説明

鍛造プレスにおけるトランスファフィーダ

【課題】過負荷を効果的に吸収でき、損傷を防止しうるトランスファフィーダを提供する。
【解決手段】前フィードバー1に加わる外力を吸収するための前フィードバー左過負荷吸収機構1LOおよび前フィードバー右過負荷吸収機構1ROと、後フィードバー2に加わる外力を吸収するための後フィードバー左過負荷吸収機構2LOおよび後フィードバー右駆動装置2RDとを備えている。各過負荷吸収機構は、フィードバー開閉方向のねじり外力を吸収する第1負荷吸収手段と、フィードバー昇降方向のねじり外力を吸収する第2負荷吸収手段とからなる。各負荷吸収手段がねじり外力の入力側部材と伝達先部材の間に挿入されたピン21、25もしくはトーションバー21t、25tを備えている。ピン21,25やトーションバー21t,25tの両端、あるいは一方の端部には摩擦締結要素30,40が結合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍛造プレスにおけるトランスファフィーダに関する。トランスファフィーダは、プレス内の多工程金型の前後に1本ずつ設けられた2本のフィードバーを、昇降・開閉・前後進という3次元モーションで動作させることによって、多工程金型間でワーク(鍛造品)を搬送する装置である。かかるトランスファフィーダでは、ワークを挟んで次工程へ搬送するときに、ワークとの衝突や駆動装置の同期ズレなどの様々な要因でねじり外力が加わることがあるが、本発明は、このようなねじり外力を吸収できるトランスファフィーダに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のプレスでは、前フィードバーと後フィードバーに、それぞれ別個に駆動装置を取付けて、プレスの左右両端位置における前後の間を開放した、前後分割タイプのトランスファフィーダが用いられるようになっている(特許文献1)。
【0003】
上記の前後分割タイプのトランスファフィーダでは、前・後のフィードバーの左右両端にそれぞれフィードバー駆動装置を取付けており、これら各駆動装置は、前後のフィードバーを個別に昇降・開閉・前後進させる機能を有している。そして、フィードバー駆動装置は各端部バーに対し片持ち状態で取付けられている。このような片持ち構造で、ワークを高速で安定して搬送するためには、フィードバーの振動を抑止することが重要となり、そのためには剛性を高くしなければならない。
【0004】
一方、このような前後分割構造のトランスファフィーダにおいて、開閉時や昇降時に、前後のフィードバー間の同期がずれたり、個々のフィードバーの左右両端間で同期がずれたりすると、ねじり外力が発生するので、ねじり外力による過負荷を吸収し、フィードバーの損傷を防止する必要がある。
しかるに、剛性を高めることと、過負荷吸収能力を高めることを、フィードバー自体の構造的工夫で両立させることは、一般的に困難である。
【0005】
そこで、フィードバーに過負荷吸収機構を取付ける技術が提案され、そのような従来技術として、特許文献1がある。この従来技術では、1本のフィードバーを構成する中央バーと、その両端の端部バーとの連結部に、緩衝バネを用いる過負荷吸収機構が開示されている。
この従来技術では、過負荷が生じた時点で、バネが変形するので、中央バーの連結部は損傷を免れるものの、バネ変形の反力が駆動装置にも作用し、駆動装置が損傷しかねないという欠点をもっている。したがって、上記従来技術の過負荷による損傷防止は充分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−243414
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、トランスファフィーダに作用する過負荷を効果的に吸収でき、損傷を防止しうる鍛造プレスにおけるトランスファフィーダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明の鍛造プレスにおけるトランスファフィーダは、多工程金型の前方に配置した前フィードバーおよび後方に配置した後フィードバーを備えた鍛造プレスにおいて、前記前フィードバーを昇降、開閉、前後進させるため、その両端に連結した前フィードバー左駆動装置および前フィードバー右駆動装置と、前記後フィードバーを昇降、開閉、前後進させるため、その両端に連結した後フィードバー左駆動装置および後フィードバー右駆動装置