説明

鍵盤装置

【課題】 ハンマー部材を用いずに、押鍵操作時に鍵に負荷を付与して鍵タッチを重くすることができる鍵盤装置を提供する。
【解決手段】 複数の鍵6が上下方向に回転可能に取り付けられた状態で並列に配列された鍵盤シャーシ2上に設けられ、複数の鍵6をそれぞれ上下方向にガイドする複数の鍵ガイド部11と、この複数の鍵ガイド部11にそれぞれ設けられ、複数の鍵6を押鍵操作した際に、その押鍵操作された鍵6に対して摩擦抵抗による負荷を付与する複数の負荷付与部材20とを備えている。従って、ハンマー部材を用いなくても、押鍵操作時に鍵6に負荷を付与して鍵タッチを確実に重くすることができるので、アコースティックピアノに近似した鍵タッチ感を得ることができると共に、装置全体の重量を大幅に軽くすることができ、これにより手軽に持ち運ぶことができると共に、低価格なものを提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子ピアノや電子オルガンなどの鍵盤楽器に用いられる鍵盤装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子ピアノなどの鍵盤装置においては、特許文献1に記載されているように、アコースティックピアノに近似した鍵タッチ感を得るために、複数の鍵がそれぞれ上下方向に回転可能に取り付けられた鍵盤シャーシに、複数の鍵の各押鍵操作に応じてそれぞれ各鍵にアクション荷重を付与する複数のハンマー部材を上下方向に回転可能に取り付けた構成のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−108059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の鍵盤装置では、複数のハンマー部材をそれぞれ別部品として製作しなければならないため、生産性が悪く、部品点数も多くなり、組立作業が煩雑で、製作コストが高くなるばかりか、ハンマー部材の重量が重いため、装置全体の重量が極めて重くなり、持ち運びが不便であるなどの問題がある。
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、ハンマー部材を用いずに、押鍵操作時に鍵に負荷を付与して鍵タッチを重くすることができる鍵盤装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決するために、次のような構成要素を備えている。
請求項1に記載の発明は、複数の鍵が鍵盤シャーシ上に上下方向に回転可能に取り付けられた状態で並列に配列された鍵盤装置において、前記鍵盤シャーシ上に設けられ、前記複数の鍵をそれぞれ上下方向にガイドする複数の鍵ガイド部と、この複数の鍵ガイド部と前記複数の鍵とのいずれか一方にそれぞれ設けられ、前記複数の鍵を押鍵操作した際に、その押鍵操作された前記鍵に対して摩擦抵抗による負荷を付与する複数の負荷付与部材とを備えていることを特徴とする鍵盤装置である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記負荷付与部材が、前記鍵ガイド部と前記鍵とのいずれか一方に設けられた支持部と、この支持部に設けられて前記鍵が押鍵操作された際にこの押鍵操作された前記鍵およびこれに対応する前記鍵ガイド部のいずれか他方との間に生じる摩擦抵抗に応じて弾性変形し、この弾性変形に伴う摩擦抵抗による負荷を前記鍵に対して付与する摩擦変形部とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の鍵盤装置である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、前記支持部が、前記鍵の内部に下側から挿入された状態で前記鍵ガイド部に設けられており、前記摩擦変形部は、前記支持部の上下部に第1、第2の各屈曲部を介して斜め上方に向けて延びた状態で設けられた第1、第2の各アーム部と、この第1、第2の各アーム部の各先端部にそれぞれ第3の屈曲部を介して上下に張り渡され、前記鍵の内側面に接離可能な状態で接触して摺動する摩擦アーム部とを備えていることを特徴とする請求項2に記載の鍵盤装置である。
【0009】
請求項4に記載の発明は、前記支持部が、前記鍵ガイド部内に上側から挿入された状態で前記鍵の内部に設けられており、前記摩擦変形部は、前記支持部の上下部に第1、第2の各屈曲部を介して斜め下方に向けて延びた状態で設けられた第1、第2の各アーム部と、この第1、第2の各アーム部の各先端部にそれぞれ第3の屈曲部を介して上下に張り渡され、前記鍵ガイド部の内側面に接離可能な状態で接触して摺動する摩擦アーム部とを備えていることを特徴とする請求項2に記載の鍵盤装置である。
【0010】
請求項5に記載の発明は、前記負荷付与部材が、前記鍵を押鍵操作して前記摩擦変形部が弾性変形した際に、その弾性変形状態を規制する変形規制部を備えていることを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれかに記載の鍵盤装置である。
【0011】
請求項6に記載の発明は、前記鍵ガイド部および前記鍵のいずれか一方と前記負荷付与部材との間に、粘性を有する潤滑剤が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の鍵盤装置である。
【0012】
請求項7に記載の発明は、前記鍵ガイド部が前記鍵盤シャーシに一体に形成されており、前記複数の負荷付与部材は前記鍵ガイド部と前記鍵とのいずれか一方に一体に形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の鍵盤装置である。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、鍵を押鍵操作した際に、その押鍵操作された鍵に対して負荷付与部材が摩擦抵抗による負荷を付与して鍵荷重を重くすることができる。このため、ハンマー部材を用いずに、押鍵操作時に鍵に負荷を付与して鍵タッチを重くすることができるので、アコースティックピアノに近似した鍵タッチ感を得ることができると共に、装置全体の重量を大幅に軽くすることができ、これにより持ち運びに便利なものを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明を鍵盤楽器に適用した実施形態1を示した断面図である。
【図2】図1に示された鍵盤楽器のA−A矢視における鍵ガイド部の要部を示した拡大断面図である。
【図3】図2に示された鍵ガイド部の負荷付与部材において、鍵が押鍵操作されて摩擦変形部が鍵との間の摩擦抵抗によって弾性変形した状態を示した要部の拡大断面図である。
【図4】図3に示された鍵ガイド部の負荷付与部材において、鍵が更に押し下げられて鍵が摩擦変形部に対して摺動した状態を示した要部の拡大断面図である。
【図5】図1に示された鍵盤楽器における鍵ストロークと鍵荷重との特性を示した図である。
【図6】この発明を鍵盤楽器に適用した実施形態2において、鍵ガイド部の要部を示した拡大断面図である。
【図7】図6に示された鍵ガイド部の負荷付与部材において、鍵が押鍵操作されて摩擦変形部が鍵の摩擦突起部との間の摩擦抵抗によって弾性変形した状態を示した要部の拡大断面図である。
【図8】図7に示された鍵ガイド部の負荷付与部材において、鍵が更に押し下げられて鍵の摩擦突起部が摩擦変形部に対して摺動した状態を示した要部の拡大断面図である。
【図9】この発明を鍵盤楽器に適用した実施形態3を示した断面図である。
【図10】図9に示された鍵盤楽器のB−B矢視における鍵ガイド部の要部を示した拡大断面図である。
【図11】図10に示された鍵ガイド部の負荷付与部材において、鍵が押鍵操作されて摩擦変形部が鍵ガイド部との間の摩擦抵抗によって弾性変形した状態を示した要部の拡大断面図である。
【図12】図11に示された鍵ガイド部の負荷付与部材において、鍵が更に押し下げられて鍵の摩擦変形部が鍵ガイド部に対して摺動した状態を示した要部の拡大断面図である。
【図13】この発明を鍵盤楽器に適用した実施形態4において、鍵ガイド部の要部を示した拡大断面図である。
【図14】図13に示された鍵ガイド部の負荷付与部材において、鍵が押鍵操作されて摩擦変形部が鍵との間の摩擦抵抗によって弾性変形した状態を示した要部の拡大断面図である。
【図15】図14に示された鍵ガイド部の負荷付与部材において、鍵が更に押し下げられて鍵が摩擦変形部に対して摺動した状態を示した要部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態1)
以下、図1〜図5を参照して、この発明を鍵盤楽器に適用した実施形態1について説明する。
この鍵盤楽器は、図1に示すように、楽器ケース1を備えている。この楽器ケース1は、下部ケースを兼ねる鍵盤シャーシ2と、この鍵盤シャーシ2の後側上部(図1では右側上部)に設けられた上部ケース3とで構成されている。
【0016】
この楽器ケース1の内部には、図1に示すように、鍵盤部4が上方に露呈した状態で配置されている。また、この鍵盤部4の後方(図1では右側)に位置する楽器ケース1の内部には、回路基板5やスピーカ(図示せず)などの楽器に必要な各種の電子部品が設けられている。鍵盤部4は、合成樹脂からなる複数の鍵6を備えている。この複数の鍵6は、図1に示すように、白鍵7と黒鍵8とを有し、鍵盤シャーシ2上に上下方向に回転可能に取り付けられた状態で並列に配列されている。
【0017】
この場合、複数の鍵6のうち、複数の白鍵7は、図1に示すように、その各後端部(図1では右端部)に上下方向に撓み変形する薄肉の屈曲部7aがそれぞれ形成され、この薄肉の屈曲部7aが鍵6の配列方向(図1では紙面の表裏面方向)に連続する共通支持部7bにそれぞれ連結されていることにより、この共通支持部7bに連結された各屈曲部7aによってそれぞれ上下方向に変位可能な状態で、鍵6の配列方向に沿って並列に配列されている。
【0018】
