説明

錠剤分割装置

【課題】錠剤の厚さが不明でも錠剤に対する落下経路の溝深さ調整を自動で行う。
【解決手段】上端から下端まで溝状の錠剤落下経路32が形成されている落下錠剤案内部材31と、錠剤落下経路32を下ってきた分割対象の錠剤(10)を錠剤落下経路の途中の裁断位置33に経路開閉にて一時保持する受止部材34と、裁断位置33で錠剤を裁断する裁断機構40と、錠剤落下経路32の上流部分経路32aを覆う溝深規定部材37と、錠剤落下経路32の溝底と溝深規定部材37の溝底対向面との相対距離(G)を拡縮する厚み調整機構38と、上流部分経路32aの錠剤通過を検出する錠剤通過検出手段39と、その検出結果を監視しながら厚み調整機構38を作動させて相対距離(G)を錠剤の厚さに適合させる制御装置23とを備える。裁断時に速度変更や保持解除を行う所定時期を錠剤の厚さに適合させる調整も、対向刃41の駆動電流を検出することにより、自動で行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、錠剤を裁断して幾つかの錠剤裁断片に分割する錠剤分割装置に関する。
【背景技術】
【0002】
錠剤を2片に分割する錠剤分割装置として、一錠ずつ受けた錠剤にカッターを押し下げて錠剤を裁断する従前の錠剤分割機の他、一錠単位で保持・収容されていた錠剤を一錠未満の単位で後続の包装装置等に自動供給できるよう、錠剤落下経路(錠剤通過経路)を断つ態様で切り込むことにより錠剤落下経路の中の錠剤を通過方向の先後に分割して錠剤裁断片を個々に排出する錠剤供給装置や(例えば特許文献1参照)、受けた錠剤をカッターの刃で上下に裁断して下側の錠剤裁断片は先に排出するが上側の錠剤裁断片はカッター上に一旦留め置き次のカッター動作にて遅れて排出する錠剤供給装置が実用化されている(例えば特許文献2参照)。
【0003】
そのような従来装置は、錠剤分包機の錠剤収納庫の中や下などに組み込まれていて、裁断機構に具備されている一枚のカッター刃を、保持機構にて裁断位置に保持されている分割対象の錠剤に、切り込ませるようになっている。
また、それら従来の錠剤分割装置では、外部の錠剤フィーダ等から錠剤分割装置まで錠剤を導くダクト等は別として、錠剤分割装置内では、錠剤落下経路(錠剤通過経路)が縦穴状に刳り貫き形成されて鉛直になっており、そこを錠剤が自然落下に近い状態で真っ直ぐ鉛直下方に落下するようになっている。
【0004】
さらに、裁断機構に着目してみると、裁断機構の刃を二枚にした錠剤分割装置も開発されている。この錠剤分割装置は、真っ直ぐな刃を具備した裁断機構にて錠剤を裁断して複数の錠剤裁断片に分割する錠剤分割装置において、前記刃が対向状態で二枚設けられ、前記裁断機構が、前記対向二枚刃を平行に保ちながらその対向間隙を拡縮させて錠剤裁断を行うものであって対向間隙拡縮に際して前記対向二枚刃を平行方向へ相対的にずらすようになっている(特許文献3参照)。
また、裁断機構の刃を回転刃にしたものも開発されている(特許文献4参照)。
【0005】
このような錠剤分割装置では、分割対象の錠剤を保持機構にて裁断位置に保持することで錠剤の位置を規制しながら、裁断機構の刃を錠剤に切り込ませることで、錠剤の裁断を的確に遂行するようになっている。
そして、保持機構の調整が適切に行われていれば、何時でも、錠剤が適切な裁断位置に保持されて、裁断機構の刃先が錠剤の所期部位に当たるときの刃先当接部位の変動は目視確認不能なほど小さくなるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−226088号公報
【特許文献2】特開平11−226089号公報
【特許文献3】特開2011−083357号公報
【特許文献4】特開2011−097969号公報
【特許文献5】特願2010−170968号
【特許文献6】特開2011−042955号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、最近になって開発された錠剤分割装置に言及すると(特許文献5参照)、分割対象の錠剤を裁断位置に保持する保持機構と、前記裁断位置に向けて進退する対向刃を具備しており前記対向刃の対向間隙を拡縮させて前記錠剤を裁断する裁断機構と、前記裁断機構の動作手順または前記裁断機構および前記保持機構の動作手順を規定する裁断動作規定手段とを備えた錠剤分割装置であって、前記裁断動作規定手段は、錠剤裁断時に前記対向間隙を縮小させる際、前記対向刃が前記錠剤を挟むまでは前記保持機構による錠剤保持を継続させ、前記対向刃が前記錠剤を挟んでからは前記保持機構による錠剤保持を解除させて前記錠剤を前記対向刃だけで挟持させ、前記保持機構による錠剤保持が解除されてから前記対向刃を前記錠剤に切り込ませるようになったものが、開発されている。
【0008】
この錠剤分割装置にあっては(特許文献5効果欄を参照)、錠剤裁断時に対向刃が錠剤に切り込むときには錠剤が保持機構から離れているようにしたことにより、対向刃の切り込みで錠剤に変形や変位が生じたとしても、それによって保持機構から錠剤に反力が作用するということが起こらなくなっている。
このように、裁断状態の変動要因であるとともに変動量の増幅要因でもあると考えられる保持機構からの反力が生じないように改良したため、割れが安定して、錠剤裁断片の量目の変動が更に小さくて済むものとなっている。
【0009】
また(特許文献6参照)、分割精度を向上させたうえで、多様な形状の各種錠剤に対して適合させる調整等の負担を軽減することを目的として、上端から下端まで溝状の錠剤落下経路が形成されている落下錠剤案内部材と、前記錠剤落下経路を下ってきた分割対象の錠剤を前記錠剤落下経路の途中の裁断位置に経路開閉にて一時保持する受止部材と、前記裁断位置で前記錠剤を裁断する裁断機構とを備えた錠剤分割装置であって、前記錠剤落下経路のうち前記裁断位置より上流の部分を覆う溝深規定部材と、前記錠剤落下経路の溝底と前記溝深規定部材の溝底対向面との相対距離を拡縮する厚み調整機構と、前記錠剤の厚さ情報を取得して前記厚み調整機構を作動させることにより前記相対距離を前記錠剤の厚さに適合させる制御装置とを具備した錠剤分割装置も、開発されている。
