説明

錠装置

【課題】従来より操作性に優れた錠システムを提供する。
【解決手段】本発明の錠システム70では、障子12を閉めてからポール操作部材73を操作することにより第2の錠装置71Bのポール80がラッチロック位置に移動して保持されて施錠状態になる。このときのポール操作部材73の操作に対してハンドルロック部材161が連動してハンドル35をロックし、第1の錠装置71Aが二重施錠状態になる。また、第2の錠装置71B側でポール操作部材73を操作すれば、第2の錠装置71Bが解錠されると共に、第1の錠装置71Aのハンドル35のロックのみが解除され、第1の錠装置71Aの施錠状態は維持される。これにより、障子12に対して外側からは障子12を開けることができないが、障子12の内側ではハンドル35のみの操作で障子12を開けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、障子の上下方向における複数位置に取り付けられる複数の錠装置を備えて、それら複数の錠装置を連動させて施錠可能な錠システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の錠装置として、図29〜図31に示した錠システムが知られている。この錠システムは、図29に示すように障子の上下方向における中央にメインクレセント錠1を配置し、上下の両端寄り位置にそれぞれ補助クレセント錠5,5を配置して備えている。そして、メインクレセント錠1の鎌2に一体固定されたハンドル2H(図30参照)を回動操作すると、各補助クレセント錠5の鎌6(図31参照)も連動して回動し、それら鎌2,6が図示しない係止部材に係合して施錠される。また、メイン及び補助の各クレセント錠1,5には、ロック操作部3,7(図30,31参照)がロック位置とロック解除位置との間で往復動可能に備えられ、それらロック操作部3,7をロック位置に配置すると各鎌2,6の回動が規制される。これにより、各クレセント錠1,5の鎌2,6同士が連動しなくなり、メインクレセント錠1におけるハンドル2Hの操作では補助クレセント錠5が解錠されなくなり、防犯性が向上する(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−105569号公報(段落[0031]〜[0034]、第1図、第5図、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した従来の錠システムでは、メイン及び補助の両方のクレセント錠1,5を施錠状態にするためには、ハンドル2Hによる施錠操作後、各クレセント錠1,5の各ロック操作部3,7を個別にロック位置に移動操作しなければならないので操作が面倒である。また、解錠を行う際にも、ハンドル2Hの操作前に各クレセント錠1,5の各ロック操作部3,7を個別にロック解除位置に移動操作する必要があるので操作が面倒である。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、従来より操作性に優れた錠システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る錠システムは、障子の戸先框に取り付けられ、障子支持枠に固定されたストライカに係合して施錠される第1の錠装置と、戸先框のうち第1の錠装置とは上下方向で離れた位置に取り付けられ、第1の錠装置とは別のストライカに係合して施錠される第2の錠装置と、第1と第2の錠装置の間で直動可能に保持されると共に戸先框の内部に配置され、第1と第2の錠装置を連動可能に連結した中継部材とを備えてなる錠システムであって、第1及び第2の錠装置は、ストライカと噛み合って回動するラッチと、ストライカに噛み合ったラッチに係合してラッチをロックするラッチロック位置と、そのロックを解除するラッチリリース位置との間で移動可能なポールとを有し、第1の錠装置には、ポールをラッチロック位置に付勢するためのポール付勢手段と、ポール付勢手段による付勢に抗してポールをラッチロック解除位置へと移動操作するためのハンドルと、ハンドルをロックするハンドルロック位置と、そのロックを解除するハンドルロック解除位置との間で移動操作可能なハンドルロック部材とが備えられる一方、第2の錠装置には、ポールをラッチロック位置とラッチロック解除位置とにそれぞれ係止するポール係止手段と、ポール係止手段による係止に抗してポールをラッチロック位置とラッチロック解除位置とに移動操作するためのポール操作部材とが備えられ、中継部材はハンドルロック部材とポール操作部材との間を連結し、それら連結部分におけるハンドルロック部材の可動距離と、第2の錠装置のポールの可動距離とを所定の切替ストロークと略同一にすると共に、ポール操作部材の可動距離を切替ストロークより大きくし、中継部材とハンドルロック部材との間及びポール操作部材と第2の錠装置のポールとの間に、通常は相互に離間し、中継部材を切替ストローク未満で移動したときに離間状態を保持して接近すると共に、中継部材を切替ストローク以上で移動したときに相互に当接して力を伝達する1対のロストモーション壁をそれぞれ設けて、ハンドルロック部材の操作に対するポール操作部材の連動を防ぐ一方、ポール操作部材の操作に対するハンドルロック部材の連動を可能としたところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の錠システムにおいて、中継部材とハンドルロック部材との間の一方のロストモーション壁を、ハンドルロック部材に形成された第1受圧壁で構成すると共に、他方のロストモーション壁を、中継部材の一端部に形成されて第1受圧壁を間に挟んでハンドルロック部材の可動方向で対向し、切替ストローク分だけ第1受圧壁からそれぞれ離れた1対の第1加圧対向壁で構成し、ポール操作部材と第2の錠装置のポールとの間の一方のロストモーション壁を、第2の錠装置のポールに形成された第2受圧壁で構成すると共に、他方のロストモーション壁を、ポール操作部材に形成されて第2受圧壁を間に挟んでポール操作部材の可動方向で対向し、切替ストローク分だけ第2受圧壁からそれぞれ離れた1対の第2加圧対向壁で構成し、ポール操作部材に、中継部材の他端部が一体に直動可能に連結された中継部材連結部を設けたところに特徴を有する。
【0007】
請求項3の発明は、請求項2に記載の錠システムにおいて、第1受圧壁と1対の第1加圧対向壁との間、又は、第2受圧壁と1対の第2加圧対向壁との間には、第1受圧壁を1対の第1加圧対向壁の中央に保持しかつ第2受圧壁を1対の第2加圧対向壁の中央に保持するための弾性部材が備えられたところに特徴を有する。
【0008】
請求項4の発明は、請求項3に記載の錠システムにおいて、弾性部材は、第2受圧壁と各第2加圧対向壁との間に挟まれた1対の圧縮コイルバネであって、ポール操作部材を切替ストローク以上に操作したときに限界圧縮状態になって第2受圧壁と第2加圧対向壁との間で力を伝達するところに特徴を有する。
【0009】
なお、請求項3に記載の錠システムにおいて、弾性部材は、第1受圧壁と各第1加圧対向壁との間に挟まれた1対の圧縮コイルバネであって、ポール操作部材を切替ストローク以上に操作したときに限界圧縮状態になって第1受圧壁と第1加圧対向壁との間で力を伝達するように構成してもよい。
【0010】
請求項5の発明は、請求項2乃至4の何れかに記載の錠システムにおいて、第1受圧壁に、ハンドルロック部材の直動方向に貫通したピン挿通孔を形成すると共に、中継部材の一端部にピン挿通孔に直動可能に挿通された直動ピンを固定し、その直動ピンの両端部から側方に1対の第1加圧対向壁を張り出したところに特徴を有する。
【0011】
なお、請求項2乃至4の何れかに記載の錠システムにおいて、第2受圧壁に、ハンドルロック部材の直動方向に貫通したピン挿通孔を形成すると共に、ポール操作部材に固定した直動ピンをピン挿通孔に直動可能に挿通し、その直動ピンの両端部から側方に1対の第2加圧対向壁を張り出した構成にしてもよい。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1乃至5の何れかに記載の錠システムにおいて、第1の錠装置のハンドルは、上下方向に延びかつ障子のスライド方向と直交した水平軸を中心に回動し、障子が開く側に傾いた開操作位置と、障子が閉じる側に傾いた閉操作位置との間を移動可能であると共に、常には開操作位置と閉操作位置との間の中立位置に配置されるように付勢され、ハンドルを開操作位置に保持して障子を開いたことを条件にして解錠される一方、ハンドルを閉操作位置に保持して障子を閉じたことを条件にして施錠されるように構成すると共に、ハンドルと一体に回動するハンドル連結盤と、ハンドルが中立位置から開操作位置に回動する動作に伴って障子支持枠に向かって突き出て、障子支持枠と戸先框との間を押し広げるアシスト可動部材とを備え、アシスト可動部材は、障子のスライド方向と直交した水平軸を中心に回動可能に軸支されると共に、その回動中心を挟んで相反する方向に突出した第1突部及び第2突部を有しかつ、第1突部がハンドル連結盤の回動領域に突入した状態になるように付勢され、ハンドルが中立位置から開操作位置へ向かう途中で第1突部がハンドル連結盤に押されてアシスト可動部材が回動し、第2突部が障子支持枠に向かって突き出るように構成されたところに特徴を有する。
【0013】
請求項7の発明は、請求項6に記載の錠システムにおいて、第1の錠装置には、ハンドルが中立位置に位置した状態でラッチが係合解除位置から係合位置に移動したときにポールをラッチリリース位置に保持し、ハンドルが閉操作位置に位置した状態でラッチが係合解除位置から係合位置に移動したときにポールをラッチロック位置に移動し、さらに、ハンドルが中立位置から開操作位置に移動する動作に連動して、ポールをラッチロック位置からラッチリリース位置に移動するポール移動機構が備えられたところに特徴を有する。
【0014】
請求項8の発明は、請求項7に記載の錠システムにおいて、ポール移動機構には、ラッチとポールとに設けられ、ラッチが係合位置以外の位置にある場合に、互いに当接してポールがラッチロック位置に移動することを禁止し、ラッチが係合位置に位置した場合に、ポールがラッチロック位置に移動することを許容するポール移動制限部と、ハンドルとポールとの間に設けられ、ハンドルが中立位置に位置した場合に、ポールに係合することでポール付勢手段の付勢力に抗してポールをラッチリリース位置に保持し、ハンドルが閉操作位置に位置した場合に、ポールとの係合を解除することでポール付勢手段の付勢力によるポールのラッチロック位置への移動を許容するコントロール部材とが備えられたところに特徴を有する。
