説明

鋼鈑製造装置

【課題】簡単な構造で溶融めっきルートと冷延ルートを切り替える。
【解決手段】溶融めっき鋼鈑3aを製造する溶融めっきルートR1と冷延鋼鈑3bを製造する冷延ルートR2とを切り替え可能な鋼鈑製造装置1Aにおいて、溶融めっき槽8から立ち上がる溶融めっきルートR1に、垂直方向に延びる少なくとも合金化炉11aからなる溶融めっきルート用炉殻11と垂直方向に延びる冷延ルート用炉殻20とを併設した切替炉殻ユニット10を水平方向に移動可能に設ける。溶融めっきルートR1では、切替炉殻ユニット10を一方に移動させて溶融めっきルート用炉殻11を溶融めっきルートR1に一致させる。冷延ルートR2に切り替えるときは、切替炉殻ユニット10を他方に移動させて、冷延ルート用炉殻20の下端に溶融めっき槽8をバイパスした冷延ルートを接続し、上端に後続の冷延ルートを接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鋼鈑製造装置、詳しくは冷延鋼鈑及び溶融めっき鋼鈑を切り替えて製造することができる冷延鋼鈑及び溶融めっき鋼鈑の兼用製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大型の高級鋼鈑用の溶融めっき鋼鈑製造装置が数多く建設され、これに伴い、旧型の装置を廃却又は遊休させる代わりに、その装置を利用して冷延鋼鈑を製造する提案がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1−5には、図6に示すように、焼鈍炉101から出た鋼鈑102を溶融めっき槽103に送給して溶融めっき鋼鈑102aを製造する溶融めっきルートR1と、焼鈍炉101から出た鋼鈑102を溶融めっき槽103を通さないで冷延鋼鈑102bを製造する冷延ルートR2を交差させ、この交差部にルートの切り替えを行うルート切替炉殻ユニット104を設けたものが開示されている。ルート切替炉殻ユニット104は、図7に示すように、垂直炉殻104aと水平炉殻104bを一体に接合し、スライド台車等により水平方向に往復移動可能に設けられている。溶融めっきルートR1に切り替える場合は、図6(a)に示すように、垂直炉殻104aを溶融めっきルートR1に接続し、冷延ルートR2に切り替える場合は、図6(b)に示すように、水平炉殻104bを冷延ルートR2に接続する。さらに、ルート切替炉殻ユニット104と溶融めっき槽103の間の溶融めっきルートR1には、図8に示すように、合金化炉105a、ミニマムスパングル装置105b及び急冷装置105cを一体に接合した溶融めっき鋼鈑用炉殻ユニット105が水平方向に移動可能に設けられ、製造する鋼鈑の種類に応じて切替が可能になっている。
【特許文献1】特開2003−27199号公報
【特許文献2】特開2003−251410号公報
【特許文献3】特開2003−253412号公報
【特許文献4】特開2004−27340号公報
【特許文献5】特開2004−176109号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献で提案された鋼鈑製造装置では、図6に示すように、ルート切替炉殻ユニット104は溶融めっき鋼鈑用炉殻ユニット105とは別に設けられているため、ルート切替炉殻ユニット104専用の支持架構及び軌条と、駆動装置、位置決め装置、位置検出器等の装置が必要であり、架構も複雑になるという問題があった。
【0005】
