説明

鎖に沿って官能基を有するグラフト化エラストマーを得る方法及びゴム組成物

本発明は、鎖に沿って官能基を含むグラフト化ジエンエラストマー、前記グラフト化エラストマーを含み、且つ架橋状態において特に改良されたヒステリシス特性を有するゴム組成物を得る方法、及び前記組成物の調製方法に関する。さらに、本発明は、前記組成物を含むタイヤトレッド及び前記トレッドを組み込む減少した転がり抵抗を有するタイヤに関する。
このグラフト化エラストマーを得る方法は、溶液において又は溶媒を用いずに、メルカプタン型の試薬によって行われ、且つ出発エラストマーの鎖にこれらの基をグラフト化することを意図するラジカルグラフト化反応を含む。
本発明では、この出発エラストマーが、前記グラフト化反応の前に、少なくとも1種の芳香族アミン官能基を含む抗酸化剤によって処理されることにより、グラフト化エラストマーが、出発エラストマーと実質的に同一のマクロ構造を有する。
本発明のゴム組成物は、補強無機充填剤を含み、このグラフト化エラストマーは、30%よりも多いモル比の共役ジエン由来の単位を有する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、鎖に沿って官能基を含むグラフト化ジエンエラストマーを得る方法、このグラフト化エラストマーを含み、且つ架橋状態において特に改良されたヒステリシス特性を有するゴム組成物、及びこの組成物の調製方法に関する。さらに、本発明は、前記組成物を含むタイヤトレッド及び前記トレッドを組み込む減少した転がり抵抗を有するタイヤに関する。
【0002】
燃料節約及び環境保護の必要性が重要となったため、良好な機械特性及び可能な限り低いヒステリシスを有する混合物を製造し、それらをタイヤ、例えば基層、サイドウォール又はトレッドの構成に含まれる種々の半製品製造に用いることのできるゴム組成物の形態に加工することで、減少した転がり抵抗を有するタイヤを得ることができるよう望まれる。
そのような目的を達成するために、多くの解決法が提案されており、それらは特に、重合の終わりに、官能性化、カップリング又はスター化試薬によってジエンポリマー及びコポリマーの構造を修飾することからなる。これらの解決法のほとんどは、カーボンブラックに対して活性な官能性化ポリマーの使用に集中しており、そのように修飾されたポリマーとカーボンブラックとの間に良好な相互作用を得ることを目的としている。
カーボンブラックから形成される補強充填剤に関する前記先行技術の例として、例えば米国特許第3,135,716号明細書が挙げられ、これは、リビングジエンポリマーの鎖末端を、ポリ官能性有機カップリング剤と反応させ、改善された特性を有するポリマーを得ることを記載している。さらに、米国特許第3,244,664号明細書が挙げられ、これは、テトラアルコキシシランをカップリング剤又はスター化(starring)剤としてジエンポリマーに用いることを記載している。
【0003】
シリカは、補強充填剤として、架橋可能なゴム組成物、特にタイヤトレッドを構成するためのものに長い間用いられている。しかし、この使用は、そのような組成物のいくつかの物理的特性、特に摩耗抵抗が不十分な水準にあるため、非常に制限されたままである。
従って、これらの欠点を克服するために、それまで用いられていた非官能性化ポリマーの代わりに、官能性化ジエンポリマー、特にアルコキシシラン誘導体、例えばテトラエトキシシランによって官能性化されたポリマーを用いることが提案された。例えば、米国特許第5,066,721号明細書が挙げられ、これは、少なくとも1種の非加水分解性アルコキシル基を有するアルコキシシランによって官能性化されたジエンポリマーを含むゴム組成物を記載しており、このアルコキシシランは、水蒸気蒸留によって重合溶媒を除去することができる。
これらの官能性化反応の一つの不都合は、それらに伴うカップリング反応にあり、過剰のアルコキシシラン及び/又は強力な混合を用い、これらのカップリング反応を最小化することが概して必要となる。
これらの反応の別の欠点は、その後に行う水蒸気蒸留操作にあり、これは重合溶媒の除去を必要とする。
事実、一般的に、官能性化試薬として、例えば上記の米国特許第5,066,721号明細書に記載の制限群に属するアルコキシシランの使用に制限しない場合、前記蒸留操作中に、得られた官能性化ポリマーのマクロ構造に変化が起こることにより、それらの特性が大きく劣化することが経験的に示されている。
結果として、アルコキシシラン官能基を含むジエンポリマーを使用し、シリカを補強充填剤として含むゴム組成物を得るのは、これらの組成物の物理的特性が改善されるにも関わらず十分でないことは、上記から明らかである。
【0004】
従って、他の官能性化反応に関する研究が行われ、たいていはそのようなゴム組成物を得ることを目的としている。
