹材用鋼管P2aの端部から当該腹材用鋼管P2a内に挿入することができ、腹材用鋼管P2aの内周面や、継手P2bにおける腹材用鋼管P2a内の部分に生じた錆をグラインダ5によって除去することができる。
【0067】
また、支持本体部2は、当該支持本体部2を腹材用鋼管P2aに固定する固定ユニット6を有しており、固定ユニット6は、支持本体部2の外周面における周方向の少なくとも3つの位置に配置された固定シュー61を有し、当該各固定シュー61を腹材用鋼管P2aの内周面に押し付けることにより、当該支持本体部2を腹材用鋼管P2a内の所定の位置に固定するように固定用ワイヤ71によって駆動されるようになっているので、支持本体部2を腹材用鋼管P2a内の所定の位置に確実に固定することができる。
【0068】
更に、回動部3は、支持本体部2に対して回動自在に連結された連結部31と、孔にヒンジピン30が嵌合された支持ブラケット34とを有し、連結部31の回りに回動するように揺動用ワイヤ73によって駆動されるようになっており、ホルダ部4は、ヒンジピン30と嵌合する孔が形成された揺動ブラケット42を有し、当該揺動ブラケット42及び支持ブラケット34の各孔に挿通されたヒンジピン30の回りに揺動するように駆動されるようになっており、グラインダ5は、ホルダ部4によって保持されるモータ部51と、このモータ部51によって回転駆動され、ホルダ部4の揺動によって少なくとも腹材用鋼管P2aの内周面に当接することになる研削ヘッド52とを有しているので、ホルダ部4を揺動駆動することにより、研削ヘッド52を少なくとも腹材用鋼管P2aの内周面に簡単に押し当てることができると共に、回動部3を回転駆動することにより、研削ヘッド52を少なくとも腹材用鋼管P2aの内周面における周方向の異なる位置に簡単に移動することができる。従って、少なくとも腹材用鋼管P2aの内周面に発生した錆を簡単に取り除くことができる。
【0069】
また、固定ユニット6、回動部3及びホルダ部4は、それぞれに対応するように設けられたワイヤ71、72、73によって個々に駆動されるようになっており、各ワイヤ71、72、73は、腹材用鋼管P2a内に挿入された状態の支持本体部2を介して当該腹材用鋼管P2aから外側に延在するように長く形成されているので、腹材用鋼管P2aの外側から各ワイヤ71、72、73を操作することにより、固定ユニット6、回動部3及びホルダ部4のそれぞれを個々に駆動することができる。
【0070】
しかも、これらの固定ユニット6、回動部3及びホルダ部4を駆動する力は各ワイヤ71、72、73を介して供給することができ、固定ユニット6、回動部3及びホルダ部4にこれらを駆動するためのモータ等のアクチュエータを設ける必要がないので、固定ユニット6を備えた支持本体部2の小径化及び小型化を図ることができると共に、回動部3及びホルダ部4についても小径化及び小型化を図ることができる。従って、より小径の腹材用鋼管P2aを有する腹材P2内の錆を除去する上で顕著な効果がある。
【0071】
また、固定ユニット6は、支持本体部2内に当該支持本体部2の軸方向に移動自在に設けられた移動部材62と、中間部がピン65を介して支持本体部2に揺動自在に連結され、一端部が移動部材62と共に移動すべく当該移動部材62の係合孔62aに係合され、他端部が固定シュー61にピン66を介して連結された揺動アーム63とを備えており、固定ユニット6を駆動する固定用ワイヤ71は、一端部が移動部材62に連結され、他端側が支持本体部2の長手方向の他端部からワイヤ案内部21を介して外側に導かれるように設けられており、支持本体部2の外部から移動部材62を移動駆動することによって、揺動アーム63をピン65の回りに揺動させ、固定シュー61を支持本体部2の外周面の位置から腹材用鋼管P2aの内周面の位置に移動させることが可能になっているので、固定用ワイヤ71をその長手方向に移動すべく駆動するだけで簡単に、固定シュー61を支持本体部2の外周面の位置から腹材用鋼管P2aの内周面まで大きく変位させることができると共に、当該固定シュー61を腹材用鋼管P2aの内周面に押し付けることができる。即ち、固定用ワイヤ71をその長手方向に移動駆動するだけで簡単に、支持本体部2を腹材用鋼管P2aに固定することができる。
【0072】
更に、回動部3は、連結部31と同軸状に形成されたプーリ部32を有しており、回動部3を駆動する回動用ワイヤ72は、中間部がプーリ部32に巻回され、一端側及び他端側が支持本体部2の外周面に形成された案内溝部2cを介して当該支持本体部2の長手方向の他端部からワイヤ案内部21を介して外側に導かれるように設けられており、支持本体部2の外部からプーリ部32を回動駆動することによって、回動部3を連結部31の回りに回動させることが可能になっているので、回動用ワイヤ72を一端から他端に向けて又は他端から一端に向けて移動すべく駆動するだけで簡単に、回動部3を左方向又は右方向に回動することができる。即ち、回動用ワイヤ72をその長手方向の一方又は他方に移動駆動するだけで簡単に、研削ヘッド52を腹材用鋼管P2aの内周面における周方向の一方又は他方に移動することができる。
