説明

鋼製ドア組立構造

【課題】
連結手段として螺子止めを採用するものでありながら、パテ仕上げを不要とする。
【解決手段】
ドアの一方の見付面を形成する面部30と、面部30の端部に形成した見込片31と、を備えた第1表面材3の当該見込片と、ドアの他方の見付面を形成する面部40と、面部40の端部に形成した見込片41と、を備えた第2表面材4の当該見込片と、を重ね合わせて螺子6Aで連結してなる鋼製ドア組立構造である。見込片31,41同士を重ね合わせた時に外側に位置する見込片41には、螺子孔5Aの先端側に位置して余長部41Bが形成されており、重ね合わせた見込片同士を連結した螺子6Aの頭部が、余長部41Bを折り返すことで隠蔽されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼製ドアの組立構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に鋼製ドアは、ドアの一方の見付面を形成する面部と、該面部の端部に形成した見込片と、を備えた第1表面材と、ドアの他方の見付面を形成する面部と、該面部の端部に形成した見込片と、を備えた第2表面材とを連結することで組み立てられる。
【0003】
連結手段としては溶接手段が挙げられるが、溶接には熟練が必要であると共に、さらに溶接後にはサンダー仕上げやパテ仕上げが必要となるため、作業効率が悪い。
【0004】
溶接手段以外の連結手段として螺子止め工法が挙げられる。螺子止めは溶接のように特殊技能を必要としないため、熟練を要せずに組立作業が可能であるという利点があるが、螺子で表面材同士を連結する場合には、螺子頭が露出することを避けるために、パテ仕上げが必要となる。パテ仕上げには、ある程度の技能が必要であり、また作業効率が悪い点では、溶接手段と同様である。
【0005】
さらにその他の連結手段としては、部材同士を係合ないし嵌合させる手段がある(特許文献1,2)。
【特許文献1】実公昭61−7357号
【特許文献2】特開平9−88444号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、連結手段として螺子止めを採用するものでありながら、パテ仕上げを不要とするドア組立構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ドアの一方の見付面を形成する面部と、該面部の端部に形成した見込片と、を備えた第1表面材の当該見込片と、ドアの他方の見付面を形成する面部と、該面部の端部に形成した見込片と、を備えた第2表面材の当該見込片と、を重ね合わせて螺子で連結してなる鋼製ドア組立構造であって、見込片同士を重ね合わせた時に外側に位置する見込片には、螺子孔の先端側に位置して余長部が形成されており、重ね合わせた見込片同士を連結した該螺子の頭部が、前記余長部を折り返すことで隠蔽されていることを特徴とする。
【0008】
一つの態様では、折り返された余長部が該螺子の頭部に密着している。より具体的な態様例では、外側に位置する見込片は、面部に対して垂直状に延出する第1片と、第1片の先端より第1片に対して垂直状に延出する第2片と、から断面視L形状に形成されており、当該第2片が余長部となっている。第1片の先端側には螺子孔が形成されており、第1片が内側に位置する見込片に当接した状態で螺子を用いて連結される。第2片を折り返すように折曲すると、折り返された第2片が螺子頭部を隠蔽すると共に、当該螺子頭部に密着する。
【0009】
一つの態様では、前記余長部の先端側には折曲片が形成されており、前記余長部が折り返された時に当該余長部の先端縁が当該外側に位置する見込片に対向するように構成されている。より具体的な態様例では、外側に位置する見込片は、面部に対して垂直状に延出する第1片と、第1片の先端から内側に向かって第1片に対して垂直状に延出する第2片と、第2片の先端において面部から離間する側に第2片に対して垂直状に延出する第3片と、第3片の先端から第3片に対して外側に向かって垂直状に延びる第4片と、第4片の先端を第2片に対向するように折曲形成した第5片と、からなる。第3片には螺子孔が形成されており、第3片が内側に位置する見込片に当接した状態で螺子を用いて連結される。第3片の螺子孔の先端側の部分と、第4片と、第5片とから前記余長部が形成されている。見込片の余長部(第3片の螺子孔の先端側の部分と、第4片と、第5片)を折り返すように折曲すると、折り返された余長部が螺子頭部を隠蔽すると共に、第4片と第1片とが面一となり、第5片は第2片と重なるように内側(第3片の基端側の部分)に向かって延出することになり、第5片の先端縁、すなわち見込片の先端縁が第3片に対向するので、見込片の先端縁が外部に露出することがない。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、表面材の見込片同士を螺子で連結するものでありながら、螺子頭部が折り返された見込片の余長部で覆い隠されるため、螺子頭部をパテ等で隠す必要がなく、したがって、パテ仕上げ等の処理が不要となる。
