鍛造装置及び鍛造方法
【課題】簡便な成形品倒れ防止策が講じられる鍛造技術を提供する。
【解決手段】金型の下型12Bには、ノックアウトピン14Bで押し上げられる縦長の成形品32が倒れることを防止する支え部材13Bが付設されている。
【解決手段】金型の下型12Bには、ノックアウトピン14Bで押し上げられる縦長の成形品32が倒れることを防止する支え部材13Bが付設されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦長の成形品を鍛造する鍛造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
金属素材を塑性加工する技術の1つに、鍛造法がある。この鍛造法は、例えば、エンジンに内蔵されるクランク軸や無段変速機に組み込まれる固定側プーリの生産に供される。
【0003】
鍛造装置には、鍛造された成形品を払い出すために、ノックアウト機構が備えられている。ノックアウト機構の構成が各種知られている(例えば、特許文献1(図9)参照。)。
【0004】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図16は従来の鍛造装置を説明する図であり、(a)に示すように、鍛造装置100は、下型101と、ノックアウトピン102と、上型103とからなる。
ノックアウトピン102は待機位置まで下げておく。下型101に素材を載せ、上型103を下げることで、素材が塑性加工される。
【0005】
塑性加工が終わったら、(b)に示すように、上型103を上昇させると共にノックアウトピン102を上昇させる。ノックアウトピン102で成形品104を押し上げ、下型101から分離する。下型101と上型103の間に搬送機構を挿入し、この搬送機構で成形品104を取り出す(払い出す)。
【0006】
(b)に示すように、成形品104が皿状物であれば問題ないが、(c)に示すように、横寸法Dに対して縦寸法Hが大きな成形品105であれば、ノックアウトの衝撃で左又は右へ倒れることがある。
さらに、(d)に示すようなT断面の成形品106であれば、重心が高いため、なお倒れやすい。無段変速機に組み込まれる固定側プーリはT断面の成形品から製造される。
【0007】
成形品105又は106が倒れると、搬送機構で掴み損なう危険性が高くなる。対策とし、成形品105又は106の姿勢をカメラで監視して搬送機構の姿勢を制御することや、別途設ける起立機構で成形品104又は105を起立させ、この後に搬送機構で把持させるなどの対策が必要となる。
【0008】
カメラで監視する場合と、別途起立機構を設ける場合の何れにおいても、鍛造装置の設備コストが高まる。
【0009】
鍛造装置のコストダウンを図る上で、より簡便な成形品倒れ防止策が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−68296公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、より簡便な成形品倒れ防止策が講じられる鍛造技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明は、素材が金型で成形され、得られた成形品がノックアウトピンで前記金型から離され、離された成形品が搬送機構で排出される鍛造装置において、
前記成形品は、横寸法より縦寸法が大きく、前記金型の下型には、前記ノックアウトピンで押し上げられる前記成形品が倒れることを防止する支え部材が付設され、この支え部材には、前記搬送機構で排出される前記成形品の下部が前記支え部材に干渉しないように、成形品通路が設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項2に係る発明は、支え部材に、成形品の上部を把持する搬送機構の爪が通る爪通路が設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項3に係る発明では、支え部材は、ボルトにて下型に着脱可能に固定されていることを特徴とする。
【0015】
請求項4に係る発明では、支え部材は、取付位置が変更可能に下型に取付けられていることを特徴とする。
【0016】
請求項5に係る発明では、支え部材は、下型に起設された4個の柱状部材からなることを特徴とする。
【0017】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5のいずれか1項記載の鍛造装置を用いて実施する鍛造方法であり、支え部材が備えられている第1金型と、この第1金型の隣りに配置され支え部材が備えられている第2金型とが少なくとも備えられている鍛造装置を用いて実施する鍛造方法であって、
前記第1金型で前記素材を第1中間成形品に成形する第1成形工程と、
前記搬送機構で前記第1中間成形品を把持し、前記第1金型に設けられている第1成形品通路及び前記第2金型に設けられている第2成形品通路を前記第1成形品の下部が通るようにして、前記第2金型へ搬送する第1搬送工程と、
前記第2金型で前記第1中間成形品を第2中間成形品に成形する第2成形工程と、
前記搬送機構で前記第2中間成形品を把持し、前記第2金型に設けられている第3成形品通路に前記第2成形品の下部が通るようにして、前記第2金型から排出する第2搬送工程と、からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明では、ノックアウト時に成形品が倒れることを防止する支え部材を、金型の下型に付設した。結果、ノックアウト時に成形品が倒れる心配がない。下型に支え部材を付設するだけであるから、鍛造装置のコストアップを抑えることができる。
すなわち、本発明により、簡便な成形品倒れ防止策が講じられる鍛造技術が提供される。
【0019】
加えて、請求項1に係る発明では、支え部材に、成形品通路を設けた。成形品の下部が成形品通路を通って、払い出される又は搬送される。
払い出し時、下型と上型の間隔は、従来と同一でよい。鍛造装置を大型化する必要がないため、鍛造装置のコストアップを抑えることができる。