また、合金化めっき鋼鈑を製造する装置では、溶融めっき槽から立ち上がる溶融めっきルートに、溶融めっきされた合金のめっき層を合金化する合金化炉と、一定時間合金をある温度に保持する保持帯とが設けられている。この装置で、冷延鋼鈑を製造する場合、合金化炉も保持帯も不要であるが、冷延鋼鈑の製造には焼鈍炉から出た鋼鈑を徐冷又は冷却する手段が必要であるため、冷延ルートが複雑で、高価になるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、簡単な構造で溶融めっきルートと冷延ルートを切り替えることができる冷延鋼鈑及び溶融めっき鋼鈑の兼用製造装置を提供することを課題とする。
また、溶融めっきルートの保持帯を冷延ルートの徐冷又は冷却帯と兼用することで冷延ルートの構造が簡単な冷延鋼鈑及び溶融めっき鋼鈑の兼用製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、請求項1の発明は、
焼鈍炉から搬出される鋼鈑を溶融めっき槽に導入して溶融めっき鋼鈑を製造する溶融めっきルートと、焼鈍炉から搬出される鋼鈑を溶融めっき槽に導入しないでバイパスして冷延鋼鈑を製造する冷延ルートとを切り替え可能な鋼鈑製造装置において、
溶融めっき槽から立ち上がる溶融めっきルートに、垂直方向に延びる少なくとも合金化炉からなる溶融めっきルート用炉殻と垂直方向に延びる冷延ルート用炉殻とを併設した炉殻ユニットを水平方向に移動可能に設け、
溶融めっきルートでは、前記炉殻ユニットを一方に移動させて前記溶融めっきルート用炉殻を前記溶融めっきルートに一致させ、
冷延ルートに切り替えるときは、前記炉殻ユニットを他方に移動させて、前記冷延ルート用炉殻の下端に前記溶融めっき槽をバイパスした冷延ルートを接続し、上端に後続の冷延ルートを接続するようにしたものである。
【0008】
請求項2の発明は、前記炉殻ユニットの冷延ルート用炉殻に、焼鈍炉から搬出される鋼鈑を冷却する冷却装置を備えたものである。
【0009】
請求項3の発明は、
焼鈍炉から搬出される鋼鈑を溶融めっき槽に導入して溶融めっき鋼鈑を製造する溶融めっきルートと、焼鈍炉から搬出される鋼鈑を溶融めっき槽に導入しないでバイパスして冷延鋼鈑を製造する冷延ルートとを切り替え可能で、前記溶融めっき槽から立ち上がる溶融めっきルートに合金化炉と保持帯とが設けられた鋼鈑製造装置において、
溶融めっきルートでは、前記合金化炉と保持帯を使用し、
冷延ルートに切り替えるときは、前記保持帯の上流に前記溶融めっき槽をバイパスした冷延ルートを接続し、前記保持帯の下流に後続の冷延ルートを接続して、前記保持帯を前記冷延ルートの徐冷帯又は冷却帯と兼用するものである。
【0010】
請求項4の発明は、
前記合金化炉からなる溶融めっきルート用炉殻と冷延ルート用炉殻とを併設した炉殻ユニットを水平方向に移動可能に設け、
溶融めっきルートでは、前記炉殻ユニットを一方に移動させて前記合金化炉からなる溶融めっきルート用炉殻を前記溶融めっきルートに一致させ、前記合金化炉と保持帯を使用し、
冷延ルートに切り替えるときは、前記炉殻ユニットを他方に移動させて、前記冷延ルート用炉殻の下端に前記溶融めっき槽をバイパスした冷延ルートを接続し、上端に前記保持帯を接続して、前記保持帯を前記冷延ルートの徐冷帯又は冷却帯と兼用するものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、冷延ルート用炉殻が、少なくとも合金化炉からなる溶融めっきルート用炉殻と一体に接合されているので、溶融めっきルートでの合金化炉の選択と同一の移動手段により、冷延ルートへの切り替えが可能となり、構造が簡単である。また、移動手段の架構も既存の溶融めっきラインのものを使用することができ、安価に冷延鋼鈑及び溶融めっき鋼鈑の兼用製造装置を提供することができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、冷延ルートの他の個所に冷却装置を別途設ける必要がなく、さらに構造が簡単となる。