例えば、本出願人名義の仏国特許第2,740,778号明細書が挙げられ、これは、補強充填剤としてシリカを大部分の割合で含むゴム組成物(例えばシリカ及びカーボンブラックの混合物を含む)に、鎖末端にシラノール官能基又はシラノール末端を有するポリシロキサンブロックのあるジエンポリマーを組み込むことを開示している。例えば、環状ポリシロキサンからなる官能性化試薬、例えばヘキサメチルシクロトリシロキサンが用いられる。得られた官能性化ポリマーは、溶媒の水蒸気抽出により反応媒体から分離され、それらのマクロ構造、及びその結果としてそれらの物理的特性を変化することなく形成することができる。
さらに、欧州特許第877,047号明細書が挙げられ、これは、補強充填剤として、その表面に固定されたシリカを有するカーボンブラックを含むゴム組成物に、シラノール官能基を有するそのようなポリマーを組み込むことを開示している。
これらのポリマーが、ゴム特性、特に架橋状態におけるヒステリシス及び補強であり、非官能性化ジエンポリマーに基づく対照組成物と比べて改善され、且つアルコキシシラン官能基を含むジエンポリマーに基づく組成物と少なくとも類似の特性を与えることが証明された。
さらに、欧州特許第692,493号明細書が挙げられ、これは、鎖末端にアルコキシシラン基及びエポキシ基を有するジエンポリマーが、補強特性を改善し、且つ低変形及び高変形におけるヒステリシス損失を減少させることを証明している。
シリカ又はシリカによって表面修飾されたカーボンブラックとカップリングする活性な官能基を含むこれらのポリマーの一つの不都合は、それらが、それらを組み込むゴム組成物に与えるヒステリシス及び補強特性を改善するが、非架橋混合物の加工能力が、非官能性化“対照”ポリマーと比べて損なうことを一般的に伴うことである。
研究された他の官能性化反応の中では、例えばカルボン酸基による鎖に沿った官能性化が挙げられる。
【0005】
鎖に沿った前記カルボン酸官能性化は、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン(TMED)の存在下で、ブチルリチウム又は金属ナトリウム(それぞれ、米国特許第3,978,161及び3,976,628号明細書に記載)による直接的メタレーション、それに続く二酸化炭素による炭酸化によって行うことができる。
そのような方法は、一般的に修飾されたポリマーの鎖に破損を生じるという不都合を有する。
【0006】
さらに、鎖に沿ったこのカルボン酸官能性化は、一酸化炭素によるヒドロホルミル化、それに続く形成されたアルデヒドの酸化(米国特許第4,912,145に記載)、又は一酸化炭素によるポリマーの直接的ヒドロカルボキシル化(論文“A. Nait Ajjou, H. Alper, Macromolecules 29, 1784 (1996)”に記載)のいずれかによって行ってもよい。これらの反応に用いられる触媒は、ロジウム又はパラジウム系である。
一酸化炭素による前記官能性化の一つの不都合は、第一に、厳しい操作条件、及び第二に、反応媒体における頻繁なゲル形成である。
【0007】
無水マレイン酸による鎖に沿ったカルボン酸官能性化は、より広まっている。これは、カルボキシル基の前駆体となる鎖に沿った無水琥珀酸単位を得ることを可能にする。米国特許第4,082,817及び4,082,493号明細書が、そのような官能性化の例として参照され得る。
しかし、この官能性化はさらに、ゲルを形成し得る。
【0008】
米国特許第5,804,619号明細書は、カルボキシル官能基によって官能性化されるジエンエラストマーが分布しているビチューメンマトリックスから形成されるビチューメン/ポリマー組成物を開示しており、これは、ブロック化されたフェノール単独、又はグラフト化操作中にエラストマーの架橋を妨げるジアルケニルトリホスファイトとの存在下において、ジエンエラストマーを、カルボキシル官能性の列を有する前駆体化合物とグラフト化反応させることによって得られる。
これらの組成物は、路面表面材又は防水外装材として用いることができる。
【0009】
欧州特許第1,000,971号明細書は、湿った地面におけるグリップを改善し、且つ転がり抵抗を減少させることを本質的に意図するトレッドゴム組成物を開示している。これらの組成物は、任意の既知の補強充填剤、及び鎖に沿ってカルボン酸基を含むグラフト化コポリマーを含み、これは、ジエン及びビニル芳香族化合物の溶液から調製される出発コポリマーから得られる。例えば、これらの基は、カルボキシメルカプタン、例えば3-メルカプトプロピオン酸、及び基開示剤、例えばジラウロイル過酸化物によって行われるラジカルグラフト化反応による共重合に続いて導入してもよい。
このカルボキシメルカプタンによってグラフト化されるエラストマーの一つの主要な不都合は、それらが、出発エラストマーに比べ、マクロ構造における著しい変化を示すことであり、これらは特に、ムーニー粘度、数平均分子量及び多分散性指標を著しく増加させる。この結果は、グラフト化後のエラストマーの物理的特性に望ましくない変化である。
本発明の一つの目的は、この欠点を克服することであり、それは、その鎖に沿って官能基を含むグラフト化ジエンエラストマーを得る方法を行うことによって達成され、この方法は、溶液において又は溶媒無しで、メルカプタン型の試薬によって行われ、且つ前記基を出発エラストマーの鎖においてグラフト化することを意図し、前記ラジカルグラフト化反応の前に、少なくとも1種の芳香族アミン官能基を含む抗酸化剤による抗酸化処理工程を含むラジカルグラフト化反応を含む。
