説明

鋼製セグメントの製造方法

【課題】刃口を具備する鋼製セグメントの製造でありながら、偏った溶接入熱による変形を最少に抑えることができる鋼製セグメントの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】鉛直面拘束部材50を継手板12a、12bの外側面に仮り溶接し、刃口脇プレート22a、22bを鉛直面拘束部材50に仮り溶接した後、地中側主桁15に本溶接する。また、継手板12a、12bを連結する水平方向拘束部材40をこれらに仮り溶接した後、刃口外周プレート21をスキンプレート11と地中側主桁15とに本溶接する。さらに、前記拘束部材40、50を仮り溶接した状態で、刃口外周プレート21を刃口脇プレート22に本溶接してから、刃口脇プレート22を地中側主桁15に本溶接する。あるいは、刃口脇プレート22を継手板12a、12bに本溶接してから、刃口外周プレート21を刃口脇プレート22に本溶接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中構造物に用いられる鋼製セグメント、特に、都市型地下構造物の最下段に配置される刃口を具備する鋼製セグメントを製造するための、鋼製セグメントの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
都市型地下構造物(立坑、人孔、橋梁下部工、橋梁補強等)の施工方として、近接構造物や周辺の生活環境(地下水、振動、騒音等)に影響を与えず、施工性に優れ(施工スペースが狭く、施工期間が短く、部材が小型軽量等)且つ、適応範囲が広い(形状や大きさが任意に選択でき、また対応地盤が広範に渡る等)ことから、たとえば、アーバンリング圧入工法(登録商標)が多用されている。
かかるアーバンリング圧入工法は、平面視で円弧状または直線上の鋼製セグメントを工場において製造し、該鋼製セグメントを施工現場において相互に連結して環状(円形、小判形等)にして、該環状体を地中に圧入するものである。このとき、一方の環状体に他方の環状体を積層して地中に圧入したり、地中に圧入されている環状体の上に環状体を積層したり、さらに、これを繰り返して、所定の深さに到達する都市型地下構造物を構築するものである。そして、該鋼製セグメントの製造精度を高めるために、鋼製セグメントの組み立て用治具の考案が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】実公昭56−34854号公報(第2−3頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示された考案は、上下方向および左右方向(都市型地下構造物において鉛直方向および水平方向に相当する)で略対称な形状である鋼製セグメントを組み立てるための治具であるため、略対称な形状である鋼製セグメントを高精度に組み立てることができるものである。
しかしながら、かかる治具を用いて高精度に組み立てられた鋼製セグメントであっても、その一方(地中側に相当する)に土砂掘削部(以下「刃口」と称す)を溶接接合すると溶接入熱のアンバランスによって該高精度が維持できないという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、刃口を具備する鋼製セグメント(以下「セグメント」と称す)の製造でありながら、偏った溶接入熱による変形を最少に抑えることができる鋼製セグメントの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る鋼製セグメントの製造方法は、相互に接合して環状体に形成され、該環状体が地中に圧入され、地中に圧入された前記環状体に接合されて新たな環状体に形成され、さらに、該新たな環状体が地中に圧入されて形成される地下構造物に供される鋼製セグメントの製造方法であって、
対向する地中側主桁および地上側主桁と、対向する一対の継手板と、板材からなるスキンプレートとを溶接接合して一方側に開口部を具備する筐体を形成する工程と、
前記継手板の外側面に沿って前記地中側主桁の方向に突出する鉛直面拘束部材を、前記一対の継手板のそれぞれの外側面に仮り溶接する工程と、
該仮り溶接状態で、前記継手板の外側面に沿って前記地中側主桁の方向に突出して前記継手板に溶接接合される刃口脇プレートを、前記鉛直面拘束部材に仮り溶接する工程と、
該仮り溶接状態で、前記刃口脇プレートを前記継手板に溶接接合する工程と、
該刃口脇プレートの溶接接合が終了した後、前記鉛直面拘束部材を撤去する工程とを有することを特徴とする。
【0007】