【0015】
請求項9の発明は、請求項6乃至8の何れかに記載の錠システムにおいて、ハンドルロック部材は、ハンドルロック位置に配置されたときにアシスト可動部材に干渉してハンドルが中立位置から開操作位置に回動することを規制する一方、ハンドルロック解除位置に配置されたときにアシスト可動部材及びハンドルの回動を許容するように構成されたところに特徴を有する。
【0016】
請求項10の発明は、請求項6乃至9の何れかに記載の錠システムにおいて、ハンドルが中立位置に配置された状態で、アシスト可動部材の第2突部のうち障子支持枠側を向いた前面には、その上下方向の中間部から前方にロック当接突起が突出形成され、ハンドルロック部材は、上下動可能に備えられると共に、ハンドルロック位置でロック当接突起の前方に配置される一方、ハンドルロック解除位置でハンドルロック位置よりアシスト可動部材の回動中心側に配置される回動干渉部を備えたところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0017】
[請求項1の発明]
請求項1の錠システムを構成する第1と第2の錠装置のうち第1の錠装置には、ポールをラッチロック位置に付勢するためのポール付勢手段と、ポール付勢手段による付勢に抗してポールを移動操作するためのハンドルと、ハンドルの操作を規制可能なハンドルロック部材とが備えられている。一方、第2の錠装置には、ポールをラッチロック位置とラッチロック解除位置とにそれぞれ係止するポール係止手段と、その係止に抗してポールを移動操作するためのポール操作部材とが備えられている。そして、中継部材がハンドルロック部材とポール操作部材との間を連結し、それら連結部分におけるハンドルロック部材の可動距離と、第2の錠装置のポールの可動距離とを所定の切替ストロークとを略同一にすると共に、ポール操作部材の可動距離を切替ストロークより大きくした上で、中継部材とハンドルロック部材との間及びポール操作部材と第2の錠装置のポールとの間に、通常は相互に離間し、中継部材を切替ストローク未満で移動したときに離間状態を保持して接近すると共に、中継部材を切替ストローク以上で移動したときに相互に当接して力を伝達する1対のロストモーション壁をそれぞれ設けた構成になっている。この構成により、ハンドルロック部材の操作に対するポール操作部材の連動を防ぐ一方、ポール操作部材の操作に対するハンドルロック部材の連動が可能になっている。
【0018】
本発明に係る錠システムが取り付けられた障子を閉めると第1及び第2の錠装置の各ラッチがストライカと噛み合った状態になる。このとき、第1の錠装置のポールは、ポール付勢手段の付勢によってラッチロック位置に保持されて第1の錠装置が施錠状態になり、ハンドルを操作しない限り、第1の錠装置の施錠状態は維持される。
【0019】
一方、第2の錠装置では、ポールがポール係止手段によってラッチロック解除位置に保持されているので、障子を閉めただけでは施錠されず、解除状態に保持される。このように、本発明の錠システムでは、障子を閉めるだけの操作で第1の錠装置のみによる簡易な施錠が可能である。ここで、第1の錠装置に備えたハンドルロック部材をハンドルロック位置に移動操作すると、ハンドルの操作が規制され、第1の錠装置が、言わば二重施錠状態になり、防犯性が高まる。また、上述の如く、ハンドルロック部材の操作に対するポール操作部材の連動が防がれているので、第1の錠装置側の操作によって第2の錠装置が施錠状態になることはない。
【0020】
さて、第1の錠装置を二重施錠状態としかつ第2の錠装置を施錠状態にするには、障子を閉めてから第2の錠装置のポール操作部材の操作により第2の錠装置のポールをラッチロック位置に移動すればよい。すると、ポール操作部材の操作によって第2の錠装置のポールがラッチロック位置に移動してラッチ係止手段にて保持され、第2の錠装置が施錠状態になる。このときのポール操作部材の操作に対してハンドルロック部材が連動してハンドルロック位置に移動する。このように、本発明によれば、障子を閉めてから第2の錠装置におけるポール操作部材を操作するだけで、第1の錠装置が二重施錠状態になると共に第2の錠装置が施錠状態になる。この状態で、第1の錠装置側の操作によって第2の錠装置が解錠されることはない。また、第2の錠装置側でポール操作部材を操作すれば、第2の錠装置が解錠されると共に、第1の錠装置のハンドルのロックのみが解除され、第1の錠装置の施錠状態は維持される。これにより、障子に対して外側からは障子を開けることができないが、障子の内側ではハンドルのみの操作で障子を開けることができる。このように、本発明によれば、錠システムが有する第1及び第2の錠装置全体の施錠操作及び解除操作を、従来の錠システムより少ない操作で行うことができ、操作性が向上する。
【0021】
[請求項2の発明]
請求項2の構成によれば、ハンドルロック部材を可動範囲の両端間で直動したときには、第1受圧壁が1対の第1加圧対向壁の間を移動して、ハンドルロック部材と中継部材との間で力の伝達が断絶される。一方、ポール操作部材を可動範囲の一端部に移動すると、その過程で一方の第1加圧対向壁が第1受圧壁を加圧することでハンドルロック部材と中継部材との間で力を伝達してハンドルロック部材をハンドルロック位置に移動すると共に、一方の第2加圧対向壁が第2受圧壁を加圧することでポール操作部材と第2の錠装置のポールとの間で力を伝達してそのポールをラッチロック位置に移動することができる。また、ポール操作部材を可動範囲の他端部に移動すると、その過程で他方の第1加圧対向壁が第1受圧壁を加圧することでハンドルロック部材と中継部材との間で力が伝達してハンドルロック部材をハンドルロック解除位置に移動すると共に、他方の第2加圧対向壁が第2受圧壁を加圧することでポール操作部材と第2の錠装置のポールとの間で力が伝達してそのポールをラッチロック解除位置に移動することができる。
【0022】
[請求項3及び4の発明]
請求項3の構成によれば、第1受圧壁と1対の第1加圧対向壁との間、又は、第2受圧壁と1対の第2加圧対向壁との間に、第1受圧壁を1対の第1加圧対向壁の中央に保持しかつ第2受圧壁を1対の第2加圧対向壁の中央に保持するための弾性部材を備えたので、切替ストロークにおけるポール操作部材のガタが除去される。具体的には、請求項4の構成のように、弾性部材は、第2受圧壁と各第2加圧対向壁との間に挟まれた1対の圧縮コイルバネであって、ポール操作部材を切替ストローク以上に操作したときに限界圧縮状態になって第2受圧壁と第2加圧対向壁との間でを伝達するように構成すればよい。
【0023】
[請求項5の発明]
請求項5の構成では、第1受圧壁に、ハンドルロック部材の直動方向に貫通したピン挿通孔を形成すると共に、中継部材の一端部にピン挿通孔に直動可能に挿通された直動ピンを固定し、その直動ピンの両端部から側方に1対の第1加圧対向壁を張り出したので、第1受圧壁と第1加圧対向壁とを当接方向と直行する方向で互いに位置決めされ、当接状態を安定させることができる。
【0024】
[請求項6の発明]
請求項6の構成によれば、障子の内側に居る者が第1の錠装置のハンドルに手を掛けて障子を閉める側に押す又は引くと、ハンドルが閉操作位置に保持されて障子が閉まり、第1の錠装置が施錠される。また、障子の内側に居る者がハンドルに手を掛けて障子を開く側に押す又は引くと、ハンドルが開操作位置に保持されて第1の錠装置が解錠される。そして、障子の外側に出て障子を閉めた場合には、ハンドルは屋外側にないので操作されず中立位置に保持されて障子が閉まり、第1の錠装置は施錠されない。このように本発明によれば、第1の錠装置は、障子の内側に居る者が障子を閉めた場合には自動的に施錠されるので、障子を閉めた状態で施錠を忘れる事態がなくなって防犯性が向上し、障子の外側に出て障子を閉めた場合には施錠されないので、締め出し事故を防止することができる。また、閉じた障子を開くためにハンドルに手を掛けて障子を押す又は引き、ハンドルが中立位置から開操作位置に回動すると、ハンドル連結盤が一体に回動し、途中で、アシスト可動部材の第1突部に当接する。そして、第1突部がハンドル連結盤に押されることでアシスト可動部材は、付勢力に抗してハンドル連結盤とは逆方向に回動し、アシスト可動部材のうち、第1突部とは反対側に突出した第2突部が障子支持枠に向かって突き出て、障子支持枠と戸先框との間を押し広げる。これにより、容易に障子を開くことができる。
【0025】
[請求項7の発明]
請求項7の構成によれば、ハンドルを閉操作位置に保持して障子を閉めると、第1の錠装置に備えたラッチがストライカと噛み合って回動し、そのストライカに係合する。このとき、ポールがラッチリリース位置からラッチロック位置に移動してラッチをストライカとの係合位置に固定し、これにより第1の錠装置が施錠される。そして、障子を閉めた後にハンドルから手を離すとハンドルが中立位置に戻る。また、ハンドルを中立位置から開操作位置に移動して障子を開くと、その動作に連動してポールがラッチロック位置からラッチリリース位置に移動し、ラッチの係合位置への固定が解除され、錠装置が解錠状態になる。そして、障子の開放動作に伴い、ラッチがストライカにより回動されかつポール付勢手段の付勢により係合解除位置に移動する。
【0026】
[請求項8の発明]
上記したように、ハンドルの位置に応じてポールの動作を異ならせるポール移動機構としては、請求項8の構成のように、ラッチとポールとに設けられ、ラッチが係合位置以外の位置にある場合に、互いに当接してポールがラッチロック位置に移動することを禁止し、ラッチが係合位置に位置した場合に、ポールがラッチロック位置に移動することを許容するポール移動制限部と、ハンドルとポールとの間に設けられ、ハンドルが中立位置に位置した場合に、ポールに係合することでポール付勢手段の付勢力に抗してポールをラッチリリース位置に保持し、ハンドルが閉操作位置に位置した場合に、ポールとの係合を解除することでポール付勢手段の付勢力によるポールのラッチロック位置への移動を許容するコントロール部材とが備えられた構成にすればよい。
【0027】
[請求項9の発明]
請求項9の構成では、ハンドルロック部材をアシスト可動部材と干渉させることで、ハンドルの操作を規制することができる。
【0028】
[請求項10の発明]
請求項10の構成によれば、ハンドルロック部材がハンドルロック位置に配置された状態では、そのハンドルロック部材に備えた回動干渉部が、アシスト可動部材の第2突部から突出したロック当接突起の前方に配置されてアシスト可動部材及びハンドルの回動を規制する。一方、ハンドルロック部材がハンドルロック解除位置に配置された状態では、回動干渉部がロック当接突起より回動中心側に退避して、アシスト可動部材及びハンドルの回動が許容される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図28に基づいて説明する。