【0011】
折り返された余長部が該螺子の頭部に密着しているものでは、余長部が直接螺子頭部を押さえるため、螺子の緩みを抑える効果がある。
【0012】
前記余長部の先端側には折曲片が形成されており、前記余長部が折り返された時に当該余長部の先端縁が当該外側に位置する見込片に対向するように構成されているものでは、見込片の先端縁が外部に露出することがないので、先端縁(プレス加工による切り放し部)のエッジ処理が不要となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1左図はドア1の正面図であって、右図に示すように、ドア1は取手や錠装置等を取り付けた後、ドア枠2に装着されてドア装置を構成する。本発明はドア1の組立構造に関するものである。
【0014】
本発明の第1の実施形態を、図2乃至4に基づいて説明する。ドア1は鋼製ドアであって、表面材3,4から組み立てられる。図2(B)では、表面材3,4間に断面視コ字形状の補強材7が設けてあり、例えば防火用ドアにおいては必須である。ドア1の用途や設置場所によって表面材3,4のみで十分の強度が出れば、ドア1において補強材7は必ずしも必須構成要素ではない。
【0015】
表面材3は、ドア1の一方の見付面を形成する面部30と、面部30の幅方向に一体的に折曲形成されている見込片31,32とからなる。表面材4は、ドア1の他方の見付面を形成する面部40と、面部40の幅方向に一体的に折曲形成されている見込片41,42とからなる。
【0016】
表面材3の面部30の幅寸法は、表面材4の面部40の幅寸法よりも小さい寸法に形成されており、表面材3の見込片31,32と表面材4の見込片41,42を重ね合わせた時に、表面材4の見込片41、42がそれぞれ表面材3の見込片31,32の外側に位置するようになっている。
【0017】
表面材3において、見込片31,32は、面部30に対して垂直状に延出する片である。図面から明らかなように、見込片31,32は、板材の端部をヘミング加工してなる2重の板部から形成されている。
【0018】
表面材4において、見込片41,42は、面部40に対して垂直状に延出する第1片41A,42Aと、第1片41A,42Aの先端から外側に向かって第1片41A,42Aに対して垂直状に延出する第2片41B,42B(折り返した状態のみを図2に示す)と、から断面視L形状に形成されている。第1片41A,42Aの先端側には、長さ方向に所定間隔を存して複数の螺子孔5Aが形成されており、螺子孔5Aが形成されている部位は、折り返された第2片41B,42Bを受け入れるように凹部41a,42aに形成されている。見込片41,42において、第2片41B,42Bが余長部となっている。
【0019】
見込片41の第1片41A,42Aと見込片31,32は略同じ寸法となっている。表面材3の見込片31と表面材4の見込片41を重ね合わせた時に、表面材4の見込片41の第1片41Aの先端側の凹部41aが表面材3の見込片31の外側に当接するようになっている。同様に、表面材3の見込片32と表面材4の見込片42を重ね合わせた時に、表面材4の見込片42の第1片42Aの先端側の凹部42aが表面材3の見込片32の外側に当接するようになっている。
【0020】
ドア1の組立方法について、表面材3の一方の見込片31と表面材4の一方の見込片41との連結に基づいて説明する。
【0021】
図3に示すように、表面材3の見込片31と表面材4の見込片41を重ね合わせる。この時、表面材4の見込片41の第1片41Aの先端側の凹部41aが表面材3の見込片31の外側に当接しており、表面材3の見込片31の先端は表面材4の面部40の内側に近接している。
【0022】
そして、複数の螺子6Aを用いて、重ね合わされた表面材4の見込片41の第1片41A(凹部41a)と表面材3の見込片31を長さ方向に所定間隔で連結する。螺子6Aは皿頭ねじであり、螺子6Aが取り付けられた状態において、その頭部は第1片41Aの先端側の凹部41aと面一となる。
【0023】
この状態で、図4に示すように、押圧手段P1、P2によって、見込片41の第2片41Bを凹部41aに向かって折り曲げる。第2片41Bは、凹部41aと略同じ寸法に形成されており、折り返された第2片41Bが凹部41a内に納まって、螺子6Aの頭部に密着する。このように、折り返された見込片41の第2片41Bが直接螺子6Aの頭部を押さえるため、螺子6Aの緩みを抑える効果がある。
【0024】