と、前記前フィードバーに加わる外力を吸収するための前フィードバー左過負荷吸収機構および前フィードバー右過負荷吸収機構と、前記後フィードバーに加わる外力を吸収するための後フィードバー左過負荷吸収機構および後フィードバー右過負荷吸収機構とを備えており、前記各過負荷吸収機構が、フィードバー開閉方向のねじり外力を吸収する第1負荷吸収手段と、フィードバー昇降方向のねじり外力を吸収する第2負荷吸収手段とからなり、前記第1負荷吸収手段および前記第2負荷吸収手段のいずれもが、ねじり外力の入力側部材と伝達先部材の間に挿入されたピンを備えており、前記ピンが内挿型摩擦締結要素を介して前記ねじり外力の入力側部材と伝達先部材に締結されており、内挿型摩擦締結要素が、保持部の内周とピンの外周との間に挿入される筒状部材を有し、該筒状部材の厚さを収縮させることで締結力を強弱に調整できるものであることを特徴とする。
第2発明の鍛造プレスにおけるトランスファフィーダは、第1発明として、前記ピンの両端が内挿型摩擦締結要素を介して前記ねじり外力の入力側部材と伝達先部材に締結されていることを特徴とする。
第3発明の鍛造プレスにおけるトランスファフィーダは、第1発明として、前記ピンの一端が内挿型前記摩擦締結要素を介して前記ねじり外力の入力側部材または伝達先部材に締結され、該ピンの他端が固定締結要素を介して前記ねじり外力の伝達先部材または入力側部材に締結されていることを特徴とする。
第4発明の鍛造プレスにおけるトランスファフィーダは、第1、第2または第3発明として、前記ピンに代えてトーションバーを用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
第1発明によれば、過負荷吸収機構が開閉方向のねじり外力を吸収する第1負荷吸収手段と、昇降方向のねじり外力を吸収する第2負荷吸収手段とを備えているので、フィードバーの開閉方向のねじり外力を第1負荷吸収手段で吸収し、昇降方向のねじり外力を第2負荷吸収手段で吸収する。このため、トランスファフィーダにねじり外力が働いても、これを吸収できる。また、この吸収は内挿型摩擦締結要素の滑りにより作れ、過大な反力を生成しないので、トランスファフィーダの損傷を効果的に防止することができる。
さらに、内挿型摩擦締結要素は、半径方向の寸法が小さく、コンパクトに構成できる。
第2発明によれば、ピンの両端における摩擦締結要素の滑りによりねじり外力を吸収できるので、剛性を維持しつつ過大な反力を駆動装置に伝達せず、これらの損傷を防止することができる。
第3発明によれば、ピンのいずれか一端における摩擦締結要素の滑りによりねじり外力を吸収できるので、剛性を維持しつつ過大な反力を駆動装置に伝達せず、これらの損傷を防止することができる。
第4発明によれば、トーションバーのねじりによる外力吸収と、摩擦締結要素の滑りによる外力吸収の2段階の過負荷吸収ができるので、吸収できる負荷が大きい。また、トーションバーのねじりにより生じた反力は摩擦締結要素のすべりにより吸収できるので、トーションバー側にも駆動装置側にも反力を伝達せず、これらの損傷を防止することができる。しかも、トーションバーと摩擦締結要素は寸法が小さいので、負荷吸収手段をコンパクトに構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図8に示す過負荷吸収機構1ROの一部断面正面図である。
【図2】図1におけるV線矢視断面図である。
【図3】図1におけるVI線矢視平面図である。
【図4】摩擦締結要素の一例を示す図であり、(A)は正面図、(B)は断面図、(C)は要部説明図である。
【図5】摩擦締結要素の他の例を示す図であり、(A)は正面図、(B)は断面図、(C)は要部説明図である。
【図6】ピンの他の取付例を示す説明図である。
【図7】トーションバーの取付例を示す説明図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るトランスファフィーダの正面図である。
【図9】図8のトランスファフィーダの右側面図である。
【図10】図8のトランスファフィーダの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
(第1実施形態)
まず、本発明が適用される鍛造プレスの基本構成を図8〜図10に基づき説明する。
図8は本発明の第1実施形態に係るトランスファフィーダの正面図である。図9は図8のトランスファフィーダの右側面図である。図10は図8のトランスファフィーダの平面図である。