【0020】
請求項2に係る発明では、支え部材に、成形品の上部を把持する搬送機構の爪が通る爪通路が設けられている。
搬送機構の爪は爪通路を通る。成形品の上端が支え部材の上端より下がっていても、爪を成形品の上部に掛けることができる。下型と上型の間隔をアップする必要がないため、鍛造装置のコストアップを抑えることができる。
【0021】
請求項3に係る発明では、支え部材は、ボルトにて下型に着脱可能に固定されている。
着脱可能であるため、異なる形状の支え部材に簡単に交換することができる。
【0022】
請求項4に係る発明では、支え部材は、取付位置が変更可能に下型に取付けられている。
位置変更が可能であるため、爪通路を狭め、成形品通路を拡げることや、逆に、成形品通路を狭め、爪通路を拡げることが任意に行える。
【0023】
請求項5に係る発明では、支え部材は、下型に起設された4個の柱状部材からなる。4個の柱であれば、隣り合う柱間に各1個、合計4個の通路を確保することができる。4個の通路のうち、2個を爪通路に充て、残り2個を成形品通路に充てることができる。
【0024】
請求項6に係る発明は、素材を第1金型で第1成形品に成形し、この第1成形品を第2金型で第2成形品に成形するところのタンデム鍛造方法に係る。
第2金型には、第1成形品の下部を通す第2成形品通路及び第2成形品の下部を通す第3成形品通路が設けられているが、第1金型には、第2成形品の下部を通す第1成形品通路のみが設けられている。
第2金型に比べ第1金型を簡略化することができる。結果、鍛造装置のコストアップを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る鍛造装置の断面図である。
【図2】図1の2矢視図である。
【図3】図2(a)の変形例を示す図である。
【図4】第1金型の平面図である。
【図5】図4の5−5線断面図である。
【図6】素材、第1成形品及び第2成形品の外形図である。
【図7】本発明に係るタンデム鍛造装置の断面図である。
【図8】図7の8−8矢視図である。
【図9】図8の9−9線断面図である。
【図10】第1成形工程を説明する図である。
【図11】第1成形品の移動を説明する図である。
【図12】図11(c)の変形例を示す図である。
【図13】第1下型の変形例を示す図である。
【図14】図13の作用図である。
【図15】図13の作用図である。
【図16】従来の鍛造装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0027】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、鍛造装置10は、固定部材である下型ベース11と、この下型ベース11で支えられる下型12と、下型12の上面に付設される支え部材13と、下型ベース11及び下型12を貫通して上下に移動するノックアウトピン14と、昇降部材であるラム16と、このラム16の下面に取付けられる上型17とからなる。なお、下型12を昇降させ、上型17を固定するようにしてもよい。
【0028】
下型12と上型17がセットで、鍛造用の金型18となる。この金型18は、側型やスライド型などを含む複雑な型であっても差し支えないが、本実施例では最も簡単な形態で説明する。
【0029】
下型12の上面に付設される支え部材13は、多様の形態が採用可能であり、その具体例を、図2及び図3で説明する。
図2(a)に示すように、支え部材13は、下型12に設けられるワーク収納凹部21を囲うように配置されるC形壁22であってもよい。C形壁22は1個の開口部を有し、この開口部が成形品通路23となる。
C形壁22は、下型12に削り出しにより予め一体形成してもよい。C形壁22は既存の下型12の上面に、接合(溶接など)してもよい。
【0030】
また、(b)に示すように、C形壁22は、複数のボルト24により、下型12に取り外し可能に固定するようにしてもよい。取り外し可能であれば、C形壁22は下型12とは異なる材質にすることができる。加えて、C形壁22が傷んだときに新品に交換することができる。
【0031】
また、(c)に示すように、支え部材13は、2個のC形壁25、25で構成することができる。2個のC形壁25、25の間に、2個の成形品通路23、23が確保される。
C形壁25、25は、下型12に削り出しにより予め一体形成してもよい。C形壁25、25は既存の下型12の上面に、接合(溶接など)してもよい。
【0032】
また、(d)に示すように、C形壁25、25は、ボルト24で下型12に取り外し可能に固定するようにしてもよい。取り外し可能であれば、C形壁25、25は下型12とは異なる材質にすることができる。加えて、C形壁25、25が傷んだときに新品に交換することができる。
【0033】
また、(e)に示すように、支え部材13は、4個の柱状部材26で構成することができる。隣り合う柱状部材26、26間に、1個のスペース、合計4個のスペースが出現する。うち、2個のスペースが成形品通路23、23となり、残りのスペースは爪通路27、27とすることができる。爪通路27、27の用途は後述する。
柱状部材26は、下型12に削り出しにより予め一体形成してもよい。柱状部材26は既存の下型12の上面に、接合(溶接など)してもよい。
【0034】
また、(f)に示すように、柱状部材26は、ボルト24で下型12に取り外し可能に固定するようにしてもよい。取り外し可能であれば、柱状部材26は下型12とは異なる材質にすることができる。加えて、柱状部材26が傷んだときに新品に交換することができる。
【0035】
図2(a)の変更例を図3で説明する。
図3(a)に示すように、C形壁22に2個の爪通路27、27を設けてもよい。これらの爪通路27、27の中心線27aは、成形品通路23の中心線23aと直交又はほぼ直交することが望まれる。
【0036】
爪通路27、27は、(a)のb矢視図である(b)に示すように、上面が開放される溝であってもい。溝であれば、C形壁22は一部品の形態が保たれ、運搬や取扱いが容易になる。
【0037】