また、複数の黒鍵8は、図1に示すように、その各後端部(図1では右端部)に上下方向に撓み変形する薄肉の屈曲部8aがそれぞれ形成され、この薄肉の屈曲部8aが鍵6の配列方向(図1では紙面の表裏面方向)に連続する共通支持部8bにそれぞれ連結されていることにより、この共通支持部8bに連結された各屈曲部8aによってそれぞれ上下方向に変位可能な状態で、鍵6の配列方向に沿って並列に配列されている。
【0019】
これにより、複数の鍵6は、図1に示すように、複数の白鍵7の各間に複数の黒鍵8をそれぞれ配置して、白鍵7の共通支持部7bと黒鍵8の共通支持部8bとを重ね合わせ、この状態で各共通支持部7b、8bを鍵盤シャーシ2上に複数のビス9によって取り付けることにより、各白鍵7がそれぞれ屈曲部7aを中心に上下方向に回転すると共に、各黒鍵8がそれぞれ屈曲部8aを中心に上下方向に回転するように構成されている。
【0020】
一方、鍵盤シャーシ2は、図1に示すように、楽器ケース1の下部ケースを兼ねるものであり、合成樹脂によって形成されている。この鍵盤シャーシ2の前端部(図1では左端部)には、鍵6の前端面に対応する前カバー部10が底部から上方に突出して形成されている。この前カバー部10の後部側(図1では右側)に位置する鍵盤シャーシ2の箇所には、白鍵7を上下方向にガイドするための後述する鍵ガイド部11が上方に突出して形成されている。
【0021】
また、この鍵盤シャーシ2における白鍵用の鍵ガイド部11の後部側(図1では右側)に位置する箇所には、各鍵6の上下位置を規制する鍵位置規制部12が形成されている。この鍵位置規制部12は、鍵ガイド部11の後側下部(図1では右下部)から斜め上方に向けて延び、この斜め上方に延びた上端部から後方(図1では右側)に向けて水平に延び、この延びた後端部(図1では右端部)から垂下され、この垂下された下端部から更に後方(図1では右側)に向けて水平に延びた構成であることにより、全体がほぼ山形の形状に形成されている。
【0022】
この場合、鍵位置規制部12における垂下された部分には、図1に示すように、開口部12aが形成されている。また、この開口部12aの上部における前側(図1では左側)に位置する水平な部分の下面には、上限ストッパ部12bが設けられている。さらに、開口部12aの下部における後側(図1では右側)に位置する水平な部分の上面には、下限ストッパ部12cが設けられている。
【0023】
これにより、鍵位置規制部12は、図1に示すように、白鍵7および黒鍵8の各鍵6にその下側に突出して形成された鍵突起部13の下部から前側(図1では左側)に向けて突出したフック部13aが、開口部12a内に上下方向に移動可能に挿入され、この状態で鍵6が押鍵操作されると、鍵突起部13のフック部13aが開口部12a内を下側に移動して下限ストッパ部12cに上方から当接することにより、鍵6を下限位置に規制するように構成されている。
【0024】
また、この鍵位置規制部12は、図1に示す状態で押鍵操作された鍵6が初期位置(図1に示す状態)に戻る際に、鍵突起部13のフック部13aが開口部12a内を上側に移動して上限ストッパ部12bに下側から当接することにより、鍵6を初期位置である上限位置に規制するように構成されている。
【0025】
この鍵位置規制部12の後部(図1では右側)に位置する鍵盤シャーシ2の箇所には、図1に示すように、白鍵7の場合と同様、黒鍵8を上下方向にガイドする後述する鍵ガイド部11が上方に突出して形成されている。この黒鍵用の鍵ガイド部11の後部側に位置する鍵盤シャーシ2の箇所には、スイッチ基板14を搭載するための基板搭載部15が形成されている。この場合、スイッチ基板14は、複数の鍵6の配列方向に沿って連続する帯板状に形成されている。
【0026】
このスイッチ基板14上には、図1に示すように、複数のスイッチ部16が各鍵6にそれぞれ対応して設けられている。この複数のスイッチ部16は、スイッチ基板14上に配置されて鍵6の配列方向に沿って連続するゴムシート16aを備えている。このゴムシート16aには、ドーム状の膨出部16bが各鍵6にそれぞれ対応して設けられている。このドーム状の膨出部16b内には、可動接点(図示せず)がスイッチ基板14上にそれぞれ設けられた各固定接点(図示せず)に接離可能な状態で対応して設けられている。
【0027】
これにより、スイッチ部16は、鍵6にそれぞれ形成されたスイッチ押圧部17によってドーム状の膨出部16bが上方から押圧されると、この押圧された膨出部16bが弾性変形して、その内部に設けられた可動接点がスイッチ基板14上の固定接点に接触することにより、押鍵操作された鍵6に対応するスイッチ信号を出力するように構成されている。
【0028】
さらに、このスイッチ部16が搭載された基板搭載部15の後部側に位置する鍵盤シャーシ2の箇所には、図1に示すように、鍵支持部18が底部から上方に向けて突出して形成されている。この鍵支持部18は、図1に示すように、複数の鍵6における複数の白鍵7の各間に複数の黒鍵8が配置されて、白鍵7の共通支持部7bと黒鍵8の共通支持部8bとが重ね合わされ、この状態で各共通支持部7b、8bが複数のビス9によって取り付けられるように構成されている。
【0029】
また、上部ケース3は、図1に示すように、鍵盤部4の後部(図1では右側部)、つまり各鍵6の屈曲部7a、8aおよび共通支持部7b、8bを覆って鍵盤シャーシ2の後側上部に取り付けられている。すなわち、この上部ケース3は、その内面に取付ボス3aが設けられ、この取付ボス3aが鍵盤シャーシ2の後部に位置する底部に起立して設けられた支持ボス2aにビス(図示せず)によって取り付けられることにより、鍵盤シャーシ2の後側上部に取り付けられている。この上部ケース3の内面には、回路基板5が取り付けられている。
【0030】
ところで、複数の鍵6をそれぞれ上下方向にガイドする複数の鍵ガイド部11は、図1および図2に示すように、それぞれ全体がほぼ平板状をなし、鍵盤シャーシ2上に起立した状態で一体に形成されている。すなわち、この鍵ガイド部11は、図2に示すように、鍵6の配列方向(図2では左右方向)における長さ(幅L)が、これと同じ方向における鍵6の内部間の長さとほぼ同じか、それよりも少し短く形成されている。
【0031】
この鍵ガイド部11には、図2〜図4に示すように、鍵6を押鍵操作した際に、その押鍵操作された鍵6に対して摩擦抵抗による負荷を付与する負荷付与部材20がそれぞれ設けられている。この負荷付与部材20は、ポリプロピレンなどの合成樹脂からなり、鍵ガイド部11に設けられたベース部21と、このベース部21に設けられた柱状の支持部22と、この支持部22に設けられた一対の摩擦変形部23とを備えている。
【0032】
ベース部21は、図2に示すように、鍵ガイド部11の上部に起立した状態で一体に形成されている。柱状の支持部22は、ベース部21の中心部上に起立して鍵6の内部に挿入する状態で一体に形成されている。一対の摩擦変形部23は、図2〜図4に示すように、鍵6が押鍵操作された際にこの押鍵操作された鍵6との間に生じる摩擦抵抗に応じて弾性変形し、この弾性変形に伴う摩擦抵抗による負荷を鍵6に対して付与するように構成されている。
【0033】
すなわち、この摩擦変形部23は、図2に示すように、支持部22の上下部に第1、第2の各屈曲部24a、25aを介して斜め上方に向けて延びた状態で設けられた第1、第2の各アーム部24、25と、この第1、第2の各アーム部24、25の各先端部にそれぞれ第3の屈曲部26aを介して上下に張り渡された摩擦アーム部26とを備えている。
【0034】
第1のアーム部24は、図2に示すように、支持部22の上端部から鍵6の内側面6aに向けて斜め上方に延びた状態で、第1の屈曲部24aを介して支持部22に一体に形成されている。第2のアーム部25は、支持部22の下端部から鍵6の内側面6aに向けて斜め上方に延びた状態で、第2の屈曲部25aを介して支持部22に一体に形成されている。
【0035】
この場合、第2のアーム部25は、図2に示すように、第1のアーム部24と同じ長さで、且つ第1のアーム部24と平行に形成されている。また、第1、第2の各屈曲部24a、25aは、肉厚の薄い薄肉部に形成された樹脂ヒンジ部であり、図2〜図4に示すように、それぞれ屈曲変形することにより、第1、第2の各アーム部24、25を上下方向に回転変位させるように構成されている。
【0036】
また、摩擦アーム部26は、図2に示すように、その上部が第3の屈曲部26aを介して第1のアーム部24の先端部に一体に形成されていると共に、下部が第3の屈曲部26aを介して第2のアーム部25の先端部に一体に形成されていることにより、鍵6の内側面6aと平行な状態で上下方向に張り渡されている。
【0037】
この摩擦アーム部26は、図2〜図4に示すように、鍵6が押鍵操作された際に鍵6の内側面6aに接離可能に接触することにより、押鍵操作された鍵6の内側面6aとの間に摩擦抵抗が発生するように構成されている。また、この第3の各屈曲部26aも、肉厚の薄い薄肉部に形成された樹脂ヒンジ部であり、図2〜図4に示すように、それぞれ屈曲変形することにより、摩擦アーム部26を鍵6の内側面6aに沿って上下方向に変位させるように構成されている。
【0038】
これにより、摩擦変形部23は、図2に示すように、全体が平行四辺形をなすリンク形状に形成されていると共に、支持部22を中心にその左右両側に線対称な状態で形成されている。このため、この摩擦変形部23は、図2〜図4に示すように、鍵6が押鍵操作された際に、摩擦アーム部26が鍵6の内側面6aに接離可能な状態で接触しながら摺動することにより、押鍵操作された鍵6の内側面6aとの間に摩擦抵抗を発生させるように構成されている。
【0039】
また、この摩擦変形部23は、図2〜図4に示すように、鍵6が押鍵操作されて鍵6の内側面6aとの間に摩擦抵抗が発生した際に、その摩擦抵抗によって第1、第2の各アーム部24、25が第1、第2の各屈曲部24a、25aを中心にそれぞれ下側に回転変位し、この第1、第2の各アーム部24、25の回転変位に伴って摩擦アーム部26が鍵6の内側面6aに押し付けられることにより、摩擦抵抗が増大するように構成されている。