(2)また、相互に接合して環状体に形成され、該環状体が地中に圧入され、地中に圧入された前記環状体に接合されて新たな環状体に形成され、さらに、該新たな環状体が地中に圧入されて形成される地下構造物に供される鋼製セグメントの製造方法であって、
対向する地中側主桁および地上側主桁と、対向する一対の継手板と、板材からなるスキンプレートとを溶接接合して一方側に開口部を具備する筐体を形成する工程と、
前記一対の継手板同士を連結するための水平方向拘束部材を、前記一対の継手板のそれぞれに仮り溶接する工程と、
該仮り溶接状態で、前記スキンプレートに平行で前記地中側主桁の方向に突出する刃口プレートを、前記スキンプレートの外周面と前記地中側主桁のスキンプレート寄りの端部とに溶接接合する工程と、
該刃口プレートの溶接接合が終了した後、前記水平方向拘束部材を撤去する工程とを有することを特徴とする。
【0008】
(3)また、相互に接合して環状体に形成され、該環状体が地中に圧入され、地中に圧入された前記環状体に接合されて新たな環状体に形成され、さらに、該新たな環状体が地中に圧入されて形成される地下構造物に供される鋼製セグメントの製造方法であって、
対向する地中側主桁および地上側主桁と、対向する一対の継手板と、板材からなるスキンプレートとを溶接接合して一方側に開口部を具備する筐体を形成する工程と、
前記一対の継手板同士を連結するための水平方向拘束部材を、前記一対の継手板のそれぞれに仮り溶接する工程と、
前記継手板の外側面に沿って前記地中側主桁の方向に突出する鉛直面拘束部材を、前記一対の継手板のそれぞれの外側面に仮り溶接する工程と、
前記継手板の外側面に沿って前記地中側主桁の方向に突出して前記継手板に溶接接合される刃口脇プレートを、前記鉛直面拘束部材に仮り溶接する工程と、
該仮り溶接状態で、前記スキンプレートに平行で前記地中側主桁の方向に突出する刃口プレートを、前記スキンプレートの外周面と前記地中側主桁のスキンプレート寄りの端部と前記刃口脇プレートのスキンプレート寄りの端部とに溶接接合する工程と、
前記刃口脇プレートを前記継手板に溶接接合する工程と、
該刃口脇プレートの溶接接合が終了した後、前記水平方向拘束部材および鉛直面拘束部材を撤去する工程とを有することを特徴とする。
【0009】
(4)また、相互に接合して環状体に形成され、該環状体が地中に圧入され、地中に圧入された前記環状体に接合されて新たな環状体に形成され、さらに、該新たな環状体が地中に圧入されて形成される地下構造物に供される鋼製セグメントの製造方法であって、
対向する地中側主桁および地上側主桁と、対向する一対の継手板と、板材からなるスキンプレートとを溶接接合して一方側に開口部を具備する筐体を形成する工程と、
前記一対の継手板同士を連結するための水平方向拘束部材を、前記一対の継手板のそれぞれに仮り溶接する工程と、
前記継手板の外側面に沿って前記地中側主桁の方向に突出する鉛直面拘束部材を、前記一対の継手板のそれぞれの外側面に仮り溶接する工程と、
前記継手板の外側面に沿って前記地中側主桁の方向に突出して前記継手板に溶接接合される刃口脇プレートを、前記鉛直面拘束部材に仮り溶接する工程と、
該仮り溶接状態で、前記刃口脇プレートを前記継手板に溶接接合する工程と、
前記スキンプレートに平行で前記地中側主桁の方向に突出する刃口プレートを、前記刃口脇プレートのスキンプレート寄りの端部と前記スキンプレートの外周面と前記地中側主桁のスキンプレート寄りの端部とに溶接接合する工程と、
該刃口プレートの溶接接合が終了した後、前記水平方向拘束部材および鉛直面拘束部材を撤去する工程とを有することを特徴とする。
【0010】
(5)さらに、前記水平方向拘束部材が、前記筐体の開口部側の端部で前記継手板の前記地中側主桁に近い位置に仮り溶接されることを特徴とする。
【0011】
(6)さらに、前記仮り溶接状態で、前記刃口プレートが前記継手板に溶接接合されることを特徴とする。
【0012】
(7)さらに、前記鉛直面拘束部材が仮り溶接された状態で、前記刃口プレートと前記地中側主桁とを連結するための刃口リブが設置されることを特徴とする。
【0013】
(8)さらに、前記枠体を形成する工程において、前記地中側主桁と前記地上側主桁とを連結する複数の縦リブが設置され、
前記スキンプレートを溶接接合する工程において、前記複数の縦リブの筐体の開口部側の端部にクラブガイドが設置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る鋼製セグメントの製造方法は以下の効果を奏する。
