説明

鍵盤装置

【課題】鍵に高い装飾性を持たせ、キーボードや電子ピアノなど鍵盤楽器のデザイン性を効果的に高めることができる鍵盤装置の提供。
【解決手段】本体部20と、本体部20の上部に設置された透明あるいは半透明のアクリル樹脂材料からなる表面部材30と、表面部材30と本体部20との間に設けた装飾を有する加飾層40とからなる鍵10を複数配列してなる鍵盤装置1である。加飾層40は、色彩のほか、絵柄あるいは文字を含む装飾を施したものでもよい。また、見え懸かり部Aにおいて表面部材30に面する本体部20を木質系部材21とし、加飾層40は、木質系部材21の表面に形成した凹凸を含むようにしてもよい。さらに、表面部材30を照らす採光部5が設けられており、採光部5の光で表面部材30光らせたり加飾層40を照らしたりして、鍵10の装飾性をより高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子鍵盤楽器をはじめとする各種鍵盤楽器に用いられる鍵盤装置に関し、特に、鍵に高い装飾性を持たせて鍵盤楽器のデザイン性を高めることができる鍵盤装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子ピアノなどの電子鍵盤楽器には高いデザイン性が求められており、その一環として、鍵盤に深みや奥行きのある装飾を施すことが望まれている。現在の電子鍵盤楽器の鍵盤は、白鍵と黒鍵を備える白黒鍵盤が主流であるが、装飾性を考慮した鍵盤として、白鍵に代えて単一の色彩を施した成型品からなる鍵を備えたカラー鍵盤もある。ところが、これら白黒鍵盤や単色のカラー鍵盤は、鍵に白あるいは単一の彩色を施しただけなので、例えば鍵の下地から表面までの透明感による深みや奥行き感などといった高度な装飾感は出せず、デザイン性を高めるには限界がある。また、上記のようなカラー鍵盤は、鍵自体に色を付けて成型するものであるため、同一の鍵盤装置において色の種類を増やそうとすると、製造時の色換えに伴う材料や工程の無駄が多くなる。したがって、量産品に採用するにはあまり適していなかった。
【0003】
装飾性を考慮した鍵盤装置に関する他の従来技術として、特許文献1に記載された鍵盤装置がある。この鍵盤装置は、鍵の内部に導光体を埋め込み、発光体が発する光をこの導光体に導くことで、導光体から出た光で鍵の表面を光らせるように構成している。ところが、この鍵盤装置は、鍵を光らせるものであり、鍵に自由な絵柄や文字などを施す装飾には直接関係しない。また、鍵を光らせる技術としても、各鍵に導光体を埋め込まなければならず、鍵及びその周辺の構造が複雑になり、コスト高につながるという問題がある。
【0004】
なお、一般的な部材の表面装飾に関する技術として、特許文献2に記載された加飾シートがある。この加飾シートは、住宅の内外装材などに用いられるもので、表面シートと裏面シートの間に装飾層と接着剤層とを介在させてなるシート状部材である。しかしながら、この技術は、上記のように住宅の内外装材などに用いるものであるうえに、加飾シートを部材(被着体)に貼着して部材を装飾するものであり、部材自体を装飾するものではない。したがって、装飾の条件などが大きく異なる鍵盤装置にそのまま適用することはできない。
【特許文献1】特開平11−119772号公報
【特許文献2】実用新案登録第3083040号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、鍵に高い装飾性を持たせ、鍵盤楽器のデザイン性を効果的に高めることができる鍵盤装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明にかかる鍵盤装置は、鍵を複数配列してなる鍵盤装置であって、鍵は、本体部と、本体部の上部に設置された少なくとも一部が透明あるいは半透明の樹脂材料からなる表面部材と、表面部材と本体部との間に設けた装飾を有する加飾層と、からなることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、鍵の上層部を表面部材と加飾層の二層構造にすることで、表面部材で鍵の上面を保護しつつ、表面部材を通して加装層の装飾を鍵の上面に表すことができる。したがって、鍵の耐久性を確保しながらその装飾性を高めることができる。また、透明あるいは半透明の樹脂材料からなる表面部材と加飾層との組み合わせによって、鍵の上面側から見た装飾に深みあるいは奥行き感を持たせることができ、鍵盤装置のデザイン性を効果的に高めることができる。なお、ここでいう加飾層には、本体部の上面に色彩、絵柄あるいは文字を含む装飾を直接施したもののほか、このような装飾を施したシート状部材を本体部と表面部材との間に介在させたものなども含まれる。
【0008】