【0010】
この錠剤分割装置にあっては(特許文献6効果欄を参照)、錠剤形状情報のうち最小寸法である厚さ情報を制御装置に与えれば、後は制御装置と厚み調整機構と溝深規定部材との協動により自動で、錠剤落下経路の溝底と溝深規定部材の溝底対向面との相対距離が錠剤の厚さに適合させられるため、厚さの異なる各種錠剤に対して適合させる調整の負担が軽減される。なお(特許文献6の実施例を参照)、制御装置が錠剤の厚さ情報を取得する手段としては、着脱式錠剤カセット付属のデータ担体からの読出や、操作部からの直接入力、上位装置からの通信回線経由ダウンロードなどが具体例として挙げられている。
【0011】
しかしながら、このように錠剤の厚さ情報を外部から取得する錠剤厚情報取得手段は、錠剤の厚さ情報が分かっていることと、要求に応じて提供されることとを前提としているため、分割対象となる各種の錠剤について予め採寸がなされてデータが提供可能に保持されていることが必要なので、そのような準備の済んでいない薬剤たとえば新薬や急遽使用することになった薬剤などについてまでは、十分に機能せず、迅速で適切な対応が期待できない。また、外部にサポート手段が存在していないと、やはり機能せず、使えない。
【0012】
例えば、ダウンロード方式は通信設備のない所では使えず、データ担体からの読出は錠剤カセット等に付属品が無いと使えず、操作入力方式は面倒なうえ誤入力のおそれもある。ダウンロード方式やデータ担体読出方式でもデータ登録作業ではデータ誤入力のおそれがなくなる訳でない。このように、上記の錠剤分割装置は、厚さの異なる各種錠剤に対して適合させる調整の負担を単独で軽減できる実施形態まで明らかになった訳ではない。
そこで、分割対象錠剤の厚さが不明でも錠剤に対する落下経路の溝深さ調整を自動で行う錠剤分割装置を実現することが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の錠剤分割装置は(解決手段1)、このような課題を解決するために創案されたものであり、上端から下端まで溝状の錠剤落下経路が形成されている落下錠剤案内部材と、前記錠剤落下経路を下ってきた分割対象の錠剤を前記錠剤落下経路の途中の裁断位置に経路開閉にて一時保持する受止部材と、前記裁断位置で前記錠剤を裁断する裁断機構と、前記錠剤落下経路のうち前記裁断位置より上流の部分を覆う溝深規定部材と、前記錠剤落下経路の溝底と前記溝深規定部材の溝底対向面との相対距離を拡縮する厚み調整機構と、前記錠剤落下経路のうち前記裁断位置より上流であって前記溝深規定部材に覆われている所に係る前記錠剤の通過を検出する錠剤通過検出手段と、前記錠剤通過検出手段の検出結果を監視しながら前記厚み調整機構を作動させて前記相対距離を狭い閉鎖距離から広い全開距離へ向けて広げさせるとともに前記錠剤の通過検知に応じて前記厚み調整機構を停止させて前記相対距離を固定することにより前記相対距離を前記錠剤の厚さに適合させる制御装置とを備えている、というものである。
【0014】
また、本発明の錠剤分割装置は(解決手段2)、上記解決手段1の錠剤分割装置であって、前記裁断機構が前記制御装置の制御に従う電動の対向刃を具備しており前記対向刃の対向間隙を広げた状態から狭めることで前記錠剤を挟持し更に狭めて裁断するものであり、前記対向刃の駆動電流を検出する駆動電流検出手段が設けられ、前記制御装置が、前記対向刃に前記錠剤を挟持させてから裁断させるまでの所定時期に前記対向刃の進行速度の変更と前記受止部材による前記錠剤の一時保持の解除とのうち何れか一方または双方を行うものであって、前記駆動電流検出手段の検出結果を監視しながら前記対向刃に前記錠剤を挟持させるとともにそのときの前記駆動電流の急増に基づいて前記対向刃による挟持位置を検知することにより前記所定時期を前記錠剤の厚さに適合させるようになっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
このような本発明の錠剤分割装置にあっては(解決手段1)、落下経路の溝深さを調整するときには、制御装置の制御によって、先ず落下経路の溝深さが即ち錠剤落下経路の溝底と溝深規定部材の溝底対向面との相対距離が狭い閉鎖距離から広がるが、それが錠剤の厚さを超えると、直ちに、錠剤が落下するとともに、そのことが錠剤通過検出手段で検出されて、その検出結果を監視している制御装置の制御によって厚み調整機構が動作を停止するので、落下経路の溝深さが固定される。こうして、錠剤の厚さが閉鎖距離と全開距離との間にあれば、その厚さが予め判明しているか否かに拘わらず、落下経路の溝深さを錠剤の厚さに適合させる調整が、自動で行われる。
したがって、この発明によれば、分割対象錠剤の厚さが不明でも錠剤に対する落下経路の溝深さ調整を自動で行う錠剤分割装置を実現することができる。
【0016】
また、本発明の錠剤分割装置にあっては(解決手段2)、対向刃が錠剤を挟持してから裁断する前に対向刃の進行速度の変更および/または受止部材による錠剤の一時保持の解除が行われるので、割れが安定して錠剤裁断片の量目の変動が小さくなるという利点を引き継いでいるが、その速度変更や保持解除を行う所定時期についても、厚さの異なる各種錠剤に対して適合させる調整の負担を装置単独で軽減できるようになっている。すなわち、所定時期の調整は一般に対向刃進行の時間経過や進行位置に係る設定値の変更等にてなされるが、その調整を行うときには、制御装置によって、裁断状態に影響する動作を行っても良い挟持位置が自動検知されて、そのときの対向刃の対向間隙が錠剤裁断時に適合させるべき錠剤の厚さとして把握されるとともに、それ以後は、対向刃進行中に速度変更や保持解除を行う所定時期を定める設定値が対向間隙の把握済み厚さへの到達時期に対応した値に固定されるので、錠剤の厚さが予め判明しているか否かに拘わらず、速度変更や保持解除を行う所定時期を錠剤の厚さに適合させる調整が、自動で行われる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例1について、錠剤分割装置の構造を示し、(a)が外観斜視図、(b)が右側面図、(c)が保持機構と裁断機構の右側面図、(d)が内部を透視した保持機構の正面図である。