(i)鉛直面拘束部材を継手板に仮り溶接する工程と、該仮り溶接状態で刃口脇プレートを鉛直面拘束部材に仮り溶接する工程と、該仮り溶接状態で刃口脇プレートを地中側主桁に溶接接合する工程とを有するから、刃口脇プレートが鉛直面拘束部材によって拘束されるため、溶接入熱による刃口脇プレートの変形が最少に抑えられる(地中側主桁に対する垂直度が保証されるに同じ)。
【0015】
(ii)また、水平方向拘束部材を一対の継手板のそれぞれに仮り溶接する工程と、該仮り溶接状態で刃口プレートをスキンプレートの外周面と地中側主桁とに溶接接合する工程とを有するから、地中側主桁が水平方向拘束部材によって拘束されるため、溶接入熱による筐体の変形(捩れ、地中側主桁の平面視における曲率の変動等)が最少に抑えられる。すなわち、平面視で円弧状の鋼製セグメントの場合、外周側に溶接入熱による引っ張り力が作用しても、内周側が拘束される該円弧の曲率半径の増大(開く変形)が防止され、平面視で矩形状の鋼製セグメントの場合、一方側に溶接入熱による引っ張り力が作用しても、他方側が拘束される直線性が失われて一方側が凹部になるような変形が防止される。
【0016】
(iii)また、水平方向拘束部材と鉛直面拘束部材とが仮り溶接された状態で、まず、刃口プレートをスキンプレートと地中側主桁と刃口脇プレートとに溶接接合し、これに続いて、刃口脇プレート(刃口プレートに溶接接合されている)を地中側主桁に溶接接合するから、刃口脇プレートの変形(地中側主桁に対する倒れ)が一層防止される。
【0017】
(iv)また、水平方向拘束部材と鉛直面拘束部材とが仮り溶接された状態で、まず、刃口脇プレートを継手板に溶接接合し、これに続いて、刃口プレートを刃口脇プレート(継手板に溶接接合されている)とスキンプレートと地中側主桁とに溶接接合するから、刃口プレートの変形が一層防止される。
【0018】
(v)さらに、水平方向拘束部材が、筐体の開口部側の端部(スキンプレートが溶接接合されていない端部に同じ)で地中側主桁に近い位置、すなわち、溶接入熱の大きい側に仮り溶接されるから、溶接入熱による地中側主桁の変形が効果的に防止される。
【0019】
(vi)さらに、仮り溶接状態で、刃口プレートが継手板にも溶接接合、すなわち、三辺が溶接接合されるから、セグメントの一体化がさらに堅固になる。
【0020】
(vii)さらに、刃口リブが設置されるから、刃口プレートの剛性が高まり、施工性が向上する。
(viii)また、縦リブおよびクラブガイドが設置されるから、セグメントの剛性が高まり、施工性が向上する。特に、地下構造部を施工する際、土砂掘削手段であるクラブがクラブガイドによって好適に案内されるから施工性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、実施形態をフロー図および模式斜視図に基づいて説明する。なお、各ステップを「S」と表記し、以下の各図において同一または相当する内容については、一部の説明を省略する。また、以下の各図において、完成した地下構造物における鋼製セグメントの姿勢に準じて、地中方向を「下」および地上方向を「上」と、地下構造物の外側(地盤に接触または対峙する側)になる方向を「外周」と、地下構造物の内側(内部空間側)になる方向を「内周」と、地下構造物に沿った水平方向を「外側面または内側面」と称呼している。なお、最終的に残る溶接接合を「本溶接」と称呼し、途中で撤去される溶接接合を「仮り溶接」と称呼し、両者を区別する。
【0022】
[実施形態1]
図1および図2は本発明の実施形態1に係る鋼製セグメントの製造方法を説明するフロー図および模式斜視図である。
【0023】
まず、対向する地中側主桁15および地上側主桁16と、対向する一対の継手板12a、12bと、板材からなるスキンプレート11とを溶接接合して一方側に開口部(外周面に同じ)を具備する筐体10を形成する。すなわち、スキンプレート11の周囲を、地中側主桁15、地上側主桁16および継手板12a、12bの外周寄りの端部に本溶接する。また、地中側主桁15と地上側主桁16とを連結する縦リブ13a、13b、13cを設置する。なお、継手板12a、12bの互いに対峙する面を「内側面」と、該内側面の反対の面を「外側面」とそれぞれ称呼する(S1の1)。
【0024】
つぎに、継手板12a、12bの外側面に沿って下方に突出する鉛直面拘束部材50a、50bを、継手板12aの外側面にそれぞれ仮り溶接する(S1の2)。
【0025】
そして、この仮り溶接状態で、略三角形の刃口脇プレート22a、22b(継手板12a、12bの外側面に沿って下方に突出する)を鉛直面拘束部材50a、50bに仮り溶接する(S1の3)。
【0026】
