説明

鍵盤楽器のスタンド

【課題】 良好な外観を維持するとともに、容易に位置決めしながら組み立てることができる鍵盤楽器のスタンドを提供する。
【解決手段】 上下方向に延びる左右のスタンド本体2,2と、左右のスタンド本体2,2の内面の所定位置からそれぞれ突出する位置決め用の左右の突起8,8と、左右のスタンド本体2,2間に取り付けられた水平なペダル土台3と、ペダル土台3の裏面の左右両端部にそれぞれ設けられ、所定位置に孔12を有し、ペダル土台3をスタンド本体2に取り付ける際に、孔12が突起8に係合することによりペダル土台3をスタンド本体2に対して位置決めする左右の取付具11,11と、取付具11により位置決めした状態で、ペダル土台3を取付具11を介してスタンド本体2に固定する固定手段8と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、楽器本体を支持する鍵盤楽器のスタンドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の鍵盤楽器のスタンドとして、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。図11に示すように、このスタンド51は、立設された左右のスタンド本体52,52(一方のみ図示)と、両スタンド本体52,52の下端部間に、左右の取付金具53,53(一方のみ図示)を介して取り付けられたペダル土台54などで構成されている。取付金具53は、例えば金属板を折り曲げ加工したものであり、スタンド本体固定部53aと、このスタンド本体固定部53aから直角に延びるペダル土台固定部53bとから、L字形に形成されている。この取付金具53は、そのスタンド本体固定部53aにおいて、スタンド本体52の内側面の下端部にねじ止めされており、その状態では、ペダル土台固定部53bは、スタンド本体52から内方に水平に突出している。また、ペダル土台固定部53bには、上下方向に貫通する前後のねじ孔55,55が形成されている。
【0003】
一方、ペダル土台54は、左右方向に水平に延びる上板54aと、その前端から下方に延びる前板54bを有し、上板54aの左右の両端部にはそれぞれ、上下方向に貫通する前後の孔56,56が形成されている(一端部側のみ図示)。このペダル土台54は、その上板54aの各端部を取付金具53のペダル土台固定部53bに載置し、ペダル土台54の孔56に通したねじ57を取付金具53のねじ孔55にねじ込むことによって、スタンド本体52に取り付けられている。
【0004】
しかし、このスタンド51では、ペダル土台54の表面側からねじ57がねじ込まれているので、ねじ57の頭部が演奏者側から見えてしまい、外観を損なうという問題がある。
【0005】
このような不具合を解消したスタンドとして、従来、例えば図12に示すものが知られている。このスタンド61では、取付金具63は、上述した取付金具53と同様、L字形の断面を有し、スタンド本体固定部63aおよびペダル土台固定部63bを有している。この取付金具63は、そのペダル土台固定部63bにおいて、ペダル土台64の裏面の左右の各端部に、ペダル土台64の裏面側からねじ込まれたねじ65によってねじ止めされており、スタンド本体固定部63aは、ペダル土台64の裏面から下方に突出している。このため、ペダル土台64の表面からは、ねじ65が見えないようになっている。
【0006】
このペダル土台64は、スタンド本体62に、例えば以下のような方法で取り付けられる。すなわち、図12に示すように、スタンド61をその背面側を下に向けた状態で床面Fに載置し、ペダル土台64を手で支えながら、取付金具63のスタンド本体固定部63aをスタンド本体62の下端部に当接させ、ペダル土台64をスタンド本体62に対して位置決めした状態を保持したまま、ねじ67を、スタンド本体固定部63aの孔66を介して、スタンド本体62にねじ込む。
【0007】