【0013】
請求項3の発明によれば、溶融めっきルートの保持帯が冷延ルートの徐冷帯又は冷却帯と兼用されるので、構造が簡単であり、冷延ルートの他の個所に徐冷帯又は冷却帯を別途設ける必要がなく、安価に冷延鋼鈑及び溶融めっき鋼鈑の兼用製造装置を提供することができる。
【0014】
請求項4の発明によれば、溶融めっきルートでの合金化炉、ミニマムスパングル装置及び急冷装置の選択と同一の移動手段により、冷延ルートへの切り替えが可能となり、構造が簡単である。また、移動手段の架構も既存の溶融めっきラインのものを使用することができ、安価に冷延鋼鈑及び溶融めっき鋼鈑の兼用製造装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に従って説明する。
【0016】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態による鋼鈑製造装置1Aを示す。
この鋼鈑製造装置1Aは、焼鈍炉2の下流側に、溶融めっき鋼鈑3aを製造する溶融めっきルートR1と、溶融めっきを行うことなく冷延鋼鈑3bを製造する冷延ルートR2が設けられている。
【0017】
溶融めっきルートR1は、図1(a)に示すように、焼鈍炉2の搬出部4から案内ロール5により斜めに下降し、第1出口6及びスナウト7を通って溶融めっき槽8に入り、該溶融めっき槽8内に設けたポットロール9により上方に立ち上がり、切替炉殻ユニット10の溶融めっきルート用炉殻11を通過し、さらに逆U字形の上部炉殻12に入り、案内ロール13,14により下降して水冷槽15に入り、該水冷槽15内に設けたポットロール16により上方に立ち上がり、水切装置17を通って案内ロール18により水平に向かうルートである。
【0018】
冷延ルートR2は、図1(b)に示すように、焼鈍炉2の搬出部4の第2出口19から直進して切替炉殻ユニット10の冷延ルート用炉殻20に入り、該冷延ルート用炉殻20内を案内ロール21により上昇し、さらに案内ロール22により水平に向かい、冷延ルート用炉殻20から出て、冷延ルート用固定炉殻23を通過して上部炉殻12の立ち下がり部に入り、案内ロール24により下降して水冷槽15に入り、以下溶融めっきルートR1と同様に、水冷槽15内に設けたポットロール16により上方に立ち上がり、水切装置17を通って案内ロール18により水平に向かうルートである。なお、焼鈍炉2の搬出部4の第2出口19から直進せずに、一旦上方へ出てから切替炉殻ユニット10の冷延ルート用炉殻20に水平に入るようにしてもよい。
【0019】
前記切替炉殻ユニット10は、図2に示すように、垂直方向に延びる溶融めっきルート用炉殻11と、垂直方向に延びる冷延ルート用炉殻20とを併設したものであり、支持架構25に支持されて1対の軌条26上を水平方向に往復移動可能になっている。冷延ルート用炉殻20は、垂直部20aと、垂直部20aの下端から水平方向に屈曲する下部水平部20bと、垂直部20aの上端から下部水平部20bと反対の水平方向に屈曲する上部水平部20cとからなっている。垂直部20aにはその内部を通過する冷延鋼鈑3bを冷却する冷却装置27が設けられている。冷却装置27としては、ガスクーラで冷却されたガスをファンで強制循環させる方式が好ましい。上下の各水平部20b,20cと垂直部20aの間には、図1(b)に示すように、それぞれ案内ロール21,22が配設されている。溶融めっきルート用炉殻11は、図2に示すように、合金化炉11a,ミニマムスパングル装置11b及び急冷装置11cを併設してなる。