【0010】
本発明の方法によって、グラフト化後にそのように処理されたジエンエラストマーが、出発エラストマーと事実上同一のマクロ構造を有する。好ましくは、そのムーニー粘度は特に、Standard ASTM D-1646に基づいて測定され、グラフト化前のその最初の粘度から、10ポイントより多く、さらに好ましくは5ポイントより多くずれない。
【0011】
“ジエンエラストマー”は、既知の手法において、少なくとも一部がジエンモノマー(モノマーは2つの二重炭素-炭素結合を有し、共役していてもしていなくてもよい)から生じるエラストマー(ホモポリマー又はコポリマー)を意味すると理解される。
好ましくは、前記出発エラストマーは、モル比が30%よりも多い共役ジエンから生じる単位を含み、これによって、タイヤトレッド組成物のエラストマーマトリックスを構成するのに用いることができる。
いくつかのジエンエラストマー、例えばブチルゴム、ニトリルゴム又はジエンのコポリマー及びEPDM型のアルファオレフィンは、例えばそれらのジエン起源単位の含有率が30%よりも非常に少ないため、トレッド組成物に用いることができない。
さらに好ましくは、前記出発エラストマーが、“非常に不飽和な”ジエンエラストマー、すなわち、50%よりも多いジエン起源単位(共役ジエン)の含有率を有するジエンエラストマーである。
出発エラストマーとして用いられ得るのは、4〜12個の炭素原子を有する共役ジエンモノマーの溶液重合によって得られるホモポリマー、例えばポリブタジエン又はポリイソプレン、又はそれとは別に1種以上の共役ジエンの混合溶液、又は8〜20個の炭素原子を有する1種以上のビニル芳香族化合物との溶液共重合によって得られるコポリマー、例えばブタジエン/ビニル芳香族化合物又はブタジエン/ビニル芳香族化合物/イソプレンコポリマーである。
好適な共役ジエンは、特に、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジ(C1〜C5アルキル)-1,3-ブタジエン、例えば2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-エチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-イソプロピル-1,3-ブタジエン、アリール-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン及び2,4-ヘキサジエンである。
好適なビニル芳香族化合物は、例えば、スチレン、オルト-、メタ-及び-パラ-メチルスチレン、市販の混合物“ビニルトルエン”、パラ-tertブチルスチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼン及びビニルナフタレンである。
コポリマーは、99〜20質量%のジエン単位及び1〜80質量%のビニル芳香族単位を含んでいてもよく、また、用いられる重合条件、特に修飾化及び/又はランダム化試薬の存在下又は無しで、及び用いられる修飾化及び/又はランダム化試薬の量と相関関係にある任意の微細構造を有していてもよい。例えば、エラストマーは、ブロック、ランダム、連続的又は微細連続的エラストマーでもよい。
好ましいのは、ポリブタジエン、特に4%〜80%の1,2-単位含有率を有するか、又は80%よりも多いシス-1,4含有率を有するもの、合成ポリイソプレン、ブタジエン/スチレンコポリマー、特に5〜50質量%、特に20%〜40%のスチレン含有率、4%〜65%のブタジエンフラクションの1,2-結合含有率、及び20%〜80%のトランス-1,4結合含有率を有するもの、ブタジエン/イソプレンコポリマー、特に5〜90質量%のイソプレン含有率及び-40℃〜-80℃のガラス転移温度Tgを有するもの、イソプレン/スチレンコポリマー、特に5〜50質量%のスチレン含有率及び-25℃〜-50℃のTgを有するものである。
ブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーの場合、好適なものは、特に5〜50質量%、特に10%〜40%のスチレン含有率、15〜60質量%、特に20%〜50%のイソプレン含有率、5〜50質量%、特に20%〜40%のブタジエン含有率、4%〜85%のブタジエンフラクションの1,2-単位含有率、6%〜80%のブタジエンフラクションのトランス-1,4単位含有率、5%〜70%のイソプレンフラクションの1,2-及び3,4-単位含有率、及び10%〜50%のイソプレンフラクションのトランス-1,4単位含有率を有するものであり、及びさらに一般的には-20℃〜-70℃のTgを有する任意のブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーである。
【0012】