しかし、このスタンド61では、ペダル土台64をスタンド本体62に取り付ける際に、上述したように、ペダル土台64を手で支えながら、スタンド本体62の所定位置にスタンド本体固定部63aを当接させるとともに、その位置決めした状態を保持しながら、ねじ止めしなければならない。このため、スタンド61の組立作業を容易に行えないという問題がある。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、良好な外観を維持するとともに、容易に位置決めしながら組み立てることができる鍵盤楽器のスタンドを提供することを目的とする。
【0009】
【特許文献1】特開平8−292768号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために、請求項1に係る鍵盤楽器のスタンドは、上下方向に延びる左右のスタンド本体と、左右のスタンド本体の内面の所定位置からそれぞれ突出する位置決め用の左右の突起と、左右のスタンド本体間に取り付けられた水平なペダル土台と、ペダル土台の裏面の左右両端部にそれぞれ設けられ、所定位置に孔を有し、ペダル土台をスタンド本体に取り付ける際に、孔が突起に係合することによりペダル土台をスタンド本体に対して位置決めする左右の取付具と、取付具により位置決めした状態で、ペダル土台を取付具を介してスタンド本体に固定する固定手段と、を備えていることを特徴とする。
【0011】
この鍵盤楽器のスタンドによれば、左右のスタンド本体の内面の所定位置には、突起がそれぞれ設けられ、ペダル土台の裏面の左右両端部には、所定位置に孔を有する取付具が設けられている。ペダル土台をスタンド本体に取り付ける際には、ペダル土台の取付具の孔をスタンド本体の突起に係合させることにより、ペダル土台がスタンド本体に対して位置決めされる。そして、そのように位置決めした状態で、固定手段によって、取付具を介して、ペダル土台をスタンド本体に固定する。このように、スタンド本体の突起に取付具の孔を係合させるだけで、スタンド本体に対してペダル土台を容易に位置決めすることができる。また、突起と取付具の孔によって位置決めされた状態で、ペダル土台をスタンド本体に固定するので、従来と異なり、両者を固定する際に、ペダル土台を手で支えながら位置決めするという作業が不要になり、ペダル土台をスタンド本体に容易に取り付けることができる。
【0012】
また、本発明では、取付具がペダル土台の裏面に設けられているので、取付具に係合する突起、および取付具を介してペダル土台をスタンド本体に固定する固定手段を、ペダル土台の裏面側に配置することが可能になる。それにより、これらの部品が、ペダル土台で隠され、演奏者側からは見えないので、スタンドの外観を良好に維持することができる。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の鍵盤楽器のスタンドにおいて、突起および固定手段はねじで構成されており、取付具の孔は、ねじの頭部が挿通可能な挿通部と、挿通部に連続し、挿通部よりも幅が小さく、ねじの軸部が係合可能な溝部によって構成されていることを特徴する。
【0014】
この構成によれば、ペダル土台は、例えば以下のようにして、スタンド本体に取り付けられる。まず、ねじを、その頭部がスタンド本体から浮いた状態で、スタンド本体の所定位置に取り付ける。次に、取付具の挿通部を、ねじの頭部に挿通した後に、取付具のより幅の小さな溝部をねじの軸部に係合させた状態で、取付具をスライドさせ、溝部の縁部を軸部に当接させる。これにより、ペダル土台がスタンド本体に対して位置決めされる。そして、この位置決め状態でねじを締め付けることによって、ペダル土台がスタンド本体に固定される。この場合、例えば、取り付けの際に取付具の溝部が挿通部の上方に位置するように、孔を形成することによって、挿通部をねじの頭部に挿通した後にペダル土台から手を離すだけで、自重によりペダル土台とともに取付具が下降し、溝部の縁部がねじの軸部に当接し、位置決め状態になるので、組立作業を容易に行うことが可能になる。また、上記のように、このねじは、位置決め用の突起としての機能と固定手段としての機能を兼ね備えている。したがって、その分、部品点数および組立工数を削減することができ、それにより、製造コストを削減することができる。
【0015】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の鍵盤楽器のスタンドにおいて、突起および固定手段はねじで構成されており、取付具の孔は、奥側に向かってテーパ状に形成され、ねじの軸部が係合可能な切欠であることを特徴とする。