【0020】
焼鈍炉2の搬出部4には、スナウト7に向かう出口を開閉するドア28が設けられている。このドア28は、溶融めっき槽8でのシールが可能なので、絶対に必要というものではない。但し、ドア28があれば、冷延鋼鈑製造時に溶融めっき槽8のメンテナンスが可能となる。また、冷延ルート用固定炉殻23が上部炉殻12と合流する部分には、溶融めっきルートR1を開閉するドア29が設けられている。
【0021】
切替炉殻ユニット10の冷延ルート用炉殻20の下部水平部20bと焼鈍炉2の搬出部4の第2出口19との間には、これらを気密に接続する接続ユニット30が装着されるようになっている。同様に、冷延ルート用炉殻20の上部水平部20cと冷延ルート用固定炉殻23との間には、これらを気密に接続する接続ユニット31が装着されるようになっている。これらの接続ユニット30,31の接続手段としては、ボルト、クランプ、シリンダ等任意の手段を採用することができる。
【0022】
前記構成からなる鋼鈑製造装置の動作を説明すると、まず、溶融めっきルートR1では、図1(a)に示すように、切替炉殻ユニット10を水平方向に移動させ、溶融めっきルート用炉殻11のうち合金化炉11a、ミニマムスパングル装置11b及び急冷装置11cのいずれかを鋼鈑の種類に応じて選択して溶融めっきルートR1上に一致させる。また、焼鈍炉2の搬出部4の第1出口6のドア28を開放し、上部炉殻12のドア29を開放する。焼鈍炉2で焼鈍された鋼鈑3は、亜鉛めっきの場合は約460℃まで、アルミめっきの場合は約670℃まで、アルミ55%,亜鉛45%のめっきの場合は約600℃までの温度状態で案内ロール5を介してスナウト7を通過し、溶融めっき槽8の溶融めっき液に浸漬され、ここで亜鉛やアルミ等の溶融めっきが施される。溶融めっきされた溶融めっき鋼鈑3aは溶融めっき槽8内のポットロール9により立ち上げられ、溶融めっきルート用炉殻11の合金化炉11a、ミニマムスパングル装置11b及び急冷装置11cのうち選択された炉殻を通過して処理される。合金化炉11aでは、溶融めっきされた鋼鈑3aは約520〜約550℃に加熱されて、めっき層が合金化される。ミニマムスパングル装置11bでは、溶融めっきされた鋼鈑3aは亜鉛パウダー又は薬液を吹き付けられて、めっき表面のスパングル(花模様)が縮小される。急冷装置11cは、主としてアルミ系のめっきに用いられる。この急冷装置11cでは、溶融めっきされた鋼鈑3aは約11℃/秒以上の速度で、アルミめっきの場合は約450℃、アルミ55%,亜鉛45%のめっきの場合は約370℃まで急冷されて、スパングルが縮小される。溶融めっきルート用炉殻11で処理された溶融めっき鋼鈑3aは、上部炉殻12を通過しながら約150℃まで冷却され、水冷槽15でさらに冷却された後、図示しない次の工程に搬送される。
【0023】
冷延ルートR2に切り換えるには、図1(b)に示すように、切替炉殻ユニット10を水平方向に移動させ、冷延ルート用炉殻20を冷延ルートR2に一致させる。また、焼鈍炉2の搬出部4の第1出口6のドア28を閉塞し、上部炉殻12のドア29を閉塞しておく。そして、冷延ルート用炉殻20の下部水平部20bと焼鈍炉2の排出部4の第2出口19との間に接続ユニット30を装着し、上部水平部20cと冷延ルート用固定炉殻23との間にも接続ユニット31を装着する。焼鈍炉2から焼鈍された鋼鈑3は直進し、接続ユニット30を介して冷延ルート用炉殻20の下部水平部20bに入り、案内ロール21により垂直部20aに立ち上げられ、ここで冷却装置27により冷却される。冷却された冷延鋼鈑3bは、案内ロール22により上部水平部20cに移動し、接続ユニット31、冷延ルート用固定炉殻23に入り、上部炉殻12を下降しながら約150℃まで冷却され、水冷槽15でさらに冷却された後、図示しない次の工程に搬送される。