特に好ましくは、前記出発エラストマーが、ポリブタジエン(BR)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)、ブタジエン/イソプレンコポリマー(BIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)又はブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマー(SBIR)からなる溶液において調製される“非常に不飽和な”ジエンエラストマーの群から選択される。
さらに好ましくは、前記出発エラストマーが、溶液において調製されるポリブタジエン、ブタジエン/スチレンコポリマー及びブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーからなる群に属する。
都合よくは、前記出発エラストマーが、溶液において調製されるブタジエン/スチレンコポリマーである。
本発明の有利な実施例は、前記出発エラストマーが、20〜30質量%のスチレン含有率、15%〜65%のブタジエンフラクションのビニル結合含有率、15%〜75%のトランス-1,4結合含有率及び-20〜-55℃のTgを有する溶液において調製されるブタジエン/スチレンコポリマーである。
【0013】
例えば溶液において単官能性又は多官能性の任意の陰イオン開示剤、又は非陰イオン開始剤から得られる上記の出発エラストマーを、本発明に用いることができる。しかし、例えばリチウムであるアルカリ金属、又は例えばバリウムであるアルカリ土類金属を含む陰イオン開始剤が、好ましく用いられる。
好適な有機リチウム開始剤は、特に1種以上の炭素-リチウム結合を含むものである。例えば、脂肪族有機リチウム、例えばエチルリチウム、n-ブチルリチウム(n-BuLi)、イソブチルリチウム、及びジリチウムポリメチレン、例えば1,4-ジリチオブタンが挙げられ得る。
さらに、非環式又は環式第二級アミンから得られるリチウムアミド、例えばピロリジン又はヘキサメチレンイミンを用いてもよい。
さらに本発明に用いることができるのは、遷移金属の化合物、例えばチタン、コバルト又はニッケルの化合物、又は希土類、例えばネオジミウムによって開始されるジエンエラストマーである。
当業者にとって既知の重合は、好ましくは、例えば脂肪族又は脂環式炭化水素、例えばペンタン、ヘキサン、イソ-オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン又はシクロペンタン、又は芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン又はキシレンでもよい不活性溶媒の存在下で行われる。この重合は、連続的又は不連続的に行われてもよい。それは一般的に、20〜120℃、好ましくは30℃〜100℃の温度で行われる。
【0014】
前記出発ジエンエラストマーが付される本発明の抗酸化処理は、前記グラフト化反応中に、少なくとも1種の芳香族アミン官能基を含む少なくとも1種の抗酸化剤によって行われ、これは、形成される遊離基を捕捉し、前記基と前記エラストマーの鎖との相互作用を最小化するために提供される。
【0015】
一つの異なる実施態様では、前記抗酸化剤はさらに、好ましくは立体障害性である少なくとも1種のフェノール官能基を含む。
別の異なる実施態様ではさらに、好ましくは立体障害性であり、且つ芳香族アミン官能基のない少なくとも1種のフェノール官能基を含む少なくとも1種の第二の抗酸化剤、又はジアルキルフェニルトリホスファイト型の抗酸化剤などが用いられる。
都合よくは、アミノ化型の前記又は少なくとも1種の前記抗酸化剤が、ナフチルアミン、ジフェニルアミン及びp-フェニレンジアミンからなる群から選択される。
フェノール型の前記抗酸化剤は、トリアルキルフェノール、ヒドロキノン及びポリフェノール(例えば、ピロガロールをポリフェノールとして用いてもよい)からなる群から選択される。
一つの異なる実施態様では、都合よくは、抗酸化処理が、ラジカルグラフト化反応の後に第二の工程を含む。
この抗酸化処理は、好ましくは0.2phr〜1phr(phrは、前記出発ジエンエラストマーの100部分当たりの質量部)の量の前記抗酸化剤によって行われる。
【0016】
そのように処理された前記出発エラストマーが付されるラジカルグラフト化反応に用いられる本発明のメルカプタン型試薬が、ヒドロキシル、カルボニル、エーテル、アミン、ニトリル及びシラン基からなる群に属する官能基を含むことにより、得られたグラフト化エラストマーが、その鎖に沿って、それぞれ所望のヒドロキシル、カルボニル、エーテル、アミン、ニトリル又はシラン基を含む。
本発明の有利な実施例では、メルカプタン型の前記試薬が、カルボン酸、カルボン酸エステル、アミド及びケトン基からなる群に属するカルボニル官能基を含むことにより、前記グラフト化エラストマーが、その鎖に沿って、所望のカルボン酸、カルボン酸エステル、アミド又はケトン基を含む。
さらに都合よくは、メルカプタン型の前記試薬、例えばメルカプトプロピオン又はメルカプトウンデカン酸が、カルボン酸官能基を含むことにより、前記グラフト化エラストマーが、その鎖に沿ってカルボン酸基を含む。
前記グラフト化反応は、場合によって、ラジカル開始剤、例えば過酸化物の存在下で行われる。