【図2】(a)が落下錠剤案内部材の正面図、(b)がそれに受止部材を装着した正面図、(c)が溝深規定部材の正面図、(d)が固定覆板の正面図、(e)が保持機構の正面図である。
【図3】(a)〜(e)が何れも錠剤落下経路の上流部分に係る落下錠剤案内部材および溝深規定部材の縦断右側面図である。
【図4】(a)〜(h)が何れも裁断機構の要部の右側面図である。
【図5】(a)が裁断機構の駆動系と制御系のブロック図、(b)が裁断調整前の位置指令の波形例を示すタイムチャート、(c)が駆動電流検出信号の波形例を示すタイムチャート、(d)が裁断調整後の位置指令の波形例を示すタイムチャートである。
【図6】(a)〜(f)が何れも保持機構の要部の表面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
このような本発明の錠剤分割装置について、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1により説明する。
図1〜6に示した実施例1は、上述した解決手段1〜2(出願当初の請求項1〜2)を総て具現化したものである。
なお、それらの図示に際しては、簡明化等のため、ボルト等の締結具や,ヒンジ等の連結具,ギヤ等の伝動部材,モータドライバ等の電気回路の詳細,コントローラ等の電子回路の詳細などは図示を割愛し、発明の説明に必要なものや関連するものを中心に図示した。
【実施例1】
【0019】
本発明の錠剤分割装置の実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図1は、(a)が錠剤分割装置20の外観斜視図、(b)が錠剤分割装置20の右側面図、(c)が保持機構30と裁断機構40の右側面図、(d)が内部を透視した保持機構30の正面図である。また、図2は、(a)が落下錠剤案内部材31の正面図、(b)がそれに受止部材34を装着した正面図、(c)が溝深規定部材37の正面図、(d)が固定覆板36の正面図、(e)が保持機構30の正面図である。
【0020】
さらに、図3(a)〜(e)は何れも錠剤落下経路32の上流部分32aに係る落下錠剤案内部材31および溝深規定部材37の縦断右側面図であり、図4(a)〜(h)は何れも裁断機構40の要部の右側面図である。また、図5は、(a)が前刃進退部材43に係る駆動系および制御系のブロック図、(b)が裁断調整前の位置指令Psの波形例を示すタイムチャート、(c)が駆動電流検出信号Ifの波形例を示すタイムチャート、(d)が裁断調整後の位置指令Psの波形例を示すタイムチャートである。また、図6(a)〜(f)は何れも保持機構30の要部の表面図である。
【0021】
この錠剤分割装置20は(図1(a),(b)参照)、錠剤カセット21と操作部22と制御装置23と本体部24と受器25と中継部26と錠剤フィーダベース部27と支持フレーム28と保持機構30と裁断機構40と図示しない電源部とを具えているが、そのうち制御装置23と中継部26と支持フレーム28と保持機構30と裁断機構40と電源部は本体部24に内蔵されており、操作部22と錠剤フィーダベース部27は本体部24に固定的に装着されて操作面やカセット装着面を筐体外面に露出しており、錠剤カセット21は錠剤フィーダベース部27に着脱自在に装着され、受器25は本体部24の底部の前面開口から引き出し自在に挿着されるようになっている。
【0022】
本体部24は(図1(b)参照)、最上部に錠剤フィーダベース部27が固定的に配置され、中央部にほぼ鉛直の支持フレーム28が配置され、その下部の手前には中継部26が固定配置され、更にその下方には受器25が出し入れできるようになっている。
本体部24の中央部では、保持機構30と裁断機構40が支持フレーム28に取り付けられていて(図1(b),(c)参照)、そのうち保持機構30は支持フレーム28と同じ鉛直の姿勢をとり、裁断機構40は保持機構30と垂直な水平の姿勢をとっている。
【0023】
錠剤フィーダベース部27とそれに装着された錠剤カセット21は(図1(a),(b)参照)、錠剤10の逐次供給を自動で行うためのものであり、制御装置23の制御に従って錠剤フィーダベース部27の駆動モータが動作すると、ベース板に装着された錠剤カセット21から錠剤10を一錠ずつ排出させ、それを導入口やダクトといったガイド経由で保持機構30の後述する錠剤落下経路32の上流部分経路32aへ上端から送り込むようになっている(図3参照)。
【0024】
保持機構30は(図1(b)〜(d),図2,図3参照)、錠剤カセット21から錠剤フィーダベース部27及びガイド経由で落下して錠剤落下経路32のうち上流部分経路32aに入って来た分割対象の錠剤10を受止部材34にて裁断位置33に一時保持するものであり(図6参照)、裁断機構40は(図1(b)〜(d),図4参照)、その錠剤10を裁断位置33のスリット35のところで裁断して二個の錠剤裁断片10b,10cに分割するものである(図6参照)。中継部26は(図1(b)参照)、収集用ガイドや緩衝用バッファを具備していて、保持機構30の錠剤落下経路32のうち左側分岐経路32bから落下した錠剤裁断片10bを左側受器25bへ送り込み、保持機構30の錠剤落下経路32のうち右側分岐経路32cから落下した錠剤裁断片10cを右側受器25cへ送り込むようになっている(図6(f)参照)。
【0025】
受器25は(図1(a),(b)参照)、錠剤10を分割して出来た錠剤裁断片10b,10cを受け入れて貯めておく角箱状や角皿状の容器であり、錠剤裁断片10b,10cを総て一纏めに収容する場合は幅広の容器が単体で使用されるが、ここでは、錠剤10を左右に分割したうち左側の錠剤裁断片10bを収容する左側受器25bと、右側の錠剤裁断片10cを収容する右側受器25cとが、左右に並んだ状態で本体部24に挿着されている。この受器25やそれに錠剤裁断片10b,10cを導く中継部26などは、本体部24から分離可能なユニットにしても良いが、この例では装置運搬の容易化等のため一体的になっている。操作部22や制御装置23も別体化しても良いが、やはり本例では装置運搬の容易化等のため本体部24と一体化されている。