本発明の第2の実施形態を、図5乃至7に基づいて説明する。鋼製ドア1は、表面材3,4から組み立てられる。表面材3は、ドア1の一方の見付面を形成する面部30と、面部30の幅方向に一体的に折曲形成されている見込片31,32とからなる。表面材4は、ドア1の他方の見付面を形成する面部40と、面部40の幅方向に一体的に折曲形成されている見込片41,42とからなる。
【0025】
表面材3の面部30の幅寸法は、表面材4の面部40の幅寸法よりも小さい寸法に形成されており、表面材3の見込片31,32と表面材4の見込片41,42を重ね合わせた時に、表面材4の見込片41、42がそれぞれ表面材3の見込片31,32の外側に位置するようになっている。
【0026】
表面材3において、見込片31,32は、面部30に対して垂直状に延出する片である。図面から明らかなように、見込片31,32は、板材の端部をヘミング加工してなる2重の板部から形成されている。
【0027】
表面材4において、見込片41,42は、全体として面部40に対して垂直状に延出しているが、先端側の半部は凹状に形成されている。より具体的には、見込片41は、面部40に対して垂直状に延出する第1片410(基端側の半部)と、第1片410の先端から内側に向かって第1片410に対して垂直状に延出する第2片411と、第2片411の先端において面部40から離間する側に第2片411に対して垂直状に延出する第3片412と、第3片412の先端から外側に向かって第3片412に対して垂直状に延びる第4片413と、第4片413の先端を第2片412に対向するように折曲形成した第5片414と、からなる。同様に、見込片42は、面部40に対して垂直状に延出する第1片420と、第1片420の先端から内側に向かって垂直状に延出する第2片421と、第2片421の先端から面部40から離間する側に垂直状に延出する第3片422と、第3片422の先端から外側に向かって垂直状に延びる第4片423と、第4片423の先端を折曲形成した第5片424と、からなる。
【0028】
表面材4の見込片41,42の第3片412,422には長さ方向に所定間隔を存して複数の螺子孔5Bが形成されており、表面材3の見込片31,32と表面材4の見込片41,42を重ね合わせた時に、表面材4の見込片41,42の第3片412,422が表面材3の見込片31,32の外側に当接するようになっている。
【0029】
図6に示すように、第3片412には、外側に位置して折り曲げ用のガイド溝412aが形成されている。第3片412は、ガイド溝412aより基端側の第1部分412Aとガイド溝412aより先端側の第2部分412Bとからなる。見込片41において、第3片412の第2部分412B、第4片413、第5片414から余長部が形成されている。
【0030】
第3片412において基端からガイド溝412aまでの寸法(すなわち、第1部分412Aの寸法)は、第4片413の寸法と略同じ寸法となるように、また、見込片41の基端からガイド溝412aまでの寸法(すなわち、第1片410の寸法+第1部分412Aの寸法)が表面材3の見込片31の寸法と略同じとなるように、また、第3片412のガイド溝412aから先の部分の寸法(すなわち、第2部分412Bの寸法)が、一端側における面部30と面部40の寸法の差と略同じ寸法(すなわち、第2片411の寸法)となるように、見込片41の寸法及びガイド溝412aの位置が設計されている。第3片422(第1部分422A+第2部分422B)も同様の構成を備えている。
【0031】
ドア1の組立方法について、表面材3の一方の見込片31と表面材4の一方の見込片41との連結に基づいて説明する。
【0032】
図6に示すように、表面材3の見込片31と表面材4の見込片41を重ね合わせる。この時、表面材4の見込片41の第3片412が表面材3の見込片31の外側に当接しており、表面材3の見込片31の先端は表面材4の面部40の内側に近接している。
【0033】
複数の螺子6B(図示の例ではトラス螺子)を用いて表面材4の見込片41(第3片412)と表面材3の見込片31を連結する。この状態で、見込片41の第3片412のガイド溝412aよりも先端側の第2部分412Bが表面材3の面部30に対して突出している。
【0034】
押圧手段P3、P4によって、面部30から突出した第2部分412Bに垂直方向に外側に向かう押圧力、次いで第4片413に内側に向かう押圧力を作用させ、見込片41の第3片412の第2部分412Bをガイド溝412aを中心として90度折り曲げて、第4片413と第1片410とを面一とする。この時、第5片414は第2片411と重なるように内側(第1部分412A)に向かって延出しており、見込片41の先端縁が外部に露出することがない。
【0035】