【0017】
本発明の別の目的は、その鎖に沿って官能基を含む任意のグラフト化ジエンエラストマーを、下記の方法によって得ることである。
本発明の別の目的は、新規の架橋可能又は架橋ゴム組成物を提案することであり、これは、架橋状態においてヒステリシス損失を減少させ、非架橋状態において加工能力を改善し、且つタイヤトレッドを構成するのに用いることができる。
この目的は、補強無機充填剤と、モル比が30%よりも多い共役ジエン由来の単位の有する前記グラフト化ジエンエラストマーとの結合によって得られる架橋可能又は架橋ゴム組成物であって、その鎖に沿って前記官能基を含み、且つ前記ラジカルグラフト化反応によって得られ、この反応が溶液において又は溶媒無しでメルカプタン型の前記試薬によって行われ、且つ前記基を前記出発ジエンエラストマーの鎖上にグラフト化することを意図し、前記グラフト化エラストマーが、少なくとも1種の芳香族アミン官能基を含む少なくとも1種の抗酸化剤を用い、前記グラフト化反応の前に前記出発エラストマーに適用される抗酸化処理によって得られることにより、前記グラフト化エラストマーが、前記出発エラストマーと実質的に同一のマクロ構造を有するゴム組成物が、シリカ(例えば上記のアルコキシシラン又はシラノール基)へのカップリングに活性な官能基を含むポリマーに基づく既知の組成物と類似の低変形及び高変形における減少したヒステリシス損失を有し、且つシリカで充填されたこれらの既知の組成物と比べて改善され、シリカで充填された非官能性化ポリマーに基づく組成物に匹敵する非架橋状態における加工特性を有するという、本出願人のした最近の驚くべき発見によって達成された。
【0018】
これらの特徴は、本発明の組成物を用いて、特に減少した転がり抵抗を有するタイヤトレッドを構成するのを可能にする。
前記グラフト化エラストマーが含む前記官能基は、好ましくはヒドロキシル、カルボニル、エーテル、アミン、ニトリル及びシラン基からなる群に属し、さらに好ましくは、前記官能基はカルボニル型であり、カルボン酸、カルボン酸エステル、アミド及びケトン基で構成される群に属する。
都合よくは、前記官能基は、カルボン酸型である。
前記グラフト化エラストマーは、好ましくは、
・4〜12個の炭素原子を有する共役ジエンモノマーの溶液における重合によって得られるホモポリマー、例えばポリブタジエン又はポリイソプレンから、又は
・1種以上の共役ジエン、及び/又は8〜20個の炭素原子を有する1種以上のビニル芳香族化合物との溶液における重合によって得られるコポリマー、例えばブタジエン/ビニル芳香族化合物又はブタジエン/ビニル芳香族化合物/イソプレンコポリマーから得られる。
さらに好ましくは、前記グラフト化エラストマーは、溶液で調製されるブタジエン/ビニル芳香族化合物コポリマーから得られる。
本発明の別の好ましい特徴では、前記ゴム組成物は、前記グラフト化エラストマーが、100,000g/molよりも多い数平均分子量Mnを有するようなものである。
本発明の別の好ましい特徴では、前記組成物が、大部分の割合で前記グラフト化エラストマーを含むエラストマーマトリックスに基づき、さらに好ましくは、このエラストマーマトリックスが前記グラフト化エラストマーから構成される。
もちろん、本発明の組成物が、例えば上記に挙げられたものである1種のグラフト化エラストマー、又はこれらのグラフト化エラストマーのいくつかの混合物を含んでもよい。
本発明でグラフト化されたジエンエラストマーは、本発明の組成物に単独で、又は官能性化されていてもされていなくてもよく、従来からタイヤに用いられている任意の他のジエンエラストマーとの混合物で用いられてもよい。
本発明の組成物の特性における改良は、この組成物における従来のエラストマーの割合が低くなればなるほど、全て大きくなることに注目すべきである。都合よくは、この又はこれらの従来のエラストマーは、適用可能であれば、本発明のグラフト化エラストマーの100質量部当たり1〜70質量部の量で、本発明の組成物に存在してもよい。
【0019】
本出願において、“補強無機充填剤”は、既知の手法において、その色及びその起源(天然又は合成)に関わらず、さらにカーボンブラックと対照的に“白い”充填剤又は時に“透明な”充填剤と呼ばれる無機又は鉱物充填剤を意味すると理解され(本記載の内容では無機充填剤として考える)、この無機充填剤は、それ自身で、中間カップリング剤以外のいかなる方法も用いずに、タイヤ製造を意図するゴム組成物を補強することができ、言い換えれば、その補強機能において従来のタイヤ等級カーボンブラック充填剤に取って代わることができる。そのような充填剤は、既知の手法において、一般的にその表面におけるヒドロキシル(-OH)基の存在によって特徴づけられる。
好ましくは、補強無機充填剤が、40phr以上の量(phrは、エラストマー100部分当たりの質量部)で、本発明の組成物に存在する。同様に好ましくは、前記補強無機充填剤が、本発明の組成物が50%よりも多く、場合によって100%程度の質量フラクションで含む補強充填剤に存在する。