そこで、刃口脇プレート22a、22bの上端部を継手板12a、12bの下端部にそれぞれ本溶接する。このとき、刃口脇プレート22a、22bの上端部の内側面に片側開先を設け、内側面に溶接ビードを形成するから、外側面に溶接ビードが盛り上がることがない(S1の4、図2の(a)参照)。
【0027】
さらに、刃口プレート21(スキンプレート11に平行で下方に突出する。なお、後記刃口内周プレート24との混乱を避けるため、スキンプレート11を「刃口外周プレート21」と称す)を筐体10に設置する。すなわち、刃口外周プレート21の上端部とスキンプレート11の外周面とを、刃口外周プレート21の内周面と地中側主桁15の下面の外周寄りとを、刃口外周プレート21の内周面で両側部と刃口脇プレート22a、22bの外周寄りの端部とを、それぞれ本溶接する(S1の5)。
【0028】
また、板材であるクラブガイド14を筐体10の内周に設置する。すなわち、クラブガイド14の周囲を、縦リブ13a、13cおよび地中側主桁15の内周側の端部に本溶接する(S1の6)。
【0029】
また、刃口リブ23a、23b、23cを設置する。すなわち、刃口リブ23a、23b、23cの外側部を刃口外周プレート21の内周面に、上端部を地中側主桁15の下面にそれぞれ本溶接する(S1の7)。
【0030】
そして、板材である刃口内周プレート24を設置して、刃口外周プレート21、刃口脇プレート22a、22b、刃口リブ23a、23b、23c、および刃口内周プレート24によって形成された断面略直角三角形の函体である「刃口20」を形成する。
すなわち、刃口内周プレート24の周囲を、刃口外周プレート21の内周面で下端に近い位置、刃口脇プレート22a、22bの内周側の端部、および地中側主桁15の下面で内周側の端部に近い位置にそれぞれ本溶接する(S1の8、図2の(b)参照)。
【0031】
そして、前記本溶接が終了した後、前記仮り溶接部を切除して鉛直面拘束部材50a、50bを撤去して、セグメント30を形成する(S1の9)。
【0032】
したがって、刃口脇プレート22a、22bは鉛直面拘束部材50a、50bに仮り溶接され、これによって拘束された状態で本溶接されるから、倒れ変形が抑えられる。
特に、刃口脇プレート22a、22bと継手板12a、12bとの突き合わせ部の外側面に溶接ビードが盛り上がらないようにするため、刃口脇プレート22a、22bの上端部の内側にそれぞれ片側開先を設け、内側から突き合わせ溶接をしている。
【0033】
このため、鉛直面拘束部材50a、50bがない場合には、刃口脇プレート22a、22bは内側(下方になる程近づく方向)に倒れるような変形をしようとするから、鉛直面拘束部材50a、50bによって該倒れ変形が効果的に防止されることになる。よって、本溶接後の継手板12a、12bの外側面と刃口脇プレート22a、22bの外側面とは、略同一面を形成し、く字状に屈折することが防止される。なお、鉛直面拘束部材50a、50bの形状、大きさ、また仮り溶接の形態は限定するものではなく、適宜選定することができる設計的事項である。
【0034】
さらに、既に本溶接されている刃口脇プレート22a、22b(鉛直面拘束部材50a、50bによって拘束されている)に対して刃口外周プレート21を本溶接するから、刃口20が高い精度で形成されることになる。
よって、一方のセグメント30(筐体10と刃口20とによって形成されたものを「セグメント30」と称呼する)の継手板12aと、他方のセグメント30の継手板12bとを当接した際、一方のセグメント30の刃口脇プレート22aと他方のセグメント30の刃口脇プレート22bとは、隙間を生じることなく当接することになる。
【0035】
なお、前記各ステップを実行する順番は前記に限定するものではなく、鉛直面拘束部材50a、50bが仮り溶接されている状態において本溶接する限り、順番は変更自在である。
また、継手板12a、12bに設けられた貫通孔17a、17bは、セグメント30同士を側面方向で連結する際、連結用ボルトを挿入するためのものである。また、地上側主桁16に設けられた貫通孔18は、セグメント30に筐体10(刃口20を具備しないセグメントに相当する)を載置して連結する際、連結用ボルトを挿入するためのものである。
そして、縦リブ13aや刃口リブ23a等の本数や形状、クラブガイド14の設置形態(大きさ、開口部として残す範囲)、貫通孔17a、17b、18の数や位置、および刃口脇プレート22a等に設けられているスカラップ(図示しない)の有無や形状などは、適宜選定することができる設計的事項である。
【0036】
[実施形態2]
図3および図4は本発明の実施形態2に係る鋼製セグメントの製造方法を説明するフロー図および模式斜視図である。
【0037】