【0024】
前記第1実施形態では、冷延ルート用炉殻20が、合金化炉11a、ミニマムスパングル装置11b及び急冷装置11cを併設してなる溶融めっきルート用炉殻11と一体に接合されている。このため、溶融めっきルートR1で合金化炉11a、ミニマムスパングル装置11b及び急冷装置11cを選択するための移動装置と同一の移動装置により、冷延ルートR2への切り替えが可能となり、構造が簡単である。また、ルート切替の移動手段である支持架構25と軌条26等は、既存の溶融めっきルートR1の支持架構25と軌条26等を使用することができる。
【0025】
また、前記第1実施形態では、切替炉殻ユニット10の冷延ルート用炉殻20に冷却装置27を設けたので、冷延ルートR2の他の個所に冷却装置を別途設ける必要がなく、さらに構造が簡単となる。
【0026】
<第2実施形態>
図3は、本発明の第2実施形態による鋼鈑製造装置1Bを示す。以下に説明する第2実施形態及びその変形例においては、前記第1実施形態と同一部分には同一符号を附して説明を省略する。
【0027】
この鋼鈑製造装置1Bにおいても、焼鈍炉2の下流側に溶融めっき鋼鈑3aを製造する溶融めっきルートR1と、溶融めっきを行うことなく冷延鋼鈑3bを製造する冷延ルートR2が設けられている。
【0028】
溶融めっきルートR1は、図3(a)に示すように、焼鈍炉2の搬出部4から案内ロール5により斜めに下降し、第1出口6及びスナウト7を通って溶融めっき槽8に入り、該溶融めっき槽8内に設けたポットロール9により上方に立ち上がり、合金化炉11a及び保持帯32を通過し、さらに逆U字形の上部炉殻12に入り、案内ロール13,14により下降して水冷槽15に入り、該水冷槽15内に設けたポットロール16により上方に立ち上がり、水切装置17を通って案内ロール18により水平に向かうルートである。
【0029】
冷延ルートR2は、図3(b)に示すように、焼鈍炉2の搬出部4から案内ロール33により上昇し、第2出口34を出て溶融めっき槽8をバイパスする冷延ルート用バイパス炉殻35に入り、該冷延ルート用バイパス炉殻35内を案内ロール36により水平に向い、保持帯32に入って案内ロール37により上昇し、さらに案内ロール38により水平に向かい、保持帯32を出て冷延ルート接続ユニット39及び冷延ルート用固定炉殻23を通過して上部炉殻12の立ち下がり部に入り、案内ロール24により下降して水冷槽15に入り、以下溶融めっきルートR1と同様に、水冷槽15内に設けたポットロール16により上方に立ち上がり、水切装置17を通って案内ロール18により水平に向かうルートである。
【0030】
前記合金化炉11aは、単独でもよいし、図8に示すように、ミニマムスパングル装置及び急冷装置を併設した炉殻ユニットとしてもよい。この場合、炉殻ユニットは、支持架構25に支持されて1対の軌条26上を水平方向に往復移動可能にする。
【0031】
前記保持帯32には、溶融めっきルートR1で溶融めっき鋼鈑3aを一定温度に保持するヒータ32aと、冷延ルートで冷延鋼鈑3bを冷却する冷却装置40が設けられている。冷却装置40としては、ガスクーラ40aで冷却されたガスをファン40bで強制循環させる方式が好ましい。この保持帯32は、溶融めっきルートR1におけるヒータ32aによる溶融めっき鋼鈑3aの温度保持機能と、冷延ルートR2における冷却装置40による冷延鋼鈑3bの徐冷又は冷却機能とを兼用したルートとなる。
【0032】