【0040】
一方、このような負荷付与部材20は、図2〜図4に示すように、鍵6が押鍵操作されて一対の摩擦変形部23が弾性変形した際に、その弾性変形状態を規制する一対の変形規制部27を備えている。この一対の変形規制部27は、支持部22の両側に位置するベース部21の上部にそれぞれ鍵6の内側面6aに向けて斜め上方に緩やかに傾斜して設けられている。
【0041】
これにより、この変形規制部27は、図3に示すように、鍵6が押鍵操作されて摩擦変形部23の第2のアーム部25が下側に回転変位した際に、第2のアーム部25が上方から当接して、第1、第2の各アーム部24、25の下側への回転変位を規制することにより、摩擦変形部23の弾性変形を規制するように構成されている。
【0042】
また、この負荷付与部材20と鍵6の内側面6aとの間には、図2〜図4に示すように、粘性を有する潤滑剤28が設けられている。この潤滑剤28は、粘性を有する液状、またはゲル状(ゼリー状)のものであり、押鍵操作した際における鍵タッチ感に合う最適な粘性を有し、負荷付与部材20における摩擦変形部23の摩擦アーム部26と鍵6の内側面6aとの間に塗布されている。
【0043】
この潤滑剤28は、図2および図3に示すように、鍵6が押鍵操作されて押し下げられる際に、鍵6の内側面6aと共に下側に移動する潤滑剤28の粘性によって、摩擦変形部23の摩擦アーム部26を引き下げながら第1、第2の各アーム部24、25を下側に回転変位させることにより、摩擦アーム部26を鍵6の内側面6aに接触させて摩擦抵抗を発生させるように構成されている。
【0044】
また、この潤滑剤28は、図3に示すように、鍵6が押鍵操作されて摩擦変形部23の第2のアーム部25が変形規制部27に当接した際に、摩擦アーム部26と鍵6の内側面6aとを相対的に滑らせながら摺動させるように構成されている。さらに、この潤滑剤28は、図4に示すように、鍵6が押鍵操作されて下限ストッパ部12cによって下限位置に規制された際に、摩擦アーム部26と鍵6の内側面6aとが相対的に滑ることにより、摩擦変形部23の摩擦アーム部26と鍵6の内側面6aとの間に発生した摩擦抵抗を、軽減もしくは解除し、摩擦変形部23を図2に示す元の状態に戻すように構成されている。
【0045】
次に、このような鍵盤楽器において負荷付与部材20を成形用金型で成形する場合について説明する。
この成形方法には、2通りの方法があり、1つの方法は負荷付与部材20を鍵盤シャーシ2と同じ材料で同時に一体成形する方法であり、他の方法は負荷付与部材20と鍵盤シャーシ2とを異なる材料で2色成形する方法である。
【0046】
前者の方法は、予め、鍵盤シャーシ2を成形するための上金型と下金型とからなる成形用金型内に、スライドコアを用いて、負荷付与部材20を形成するための空洞部(キャビティ)を形成する。そして、この成形用金型内にポリプロピレンなどの合成樹脂を射出する。この後、成形用金型を離型する際には、スライドコアを成形用金型内から引き抜く。これにより、負荷付与部材20が鍵盤シャーシ2と同じ材料で同時に成形される。
【0047】
また、後者の方法は、予め負荷付与部材20と異なる合成樹脂で鍵盤シャーシ2を上金型と下金型とからなる一次成形用金型で成形する。この一次成形用金型で成形された鍵盤シャーシ2を上金型と下金型とからなる二次成形用金型内に配置して負荷付与部材20を成形する。
【0048】
このときには、二次成形用金型内に、スライドコアを用いて、負荷付与部材20を形成するための空洞部(キャビティ)を形成する。この二次成形用金型内にポリプロピレンなどの合成樹脂を射出する。この後、二次成形用金型を離型する際には、スライドコアを二次成形用金型内から引き抜く。これにより、負荷付与部材20が鍵盤シャーシ2と異なる材料で2色成形される。
【0049】
次に、このような鍵盤楽器で複数の鍵6を押鍵操作して演奏する場合にいて説明する。
図1において、複数の鍵6のうち、白鍵7を押鍵操作すると、白鍵7が屈曲部7aを中心に反時計回りに回転する。また、複数の鍵6のうち、黒鍵8を押鍵操作すると、黒鍵8が屈曲部8aを中心に反時計回りに回転する。このように鍵6が押鍵操作されて図1において反時計回りに回転すると、鍵6のスイッチ押圧部17がスイッチ基板14上のスイッチ部16を押圧し、この押圧されたスイッチ部16がスイッチ信号を出力する。これにより、楽音が発音される。
【0050】
このように鍵6が押鍵操作されて図1において反時計回りに回転するときには、図3に示すように、負荷付与部材20の一対の摩擦変形部23が弾性変形して、鍵6に対して負荷を付与する。すなわち、鍵6が押鍵操作されて押し下げられる際には、鍵6の内側面6aと共に下側に移動する潤滑剤28の粘性によって、摩擦変形部23の摩擦アーム部26が引き下げながら第1、第2の各アーム部24、25が下側に回転変位する。
【0051】
これにより、図3に示すように、摩擦アーム部26が鍵6の内側面6aに押し付けられるので、摩擦変形部23と鍵6の内側面6aとの間に摩擦抵抗が発生し、この摩擦抵抗によって鍵6に負荷が付与され、鍵荷重が重くなる。このときには、鍵6の荷重が、図5に曲線Aで示すように、急激に上昇し、鍵タッチが重くなる。
【0052】
そして、鍵6が更に押し下げられて、摩擦変形部23の第2のアーム部25が鍵6の内側面6aと共に下側に回転変位すると、図3に示すように、第2のアーム部25が変形規制部27に上方から当接して、摩擦変形部23の弾性変形が規制される。この状態で、鍵6が更に押し下げられると、第2のアーム部25の下側への回転変位が変形規制部27に規制されているので、図3および図4に示すように、摩擦アーム部26と鍵6の内側面6aとの間に介在された潤滑剤8によって、鍵6の内側面6aが摩擦アーム部26に対して相対的に滑りながら摺動する。
【0053】
このため、このときには、図5に直線Bで示すように、鍵6が下側に押し下げられても、その鍵6の荷重はほとんど変化しない。この状態で、更に鍵6が押し下げられると、鍵6に設けられた鍵突起部13のフック部13aが鍵盤シャーシ2の下限ストッパ部12cに当接するので、図5に曲線Cで示すように、鍵6の荷重が再び急激に上昇し、鍵タッチが更に重くなる。
【0054】
この後、鍵2は、図1に示すスイッチ部16の膨出部16bの弾性復帰力および鍵6の屈曲部7a、8aの弾性復帰力とによって初期位置に戻る。このときには、摩擦変形部23の摩擦アーム部26と鍵6の内側面6aとの間に発生した摩擦抵抗が潤滑剤28によって、軽減もしくは解除されているので、図4に示すように、摩擦変形部23が図2に示す元の形状に戻る。
【0055】
このため、摩擦変形部23は、図4および図5に示すように、摩擦抵抗による負荷を鍵6に対して付与することがなく、スイッチ部16の膨出部16bの弾性復帰力および鍵6の屈曲部7a、8aの弾性復帰力によって、鍵6が円滑に且つスムーズに上方に回転移動する。このときには、鍵6の荷重が、図5に曲線Dで示すように、急激に低下して、初期状態の鍵荷重に戻る。
【0056】
この状態で、更に鍵6が上方に移動すると、図1に示すように、スイッチ部16がスイッチ押圧部17を押し上げて初期状態に戻り、スイッチ部16の膨出部16b内の可動接点がスイッチ基板14の固定接点から上方に離れるので、スイッチ部16がオフになり、楽音の発音が停止される。この後、鍵6に設けられた鍵突起部13のフック部13aが鍵盤シャーシ2の上限ストッパ部12bに当接して、鍵6が初期位置に規制される。
【0057】
このように、この鍵盤楽器によれば、複数の鍵6が上下方向に回転可能に取り付けられた状態で並列に配列された鍵盤シャーシ2上に設けられ、複数の鍵6をそれぞれ上下方向にガイドする複数の鍵ガイド部11と、この複数の鍵ガイド部11にそれぞれ設けられ、複数の鍵6を押鍵操作した際に、その押鍵操作された鍵6に対して摩擦抵抗による負荷を付与する複数の負荷付与部材20とを備えていることにより、鍵6を押鍵操作した際に、その押鍵操作された鍵6に対し負荷付与部材20が摩擦抵抗による負荷を付与して鍵荷重を重くすることができる。
【0058】
このため、このような鍵盤楽器では、従来例のようなハンマー部材を用いなくても、押鍵操作時に鍵6に負荷を付与して鍵タッチを確実に重くすることができるので、アコースティックピアノに近似した鍵タッチ感を得ることができる。また、従来例のように重量の重いハンマー部材を用いる必要がないので、楽器全体の重量を大幅に軽くすることができ、これにより手軽に鍵盤楽器を持ち運ぶことができると共に、低価格なものを提供することができる。
【0059】
この場合、負荷付与部材20は、鍵ガイド部11に設けられた支持部22と、この支持部22に設けられて鍵6が押鍵操作された際にこの押鍵操作された鍵6との間に生じる摩擦抵抗に応じて弾性変形し、この弾性変形に伴う摩擦抵抗による負荷を鍵6に対して付与する一対の摩擦変形部23とを備えていることにより、鍵6が押鍵操作されると、鍵6と一対の摩擦変形部23との間に摩擦抵抗が発生し、この摩擦抵抗によって一対の摩擦変形部23を弾性変形させることができ、この一対の摩擦変形部23の弾性変形によって摩擦抵抗を増大させることができるので、鍵荷重を確実に重くすることができる。
【0060】
また、支持部22は、鍵6の内部に下側から挿入された状態で鍵ガイド部11に設けられており、摩擦変形部23は、支持部22の上下部に第1、第2の各屈曲部24a、25aを介して斜め上方に向けて延びた状態で設けられた第1、第2の各アーム部24、25と、この第1、第2の各アーム部24、25の各先端部にそれぞれ第3の屈曲部26aを介して上下に張り渡され、鍵6の内側面6aに接離可能な状態で接触して摺動する摩擦アーム部26とを備えているので、鍵6が押鍵操作されて押し下げられる際に、摩擦アーム部26を鍵6の内側面6aに確実に押し付けることができ、この押し付けに伴う負荷を鍵6に対して確実に付与することができる。
【0061】