【0016】
本発明では、取付具にねじの軸部が係合可能な切欠が形成されており、この切欠は、奥側に向かってテーパ状になっている。この構成によれば、ペダル土台は、例えば以下のようにして、スタンド本体に取り付けられる。まず、ねじを、その頭部がスタンド本体から浮いた状態で、スタンド本体の所定位置に取り付ける。次に、取付具の切欠を、ねじの軸部に係合させた後に、取付具をスライドさせ、切欠の奥側の縁部を軸部に当接させる。これにより、ペダル土台がスタンド本体に対して位置決めされる。そして、この位置決め状態でねじを締め付けることによって、ペダル土台がスタンド本体に固定される。この切欠は、取付具の奥側に向かってテーパ状に、すなわち、奥側に向かって狭まるように形成されているので、ねじの軸部への切欠の係合を容易に行えるとともに、位置決めとねじによる固定も容易に行うことができる。
【0017】
この場合、例えば、取り付けの際に切欠の縁部が開口部の上方に位置するように、切欠を形成することによって、切欠をねじの軸部に係合させた後に、ペダル土台から手を離すだけで、自重によりペダル土台とともに取付具がねじの軸部上をスライドして下降し、切欠の縁部がねじの軸部に当接した位置決め状態になるので、組立作業を容易に行うことが可能になる。また、請求項2と同様、ねじが位置決め用の突起としての機能と固定手段としての機能を兼ね備えるので、製造コストを削減することができる。
【0018】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の鍵盤楽器のスタンドにおいて、切欠は、奥側の先端部から側方にさらに切り欠かれ、ねじの軸部に係合可能な係止部を有することを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、ペダル土台をスタンド本体に取り付けるために、ねじの軸部に切欠の奥側の縁部を当接させることにより、取付具が位置決めされた状態では、この切欠の先端部の係止部がねじの軸部に係合する。この係止部の係合により、ねじの軸部に対する取付具の位置決め後のずれが阻止されることによって、ペダル土台をスタンド本体に対して、より精度良く安定して位置決めすることができる。
【0020】
請求項5に係る発明は、請求項1に記載の鍵盤楽器のスタンドにおいて、固定手段はねじで構成されており、取付具は、ねじが挿通されるねじ止め用の第2の孔を有していることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、ペダル土台の取り付けの際には、ペダル土台の取付具の孔をスタンド本体の突起に係合させることにより、ペダル土台をスタンド本体に対して位置決めした状態で、取付具の第2の孔にねじを挿通し、締め付けることによって、ペダル土台がスタンド本体に固定される。このように、ペダル土台をスタンド本体に対して位置決めするための突起と、固定するためのねじが互いに別個に構成されているので、ねじをペダル土台の位置決めおよび固定手段に兼用した場合と比べて、位置決めの精度と安定性を高めることができる。
【0022】
請求項6に係る発明は、請求項2ないし5のいずれかに記載の鍵盤楽器のスタンドにおいて、左右のスタンド本体およびペダル土台が互いに直角に設けられており、取付具は、ペダル土台に固定される第1固定部と、スタンド本体にねじで固定される第2固定部で構成され、第1および第2の固定部が互いに若干鋭角をなすように形成されており、第2固定部をスタンド本体に固定する際のねじの締め付けにより、第1および第2の固定部が互いに直角に押し広げられた状態で、取り付けられていることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、取付具の第2固定部をスタンド本体に固定する際のねじの締め付けにより、第1および第2の固定部が互いに若干鋭角な状態から直角に押し広げられた状態で、取付具がスタンド本体とペダル土台の間に取り付けられている。この状態では、押し広げられた取付具の第2固定部の反力が、スタンド本体にねじ込まれたねじに、これを内方に押圧するように常時、作用する。これにより、ねじの緩みを防止でき、したがって、鍵盤楽器を長期間、使用した場合でも、ねじの緩みに起因する、ペダル土台とスタンド本体の間のがたつきを防止することができる。