【0012】
符号Cは4本のプレスコラムを示しており、符号1は前フィードバー、符号2は後フィードバーを示している。Mは金型である。図では4個を示しているが、それ以下でも、それ以上でも本発明の適用は可能である。
前フィードバー1も後フィードバー2も、同じ構造である。図では一本物のように示しているが、実際には中央バーとその両端に取付けられた端部バーとからなる分離タイプが多い。分離タイプはメンテナンス等の便宜のための構造であるが、このような分離タイプ以外のフィードバーにも本発明は適用できる。なお、フィードバー1,2の中央部分の内側にはワークをつかむ搬送用爪が取付けられている。
【0013】
前記前フィードバー1の左右両端には、それぞれ前フィードバー左駆動装置1LDと前フィードバー右駆動装置1RDが取付けられている。また、後フィードバー2両端には、後フィードバー左駆動装置2LDと後フィードバー右駆動装置2RDが取付けられている。
【0014】
前記各フィードバー駆動装置1LD,1RD,2LD,2RDは、いずれも昇降機構と開閉機構と前後進機構を備えている。前記昇降機構5は、プレスの固定部材、たとえばコラムCに取付けられている。この昇降機構5はサーボモータ51で回転されるネジ・ナット機構により昇降(矢印a方向)される昇降部材52を備えている。この昇降部材52には開閉機構6が取付けられている。この開閉機構6はサーボモータ61で回転されるネジ・ナット機構により開閉方向に移動(矢印b方向)されるアーム62を備えている。このアーム62の先端には前後進機構7が取付けられている。この前後進機構7は、サーボモータ71で回転されるネジ・ナット機構により前後進(矢印c方向)される移動ブロック72を備えている。なお、サーボモータ71とネジ・ナット機構は、右側の駆動装置1RD,2RDのみに設けているが、左側の駆動装置1LD,2LDにのみ取付けてもよく、両方に取付けてもよい。
【0015】
図8および図9に示すように、各フィードバー駆動装置1LD,1RD,2LD,2RDにおける前後進機構7の下面には、それぞれ、過負荷吸収機構1LO,1RO,2LO,2ROが取付けられている。
具体的には、各前後進機構7の移動ブロック72の下面に、各過負荷吸収機構1LO,1RO,2LO,2ROの上端面がボルト等で結合されている。
このように結合された結果、過負荷吸収機構1LO,1ROは1本の前フィードバー1のみ支持し、過負荷吸収機構2LO,2ROは1本の後フィードバー2のみ支持する構造となっている。
【0016】
つぎに、過負荷吸収機構の詳細を図1〜図3に基づき説明する。
図1は図8に示す過負荷吸収機構1ROの一部断面正面図である。図2は図1におけるII‐II線矢視断面図である。図3は図1におけるIII線矢視平面図である。
なお、4ヵ所の過負荷吸収機構は全て同一構造であるので、図8中右側、つまり前フィードバー右過負荷吸収機構1ROで代表させて説明する。
【0017】
本実施形態の過負荷吸収機構は、2個の第1、第2ケース11,15と、それに組込まれる2本の第1、第2ピン21,25と、このピン21,25を前記ケース11,15に取付ける摩擦締結要素30,40とから構成されている。
そして、前記第1ピン21とそれを固定する摩擦締結要素30,40により、第1負荷吸収手段が構成されており、前記第2ピン25とそれを固定する摩擦締結要素30,40により、第2負荷吸収手段が構成されている。
【0018】
図1に示すように、前記第1ケース11は、前記フィードバー1の端部に連結される部材であり、縦向きに配置される第1ピン21を介して第2ケース15を連結する部材である。この第1ケース11は、第1ピン21の一端を固定する保持部12と第2ケース15を収容する枠部13を備えている。
【0019】
図1〜図3に示すように、前記第2ケース15は、縦向きに配置されている第1ピン21の他端を保持する保持部16(図1参照)と、横向きに配置される第2ピン25の一端を保持する保持部18と、前記保持部16と前記保持部18を連結する連結部19(図3参照)を備えている。
そして、第2ピン25の他端は保持部73(図2参照)で保持されており、この保持部73は、前後進機構7のスライダー72の下面にボルト等で結合されている。このようにして、前フィードバー1は第1ケース11および第2ケース15を介して前後進機構7に連結されている。そして、図2に示すように前後進機構7の外箱は、開閉機構6のアーム62に結合されている。