第1実施形態と同様、焼鈍炉2の搬出部4には、スナウト7に向かう第1出口6を開閉するドア28が設けられている。このドア28は、溶融めっき槽8でのシールが可能なので、絶対に必要というものではない。但し、ドア28があれば、冷延鋼鈑製造時に溶融めっき槽8のメンテナンスが可能となる。また、冷延ルート用固定炉殻23が上部炉殻12と合流する部分には、溶融めっきルートR1を開閉するドア29が設けられている。冷延ルート用バイパス炉殻35と保持帯32及び搬出部4との接続手段、冷延ルート接続ユニット39と保持帯32及び冷延ルート用固定炉殻23との接続手段としては、ボルト、クランプ、シリンダ等任意の手段を採用することができる。
【0033】
前記構成からなる鋼鈑製造装置1Bの動作を説明すると、まず、溶融めっきルートR1では、図3(a)に示すように、焼鈍炉2の搬出部4の第1出口6のドア28を開放し、上部炉殻12のドア29を開放する。焼鈍炉2から焼鈍された鋼鈑3は、亜鉛めっきの場合は約460℃まで、アルミめっきの場合は約670℃まで、アルミ55%,亜鉛45%のめっきの場合は約600℃までの温度状態で案内ロール5を介してスナウト7を通過し、溶融めっき槽8の溶融めっき液に浸漬され、ここで亜鉛やアルミ等の溶融めっきが施される。溶融めっきされた鋼鈑3aは溶融めっき槽8内のポットロール9により立ち上げられ、合金化炉11aを通過し、ここで約520〜約550℃に加熱されて、めっき層が合金化される。合金化炉11aで処理された溶融めっき鋼鈑3aは、保持帯32のヒータ32aにより一定時間、約520〜約550℃に保持された後、上部炉殻12を通過しながら約150℃まで冷却され、水冷槽15でさらに冷却された後、図示しない次の工程に搬送される。
【0034】
冷延ルートR2に切り換えるには、図3(b)に示すように、焼鈍炉2の搬出部4の第1出口6のドア28を閉塞し、上部炉殻12のドア29を閉塞しておく。また、保持帯32の下部と焼鈍炉2の排出部4の第2出口34との間に冷延ルート用バイパス炉殻35を装着し、保持帯32の上部と冷延ルート用固定炉殻23との間に冷延ルート接続ユニット39を装着する。焼鈍炉2で焼鈍された鋼鈑3は、案内ロール33を介して冷延ルート用バイパス炉殻35に入り、案内ロール36により案内されて保持帯32に入り、ここで冷却装置40を利用して冷却される。冷却された冷延鋼鈑3bは、案内ロール38により水平に向かい、冷延ルート接続ユニット39、冷延ルート用固定炉殻23に入り、上部炉殻12を下降しながら約150℃まで冷却され、水冷槽15でさらに冷却された後、図示しない次の工程に搬送される。
【0035】
前記第2実施形態では、溶融めっきルートR1の保持帯32が冷延ルートR2の徐冷帯又は冷却帯として兼用されるので、構造が簡単である。また、冷延ルートR2の他の個所に徐冷帯又は冷却帯を別途設ける必要がない。
【0036】
<第2実施形態の変形例>
図4は、前記第2実施形態の変形例による鋼鈑製造装置1B’を示す。第2実施形態では、冷延ルート用バイパス炉殻35を焼鈍炉2の搬出部4と保持帯32との間に装着するようにしたが、この変形例では、冷延ルート用バイパス炉殻41は合金化炉11aに併設して一体に接合された切替炉殻ユニット42となっており、この切替炉殻ユニット42は支持架構25に支持されて1対の軌条26上を水平方向に往復移動可能になっている。
【0037】
前記冷延ルート用バイパス炉殻41は水平部41aと垂直部41bからなるL字形で、水平部41aと垂直部41bの間には案内ロール43が設けられている。合金化炉11aは、単独でもよいし、図5に2点鎖線で示すように、ミニマムスパングル装置11b及び急冷装置11cを併設してもよい。
【0038】