【0026】
保持機構30は(図1〜図3参照)、上述したように分割対象の錠剤10を裁断機構40による裁断に備えて錠剤落下経路32の途中の裁断位置33に止めておくことに加え、裁断機構40と協動して保持機構30による錠剤保持を解除することも行うために、錠剤フィーダベース部27と中継部26との間に配置された板状の落下錠剤案内部材31と、それぞれ上端部を支点にして下端部を揺動しうる可動部材からなる一対の受止部材34とを具えている。また、錠剤落下経路32の上流部分経路32aを落下する錠剤10の姿勢・向きを整えるために、溝深規定部材37と厚み調整機構38とを具備している。
【0027】
さらに、この保持機構30は、錠剤落下経路32の下流部分経路である左側分岐経路32b及び右側分岐経路32cから錠剤裁断片10b,10cが零れるのを防ぐために、左側分岐経路32b及び右側分岐経路32cを含む落下錠剤案内部材31の下半分の表面・前面を覆う固定覆板36を具備している(図1(c),(d),図2(d),図2(e)参照)。これらの部材や機構34,36,37,38は、錠剤落下経路32に沿って配され、落下錠剤案内部材31に装着されている(図1〜図3参照)。
保持機構30の落下錠剤案内部材31には、錠剤カセット21から落下して錠剤落下経路32に投入された錠剤10が錠剤落下経路32の上流部分経路32aを通過したことを検出するための錠剤通過検出センサ39も付設されている。錠剤通過検出センサ39は、非接触で検出できる光学式が使い易く、例えば、錠剤落下経路32の上流部分経路32aの両脇に対向配置された発光素子39bと受光素子39cを具備している。
【0028】
落下錠剤案内部材31は(図1(b),(c)参照)、鉛直な厚めの板体からなり本体部24の前面板や後背面とほぼ平行な状態で本体部24の内部に固定されている。
落下錠剤案内部材31の両面(表裏面・前後面)のうち前向きの表面には(図1(d),図2参照)、落下する錠剤10を案内する錠剤落下経路32が形成されている。
錠剤落下経路32は(図2(a)参照)、落下錠剤案内部材31の表面に彫り込みやプレス等で溝状に形成されて、落下錠剤案内部材31の上端から下端まで連なっている。錠剤落下経路32の途中に設定された裁断位置33には、裁断機構40の刃先を通すためのスリット35が、落下錠剤案内部材31を貫通して穿孔形成されている。
【0029】
錠剤落下経路32のうち裁断位置33より上流側の部分である上流部分経路32aは、一本道であるが、錠剤落下経路32の下流側部分は、裁断位置33のところで、より具体的には裁断位置33の中央のスリット35のところで、そこから左右に分かれる形で、二本の左側分岐経路32bと右側分岐経路32cとに分岐して、縦に並走している。
受止部材34は、その二分岐に対応して、受止部材34が一対の左側経路開閉部材34bと右側経路開閉部材34cとに分かれており、何れの開閉部材34b,34cも制御装置23の制御に従って揺動するが、左側経路開閉部材34bは上流部分経路32aから左側分岐経路32bへの分岐口を開閉し、右側経路開閉部材34cは上流部分経路32aから右側分岐経路32cへの分岐口を開閉するようになっている。
【0030】
本例の錠剤分割装置20は円板状の錠剤10を左右均等に二分割するためのものなので、スリット35が裁断位置33の中央で縦に形成されるとともに、左側経路開閉部材34bと右側経路開閉部材34cとがスリット35を中心にして左右対称に配置されている。左側経路開閉部材34bと右側経路開閉部材34cすなわち一対の受止部材34は、錠剤10を裁断位置33に一時保持するときには、下端部同士を近づけてV字状になって裁断位置33及びスリット35の直ぐ下方で錠剤落下経路32を閉じ、錠剤裁断片10b,10cを左側分岐経路32bに導いて落下させるときには、左側経路開閉部材34bを揺動させて上流部分経路32aと左側分岐経路32bとを連通させ、錠剤裁断片10b,10cを右側分岐経路32cに導いて落下させるときには、右側経路開閉部材34cを揺動させて上流部分経路32aと右側経路開閉部材34cとを連通させ、錠剤裁断片10b,10cを左側分岐経路32b,右側分岐経路32cへ同時落下させるときには、左側経路開閉部材34bと右側経路開閉部材34cを同時に開側へ揺動させるようになっている。
【0031】
溝深規定部材37は(図1(c),(d),図2(c),(e),図3参照)、例えば透明な又は不透明な硬質樹脂製の薄板からなり、錠剤落下経路32の上流部分経路32aに溝開口から入り込んで、錠剤落下経路32のうち上流部分経路32aを前方から塞ぐかのように覆っており、その覆装範囲内で上流部分経路32aの溝底と溝深規定部材37の裏面・後面すなわち溝底対向面とが平行になっている。そして、その平行状態を維持する状態で溝深規定部材37が厚み調整機構付勢バネ37b,37cによって前後移動可能に支持されているので、制御装置23の制御に従って厚み調整機構38が溝深規定部材37を前後方向に移動させることで、錠剤落下経路32の溝底と溝深規定部材37の溝底対向面との相対距離Gが拡縮されるようになっている。
【0032】
裁断機構40は(図1,図4参照)、裁断位置33に向けて進退する手前の前刃41と後方の奥刃42とからなる対向刃41,42を具備しており、その対向刃41,42の対向間隙を拡縮させて裁断位置33の錠剤10を左右へ均等に裁断するものである。前刃41は、高剛性のロッド・スリーブ嵌合タイプの門形支持機構に取着されていて往復動する前刃進退部材43によって裁断位置33のスリット35の前方に支持されており、制御装置23の制御に従って後方のスリット35に向けて進退するようになっている。奥刃42は、落下錠剤案内部材31の裏面で往復動する奥刃進退部材44によって支持されており、制御装置23の制御に従ってスリット35を通過しながら裁断位置33の錠剤10に向けて前方へ進退するようになっている。
【0033】