図1に示した障子ユニット10は、建物の壁に形成された障子支持枠11の内側に1対の障子12,12をスライド可能に備えている。各障子12は、矩形枠状の框12Kの内側にガラス板12Gを張った構造をなしている。図2に示すように、框12Kのうち戸先框12Aの先端面12Sからは、障子支持枠11に向けて1対の突壁12T,12Tが突出している。ここで、「戸先框」とは、框12Kのうち障子12を閉めたときに、その障子支持枠11の内面11Aに接合される側の端部をいう。その障子支持枠11の内面11Aには、図3に示すように、縦溝11Mが形成されている。そして、障子12が閉じられると、突壁12T,12Tが、障子支持枠11の縦溝11M内に突入する。
【0030】
障子支持枠11の内面11Aのうち縦溝11Mより室内側部分には、図1に示すように上下方向における略中央寄り位置と上端部寄り位置との2位置にそれぞれストライカ60,60が取り付けられている。ストライカ60は、図3に拡大して示されており、板金製のストライカ本体61に樹脂製のストライカカバー62を組み付けてなる。ストライカ本体61は、上下方向に延びた帯形板金を中間部分で密着曲げして水平突部61Sを形成した構造になっている。また、水平突部61Sには先端部と両側部とを残して四角形の貫通孔61Kが形成されている。そして、水平突部61Sの先端部に残された係合部60Aが後述するラッチ42に係合するようになっている。
【0031】
一方、ストライカカバー62は、縦長の枠体62Wの両側部から1対の対向壁62T,62Tを突出して備えている。両対向壁62T,62Tは略台形状をなしており、その縁部からは、互いに接近する側にアーチ壁62A,62Aが張り出している。そして、枠体62Wがストライカ本体61の外縁部に嵌合し、対向壁62T,62Tが水平突部61Sの両側部を覆っている。
【0032】
図1に示すように、各障子12の戸先框12Aのうち室内側を向いた内向き面12Vには、上下方向における略中央寄り位置と上端部寄り位置との2位置にそれぞれ第1の錠装置71Aと第2の錠装置71Bとが取り付けられている。そして、戸先框12Aの内部に配置されたワイヤ67(図5参照)によってこれら第1と第2の錠装置71A,71Bが連結されて本発明に係る錠システム70が構成されている。
【0033】
図2に示すように、第1の錠装置71Aは、錠装置本体140にハンドル35を回動可能に備えている。ハンドル35は上下方向に延び、ハンドル35の下端寄り位置からストライカ60側に向かって突部35Tが突出している。これに対し、錠装置本体140の上下方向の中間位置からは、室内側に向かってハンドル連結軸51P(図5参照)が突出しており、そのハンドル連結軸51Pにハンドル35の突部35Tが固定されている。そして、ハンドル35のうち、水平軸J1より上側部分と錠装置本体140との間に手を差し込む隙間SP1(図18参照)が形成されて、把持可能になっている。これに対し、ハンドル35のうち水平軸J1より下側部分と錠装置本体140との間には僅かな隙間しかないため、把持不能になっている(図18参照)。なお、図2に示すように、ハンドル35のうち、水平軸J1より上側部分には、縦長の溝35Mが形成されており、これにより、ハンドル35上部の軽量化が図られている。また、溝35Mに指先を入れてハンドル35を操作することも可能である。
【0034】
錠装置本体140は、図4に示すように、固定ベース41に、ラッチ42,ポール43等の複数の可動部品を組み付けてなる。その固定ベース41は、樹脂製筐体状の本体カバー41Aの内部に、板金製の支持ベース41Bを備えてなる。また、支持ベース41Bの上下の両端部からは、固定片20K,20Kが張り出している。そして、各固定片20Kに螺子挿通孔20Nが貫通形成され、ここに通した螺子によって錠装置本体140が戸先框12Aに固定されている。
【0035】
固定ベース41の上端寄り部分には、ストライカ60側を向いた側面にアシスト窓41Wが形成されている(図2参照)。そして、このアシスト窓41Wから後述するアシスト連結盤149及び当接ローラ53が突き出るようになっている。
【0036】
固定ベース41の下端寄り位置には、ストライカカバー62の対向壁62T,62T間に突入可能なストライカ係合部41Tが形成され、そのストライカ係合部41Tにストライカ受容溝41Sが形成されている。ストライカ受容溝41Sは、水平方向に延びかつ、ストライカ60に向かって開放している。そして、障子12を閉めると、図6に示すように、ストライカ60の係合部60Aが、ストライカ受容溝41Sに受容される(以下、単に、ストライカ60がストライカ受容溝41Sに受容されるという)。
【0037】
図5に示すように、固定ベース41のうちストライカ受容溝41Sより下側部分には、第1支持ピン42Pが起立しており、その第1支持ピン42Pにラッチ42が回動可能に軸支されている。ラッチ42の上縁部には、前側係合爪42A1、後側係合爪42A2及びストッパ当接片42Bが、ストライカ60に近い側(以下、これを「前側」という)から遠い側(以下、これを「後側」という)に向かって順番に並べて形成されている。また、ラッチ42における後端部には、バネ取付部42Cが形成されている。バネ取付部42Cには、引張コイルバネ44の一端が取り付けられ、この引張コイルバネ44の弾発力によりラッチ42が次述する係合解除位置に向けて付勢されている。
【0038】
障子12を開いた状態では、図5に示すように、ラッチ42は、固定ベース41に形成されたストッパST1に当接し、係合解除位置に位置決めされている。ラッチ42が、この係合解除位置に位置決めされると、前側係合爪42A1は、ストライカ受容溝41Sにおける受容口の下方に退避し、後側係合爪42A2が、ストライカ受容溝41Sの中間部分に突入し、さらに、ストッパ当接片42Bが、ストライカ受容溝41Sより上方に突出した状態になる。この状態で、障子12を閉めて、ストライカ受容溝41Sにストライカ60が受容されると、図6に示すように、ストライカ60によって後側係合爪42A2が押されてラッチ42が係合位置に移動し、前側係合爪42A1がストライカ受容溝41Sのうちストライカ60より受容口側を遮蔽する(図7の状態)。
【0039】
図5に示すように、固定ベース41のうちストライカ受容溝41Sより上側部分には、第2支持ピン43Pが起立しており、その第2支持ピン43Pにポール43が回動可能に軸支されている。ポール43には、回動中心から同図における後方に向けてラッチ当接片43Aが張り出されている。ラッチ当接片43Aの下端部は、ストッパ当接片42Bの先端の回動軌跡に沿った円弧形状になっている。そして、ラッチ42が係合位置以外の位置に配置されているときには(図5参照)、ストッパ当接片42Bの先端がラッチ当接片43Aの下縁部に突き合わされて、ラッチ当接片43Aの下方への移動を禁止している。また、ラッチ42が係合位置に位置したときに(図7参照)、ストッパ当接片42Bの先端がラッチ当接片43Aより後方に位置して、ラッチ当接片43Aの下方への移動を許容する。
【0040】
図5に示すように、ラッチ当接片43Aの後端部の上端寄り位置には、パイロット突起43Bが形成され、ここに、前記引張コイルバネ44の他端が取り付けられている。これにより、ラッチ当接片43Aがラッチ42側に付勢されている。また、ポール43には、回動中心から上方に向けてレバー当接片43Cが張り出されている。そして、引張コイルバネ44によってポール43が、同図の反時計回り方向に付勢されることで、レバー当接片43Cが次述するコントロールレバー45に押し付けられ、ポール43がラッチリリース位置に位置決めされている。ポール43がラッチリリース位置に位置決めされた状態では、ラッチ当接片43Aがストッパ当接片42Bの回動可能領域より上方に保持され、ラッチ42は係合位置(図7参照)と係合解除位置(図5参照)との間を自由に回動することができる。
【0041】
ポール43のうちラッチ当接片43Aとレバー当接片43Cとの中間部分には、引上リンク47がピン47P1にて回動可能に連結されている。引上リンク47は、ポール43から斜め上方後側に向かって延び、その上端部には、長円孔47Aが備えられている。そして、この長円孔47Aに、後述する中継盤46から起立した摺動ピン47P2が収容されている。
【0042】
図5から図7の変化に示すように、コントロールレバー45が回動して、レバー当接片43Cから離間し、さらにラッチ42が係合位置に位置すると、ポール43が引張コイルバネ44の弾発力によって回動してラッチロック位置に移動する。これにより、ラッチ当接片43Aが、ラッチ42のストッパ当接片42Bと後側係合爪42A2との間に係合し、ラッチ42が係合位置に保持(ロック)される。
【0043】
ポール43のパイロット突起43Bには、図14に示したロック状態表示部材36が連結されている。ロック状態表示部材36は、ポール43がラッチロック位置及びラッチリリース位置の何れかに配置されているかを表示するためのものであり、固定ベース41のうち室内側を向いた面を構成する本体カバー41Aと支持ベース41B(図4参照)との間の隙間に収容された表示板部36Aを有している。表示板部36Aの上端部からはポール43側にアーム部36Cが突出しており、そのアーム部36Cの先端で上下に対をなして設けられた1対の係合爪36D,36Dの間にポール43のパイロット突起43Bが受容されている。また、図2に示すように、固定ベース41の下端部にはロック状態判別窓33Aが形成され、このロック状態判別窓33Aを通して表示板部36Aの一部が外部に露出している。図15に示すように、表示板部36Aの上端部には、表示板部36A全体と異なる色に着色されかつ「ロック状態」を示す文言を表示したロック表示部36Bが備えられている。そして、ポール43がラッチリリース位置に配置された際に、ロック状態表示部材36のうちロック表示部36B以外の部分がロック状態判別窓33Aを介して外部に露出し(図16(B)及び図16(C)参照)、ポール43がラッチロック位置に配置された際に、ロック表示部36Bがロック状態判別窓33Aを介して外部に露出する(図16(A)参照)。
【0044】
図5に示すように固定ベース41のうち第2支持ピン43Pが起立した部分より上側部分には、第3支持ピン45Pが起立しており、この第3支持ピン45Pに、コントロールレバー45と中継盤46とが回動可能に軸支されている。図14に示すように、中継盤46は、回動中心から互いに略120度異なる方向(具体的には、図5における後方と上方)に延びたオープンレバー46Aと連結レバー46Bとを備えている。また、中継盤46のうちオープンレバー46Aの下縁部から当接突片46Cがコントロールレバー45側に突出している。