また、上記の鍵盤装置では、表面部材にアクリル樹脂材料を用いることが好ましい。
【0009】
このようにアクリル樹脂材料を鍵の表面部材に用いることで、高いデザイン性を確保しながらも、鍵の硬度や耐磨耗性を確保できる。また、比較的安価なアクリル樹脂材料によって透明あるいは半透明の表面部材を作成するので、鍵盤装置のコスト増を抑制できる。
【0010】
また、上記の鍵盤装置において、加飾層は、絵柄あるいは文字を含む装飾を施したものであってもよい。
【0011】
この構成によれば、加飾層に絵柄あるいは文字を含む装飾を施すことによって、従来の単一の彩色を施したカラー鍵盤などに比べ、鍵の装飾の自由度を大幅に高めることができる。なお、加飾層が上記のシート状部材を備えたものである場合には、鍵の表面に複雑な絵柄や文字などを含む高度な装飾を簡単に施すことができ、鍵のデザイン性をさらに高めることが可能となる。
【0012】
また、上記の鍵盤装置においては、表面部材に光を採り入れる採光部を備えてもよい。
【0013】
この構成によれば、採光部にて表面部材に光を採り入れることで、鍵の上面を光らせることができ、鍵の装飾をさらに効果的なものにできる。さらに、採光部による光が加飾層にも及ぶようにすれば、加飾層の装飾をより効果的に演出することが可能となる。なお、採光部は、表面部材の後端などの側部から横方向に光を入射させるようにすれば、単一の光源だけの簡単な構成で表面部材の全体を効果的に光らせることができる。
【0014】
また、上記の鍵盤装置において、本体部は、少なくとも鍵の見え懸かり部において表面部材に面する部分が木質系部材からなり、加飾層をこの木質系部材の表面に設けていてもよい。
【0015】
この構成によれば、木質系部材の表面を加飾層として用いることで、鍵に木質感のある装飾を施すことができ、鍵のデザイン性を高めることができるとともに、鍵に高級感を持たせることができる。なお、ここでいう鍵の見え懸かり部とは、鍵の後部におけるパネルなどの他の部材で隠れている部分よりも前側の上面が露出している部分を指す。
【0016】
また、上記の鍵盤装置において、加飾層は、木質系部材の表面に形成した凹凸を含むものでもよい。
【0017】
この構成によれば、木質系部材の凹凸を利用して、鍵の上面に効果的な装飾を表すことができる。また、上記の採光部を有する場合は、採光部の光で加飾層の凹凸を照らすことで、凹凸による絵柄や文字を効果的に浮き上がらせたり、採光の有無や強弱の調節、あるいは採光色の交換などにより、凹凸による絵柄や文字を切り換えたりすることが可能となり、鍵盤のデザイン性をさらに高めることができる。
【0018】
また、上記の鍵盤装置において、加飾層は、複数の鍵に渡って連続する装飾を施したものであってもよい。
【0019】
この構成によれば、鍵盤全体に統一感のある装飾を施すことができ、鍵盤装置のデザイン性をさらに高めることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、鍵の耐久性を確保しながら、鍵に色彩や絵柄あるいは文字などを含む自由な装飾を施すことができ、鍵盤装置のデザイン性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる鍵盤装置(以下、単に「鍵盤」と称す。)1が備える鍵10及びその周辺の構成例を示す図で、(a)は斜視図、(b)は概略側面図(一部断面図)である。鍵盤1は、並設される複数の鍵10を備えてなるが、図1では、便宜上、最高音鍵のみを示し、隣接する他の鍵を不図示としている。また、図1では、鍵10が白鍵である場合を示しているが、黒鍵の場合も上下高さ及び長手方向の長さが異なるだけで、それ以外は同様の構成になっている。以下の説明では、鍵10の長手方向における両側のうち、鍵10を操作する演奏者の側を手前あるいは前といい、その反対側を奥あるいは後という。なお、図1(a)では、鍵10の後端の図示を省略している。
【0022】
鍵10は、長尺状の部材で、鍵盤1の底部を構成する略平板状のフレーム2に後端がネジSCで固定されており、前端が自由端として上下方向に揺動自在になっている。なお、図示は省略するが、フレーム2は、鍵盤1の前後方向及び左右方向に延びており、複数の鍵10に対応する位置に跨って配置されている。また、本実施形態の鍵盤1では、各鍵10の後部上方に図示しない操作パネルが設置されており、このパネルによって鍵10の後部上面が隠れている。以下では、このパネルで隠れている部分より前側の部分である図1(a)における矢印Aで示す部分を鍵10の見え懸かり部と称す。なお、鍵盤1は、キーボードや電子ピアノなどの電子鍵盤楽器に用いて好適なもので、図示は省略するが、鍵10の下面とフレーム2の間などには、鍵10の動作を電気的出力に変換するためのスイッチあるいはセンサなどの電気機構が設けられている。
【0023】