【0020】
本実施形態では、保持部12,18が特許請求の範囲に記載の「ねじり外力の入力側部材」に相当し、保持部16,73が特許請求の範囲に記載の「ねじり外力の伝達先部材」に相当する。後述するように、第1負荷吸収手段および第2負荷吸収手段の取付け位置は本実施形態に限定されるものではない。本実施形態の取付け位置と異なる場合においても、第1負荷吸収手段もしくは第2負荷吸収手段と締結し、前・後フィードバー1,2側に位置する部材が特許請求の範囲に記載の「ねじり外力の入力側部材」であり、プレスコラムC側に位置する部材が特許請求の範囲に記載の「ねじり外力の伝達先部材」である。
【0021】
前記第1、第2ピン21,25の一端は、保持部12,18に対し、摩擦締結要素30によって結合されている。
また、前記第1、第2ピン21,25の他端は保持部16,73に対し摩擦締結要素40によって結合されている。
これらの摩擦締結要素30,40は、いずれもある回転トルク以下では第1、第2ピン21,25を回転不能に拘束しているが、回転トルクが設定値以上になると第1、第2ピン21,25の回転を許容する締結具である。
【0022】
前記摩擦締結要素30を図4に基づき説明する。31は環状のインナーリング、32は環状のアウターリングである。このインナーリング31とアウターリング32は、両端では内厚が薄く、内端では肉厚が厚くなるように、テーパーが付けられている。
そして、インナーリング31とアウターリング32との間には、環状のテーパーリング33,34が両端方向から挿入される。各テーパーリング33,34の幅は、インナーリング31およびアウターリング32の幅の半分以下であり、いずれも外端の肉厚は厚く、内端の肉厚は薄くなるようにテーパーが付けられている。
そして、一方のテーパーリング33にはボルト35が貫通され、他方のテーパーリング34にはボルト35の先端部が螺合されるようになっている。
【0023】
このボルト35を締め付けると、テーパーリング33,34が互いに引き付けられて、インナーリング31とアウターリング32の間の間隔を広げようとするので、第1、第2ピン21,25を保持部12,18に対し、強く固着することができる。
【0024】
前記摩擦締結要素40を図5に基づき説明する。
41は筒部、42はフランジである。筒部41の内周には、可撓性のある環状のスリーブ43が取付けられている。このスリーブ43内には、油等の圧力媒体pmが封入されており、この圧力媒体pmの内圧は調圧部44で調整可能となっている。調圧部44は、チャンバー45内に入れられたピストン46とピストン46の押込み量を調整する調整ネジ47からなる。チャンバー45はスリーブ43と通路48でつながっている。
【0025】
この調整ネジ47を締込むとピストン46が押され、チャンバー45内の圧力媒体pmがスリーブ43内に押し込まれてスリーブ43の厚さが広がろうとする。
このため第1、第2ピン21,25を保持部16,17に対し強く固着することができる。
【0026】
つぎに、本実施形態の過負荷吸収機構の作用を説明する。
まず、前・後フィードバー1,2の開閉動作が、フィードバーの左右両側で同期がずれると各フィードバー1,2の端部にねじり外力が発生する。このねじり外力は縦方向に配置している第1負荷吸収手段である第1ピン21の両端に設けられた摩擦締結要素30または摩擦締結要素40が滑ることで、ねじり外力を吸収することができる。したがって、過大なねじり外力をフィードバー1,2やフィードバー各駆動装置1LD,1RD,2LD,2RDに伝えることはない。このため、確実にフィードバー1,2やフィードバー各駆動装置1LD,1RD,2LD,2RDの損傷を防止することができる。
【0027】
つぎに、前・後フィードバー1,2の左右両側で昇降動作の同期がずれて、昇降方向のねじりが作用したとする。このときも、摩擦締結要素30または摩擦締結要素40が滑ることで、昇降方向のねじり吸収する。したがって、過大なねじり外力をフィードバー1,2やフィードバー各駆動装置1LD,1RD,2LD,2RDに伝えることはない。このため、確実にフィードバー1,2やフィードバー各駆動装置1LD,1RD,2LD,2RDの損傷を防止することができる。
【0028】
(第2実施形態)
つぎに、第2実施形態のトランスファフィーダに係る過負荷吸収機構について説明する。負荷吸収手段以外は第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