【0024】
また、取付具の第1および第2の固定部の間の角度がもともと若干鋭角であるため、ペダル土台をスタンド本体に固定する前の状態では、第2固定部の先端がペダル土台の端面よりも内方に位置している。したがって、ペダル土台の取り付けの際に、第2固定部の先端が、スタンド本体に接触しにくくなることによって、スタンド本体の損傷を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照しながら、詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態による電子ピアノ(鍵盤楽器)のスタンドを示している。このスタンド1は、鍵盤などを含むピアノ本体(ともに図示せず)を支持するものであり、上下方向に延びる左右のスタンド本体2,2と、両スタンド本体2,2の下端部間に取り付けられた水平なペダル土台3と、両スタンド本体2,2の後端部間に取り付けられた背板4などを備えている。各スタンド本体2は、床面Fに載置された妻土台5と、これに立設された側板6で構成されている。各側板6の上端部には、金具7,7が取り付けられており、スタンド本体2,2に載置されたピアノ本体が、これらの金具7,7を介して固定される。
【0026】
ペダル土台3は、左右方向に延びる上板3aと、その前端から下方に延びる前板3bとから、断面L字形に形成されている。前板3bの下端部の中央には、3つの切欠3cが形成されており、各切欠3cにペダル(図示せず)が挿入され、取り付けられる。ペダル土台3は、左右の各端部において、取付金具11,11(取付具)を介して(図2に一方のみ図示)、左右のスタンド本体2,2に取り付けられている。
【0027】
取付金具11は、金属板、例えば鉄板を折り曲げ加工したものであり、図2および図3に示すように、ペダル土台固定部11a(第1固定部)と、このペダル土台固定部11aの一端からほぼ直角に延びるスタンド本体固定部11b(第2固定部)とから、断面L字形に形成されている。図4に示すように、ペダル土台固定部11aとスタンド本体固定部11bの間の角度は、直角ではなく、若干鋭角(例えば89度)に設定されている。なお、図4は、この角度が鋭角であることを示すために、実際よりも誇張して描かれている。スタンド本体固定部11bの所定位置には、前後の変形孔12,12(孔)が形成されており、さらに、両変形孔12,12間には、円形の孔13が形成されている。各変形孔12は、後述するねじ8の頭部が挿通可能な円形状の挿通部12aと、この挿通部12aから前方に連続し、挿通部12aよりも幅が小さく、ねじ8の軸部が係合可能な溝部12bで構成されている。
【0028】
上記のペダル土台3は、例えば、以下のようにして、スタンド本体2に取り付けられる。まず、各取付金具11のペダル土台固定部11aを、ペダル土台3の上板3aの裏面の左右両端部に、ねじ14で固定する(一方のみ図示)。この状態では、取付金具11のスタンド本体固定部11bは、その基端部がペダル土台3の上板3aの側端面と面一であるとともに、ペダル土台固定部11aに対して鋭角であるため、その先端が、上板3aの側端面よりも内方に位置している。
【0029】
次に、図2に示すように、スタンド本体2およびペダル土台3を、それらの背面側を下にした状態で、床面F上に置く。次に、各側板6の内面の下端部の所定位置に、前後2つのねじ8,8(突起および固定手段)を、その頭部が浮いた状態で取り付ける。次いで、ペダル土台3をスタンド本体2側に移動させ、取付金具11の各挿通部12aをねじ8の頭部に挿通した後、ペダル土台3から手を離す。これにより、ペダル土台3が自重で下降するのに伴い、取付金具11がねじ8の軸部上をスライドしながら下降し、溝部12bの縁部がねじ8の軸部に当接する。これにより、ペダル土台3がスタンド本体2に対して位置決めされる。そして、この状態で、各ねじ8を締め付けることによって、ペダル土台3を、取付金具11を介して、スタンド本体2に固定する。さらに、ねじ15を、スタンド本体固定部11bの孔13を介して、スタンド本体2にねじ込み、締め付ける。以上により、ペダル土台3が、取付金具11を介してスタンド本体2に固定され、スタンド1の組立作業が終了する。前述したように、取付金具11のペダル土台固定部11aとスタンド本体固定部11bの間の角度が若干鋭角に設定されているので、上記ねじ8の締め付けによって、両固定部11a,11bが互いに鋭角な状態から直角に押し広げられる。その結果、押し広げられたスタンド本体固定部11bの反力が、ねじ8およびねじ15に、これらを内方に押圧するように、常時、作用する。