まず、地中側主桁15、地上側主桁16、継手板12a、12bと、スキンプレート11とを溶接接合して筐体10を形成する(S2の1、前述のS1の1に同じ)。
【0038】
つぎに、継手板12aと継手板12bとを連結するための水平方向拘束部材40を筐体10の内周に設置する。すなわち、水平方向拘束部材40の一端を継手板12aの内周側の端部で地中側主桁15に近い位置に、また、水平方向拘束部材40の他端を継手板12bの内周側の端部で地中側主桁15に近い位置に、それぞれに仮り溶接する(S2の2)。
【0039】
そして、この仮り溶接状態で、刃口外周プレート21を筐体10に設置する。すなわち、刃口外周プレート21の上端部とスキンプレート11の外周面と、刃口外周プレート21の内周面と地中側主桁15の下面で外周寄りの端部とを、それぞれ本溶接する。このとき、刃口外周プレート21の内周面と継手板12a、12bの下端で外周寄りの端部とを、それぞれ本溶接してもよい(S2の3、図4の(a)参照)。
【0040】
さらに、刃口脇プレート22a、22bを設置する。すなわち、刃口脇プレート22a、22bの上端部を継手板12a、12bの下端部に、その外周寄りの端部を刃口外周プレート21にそれぞれ本溶接する(S2の4)。
【0041】
また、クラブガイド14を、筐体10の内周に設置する(S2の5)。
【0042】
また、直角三角形状の板材である刃口リブ23a、23b、23cの外周寄りの端部を刃口外周プレート21の内周面に、上端部を地中側主桁15の下面にそれぞれ本溶接する(S2の6、図4の(b)参照)。
【0043】
そして、刃口内周プレート24を設置して刃口20を形成する、すなわち、刃口内周プレート24の周囲を、刃口外周プレート21の内周面で下端に近い位置、刃口脇プレート22a、22bの内周側の端部および地中側主桁15の下面で内周に近い位置にそれぞれ本溶接する(S2の7)。
【0044】
そして、前記本溶接が終了した後、前記仮り溶接部を切除して水平方向拘束部材40を撤去して、セグメント30を形成する(S2の8)。
【0045】
したがって、筐体10が水平方向拘束部材40によって拘束された状態で、刃口10を構成する各部材が本溶接されるため、溶接入熱による筐体10の変形が抑えられ、形状精度の良いセグメント30が得られる。
特に、水平方向拘束部材40による拘束がないとすると、刃口外周プレート21を本溶接する際の溶接入熱が主に地中側主桁15の外周に流れ込むため、地中側主桁15が円弧状(地上側主桁16も円弧状)である場合、外周側への溶接入熱に起因する熱収縮によってその曲率半径が大きくなる方向(拡径する方向に同じ)に変形、あるいは、地中側主桁15が直線状(地上側主桁16も直線状)である場合、外周側への溶接入熱に起因する熱収縮によってその直線性が阻害され、外周側が凹になるように反り返る変形をしようとする。
【0046】
このため、当初、地中側主桁15および地上側主桁16に垂直であったスキンプレート11および継手板12a、12bは、前記変形によって、水平面に対して倒れることになるから、セグメント30を相互に連結して環状体を形状する際、継手板12a、12b同士の当接、形成された環状体の平面度、さらには、刃口外周プレートの地上側主桁16に対する垂直度が悪化することになっていた。
なお、前記各ステップを実行する順番は前記に限定するものではなく、水平方向拘束部材40が仮り溶接されている状態において本溶接する限り、変更自在である。
【0047】
[実施形態3]
図5および図6は本発明の実施形態3に係る鋼製セグメントの製造方法を説明するフロー図および模式斜視図である。なお、実施形態1(図2)と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
【0048】
まず、地中側主桁15、地上側主桁16、継手板12a、12bと、スキンプレート11とを溶接接合して筐体10を形成する(S3の1、前述のS1の1に同じ)。
【0049】
つぎに、水平方向拘束部材40の一端を継手板12aの内周側の端部で地中側主桁15に近い位置に、また、水平方向拘束部材40の他端を継手板12bの内周側の端部で地中側主桁15に近い位置に、それぞれに仮り溶接する(S3の2)。
【0050】
つぎに、鉛直面拘束部材50a、50bを、継手板12a、12bの外側面にそれぞれ仮り溶接する(S3の3)。
【0051】
そして、この仮り溶接状態で、刃口脇プレート22a、22bを鉛直面拘束部材50a、50bに仮り溶接する(S3の4、図6の(a)参照)。
【0052】