図6は第2実施形態に係る負荷吸収手段である。本実施形態の負荷吸収手段は第1、第2ピン21,25の一端に摩擦締結要素30または40を設け、他端に固定締結要素を設けた構成である。
【0029】
図6(A)に示すように、本実施形態の第1負荷吸収手段は第1ピン21の一端が固定締結要素であるキー50を介して保持部12(図示せず)に固定され、他端が摩擦締結要素40を介して保持部16(図示せず)に締結された構成である。同様に第2負荷吸収手段は第2ピン25の一端がキー50を介して保持部18に固定され、他端が摩擦締結要素40を介して保持部73に締結された構成である。
【0030】
また、図6(B)に示すように、第1負荷吸収手段を第1ピン21の一端が摩擦締結要素30して保持部12(図示せず)に固定され、他端がキー50を介して保持部16(図示せず)に固定された構成とし、第2負荷吸収手段を第2ピン25の一端が摩擦締結要素30を介して保持部18に締結され、他端がキー50を介して保持部73に固定された構成としてもよい。
【0031】
固定締結要素は、上記のキー50に限定されず、スプライン、ボルト止め、溶接など、ピンと保持部を固定できるものであればよい。さらにはピンと保持部12,18等を一体として形成してもよい(図6(C)参照)。
【0032】
第2実施形態の過負荷吸収機構の作用は第1実施形態の場合とほぼ同様である。
前・後フィードバー1,2の開閉動作および昇降動作時にねじり外力が発生した場合に、摩擦締結要素30または40の一方が滑ることで、ねじり外力を吸収することができる。したがって過大なねじり外力をフィードバー1,2やフィードバー各駆動装置1LD,1RD,2LD,2RDに伝えることはない。このため、確実にフィードバー1,2やフィードバー各駆動装置1LD,1RD,2LD,2RDの損傷を防止することができる。
【0033】
(第3実施形態)
つぎに、第3実施形態のトランスファフィーダに係る過負荷吸収機構について説明する。負荷吸収手段以外は第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
図7は第3実施形態に係る負荷吸収手段である。本実施形態の負荷吸収手段は第1および第2実施形態の負荷吸収手段において第1ピン21の代わりに第1トーションバー21tを用い、第2ピン25の代わりに第2トーションバー25tを用いたものである。
【0034】
図7(A)に示すように、本実施形態の第1負荷吸収手段は第1トーションバー21tの両端が摩擦締結要素30、40を介して保持部12、16(図示せず)に締結された構成である。同様に第2負荷吸収手段は第2トーションバー25tの両端が摩擦締結要素30、40を介して保持部18、73(図示せず)に締結された構成である。
【0035】
また、図7(B)に示すように、第1負荷吸収手段を第1トーションバー21tの一端が固定締結要素であるキー50を介して保持部12(図示せず)に固定され、他端が摩擦締結要素40を介して保持部16(図示せず)に締結された構成とし、第2負荷吸収手段を第2トーションバー25tの場合には一端がキー50を介して保持部18に固定され、他端が摩擦締結要素40を介して保持部73に締結された構成としてもよい。
さらに、図7(C)に示すように、第1負荷吸収手段を第1トーションバー21tの一端が摩擦締結要素30して保持部12(図示せず)に固定され、他端がキー50を介して保持部16(図示せず)に固定された構成とし、第2負荷吸収手段を第2トーションバー25tの一端が摩擦締結要素30を介して保持部18に締結され、他端がキー50を介して保持部73に固定された構成としてもよい。
【0036】
本実施形態においても固定締結要素は、上記のキー50に限定されず、スプライン、ボルト止め、溶接など、トーションバーと保持部を固定できるものであればよい。さらにはトーションバーと保持部12,18等を一体として形成してもよい(図7(D)参照)。
【0037】
前記第1トーションバー21tは、丸太状の部材であり、径の大きい短軸部22と同じく径の大きい長軸部23と、それらの間をつなぐ径の細い首部24とからなる。首部24は直径が細いので、ねじりやすくなっており、このねじりにより、開閉方向の動きのズレや撓みを吸収することができる。また、このばね定数は首部24の長さと直径の選択により、任意に設定することができる。