都合よくは、前記補強無機充填剤の全て、又は非常に少なくとも大部分の割合が、シリカ(SiO2)である。用いられるシリカは、当業者にとって既知の任意の補強シリカ、特にBET表面積及びCTAB比表面積の両方が450m2/gよりも小さい任意の沈降又はヒュームドシリカでもよいが、高分散性沈降シリカが好ましい。
本明細書では、BET比表面積を、既知の手法において、“The Journal of the American Chemical Society”、vol. 60、309頁、1938年2月、及び対応するStandard AFNOR-NFT-45007(1987年11月)に記載のBrunauer、Emmet及びTellerの方法に基づいて決定する。CTAB比表面積は、同じ1987年11月のStandard AFNOR-NFT-45007に基づいて決定される外表面積である。
【0020】
“高分散性シリカ”は、エラストマーマトリックスにおいて非集塊及び分散する非常に実質的な能力を有する任意のシリカを意味すると理解され、これは薄い切片における電子又は光学顕微鏡による既知の手法で観察することができる。そのような好ましい高分散性シリカの非限定例として、AkzoのシリカPerkasil KS 430、DegussaのシリカBV 3380、RhodiaのシリカZeosil 1165 MP及び1115 MP、PPGのシリカHi-Sil 2000、HuberのシリカZeopol 8741又は8745、及び沈降処理されたシリカ、例えば欧州特許第735,088号明細書に記載のアルミニウム“ドープ”シリカが挙げられ得る。
補強無機充填剤が存在する物理状態は、無形であり、粉末、微細ビーズ、顆粒又は球の形態のいずれでもよい。もちろん、さらに“補強無機充填剤”は、異なる補強無機充填剤、特に例えば上記の高分散性シリカの混合物を意味すると理解される。
本発明のゴム組成物の補強充填剤は、混合物の形態で、上記の補強無機充填剤に加えて大部分の割合(すなわち、50%よりも少ない質量フラクション)のカーボンブラックを含んでもよいことに注目すべきである。好適なカーボンブラックは、任意のカーボンブラック、特にHAF、ISAF及びSAF型のブラックであり、これらは従来からタイヤ、特にタイヤトレッドに用いられている。そのようなブラックの非限定例として、ブラックN115、N134、N234、N339、N347及びN375が挙げられ得る。
例えば、ブラック/シリカ混合物、又は部分的又は全体的にシリカで被覆されたものが、補強充填剤を形成するのに好適である。さらに好適なものは、少なくとも一部を無機層、例えばシリカで被覆されたカーボンブラックを含む補強充填剤であり、これはその一部に、カップリング剤を使用して、エラストマーとの結合を確立することを必要とし、例えば、限定はしないが、CABOTから名称“CRX 2000”で販売されている充填剤であり、これらは特許明細書WO-A-96/37547に記載されている。
補強無機充填剤としてさらに、限定はしないが、アルミナ(式Al2O3)、例えば欧州特許第810,258号明細書に記載の高分散性アルミナ、又はそれとは別に水酸化アルミニウム、例えば特許明細書WO-A-99/28376に記載のものを用いるのが可能である。
補強充填剤が、補強無機充填剤及びカーボンブラックのみを含む場合、前記補強充填剤におけるこのカーボンブラックの質量フラクションは、好ましくは30%以下に選択される。
しかし、本発明の組成物の上記の特性は、組成物の含む補強充填剤に含まれる補強無機充填剤の質量フラクションが高くなればなるほど、全てがさらに改善されること、及び前記特性は、前記組成物が、補強無機充填剤、例えばシリカを補強充填剤として単独で含むときに最適化されることが、経験的に示されている。従って、この後者の場合が、本発明のゴム組成物の好ましい例を構成する。
本発明のゴム組成物はさらに、従来の手法において、補強無機充填剤/エラストマーマトリックス結合試薬(カップリング剤とも呼ばれる)を含み、その機能は、前記無機充填剤とマトリックスとの間の十分な化学的及び/又は物理的結合(又はカップリング)を確実にし、前記マトリックス内のこの無機充填剤の分散を容易にする。
【0021】
“カップリング剤”は、より正確には、当該充填剤とエラストマーとの間の十分な化学的及び/又は物理的結合を確立し、エラストマーマトリックス内のこの充填剤の分散を容易にすることのできる試薬を意味すると理解される。そのようなカップリング剤は、少なくとも二官能性であり、例えば、簡単な一般式“Y-T-X”
(式中、
・Yは、無機充填剤と物理的及び/又は化学的に結合することのできる官能基(“Y”官能基)を表し、そのような結合は、例えば、カップリング剤のケイ素原子と、無機充填剤の表面ヒドロキシル(OH)基との間(例えば、シリカの場合は表面シラノール)に確立することができ、
・Xは、エラストマーと、例えば硫黄原子によって物理的及び/又は化学的に結合することのできる官能基(“X”官能基)を表し、
・Tは、YとXとを結合することのできる基を表す。)を有する。