冷延ルート用バイパス炉殻41の水平部41aと焼鈍炉2の搬出部4の第2出口44との間には、これらを気密に接続する接続ユニット45が装着されるようになっている。同様に、冷延ルート用バイパス炉殻41の垂直部41bと保持帯32との間には、これらを気密に接続する接続ユニット46が装着されるようになっている。これらの接続ユニット45,46の接続手段としては、ボルト、クランプ、シリンダ等任意の手段を採用することができる。
【0039】
この第2実施形態の変形例による鋼鈑製造装置1B’の動作を説明すると、まず、溶融めっきルートR1では、図4(a)に示すように、切替炉殻ユニット42を水平方向に移動させ、合金化炉11aを溶融めっきルートR1上に一致させる。また、焼鈍炉2の搬出部4の第1出口6のドア28を開放し、上部炉殻12のドア29を開放する。焼鈍炉2で焼鈍された鋼鈑3は、亜鉛めっきの場合は約460℃まで、アルミめっきの場合は約670℃まで、アルミ55%,亜鉛45%のめっきの場合は約600℃までの温度状態で案内ロール5を介してスナウト7を通過し、溶融めっき槽8の溶融めっき液に浸漬され、ここで亜鉛やアルミ等の溶融めっきが施される。溶融めっきされた鋼鈑3aは溶融めっき槽8内のポットロール9により立ち上げられ、合金化炉11aを通過し、ここで約520〜約550℃に加熱されて、めっき層が合金化される。合金化炉11aで処理された溶融めっき鋼鈑3aは、保持帯32でヒータ32aにより一定時間、約520〜約550℃に保持された後、上部炉殻12を通過しながら約150℃まで冷却され、水冷槽15でさらに冷却された後、図示しない次の工程に搬送される。
【0040】
冷延ルートR2に切り換えるには、図4(b)に示すように、切替炉殻ユニット42を水平方向に移動させ、冷延ルート用バイパス炉殻41を冷延ルートR2に一致させる。また、焼鈍炉2の搬出部4の第1出口6のドア28を閉塞し、上部炉殻12のドア29を閉塞しておく。さらに、冷延ルート用バイパス炉殻41の水平部41aと焼鈍炉2の第2出口44との間、及び冷延ルート用バイパス炉殻41の垂直部41bと保持帯32との間、保持帯32の上部と冷延ルート用固定炉殻23との間に、それぞれ接続ユニット45,46,39を装着する。焼鈍炉2から焼鈍された鋼鈑3は、直進し第2出口44を出て冷延ルート用バイパス炉殻41に入り、案内ロール43により案内されて保持帯32に入り、ここで冷却装置40を利用して冷却される。冷却された冷延鋼鈑3bは、案内ロール38により水平に向かい、冷延ルート接続ユニット39、冷延ルート用固定炉殻23に入り、上部炉殻12を下降しながら約150℃まで冷却され、水冷槽15でさらに冷却された後、図示しない次の工程に搬送される。
【0041】
前記第2実施形態の変形例では、冷延ルート用バイパス炉殻41が合金化炉11aと一体で水平方向に移動可能になっているので、溶融めっきルートR1での合金化炉11a、ミニマムスパングル装置11b及び急冷装置11cの選択と同一の移動手段により、冷延ルートR2への切り替えが可能となり、構造が簡単である。また、移動手段の架構も既存の溶融めっきルートのものを使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1実施形態による鋼鈑製造装置の溶融めっきルート(a)と冷延ルート(b)を示す正面図。
【図2】図1の切替炉殻ユニットの斜視図。
【図3】本発明の第2実施形態による鋼鈑製造装置の溶融めっきルート(a)と冷延ルート(b)を示す正面図。
【図4】本発明の第2実施形態の変形例による鋼鈑製造装置の溶融めっきルート(a)と冷延ルート(b)を示す正面図。
【図5】図4の切替炉殻ユニットの斜視図。
【図6】従来の鋼鈑製造装置の溶融めっきルート(a)と冷延ルート(b)を示す正面図。