鍵10は、本体部20と、本体部20の上部に設置された表面部材30と、表面部材30と本体部20の間に設けた加飾層40とで構成されている。本体部20は、木質系部材21とベース体25とによって構成されている。ベース体25は、BSあるいはABSなどの合成樹脂材料からなる成型品で、鍵10の前部で長手方向に延びる細長い略薄板状の鍵ベース251と、該鍵ベース251の後部に連結された厚板状部252とからなる。
【0024】
木質系部材21は、ベース体25の鍵ベース部251の上部に載置される部材で、断面が矩形状の細長い棒状体からなる。ここでいう木質系部材21とは、木質感を有する部材を指し、本実施形態では木材であるが、それ以外にも、例えば、木目調の化粧部材、合板、木質材(MDF)などで構成することも可能である。
【0025】
本体部20の上部に設置された表面部材30は、アクリル樹脂材料からなる透明あるいは半透明の薄板状部材である。この表面部材30は、本体部20の上面及び前面を覆う形状に形成されている。一方、表面部材30に面している本体部20は、鍵10の長手方向の途中にある切換部Bより前側が木質系部材21、後側がベース体25になっている。この切換部Bは、鍵10の見え懸かり部Aよりも後側にある。したがって、鍵10の見え懸かり部Aで表面部材30に面している本体部20は、木質系部材21になっている。
【0026】
また、ベース体25の後端部には薄板状のヒンジ部26が連結されており、図1(b)に示すように、ヒンジ部26の後部には矩形状の基部27が形成されている。ヒンジ部26は上下方向に可撓性を有している。また、ヒンジ部26には、上下に貫通する矩形状の透孔26aが形成されている。一方、基部27は、フレーム2の後部に設けた鍵支承部3に固定されている。これにより、鍵10は、ヒンジ部26の可撓性により該ヒンジ部26を介して鍵支承部3に揺動自在に支持されている。また、ベース体25の後端下面には、突起状の下限ストッパー28が形成されている。下限ストッパー28は、鍵10の全体あるいは後部が通常の演奏力以上の力で過度に押し下げられた場合、鍵10の後部が所定量以上に沈むことを防止するものである。
【0027】
ヒンジ部26の下側には、フレーム2上に設けた筒状体4が配置されている。筒状体4は、内部に配線孔4aが形成されており、図示は省略するが、鍵盤1の横方向に延びて複数の鍵10に対応する位置に跨って配置されている。筒状体4の上部における各鍵10に対応する位置には、表面部材30に光を採り入れる採光部5が設けられている。採光部5は、矩形状のカバー6と、カバー6の前面に取り付けたLED7とで構成されている。カバー6は、ヒンジ部26の透孔26a内に配置されて、上端が透孔26aから上方に突出しており、前面の上端近傍に設けたLED7が表面部材30の後端面30aに対向している。これにより、LED7は、表面部材30の後端面30aに向けて光を照射する。照射された光は、表面部材30の後端面30aから前方に向かって横方向(水平方向)に入射する。入射光は、表面部材30の上下面及び側面で反射しながら鍵10の自由端を照らすが、この際、入射光が後述する僅かな凹凸などで形成された加飾層40の部位で乱反射されることで、入射光を鍵10の上面から視認できるようになる。これにより、表面部材30を光らせることができる。なお、LED7への配線7aは、カバー6内を貫通して筒状体4の配線孔4aに導かれている。
【0028】
図2は、本体部20と表面部材30の間に設けた加飾層40の構成例を示す図である。同図(a)に示す例では、加飾層40として、木質系部材21の表面21aに色彩や絵柄や文字などを含む装飾を直接施している。同図(b)に示す例では、加飾層40として、木質系部材21の表面21aに凹凸(微細な凹凸)の形成による装飾を施している。これらでは、木質系部材21の表面21aが加飾層40になっている。また、同図(c)に示す例では、加飾層40として、色彩や絵柄や文字などを含む装飾を施したシート状部材41を本体部20と表面部材30との間に介在させている。加飾層40は、これらのうちいずれであってもよい。また、加飾層40に施す装飾は、単色あるいは複数色の彩色のみであってもよいし、絵柄と文字のいずれかあるいは両方を含むものであってもよいし、彩色と絵柄あるいは文字とを組み合わせたものでもよい。加飾層40として、木質系部材21の表面21aに色彩や絵柄や文字を含む装飾を施すには、例えば、インクジェット方式あるいはレーザー方式のプリントなどで行うことができる。また、木質系部材21の表面21aに凹凸を形成するには、例えば、レーザーによるエッチングあるいは刃物による彫刻などで行うことができる。
【0029】