前記第2トーションバー25tも同じ形状の部材であり、短軸部、長軸部、首部とからなり、首部のねじりにより昇降方向の動きのズレや撓みを吸収することができる。なお、首部のばね定数は、その長さと直径の選択で任意に設定することができる。
【0038】
摩擦締結要素30は、ボルト35を締め付けることにより、第1,第2トーションバー21t、25tとの最大静止摩擦力が目標とする最大摩擦力と等しくなるように設定される。摩擦締結要素40についても同様に、調整ネジ47を締込むことにより、第1,第2トーションバー21t、25tとの最大静止摩擦力が目標とする最大摩擦力と等しくなるように設定される。
第1,第2トーションバー21t,25tにねじり外力が加わると、まず首部24,28がねじれ、そのねじれ角に応じて発生するトルクにより、ねじり外力が吸収される。ねじり外力が大きく摩擦締結要素30、40と第1,第2トーションバー21t、25tとの間の最大静止摩擦力を超える場合には、摩擦締結要素30,40が滑って回転することになる。よって、第1,第2トーションバー21t,25tにおいて最大静止摩擦力を超える反力が発生することはない。
前記の目標とする最大摩擦力は、駆動装置などが耐えうる反力を考慮して第1,第2トーションバー21t,25tのばね定数と共に設計される。
【0039】
つぎに、第3実施形態の過負荷吸収機構の作用を説明する。
まず、前・後フィードバー1,2の開閉動作が、フィードバーの左右両側で同期がずれると各フィードバー1,2の端部にねじり外力が発生する。このねじり外力は縦方向に配置している第1負荷吸収手段である第1トーションバー21tの首部24がねじられることによって外力が吸収される。これによりフィードバー1,2まわりの損傷を防止することができる。また、ねじり外力がより過大なときは、摩擦締結要素30または40が滑ることで、ねじり外力を吸収することができる。したがって、第1トーションバー21tのねじり抵抗を超える外力は摩擦締結要素30,40が滑ることによって逃がすので、過大な反力をフィードバー1,2やフィードバー各駆動装置1LD,1RD,2LD,2RDに伝えることはない。このため、確実にフィードバー1,2やフィードバー各駆動装置1LD,1RD,2LD,2RDの損傷を防止することができる。
上記のように、開閉方向の外力に対し、トーションバーのねじりと摩擦締結要素のすべりという二つの負荷吸収手段を設けているので、駆動装置を含めフィードバー1,2の変形や損傷を効果的に防止することができる。
【0040】
つぎに、前・後フィードバー1,2の左右両側で昇降動作の同期がずれて、昇降方向のねじりが作用したとする。このとき、まず、横方向配置の第2負荷吸収手段である第2トーションバー25tの首部24がねじられることによって、ねじりを吸収する。これによりフィードバー1,2まわりの損傷を防止することができる。また、生じたねじりが大きく第2トーションバー25tのねじりで吸収できないときは、摩擦締結要素30または40が滑ることで、昇降方向のねじり吸収する。したがって、第2トーションバー25tのねじり抵抗を超える外力は摩擦締結要素30,40が滑ることによって逃がすので、過大な反力をフィードバー1,2やフィードバー各駆動装置1LD,1RD,2LD,2RDに伝えることはない。このため、確実にフィードバー1,2やフィードバー各駆動装置1LD,1RD,2LD,2RDの損傷を防止することができる。
上記のように、昇降方向の外力に対し、トーションバーのねじりと摩擦締結要素のすべりという二つの負荷吸収手段を設けているので、駆動装置を含めフィードバー1,2の変形や損傷を効果的に防止することができる。
【0041】
上記実施形態では、第1、第2トーションバー21t,25tとも、長軸部と短軸部を有しているが、これらは長軸部と短軸部を逆に配置してもよく、さらには共に同じ長さであってもよいものである。
【0042】
以上の実施形態では、過負荷吸収機構1LO,1RO,2LO,2ROを各フィードバー駆動装置1LD,1RD,2LD,2RDにおける前後進機構7の下面に取付けた構成であるが、取付け位置はこれに限定されるものではない。
例えば、開閉機構6と前後機構7との間に過負荷吸収機構を設けてもよいし、昇降機構5と開閉機構6との間に過負荷吸収機構を設けてもよい。
さらには、第1負荷吸収手段と第2負荷吸収手段を一体として構成する必要はなく、例えば、開閉機構6と前後機構7との間に第1負荷吸収手段を設け、昇降機構5と開閉機構6との間に第2負荷吸収手段を設けてもよい。