または、図3(c)に示すように、C形壁22に深い爪通路27、27を設けてもよい。これらの爪通路27、27は、(c)のd矢視図である(d)に示すように、爪通路27は、C形壁22の高さに等しい深さを有するため、後述する爪がC形壁22や下型12に干渉し難くなり、好ましい。このように、爪通路27の形態は任意である。
【0038】
以上に多種多様な支え部材を例示したが、図2(f)の形態が、支え部材の軽量、小型化及び交換性の点で優れている。そこで、図2(f)の形態に絞って、より詳細に構造及び作用を次に説明する。
【0039】
図4に示すように、下型12に4個の柱状部材26が、ボルト24により取り外し可能に固定されている。柱状部材26は、角柱をベースとし、それの1つの角のみが切り欠かれた変形五角柱状の部材である。切り欠かれた面は26aとなり、この面26aはワーク収納凹部21の縁に倣った弧面であることが望ましい。
面26aから遠い方の角を挟む2つの側面26b、26cは、下型12に植設されるピン28、28で位置が規定される。結果、柱状部材26の位置が正確に決定される。ピン28、28は柱状部材26の廻り止め作用をも発揮する。
【0040】
図5に示すように、下型12に柱状部材26を固定するボルト24は、六角穴付きボルトが好適である。六角穴付きボルトは、六角レンチ29で締めるため、図示するようにボルト頭を柱状部材26に埋没させることができる。
【0041】
次に、素材及び中間成形品の形態を説明する。
図6(a)に示す単純形状の素材31は、第1成形工程を経て、(b)に示す第1中間成形品32に成形される。この第1中間成形品32は、大径円柱状の頭部33と、この頭部33に続く頭部33より小径の首部34と、この首部34から下へ延び十分に小径な軸部35とからなる。横寸法(軸部35の外径d)より高さ寸法H1が遙かに大きくて、倒れやすい。
【0042】
このような第1中間成形品32は、第2成形工程を経て、(c)に示す第2中間成形品36に成形される。この第2中間成形品36は、大径傘状のフランジ部37と、このフランジ部37から下へ延び十分に小径な軸部35とからなる無段変速機用固定側プーリである。横寸法(軸部35の外径d)より高さ寸法H2が遙かに大きくて、倒れやすい。
【0043】
1基の鍛造装置に、複数個の金型を並べ、これらの金型で塑性加工を段階的に実施し、最終成形品を得ることができる装置は、タンデム式鍛造装置と呼ばれる。タンデム式鍛造装置を次に説明する。
【0044】
なお、金型及び鍛造装置は、今までに説明したものがベースとなる。第1、第2のように区別する必要があるときは、符号にB、Cなどを添える。
【0045】
図7に示すように、タンデム式鍛造装置10Bは、下型ベース11と、昇降部材であるラム16と、これらの下型ベース11とラム16間に介設される第1金型18B及び第2金型18Cと、下型ベース11とラム16間に出し入れされる搬送機構40とからなる。
【0046】
第1金型18Bは、下型ベース11に取付けられる第1下型12Bと、この第1下型12Bの上面に付設される第1支え部材13Bと、ラム16の下面に取付られる第1上型17Bとからなる。
第2金型18Cは、下型ベース11に取付けられる第2下型12Cと、この第2下型12Cの上面に付設される第2支え部材13Cと、ラム16の下面に取付られる第2上型17Cとからなる。
第1金型18Bは第1ノックアウトピン14Bを備え、第2金型18Cは第2ノックアウトピン14Cを備える。
【0047】
搬送機構40は、図8に示すように、第1下型12Bに被さる位置まで移動する。搬送機構40の断面構造の一例を図9で説明する。
図9に示すように、搬送機構40は、成形品の搬送方向(図面では表裏方向)へ動かされると共に上下に動かされるアーム41と、このアーム41内に水平に渡されるねじ軸42と、このねじ軸42を正逆転させるためにアーム41に内蔵されるモータ43と、ねじ軸42に取付けられる一対のナット44、45と、これらのナット44、45に各々支持されるL状又はコ状の爪46、46とからなる。
【0048】
ねじ軸42には左ねじ部47と右ねじ部48が形成されており、左ねじ部47に一方のナット44がねじ込まれ、右ねじ部48に他方のナット45がねじ込まれる。
そのため、モータ43を正転させると、2個の爪46、46が同速度で離れる。また、モータ43を逆転させると、2個の爪46、46が同速度で接近する。
【0049】
なお、搬送機構40の構造、構成は上記例に限定するものではなく、一対の爪46、46を有し、爪46、46を接離させることができる機構であれば、任意である。
【0050】
以上の述べたタンデム式鍛造装置の作用を図10、図11に基づいて説明する。
図10(a)に示すように、素材31を第1下型12Bにセットする(矢印(1))。次に、第1上型17Bを下げる(矢印(2))。
(b)に示すように、第1下型12Bと第1上型17Bにより、第1中間成形品32が得られる(第1成形工程)。
【0051】
(c)に示すように、第1上型17Bを上方へ待機させ、第1ノックアウトピン14Bで第1中間成形品32を押し上げる。第1中間成形品32は、頭部33が重いため前後左右にふらつくが、第1支え部材13Bでガイドされるため、倒れが防止される。
すなわち、頭部33が第1支え部材13Bに、上下方向で一部又は全部が重なっていれば、倒れが防止される。加えて、首部34の全部もしくは一部が第1下型12Bの上面から上にあれば、次に延べる第1搬送工程が実施可能となる。
【0052】
この状態で、搬送機構40を第1下型12B上へ移動する(矢印(3))。次に、搬送機構40を下げる。
(c)のd−d矢視図である(d)に示すように、爪46と爪46を接近させる。爪46、46は爪通路27、27を通るため、第1支え部材13Bや第1下型12Bに干渉する心配はない。
【0053】
図11(a)に示すように、爪46が頭部33の下に掛かっている。
次に、(b)に示すように、軸部35の下端が第1下型12Bの上面よりδ(数ミリ)上になるまで、搬送機構40で第1中間成形品32を上昇させる(矢印(4))。
上昇が終わったら、搬送機構40を水平に移動する(矢印(5))。
【0054】