そこで、この仮り溶接状態で、刃口外周プレート21を設置する。すなわち、刃口外周プレート21の上端部をスキンプレート11の外周面に本溶接(図6の(b)においてW1にて示す)、その内周面で上端部に近い位置を地中側主桁15の下面で外周寄りの端部に、その内周面の両側部を刃口脇プレート22a、22bの外周寄りの端部に本溶接(図6の(b)においてW2にて示す)する(S3の5)。
【0053】
そして、刃口脇プレート22a、22b(刃口外周プレート21に本溶接されている)の上端部を、継手板12a、12bの下端部にそれぞれ本溶接する(図6の(c)においてW3にて示す。S3の6)。
【0054】
また、クラブガイド14を、筐体10の内周に設置する(S3の7)。
【0055】
また、刃口リブ23a、23b、23cの外周寄りの端部を刃口外周プレート21の内周面に、上端部を地中側主桁15の下面にそれぞれ本溶接する(S3の8)。
【0056】
そして、刃口内周プレート24の周囲を、刃口外周プレート21の内周面で下端に近い位置、刃口脇プレート22a、22bの内周側の端部、および地中側主桁15の下面で内周に近い位置に本溶接する(S3の9)。
【0057】
そして、前記本溶接が終了した後、前記仮り溶接部を切除して水平方向拘束部材40および鉛直面拘束部材50を撤去し、セグメント30を形成する(S3の10)。
【0058】
したがって、筐体10が水平方向拘束部材40によって拘束され、且つ、刃口脇プレート22が鉛直面拘束部材50によって拘束された状態で、セグメント30が形成されるから、良好な形状精度が保証されることになる。
特に、前述の実施形態1および2における効果に加え、刃口脇プレート22a、22bは、鉛直面拘束部材50によって拘束された状態で、まず、その外周端部を刃口外周プレート21(既に筐体10に本溶接されている)に本溶接W2をし、その後、その上端部を継手板12a、12b(筐体10を構成している)の下端部に本溶接W3をする(S3の6)から、刃口脇プレート22a、22bの倒れ変形がさらに防止されることになる。
【0059】
なお、前記各ステップを実行する順番は前記に限定するものではなく、水平方向拘束部材40および鉛直面拘束部材50a、50bが仮り溶接されている状態において本溶接する限り、変更自在である。
また、本溶接(W1)と本溶接(W2)との順番は前記に限定するものではなく、本溶接(W2)を本溶接(W1)に先行して実施してもよい。すなわち、あらかじめ刃口外周プレート21に刃口脇プレート22を本溶接(W2)しておき、その後、刃口脇プレート22が接合されている刃口外周プレート21をスキンプレート11に本溶接(W1)してもよい。
【0060】
[実施形態4]
図7および図8は本発明の実施形態4に係る鋼製セグメントの製造方法を説明するフロー図および模式斜視図である。
【0061】
まず、地中側主桁15、地上側主桁16、継手板12a、12bと、スキンプレート11とを溶接接合して筐体10を形成する(S4の1、前述のS1の1に同じ)。
【0062】
つぎに、水平方向拘束部材40の一端を継手板12aの内周側の端部で地中側主桁15に近い位置に、また、水平方向拘束部材40の他端を継手板12bの内周側の端部で地中側主桁15に近い位置に、それぞれに仮り溶接する(S4の2)。
【0063】
つぎに、鉛直面拘束部材50a、50bを、継手板12aの外側面にそれぞれ仮り溶接する(S4の3)。
【0064】
そして、この仮り溶接状態で、刃口脇プレート22a、22bを鉛直面拘束部材50a、50bに仮り溶接する(S4の4)。
【0065】
そこで、この仮り溶接状態で、刃口脇プレート22a、22bの上端部を継手板12a、12bの下端部にそれぞれ本溶接する(図8の(a)においてW4にて示す。S4の5)。
【0066】
さらに、刃口外周プレート21の両側部を刃口脇プレート22a、22bの外周寄りの端部にそれぞれ本溶接する(図8の(b)においてW5にて示す。S4の6)。
【0067】
そして、刃口外周プレート21の上端部をスキンプレート11の外周面に、その内周面の上端部に近い位置を地中側主桁15の下面の外周寄りの端部にそれぞれ本溶接する(図8の(b)においてW6にて示す。S4の7)。
【0068】
また、クラブガイド14を、筐体10の内周に設置する(S4の8)。
【0069】
また、刃口リブ23a、23b、23cの外周寄りの端部を刃口外周プレート21の内周面に、上端部を地中側主桁15の下面にそれぞれ本溶接する(S4の9)。
【0070】
そして、刃口内周プレート24の周囲を、刃口外周プレート21の内周面で下端に近い位置、刃口脇プレート22a、22bの内周側の端部および地中側主桁15の下面で内周に近い位置にそれぞれ本溶接する(S4の10)。
【0071】