この裁断機構40は、制御装置23の制御に従って対向刃41,42を作動させることにより、対向刃41,42の対向間隙を拡縮させて錠剤10を挟んで裁断するようになっているが(図4はその様子を時系列で示しており、同図(a)〜(f)は最初の錠剤裁断に係り、同図(g),(h),(e),(f)は二番目以降の錠剤裁断に係る)、その際、裁断完遂前に錠剤10を錠剤落下経路32の溝底からも溝深規定部材37の溝底対向面からも浮かせた状態で挟持し、その後に裁断を完遂するようになっている。しかも、それに加え、対向刃41,42に錠剤10を挟持させてから裁断させるまでの所定時期(後述の時期t2)には、それまで閉じていた受止部材34が制御装置23の制御に従って開いて、受止部材34による錠剤10の一時保持も解除されるので、裁断完遂前に対向刃41,42だけで錠剤10を挟持するようにもなっている。
【0034】
制御装置23は、詳細な図示は割愛したが(図1(b),図5(a)参照)、例えばプログラマブルなマイクロプロセッサシステムやシーケンサからなる電子制御装置であり、錠剤10の逐次供給と裁断とを的確に行うよう、錠剤フィーダベース部27と保持機構30と裁断機構40とを協動させるために、それぞれの電動モータ等の動作制御を行うようになっている。それらのモータのうち前刃進退部材43ひいては前刃41の駆動にはサーボモータ45が用いられており(図5(a)参照)、サーボモータ45に駆動電流を供給するサーボコントローラ46に対して制御装置23が位置指令Psを送出すると、サーボコントローラ46のフィードバック制御にて、サーボモータ45の回転角度ひいては前刃進退部材43及び前刃41の進退位置が位置指令Psに追随するようになっている。
【0035】
そのフィードバック制御は、一般的な二重のフィードバックで良く、具体的には、カレントトランスやトランスデューサ等からなる駆動電流検出部材47にてサーボコントローラ46からサーボモータ45への駆動電流を検出し、その駆動電流検出信号Ifをマイナーループでサーボコントローラ46にフィードバックするとともに、エンコーダやレゾルバ等からなる位置検出部材48にてサーボモータ45の回転角度を検出し、その位置検出信号Pfをメジャーループでサーボコントローラ46にフィードバックするものであるが、ここでは、サーボモータ45の駆動電流ひいては対向刃41の駆動電流を検出した駆動電流検出信号Ifが制御装置23にも送出されるようになっている。
【0036】
この駆動電流検出信号Ifは、対向刃41,42に錠剤10を挟持させてから裁断させるまでの所定時期t2を決定して錠剤10の厚さに適合させるために制御装置23に入力されるが、それに加え、制御装置23は、錠剤落下経路32の上流部分経路32aの溝底と溝深規定部材37の溝底対向面との相対距離Gを錠剤10の厚さに適合させるために錠剤通過検出センサ39による錠剤10の通過検知結果を入力するようにもなっている。そして、制御装置23は、電源投入の直後や、錠剤カセット21が付け替えられたとき、さらには操作部22を介して初期化が指示されたときに、錠剤通過検出センサ39による錠剤通過検知結果に基づく相対距離Gの自動調整と、駆動電流検出部材47による駆動電流検出信号Ifに基づく所定時期t2の自動調整とを、その順に行うようになっている。
【0037】
先ず、相対距離Gの自動調整を詳述すると(図3参照)、制御装置23は、溝深規定部材37がどの位置にいようと(図3(a)参照)、厚み調整機構38を作動させて錠剤落下経路32の上流部分経路32aの溝底へ向けて移動させて、相対距離Gをどの錠剤も通過しえないほど狭い閉鎖距離にしておく(図3(b)参照)。その状態で、錠剤カセット21から錠剤フィーダベース部27のガイドを介して最初の錠剤10が投入されるのを待ち、錠剤10が投入されると(図3(c)参照)、錠剤通過検出センサ39の検出結果を監視しながら、厚み調整機構38を作動させて、溝深規定部材37を溝底から離れる方向へ比較的ゆっくり移動させることで、相対距離Gを閉鎖距離より広い全開距離へ向けて広げさせるようになっている(図3(d)参照)。
【0038】
そして、相対距離Gが錠剤10の厚さより僅かに広くなると、錠剤10が錠剤落下経路32の上流部分経路32aを落下するが、その錠剤10が錠剤通過検出センサ39の所を通過すると(図3(e)参照)、その錠剤10の通過検知が錠剤通過検出センサ39から制御装置23に通知される。制御装置23は、錠剤通過検出センサ39の検出結果を監視しながら厚み調整機構38を作動させており、錠剤10の通過検知に応じて直ちに厚み調整機構38の作動を停止させて、そのときの位置に溝深規定部材37を留め置かせることで相対距離Gの自動調整を終え、その相対距離Gの錠剤落下経路32で二番目以降の錠剤10を落下させるようになっている。このような制御装置23は、相対距離Gを錠剤10の厚さより僅かに広い状態に固定することにより相対距離Gを錠剤10の厚さに適合させるものとなっている。
【0039】
次に、所定時期t2の自動調整を詳述する(図4,図5参照)。ここでは、所定時期t2の自動調整を前刃41の駆動電流に基づいて行うので、所定時期t2の自動調整が前後方向における前刃41の進退位置P2の自動決定と等価なものとなっている。制御装置23は、厚さの不明な最初の錠剤10については、どの錠剤10が落下して来ても対向刃41,42に阻止されることなく円滑に裁断位置33に到達して対向刃41,42の対向間隙に収まるよう、対向刃41,42の対向間隙を最大に広げさせ、前刃41を進退位置P0まで後退させておく(図4(a)参照)。そして、最初の錠剤10が投入されて上述した相対距離Gの自動調整が済むと、その相対距離Gから進退位置P1を決定する。具体的には、対向刃41,42の対向間隙が相対距離Gより僅かに広くて錠剤10を円滑に納められる距離になるよう、前刃41の進退位置P1を決定するようになっている。
【0040】