図3は、鍵盤1の製造工程の一部を説明するための図である。通常、鍵盤1を製造するには、複数の鍵10に対応する部分が繋がった状態である平板状の木質系部材21と、この木質系部材21と略同形の表面部材30とを用意し、表面部材30と木質系部材21とを貼り合わせた後、各鍵10ごとの引き割り(切断)を行う。すなわち、加飾層40として、図2(c)に示すシート状部材41を用いる場合、あらかじめシート状部材41に装飾を施しておく。そして、表面部材30の下面にシート状部材41を貼り合わせる。その後、図3に示すように、一体になった表面部材30とシート状部材41を木質系部材21の上面に貼り合わせる。この三者を貼り合わせたものを鍵10の幅に合わせた切断線Cに沿って切断する。なお、加飾層40が、図2(b)あるいは(c)に示す木質系部材21の表面21aを利用したものである場合は、あらかじめ木質系部材21の表面21aに装飾を施しておき、その上から表面部材30を貼り合わせる。その後、上記と同様の引き割りを行う。このようにして鍵盤1を製造することで、上層部が表面部材30と加飾層40の二層構造になっている鍵盤1の製造が容易に行える。また、後述するような複数の鍵10に渡って連続する装飾を施した鍵盤1も容易に製作できる。
【0030】
図4は、本実施形態にかかる絵柄からなる装飾を施した鍵盤1を有するキーボード50の構成例を示す図である。上記手順にて鍵盤1を製作することで、このキーボード50のように隣接する複数の鍵10,10に渡って連続する絵柄からなる装飾を施すことができる。これにより、鍵盤1の全体に統一感のある装飾を施すことができ、キーボード50のデザイン性を効果的に高めることができる。なお、同図に示す例では、白鍵にのみ絵柄を施し、黒鍵には絵柄を施していないが、例えば、黒鍵を黒色以外の色にすることなどにより、黒鍵に絵柄を施すことも可能である。
【0031】
以上説明したように本実施形態の鍵盤1によれば、鍵10の上層部を表面部材30と加飾層40とからなる二層構造にしたことで、鍵10の上面を表面部材30で保護しつつ、表面部材30を通して加飾層40の装飾を鍵10の上面に表すことができ、鍵10の耐久性を確保しながら装飾性を高めることができる。また、透明あるいは半透明の表面部材30とその下側に設けた加飾層40との組み合わせによって、鍵10の上面に見える装飾に深みあるいは奥行き感を持たせることができ、キーボード50などの電子鍵盤楽器をはじめとする各種鍵盤楽器のデザイン性を効果的に高めることができる。
【0032】
また、表面部材30にアクリル樹脂材料を用いたことで、鍵10の装飾の深みあるいは奥行き感による高いデザイン性を確保しつつ、鍵10の硬度や耐磨耗性を確保できる。また、比較的安価なアクリル樹脂材料にて透明あるいは半透明の表面部材30を形成したことで、鍵盤1のコスト増を抑制できる。
【0033】
また、本実施形態の鍵盤1では、採光部5にて表面部材30に光を採り入れることで、鍵10の上面を光らせることができる。この場合、表面部材30の後端面30aから前方に向けて横方向に光を採り入れることで、表面部材30の全体を明るく光らせることができる。また、表面部材30の内部に光沢を有する微細粉からなる乱反射材を混入しておくなどすれば、表面部材30の内部で光が乱反射して、表面部材30の全体がより明るく光るようにできる。これにより、表面部材30を効果的に光らせて鍵盤1のデザイン性を高めることができる。
【0034】
また、上記構成に加えて、黒鍵も白鍵と同様に表面部材と加飾層とを有する構造とし、かつ、黒鍵に光を採光する採光部を設けることもできる。その場合、黒鍵は、採光部からの入射光がある場合にのみ絵柄が浮き立つように構成してもよい。それには、例えば、黒鍵の表面部材を黒色の半透明材料で形成し、採光部の入射光がない場合は、黒色で不透明に見えるが、採光部の入射光があると黒色で半透明な状態となり、加飾層に光が反射して絵柄が浮き出るようにする。これにより、採光部の入射光によって黒鍵の絵柄と白鍵の絵柄との両方を視認可能な状態にすることができる。
【0035】
さらに、採光部5による光は表面部材30を介して加飾層40にも及ぶため、この光によって、加飾層40の装飾を効果的に演出することが可能となる。例えば、加飾層40が白色の部分を含む装飾である場合、採光部5から表面部材30に青色の光を導入することで、白色の部分が光で照らされて青く見えるようにできる。
【0036】
また、加飾層40が木質系部材21の表面21aに形成した凹凸を含むものである場合、採光部5の採光で凹凸を照らすことで、凹凸による絵柄や文字を効果的に浮き上がらせたり、採光の有無や強弱の調節、あるいは採光色の交換などによって、凹凸による絵柄や文字を切り換えたりすることが可能となる。具体例を挙げると、凹凸の形状や光の入射角度の設定によって、非入光時は絵柄P、入光時は絵柄Qに切り換わるようにする。ここでの絵柄Pは、例えば「ド」の鍵10にドーナツの絵、「レ」の鍵10にレモンの絵・・・のような絵柄であり、絵柄Qは、「C」の鍵10にアルファベットのC、「D」の鍵10にアルファベットのD・・・のような文字柄とする。こうすれば、採光の有無などによって、鍵盤1を大人向けと子供向けとに切り換えることが簡単に行えるようになる。