【0045】
一方、コントロールレバー45は、下向き斜め前方に向かって突出した干渉突片45Aと、下向き斜め後方に向かって突出した当接突片45Cとを備えている。そして、コントロールレバー45の回動位置に応じて、干渉突片45Aの先端が、ポール43におけるレバー当接片43Cの回動可能領域の内側に配置された状態(図5参照)と、その回動可能領域の外側に配置された状態(図7参照)とに変更される。また、当接突片45Cは、全体が中継盤46側に突出しており、コントロールレバー45と中継盤46の相対回転位置に応じて、コントロールレバー45と中継盤46の当接突片45C,46C同士が接離する。また、コントロールレバー45と中継盤46との間にはトーションコイルバネ54(図5参照)が設けられ、このトーションコイルバネ54により、当接突片45C,46C同士が当接するように付勢されている。
【0046】
図5に示すように、中継盤46における連結レバー46Bの先端部からは摺動ピン49Tが起立しており、この摺動ピン49Tが後述するアシスト連結盤149に連結されている。また、中継盤46におけるオープンレバー46Aの先端には、摺動ピン47P2が起立している。そして、前述したようにポール43に軸支された引上リンク47の長円孔47A内に、摺動ピン47P2が配置されている。
【0047】
なお、本実施形態では、本発明に係る「ポール移動制限部」は、前記ストッパ当接片42Bとラッチ当接片43Aとにより構成され、本発明に係る「コントロール部材」は、コントロールレバー45、中継盤46及びトーションコイルバネ54によって構成されている。また、本発明に係る「ポール移動機構」は、「ポール移動制限部」としてのストッパ当接片42B及びラッチ当接片43Aと、「ポール付勢手段」としての引張コイルバネ44と、「コントロール部材」としてのコントロールレバー45、中継盤46及びトーションコイルバネ54とから構成されている。
【0048】
固定ベース41のうち第3支持ピン45Pより上側部分には、ハンドル連結盤151に一体形成された回動軸51Jが軸支されている。またその回動軸51Jの中心部にハンドル連結軸51Pが設けられ、前述のようにハンドル連結軸51Pにハンドル35が固定されている。これにより、ハンドル35と一体になってハンドル連結盤151が回動する。
【0049】
ハンドル連結盤151と固定ベース41との間には、トーションバネ52が設けられている。そして、このトーションバネ52の弾発力によってハンドル35が常には鉛直に起立した中立位置に配置されるように付勢されている。
【0050】
ハンドル連結盤151の下端部には、中継盤46に向かって開放したピン受容溝151Aが形成されている。このピン受容溝151Aには中継盤46の摺動ピン49Tが摺動可能に受容されている。これにより、ハンドル35に連動して中継盤46が回動可能となっている。
【0051】
ハンドル連結盤151の上端部からは、上方に向かってカム当接レバー151Bが延びている。図9に示すように、ハンドル35が中立位置から開操作位置に向けて(図9における反時計回り方向に)回動すると、その途中で、カム当接レバー151Bの先端部が後述するアシスト連結盤149に当接する。これにより、ハンドル35に連動してアシスト連結盤149が回動可能となっている。
【0052】
ハンドル連結盤151のうち、ピン受容溝151Aとカム当接レバー151Bとの中間部分にはストッパ当接片151Cが側方に張り出している。ハンドル35が中立位置から開操作位置に向けて回動操作された場合に、このストッパ当接片151Cが支持ベース41Bから起立したストッパ壁ST2(図13を参照)に当接することで、図10に示すように、ハンドル35が開操作位置に位置決めされる。
【0053】
ハンドル連結盤151のうち、カム当接レバー151Bより後側には、バネ係止部151Dが一体形成され、ここにトーションバネ52の一端が係止されている。バネ係止部151Dは、ハンドル連結盤151の板厚方向に向かって直角に起立している(図13を参照)。なお、トーションバネ52の他端は、固定ベース41(支持ベース41B)に起立形成されたバネ係止壁41Dに係止されている。
【0054】
ここで本実施形態のハンドル35は回動中心より上側が下側より長くなっているため、ハンドル35を操作せずに障子12を閉じた際に、戸先框12Aが障子支持枠11に衝突して急停止すると、ハンドル35が慣性力によりハンドル35の上側部分が障子支持枠11に近づく側に回動し得る。これを防止するために、図13に示すように、ハンドル連結盤151の下端部には、カウンターバランサ59が設けられている。これらハンドル連結盤151及びカウンターバランサ59は金属製であり、樹脂製のハンドル35より比重が高くなっている。
【0055】
固定ベース41のうち、回動軸51Jのほぼ真上部分には、第4支持ピン49P1が起立しており、この第4支持ピン49P1に、アシスト連結盤149が回動可能に軸支されている。アシスト連結盤149は、ハンドル連結盤151より上方位置で、ハンドル連結盤151とほぼ同一平面上に配置されており(図18を参照)、第4支持ピン49P1を中心に回動するシーソー構造をなしている。
【0056】
より詳細には、アシスト連結盤149は、第4支持ピン49P1から相反する方向にカム突片149A(本発明の「第1突部」に相当する)と出没アーム149B(本発明の「第2突部」に相当する)とを突出して備えており、全体として帯板状をなしている。カム突片149Aは、第4支持ピン49P1からハンドル連結盤151に向かって突出している。一方、出没アーム149Bは、第4支持ピン49P1から上方に向かって延びており、カム突片149Aより長くなっている。そして、出没アーム149Bの先端部から起立した支持ピン53Pに当接ローラ53が回転可能に軸支されている。
【0057】
アシスト連結盤149と固定ベース41との間には、トーションバネ162が設けられている。そして、このトーションバネ162の弾発力によりアシスト連結盤149は、図5に示すように、カム突片149Aがカム当接レバー151Bの回動領域に向けて突出し、出没アーム149Bが固定ベース41の内部に収容された姿勢となるように付勢されている。
【0058】
当接ローラ53は、通常は、図8に示すように、アシスト連結盤149と共に固定ベース41の内部に収容されて、固定ベース41のアシスト窓41W(図2参照)に臨んでいる。そして、アシスト連結盤149が、図8における時計回り方向に回動すると、図10に示すように、出没アーム149Bの先端部分がアシスト窓41Wから前方に突き出て、当接ローラ53が障子支持枠11の内面11Aに当接する。
【0059】
なお、本実施形態では、これらアシスト連結盤149と当接ローラ53とによって本発明に係る「アシスト可動部材」が構成されている。
【0060】
図5に示すように、固定ベース41のうち直立した状態の出没アーム149Bの前側位置には、ハンドルロック部材161が上下動可能に備えられている。また、図2に示すように本体カバー41Aの上端寄り位置には、縦長矩形の操作窓41Hが貫通形成され、その操作窓41Hからハンドルロック部材161の操作摘み161Fが突出している。そして、操作摘み161Fが操作窓41Hの上端部に配置されたハンドルロック位置にハンドルロック部材161を移動すると、ハンドル35の中立位置から開操作位置への回動が規制される。一方、操作摘み161Fが操作窓41Hの下端部に配置されたハンドルロック解除位置にハンドルロック部材161を移動すると、前記規制が解除されてハンドル35を中立位置から開操作位置へと回動することができるようになる。
【0061】
詳細には、図17に示すように、ハンドルロック部材161は、上下方向に延びた矩形のスライドプレート161Cを有し、そのスライドプレート161Cの上下方向における中間部から前記操作摘み161Fが突出している。また、スライドプレート161Cは、操作摘み161Fより上側部分と下側部分とが異なった色に着色されている。そして、ハンドルロック部材161がハンドルロック位置かハンドルロック解除位置の何れかに配置されているかによって、操作窓41Hを介して視認可能なスライドプレート161Cの色が変わり、ハンドルロック部材161が何れの位置に配置されているかを容易に判別することができる。
【0062】
スライドプレート161Cの上縁部及び下縁部からは、それぞれ可撓片161D,161Dが突出している。これら可撓片161D,161Dは、スライドプレート161Cのうち障子支持枠11(図5参照)に近い側の端部(図17における右側の端部)に配置され、それら可撓片161D,161Dの裏面には、操作摘み161Fとは逆向きに係止突起161E,161Eが突出形成されている。
【0063】
スライドプレート161Cの裏面のうち操作摘み161Fの真裏位置には、中間支持部材161Gが備えられている。中間支持部材161Gは、スライドプレート161Cの幅方向に延びた角柱状をなし、その一端部が段付き状にスライドプレート161C側に突出してスライドプレート161Cの裏面に連続している。一方、中間支持部材161Gの他端部は、スライドプレート161Cより障子支持枠11側に突出している。また、スライドプレート161Cと中間支持部材161Gとの間には、上側と下側及び障子支持枠11側に向かって開放した隙間が形成されている。そして、中間支持部材161Gの長手方向のうち中間部から先端部に亘った範囲に、角柱状の支持柱161Hが一体形成されて下方に延び、その支持柱161Hの下端部からスライドプレート161Cと反対側に向けて回動干渉部161Aが突出形成されている。
【0064】
回動干渉部161Aの先端面には、本発明に係る第1受圧壁161Bが突出形成されている。第1受圧壁161Bは、断面四角形の角柱構造をなしている。また、第1受圧壁161Bの先端部には、上下方向にピン挿通孔161Jが貫通形成されている。
【0065】
図13に示すように支持ベース41Bには、ガイド溝163が形成されている。このガイド溝163は、支持ベース41Bのうち前側の縁部に沿って上下方向に延びており、そのガイド溝163の上端部は、ハンドル35が中立位置に配置された状態において、出没アーム149Bのうち上下方向の中間部の前側に位置し、ガイド溝163の下端部は、アシスト連結盤149の回動中心の前側に位置している。そして、ハンドルロック部材161における第1受圧壁161Bがガイド溝163に直動可能に収容されている。また、戸先框12Aには、ガイド溝163に対応した部分に貫通孔が形成されており、その貫通孔とガイド溝163とを介して第1受圧壁161Bの先端部が戸先框12A内に突入している。