第1実施形態、第2実施形態においては、表面材3,4の幅方向端部の見込片の両方に同じ連結構造を採用しているが、本発明に係る連結構造をいずれか一方の端部の見込片同士の連結にのみ採用してもよい。図8(A)、(B)には、一方の見込片同士の連結構造が第1実施形態、第2実施形態であり、他方の見込片同士の連結構造に他の連結構造を採用している。この他方の見込片同士の連結構造について図9乃至図11に基づいて説明する。
【0036】
表面材3の一方の見込片8は、面部30に対して垂直状に延出する第1片80と、第1片80の先端から内側に向かって面部30側に膨出状に湾曲する第2片81と、からなる。第2片81には、その長さ方向に間隔を存して複数の係合受孔82が形成されている。係合受孔82は湾曲状の第2片81の端縁に切り欠き形成されており、幅広部820と幅狭部821とからなる。
【0037】
表面材4の一方の見込片9は、面部40に対して垂直状に延出する第1片90と、第1片90の先端から内側に向かって第1片90に対して垂直状に延出する第2片91と、第2片91の先端において面部40から離間する側に第2片91に対して垂直状に延出する第3片92と、からなる。第3片92には、その長さ方向に間隔を存して複数の係合突起93が形成されている。係合突起93は、基端側の幅狭部930と先端側の幅広部931とからなる。係合突起93の幅狭部930の幅は、係合受孔82の幅狭部821の幅よりも僅かに小さい寸法となっている。
【0038】
図10に示すように、見込片9の係合突起93の幅狭部930に、見込片8の係合受孔82をあてがいながら、面部80,90同士が面一となるまで回動させることで、係合突起93と係合受孔82が係合状態となる。この状態で、係合突起93の幅狭部930の幅方向の移動は、係合受孔82の幅狭部821によって規制される。表面材3,4の他方の見込片同士を本発明の連結手段によって連結することで表面材3,4の回動は規制され、表面材3,4の回動が規制されることで見込片8,9の係合状態が維持される。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、鋼製ドアの組立に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】左図はドアの正面図、右図はドア装置の正面図である。
【図2】(A)本発明の第1実施形態に係るドアの横断面図である。(B)図2(A)と類似の図であり、表面材間には補強材が設けてある。
【図3】本発明の第1の実施形態のドア組立構造の説明図である。
【図4】本発明の第1の実施形態のドア組立構造の説明図である。
【図5】(A)本発明の第2実施形態に係るドアの横断面図である。(B)図5(A)と類似の図であり、表面材間には補強材が設けてある。
【図6】本発明の第2の実施形態のドア組立構造の説明図である。
【図7】本発明の第2の実施形態のドア組立構造の説明図である。
【図8】(A)ドアの横断面図であって、一方の見込片同士の連結のみに第1実施形態に係る連結構造が採用されている。(B)ドアの横断面図であって、一方の見込片同士の連結のみに第2実施形態に係る連結構造が採用されている。
【図9】図8における他方の見込片同士の連結手段を示す図であって、(A)は見込片同士が連結した状態を示し、(B)は一方の見込片を示し、(C)は他方の見込片を示している。
【図10】図8における他方の見込片同士の連結手段を説明する斜視図である。
【図11】図8における他方の見込片同士の連結手段を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 ドア
3 表面材
30 面部
31 見込片
32 見込片
4 表面材
40 面部
41 見込片
42 見込片
5A,5B 螺子孔
6A,6B 螺子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアの一方の見付面を形成する面部と、該面部の端部に形成した見込片と、を備えた第1表面材の当該見込片と、ドアの他方の見付面を形成する面部と、該面部の端部に形成した見込片と、を備えた第2表面材の当該見込片と、を重ね合わせて螺子で連結してなる鋼製ドア組立構造であって、
見込片同士を重ね合わせた時に外側に位置する見込片には、螺子孔の先端側に位置して余長部が形成されており、重ね合わせた見込片同士を連結した該螺子の頭部が、前記余長部を折り返すことで隠蔽されていることを特徴とする鋼製ドア組立構造。
【請求項2】
折り返された余長部が該螺子の頭部に密着している、請求項1に記載の鋼製ドア組立構造。
【請求項3】
前記余長部の先端側には折曲片が形成されており、前記余長部が折り返された時に当該余長部の先端縁が当該外側に位置する見込片に対向するように構成されている、請求項1に記載の鋼製ドア組立構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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