【0073】
一方、支持本体部2には軸方向に摺動孔2bが形成されていると共に、移動部材62にはその軸心を貫通する孔が形成され、回動部3には摺動孔2b及び移動部材62の軸心を貫通する孔に連通する開口部3aが形成されており、ホルダ部4を駆動する揺動用ワイヤ73は、一端部が当該ホルダ部4の基端部41aにブラケット41cを介して連結され、他端側が開口部3a及び摺動孔2b等を通って支持本体部2の長手方向の他端部からワイヤ案内部21を介して外側に導かれるように設けられており、支持本体部2の外部からホルダ部4の基端部41aを移動駆動することによって、ホルダ部4をヒンジピン30の回りに揺動することが可能になっているので、揺動用ワイヤ73をその長手方向に移動すべく駆動することにより簡単に、ホルダ部4を揺動させることができる。即ち、揺動用ワイヤ73をその長手方向に移動駆動するだけで簡単に、研削ヘッド52を腹材用鋼管P2aの内周面に当接させて、その内周面から錆を取り除くことができる。
【0074】
また、各ワイヤ71、72、73のそれぞれを長手方向に変位させる各操作レバー81、82、83を有する制御装置8を備えているので、例えば固定操作レバー81を操作するだけで、支持本体部2を腹材用鋼管P2a内の所定の位置に固定することができ、また揺動操作レバー83を操作するだけで、研削ヘッド52を腹材用鋼管P2aの内周面に押し当てることができ、更に回動操作レバー82を操作するだけで、当該研削ヘッド52を腹材用鋼管P2aの周方向の所定の位置に移動することができる。即ち、各操作レバー81、82、83を操作することによって腹材用鋼管P2aの内周面に生じた錆を簡単に除去することができる。また、腹材用鋼管P2a内に入り込んだ継手P2の錆も除去することができる。即ち、腹材P2内に生じた錆を除去することができる。
【0075】
そして、固定シュー61が支持本体部2の外周面から外側に遠ざかる方向に移動するのを許容し、当該遠ざかる方向に対して逆方向に移動するのを阻止する逆動阻止機構35と、この逆動阻止機構35による逆動阻止を解除する逆動阻止解除機構36とを備えているので、固定操作レバー81によって支持本体部2を腹材用鋼管P2aに固定する操作を行うだけで簡単に、その固定状態を維持することができると共に、逆動阻止及び解除レバー84を操作するだけで、逆動阻止解除機構36を作動させて、その固定状態を簡単に解除することができる。
【0076】
また、ホルダ部4の先端部には照明装置413及びカメラ装置412が設けられ、制御装置8にはカメラ装置412で撮影した映像を表示するモニタ画面89が設けられているので、腹材用鋼管P2aの内面や継手P2に生じた錆を容易に発見することができると共に、当該研削ヘッド52を移動して錆を容易に除去することができ、かつ錆を除去した後の状態を確認することができる。
【0077】
なお、上記実施例においては、内部の錆を除去する腹材P2として腹材用鋼管P2aの各端部にU字状の継手P2bを有するものを示したが、他の構造の継手を有する腹材に適用して、当該腹材内の錆を除去するようにしてもよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0078】
1 鋼管鉄塔における腹材内除錆装置
2 支持本体部
2a 外周面
2b 摺動孔(貫通孔)
2c 案内溝部
3 回動部
3a 開口部
4 ホルダ部
5 グラインダ
6 固定ユニット
8 制御装置
30 ヒンジピン
31 連結部
32 プーリ部
34 支持ブラケット
41 保持部
41a 基端部
42 揺動ブラケット
51 モータ部
52 研削ヘッド
61 固定シュー
62 移動部材
63 揺動アーム
65 ピン
71 固定用ワイヤ(固定ユニット6を駆動する可撓索)
72 回動用ワイヤ(回動部3を駆動する可撓索)
73 揺動用ワイヤ(ホルダ部4を駆動する可撓索)
81 固定操作レバー(操作レバー)
82 回動操作レバー(操作レバー)
83 揺動操作レバー(操作レバー)
84 逆動阻止及び解除レバー
85 逆動阻止機構(逆動阻止手段)
86 逆動阻止解除機構(逆動阻止解除手段)
P1 主材
P1a 主材用鋼管
P2 腹材
P2a 腹材用鋼管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主材用鋼管に比して径の細い腹材用鋼管を備えた腹材内の錆を除去するための鋼管鉄塔における腹材内除錆装置であって、
前記腹材用鋼管の端部から当該腹材用鋼管内に挿入可能な径で細長く形成された支持本体部と、この支持本体部の長手方向の一端部に回動自在に設けられた回動部と、この回動部に揺動自在に設けられたホルダ部と、このホルダ部によって保持されたグラインダとを備え、前記支持本体部、前記回動部、前記ホルダ部及び前記グラインダが直線状に延在した状態において、全体が支持本体部の外周面の径以下の径となるように構成されてなり、