【0066】
図18に示すように固定ベース41のうち本体カバー41Aの内側には、支持ベース41Bとの間にアシスト連結盤149等を挟んで対向した対向支持壁41Gが備えられている。そして、ハンドルロック部材161が、スライドプレート161Cと中間支持部材161Gとの間に対向支持壁41Gを挟んだ状態にして組み付けられている。また、図19に示すように対向支持壁41Gには、各係止突起161Eに対応させて1対ずつの係止凹部41E,41Fが上下に並べて備えられている。そして、図19(B)に示すようにハンドルロック部材161をハンドルロック位置に配置すると各係止突起161Eが上側の係止凹部41Fに凹凸係合する一方、図19(A)に示すようにハンドルロック部材161をハンドルロック解除位置に配置すると各係止突起161Eが下側の係止凹部41Eに凹凸係合する。また、ハンドルロック部材161をハンドルロック位置とハンドルロック解除位置との間で移動する際に、可撓片161Dが撓んで係止突起161Eが係止凹部41E,41Fから離脱する。これにより、ハンドルロック部材161をハンドルロック位置又はハンドルロック解除位置に保持することができると共に、ハンドルロック部材161の操作に節度感をもたせることができる。
【0067】
図5に示すように、ハンドル35が中立位置に配置された状態で、アシスト連結盤149における出没アーム149Bのうち障子支持枠11側を向いた前面には、その上下方向の中間部から前方にロック当接突起160Aが突出形成されている。そして、図12に示すようにハンドルロック部材161がハンドルロック位置に配置された状態で、ロック当接突起160Aの前方にハンドルロック部材161の回動干渉部161Aが配置される。これにより、アシスト連結盤149の出没アーム149Bが障子支持枠11側に回動することが規制され、その結果、ハンドル35が中立位置から開操作位置に回動することも規制される。即ち、ハンドルロック部材161がハンドルロック位置に配置されると、ハンドル35の回動操作を行うことができなくなる。
【0068】
一方、図8に示すようにハンドルロック部材161がハンドルロック解除位置に配置された状態では、そのハンドルロック部材161の回動干渉部161Aはカム突片149Aの回動中心寄り位置に配置される。これにより、出没アーム149Bの障子支持枠11側への回動が許容され、ハンドル35の開操作位置への回動も許容される。
【0069】
そして、出没アーム149Bが障子支持枠11側に回動すると、出没アーム149Bのロック当接突起160Aがハンドルロック部材161のうち支持柱161Hと支持ベース41Bとの間の隙間(図13参照)に受容されると共に、図9及び図10に示すように出没アーム149Bの基端部とロック当接突起160Aとによって形成された湾曲凹部160Bに回動干渉部161Aの一部が収まった状態なってアシスト連結盤149とハンドルロック部材161との干渉が回避される。これにより、出没アーム149Bを回動可能範囲の終端位置まで回動することができる。
【0070】
図19に示すように支持ベース41Bには、その上端部の一部を突片状に切り欠いて戸先框12Aに直下曲げしたチューブ支持突片66が形成されている。このチューブ支持突片66は、戸先框12Aに備えた貫通孔を通して戸先框12A内に突入、第1受圧壁161Bの先端部と上下方向で対向している。そして、チューブ支持突片66に形成されたチューブ挿通孔にワイヤ支持チューブ68の下端部が固定され、そのワイヤ支持チューブ68の内部にワイヤ67が直動可能に挿通されている。
【0071】
また、ワイヤ67の下端部には、直動ピン65が固定され、その直動ピン65の両端部から円板状の1対の第1加圧対向壁65A,65Bが側方に張り出している。そして、直動ピン65の中間部が第1受圧壁161Bのピン挿通孔161Jに挿通されて1対の第1加圧対向壁65A,65Bによって抜け止めされている。また、本実施形態では、ワイヤ67と直動ピン65とによって本発明に係る「中継部材」が構成されている。
【0072】
第1受圧壁161Bは、後述する所定の条件の下、図19(A)及び図20(A)に示すように、直動ピン65の軸方向における中央に配置されている。そして、第1受圧壁161Bが直動ピン65の中央に配置された状態で、第1受圧壁161Bから第1加圧対向壁65Aまでの距離と、第1受圧壁161Bから第1加圧対向壁65Bまでの距離は、共に、ハンドルロック部材161の可動距離(即ち、ハンドルロック位置とハンドルロック解除位置との間の距離)と同じになっている。
【0073】
第1の錠装置71Aの構成に関する説明は以上である。ここで、第1の錠装置71A単体の動作及び作用・効果を説明する。障子12を開けて放置した状態では、ハンドル35は、トーションバネ52によって図5に示すように中立位置に位置決めされる。このとき、コントロールレバー45(詳細には、当接突片45C)がポール43のレバー当接片43Cに当接し、ポール43のラッチ当接片43Aがラッチ42のストッパ当接片42Bの回動領域より上方に位置したラッチリリース位置に保持される。これにより、ラッチ42が自由に回動可能な状態になっている。また、ポール43(詳細には、パイロット突起43B)に連結されたロック状態表示部材36は、図16(C)に示すように、上下ストロークの上端側に位置し、ロック状態判別窓33Aを介してロック表示部36Bが視認不可能になり、解錠状態であることを確認することができる。
【0074】
障子12の内側に居る者が障子12を閉める場合には、ハンドル35に手を掛けて障子12を閉塞側に押す又は引く。これにより、図6に示すように、ハンドル35は閉操作位置に移動する。このとき、ハンドル35に連動して、ハンドル連結盤151が同図の時計回り方向に回動し、中継盤46及びコントロールレバー45が同図の反時計回り方向に回動する。すると、ポール43のレバー当接片43Cに対するコントロールレバー45の当接が解除される。しかしながら、このとき、ポール43のラッチ当接片43Aに係合解除位置にあるラッチ42のストッパ当接片42Bが突き当てられているので、ポール43は依然としてラッチリリース位置に保持される。
【0075】
そして、障子12が閉められて、ストライカ受容溝41Sにストライカ60が進入すると、ラッチ42の後側係合爪42A2がストライカ60(詳細には、係合部60A)に押されて、ラッチ42が同図の反時計回り方向に回動して係合位置に至り、ラッチ42の前側係合爪42A1がストライカ60よりストライカ受容溝41Sの受容口側を遮蔽する。このとき、ラッチ当接片43Aに対するストッパ当接片42Bの突き当てが外れて、引張コイルバネ44の弾発力によりポール43が回動し、ラッチ当接片43Aがストッパ当接片42Bの側面に係合する。これにより、ラッチ42の回動が禁止され(即ち、ラッチ42が固定され)、ストライカ60がストライカ受容溝41Sから外れなくなり、第1の錠装置71Aが施錠状態になる。
【0076】
このとき、ポール43に連結されたロック状態表示部材36は、図16(A)に示すように、上下ストロークの下端側に位置し、ロック状態判別窓33Aを介してロック表示部36Bを視認することができる。これにより、第1の錠装置71Aが施錠されていることを確認することができる。また、ハンドル35が閉操作位置に移動する際には、ハンドル連結盤151はアシスト連結盤149と接触しないので、アシスト連結盤149は当接ローラ53と共に固定ベース41の内部に収容された中立位置に保持される。
【0077】
施錠された状態でハンドル35から手を離すと、図8に示すように、ハンドル35がトーションバネ52の付勢力によって中立位置に戻り、これに伴い、ハンドル連結盤151、中継盤46及びコントロールレバー45も中立位置に戻る。これにより、引上リンク47における長円孔47Aの上端部に中継盤46の摺動ピン47P2が位置した状態になる。この時点でもアシスト連結盤149は中立位置に保持される。
【0078】
障子12の内側に居る者が障子12を開ける場合には、ハンドル35に手を掛けて障子12を開放側に押す又は引く。これにより、図9に示すように、ハンドル35が中立位置から開操作位置に移動する。このとき、ハンドル35に連動してハンドル連結盤151が同図の反時計回り方向に回動し、中継盤46及びコントロールレバー45が同図の時計回り方向に回動する。すると、中継盤46の回動により引上リンク47が、ポール43のラッチ当接片43Aを上方に引き上げ、ラッチ42が回動可能になる。
【0079】
また、アシスト連結盤149は、ハンドル35が中立位置から開操作位置へと回動する動作に連動してアシスト窓41Wから外側に突き出て、アシスト連結盤149に備えた当接ローラ53が障子支持枠11の内面11Aに当接する。
【0080】
詳細には、ハンドル35に連動してハンドル連結盤151が同図の反時計回り方向に回動し、途中で、ハンドル連結盤151に備えたカム当接レバー151Bがアシスト連結盤149のカム突片149Aに当接する。すると、アシスト連結盤149は、図9の時計回り方向に回動し、出没アーム149Bがアシスト窓41Wから外側に突き出て、その先端部に備えた当接ローラ53が障子支持枠11の内面11Aに当接する。
【0081】
ハンドル35がさらに開操作位置に向けて回動されると、図10に示すように、出没アーム149Bがさらに外側に突き出て、障子支持枠11と戸先框12Aとの間を押し広げる。これにより障子12の初動時の負荷が軽減され、容易に障子12が開かれる。また、障子12が開かれると、ストライカ60がラッチ42の前側係合爪42A1を押し、さらに、引張コイルバネ44の弾発力によりラッチ42が係合位置から係合解除位置に移動する。
【0082】
ここで、ラッチ当接片43Aが引き上げられてポール43が同図の時計回り方向に回動すると、ポール43のレバー当接片43Cがコントロールレバー45を側方から押し、これによりコントロールレバー45がトーションコイルバネ54を弾性変形させつつ中継盤46と反対方向に回動する。すると、ハンドル35と共にハンドル連結盤151及び中継盤46が開操作位置に至ったときに、図9から図10の変化に示すように、レバー当接片43Cとコントロールレバー45との当接が外れ、トーションコイルバネ54の弾発力によってコントロールレバー45が時計回り方向に回動し、中継盤46に当接した元の状態に戻る。そして、ハンドル35から手が離されて中立位置に移動すると、ハンドル連結盤151、中継盤46と共にコントロールレバー45も中立位置に戻り、図5に示すように、ポール43がラッチリリース位置に保持される。また、ハンドル連結盤151が中立位置に戻ると、引張コイルバネ144の弾発力によって出没アーム149Bがアシスト窓41Wから固定ベース41の内側に退避し、アシスト連結盤149が中立位置に戻される。