【0037】
上記実施形態では、表面部材30をアクリル樹脂材料で構成した場合を説明したが、本発明にかかる鍵盤装置の表面部材は、透明あるいは半透明の材料であれば、アクリル樹脂材料以外の樹脂材料で構成することも可能である。また、上記で示した鍵盤1の製造方法は一例であり、これ以外にも、例えば、あらかじめ各鍵10に対応する木質系部材21と表面部材30とを引き割り(切断)しておき、個々に分離した木質系部材21と表面部材30を後から貼り合わせて各鍵10を製作することも可能である。
【0038】
また、上記実施形態では、表面部材30はその全体が透明あるいは半透明である場合を示したが、これ以外にも、例えば、見え懸かり部Aだけを透明あるいは半透明にして、それより後側の部分は透明以外の色にすることができる。また、透明以外の部分を基調とし、特定の絵柄や文字柄などを形成するように透明部分を抜き柄として形成してもよい。したがって、表面部材30は少なくともその一部が透明あるいは半透明であればよい。
【0039】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載のない何れの形状・構造・材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態にかかる鍵盤(鍵盤装置)が備える鍵及びその周辺の構成例を示す図で、(a)は、斜視図、(b)は、鍵の後端部を示す概略側面図(一部断面図)である。
【図2】加飾層の構成例を示す図で、(a)は、木質系部材の表面に色彩や絵柄や文字を含む装飾を施した例であり、(b)は、木質系部材の表面に凹凸の形成による装飾を施した例であり、(c)は、色彩や絵柄や文字を含む装飾を施したシート状部材を本体部と表面部材との間に介在させた例である。
【図3】鍵盤の製造工程を説明するための図である。
【図4】本発明の実施形態にかかる絵柄からなる装飾を施した鍵盤を有するキーボードの構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1 鍵盤(鍵盤装置)
2 フレーム
3 鍵支承部
4 筒状体
5 採光部
6 カバー
7 LED
10 鍵
20 本体部
21 木質系部材
21a 表面(加飾層)
25 ベース体
26 ヒンジ部
27 基部
28 下限ストッパー
30 表面部材
30a 後端面
40 加飾層
41 シート状部材(加飾層)
50 キーボード
A 見え懸かり部
B 切換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍵を複数配列してなる鍵盤装置であって、
前記鍵は、本体部と、前記本体部の上部に設置された少なくとも一部が透明あるいは半透明の樹脂材料からなる表面部材と、前記表面部材と前記本体部との間に設けた装飾を有する加飾層と、からなることを特徴とする鍵盤装置。
【請求項2】
前記表面部材は、アクリル樹脂材料からなることを特徴とする請求項1に記載の鍵盤装置。
【請求項3】
前記加飾層は、絵柄あるいは文字を含む装飾を施したものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の鍵盤装置。
【請求項4】
前記表面部材に光を採り入れる採光部を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の鍵盤装置。
【請求項5】
前記本体部は、少なくとも前記鍵の見え懸かり部において前記表面部材に面する部分が木質系部材からなり、前記加飾層は、前記木質系部材の表面に設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の鍵盤装置。
【請求項6】
前記加飾層は、前記木質系部材の表面に形成した凹凸を含むものであることを特徴とする請求項5に記載の鍵盤装置。
【請求項7】
前記加飾層は、複数の鍵に渡って連続する装飾を施したものであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の鍵盤装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−116185(P2009−116185A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−291076(P2007−291076)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】