カップリング剤は、既知の手法において、充填剤と活性のある“Y”官能基を含んでもよいが、エラストマーと活性のある“X”官能基はない、当該充填剤を被覆するための簡単な試薬と混同してはならない。タイヤの製造に用いることのできるゴム組成物において、補強無機充填剤、例えばシリカと、ジエンエラストマー、例えば有機シラン、特にポリ硫化アルコキシシラン又はメルカプトシラン、又はそれとは別に上記に挙げられたX及びY官能基を有するポリ有機シロキサンとの間の有効なカップリングを確実にし得るとして既知の任意のカップリング剤を、用いてもよい。シリカ/エラストマーカップリング剤は特に、多くの文献に記載されており、最も知られているものは例えばポリ硫化アルコキシシランである二官能性アルコキシシランである。
特にポリ硫化アルコキシシランであり、それらの特定の構造に依存して“対称的”又は“非対称的”と呼ばれるもの、例えば、米国特許第3,842,111、3,873,489、3,978,103、3,997,581、4,002,594、4,072,701、4,129,585号、又はさらに最近の5,580,919、5,583,245、5,650,457、5,663,358、5,663,395、5,663,396、5,674,932、5,675,014、5,684,171、5,684,172、5,696,197、5,708,053、5,892,085号明細書、欧州特許第1,043,357号明細書に記載のものが用いられ、これらはそのような既知の化合物を詳細に記載している。
【0022】
以下の定義に限定することなく、特に好適なものは、以下の一般式(I)を満たす対称的なポリ硫化アルコキシシランである。
(I)Z-A-Sn-A-Z
式中、
・nは、2〜8の整数(好ましくは2〜5)であり、
・Aは、二価の炭化水素基(好ましくはC1〜C18アルキレン基又はC6〜C12アリーレン基、特にC1〜C10アルキレン、特にC1〜C4アルキレン、特にプロピレン)であり、
・Zは、以下の式の一つに対応し、
【化1】

式中、
・基R1は、置換されていてもされていなくても、同一でも異なっていてもよく、C1〜C18アルキル基、C5〜C18シクロアルキル基、又はC6〜C18アリール基(好ましくはC1〜C6アルキル基、シクロヘキシル又はフェニル、特にC1〜C4アルキル基、特にメチル及び/又はエチル)を表し、
・基R2は、置換されていてもされていなくても、同一でも異なっていてもよく、C1〜C18アルコキシル基又はC5〜C18シクロアルコキシル基(好ましくはC1〜C8アルコキシル基又はC5〜C8シクロアルコキシル基、特にC1〜C4アルコキシル基、特にメトキシル及び/又はエトキシル)を表す。
上記式(I)に基づくポリ硫化アルコキシシランの混合物、特に従来から市販されている混合物の場合、“n”の平均値が、好ましくは2〜5の分数であると理解される。
【0023】
ポリ硫化アルコキシシランとして、ビス-((C1〜C4)アルコキシル-(C1〜C4)アルキルシリル-(C1〜C4)アルキル)のポリスルフィド(特にジスルフィド、トリスルフィド又はテトラスルフィド)、例えばビス-(3-トリメトキシシリルプロピル)又はビス(3-トリエトキシシリルプロピル)のポリスルフィドが、特に挙げられ得る。これらの化合物の中で、特に式[(C2H5O)3Si(CH2)3S2]2のビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(TESPTに省略)、又は式[(C2H5O)3Si(CH2)3S]2のビス(トリエトキシシリルプロピル)(TESPDに省略)が用いられる。TESPDは例えば、Degussaから名称Si266又はSi75(後者の場合、ジスルフィド(75質量%)及びポリスルフィドの混合物の形態)、又はそれとは別にWitcoから名称Silquest A1589で販売されている。TESPTは例えば、Degussaから名称Si69(又は、カーボンブラックにおいて50質量%で支持されるときは、X50S)、又はそれとは別にOsi Specialtiesから名称Silquest A1289(両方の場合、4に近いnの平均値を有するポリスルフィドの市販の混合物)で販売されている。さらに、テトラ硫化モノアルコキシシラン、例えばモノエトキシジメチルシリルプロピルテトラスルフィド(MESPTに省略)が挙げられ、これは本出願人名義の国際特許明細書PCT/EP02/03774の主題である。
本発明の組成物はさらに、前記グラフト化エラストマー及び前記補強無機充填剤に加え、可塑剤、顔料、抗酸化剤、抗オゾンワックス、硫黄及び/又は過酸化物及び/又はビスマレイミドのいずれかに基づく架橋系、亜鉛一酸化物及びステアリン酸を含む架橋賦活剤、エキステンダーオイル、例えばアルコキシシラン、ポリオール、又はアミンである1種以上のシリカ被覆剤を含む。
特に、これらの組成物は、前記グラフト化エラストマーが、パラフィン、芳香族又はナフテンオイルを、エキステンダーオイルの0〜50phrの量で用いて、拡張されるようなものでもよい。
【0024】
本発明の別の主題は、本発明の架橋可能なゴム組成物の調製方法である。この方法は、