すなわち、鍵6が押鍵操作されて押し下げられる際には、鍵6の内側面6aと摩擦アーム部26との間に摩擦抵抗が発生し、この摩擦抵抗によって第1、第2の各屈曲部24a、25aが屈曲しながら第1、第2の各アーム部24、25を回転変位させて摩擦アーム部26を鍵6の内側面6aに確実に押し付けることができる。このため、鍵6の押し下げに伴って第1、第2の各アーム部24、25の回転変位が徐々に増大するので、鍵6の内側面6aと摩擦アーム部26との間に発生させる摩擦抵抗を増大させることができ、これにより鍵荷重を速やかに重くすることができる。
【0062】
また、負荷付与部材20は、鍵6が押鍵操作されて一対の摩擦変形部23が弾性変形した際に、その弾性変形状態を規制する変形規制部27を備えているので、鍵6が押鍵操作されて摩擦変形部23の第2のアーム部25が下側に回転変位した際に、第2のアーム部25が当接して摩擦変形部23の弾性変形を規制することができる。このため、鍵6が押し下げられて鍵6の内側面6aと摩擦アーム部26との間に発生する摩擦抵抗が増大しても、その摩擦抵抗が一定以上に増大しないように抑制することができ、これにより鍵6の初期位置への復帰を容易にすることができる。
【0063】
この場合、鍵6の内側面6aと負荷付与部材20との間には、粘性を有する潤滑剤28が設けられていることにより、鍵6が押鍵操作されて押し下げられる際に、鍵6の内側面6aと共に下側に移動する潤滑剤28の粘性によって、摩擦変形部23の摩擦アーム部26を引き下げながら第1、第2の各アーム部24、25を下側に回転変位させることができ、これにより摩擦アーム部26を鍵6の内側面6aに接触させて摩擦抵抗を確実に発生させることができる。
【0064】
また、鍵6が押鍵操作されて摩擦変形部23の第2のアーム部25が変形規制部27に当接した際には、潤滑剤28によって摩擦アーム部26と鍵6の内側面6aとを相対的に滑らせながら摺動させることができる。さらに、鍵6が押鍵操作されて下限ストッパ部12cによって下限位置に規制された際には、摩擦アーム部26と鍵6の内側面6aとが相対的に滑ることにより、摩擦変形部23の摩擦アーム部26と鍵6の内側面6aとの間に発生した摩擦抵抗を、軽減もしくは解除することができ、これにより摩擦変形部23を元の形状に容易に戻すことができるので、鍵6が摩擦抵抗の影響をほとんど受けずに、鍵6を初期位置に速やかに且つ良好に復帰させることができる。
【0065】
さらに、鍵ガイド部11は鍵盤シャーシ2に一体に形成されており、複数の負荷付与部材20は鍵ガイド部11に一体に形成されていることにより、複数の鍵6ごとに負荷付与部材20を備えていても、成形用金型によって複数の負荷付与部材20を複数の鍵ガイド部11および鍵盤シャーシ2と共に一度に成形することができる。このため、生産性が良く、またハンマー部材を用いた場合に比べて、部品点数を大幅に削減することができ、これにより組立作業性の向上を図ることができると共に、低価格化をも図ることができる。
【0066】
(実施形態2)
次に、図6〜図8を参照して、この発明を鍵盤楽器に適用した実施形態2について説明する。なお、図1〜図5に示された実施形態1と同一部分には同一符号を付して説明する。
この鍵盤楽器は、図6に示すように、鍵6の押鍵操作時に鍵6に対して負荷を付与する負荷付与部材30が実施形態1と異なる構成であり、これ以外は実施形態1とほぼ同じ構成になっている。
【0067】
この負荷付与部材30は、ポリプロピレンなどの合成樹脂からなり、図6に示すように、鍵ガイド部11に設けられた一対のベース部31と、この一対のベース部31にそれぞれ設けられた一対の支持部32と、この一対の支持部32にそれぞれ設けられた一対の摩擦変形部33とを備えている。一対のベース部31は、実施形態1と同様、鍵ガイド部11の上部に起立した状態でそれぞれ一体に形成されている。
【0068】
一対の支持部32は、一対のベース部31上における鍵6の内側面6aに接近する各端部にそれぞれ起立して鍵6の内部に挿入する状態で一体に形成されている。一対の摩擦変形部33は、実施形態1と同様、鍵6が押鍵操作された際にこの押鍵操作された鍵6との間に生じる摩擦抵抗に応じて弾性変形し、この弾性変形に伴う負荷を鍵6に対して付与するように構成されている。この場合、負荷付与部材30に対応する箇所における鍵6内の中心部には、柱状の摩擦突起部34が垂下されている。
【0069】
摩擦変形部33は、図6に示すように、一対の支持部32の上下部に第1、第2の各屈曲部24a、25aを介して鍵6の摩擦突起部34に向けて斜め上方に延びた状態で設けられた第1、第2の各アーム部24、25と、この第1、第2の各アーム部24、25の各先端部にそれぞれ第3の屈曲部26aを介して上下に張り渡された摩擦アーム部26とを備えている。
【0070】
第1のアーム部24は、図6に示すように、一対の支持部32の各上端部から鍵6の摩擦突起部34に向けて斜め上方に延びた状態で、第1の屈曲部24aを介して一対の支持部32にそれぞれ一体に形成されている。第2のアーム部25は、一対の支持部32の下端部から鍵6の摩擦突起部34に向けて斜め上方に延びた状態で、第2の屈曲部25aを介して一対の支持部32にそれぞれ一体に形成されている。
【0071】
この場合においても、第2のアーム部25は、図6に示すように、第1のアーム部24と同じ長さで、且つ第1のアーム部24と平行に形成されている。また、第1、第2の各屈曲部24a、25aは、実施形態1と同様、肉厚の薄い薄肉部に形成された樹脂ヒンジ部であり、図6〜図8に示すように、それぞれ屈曲変形することにより、第1、第2の各アーム部24、25を上下方向に回転変位させるように構成されている。
【0072】
また、摩擦アーム部26は、図6に示すように、その上部が第3の屈曲部26aを介して第1のアーム部24の先端部に一体に形成されていると共に、下部が第3の屈曲部26aを介して第2のアーム部25の先端部に一体に形成されていることにより、鍵6の摩擦突起部34と平行な状態で上下方向に張り渡されている。
【0073】
この摩擦アーム部26は、図6〜図8に示すように、鍵6が押鍵操作された際に鍵6の摩擦突起部34に接離可能な状態で接触して摺動することにより、押鍵操作された鍵6の摩擦突起部34との間に摩擦抵抗が発生するように構成されている。また、この第3の各屈曲部26aも、肉厚の薄い薄肉部に形成された樹脂ヒンジ部であり、図6〜図8に示すように、それぞれ屈曲変形することにより、摩擦アーム部26を鍵6の摩擦突起部34に沿って上下方向に変位させるように構成されている。
【0074】
これにより、摩擦変形部33は、図6に示すように、全体が平行四辺形をなすリンク形状に形成されていると共に、鍵6の摩擦突起部34を中心として一対の支持部32と共に線対称な状態で形成されている。このため、この摩擦変形部33は、図6〜図8に示すように、鍵6が押鍵操作された際に、摩擦アーム部26が鍵6の摩擦突起部34に接離可能な状態で接触しながら摺動することにより、押鍵操作された鍵6の摩擦突起部34との間に摩擦抵抗が発生するように構成されている。
【0075】
また、この摩擦変形部33は、図6および図7に示すように、鍵6が押鍵操作されて鍵6の摩擦突起部34との間に摩擦抵抗が発生した際に、その摩擦抵抗によって第1、第2の各アーム部24、25が第1、第2の各屈曲部24a、25aを中心にそれぞれ下側に回転変位し、この第1、第2の各アーム部24、25の回転変位に伴って摩擦アーム部26が鍵6の摩擦突起部34に押し付けられることにより、摩擦抵抗が増大するように構成されている。
【0076】
一方、この負荷付与部材30においても、図6〜図8に示すように、鍵6が押鍵操作されて一対の摩擦変形部33が弾性変形した際に、その弾性変形状態を規制する一対の変形規制部35を備えている。この一対の変形規制部35は、一対の支持部32の間に位置する各ベース部31の上部にそれぞれ摩擦突起部34に向けて斜め上方に緩やかに傾斜して設けられている。この変形規制部35も、実施形態1と同様、鍵6が押鍵操作されて摩擦変形部33の第2のアーム部25が下側に回転変位した際に、第2のアーム部25が上方から当接することにより、摩擦変形部33の弾性変形を規制するように構成されている。
【0077】
また、この負荷付与部材30と鍵6の摩擦突起部34との間にも、実施形態1と同様、粘性を有する潤滑剤28が設けられている。この潤滑剤28も、粘性を有する液状、またはゲル状(ゼリー状)のものであり、押鍵操作した際における鍵タッチ感に合う最適な粘性を有し、負荷付与部材30における摩擦変形部33の摩擦アーム部26と鍵6の摩擦突起部34との間に塗布されている。
【0078】
この潤滑剤28は、図6に示すように、鍵6が押鍵操作されて押し下げられる際に、鍵6の摩擦突起部34と共に下側に移動する潤滑剤28の粘性によって、摩擦変形部33の摩擦アーム部26を引き下げながら第1、第2の各アーム部24、25を下側に回転変位させることにより、摩擦アーム部26を鍵6の摩擦突起部34に接触させて摩擦抵抗を発生させるように構成されている。
【0079】
また、この潤滑剤28は、図7に示すように、鍵6が押鍵操作されて摩擦変形部33の第2のアーム部25が変形規制部35に当接した際に、摩擦アーム部26と鍵6の摩擦突起部34とを相対的に滑らせながら摺動させるように構成されている。さらに、この潤滑剤28は、図8に示すように、鍵6が押鍵操作されて下限ストッパ部12cによって下限位置に規制された際に、摩擦アーム部26と鍵6の摩擦突起部34とが相対的に滑ることにより、摩擦変形部33の摩擦アーム部26と鍵6の摩擦突起部34との間に発生した摩擦抵抗を、軽減もしくは解除し、摩擦変形部33を図6に示す元の形状に戻すように構成されている。
【0080】
このような鍵盤楽器において、負荷付与部材30を成形用金型で成形する場合には、実施形態1と同様、上金型と下金型とからなる成形用金型、およびスライドコアを用いて、複数の鍵ガイド部11および鍵盤シャーシ2と一体に成形することができる。また、この鍵盤楽器で演奏する場合にも、実施形態1と同様、鍵6を押鍵操作することにより演奏することができる。すなわち、鍵6が押鍵操作されて図1において反時計回りに回転すると、鍵6のスイッチ押圧部17がスイッチ基板14上のスイッチ部16を押圧し、この押圧されたスイッチ部16がスイッチ信号を出力する。これにより、楽音が発音される。