そして、前記本溶接が終了した後、前記仮り溶接部を切除して水平方向拘束部材40および鉛直面拘束部材50a、50bを撤去し、セグメント30を形成する(S4の11)。
【0072】
したがって、筐体10が水平方向拘束部材40によって拘束され、且つ、刃口脇プレート22が鉛直面拘束部材50によって拘束された状態で、セグメント30が形成されるから、良好な形状精度が保証されることになる。
特に、前述の実施形態1および2における効果に加え、既に筐体10に本溶接W4がされている刃口脇プレート22a、22bに、刃口外周プレート21の両側部がまず本溶接W5がなされ(S4の6)、その後、刃口外周プレート21の上端部および内周面に本溶接W6がされる(S4の7)から、刃口外周プレート21の倒れ変形がさらに防止され、また、刃口外周プレート21を本溶接するための組み立て治具(図示しない)が不要または簡素になる。
【0073】
なお、本溶接(W5)と本溶接(W6)との順番は前記に限定するものではなく、本溶接(W6)を本溶接(W5)に先行して実施してもよい。すなわち、刃口外周プレート21をスキンプレート11に本溶接(W6)した後、スキンプレート11に接合されている刃口外周プレート21を刃口脇プレート22a、22b(既に継手板12a、12bに本溶接(W4)されている)に本溶接(W5)してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、地下構造物に供される鋼製セグメントの製造方法、特に、偏った溶接入熱を受ける鋼製セグメントの製造方法として広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施形態1に係る鋼製セグメントの製造方法を説明するフロー図。
【図2】本発明の実施形態1に係る鋼製セグメントの製造方法を説明する模式斜視図。
【図3】本発明の実施形態2に係る鋼製セグメントの製造方法を説明するフロー図。
【図4】本発明の実施形態2に係る鋼製セグメントの製造方法を説明する模式斜視図。
【図5】本発明の実施形態3に係る鋼製セグメントの製造方法を説明するフロー図。
【図6】本発明の実施形態3に係る鋼製セグメントの製造方法を説明する模式斜視図。
【図7】本発明の実施形態4に係る鋼製セグメントの製造方法を説明するフロー図。
【図8】本発明の実施形態4に係る鋼製セグメントの製造方法を説明する模式斜視図。
【符号の説明】
【0076】
10 筐体
11 スキンプレート
12a 継手板
12b 継手板
13a 縦リブ
13b 縦リブ
13c 縦リブ
14 クラブガイド
15 地中側主桁
16 地上側主桁
17a 貫通孔
17b 貫通孔
18 貫通孔
20 刃口
21 刃口外周プレート
22a 刃口脇プレート
22b 刃口脇プレート
23a 刃口リブ
23b 刃口リブ
23c 刃口リブ
24 刃口内周プレート
30 セグメント
40 水平方向拘束部材
50a 鉛直面拘束部材
50b 鉛直面拘束部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に接合して環状体に形成され、該環状体が地中に圧入され、地中に圧入された前記環状体に接合されて新たな環状体に形成され、さらに、該新たな環状体が地中に圧入されて形成される地下構造物に供される鋼製セグメントの製造方法であって、
対向する地中側主桁および地上側主桁と、対向する一対の継手板と、板材からなるスキンプレートとを溶接接合して一方側に開口部を具備する筐体を形成する工程と、
前記継手板の外側面に沿って前記地中側主桁の方向に突出する鉛直面拘束部材を、前記一対の継手板のそれぞれの外側面に仮り溶接する工程と、
該仮り溶接状態で、前記継手板の外側面に沿って前記地中側主桁の方向に突出して前記継手板に溶接接合される刃口脇プレートを、前記鉛直面拘束部材に仮り溶接する工程と、
該仮り溶接状態で、前記刃口脇プレートを前記継手板に溶接接合する工程と、
該刃口脇プレートの溶接接合が終了した後、前記鉛直面拘束部材を撤去する工程とを有することを特徴とする鋼製セグメントの製造方法。
【請求項2】
相互に接合して環状体に形成され、該環状体が地中に圧入され、地中に圧入された前記環状体に接合されて新たな環状体に形成され、さらに、該新たな環状体が地中に圧入されて形成される地下構造物に供される鋼製セグメントの製造方法であって、
対向する地中側主桁および地上側主桁と、対向する一対の継手板と、板材からなるスキンプレートとを溶接接合して一方側に開口部を具備する筐体を形成する工程と、
前記一対の継手板同士を連結するための水平方向拘束部材を、前記一対の継手板のそれぞれに仮り溶接する工程と、