そして、最初の錠剤10が対向刃41,42の間に到着すると(図4(b)参照)、そのときから(図5(b)時期t0参照)、制御装置23は、対向刃41,42の対向間隙を狭める向きに前刃41を高速で進行させるとともに奥刃42を低速で進行させるようになっている。その際、前刃41の高速進行は前刃41が進退位置P1に到達するまで継続されるが(図5(b)時期t0〜t1の位置指令Ps参照)、錠剤落下経路32の溝底から僅かしか後退していなかった奥刃42については、錠剤10を溝底から浮かすところで一時的に進行を停止させて(図4(c)参照)、前刃41の進退位置P1への到達を待たせる、といった制御も行うように制御装置23はなっている。
【0041】
前刃41が進退位置P1に到達すると(図4(d),図5(b)時期t1参照)、制御装置23は、対向刃41,42の対向間隙を裁断完遂距離に狭めるまで対向刃41,42を共に低速で進行させるようになっている(図5(b)時期t1〜t3の位置指令Ps参照)。また、その際に、前刃41が進退位置P2まで進んで、対向刃41,42が錠剤10を挟持すると(図4(e)参照)、対向刃41,42の進行に錠剤10が抵抗するので、サーボコントローラ46からサーボモータ45へ供給される駆動電流が急増し、それに対応して駆動電流検出信号Ifも急増し、駆動電流検出信号Ifが閾値Itを超える(図5(c)時期t2参照)。制御装置23は、この駆動電流検出信号Ifを監視しているので、対向刃41,42が錠剤10を挟持したときの時期t2(所定時期)及び進退位置P2(挟持位置)を駆動電流の検出に基づいて把握することができる。
【0042】
この制御装置23は、駆動電流検出信号Ifの急増にて把握した上述の錠剤挟持時期t2を、対向刃41,42に錠剤10を挟持させてから裁断させるまでの所定時期t2とする。そして、所定時期t2に、最初の錠剤10についても二番目以降の錠剤10についても受止部材34に一時保持を解除させるとともに、二番目以降の錠剤10については対向刃41,42のうち前刃41の進行速度を変更させるようになっている。すなわち、所定時期t2の自動調整が済んでから処理される二番目以降の錠剤10については、所定時期t2に前刃41の進行速度を高速進行から低速進行へ変更するようになっており(図5(d)時期t1〜t2の位置指令Ps参照)、その速度変更を時期t1に行うのは最初の錠剤10についてだけとなっている(図5(b)参照)。
【0043】
この所定時期t2から時期t3までは、錠剤10が最初であれ二番目以降であれ、制御装置23は、対向刃41,42を低速で進行させ(図5(b),(d)時期t2〜t3の位置指令Ps参照)、前刃41が進退位置P3に到達したら(図4(f)参照)、錠剤10の裁断が完了するので、対向刃41,42を速やかに戻すため高速で逆向き進行させるが(図5(b),(d)時期t3〜t4の位置指令Ps参照)、先に錠剤落下経路32の上流部分経路32aの溝底と溝深規定部材37の溝底対向面との相対距離Gを錠剤10の厚さに適合させているうえ二番目以降の錠剤10については対向刃41,42の対向間隙が調整済み相対距離Gより少し広ければ良いことも判っているので、それに対応した進退位置P1に前刃41を止めておくようになっている(図4(g),(h)参照)。
【0044】
この実施例1の錠剤分割装置20について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。図1(a),(b)は、錠剤分割装置20の斜視図と右側面図であり、本体部24に錠剤カセット21と受器25を装着した状態を示している。また、図3(a)〜(e)は、何れも錠剤落下経路32の上流部分32aの縦断右側面図であり、錠剤落下経路32の上流部分経路32aの溝底と溝深規定部材37の溝底対向面との相対距離Gを錠剤10の厚さに適合させる自動調整が行われているときの動作を時系列で示している。
【0045】
さらに、図4(a)〜(h)は、何れも裁断機構40の要部の右側面図であり、裁断位置33の錠剤10を対向刃41,42で裁断するときの動作を時系列で示しており、(a)〜(f)は最初の錠剤裁断に係り、(g),(h),(e),(f)は二番目以降の錠剤裁断に係る)。また、図5は、(a)が前刃進退部材43に係る駆動系および制御系のブロック図、(b)が裁断調整前の位置指令Psの波形例を示すタイムチャート、(c)が駆動電流検出信号Ifの波形例を示すタイムチャート、(d)が裁断調整後の位置指令Psの波形例を示すタイムチャートである。また、図6(a)〜(f)は、何れも保持機構30の要部の表面図であり、錠剤落下経路32に投入された錠剤10が落下して裁断され錠剤裁断片10b,10cになってから排出されるまでを時系列で示している。
【0046】
錠剤裁断に先立って、裁断分割対象の錠剤10を多数収容した錠剤カセット21を錠剤フィーダベース部27に装着するとともに、受器25を本体部24に挿着する(図1(a),(b)参照)。そして、電源投入等にて錠剤分割装置20を動作させると、錠剤分割装置20は、先ず初期状態になって、相対距離Gの自動調整と所定時期t2の自動調整とを行う準備態勢をとる。すなわち、錠剤落下経路32の上流部分経路32aの溝底と溝深規定部材37の溝底対向面との相対距離Gが狭い閉鎖距離になるとともに(図3(b)参照)、対向刃41,42の対向間隙が最大に広がって前刃41が進退位置P0まで後退する(図4(a)参照)。また、保持機構30では裁断位置33の直ぐ下方の受止部材34が左側経路開閉部材34bも右側経路開閉部材34cも閉じているが、裁断位置33には錠剤10が無くて、裁断位置33は空いている。
【0047】
この状態で、操作部22を操作して錠剤分割装置20に裁断処理を開始させると、錠剤フィーダベース部27の駆動モータが作動し、それで駆動された錠剤カセット21から一個の錠剤10が落下排出される。そして、この最初の錠剤10は、錠剤フィーダベース部27のガイドを介して保持機構30の錠剤落下経路32に落下投入されるが、この時点では、錠剤落下経路32の上流部分経路32aの溝底と溝深規定部材37の溝底対向面との相対距離Gが閉鎖距離になっていて狭いので、錠剤落下経路32の上端のところで一時的に留め置かれる(図3(c)参照)。
【0048】