【0081】
このように鍵6が押鍵操作されて図1において反時計回りに回転するときには、図7に示すように、負荷付与部材30の一対の摩擦変形部33が鍵6の摩擦突起部34によって弾性変形して、鍵6に負荷を付与する。すなわち、鍵6が押鍵操作されて押し下げられる際には、鍵6の摩擦突起部34と共に下側に移動する潤滑剤28の粘性によって、摩擦変形部33の摩擦アーム部26が引き下げながら第1、第2の各アーム部24、25を下側に回転変位させる。
【0082】
これにより、図7に示すように、摩擦アーム部26が鍵6の摩擦突起部34に押し付けられるので、摩擦変形部33と鍵6の摩擦突起部34との間に摩擦抵抗が発生し、この摩擦抵抗によって鍵6に対して負荷が付与され、鍵荷重が重くなる。このときには、鍵6の荷重が、図5に曲線Aで示したように、急激に上昇し、鍵タッチが重くなる。
【0083】
そして、鍵6が更に押し下げられて、摩擦変形部33の第2のアーム部25が鍵6の摩擦突起部34と共に下側に回転変位すると、図7に示すように、第2のアーム部25が変形規制部35に上方から当接して、摩擦変形部33の弾性変形が規制される。この状態で、鍵6が更に押し下げられると、第2のアーム部25の下側への回転変位が変形規制部35に規制されているので、摩擦アーム部26と鍵6の摩擦突起部34との間に介在された潤滑剤28によって、図8に示すように、鍵6の摩擦突起部34が摩擦アーム部26に対して相対的に滑りながら摺動する。
【0084】
このため、このときには、図5に直線Bで示したように、鍵6が下側に押し下げられても、その鍵6の荷重はほとんど変化しない。この状態で、更に鍵6が押し下げられると、鍵6に設けられた鍵突起部13のフック部13aが鍵盤シャーシ2の下限ストッパ部12cに当接するので、図5に曲線Cで示したように、鍵6の荷重が再び急激に上昇し、鍵タッチが更に重くなる。
【0085】
この後、鍵2は、図1に示したスイッチ部16の膨出部16bの弾性復帰力および鍵6の屈曲部7a、8aの弾性復帰力とによって、初期位置に戻る。このときには、摩擦変形部33の摩擦アーム部26と鍵6の摩擦突起部34との間に発生した摩擦抵抗が潤滑剤28によって、軽減もしくは解除されているので、図8に示すように、摩擦変形部33が図6に示す元の形状に戻る。
【0086】
このため、摩擦変形部33は、摩擦抵抗による負荷を鍵6に対して付与することがなく、スイッチ部16の膨出部16bの弾性復帰力および鍵6の屈曲部7a、8aの弾性復帰力によって、鍵6が円滑に且つスムーズに上方に回転移動する。このときには、鍵6の荷重が、図5に曲線Dで示したように、急激に低下して、初期状態の鍵荷重に戻る。
【0087】
この状態で、更に鍵6が上方に移動すると、実施形態1と同様、スイッチ部16がスイッチ押圧部17を押し上げて初期状態に戻り、スイッチ部16の膨出部16b内の可動接点がスイッチ基板14の固定接点から上方に離れるので、スイッチ部16がオフになり、楽音の発音が停止される。この後、鍵6に設けられた鍵突起部13のフック部13aが鍵盤シャーシ2の上限ストッパ部12bに当接して、鍵6が初期位置に規制される。
【0088】
このように、この鍵盤楽器においても、複数の鍵6が上下方向に回転可能に取り付けられた状態で並列に配列された鍵盤シャーシ2上に設けられ、複数の鍵6をそれぞれ上下方向にガイドする複数の鍵ガイド部11と、この複数の鍵ガイド部11にそれぞれ設けられ、複数の鍵6を押鍵操作した際に、その押鍵操作された鍵6に対して摩擦抵抗による負荷を付与する複数の負荷付与部材30とを備えていることにより、実施形態1と同様、鍵6を押鍵操作した際に、その押鍵操作された鍵6に対し負荷付与部材30が摩擦抵抗による負荷を付与して鍵荷重を重くすることができる。
【0089】
このため、このような鍵盤楽器でも、実施形態1と同様、従来例のようなハンマー部材を用いなくても、押鍵操作時に鍵6に負荷を付与して鍵タッチを確実に重くすることができるので、アコースティックピアノに近似した鍵タッチ感を得ることができる。また、従来例のように重量の重いハンマー部材を用いる必要がないので、楽器全体の重量を大幅に軽くすることができ、これにより手軽に鍵盤楽器を持ち運ぶことができると共に、低価格なものを提供することができる。
【0090】
この場合、負荷付与部材30は、鍵ガイド部11に設けられた一対の支持部32と、この一対の支持部32にそれぞれ設けられて鍵6が押鍵操作された際にこの押鍵操作された鍵6の摩擦突起部34との間に生じる摩擦抵抗に応じて弾性変形し、この弾性変形に伴う負荷を鍵6に対して付与する一対の摩擦変形部33とを備えていることにより、鍵6が押鍵操作されると、鍵6と一対の摩擦変形部33との間に摩擦抵抗が発生し、この摩擦抵抗によって一対の摩擦変形部33を弾性変形させることができ、この一対の摩擦変形部33の弾性変形によって、摩擦抵抗を増大させることができるので、鍵荷重を確実に重くすることができる。
【0091】
また、一対の支持部32は、鍵6の内部に下側から挿入された状態で鍵ガイド部11に設けられており、摩擦変形部33は、一対の支持部32の上下部に第1、第2の各屈曲部24a、25aを介して斜め上方に向けて延びた状態で設けられた第1、第2の各アーム部24、25と、この第1、第2の各アーム部24、25の各先端部にそれぞれ第3の屈曲部26aを介して上下に張り渡され、鍵6の摩擦突起部34に接離可能な状態で接触して摺動する摩擦アーム部26とを備えているので、実施形態1と同様、鍵6が押鍵操作されて押し下げられる際に、摩擦アーム部26を鍵6の摩擦突起部34に確実に押し付けることができ、この押し付けに伴う負荷を鍵6に対して確実に付与することができる。
【0092】
すなわち、鍵6が押鍵操作されて押し下げられる際には、鍵6の摩擦突起部34と摩擦アーム部26との間に摩擦抵抗が発生し、この摩擦抵抗によって第1、第2の各屈曲部24a、25aが屈曲しながら第1、第2の各アーム部24、25を回転変位させて摩擦アーム部26を鍵6の摩擦突起部34に確実に押し付けることができる。このため、鍵6の押し下げに伴って第1、第2の各アーム部24、25の回転変位が徐々に増大するので、鍵6の摩擦突起部34と摩擦アーム部26との間に発生させる摩擦抵抗を増大させることができ、これにより鍵荷重を速やかに重くすることができる。
【0093】
また、負荷付与部材30は、鍵6が押鍵操作されて一対の摩擦変形部33が弾性変形した際に、その弾性変形状態を規制する変形規制部35を備えているので、実施形態1と同様、鍵6が押鍵操作されて摩擦変形部33の第2のアーム部25が下側に回転変位した際に、第2のアーム部25が当接して摩擦変形部33の弾性変形を規制することができる。このため、鍵6が押し下げられて鍵6の摩擦突起部34と摩擦アーム部26との間に発生する摩擦抵抗が増大しても、その摩擦抵抗が一定以上に増大しないように抑制することができ、これにより鍵6の初期位置への復帰を容易にすることができる。
【0094】
この場合、鍵6の摩擦突起部34と負荷付与部材30との間には、粘性を有する潤滑剤28が設けられていることにより、鍵6が押鍵操作されて押し下げられる際に、鍵6の摩擦突起部34と共に下側に移動する潤滑剤28の粘性によって、摩擦変形部33の摩擦アーム部26を引き下げながら第1、第2の各アーム部24、25を下側に回転変位させることができ、これにより摩擦アーム部26を鍵6の摩擦突起部34に接触させて摩擦抵抗を確実に発生させることができる。
【0095】
また、鍵6が押鍵操作されて摩擦変形部33の第2のアーム部25が変形規制部35に当接した際には、潤滑剤28によって摩擦アーム部26と鍵6の摩擦突起部34とを相対的に滑らせながら摺動させることができる。さらに、鍵6が押鍵操作されて下限ストッパ部12cによって下限位置に規制された際には、摩擦アーム部26と鍵6の摩擦突起部34とが相対的に滑ることにより、摩擦変形部33の摩擦アーム部26と鍵6の摩擦突起部34との間に発生した摩擦抵抗を、軽減もしくは解除することができ、これにより摩擦変形部33を元の形状に容易に戻すことができるので、鍵6が摩擦抵抗の影響をほとんど受けずに、鍵6を初期位置に速やかに且つ良好に復帰させることができる。
【0096】
さらに、鍵ガイド部11も鍵盤シャーシ2に一体に形成されており、複数の負荷付与部材30が鍵ガイド部11に一体に形成されていることにより、実施形態1と同様、複数の鍵6ごとに負荷付与部材30を備えていても、成形用金型によって複数の負荷付与部材30を複数の鍵ガイド部11および鍵盤シャーシ2と共に一度に成形することができる。このため、生産性が良く、またハンマー部材を用いた場合に比べて、部品点数を大幅に削減することができ、これにより組立作業性の向上を図ることができると共に、低価格化をも図ることができる。
【0097】
(実施形態3)
次に、図9〜図12を参照して、この発明を鍵盤楽器に適用した実施形態3について説明する。この場合にも、図1〜図5に示された実施形態1と同一部分には同一符号を付して説明する。
この鍵盤楽器は、図9および図10に示すように、複数の鍵6を上下方向にガイドする鍵ガイド部40と、鍵6の押鍵操作時に鍵6に対して負荷を付与する負荷付与部材41とが、実施形態1と異なる構成であり、これ以外は実施形態1とほぼ同じ構成になっている。
【0098】
鍵ガイド部40は、図9および図10に示すように、鍵盤シャーシ2における前カバー部10の後部側(図9では右側)に位置する箇所に設けられて、白鍵7を上下方向にガイドする白鍵用のものと、鍵盤シャーシ2における鍵位置規制部12の後部(図9では右側)に位置する箇所に設けられて、黒鍵8を上下方向にガイドする黒鍵用のものとの2つがある。
【0099】