(b)のc−c矢視図である(c)に示すように、第1下型12Bの隣に第2下型12Cがある。矢印(5)の移動により、成形品の下部に該当する軸部35は、第1成形品通路23Bを通過し、次に第2成形品通路23Cを通って第2下型12Cに至る(第1搬送工程)。
【0055】
第2下型12Cで第2成形工程が実施される(第2鍛造工程)。得られた第2成形品(図6、符号36)は第3成形品通路23Dを通って払い出される又は搬出される(第2搬送工程)。
【0056】
第1成形品通路23Bの存在により、図11(b)で説明したように、第1中間成形品32の上昇は、従来通りで十分である。すなわち、第1支え部材13Bを乗り越えるまで第1中間成形品32を上昇させる必要はない。結果、鍛造装置の大型化を抑制することができる。
【0057】
次に、図11(c)の変形例を説明する。
図12に示すように、第1支え部材13Bは、第1成形品通路23Bだけを備えればよいため、C形壁22であってもよい。
【0058】
また、図4では、成形品通路23の幅と爪通路27の幅とが同一又はほぼ同一である。
成形品の下部の形状によっては、成形品通路23の幅を拡げる要求がでる。また、爪の形状によっては、爪通路27の幅を変更する必要がある。
これらの要求に対応させることができる構造を、次図で説明する。
【0059】
図13に示すように、下型12の上面に、1個の柱状部材26につき、複数個(この例では3個)の雌ねじ部49、49B、49Cを設ける。
【0060】
図14に示すように、雄ねじ部49Bにボルト24をねじ込むことで、柱状部材26を固定すると、成形品通路23の幅W1を拡大することができる。W2<W1となり、成形品の下部の径(横寸法)が大きく、爪の幅が狭い場合に好適である。
【0061】
また、図15に示すように、雄ねじ部49Cにボルト24をねじ込むことで、柱状部材26を固定すると、爪通路27の幅W2を拡大することができる。W1<W2となり、成形品の下部の径(横寸法)が小さく、爪の幅が広い場合に好適である。
【0062】
なお、雌ねじ部49Bにボルト24をねじ込むことで柱状部材26を固定することを説明したが、図示しないが、例えば柱状部材26(支え部材13)を強力な電磁石で固定してもかまわない。電磁石で固定すると、成形品通路23や爪通路27を変更する段取り替えが、ボルトをねじ込む場合に比して短時間で行える。
【0063】
尚、鍛造対象物は、無段変速機用固定側プーリで説明したが、横寸法より縦寸法が大きいものであれば、種類、用途は問わない。
また、タンデム式鍛造装置に、2個の金型を備えたが、3個以上の金型を備えること差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、無段変速機用固定側プーリの鍛造成形に好適である。
【符号の説明】
【0065】
10…鍛造装置、10B…鍛造装置(タンデム式鍛造装置)、12…下型、12B…下型(第1下型)、12C…下型(第2下型)、13…支え部材、13B…支え部材(第1支え部材)、13C…支え部材(第2支え部材)、14…ノックアウトピン、14B…ノックアウトピン(第1ノックアウトピン)、14C…ノックアウトピン(第2ノックアウトピン)、18…金型、18B…金型(第1金型)、18C…金型(第2金型)、23…成形品通路、23B…成形品通路(第1成形品通路)、23C…成形品通路(第2成形品通路)、23D…成形品通路(第3成形品通路)、24…ボルト、26…柱状部材、27…爪通路、31…素材、32…成形品(第1中間成形品)、35…成形品の下部(軸部)、36…成形品(第2中間成形品)、40…搬送機構、46…爪、d…横寸法、H1、H2…縦寸法。
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦長の成形品を鍛造する鍛造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
金属素材を塑性加工する技術の1つに、鍛造法がある。この鍛造法は、例えば、エンジンに内蔵されるクランク軸や無段変速機に組み込まれる固定側プーリの生産に供される。
【0003】
鍛造装置には、鍛造された成形品を払い出すために、ノックアウト機構が備えられている。ノックアウト機構の構成が各種知られている(例えば、特許文献1(図9)参照。)。
【0004】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図16は従来の鍛造装置を説明する図であり、(a)に示すように、鍛造装置100は、下型101と、ノックアウトピン102と、上型103とからなる。
ノックアウトピン102は待機位置まで下げておく。下型101に素材を載せ、上型103を下げることで、素材が塑性加工される。
【0005】
塑性加工が終わったら、(b)に示すように、上型103を上昇させると共にノックアウトピン102を上昇させる。ノックアウトピン102で成形品104を押し上げ、下型101から分離する。下型101と上型103の間に搬送機構を挿入し、この搬送機構で成形品104を取り出す(払い出す)。
【0006】
(b)に示すように、成形品104が皿状物であれば問題ないが、(c)に示すように、横寸法Dに対して縦寸法Hが大きな成形品105であれば、ノックアウトの衝撃で左又は右へ倒れることがある。
さらに、(d)に示すようなT断面の成形品106であれば、重心が高いため、なお倒れやすい。無段変速機に組み込まれる固定側プーリはT断面の成形品から製造される。
【0007】
成形品105又は106が倒れると、搬送機構で掴み損なう危険性が高くなる。対策とし、成形品105又は106の姿勢をカメラで監視して搬送機構の姿勢を制御することや、別途設ける起立機構で成形品104又は105を起立させ、この後に搬送機構で把持させるなどの対策が必要となる。
【0008】
カメラで監視する場合と、別途起立機構を設ける場合の何れにおいても、鍛造装置の設備コストが高まる。
【0009】