該仮り溶接状態で、前記スキンプレートに平行で前記地中側主桁の方向に突出する刃口プレートを、前記スキンプレートの外周面と前記地中側主桁のスキンプレート寄りの端部とに溶接接合する工程と、
該刃口プレートの溶接接合が終了した後、前記水平方向拘束部材を撤去する工程とを有することを特徴とする鋼製セグメントの製造方法。
【請求項3】
相互に接合して環状体に形成され、該環状体が地中に圧入され、地中に圧入された前記環状体に接合されて新たな環状体に形成され、さらに、該新たな環状体が地中に圧入されて形成される地下構造物に供される鋼製セグメントの製造方法であって、
対向する地中側主桁および地上側主桁と、対向する一対の継手板と、板材からなるスキンプレートとを溶接接合して一方側に開口部を具備する筐体を形成する工程と、
前記一対の継手板同士を連結するための水平方向拘束部材を、前記一対の継手板のそれぞれに仮り溶接する工程と、
前記継手板の外側面に沿って前記地中側主桁の方向に突出する鉛直面拘束部材を、前記一対の継手板のそれぞれの外側面に仮り溶接する工程と、
前記継手板の外側面に沿って前記地中側主桁の方向に突出して前記継手板に溶接接合される刃口脇プレートを、前記鉛直面拘束部材に仮り溶接する工程と、
該仮り溶接状態で、前記スキンプレートに平行で前記地中側主桁の方向に突出する刃口プレートを、前記スキンプレートの外周面と前記地中側主桁のスキンプレート寄りの端部と前記刃口脇プレートのスキンプレート寄りの端部とに溶接接合する工程と、
前記刃口脇プレートを前記継手板に溶接接合する工程と、
該刃口脇プレートの溶接接合が終了した後、前記水平方向拘束部材および鉛直面拘束部材を撤去する工程とを有することを特徴とする鋼製セグメントの製造方法。
【請求項4】
相互に接合して環状体に形成され、該環状体が地中に圧入され、地中に圧入された前記環状体に接合されて新たな環状体に形成され、さらに、該新たな環状体が地中に圧入されて形成される地下構造物に供される鋼製セグメントの製造方法であって、
対向する地中側主桁および地上側主桁と、対向する一対の継手板と、板材からなるスキンプレートとを溶接接合して一方側に開口部を具備する筐体を形成する工程と、
前記一対の継手板同士を連結するための水平方向拘束部材を、前記一対の継手板のそれぞれに仮り溶接する工程と、
前記継手板の外側面に沿って前記地中側主桁の方向に突出する鉛直面拘束部材を、前記一対の継手板のそれぞれの外側面に仮り溶接する工程と、
前記継手板の外側面に沿って前記地中側主桁の方向に突出して前記継手板に溶接接合される刃口脇プレートを、前記鉛直面拘束部材に仮り溶接する工程と、
該仮り溶接状態で、前記刃口脇プレートを前記継手板に溶接接合する工程と、
前記スキンプレートに平行で前記地中側主桁の方向に突出する刃口プレートを、前記刃口脇プレートのスキンプレート寄りの端部と前記スキンプレートの外周面と前記地中側主桁のスキンプレート寄りの端部とに溶接接合する工程と、
該刃口プレートの溶接接合が終了した後、前記水平方向拘束部材および鉛直面拘束部材を撤去する工程とを有することを特徴とする鋼製セグメントの製造方法。
【請求項5】
前記水平方向拘束部材が、前記筐体の開口部側の端部で前記継手板の前記地中側主桁に近い位置に仮り溶接されることを特徴とする請求項2乃至4の何れかに記載の鋼製セグメントの製造方法。
【請求項6】
前記仮り溶接状態で、前記刃口プレートが前記継手板に溶接接合されることを特徴とする請求項2乃至5の何れかに記載の鋼製セグメントの製造方法。
【請求項7】
前記鉛直面拘束部材が仮り溶接された状態で、前記刃口プレートと前記地中側主桁とを連結するための刃口リブが設置されることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の鋼製セグメントの製造方法。
【請求項8】
前記枠体を形成する工程において、前記地中側主桁と前記地上側主桁とを連結する複数の縦リブが設置され、
前記スキンプレートを溶接接合する工程において、前記複数の縦リブの筐体の開口部側の端部にクラブガイドが設置されることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の鋼製セグメントの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−68752(P2006−68752A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−252166(P2004−252166)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000231110)JFE建材株式会社 (150)
【Fターム(参考)】