この鍵ガイド部40は、図10に示すように、鍵6の内部に設けられて垂下されたガイド突起部42が上方から遊びをもって挿入する溝形状に形成されている。すなわち、この鍵ガイド部40は、一対の側壁部40aを有し、この一対の側壁部40aの外側における鍵6の配列方向(図10では左右方向)の長さ(幅L)が、これと同じ方向における鍵6の外側の長さ(幅)よりも少し短く形成されている。これにより、鍵ガイド部40は、鍵6の内部に上下方向に相対的に移動可能に挿入して、鍵6を上下方向にガイドするように構成されている。
【0100】
一方、負荷付与部材41は、図10に示すように、鍵6のガイド突起部42の下部に一体的に形成され、鍵6を押鍵操作した際に、その押鍵操作された鍵6に対して摩擦抵抗による負荷を付与するように構成されている。すなわち、この負荷付与部材41は、実施形態1と同様、ポリプロピレンなどの合成樹脂からなり、鍵6のガイド突起部42の下部に設けられたベース部43と、このベース部43に設けられた支持部44と、この支持部44に設けられた一対の摩擦変形部45とを備えている。
【0101】
ベース部43は、図10に示すように、ガイド突起部42の下部に垂下された状態で一体に形成されている。支持部44は、ベース部43の下部における中心部に垂下されて鍵ガイド部40の一対の側壁部40a間に挿入する状態で一体に形成されている。一対の摩擦変形部45は、図10〜図12に示すように、鍵6が押鍵操作された際にこの押鍵操作された鍵ガイド部40との間に生じる摩擦抵抗に応じて弾性変形し、この弾性変形に伴う負荷を鍵6に対して付与するように構成されている。
【0102】
すなわち、この摩擦変形部45は、図10に示すように、支持部44の上下部に第1、第2の各屈曲部24a、25aを介して斜め下方に向けて延びた状態で設けられた第1、第2の各アーム部24、25と、この第1、第2の各アーム部24、25の各先端部にそれぞれ第3の屈曲部26aを介して上下に張り渡された摩擦アーム部26とを備えている。
【0103】
第1のアーム部24は、図10に示すように、支持部44の下端部から鍵ガイド部40の一対の側壁部40aの内側面に向けて斜め下方に延びた状態で、第1の屈曲部24aを介して支持部44に一体に形成されている。第2のアーム部25は、支持部44の上端部から鍵ガイド部40の一対の側壁部40aの内側面に向けて斜め下方に延びた状態で、第2の屈曲部25aを介して支持部44に一体に形成されている。
【0104】
この場合、第2のアーム部25は、図10に示すように、第1のアーム部24と同じ長さで、且つ第1のアーム部24と平行に形成されている。また、第1、第2の各屈曲部24a、25aは、実施形態1と同様、肉厚の薄い薄肉部に形成された樹脂ヒンジ部であり、図10〜図12に示すように、それぞれ屈曲変形することにより、第1、第2の各アーム部24、25を上下方向に回転変位させるように構成されている。
【0105】
また、摩擦アーム部26は、図10に示すように、その下部が第3の屈曲部26aを介して第1のアーム部24の先端部に一体に形成されていると共に、上部が第3の屈曲部26aを介して第2のアーム部25の先端部に一体に形成されていることにより、鍵ガイド部40の一対の側壁部40aの内側面と平行な状態で上下方向に張り渡されている。
【0106】
この摩擦アーム部26は、図10〜図12に示すように、鍵6が押鍵操作された際に鍵ガイド部40における一対の側壁部40aの内側面に接離可能な状態で接触して摺動することにより、押鍵操作された鍵6に対応する鍵ガイド部40の一対の側壁部40aの内側面との間に摩擦抵抗が発生するように構成されている。また、この第3の各屈曲部26aも、肉厚の薄い薄肉部に形成された樹脂ヒンジ部であり、図10〜図12に示すように、それぞれ屈曲変形することにより、摩擦アーム部26を鍵ガイド部40の一対の側壁部40aの内側面に沿って上下方向に変位させるように構成されている。
【0107】
これにより、摩擦変形部45は、図10に示すように、全体が平行四辺形をなすリンク形状に形成されていると共に、支持部44を中心としてその左右両側に線対称な状態で形成されている。このため、この摩擦変形部45は、図10〜図12に示すように、鍵6が押鍵操作された際に、摩擦アーム部26が鍵ガイド部40の一対の側壁部40aの内側面に接離可能な状態で接触しながら摺動することにより、押鍵操作された鍵6の摩擦アーム部26と鍵ガイド部40の一対の側壁部40aの内側面との間に摩擦抵抗が発生するように構成されている。
【0108】
また、この摩擦変形部45は、図10〜図12に示すように、鍵6が押鍵操作されて鍵ガイド部40の一対の側壁部40aの内側面との間に摩擦抵抗が発生した際に、その摩擦抵抗によって第1、第2の各アーム部24、25が第1、第2の各屈曲部24a、25aを中心にそれぞれ上側に回転変位し、この第1、第2の各アーム部24、25の回転変位に伴って摩擦アーム部26が鍵ガイド部40の一対の側壁部40aの内側面に押し付けられることにより、摩擦抵抗が増大するように構成されている。
【0109】
一方、この負荷付与部材41においても、図10〜図12に示すように、鍵6が押鍵操作されて一対の摩擦変形部45が弾性変形した際に、その弾性変形状態を規制する一対の変形規制部46を備えている。この一対の変形規制部46は、支持部44の両側に位置するベース部43の下部にそれぞれ鍵6の内側面6aに向けて斜め下方に緩やかに傾斜して設けられている。
【0110】
これにより、この変形規制部46は、図11に示すように、鍵6が押鍵操作されて摩擦変形部45の第2のアーム部25が上側に回転変位した際に、第2のアーム部25が下側から当接して、第1、第2の各アーム部24、25の上側への回転変位を規制することにより、摩擦変形部45の弾性変形を規制するように構成されている。
【0111】
また、この負荷付与部材41と鍵ガイド部40の一対の側壁部40aの内側面との間には、図10〜図12に示すように、粘性を有する潤滑剤28が設けられている。この潤滑剤28も、実施形態1と同様、粘性を有する液状、またはゲル状(ゼリー状)のものであり、押鍵操作した際における鍵タッチ感に合う最適な粘性を有し、負荷付与部材41における摩擦変形部45の摩擦アーム部26と鍵ガイド部40の一対の側壁部40aの内側面との間に塗布されている。
【0112】
この潤滑剤28は、図11に示すように、鍵6が押鍵操作されて押し下げられる際に、鍵ガイド部40の一対の側壁部40aの各内側面に塗布されている潤滑剤28の粘性によって、摩擦変形部45の摩擦アーム部26を押し上げながら第1、第2の各アーム部24、25を上側に回転変位させることにより、摩擦アーム部26を鍵ガイド部40の一対の側壁部40aの内側面に接触させて摩擦抵抗を発生させるように構成されている。
【0113】
また、この潤滑剤28は、図11に示すように、鍵6が押鍵操作されて摩擦変形部45の第2のアーム部25が変形規制部46に当接した際に、摩擦アーム部26と鍵ガイド部40の一対の側壁部40aの内側面とを相対的に滑らせながら摺動させるように構成されている。
【0114】
さらに、この潤滑剤28は、図12に示すように、鍵6が押鍵操作されて下限ストッパ部12cによって下限位置に規制された際に、摩擦アーム部26と鍵ガイド部40の一対の側壁部40aの内側面とが相対的に滑ることにより、摩擦変形部45の摩擦アーム部26と鍵ガイド部40の一対の側壁部40aの内側面との間に発生した摩擦抵抗を、軽減もしくは解除し、摩擦変形部45を図10に示す元の形状に戻すように構成されている。
【0115】
次に、このような鍵盤楽器において負荷付与部材41を成形用金型で成形する場合について説明する。
この成形方法においても、2通りの方法があり、1つの方法は負荷付与部材41を鍵6と同じ材料で同時に一体成形する方法であり、他の方法は負荷付与部材41と鍵6とを異なる材料で2色成形する方法である。
【0116】
前者の方法は、予め、鍵6を成形する上金型と下金型とからなる成形用金型内に、スライドコアを用いて、負荷付与部材41を形成するための空洞部(キャビティ)を形成する。そして、この成形用金型内にポリプロピレンなどの合成樹脂を射出する。この後、成形用金型を離型する際には、スライドコアを成形用金型内から引き抜く。これにより、負荷付与部材41が鍵6と同じ材料で同時に成形される。
【0117】
また、後者の方法は、予め負荷付与部材41と異なる合成樹脂で鍵6を上金型と下金型とからなる一次成形用金型で成形する。この一次成形用金型で成形された鍵6を上金型と下金型とからなる二次成形用金型内に配置して負荷付与部材41を成形する。このときには、二次成形用金型内に、スライドコアを用いて、負荷付与部材41を形成するための空洞部(キャビティ)を形成する。この二次成形用金型内にポリプロピレンなどの合成樹脂を射出する。この後、二次成形用金型を離型する際には、スライドコアを二次成形用金型内から引き抜く。これにより、負荷付与部材41が鍵6と異なる材料で2色成形される。
【0118】
次に、このような鍵盤楽器で複数の鍵6を押鍵操作して演奏する場合にいて説明する。
この場合にも、図9において、複数の鍵6のうち、白鍵7を押鍵操作すると、実施形態1と同様、白鍵7が屈曲部7aを中心に反時計回りに回転する。また、黒鍵8を押鍵操作すると、黒鍵8が屈曲部8aを中心に反時計回りに回転する。このように鍵6が押鍵操作されて図9において反時計回りに回転すると、実施形態1と同様、鍵6のスイッチ押圧部17がスイッチ基板14上のスイッチ部16を押圧し、この押圧されたスイッチ部16がスイッチ信号を出力する。これにより、楽音が発音される。
【0119】
このように鍵6が押鍵操作されて図9において反時計回りに回転するときには、図11に示すように、負荷付与部材41の一対の摩擦変形部45が弾性変形して、鍵6に対して負荷を付与する。すなわち、鍵6が押鍵操作されて押し下げられる際には、鍵ガイド部40の一対の側壁部40aの各内側面に塗布されている潤滑剤28の粘性によって、摩擦変形部45の摩擦アーム部26を押し上げながら第1、第2の各アーム部24、25を上側に回転変位させる。
【0120】