【0030】
以上のように、第1実施形態によるスタンド1によれば、取付金具11がペダル土台3の裏側に設けられるとともに、ねじ8がペダル土台3の裏面側に配置されているので、取付金具11、ねじ8およびねじ14が、ペダル土台3で隠され、演奏者側からは見えず、したがって、スタンド1の外観を良好に維持することができる。また、ペダル土台3を取り付ける際、取付金具11の挿通部12aをねじ8の頭部に通した後にペダル土台3から手を離すだけで、溝部12bの縁部がねじ8の軸部に当接し、位置決め状態になる。また、そのように位置決めされた状態において、ペダル土台3をスタンド本体2に固定するので、従来と異なり、両者を固定する際に、ペダル土台3を手で支えながら位置決めするという作業が不要になり、ペダル土台3をスタンド本体2に容易に取り付けることができ、組立作業を容易化することができる。また、ねじ8は、ペダル土台3の位置決め用の突起としての機能と、ペダル土台3の固定手段としての機能を兼ね備えている。したがって、その分、部品点数および組立工数を削減することができ、それにより、製造コストを削減することができる。
【0031】
また、ペダル土台3を固定する際のねじ8の締め付けによって、取付金具11のペダル土台固定部11aおよびスタンド本体固定部11bが互いに若干鋭角な状態から直角に押し広げられており、押し広げられたスタンド本体固定部11bの反力が、ねじ8およびねじ15に、これを内方に押圧するように常時、作用するので、ねじ8およびねじ15の緩みを防止することができる。したがって、電子ピアノを長期間、使用した場合でも、ねじ8およびねじ15の緩みに起因する、ペダル土台3とスタンド本体2の間のがたつきを防止することができる。さらに、ねじ15の軸部が円形の孔13にぴったり係合しているので、スタンド本体2と取付金具11ひいてはペダル土台3とが、ねじ8の軸部が係合する変形孔12の溝部12bに沿って相対的に移動するのを確実に阻止でき、それにより、スタンド本体2とペダル土台3の間のがたつきを防止することができる。また、ペダル土台3に取付金具11を取り付けた状態において、取付金具11のスタンド本体固定部11bの先端が、ペダル土台3の上板3aの側端面よりも、内方に位置しているので、ペダル土台3をスタンド本体2に取り付ける際に、スタンド本体固定部11bの先端がスタンド本体2に接触しにくくなることによって、スタンド本体2の損傷を防止することができる。
【0032】
図5は、本発明の第2実施形態による電子ピアノのスタンドを示している。このスタンド20は、第1実施形態と比較して、取付金具の構成のみが異なっている。なお、以下の実施形態では、相違点を中心として説明し、同じ構成部品については、同じ符号を用い、その詳細な説明は省略するものとする。図5および図6に示すように、取付金具21のスタンド本体固定部21bには、前後の切欠22,22が形成されている。図5に示すように、各切欠22は、上方前側に斜めに延びるとともに、奥側に向かって狭くなるテーパ状に形成されている。
【0033】
ペダル土台3は、例えば、以下のようにして、スタンド本体2に取り付けられる。まず、第1実施形態と同様にして、ペダル土台3に取付金具21,21を、各スタンド本体2にねじ8,8を、それぞれ取り付ける。次に、取付金具21の各切欠22を、ねじ8の軸部に係合させた後、ペダル土台3から手を離す。これにより、ペダル土台3が自重で下降するのに伴い、取付金具21がねじ8の軸部上をスライドしながら下降し、ねじ8の軸部に切欠22の縁部が当接する。これにより、ペダル土台3がスタンド本体2に対して位置決めされる。以下、第1実施形態と同様、ねじ8およびねじ15の締め付けにより、ペダル土台3を、取付金具21を介して、スタンド本体2に固定する。