すなわち、第1負荷吸収手段および第2負荷吸収手段は外的制約などを勘案し最適な位置に設けることが可能である。
【0043】
以上のように、前フィードバー1の左右両端のそれぞれと、後フィードバー2の左右両端のそれぞれに、第1負荷吸収手段と第2負荷吸収手段を組み合わせた過負荷吸収機構1LO,1RO,2LO,2ROを取付けている。このため、ワークをつかむときフィードバー1,2の爪が金型にぶつかったり、位置ズレしたワークをそのままつかもうとしたときにフィードバー開閉方向のねじり外力が生じたり、また、駆動装置のモータに同期ズレが生じたときに、フィードバー開閉方向あるいは昇降方向の位置ズレが生ずるが、このようなねじり外力が生じても、それによる損傷を防止することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 前フィードバー
2 後フィードバー
5 昇降機構
6 開閉機構
7 前後進機構
1LD 前フィードバー左駆動装置
1RD 前フィードバー右駆動装置
2LD 後フィードバー左駆動装置
2RD 後フィードバー右駆動装置
1LO 前フィードバー左過負荷吸収機構
1RO 前フィードバー右過負荷吸収機構
2LO 後フィードバー左過負荷吸収機構
2RO 後フィードバー右過負荷吸収機構
21 第1ピン
25 第2ピン
30 摩擦締結要素
40 摩擦締結要素
21t 第1トーションバー
25t 第2トーションバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多工程金型の前方に配置した前フィードバーおよび後方に配置した後フィードバーを備えた鍛造プレスにおいて、
前記前フィードバーを昇降、開閉、前後進させるため、その両端に連結した前フィードバー左駆動装置および前フィードバー右駆動装置と、
前記後フィードバーを昇降、開閉、前後進させるため、その両端に連結した後フィードバー左駆動装置および後フィードバー右駆動装置と、
前記前フィードバーに加わる外力を吸収するための前フィードバー左過負荷吸収機構および前フィードバー右過負荷吸収機構と、
前記後フィードバーに加わる外力を吸収するための後フィードバー左過負荷吸収機構および後フィードバー右過負荷吸収機構とを備えており、
前記各過負荷吸収機構が、
フィードバー開閉方向のねじり外力を吸収する第1負荷吸収手段と、フィードバー昇降方向のねじり外力を吸収する第2負荷吸収手段とからなり、
前記第1負荷吸収手段および前記第2負荷吸収手段のいずれもが、
ねじり外力の入力側部材と伝達先部材の間に挿入されたピンを備えており、
前記ピンが内挿型摩擦締結要素を介して前記ねじり外力の入力側部材と伝達先部材に締結されており、
内挿型摩擦締結要素が、保持部の内周とピンの外周との間に挿入される筒状部材を有し、該筒状部材の厚さを収縮させることで締結力を強弱に調整できるものである
ことを特徴とする鍛造プレスにおけるトランスファフィーダ。
【請求項2】
前記ピンの両端が内挿型摩擦締結要素を介して前記ねじり外力の入力側部材と伝達先部材に締結されている
ことを特徴とする請求項1記載の鍛造プレスにおけるトランスファフィーダ。
【請求項3】
前記ピンの一端が内挿型前記摩擦締結要素を介して前記ねじり外力の入力側部材または伝達先部材に締結され、
該ピンの他端が固定締結要素を介して前記ねじり外力の伝達先部材または入力側部材に締結されている
ことを特徴とする請求項1記載の鍛造プレスにおけるトランスファフィーダ。
【請求項4】
前記ピンに代えてトーションバーを用いた
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の鍛造プレスにおけるトランスファフィーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−6085(P2012−6085A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225449(P2011−225449)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【分割の表示】特願2008−280770(P2008−280770)の分割
【原出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(502235326)住友重機械テクノフォート株式会社 (122)
【Fターム(参考)】