それから、溝深規定部材37が移動して相対距離Gが広がり(図3(d)参照)、相対距離Gが錠剤10の厚さよりほんの少しだけ広くなると(図3(e)参照)、溝深規定部材37が移動をやめて相対距離Gが固定されるとともに、錠剤10が錠剤落下経路32の上流部分経路32aを通過して落下するが(図6(a),(b)参照)、そのときには相対距離Gの自動調整が済んで、相対距離Gが錠剤10の厚さに適合した状態になっているので、錠剤10は、厚さ方向を前後方向に向けた姿勢を維持したまま円滑かつ迅速に落下して、裁断位置33に到達する(図6(c)参照)。
【0049】
裁断位置33に到達した錠剤10は、そこで受止部材34に当接して停止し、二個の受止部材34の間すなわち左側経路開閉部材34bと右側経路開閉部材34cとの中央に位置決めされてスリット35の上に保持される(図6(c)参照)。この時点では、錠剤10は保持機構30のうち落下錠剤案内部材31の錠剤落下経路32の溝底と二個の受止部材34の接触部位とで保持されており、対向刃41,42には触れることなく、対向刃41,42の対向間隙に入り込んでいる(図4(b)参照)。
【0050】
その状態から錠剤10が裁断機構40によって裁断されるが、最初の錠剤10については、さらに、所定時期t2を錠剤10の厚さに適合させる自動調整も行われる。詳述すると、最初の錠剤10が対向刃41,42の間に到着したら(図4(b)参照)、前刃41が高速で進行するとともに(図5(b)時期t0〜t1の位置指令Ps参照)奥刃42が低速で進行して、対向刃41,42の対向間隙が狭まるが、その際、奥刃42は錠剤10を溝底から浮かせたところで一時的に進行を停止する(図4(c)参照)。一方、前刃41は、進退位置P1まで高速進行したら(図4(d)参照)、そこで速度を変更して進退位置P3まで低速進行する(図5(b)時期t1〜t2〜t3の位置指令Ps参照)。前刃41が進退位置P1に到達した後は、奥刃42も低速進行を再開する。
【0051】
そして、前刃41が進退位置P2まで進んだ頃には、対向刃41,42の対向間隙が十分に狭まって、錠剤10が対向刃41,42に挟持される(図4(e)参照)。すると、それに応じて駆動電流検出信号Ifが急増し、駆動電流検出信号Ifが閾値Itを超えるので(図5(c)時期t2参照)、対向刃41,42が錠剤10を挟持する時期t2(所定時期)及び進退位置P2(挟持位置)が制御装置23によって把握される。
こうして、対向刃41,42に錠剤10を挟持させてから裁断させるまで間の時期であって対向刃41,42のうちの前刃41の進行速度の変更と受止部材34による錠剤10の一時保持の解除との双方を行う時期である所定時期t2が、駆動電流検出部材47による駆動電流検出信号Ifに基づいて、錠剤10の厚さに適合するよう自動調整される。
【0052】
それから、前刃41が進退位置P3に到達したときには(図4(f)参照)、錠剤10が裁断されて二個の錠剤裁断片10b,10cに分かれ(図6(d)参照)、さらに、対向刃41,42が高速で逆向きに進行して(図5(b)時期t3〜t4の位置指令Ps参照)、対向刃41,42の対向間隙が広がるが、前刃41は進退位置P1まで後退したらそこで止まる(図4(g)参照)。また、錠剤10が錠剤裁断片10b,10cに分割されると、受止部材34が揺動して錠剤落下経路32の閉鎖を解き(図6(e)参照)、裁断位置33が錠剤落下経路32の下流部分経路の左側分岐経路32b及び右側分岐経路32cと連通するため、左半分の錠剤裁断片10bは左側分岐経路32bから落下排出されて左側受器25bに収容され、右半分の錠剤裁断片10cは右側分岐経路32cから落下排出されて右側受器25cに収容される(図6(f)参照)。
【0053】
こうして、最初の錠剤10の裁断が完了するとともに相対距離Gの自動調整と所定時期t2の自動調整までも完了する。そして、二番目以降の錠剤10については、必要な調整が済んでいるので、安定した状態で而も迅速に、裁断が遂行される。
繰り返しとなる詳細は説明は割愛するが、二番目以降の錠剤10が錠剤カセット21から排出されて保持機構30の錠剤落下経路32に落下投入されるときには、錠剤落下経路32の上流部分経路32aの溝底と溝深規定部材37の溝底対向面との相対距離Gが錠剤10の厚さより少しだけ広い状態で固定されているうえ(図3(e)参照)、前刃41が進退位置P1にとどまっていて対向刃41,42の対向間隙が相対距離Gより少しだけ広くなっている(図4(g)参照)。
【0054】
そのため、錠剤10は、直ちに錠剤落下経路32の上流部分経路32aを落下するが(図6(a),(b)参照)、上流部分経路32aに係る相対距離Gが錠剤10の厚さに適合した状態になっているので、錠剤10は、厚さ方向を前後方向に向けた姿勢を維持したまま円滑かつ迅速に落下する。そして、錠剤10は、裁断位置33まで落下すると閉状態の受止部材34に止められてそこに着座するが(図6(c)参照)、対向刃41,42の対向間隙も錠剤10の厚さに適合した状態になっているので、対向刃41,42に邪魔されることなく、対向刃41,42の対向間隙に入り込んで(図4(h)参照)、スリット35の上に位置し、錠剤落下経路32の溝底と二個の受止部材34の接触部位とで保持される(図6(c)参照)。
【0055】
その状態から錠剤10が裁断機構40によって裁断されるが、二番目以降の錠剤10については、所定時期t2を錠剤10の厚さに適合させる自動調整が済んでいるので、前刃41の進行が進退位置P1から進退位置P2までは高速で行われる。そのため対向刃41,42による錠剤10の挟持が短時間で速やかに行われる(図4(e)参照)。その際、奥刃42で錠剤10を溝底から浮かせてから対向刃41,42で錠剤10を挟持することも行われる。そして、対向刃41,42が錠剤10を挟持したら、受止部材34による錠剤10の一時保持が解除されるとともに、前刃41の進行速度が高速から低速に切り替わって、保持機構30から離れて不所望な外力から逃れた錠剤10に対向刃41,42が切り込み(図4(f)参照)、錠剤10が裁断されて二個の錠剤裁断片10b,10cに分かれる(図6(d)参照)。
【0056】