【0083】
また、図8に示すように第1の錠装置71Aが施錠されかつアシスト連結盤149は中立位置に保持された状態で、ハンドルロック部材161を図19(A)に示したハンドルロック解除位置から図19(B)に示したハンドルロック位置に移動すると、図12に示すようにハンドルロック部材161の回動干渉部161Aとアシスト連結盤149との干渉により、ハンドル35が中立位置から開操作位置に回動することが規制される。この状態から障子12を開けるには、ハンドルロック部材161をハンドルロック解除位置に移動してからハンドル35を開操作位置に回動する必要があるので、障子12を開くまでに手間を要し、防犯性が向上する。
【0084】
なお、第1の錠装置71Aを施錠した状態でハンドルロック部材161によってハンドル35をロックするためには、ハンドル35を操作して障子12を閉じてからハンドルロック部材161をハンドルロック位置へと移動してもよいし、障子12を開いた状態で予めハンドルロック部材161をハンドルロック位置に配置しておいてから、ハンドル35を操作して障子12を閉じてもよい。
【0085】
さて、障子12の外側に出て、外側から障子12を閉めた場合には、障子12の外向き面にはハンドル35がないので、ハンドル35は閉操作位置には移動せず、ハンドル35が中立位置に位置した状態で障子12が閉められる。また、本実施形態では、カウンターバランサ59を設けたことにより、障子12を閉じた際に戸先框12Aが障子支持枠11に衝突しても、慣性力によりハンドル35が開操作位置側に回動することが確実に防がれる。これにより、ハンドル35と共に、アシスト連結盤149、中継盤46及びコントロールレバー45が中立位置に保持される。そして、図11に示すように、コントロールレバー45によりポール43がラッチリリース位置に保持された状態で、ストライカ60がストライカ受容溝41Sに進入することになる。これにより、ラッチ42が係合位置に固定されることがなくなり、障子12が閉められても第1の錠装置71Aは施錠されず、締め出し事故が防止される。即ち、外側から障子12を開放側にスライドさせると、ラッチ42がストライカ60に押されて回動し、係合解除位置に移動する。このとき、ロック状態表示部材36は、図16(B)に示すように、上下ストロークの中間位置に位置し、ロック状態判別窓33Aを介してロック表示部36Bが視認不可能になり、解錠状態であることを確認することができる。
【0086】
以上、本実施形態に係る第1の錠装置71Aの動作をまとめると、障子12の内側に居る者がハンドル35に手を掛けて障子12を閉める側に押す又は引くと、図5〜図8の変化に示すように、ハンドル35が閉操作位置に保持されて障子12が閉まり、第1の錠装置71Aが施錠される。また、ハンドル35に手を掛けて障子12を開く側に押す又は引くと、図8〜図10の変化に示すように、ハンドル35が開操作位置に保持されて第1の錠装置71Aが解錠され、障子12が開く。この際、アシスト連結盤149が障子支持枠11に向かって突き出て、障子支持枠11と戸先框12Aとの間を押し広げる。そして、障子12の外側に出て障子12を閉めた場合には、ハンドル35は屋外側にないので操作されず中立位置に保持されて障子12が閉まり、図11に示すように、第1の錠装置71Aは施錠されない。このように本実施形態の第1の錠装置71Aによれば、障子12の内側に居る者が障子12を閉めた場合には、自動的に施錠されるので、障子を閉めた状態で施錠を忘れる事態がなくなって防犯性が向上し、障子12の外側に出て障子12を閉めた場合には施錠されないので、締め出し事故を防止することができる。しかも、障子12を開く際には、アシスト連結盤149が障子支持枠11に向かって突き出て、障子支持枠11と戸先框12Aとの間を押し広げることで、容易に障子12を開くことができる。
【0087】
次に、第2の錠装置71Bの構成について説明する。図22に示すように、第2の錠装置71Bは、縦長矩形の固定ベース72に、ラッチ82、ポール80等の可動部品を組み付けてなる。その固定ベース72は、樹脂製筐体状の本体カバー72Aの内部に、板金製の支持ベース72Bを備えている。また、支持ベース72Bの上下の両端部には、螺子挿通孔72Kがそれぞれ貫通形成され、ここに通した螺子によって固定ベース72が戸先框12Aに固定されている。
【0088】
図21に示すように固定ベース72の上端寄り位置には、第1の錠装置71Aのストライカ係合部41Tと同形状のストライカ係合部72Tが形成され、そのストライカ係合部72Tに形成されたストライカ受容溝72Sに、ストライカ60の係合部60Aが受容される。
【0089】
図22に示すように、固定ベース72のうちストライカ受容溝72Sより上側部分には、ラッチ支持ピン82Pが起立しており、そのラッチ支持ピン82Pにラッチ82が回動可能に軸支されている。ラッチ82の下向き縁部には、前側係合爪82A1、後側係合爪82A2及びストッパ当接片82Bが、ストライカ60に近い側(以下、これを「前側」という)から遠い側(以下、これを「後側」という)に向かって順番に並べて形成されている。また、ラッチ82と固定ベース72との間には、引張コイルバネ83が取り付けられている。そして、障子12を開いた状態で、ラッチ82が、固定ベース72に形成されたストッパ72S1(図23参照)に当接して係合解除位置に位置決めされる(図22参照)。
【0090】
ラッチ82が、この係合解除位置に位置決めされると、前側係合爪82A1は、ストライカ受容溝72Sにおける受容口の上方に退避し、後側係合爪82A2が、ストライカ受容溝72Sの中間部分に突入し、さらに、ストッパ当接片82Bが、ストライカ受容溝72Sより下方に突出した状態になる。この状態で、障子12を閉めて、ストライカ受容溝72Sにストライカ60が受容されると、図26に示すように、ストライカ60によって後側係合爪82A2が押されてラッチ82が係合位置に移動し、前側係合爪82A1がストライカ受容溝72Sのうちストライカ60より受容口側を遮蔽する。
【0091】
図22に示すように、固定ベース72のうちストライカ受容溝72Sより下側部分には、ポール支持ピン80Pが起立しており、そのポール支持ピン80Pにポール80が回動可能に軸支されている。ポール80には、回動中心から後方に向けてラッチ当接片80Bが張り出されている。また、ポール80は、ラッチ当接片80Bがラッチ82から離れる側に回動すると、固定ベース72に形成されたストッパ72S2(図23参照)に当接してラッチリリース位置に位置決めされ(図24参照)、その反対側に回動するとラッチ当接片80Bがラッチ82に当接して位置決めされる。そして、係合位置に配置されたラッチ82にラッチ当接片80Bが当接して、ポール80がラッチロック位置に位置決めされ、ラッチ82をロックする。
【0092】
ポール80と固定ベース72との間には、トーションバネ81(本発明に係る「ポール係止手段」に相当する)が取り付けられている。このトーションバネ81は、ラッチリリース位置とラッチロック位置との中間部分で最も撓むようになっている。これにより、ポール80はラッチリリース位置及びラッチロック位置に保持される。
【0093】
第2の錠装置71Bには、ポール80をラッチリリース位置及びラッチロック位置の何れかに選択的に移動操作するためのポール操作部材73が備えられている。また、図21に示すように本体カバー72Aには、縦長矩形の操作窓72Wが貫通形成され、その操作窓72Wからポール操作部材73の操作摘み73Fが突出している。そして、操作摘み73Fを操作窓72Wの上端側に移動すると、そのポール80がポール操作部材73に押されてラッチロック位置に移動する一方、操作摘み73Fを操作窓72Wの下端側に移動すると、そのポール80がポール操作部材73に押されてラッチリリース位置に移動する。
【0094】
詳細には、図22に示すように、ポール操作部材73は、上下方向に延びた矩形のスライドプレート73Cを有し、そのスライドプレート73Cの上下方向における中間部から前記操作摘み73Fが突出している。また、スライドプレート73Cのうち操作摘み73Fを有した面と反対側の裏面には、図23に示すように操作摘み73Fに対して上下に対称となる位置に1対の第2加圧対向壁74A,74Bが突出形成されている。第2加圧対向壁74A,74Bは、スライドプレート73Cの裏面から直立した板形状をなし、板厚方向が上下方向を向いた状態で互いに上下方向で対向している。また、第2加圧対向壁74A,74Bのうちポール80から離れた側の側縁部同士の間は、図22に示した補強壁74Cによって連絡されている。さらに、第2加圧対向壁74A,74Bのうち互いの対向面からは、円柱状の支持エンボス73E,73Eが突出している。
【0095】
一方、ポール80の後縁部からは、スライドプレート73Cの裏面と対向する位置までトルク伝達アーム80Cが延設されている。そのトルク伝達アーム80Cとスライドプレート73Cの裏面との間隔は、スライドプレート73Cからの第2加圧対向壁74A,74Bの突出量より大きくなっている。そして、トルク伝達アーム80Cからスライドプレート73Cに向かって第2受圧壁80Aが突出している。この第2受圧壁80Aは円柱状をなし、第2加圧対向壁74A,74Bの間に挟まれている。
【0096】
第2受圧壁80Aと各第2加圧対向壁74A,74Bとの間には、それぞれ圧縮コイルバネ75A,75Bが組み付けられている。これら圧縮コイルバネ75A,75Bは、同一構造、同一剛性になっており、ポール操作部材73に外力を付与しない状態では、圧縮コイルバネ75A,75Bの弾発力によって、第2受圧壁80Aが第2加圧対向壁74A,74Bの間の中央に配置されるようになっている(図24参照)。
【0097】
詳細には、ポール80の第2受圧壁80Aが可動範囲の下端位置であるラッチリリース位置に配置された状態(図24参照)、及び、ポール80の第2受圧壁80Aが可動範囲の上端位置であるラッチロック位置に配置された状態の何れの状態(図27参照)でも、ポール操作部材73に外力がかかっていなければ、圧縮コイルバネ75A,75Bの弾発力によって第2受圧壁80Aが第2加圧対向壁74A,74Bの間の中央に配置される。そして、ポール操作部材73は、ラッチリリース位置の第2受圧壁80Aに対して1対の第2加圧対向壁74A,74Bが上下に対称配置された位置(以下、この位置を「ラッチリリース中立位置」という)を基準にして、その下側にハンドルロック部材161の可動距離分だけオフセットした下限位置まで下方に移動することができる。また、ポール操作部材73は、ラッチロック位置の第2受圧壁80Aに対して1対の第2加圧対向壁74A,74Bを上下に均等配置した位置(以下、この位置を「ラッチロック中立位置」という)を基準にして、その上側にハンドルロック部材161の可動距離分だけオフセットした上限位置まで上方に移動することができる。