【0034】
以上から明らかなように、第2実施形態においても、前述した第1実施形態の効果を同様に得ることができる。また、スタンド本体固定部21bの切欠22が上方前側に向かってテーパ状に形成されているので、ねじ8の軸部との切欠22の係合を容易に行えるとともに、ペダル土台3の位置決めを容易に行うことができる。したがって、スタンドの組立作業をより容易に行うことができる。
【0035】
図7は、本発明の第3実施形態による電子ピアノのスタンドを示している。このスタンド30は、第2実施形態と比較して、取付金具のスタンド本体固定部に形成された切欠の形状のみが異なっている。図7および図8に示すように、取付金具31のスタンド本体固定部31bには、前後の切欠32,32が形成されている。各切欠32は、奥側に向かってテーパ状に形成されるとともに、奥側の先端部に係止部32aを有している。具体的には、切欠32の前側の縁部がほぼ鉛直に延び、後側の縁部が上方前側に若干斜めに延びており、前側の縁部の奥側の先端部から前方にさらに切り欠かれた部分が、係止部32aになっている。この係止部32aは、ねじ8の軸部の径にほぼ等しい径を有する半円状に形成されており、したがって、ねじ8の軸部に係合可能である。
【0036】
この構成によれば、ペダル土台3をスタンド本体2に取り付ける際には、第2実施形態と同様、ねじ8の軸部に切欠32の縁部が当接することにより、取付金具31が位置決めされる。この状態では、係止部32aがねじ8の軸部にぴったり係合することにより、ねじ8の軸部に対する取付金具31の位置決め後のずれが阻止されるので、ペダル土台3をスタンド本体2に対して、より精度良く位置決めすることができる。
【0037】
図9は、本発明の第4実施形態による電子ピアノのスタンドを示している。このスタンド40では、各側板6の内面の下端部の所定位置に、前後2つの位置決め用の突起42,42が設けられている。各突起42の基端部は一定の径を有し、先端部はテーパ状に形成されている。図9および図10に示すように、取付金具41のスタンド本体固定部41bには、突起42,42に対応する位置に嵌合孔44,44(孔)が形成され、それらの外側には、ねじ止め用の孔45,45(第2の孔)が形成されている。これらの嵌合孔44および孔45はいずれも、丸孔で構成されている。
【0038】
ペダル土台3は、上記の取付金具41をペダル土台固定部41aを介して取り付けた後、例えば、以下のようにして、スタンド本体2に取り付けられる。まず、取付金具41の各嵌合孔44をスタンド本体2の突起42に係合させることにより、ペダル土台3をスタンド本体2に対して位置決めする。次に、この位置決め状態で、ねじ46(固定手段)を、取付金具41の孔45に通し、スタンド本体2の側板6にねじ込み、締め付ける。以上により、ペダル土台3がスタンド本体2に固定される。
【0039】
以上のように、この第4実施形態によれば、ペダル土台3の位置決め用の突起42と固定用のねじ46が互いに別個に構成されているため、ねじ8をペダル土台3の位置決めおよび固定手段に兼用する第1〜第3実施形態と比べて、位置決めの精度と安定性を高めることができる。また、突起42の先端部がテーパ状に形成されているので、突起42への嵌合孔44の係合を容易に行うことができる。
【0040】
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、本実施形態では、固定手段としてねじを用いているが、ペダル土台3を取付具を介してスタンド本体2に固定できるものであればよく、例えば接着剤を用いてもよい。また、ねじ8、ねじ46および突起42を、側板6に設けているが、スタンド本体2の妻土台5に設けてもよい。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の電子ピアノのスタンドを示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態によるスタンドを示す部分斜視図である。
【図3】図2の取付金具の平面図である。