これにより、摩擦アーム部26が鍵ガイド部40の一対の側壁部40aの各内側面に押し付けられるので、摩擦変形部45と鍵ガイド部40の一対の側壁部40aの各内側面との間に摩擦抵抗が発生し、この摩擦抵抗によって鍵6に対して負荷が付与され、鍵荷重が重くなる。このときには、鍵6の荷重が、図5に曲線Aで示したように、急激に上昇し、鍵タッチが重くなる。
【0121】
そして、鍵6が更に押し下げられて、摩擦変形部45の第2のアーム部25が鍵ガイド部40の一対の側壁部40aの各内側面に沿って相対的に上側に回転変位すると、図11に示すように、第2のアーム部25が変形規制部46に下側から当接して、摩擦変形部45の弾性変形が規制される。
【0122】
この状態で、鍵6が更に押し下げられると、第2のアーム部25の上側への回転変位が変形規制部46に規制されているので、摩擦アーム部26と鍵ガイド部40の一対の側壁部40aの内側面との間に介在された潤滑剤8によって、図12に示すように、鍵6の摩擦アーム部26が鍵ガイド部40の一対の側壁部40aの各内側面に対して相対的に滑りながら下側に摺動する。
【0123】
このため、このときには、図5に直線Bで示したように、鍵6が下側に押し下げられても、その鍵6の荷重はほとんど変化しない。この状態で、更に鍵6が押し下げられると、鍵6に設けられた鍵突起部13のフック部13aが鍵盤シャーシ2の下限ストッパ部12cに当接するので、図5に曲線Cで示したように、鍵6の荷重が再び急激に上昇し、鍵タッチが更に重くなる。
【0124】
この後、鍵2は、図9に示すスイッチ部16の膨出部16bの弾性復帰力および鍵6の屈曲部7a、8aの弾性復帰力によって、初期位置に戻る。このときには、摩擦変形部45の摩擦アーム部26と鍵ガイド部40の一対の側壁部40aの内側面との間に発生した摩擦抵抗が潤滑剤28によって、軽減もしくは解除されているので、図12に示すように、摩擦変形部45が図10に示す元の形状に戻る。
【0125】
このため、鍵ガイド部40の一対の側壁部40aの内側面に対する摩擦変形部45の摩擦抵抗による負荷が鍵6に対して付与されることがなく、スイッチ部16の膨出部16bの弾性復帰力および鍵6の屈曲部7a、8aの弾性復帰力によって、鍵6が円滑に且つスムーズに上方に回転移動する。このときには、鍵6の荷重が、図5に曲線Dで示したように、急激に低下して、初期状態の鍵荷重に戻る。
【0126】
この状態で、更に鍵6が上方に移動すると、図9に示すように、スイッチ部16がスイッチ押圧部17を押し上げて初期状態に戻り、スイッチ部16の膨出部16b内の可動接点がスイッチ基板14の固定接点から上方に離れるので、スイッチ部16がオフになり、楽音の発音が停止される。この後、鍵6に設けられた鍵突起部13のフック部13aが鍵盤シャーシ2の上限ストッパ部12bに当接して、鍵6が初期位置に規制される。
【0127】
このように、この鍵盤楽器によれば、複数の鍵6が上下方向に回転可能に取り付けられた状態で並列に配列された鍵盤シャーシ2上に設けられ、複数の鍵6をそれぞれ上下方向にガイドする複数の鍵ガイド部40と、複数の鍵6にそれぞれ設けられ、この複数の鍵6を押鍵操作した際に、その押鍵操作された鍵6に対して摩擦抵抗による負荷を付与する複数の負荷付与部材41とを備えていることにより、実施形態1と同様、鍵6を押鍵操作した際に、その押鍵操作された鍵6に対し負荷付与部材41が摩擦抵抗による負荷を付与して鍵荷重を重くすることができる。
【0128】
このため、このような鍵盤楽器においても、実施形態1と同様、従来例のようなハンマー部材を用いなくても、押鍵操作時に鍵6に負荷を付与して鍵タッチを確実に重くすることができるので、アコースティックピアノに近似した鍵タッチ感を得ることができる。また、従来例のように重量の重いハンマー部材を用いる必要がないので、楽器全体の重量を大幅に軽くすることができ、これにより手軽に鍵盤楽器を持ち運ぶことができると共に、低価格なものを提供することができる。
【0129】
この場合、負荷付与部材41は、鍵6に設けられた支持部44と、この支持部44に設けられて鍵6が押鍵操作された際に鍵ガイド部40の一対の側壁部40aの内側面との間に生じる摩擦抵抗に応じて弾性変形し、この弾性変形に伴う負荷を鍵6に対して付与する一対の摩擦変形部45とを備えていることにより、鍵6が押鍵操作されると、鍵ガイド部40の一対の側壁部40aの内側面と一対の摩擦変形部45との間に摩擦抵抗が発生し、この摩擦抵抗によって一対の摩擦変形部45を弾性変形させることができ、この一対の摩擦変形部45の弾性変形によって、摩擦抵抗を増大させることができるので、鍵荷重を確実に重くすることができる。
【0130】
また、支持部44は、鍵ガイド部40における一対の側壁部40aの内部に上方から挿入された状態で鍵6に設けられており、摩擦変形部45は、支持部44の上下部に第1、第2の各屈曲部24a、25aを介して斜め下方に向けて延びた状態で設けられた第1、第2の各アーム部24、25と、この第1、第2の各アーム部24、25の各先端部にそれぞれ第3の屈曲部26aを介して上下に張り渡され、鍵ガイド部40の一対の側壁部40aの内側面に接離可能な状態で接触して摺動する摩擦アーム部26とを備えているので、鍵6が押鍵操作されて押し下げられる際に、摩擦アーム部26を鍵ガイド部40の一対の側壁部40aの内側面に確実に押し付けることができ、この押し付けに伴う負荷を鍵6に対して確実に付与することができる。
【0131】
すなわち、鍵6が押鍵操作されて押し下げられる際には、鍵ガイド部40の一対の側壁部40aの内側面と摩擦アーム部26との間に摩擦抵抗が発生し、この摩擦抵抗によって第1、第2の各屈曲部24a、25aが屈曲しながら第1、第2の各アーム部24、25を回転変位させて摩擦アーム部26を鍵ガイド部40の一対の側壁部40aの内側面に確実に押し付けることができる。このため、鍵6の押し下げに伴って第1、第2の各アーム部24、25の回転変位が徐々に増大するので、鍵ガイド部40の一対の側壁部40aの内側面と摩擦アーム部26との間に発生させる摩擦抵抗を増大させることができ、これにより鍵荷重を速やかに重くすることができる。
【0132】
また、負荷付与部材41は、鍵6が押鍵操作されて一対の摩擦変形部45が弾性変形した際に、その弾性変形状態を規制する変形規制部46を備えているので、実施形態1と同様、鍵6が押鍵操作されて摩擦変形部45の第2のアーム部25が上側に回転変位した際に、第2のアーム部25が当接して摩擦変形部45の弾性変形を規制することができる。このため、鍵6が押し下げられて鍵ガイド部40の一対の側壁部40aの内側面と摩擦アーム部26との間に発生する摩擦抵抗が増大しても、その摩擦抵抗が一定以上に増大しないように抑制することができ、これにより鍵6の初期位置への復帰を容易にすることができる。
【0133】
この場合、鍵ガイド部40の一対の側壁部40aの内側面と負荷付与部材41との間には、粘性を有する潤滑剤28が設けられていることにより、鍵6が押鍵操作されて押し下げられる際に、鍵ガイド部40の一対の側壁部40aの各内側面に塗布されている潤滑剤28の粘性によって、摩擦変形部45の摩擦アーム部26を押し上げながら第1、第2の各アーム部24、25を上側に回転変位させることができ、これにより摩擦アーム部26を鍵ガイド部40の一対の側壁部40aの内側面に接触させて摩擦抵抗を確実に発生させることができる。
【0134】
また、鍵6が押鍵操作されて摩擦変形部45の第2のアーム部25が変形規制部46に当接した際には、潤滑剤28によって摩擦アーム部26と鍵ガイド部40の一対の側壁部40aの内側面とを相対的に滑らせながら摺動させることができる。さらに、鍵6が押鍵操作されて下限ストッパ部12cによって下限位置に規制された際には、摩擦アーム部26と鍵ガイド部40の一対の側壁部40aの内側面とが相対的に滑ることにより、摩擦変形部45の摩擦アーム部26と鍵ガイド部40の一対の側壁部40aの内側面との間に発生した摩擦抵抗を、軽減もしくは解除することができ、これにより摩擦変形部45を元の形状に容易に戻すことができるので、鍵6が摩擦抵抗の影響をほとんど受けずに、鍵6を初期位置に速やかに且つ良好に復帰させることができる。
【0135】
さらに、鍵ガイド部40は鍵盤シャーシ2に一体に形成されており、複数の負荷付与部材20は鍵6に一体に形成されていることにより、複数の鍵6ごとに負荷付与部材41を備えていても、成形用金型によって負荷付与部材41を鍵6と共に一度に成形することができる。このため、実施形態1と同様、生産性が良く、またハンマー部材を用いた場合に比べて、部品点数を大幅に削減することができ、これにより組立作業性の向上を図ることができると共に、低価格化をも図ることができる。
【0136】
(実施形態4)
次に、図13〜図15を参照して、この発明を鍵盤楽器に適用した実施形態4について説明する。この場合にも、図1〜図5に示された実施形態1と同一部分には同一符号を付して説明する。
この鍵盤楽器は、図13に示すように、鍵6の押鍵操作時に鍵6に対して負荷を付与する負荷付与部材50の摩擦変形部51が、実施形態1と異なる構成であり、これ以外は実施形態1とほぼ同じ構成になっている。
【0137】
すなわち、この負荷付与部材50は、粘性を有する潤滑剤28を用いずに、摩擦変形部51を鍵6の内側面6aに直接接触させるように構成されている。このため、負荷付与部材50の摩擦変形部51は、支持部22の上下部に一体に形成された第1、第2の各アーム部24、25にそれぞれ切欠き溝52を形成した構成になっている。
【0138】
このような鍵盤楽器において、鍵6を押鍵操作した場合には、図14に示すように、負荷付与部材50の摩擦変形部51が弾性変形し、この弾性変形に伴う摩擦抵抗による負荷を鍵6に対して付与する。すなわち、鍵6が押鍵操作されて押し下げられる際には、摩擦変形部51の摩擦アーム部26が鍵6の内側面6aによって押し下げながら第1、第2の各アーム部24、25を下側に回転変位させる。
【0139】