【0098】
また、ポール80に備えた第2受圧壁80Aの上下方向における可動距離は、ハンドルロック部材161に備えた第1受圧壁161Bの可動距離と略同一になっている。そして、これら第2受圧壁80Aの可動距離と第1受圧壁161Bの可動距離とが、本発明に係る切替ストロークに相当し、ここで、その切替ストロークをL1とすると、ポール操作部材73の可動距離L2は、以下の式(1)に示すように、切替ストロークL1の3倍に設定されている。
【0099】
L2=3×L1 ・・・・・・(1)
【0100】
また、ワイヤ67は、図24に示すようにポール操作部材73をラッチリリース中立位置に配置し、かつ、ハンドルロック部材161をハンドルロック解除位置に配置した場合に、第1受圧壁161Bが第1加圧対向壁65A,65Bの中央に位置する長さに設定されている。従って、図27に示すようにポール操作部材73をラッチロック中立位置に配置し、かつ、ハンドルロック部材161をハンドルロック位置に配置した場合にも、第1受圧壁161Bが第1加圧対向壁65A,65Bの中央に配置される。
【0101】
そして、図24に示すようにハンドルロック部材161がハンドルロック解除位置に配置されかつポール80がラッチリリース位置に配置され、かつ、ラッチ82がラッチロック位置に配置された状態で、ポール操作部材73をラッチリリース中立位置から上限位置まで移動操作すると、以下のようになる。即ち、ポール操作部材73を図24に示したラッチリリース中立位置から上側に上記切替ストロークL1だけ移動操作すると、図25に示すように下側の第2加圧対向壁74Aが第2受圧壁80Aに接近して下側の圧縮コイルバネ75Aが、丁度、限界圧縮状態になる。このとき、第1の錠装置71Aでは、第1受圧壁161Bにおけるピン挿通孔161Jの開口縁に直動ピン65の下端側の第1加圧対向壁65Aが丁度当接する。そして、この状態からポール操作部材73をさらに上側に切替ストロークL1だけ移動操作すると、下側の第2加圧対向壁74Aと第2受圧壁80Aとの間で圧縮コイルバネ75Aを限界圧縮状態に保持した状態で、第2受圧壁80Aが上方に移動してポール80が図26に示したラッチロック位置に配置され、ポール操作部材73が上限位置に達する。このとき、第1受圧壁161Bにおけるピン挿通孔161Jの開口縁に直動ピン65の下端側の第1加圧対向壁65Aが当接した状態で第1受圧壁161Bが上方に移動し、ハンドルロック部材161がハンドルロック位置に配置される。そして、ポール操作部材73から手を離すと、圧縮コイルバネ75Aの弾発力によって、ポール操作部材73が下方に切替ストロークL1だけ戻されて、ポール操作部材73が図27に示したラッチロック中立位置に至る。また、ハンドルロック部材161がハンドルロック位置に配置されポール80がラッチロック位置に配置された状態で、ポール操作部材73をラッチロック中立位置から下限位置まで移動操作した場合には、上記動作と上下を逆にした動作になる。
【0102】
また、図24に示すようにハンドルロック部材161がハンドルロック解除位置に配置されかつポール80がラッチリリース位置に配置された状態で、ハンドルロック部材161を可動範囲の上限位置まで移動操作した場合には、図19(A)から図19(B)の変化に示すように、第1受圧壁161Bが直動ピン65の軸方向の中間位置から直動ピン65の上端部まで移動し、第1受圧壁161Bが上側の第1加圧対向壁65Bに隣接又は接触した位置で位置決めされる。即ち、ハンドルロック部材161を操作しても、ワイヤ67は停止した状態に維持される。
また、図27に示すようにハンドルロック部材161がハンドルロック位置に配置されポール80がラッチロック位置に配置された状態で、ハンドルロック部材161を可動範囲の下限位置まで移動操作した場合には、図20(A)から図20(B)の変化に示すように、第1受圧壁161Bが直動ピン65の軸方向の中間位置から直動ピン65の下端部まで移動し、第1受圧壁161Bが下側の第1加圧対向壁65Aに隣接又は接触した位置で位置決めされる。即ち、ハンドルロック部材161を操作しても、ワイヤ67は停止した状態に維持される。
【0103】
第2の錠装置71Bの構成に関する説明は以上である。上記構成により、本実施形態の錠システム70では、ハンドルロック部材161の操作に対するポール操作部材73の連動が防がれる一方、ポール操作部材73の操作に対してハンドルロック部材161が連動する。そして、錠システム70の施解錠を以下のようにして行うことができる。
【0104】
本実施形態に係る錠システム70が取り付けられた障子12をハンドル35に手を掛けて閉めると第1及び第2の錠装置71A,71Bの各ラッチ42,82がストライカ60と噛み合った状態になる。このとき、第1の錠装置71Aのポール43は、引張コイルバネ44の付勢によってラッチロック位置に保持されて第1の錠装置71Aが施錠状態になり、ハンドル35を操作しない限り、第1の錠装置71Aの施錠状態は維持される。
【0105】
一方、第2の錠装置71Bでは、ポール80がトーションバネ81によってラッチロック解除位置に保持されているので、障子12を閉めただけでは施錠されず、解除状態に保持される。このように、本実施形態の錠システム70では、障子12を閉めるだけの操作で第1の錠装置71Aのみによる簡易な施錠が可能である。ここで、第1の錠装置71Aに備えたハンドルロック部材161をハンドルロック位置に移動操作すると、ハンドル35の操作が規制され、第1の錠装置71Aが、言わば二重施錠状態になり、防犯性が高まる。また、上述の如く、ハンドルロック部材161の操作に対するポール操作部材73の連動が防がれているので、第1の錠装置71A側の操作によって第2の錠装置71Bが施錠状態になることはない。
【0106】
さて、第1の錠装置71Aを二重施錠状態としかつ第2の錠装置71Bを施錠状態にするには、障子12を閉めてから第2の錠装置71Bのポール操作部材73の操作により第2の錠装置71Bのポール80をラッチロック位置に移動すればよい。すると、ポール操作部材73の操作によって第2の錠装置71Bのポール80がラッチロック位置に移動してトーションバネ81によってそのラッチロック位置に保持され、第2の錠装置71Bが施錠状態になる。このときのポール操作部材73の操作に対してハンドルロック部材161が連動してハンドルロック位置に移動する。このように、本実施形態によれば、障子12を閉めてから第2の錠装置71Bにおけるポール操作部材73を操作するだけで、第1の錠装置71Aが二重施錠状態になると共に第2の錠装置71Bが施錠状態になる。この状態で、第1の錠装置71A側の操作によって第2の錠装置71Bが解錠されることはない。また、第2の錠装置71B側でポール操作部材73を操作すれば、第2の錠装置71Bが解錠されると共に、第1の錠装置71Aのハンドル35のロックのみが解除され、第1の錠装置71Aの施錠状態は維持される。これにより、障子12に対して外側(例えば、室外)からは障子12を開けることができないが、障子12の内側(例えば、室内)ではハンドル35のみの操作で障子12を開けることができる。このように、本実施形態によれば、錠システム70が有する第1及び第2の錠装置71A,71B全体の施錠操作及び解除操作を、従来の錠システムより少ない操作で行うことができ、操作性が向上する。
【0107】
また、本実施形態では、第1の錠装置71Aとワイヤ67との連結部分において、第1受圧壁161Bに形成したピン挿通孔161Jに直動ピン65を挿通し、その直動ピン65の両端部から1対の第1加圧対向壁65A,65Bを側方に張り出したので、第1受圧壁161Bと第1加圧対向壁65A,65Bとを当接方向と直行する方向で互いに位置決めされ、当接状態を安定させることができる。
【0108】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0109】
(1)前記実施形態の錠システム70では、圧縮コイルバネ75A,75Bが第2の錠装置71B側に備えられていたが、前記実施形態の第1加圧対向壁65A,65Bと第1受圧壁161Bとの間にそれぞれ圧縮コイルバネを配置した構成にしてもよい。
【0110】
(2)前記実施形態の錠システム70では、第1の錠装置71Aに対して上方に第2の錠装置71Bが配置されていたが、第1の錠装置より下方に第2の錠装置を配置した構成にしてもよい。
【0111】
(3)前記実施形態の障子12は、ガラス板12Gを張った所謂ガラス戸であったが、障子は、木戸又は金属製の戸であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の一実施形態に係る障子ユニットの正面図
【図2】第1の錠装置と戸先框の斜視図
【図3】ストライカの斜視図
【図4】障子が開いた状態における第1の錠装置の正面図
【図5】障子が開いた状態における第1の錠装置の正断面図
【図6】ハンドルが閉操作位置に移動する過程の第1の錠装置の正断面図
【図7】ハンドルが閉操作位置に配置された状態の第1の錠装置の正断面図
【図8】施錠状態の第1の錠装置の正断面図
【図9】ハンドルが開操作位置に移動する過程の第1の錠装置の正断面図
【図10】ハンドルが開操作位置に配置された状態の第1の錠装置の正断面図
【図11】非施錠状態で障子が閉じた状態の第1の錠装置の平断面図
【図12】ハンドルがロックされた状態の第1の錠装置の正断面図
【図13】本体カバーを取り外した状態の固定ベースの斜視図
【図14】中継盤とコントロールレバーの斜視図
【図15】ロック状態表示部材とポールの斜視図
【図16】(A)施錠状態の第1の錠装置の部分正面図、(B)非施錠状態の第1の錠装置の部分正面図、(C)非施錠状態の第1の錠装置の部分正面図
【図17】ハンドルロック操作部材の斜視図
【図18】第1の錠装置の側断面図
【図19】(A)ハンドルロック解除位置に配置された第1の錠装置の側断面図,(B)ハンドルロック位置に配置された第1の錠装置の側断面図,
【図20】(A)ハンドルロック位置に配置された第1の錠装置の側断面図,(B)ハンドルロック解除位置に配置された第1の錠装置の側断面図,
【図21】第2の錠装置の正面図
【図22】第2の錠装置の正断面図