また、受止部材34が揺動して錠剤落下経路32の閉鎖が解かれ(図6(e)参照)、それによって裁断位置33が錠剤落下経路32の下流部分経路の左側分岐経路32b及び右側分岐経路32cと連通するので、左半分の錠剤裁断片10bは左側分岐経路32bから落下排出されて左側受器25bに収容され、右半分の錠剤裁断片10cは右側分岐経路32cから落下排出されて右側受器25cに収容される(図6(f)参照)。
こうして、二番目以降の錠剤10については、最初の錠剤10を利用して済ませて自動調整の効果を享受することができて、安定な状態で而も迅速に、裁断が遂行される。
【0057】
[その他]
上記実施例の錠剤分割装置の錠剤厚情報取得手段は、錠剤の厚さ情報を装置内計測にて取得するだけであり、錠剤の厚さ情報を外部から取得するようになっていないが、外部からの取得を排除する訳でない。例えば、装置内計測での取得に加え、外部からの取得も試行して、外部から取得できたときには、その値そのままか少し小さめの値を錠剤落下経路の溝底と溝深規定部材の溝底対向面との相対距離の初期値に用いるようにしても良い。
上記実施例では、所定時期t2の自動調整を前刃41の駆動電流に基づいて行っているが、所定時期t2の自動調整は、奥刃42の駆動電流に基づいて行うようにしても良く、対向刃41,42両方の駆動電流たとえば合計電流に基づいて行うようにしても良い。
【0058】
上記実施例で設けられていた操作部22は必須でなく、例えば、錠剤10が錠剤落下経路の上端に投入されたらそれに応じて一連の動作が開始されるようにしても良い。錠剤裁断片10b,10cの排出に不都合がなければ、受器25や中継部26も必須でなく、錠剤10の自動逐次供給が不要であれば、錠剤フィーダベース部27や錠剤カセット21も必須でない。受止部材34の駆動部材についても、それを電動式や流体駆動式などで明示的に設けることは必須でなく、保持機構や裁断機構の伝動部などに組み込んでも良く、例えば、手動ハンドルの押し込み操作や回転操作によって駆動されるようにしても良い。
【0059】
上記実施例では、相対距離Gの自動調整時には前刃41を動かさないで進退位置P0に止めておくようになっていたが(図5(b)の時期t0以前を参照)、相対距離Gの自動調整時に、対向刃41,42の対向間隙が相対距離Gより少し広い状態を維持するよう、前刃41を相対距離Gの変化に合わせて移動させて、相対距離Gの調整完了と同時に前刃41の進退位置P1の決定ばかりか前刃41の進退位置P1への位置決め動作まで完了するようにしても良く、そうした方が、最初の錠剤10に掛る調整時間が短縮されるとともに、最初の錠剤10が裁断位置33に到着したときの着座姿勢がより安定する。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の錠剤分割装置は、上述した実施例1のようにスタンドアローンで使用される他、錠剤フィーダのベース部を機能拡張しつつ代替する態様で錠剤分包機等の自動調剤機に組み込んでも良く(例えば特許文献5実施例2参照)、単体の錠剤フィーダから下方へ延びた錠剤落下経路や,複数の錠剤フィーダの錠剤落下経路が下方で合流した後の錠剤収集経路にも、組み込むことができる(例えば特許文献1,2参照)。
【符号の説明】
【0061】
10…錠剤、10b,10c…錠剤裁断片、
20…錠剤分割装置、
21…錠剤カセット、22…操作部、23…制御装置、
24…本体部、25…受器、25b…左側受器、25c…右側受器、
26…中継部、27…錠剤フィーダベース部、28…支持フレーム、
30…保持機構、
31…落下錠剤案内部材、32…錠剤落下経路、
32a…上流部分経路、32b…左側分岐経路、32c…右側分岐経路、
33…裁断位置、34…受止部材、34b…左側経路開閉部材、
34c…右側経路開閉部材、35…スリット、36…固定覆板、
37…溝深規定部材、38…厚み調整機構、39…錠剤通過検出センサ、
40…裁断機構、
41…前刃(対向刃)、42…奥刃(対向刃)、
43…前刃進退部材、44…奥刃進退部材、45…サーボモータ、
46…サーボコントローラ、47…駆動電流検出部材、48…位置検出部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端から下端まで溝状の錠剤落下経路が形成されている落下錠剤案内部材と、前記錠剤落下経路を下ってきた分割対象の錠剤を前記錠剤落下経路の途中の裁断位置に経路開閉にて一時保持する受止部材と、前記裁断位置で前記錠剤を裁断する裁断機構と、前記錠剤落下経路のうち前記裁断位置より上流の部分を覆う溝深規定部材と、前記錠剤落下経路の溝底と前記溝深規定部材の溝底対向面との相対距離を拡縮する厚み調整機構と、前記錠剤落下経路のうち前記裁断位置より上流であって前記溝深規定部材に覆われている所に係る前記錠剤の通過を検出する錠剤通過検出手段と、前記錠剤通過検出手段の検出結果を監視しながら前記厚み調整機構を作動させて前記相対距離を狭い閉鎖距離から広い全開距離へ向けて広げさせるとともに前記錠剤の通過検知に応じて前記厚み調整機構を停止させて前記相対距離を固定することにより前記相対距離を前記錠剤の厚さに適合させる制御装置とを備えている錠剤分割装置。
【請求項2】
前記裁断機構が前記制御装置の制御に従う電動の対向刃を具備しており前記対向刃の対向間隙を広げた状態から狭めることで前記錠剤を挟持し更に狭めて裁断するものであり、前記対向刃の駆動電流を検出する駆動電流検出手段が設けられ、前記制御装置が、前記対向刃に前記錠剤を挟持させてから裁断させるまでの所定時期に前記対向刃の進行速度の変更と前記受止部材による前記錠剤の一時保持の解除とのうち何れか一方または双方を行うものであって、前記駆動電流検出手段の検出結果を監視しながら前記対向刃に前記錠剤を挟持させるとともにそのときの前記駆動電流の急増に基づいて前記対向刃による挟持位置を検知することにより前記所定時期を前記錠剤の厚さに適合させるようになっていることを特徴とする請求項1記載の錠剤分割装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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