これにより、図14に示すように、摩擦アーム部26が鍵6の内側面6aに押し付けられるので、摩擦変形部51と鍵6の内側面6aとの間に摩擦抵抗が発生し、この摩擦抵抗によって鍵6に対して負荷が付与され、鍵荷重が重くなる。そして、鍵6が更に押し下げられて、摩擦変形部51の第2のアーム部25が下側に回転変位すると、図14に示すように、第2のアーム部25が変形規制部27に当接して、摩擦変形部51の弾性変形が規制される。
【0140】
すなわち、第2のアーム部25が変形規制部27に当接すると、第1、第2のアーム部24、25に設けられた各切欠き溝52によって、第1、第2のアーム部24、25が折れ曲がり、これにより摩擦変形部51の弾性変形が規制される。この状態で、鍵6が更に押し下げられると、第1、第2の各アーム部25が更に折れ曲がるので、図15に示すように、鍵6が摩擦アーム部26に対して相対的に滑りながら摺動する。
【0141】
このため、摩擦変形部51の摩擦アーム部26と鍵6の内側面6aとの間に発生した摩擦抵抗が軽減もしくは解除されているので、図15に示すように、摩擦変形部51が図13に示す元の形状に戻る。これにより、摩擦変形部51は、摩擦抵抗による負荷を鍵6に対して付与することがないので、スイッチ部16の膨出部16bの弾性復帰力および鍵6の屈曲部7a、8aの弾性復帰力によって、鍵6が円滑に且つスムーズに上方に回転移動して、図13に示す初期位置に戻る。
【0142】
このように、この鍵盤楽器によれば、複数の鍵6が上下方向に回転可能に取り付けられた状態で並列に配列された鍵盤シャーシ2上に設けられ、複数の鍵6をそれぞれ上下方向にガイドする複数の鍵ガイド部11と、この複数の鍵ガイド部11にそれぞれ設けられ、複数の鍵6を押鍵操作した際に、その押鍵操作された鍵6に対して摩擦抵抗による負荷を付与する複数の負荷付与部材50とを備えていることにより、実施形態1と同様、鍵6を押鍵操作した際に、その押鍵操作された鍵6に対し負荷付与部材50が摩擦抵抗による負荷を付与して鍵荷重を重くすることができる。
【0143】
このため、このような鍵盤楽器においても、実施形態1と同様、従来例のようなハンマー部材を用いなくても、押鍵操作時に鍵6に負荷を付与して鍵タッチを確実に重くすることができるので、アコースティックピアノに近似した鍵タッチ感を得ることができる。また、従来例のように重量の重いハンマー部材を用いる必要がないので、楽器全体の重量を大幅に軽くすることができ、これにより手軽に鍵盤楽器を持ち運ぶことができると共に、低価格なものを提供することができる。
【0144】
この場合、負荷付与部材50は、鍵ガイド部11に設けられた支持部22と、この支持部22に設けられて鍵6が押鍵操作された際にこの押鍵操作された鍵6との間に生じる摩擦抵抗に応じて弾性変形し、この弾性変形に伴う摩擦抵抗による負荷を鍵6に対して付与する摩擦変形部51とを備えていることにより、実施形態1と同様、鍵6が押鍵操作されると、鍵6と摩擦変形部51との間に摩擦抵抗が発生し、この摩擦抵抗によって摩擦変形部51を弾性変形させることができ、この摩擦変形部51の弾性変形によって摩擦抵抗を増大させることができるので、鍵荷重を確実に重くすることができる。
【0145】
また、支持部22は、鍵6の内部に下側から挿入された状態で鍵ガイド部11に設けられており、摩擦変形部51は、支持部22の上下部に第1、第2の各屈曲部24a、25aを介して斜め上方に向けて延びた状態で設けられた第1、第2の各アーム部24、25と、この第1、第2の各アーム部24、25の各先端部にそれぞれ第3の屈曲部26aを介して上下に張り渡され、鍵6の内側面6aに接離可能な状態で接触して摺動する摩擦アーム部26とを備えているので、実施形態1と同様、鍵6が押鍵操作されて押し下げられる際に、摩擦アーム部26を鍵6の内側面6aに確実に押し付けることができ、この押し付けに伴う負荷を鍵6に対し確実に付与することができる。
【0146】
すなわち、鍵6が押鍵操作されて押し下げられる際には、鍵6の内側面6aと摩擦アーム部26との間に摩擦抵抗が発生し、この摩擦抵抗によって第1、第2の各屈曲部24a、25aが屈曲しながら第1、第2の各アーム部24、25を回転変位させて摩擦アーム部26を鍵6の内側面6aに確実に押し付けることができる。このため、鍵6の押し下げに伴って第1、第2の各アーム部24、25の回転変位が徐々に増大するので、鍵6の内側面6aと摩擦アーム部26との間に発生させる摩擦抵抗を増大させることができ、これにより鍵荷重を速やかに重くすることができる。
【0147】
この場合、第1、第2の各アーム部24、25には、それぞれ切欠き溝52が形成されているので、摩擦変形部51における摩擦アーム部26が鍵6の内側面6aに押し付けられて摩擦抵抗が増大しても、その摩擦抵抗が一定以上に増大した際に、第1、第2の各アーム部24、25が切欠き溝52によって折れ曲がるように弾性変形して摩擦抵抗を逃がすことができる。このため、摩擦変形部51を元の形状に戻して鍵6を初期位置に復帰させることができる。
【0148】
なお、上述した実施形態4では、負荷付与部材50として、潤滑剤28を用いずに、実施形態1の負荷付与部材20の第1、第2の各アーム部24、25にそれぞれ切欠き溝52を形成した場合について述べたが、これに限らず、例えば実施形態2の負荷付与部材30においても、潤滑剤28を用いずに、第1、第2の各アーム部24、25にそれぞれ切欠き溝52を形成した構成であっても良く、また例えば実施形態3の負荷付与部材41においても、潤滑剤28を用いずに、第1、第2の各アーム部24、25にそれぞれ切欠き溝52を形成した構成であっても良い。
【0149】
また、上述した実施形態1〜4およびその各変形例では、鍵6が白鍵7と黒鍵8とを有し、白鍵7がその各後端部に形成された薄肉の屈曲部7aと、この屈曲部7aが連結されて鍵6の配列方向に連続する共通支持部7bとを備え、黒鍵8がその各後端部に形成された薄肉の屈曲部8aと、この屈曲部8aが連結されて鍵6の配列方向に連続する共通支持部8bとを備えた構成である場合について述べたが、これに限らず、鍵6は、白鍵7の後端部と黒鍵8の後端部とを鍵盤シャーシ2の鍵支持部18に設けられた支持軸にそれぞれ独立させた状態で回転可能に取り付けた構成のものであっても良い。
【符号の説明】
【0150】
1 楽器ケース
2 鍵盤シャーシ
6 鍵
6a 鍵の各内側面
11、40 鍵ガイド部
20、30、41、50 負荷付与部材
22、32、44 支持部
23、33、45、51 摩擦変形部
24 第1のアーム部
24a 第1の屈曲部
25 第2のアーム部
25a 第2の屈曲部
26 摩擦アーム部
26a 第3の屈曲部
27、35、46 変形規制部
28 潤滑剤
32 摩擦突起部
52 切欠き溝


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鍵が鍵盤シャーシ上に上下方向に回転可能に取り付けられた状態で並列に配列された鍵盤装置において、
前記鍵盤シャーシ上に設けられ、前記複数の鍵をそれぞれ上下方向にガイドする複数の鍵ガイド部と、
この複数の鍵ガイド部と前記複数の鍵とのいずれか一方にそれぞれ設けられ、前記複数の鍵を押鍵操作した際に、その押鍵操作された前記鍵に対して摩擦抵抗による負荷を付与する複数の負荷付与部材と
を備えていることを特徴とする鍵盤装置。
【請求項2】
前記負荷付与部材は、前記鍵ガイド部と前記鍵とのいずれか一方に設けられた支持部と、この支持部に設けられて前記鍵が押鍵操作された際にこの押鍵操作された前記鍵およびこれに対応する前記鍵ガイド部のいずれか他方との間に生じる摩擦抵抗に応じて弾性変形し、この弾性変形に伴う摩擦抵抗による負荷を前記鍵に対して付与する摩擦変形部とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の鍵盤装置。
【請求項3】
前記支持部は、前記鍵の内部に下側から挿入された状態で前記鍵ガイド部に設けられており、前記摩擦変形部は、前記支持部の上下部に第1、第2の各屈曲部を介して斜め上方に向けて延びた状態で設けられた第1、第2の各アーム部と、この第1、第2の各アーム部の各先端部にそれぞれ第3の屈曲部を介して上下に張り渡され、前記鍵の内側面に接離可能な状態で接触して摺動する摩擦アーム部とを備えていることを特徴とする請求項2に記載の鍵盤装置。
【請求項4】
前記支持部は、前記鍵ガイド部内に上側から挿入された状態で前記鍵の内部に設けられており、前記摩擦変形部は、前記支持部の上下部に第1、第2の各屈曲部を介して斜め下方に向けて延びた状態で設けられた第1、第2の各アーム部と、この第1、第2の各アーム部の各先端部にそれぞれ第3の屈曲部を介して上下に張り渡され、前記鍵ガイド部の内側面に接離可能な状態で接触して摺動する摩擦アーム部とを備えていることを特徴とする請求項2に記載の鍵盤装置。
【請求項5】
前記負荷付与部材は、前記鍵が押鍵操作されて前記摩擦変形部が弾性変形した際に、その弾性変形状態を規制する変形規制部を備えていることを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれかに記載の鍵盤装置。
【請求項6】
前記鍵ガイド部および前記鍵のいずれか一方と前記負荷付与部材との間には、粘性を有する潤滑剤が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の鍵盤装置。
【請求項7】
前記鍵ガイド部は前記鍵盤シャーシに一体に形成されており、前記複数の負荷付与部材は前記鍵ガイド部と前記鍵とのいずれか一方に一体に形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の鍵盤装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−32587(P2012−32587A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171656(P2010−171656)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】