鍛造装置のコストダウンを図る上で、より簡便な成形品倒れ防止策が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−68296公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、より簡便な成形品倒れ防止策が講じられる鍛造技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明は、素材が金型で成形され、得られた成形品がノックアウトピンで前記金型から離され、離された成形品が搬送機構で排出される鍛造装置において、
前記成形品は、横寸法より縦寸法が大きく、前記金型の下型には、前記ノックアウトピンで押し上げられる前記成形品が倒れることを防止する支え部材が付設され、この支え部材には、前記搬送機構で排出される前記成形品の下部が前記支え部材に干渉しないように、成形品通路が設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項2に係る発明は、支え部材に、成形品の上部を把持する搬送機構の爪が通る爪通路が設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項3に係る発明では、支え部材は、ボルトにて下型に着脱可能に固定されていることを特徴とする。
【0015】
請求項4に係る発明では、支え部材は、取付位置が変更可能に下型に取付けられていることを特徴とする。
【0016】
請求項5に係る発明では、支え部材は、下型に起設された4個の柱状部材からなることを特徴とする。
【0017】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5のいずれか1項記載の鍛造装置を用いて実施する鍛造方法であり、支え部材が備えられている第1金型と、この第1金型の隣りに配置され支え部材が備えられている第2金型とが少なくとも備えられている鍛造装置を用いて実施する鍛造方法であって、
前記第1金型で前記素材を第1中間成形品に成形する第1成形工程と、
前記搬送機構で前記第1中間成形品を把持し、前記第1金型に設けられている第1成形品通路及び前記第2金型に設けられている第2成形品通路を前記第1成形品の下部が通るようにして、前記第2金型へ搬送する第1搬送工程と、
前記第2金型で前記第1中間成形品を第2中間成形品に成形する第2成形工程と、
前記搬送機構で前記第2中間成形品を把持し、前記第2金型に設けられている第3成形品通路に前記第2成形品の下部が通るようにして、前記第2金型から排出する第2搬送工程と、からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明では、ノックアウト時に成形品が倒れることを防止する支え部材を、金型の下型に付設した。結果、ノックアウト時に成形品が倒れる心配がない。下型に支え部材を付設するだけであるから、鍛造装置のコストアップを抑えることができる。
すなわち、本発明により、簡便な成形品倒れ防止策が講じられる鍛造技術が提供される。
【0019】
加えて、請求項1に係る発明では、支え部材に、成形品通路を設けた。成形品の下部が成形品通路を通って、払い出される又は搬送される。
払い出し時、下型と上型の間隔は、従来と同一でよい。鍛造装置を大型化する必要がないため、鍛造装置のコストアップを抑えることができる。
【0020】
請求項2に係る発明では、支え部材に、成形品の上部を把持する搬送機構の爪が通る爪通路が設けられている。
搬送機構の爪は爪通路を通る。成形品の上端が支え部材の上端より下がっていても、爪を成形品の上部に掛けることができる。下型と上型の間隔をアップする必要がないため、鍛造装置のコストアップを抑えることができる。
【0021】
請求項3に係る発明では、支え部材は、ボルトにて下型に着脱可能に固定されている。
着脱可能であるため、異なる形状の支え部材に簡単に交換することができる。
【0022】
請求項4に係る発明では、支え部材は、取付位置が変更可能に下型に取付けられている。
位置変更が可能であるため、爪通路を狭め、成形品通路を拡げることや、逆に、成形品通路を狭め、爪通路を拡げることが任意に行える。
【0023】
請求項5に係る発明では、支え部材は、下型に起設された4個の柱状部材からなる。4個の柱であれば、隣り合う柱間に各1個、合計4個の通路を確保することができる。4個の通路のうち、2個を爪通路に充て、残り2個を成形品通路に充てることができる。
【0024】
請求項6に係る発明は、素材を第1金型で第1成形品に成形し、この第1成形品を第2金型で第2成形品に成形するところのタンデム鍛造方法に係る。
第2金型には、第1成形品の下部を通す第2成形品通路及び第2成形品の下部を通す第3成形品通路が設けられているが、第1金型には、第2成形品の下部を通す第1成形品通路のみが設けられている。
第2金型に比べ第1金型を簡略化することができる。結果、鍛造装置のコストアップを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る鍛造装置の断面図である。
【図2】図1の2矢視図である。
【図3】図2(a)の変形例を示す図である。
【図4】第1金型の平面図である。
【図5】図4の5−5線断面図である。
【図6】素材、第1成形品及び第2成形品の外形図である。
【図7】本発明に係るタンデム鍛造装置の断面図である。
【図8】図7の8−8矢視図である。
【図9】図8の9−9線断面図である。
【図10】第1成形工程を説明する図である。
【図11】第1成形品の移動を説明する図である。
【図12】図11(c)の変形例を示す図である。
【図13】第1下型の変形例を示す図である。
【図14】図13の作用図である。
【図15】図13の作用図である。
【図16】従来の鍛造装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0027】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、鍛造装置10は、固定部材である下型ベース11と、この下型ベース11で支えられる下型12と、下型12の上面に付設される支え部材13と、下型ベース11及び下型12を貫通して上下に移動するノックアウトピン14と、昇降部材であるラム16と、このラム16の下面に取付けられる上型17とからなる。なお、下型12を昇降させ、上型17を固定するようにしてもよい。