【図4】図3の取付金具の正面図である。
【図5】第2実施形態によるスタンドを示す部分斜視図である。
【図6】図5の取付金具の平面図である。
【図7】第3実施形態によるスタンドを示す部分斜視図である。
【図8】図7の取付金具の平面図である。
【図9】第4実施形態によるスタンドを示す部分斜視図である。
【図10】図9の取付金具の平面図である。
【図11】従来の鍵盤楽器のスタンドを示す部分斜視図である。
【図12】図11のスタンドと異なる従来の他のスタンドを示す部分斜視図である。
【符号の説明】
【0042】
1 スタンド
2 スタンド本体
3 ペダル土台
8 ねじ(突起および固定手段)
11 取付金具(取付具)
11a ペダル土台固定部(第1固定部)
11b スタンド本体固定部(第2固定部)
12 変形孔(孔)
12a 挿通部
12b 溝部
20 スタンド
21 取付金具(取付具)
21a ペダル土台固定部(第1固定部)
21b スタンド本体固定部(第2固定部)
22 切欠
30 スタンド
31 取付金具(取付具)
31a ペダル土台固定部(第1固定部)
31b スタンド本体固定部(第2固定部)
32 切欠
32a 係止部
40 スタンド
41 取付金具(取付具)
41a ペダル土台固定部(第1固定部)
41b スタンド本体固定部(第2固定部)
42 突起
44 嵌合孔(孔)
45 孔(第2の孔)
46 ねじ(固定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びる左右のスタンド本体と、
当該左右のスタンド本体の内面の所定位置からそれぞれ突出する位置決め用の左右の突起と、
前記左右のスタンド本体間に取り付けられた水平なペダル土台と、
当該ペダル土台の裏面の左右両端部にそれぞれ設けられ、所定位置に孔を有し、前記ペダル土台を前記スタンド本体に取り付ける際に、前記孔が前記突起に係合することにより前記ペダル土台を前記スタンド本体に対して位置決めする左右の取付具と、
当該取付具により位置決めした状態で、前記ペダル土台を前記取付具を介して前記スタンド本体に固定する固定手段と、
を備えていることを特徴とする鍵盤楽器のスタンド。
【請求項2】
前記突起および前記固定手段はねじで構成されており、
前記取付具の孔は、
前記ねじの頭部が挿通可能な挿通部と、当該挿通部に連続し、当該挿通部よりも幅が小さく、前記ねじの軸部が係合可能な溝部によって構成されていることを特徴する、請求項1に記載の鍵盤楽器のスタンド。
【請求項3】
前記突起および前記固定手段はねじで構成されており、
前記取付具の孔は、
奥側に向かってテーパ状に形成され、前記ねじの軸部が係合可能な切欠であることを特徴とする、請求項1に記載の鍵盤楽器のスタンド。
【請求項4】
前記切欠は、奥側の先端部から側方にさらに切り欠かれ、前記ねじの軸部に係合可能な係止部を有することを特徴とする、請求項3に記載の鍵盤楽器のスタンド。
【請求項5】
前記固定手段はねじで構成されており、
前記取付具は、前記ねじが挿通されるねじ止め用の第2の孔を有していることを特徴とする、請求項1に記載の鍵盤楽器のスタンド。
【請求項6】
前記左右のスタンド本体および前記ペダル土台が互いに直角に設けられており、
前記取付具は、
前記ペダル土台に固定される第1固定部と、前記スタンド本体に前記ねじで固定される第2固定部で構成され、前記第1および第2の固定部が互いに若干鋭角をなすように形成されており、
前記第2固定部を前記スタンド本体に固定する際の前記ねじの締め付けにより、前記第1および第2の固定部が互いに直角に押し広げられた状態で、取り付けられていることを特徴とする、請求項2ないし5のいずれかに記載の鍵盤楽器のスタンド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2006−91515(P2006−91515A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−277870(P2004−277870)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000001410)株式会社河合楽器製作所 (563)
【Fターム(参考)】