【図23】第2の錠装置の側断面図
【図24】第1及び第2の錠装置の正断面図
【図25】第1及び第2の錠装置の正断面図
【図26】第1及び第2の錠装置の正断面図
【図27】第1及び第2の錠装置の正断面図
【図28】第1及び第2の錠装置の正断面図
【図29】従来の錠システムを備えた障子の正面図
【図30】従来の錠システムのメインクレセント状の外観図
【図31】従来の錠システムの補助クレセント状の斜視図
【符号の説明】
【0113】
11 障子支持枠
12 障子
12A 戸先框
33A ロック状態判別窓
35 ハンドル
36 ロック状態表示部材
41 固定ベース
41A 本体カバー
41W アシスト窓
42 ラッチ
42B ストッパ当接片(ポール移動制限部)
43 ポール
43A ラッチ当接片(ポール移動制限部)
44 引張コイルバネ(ポール付勢手段)
45 コントロールレバー(コントロール部材)
46 中継盤(コントロール部材)
47 引上リンク
49P2 連結ピン
50 係合溝
52 トーションバネ
53 当接ローラ(アシスト可動部材)
54 トーションコイルバネ(コントロール部材)
59 カウンターバランサ
60 ストライカ
65 直動ピン
65A,65B 第1加圧対向壁
67 ワイヤ
70 錠システム
71A 第1の錠装置
71B 第2の錠装置
73 ポール操作部材
74A,74B 第2加圧対向壁
75A,75B 圧縮コイルバネ
80 ポール
80A 第2受圧壁
81 トーションバネ(ポール係止手段)
82 ラッチ
83 引張コイルバネ
140 錠装置本体
149 アシスト連結盤(アシスト可動部材)
149A カム突片(第1突部)
149B 出没アーム(第2突部)
151 ハンドル連結盤
160A ロック当接突起
161 ハンドルロック操作部材
161A 回動干渉部
161B 第1受圧壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
障子の戸先框に取り付けられ、障子支持枠に固定されたストライカに係合して施錠される第1の錠装置と、前記戸先框のうち前記第1の錠装置とは上下方向で離れた位置に取り付けられ、前記第1の錠装置とは別のストライカに係合して施錠される第2の錠装置と、前記第1と第2の錠装置の間で直動可能に保持されると共に前記戸先框の内部に配置され、前記第1と第2の錠装置を連動可能に連結した中継部材とを備えてなる錠システムであって、
前記第1及び第2の錠装置は、前記ストライカと噛み合って回動するラッチと、前記ストライカに噛み合った前記ラッチに係合して前記ラッチをロックするラッチロック位置と、そのロックを解除するラッチリリース位置との間で移動可能なポールとを有し、
前記第1の錠装置には、前記ポールを前記ラッチロック位置に付勢するためのポール付勢手段と、前記ポール付勢手段による付勢に抗して前記ポールを前記ラッチロック解除位置へと移動操作するためのハンドルと、前記ハンドルをロックするハンドルロック位置と、そのロックを解除するハンドルロック解除位置との間で移動操作可能なハンドルロック部材とが備えられる一方、
前記第2の錠装置には、前記ポールを前記ラッチロック位置と前記ラッチロック解除位置とにそれぞれ係止するポール係止手段と、前記ポール係止手段による係止に抗して前記ポールを前記ラッチロック位置と前記ラッチロック解除位置とに移動操作するためのポール操作部材とが備えられ、
前記中継部材は前記ハンドルロック部材と前記ポール操作部材との間を連結し、
それら連結部分における前記ハンドルロック部材の可動距離と、前記第2の錠装置の前記ポールの可動距離とを所定の切替ストロークと略同一にすると共に、前記ポール操作部材の可動距離を前記切替ストロークより大きくし、
前記中継部材と前記ハンドルロック部材との間及び前記ポール操作部材と前記第2の錠装置の前記ポールとの間に、通常は相互に離間し、前記中継部材を前記切替ストローク未満で移動したときに離間状態を保持して接近すると共に、前記中継部材を前記切替ストローク以上で移動したときに相互に当接して力を伝達する1対のロストモーション壁をそれぞれ設けて、前記ハンドルロック部材の操作に対する前記ポール操作部材の連動を防ぐ一方、前記ポール操作部材の操作に対する前記ハンドルロック部材の連動を可能としたことを特徴とする錠システム。
【請求項2】
前記中継部材と前記ハンドルロック部材との間の一方の前記ロストモーション壁を、前記ハンドルロック部材に形成された第1受圧壁で構成すると共に、他方の前記ロストモーション壁を、前記中継部材の一端部に形成されて前記第1受圧壁を間に挟んで前記ハンドルロック部材の可動方向で対向し、前記切替ストローク分だけ前記第1受圧壁からそれぞれ離れた1対の第1加圧対向壁で構成し、
前記ポール操作部材と前記第2の錠装置の前記ポールとの間の一方の前記ロストモーション壁を、前記第2の錠装置の前記ポールに形成された第2受圧壁で構成すると共に、他方の前記ロストモーション壁を、前記ポール操作部材に形成されて前記第2受圧壁を間に挟んで前記ポール操作部材の可動方向で対向し、前記切替ストローク分だけ前記第2受圧壁からそれぞれ離れた1対の第2加圧対向壁で構成し、
前記ポール操作部材に、前記中継部材の他端部が一体に直動可能に連結された中継部材連結部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の錠システム。
【請求項3】
前記第1受圧壁と前記1対の第1加圧対向壁との間、又は、前記第2受圧壁と前記1対の第2加圧対向壁との間には、前記第1受圧壁を前記1対の第1加圧対向壁の中央に保持しかつ前記第2受圧壁を前記1対の第2加圧対向壁の中央に保持するための弾性部材が備えられたことを特徴とする請求項2に記載の錠システム。
【請求項4】
前記弾性部材は、前記第2受圧壁と前記各第2加圧対向壁との間に挟まれた1対の圧縮コイルバネであって、前記ポール操作部材を前記切替ストローク以上に操作したときに限界圧縮状態になって前記第2受圧壁と前記第2加圧対向壁との間で力を伝達することを特徴とする請求項3に記載の錠システム。
【請求項5】
前記第1受圧壁に、前記ハンドルロック部材の直動方向に貫通したピン挿通孔を形成すると共に、前記中継部材の一端部に、前記ピン挿通孔に直動可能に挿通された直動ピンを固定し、その直動ピンの両端部から側方に前記1対の第1加圧対向壁を張り出したことを特徴とする請求項2乃至4の何れかに記載の錠システム。
【請求項6】
前記第1の錠装置の前記ハンドルは、上下方向に延びかつ前記障子のスライド方向と直交した水平軸を中心に回動し、前記障子が開く側に傾いた開操作位置と、前記障子が閉じる側に傾いた閉操作位置との間を移動可能であると共に、常には前記開操作位置と前記閉操作位置との間の中立位置に配置されるように付勢され、
前記ハンドルを前記開操作位置に保持して前記障子を開いたことを条件にして解錠される一方、前記ハンドルを前記閉操作位置に保持して前記障子を閉じたことを条件にして施錠されるように構成すると共に、
前記ハンドルと一体に回動するハンドル連結盤と、
前記ハンドルが前記中立位置から前記開操作位置に回動する動作に伴って前記障子支持枠に向かって突き出て、前記障子支持枠と前記戸先框との間を押し広げるアシスト可動部材とを備え、
前記アシスト可動部材は、前記障子のスライド方向と直交した水平軸を中心に回動可能に軸支されると共に、その回動中心を挟んで相反する方向に突出した第1突部及び第2突部を有しかつ、前記第1突部が前記ハンドル連結盤の回動領域に突入した状態になるように付勢され、
前記ハンドルが前記中立位置から前記開操作位置へ向かう途中で前記第1突部が前記ハンドル連結盤に押されて前記アシスト可動部材が回動し、前記第2突部が前記障子支持枠に向かって突き出るように構成されたことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の錠システム。
【請求項7】
前記第1の錠装置には、前記ハンドルが前記中立位置に位置した状態で前記ラッチが前記係合解除位置から前記係合位置に移動したときに前記ポールを前記ラッチリリース位置に保持し、前記ハンドルが前記閉操作位置に位置した状態で前記ラッチが前記係合解除位置から前記係合位置に移動したときに前記ポールを前記ラッチロック位置に移動し、さらに、前記ハンドルが前記中立位置から前記開操作位置に移動する動作に連動して、前記ポールを前記ラッチロック位置から前記ラッチリリース位置に移動するポール移動機構が備えられたことを特徴とする請求項6に記載の錠システム。
【請求項8】
前記ポール移動機構には、前記ラッチと前記ポールとに設けられ、前記ラッチが前記係合位置以外の位置にある場合に、互いに当接して前記ポールが前記ラッチロック位置に移動することを禁止し、前記ラッチが前記係合位置に位置した場合に、前記ポールが前記ラッチロック位置に移動することを許容するポール移動制限部と、
前記ハンドルと前記ポールとの間に設けられ、前記ハンドルが前記中立位置に位置した場合に、前記ポールに係合することで前記ポール付勢手段の付勢力に抗して前記ポールを前記ラッチリリース位置に保持し、前記ハンドルが前記閉操作位置に位置した場合に、前記ポールとの係合を解除することで前記ポール付勢手段の付勢力による前記ポールの前記ラッチロック位置への移動を許容するコントロール部材とが備えられたことを特徴とする請求項7に記載の錠システム。
【請求項9】
前記ハンドルロック部材は、前記ハンドルロック位置に配置されたときに前記アシスト可動部材に干渉して前記ハンドルが前記中立位置から前記開操作位置に回動することを規制する一方、前記ハンドルロック解除位置に配置されたときに前記アシスト可動部材及び前記ハンドルの回動を許容するように構成されたことを特徴とする請求項6乃至8の何れかに記載の錠システム。
【請求項10】
前記ハンドルが前記中立位置に配置された状態で、前記アシスト可動部材の前記第2突部のうち前記障子支持枠側を向いた前面には、その上下方向の中間部から前方にロック当接突起が突出形成され、
前記ハンドルロック部材は、上下動可能に備えられると共に、前記ハンドルロック位置で前記ロック当接突起の前方に配置される一方、前記ハンドルロック解除位置で前記ハンドルロック位置より前記アシスト可動部材の回動中心側に配置される回動干渉部を備えたことを特徴とする請求項6乃至9の何れかに記載の錠システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図16】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図15】
image rotate

【図17】
image rotate