【0028】
下型12と上型17がセットで、鍛造用の金型18となる。この金型18は、側型やスライド型などを含む複雑な型であっても差し支えないが、本実施例では最も簡単な形態で説明する。
【0029】
下型12の上面に付設される支え部材13は、多様の形態が採用可能であり、その具体例を、図2及び図3で説明する。
図2(a)に示すように、支え部材13は、下型12に設けられるワーク収納凹部21を囲うように配置されるC形壁22であってもよい。C形壁22は1個の開口部を有し、この開口部が成形品通路23となる。
C形壁22は、下型12に削り出しにより予め一体形成してもよい。C形壁22は既存の下型12の上面に、接合(溶接など)してもよい。
【0030】
また、(b)に示すように、C形壁22は、複数のボルト24により、下型12に取り外し可能に固定するようにしてもよい。取り外し可能であれば、C形壁22は下型12とは異なる材質にすることができる。加えて、C形壁22が傷んだときに新品に交換することができる。
【0031】
また、(c)に示すように、支え部材13は、2個のC形壁25、25で構成することができる。2個のC形壁25、25の間に、2個の成形品通路23、23が確保される。
C形壁25、25は、下型12に削り出しにより予め一体形成してもよい。C形壁25、25は既存の下型12の上面に、接合(溶接など)してもよい。
【0032】
また、(d)に示すように、C形壁25、25は、ボルト24で下型12に取り外し可能に固定するようにしてもよい。取り外し可能であれば、C形壁25、25は下型12とは異なる材質にすることができる。加えて、C形壁25、25が傷んだときに新品に交換することができる。
【0033】
また、(e)に示すように、支え部材13は、4個の柱状部材26で構成することができる。隣り合う柱状部材26、26間に、1個のスペース、合計4個のスペースが出現する。うち、2個のスペースが成形品通路23、23となり、残りのスペースは爪通路27、27とすることができる。爪通路27、27の用途は後述する。
柱状部材26は、下型12に削り出しにより予め一体形成してもよい。柱状部材26は既存の下型12の上面に、接合(溶接など)してもよい。
【0034】
また、(f)に示すように、柱状部材26は、ボルト24で下型12に取り外し可能に固定するようにしてもよい。取り外し可能であれば、柱状部材26は下型12とは異なる材質にすることができる。加えて、柱状部材26が傷んだときに新品に交換することができる。
【0035】
図2(a)の変更例を図3で説明する。
図3(a)に示すように、C形壁22に2個の爪通路27、27を設けてもよい。これらの爪通路27、27の中心線27aは、成形品通路23の中心線23aと直交又はほぼ直交することが望まれる。
【0036】
爪通路27、27は、(a)のb矢視図である(b)に示すように、上面が開放される溝であってもい。溝であれば、C形壁22は一部品の形態が保たれ、運搬や取扱いが容易になる。
【0037】
または、図3(c)に示すように、C形壁22に深い爪通路27、27を設けてもよい。これらの爪通路27、27は、(c)のd矢視図である(d)に示すように、爪通路27は、C形壁22の高さに等しい深さを有するため、後述する爪がC形壁22や下型12に干渉し難くなり、好ましい。このように、爪通路27の形態は任意である。
【0038】
以上に多種多様な支え部材を例示したが、図2(f)の形態が、支え部材の軽量、小型化及び交換性の点で優れている。そこで、図2(f)の形態に絞って、より詳細に構造及び作用を次に説明する。
【0039】
図4に示すように、下型12に4個の柱状部材26が、ボルト24により取り外し可能に固定されている。柱状部材26は、角柱をベースとし、それの1つの角のみが切り欠かれた変形五角柱状の部材である。切り欠かれた面は26aとなり、この面26aはワーク収納凹部21の縁に倣った弧面であることが望ましい。
面26aから遠い方の角を挟む2つの側面26b、26cは、下型12に植設されるピン28、28で位置が規定される。結果、柱状部材26の位置が正確に決定される。ピン28、28は柱状部材26の廻り止め作用をも発揮する。
【0040】
図5に示すように、下型12に柱状部材26を固定するボルト24は、六角穴付きボルトが好適である。六角穴付きボルトは、六角レンチ29で締めるため、図示するようにボルト頭を柱状部材26に埋没させることができる。
【0041】
次に、素材及び中間成形品の形態を説明する。
図6(a)に示す単純形状の素材31は、第1成形工程を経て、(b)に示す第1中間成形品32に成形される。この第1中間成形品32は、大径円柱状の頭部33と、この頭部33に続く頭部33より小径の首部34と、この首部34から下へ延び十分に小径な軸部35とからなる。横寸法(軸部35の外径d)より高さ寸法H1が遙かに大きくて、倒れやすい。
【0042】
このような第1中間成形品32は、第2成形工程を経て、(c)に示す第2中間成形品36に成形される。この第2中間成形品36は、大径傘状のフランジ部37と、このフランジ部37から下へ延び十分に小径な軸部35とからなる無段変速機用固定側プーリである。横寸法(軸部35の外径d)より高さ寸法H2が遙かに大きくて、倒れやすい。
【0043】
1基の鍛造装置に、複数個の金型を並べ、これらの金型で塑性加工を段階的に実施し、最終成形品を得ることができる装置は、タンデム式鍛造装置と呼ばれる。タンデム式鍛造装置を次に説明する。
【0044】
なお、金型及び鍛造装置は、今までに説明したものがベースとなる。第1、第2のように区別する必要があるときは、符号にB、Cなどを添える。
【0045】
図7に示すように、タンデム式鍛造装置10Bは、下型ベース11と、昇降部材であるラム16と、これらの下型ベース11とラム16間に介設される第1金型18B及び第2金型18Cと、下型ベース11とラム16間に出し入れされる搬送機構40とからなる。
【0046】
第1金型18Bは、下型ベース11に取付けられる第1下型12Bと、この第1下型12Bの上面に付設される第1支え部材13Bと、ラム16の下面に取付られる第1上型17Bとからなる。