前記支持本体部は、当該支持本体部を腹材用鋼管に固定する固定ユニットを有しており、
前記固定ユニットは、前記支持本体部の外周面における周方向の少なくとも3つの位置に配置された固定シューを有し、当該各固定シューを前記腹材用鋼管の内周面に押し付けることにより、当該支持本体部を腹材用鋼管内の所定の位置に固定するように駆動されるようになっており、
前記回動部は、前記支持本体部に対して回動自在に連結された連結部と、ヒンジピン嵌合用の孔が形成された支持ブラケットとを有し、前記連結部の回りに回動するように駆動されるようになっており、
前記ホルダ部は、前記ヒンジピンと嵌合する孔が形成された揺動ブラケットを有し、当該揺動ブラケット及び前記支持ブラケットの各孔に挿通された前記ヒンジピンの回りに揺動するように駆動されるようになっており、
前記グラインダは、前記ホルダ部より保持されるモータ部と、このモータ部によって回転駆動され、前記ホルダ部の揺動によって少なくとも前記腹材用鋼管の内周面に当接することになる研削ヘッドとを有しており、
前記固定ユニット、前記回動部及び前記ホルダ部は、それぞれに対応するように設けられた可撓索によって個々に駆動されるようになっており、
前記各可撓索は、前記腹材用鋼管内に挿入された状態の支持本体部を介して当該腹材用鋼管から外側に延在するように長く形成されていることを特徴とする鋼管鉄塔における腹材内除錆装置。
【請求項2】
前記固定ユニットは、前記支持本体部に軸方向に移動自在に設けられた移動部材と、中間部がピンを介して前記支持本体部に揺動自在に連結され、一端部が前記移動部材と共に移動すべく当該移動部材に係合され、他端部が前記固定シューに連結された揺動アームとを備えており、
前記固定ユニットを駆動する前記可撓索は、一端部が前記移動部材に連結され、他端側が前記支持本体部の長手方向の他端部から外側に導かれるように設けられており、前記支持本体部の外部から前記移動部材を移動駆動することによって、前記揺動アームを前記ピンの回りに揺動させ、前記固定シューを前記支持本体部の外周面の位置から前記腹材用鋼管の内周面の位置に移動させることが可能になっていることを特徴とする請求項1に記載の鋼管鉄塔における腹材内除錆装置。
【請求項3】
前記回動部は、前記連結部と同軸状に形成されたプーリ部を有しており、
前記回動部を駆動する前記可撓索は、中間部が前記プーリ部に巻回され、一端側及び他端側が前記支持本体部の外周面に形成された案内溝部を介して当該支持本体部の長手方向の他端部から外側に導かれるように設けられており、前記支持本体部の外部から前記プーリ部を回動駆動することによって、前記回動部を連結部の回りに回動させることが可能になっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼管鉄塔における腹材内除錆装置。
【請求項4】
前記支持本体部には軸方向に貫通孔が形成され、前記回動部には前記貫通孔に連通する開口部が形成されており、
前記ホルダ部を駆動する前記可撓索は、一端部が当該ホルダ部の基端部に連結され、他端側が前記開口部及び貫通孔を通って支持本体部の長手方向の他端部から外側に導かれるように設けられており、前記支持本体部の外部から前記ホルダ部の基端部を移動駆動することによって、前記ホルダ部を前記ヒンジピンの回りに揺動させることが可能になっていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のに記載の鋼管鉄塔における腹材内除錆装置。
【請求項5】
前記各可撓索のそれぞれをそれぞれの長手方向に変位させる操作レバーを有する制御装置を備えていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の鋼管鉄塔における腹材内除錆装置。
【請求項6】
前記固定シューが前記支持本体部の外周面から外側に遠ざかる方向に移動するのを許容し、当該遠ざかる方向に対して逆方向に移動するのを阻止する逆動阻止手段と、この逆動阻止手段による逆動阻止状態を解除する逆動阻止解除手段とを備えていることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の鋼管鉄塔における腹材内除錆装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2011−47237(P2011−47237A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198295(P2009−198295)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(306033025)日本鉄塔工業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】