【図7】図6のルート切替炉殻ユニットの斜視図。
【図8】図6の溶融めっき鋼鈑用炉殻ユニットの斜視図。
【符号の説明】
【0043】
1A,1B、1B’ 鋼鈑製造装置
2 焼鈍炉
3 鋼鈑
3a 溶融めっき鋼鈑
3b 冷延鋼鈑
8 溶融めっき槽
10 切替炉殻ユニット
11 溶融めっきルート用炉殻
11a 合金化炉
11b ミニマムスパングル装置
11c 急冷装置
20 冷延ルート用炉殻
27 冷却装置
32 保持帯
35 冷延ルート用バイパス炉殻
39 冷延ルート接続ユニット
41 冷延ルート用バイパス炉殻
42 切替炉殻ユニット
R1 溶融めっきルート
R2 冷延ルート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼鈍炉から搬出される鋼鈑を溶融めっき槽に導入して溶融めっき鋼鈑を製造する溶融めっきルートと、焼鈍炉から搬出される鋼鈑を溶融めっき槽に導入しないでバイパスして冷延鋼鈑を製造する冷延ルートとを切り替え可能な鋼鈑製造装置において、
溶融めっき槽から立ち上がる溶融めっきルートに、垂直方向に延びる少なくとも合金化炉からなる溶融めっきルート用炉殻と垂直方向に延びる冷延ルート用炉殻とを併設した炉殻ユニットを水平方向に移動可能に設け、
溶融めっきルートでは、前記炉殻ユニットを一方に移動させて前記溶融めっきルート用炉殻を前記溶融めっきルートに一致させ、
冷延ルートに切り替えるときは、前記炉殻ユニットを他方に移動させて、前記冷延ルート用炉殻の下端に前記溶融めっき槽をバイパスした冷延ルートを接続し、上端に後続の冷延ルートを接続することを特徴とする鋼鈑製造装置。
【請求項2】
前記炉殻ユニットの冷延ルート用炉殻に、焼鈍炉から搬出される鋼鈑を冷却する冷却装置を備えたことを特徴とする請求項1に記載の鋼鈑製造装置。
【請求項3】
焼鈍炉から搬出される鋼鈑を溶融めっき槽に導入して溶融めっき鋼鈑を製造する溶融めっきルートと、焼鈍炉から搬出される鋼鈑を溶融めっき槽に導入しないでバイパスして冷延鋼鈑を製造する冷延ルートとを切り替え可能で、前記溶融めっき槽から立ち上がる溶融めっきルートに合金化炉と保持帯とが設けられた鋼鈑製造装置において、
溶融めっきルートでは、前記合金化炉と保持帯を使用し、
冷延ルートに切り替えるときは、前記保持帯の上流に前記溶融めっき槽をバイパスした冷延ルートを接続し、前記保持帯の下流に後続の冷延ルートを接続して、前記保持帯を前記冷延ルートの徐冷帯又は冷却帯と兼用することを特徴とする鋼鈑製造装置。
【請求項4】
前記合金化炉からなる溶融めっきルート用炉殻と冷延ルート用炉殻とを併設した炉殻ユニットを水平方向に移動可能に設け、
溶融めっきルートでは、前記炉殻ユニットを一方に移動させて前記合金化炉からなる溶融めっきルート用炉殻を前記溶融めっきルートに一致させ、前記合金化炉と保持帯を使用し、
冷延ルートに切り替えるときは、前記炉殻ユニットを他方に移動させて、前記冷延ルート用炉殻の下端に前記溶融めっき槽をバイパスした冷延ルートを接続し、上端に前記保持帯を接続して、前記保持帯を前記冷延ルートの徐冷帯又は冷却帯と兼用することを特徴とする請求項3に記載の鋼鈑製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−314829(P2007−314829A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−144374(P2006−144374)
【出願日】平成18年5月24日(2006.5.24)
【出願人】(000211123)中外炉工業株式会社 (170)
【Fターム(参考)】