第2金型18Cは、下型ベース11に取付けられる第2下型12Cと、この第2下型12Cの上面に付設される第2支え部材13Cと、ラム16の下面に取付られる第2上型17Cとからなる。
第1金型18Bは第1ノックアウトピン14Bを備え、第2金型18Cは第2ノックアウトピン14Cを備える。
【0047】
搬送機構40は、図8に示すように、第1下型12Bに被さる位置まで移動する。搬送機構40の断面構造の一例を図9で説明する。
図9に示すように、搬送機構40は、成形品の搬送方向(図面では表裏方向)へ動かされると共に上下に動かされるアーム41と、このアーム41内に水平に渡されるねじ軸42と、このねじ軸42を正逆転させるためにアーム41に内蔵されるモータ43と、ねじ軸42に取付けられる一対のナット44、45と、これらのナット44、45に各々支持されるL状又はコ状の爪46、46とからなる。
【0048】
ねじ軸42には左ねじ部47と右ねじ部48が形成されており、左ねじ部47に一方のナット44がねじ込まれ、右ねじ部48に他方のナット45がねじ込まれる。
そのため、モータ43を正転させると、2個の爪46、46が同速度で離れる。また、モータ43を逆転させると、2個の爪46、46が同速度で接近する。
【0049】
なお、搬送機構40の構造、構成は上記例に限定するものではなく、一対の爪46、46を有し、爪46、46を接離させることができる機構であれば、任意である。
【0050】
以上の述べたタンデム式鍛造装置の作用を図10、図11に基づいて説明する。
図10(a)に示すように、素材31を第1下型12Bにセットする(矢印(1))。次に、第1上型17Bを下げる(矢印(2))。
(b)に示すように、第1下型12Bと第1上型17Bにより、第1中間成形品32が得られる(第1成形工程)。
【0051】
(c)に示すように、第1上型17Bを上方へ待機させ、第1ノックアウトピン14Bで第1中間成形品32を押し上げる。第1中間成形品32は、頭部33が重いため前後左右にふらつくが、第1支え部材13Bでガイドされるため、倒れが防止される。
すなわち、頭部33が第1支え部材13Bに、上下方向で一部又は全部が重なっていれば、倒れが防止される。加えて、首部34の全部もしくは一部が第1下型12Bの上面から上にあれば、次に延べる第1搬送工程が実施可能となる。
【0052】
この状態で、搬送機構40を第1下型12B上へ移動する(矢印(3))。次に、搬送機構40を下げる。
(c)のd−d矢視図である(d)に示すように、爪46と爪46を接近させる。爪46、46は爪通路27、27を通るため、第1支え部材13Bや第1下型12Bに干渉する心配はない。
【0053】
図11(a)に示すように、爪46が頭部33の下に掛かっている。
次に、(b)に示すように、軸部35の下端が第1下型12Bの上面よりδ(数ミリ)上になるまで、搬送機構40で第1中間成形品32を上昇させる(矢印(4))。
上昇が終わったら、搬送機構40を水平に移動する(矢印(5))。
【0054】
(b)のc−c矢視図である(c)に示すように、第1下型12Bの隣に第2下型12Cがある。矢印(5)の移動により、成形品の下部に該当する軸部35は、第1成形品通路23Bを通過し、次に第2成形品通路23Cを通って第2下型12Cに至る(第1搬送工程)。
【0055】
第2下型12Cで第2成形工程が実施される(第2鍛造工程)。得られた第2成形品(図6、符号36)は第3成形品通路23Dを通って払い出される又は搬出される(第2搬送工程)。
【0056】
第1成形品通路23Bの存在により、図11(b)で説明したように、第1中間成形品32の上昇は、従来通りで十分である。すなわち、第1支え部材13Bを乗り越えるまで第1中間成形品32を上昇させる必要はない。結果、鍛造装置の大型化を抑制することができる。
【0057】
次に、図11(c)の変形例を説明する。
図12に示すように、第1支え部材13Bは、第1成形品通路23Bだけを備えればよいため、C形壁22であってもよい。
【0058】
また、図4では、成形品通路23の幅と爪通路27の幅とが同一又はほぼ同一である。
成形品の下部の形状によっては、成形品通路23の幅を拡げる要求がでる。また、爪の形状によっては、爪通路27の幅を変更する必要がある。
これらの要求に対応させることができる構造を、次図で説明する。
【0059】
図13に示すように、下型12の上面に、1個の柱状部材26につき、複数個(この例では3個)の雌ねじ部49、49B、49Cを設ける。
【0060】
図14に示すように、雄ねじ部49Bにボルト24をねじ込むことで、柱状部材26を固定すると、成形品通路23の幅W1を拡大することができる。W2<W1となり、成形品の下部の径(横寸法)が大きく、爪の幅が狭い場合に好適である。
【0061】
また、図15に示すように、雄ねじ部49Cにボルト24をねじ込むことで、柱状部材26を固定すると、爪通路27の幅W2を拡大することができる。W1<W2となり、成形品の下部の径(横寸法)が小さく、爪の幅が広い場合に好適である。
【0062】
なお、雌ねじ部49Bにボルト24をねじ込むことで柱状部材26を固定することを説明したが、図示しないが、例えば柱状部材26(支え部材13)を強力な電磁石で固定してもかまわない。電磁石で固定すると、成形品通路23や爪通路27を変更する段取り替えが、ボルトをねじ込む場合に比して短時間で行える。
【0063】
尚、鍛造対象物は、無段変速機用固定側プーリで説明したが、横寸法より縦寸法が大きいものであれば、種類、用途は問わない。
また、タンデム式鍛造装置に、2個の金型を備えたが、3個以上の金型を備えること差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、無段変速機用固定側プーリの鍛造成形に好適である。
【符号の説明】
【0065】
10…鍛造装置、10B…鍛造装置(タンデム式鍛造装置)、12…下型、12B…下型(第1下型)、12C…下型(第2下型)、13…支え部材、13B…支え部材(第1支え部材)、13C…支え部材(第2支え部材)、14…ノックアウトピン、14B…ノックアウトピン(第1ノックアウトピン)、14C…ノックアウトピン(第2ノックアウトピン)、18…金型、18B…金型(第1金型)、18C…金型(第2金型)、23…成形品通路、23B…成形品通路(第1成形品通路)、23C…成形品通路(第2成形品通路)、23D…成形品通路(第3成形品通路)、24…ボルト、26…柱状部材、27…爪通路、31…素材、32…成形品(第1中間成形品)、35…成形品の下部(軸部)、36…成形品(第2中間成形品)、40…搬送機構、46…爪、d…横寸法、H1、H2…縦寸法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素材が金型で成形され、得られた成形品がノックアウトピンで前記金型から離され、離された成形品が搬送機構で排出される鍛造装置において、
前記成形品は、横寸法より縦寸法が大きく、
前記金型の下型には、前記ノックアウトピンで押し上げられる前記成形品が倒れることを防止する支え部材が付設され、
この支え部材には、前記搬送機構で排出される前記成形品の下部が前記支え部材に干渉しないように、成形品通路が設けられていることを特徴とする鍛造装置。
【請求項2】
前記支え部材に、前記成形品の上部を把持する前記搬送機構の爪が通る爪通路が設けられていることを特徴とする請求項1記載の鍛造装置。
【請求項3】
前記支え部材は、ボルトにて前記下型に着脱可能に固定されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の鍛造装置。
【請求項4】
前記支え部材は、取付位置が変更可能に前記下型に取付けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1記載の鍛造装置。
【請求項5】
前記支え部材は、前記下型に起設された4個の柱状部材からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の鍛造装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載の鍛造装置を用いて実施する鍛造方法であり、前記支え部材が備えられている第1金型と、この第1金型の隣りに配置され前記支え部材が備えられている第2金型とが少なくとも備えられている鍛造装置を用いて実施する鍛造方法であって、
前記第1金型で前記素材を第1中間成形品に成形する第1成形工程と、
前記搬送機構で前記第1中間成形品を把持し、前記第1金型に設けられている第1成形品通路及び前記第2金型に設けられている第2成形品通路を前記第1成形品の下部が通るようにして、前記第2金型へ搬送する第1搬送工程と、
前記第2金型で前記第1中間成形品を第2中間成形品に成形する第2成形工程と、
前記搬送機構で前記第2中間成形品を把持し、前記第2金型に設けられている第3成形品通路に前記第2成形品の下部が通るようにして、前記第2金型から排出する第2搬送工程と、からなる鍛造方法。
【請求項1】
素材が金型で成形され、得られた成形品がノックアウトピンで前記金型から離され、離された成形品が搬送機構で排出される鍛造装置において、
前記成形品は、横寸法より縦寸法が大きく、
前記金型の下型には、前記ノックアウトピンで押し上げられる前記成形品が倒れることを防止する支え部材が付設され、
この支え部材には、前記搬送機構で排出される前記成形品の下部が前記支え部材に干渉しないように、成形品通路が設けられていることを特徴とする鍛造装置。
【請求項2】
前記支え部材に、前記成形品の上部を把持する前記搬送機構の爪が通る爪通路が設けられていることを特徴とする請求項1記載の鍛造装置。
【請求項3】
前記支え部材は、ボルトにて前記下型に着脱可能に固定されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の鍛造装置。
【請求項4】
前記支え部材は、取付位置が変更可能に前記下型に取付けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1記載の鍛造装置。
【請求項5】
前記支え部材は、前記下型に起設された4個の柱状部材からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の鍛造装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載の鍛造装置を用いて実施する鍛造方法であり、前記支え部材が備えられている第1金型と、この第1金型の隣りに配置され前記支え部材が備えられている第2金型とが少なくとも備えられている鍛造装置を用いて実施する鍛造方法であって、
前記第1金型で前記素材を第1中間成形品に成形する第1成形工程と、
前記搬送機構で前記第1中間成形品を把持し、前記第1金型に設けられている第1成形品通路及び前記第2金型に設けられている第2成形品通路を前記第1成形品の下部が通るようにして、前記第2金型へ搬送する第1搬送工程と、
前記第2金型で前記第1中間成形品を第2中間成形品に成形する第2成形工程と、
前記搬送機構で前記第2中間成形品を把持し、前記第2金型に設けられている第3成形品通路に前記第2成形品の下部が通るようにして、前記第2金型から排出する第2搬送工程と、からなる鍛造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図10】
【図11】
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【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−107121(P2013−107121A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255777(P2011−255777)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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