(i)鎖に沿って官能基を含み、且つモル比が30%よりも多い共役ジエン由来の単位を有するグラフト化ジエンエラストマーの調製であって、前記グラフト化エラストマーが、溶液中又は溶媒無しでメルカプタン型の試薬によって行われ、且つ前記基を出発ジエンエラストマーの鎖上にグラフト化することを意図するラジカルグラフト化反応によって得られ、前記グラフト化エラストマーが、前記グラフト化反応の前に前記エラストマーに適用される、少なくとも1種の芳香族アミン官能基を含む少なくとも1種の抗酸化剤を用いる抗酸化処理によって得られ、
(ii)最高温度130℃〜200℃において、前記グラフト化エラストマー及び補強無機充填剤を含み、架橋形成系を除く前記組成物の成分の熱機械加工の第一段階を行い、次に
(iii)前記第一段階の前記最高温度よりも低い温度において、前記架橋形成系を組み込む間に、機械加工の第二段階を行うこと
を含む。
【0025】
本発明の別の主題はさらに、タイヤのためのトレッドであり、例えば上記の架橋可能又は架橋ゴム組成物を含むようなもの、又はそれとは別にこの組成物から形成されるようなものである。
架橋状態において本発明のゴム組成物を特徴づける減少したヒステリシスによって、タイヤ、前記組成物を含むトレッドが、都合よく減少した転がり抵抗を有することに注目すべきである。
本発明のタイヤは、このトレッドを含むようなものである。
【0026】
本発明の上記の特徴は、他と同様に、以下の本発明のいくつかの実施例の記載を読むことでさらに理解され、これらは例証するために与えられ、限定されない。
【0027】
得られたポリマーを特徴づけるのに用いられる実験技術
a)SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)技術を、これらのポリマーのサンプルに関する分子量分布を決定するのに用いた。標準製品由来の特徴は、欧州特許第692,493号明細書の例1に記載されており、この技術は、サンプルとして、浸透圧測定によって決定するのとは異なり、相対量を有する数平均分子量(Mn)、及びさらに質量平均分子量(Mw)を評価することができる。このサンプルの多分散系指標(Ip=Mw/Mn)は、そこから導かれる。
この技術では、膨張したときのそれらの各サイズにより、多孔性固定相で充填されたカラムにおいて、巨大分子が物理的に分離される。この分離を行う前に、ポリマーのサンプルを、約1g/Lの濃度でテトラヒドロフランに溶解する。
モデル“150C”の名称“WATERS”で販売されているクロマトグラフを、上記の分離に用いる。溶離溶媒はテトラヒドロフラン、流量は1mL/分、系の温度は35℃、及び分析時間は30分である。2つの“WATERS”カラム一式を用い、型は“STYRAGEL HT6E”である。
ポリマーサンプル溶液の注入量は、100μLである。検出器は“WATERS”示差屈折率検出器であり、そのモデル番号は“R401”である。さらに、クロマトグラフィーのデータを処理するのにソフトウェアを用い、その商標名は“WATERS MILLENIUM”である。
【0028】
b)1H MNR技術を用いる分析方法を用い、COOH官能基と反応することが知られている過剰のジアゾメタンでエステル化した後、COOH官能基の量(ポリマーのmeq/kg)及びポリマー鎖当たりの対応する官能基単位の数を計算した。
さらに正確には、この方法は、ジアゾメタンを用い、エラストマーに固定されているCOOH官能基からメチルエステル官能基を得ることからなり、1H NMRによって、COOH官能基の量に対する間接的及び定量的方法を提供することができる。
(i)まず、ジアゾメタンを以下のように調製する。
それは、ジエチルエーテルの存在下及び氷解温度において、N-メチル-N-ニトロソパラトルエンスルホンアミドにおけるアルコール性水酸化カリウム溶液の作用によって得られる。次に、試薬を含むエーテル相を、簡単な蒸留で回収する。
次に、エステル化反応を、以下の手法において行う。
(ii)特定の手法で洗浄及び乾燥したエラストマーのサンプルを、トルエンに溶解させることにより、それを分析により特徴づけることができる。
(iii)この特定の調製は、トルエンにおける3つの連続する溶解操作、及びそれぞれに続いて、アセトン及び塩酸によってpH=2に酸性化された水から形成される混合物における凝集操作によってエラストマーを処理することからなり、残りの酸性化合物(特に、ストッパー、抗酸化剤、触媒残渣、例えばイソ吉草酸である副生成物)を除去することができる。次に、そのように処理されたエラストマーを、50℃、真空及び窒素雰囲気下のオーブンで乾燥する。
(iv)次に、ジアゾメタンを含むエーテル溶液を、COOH官能基に比べて試薬が過剰となるように、そこへ加える。その後、そのように処理されたポリマーを、メタノールで凝集する。次に、ポリマーを、周囲温度及び高真空下のオーブンでベーン(vane)ポンプによって乾燥する。
(v)次に、1H NMR分析を以下の手法で行う。
この方法でエステル化されたポリマーのサンプルを、二硫化炭素に溶解させる。1H NMRシグナルを、名称BRUKER AC200で販売されている分光計を用いて分析する。COOCH3の3つのメチルプロトンの特性シグナルは、官能性ポリマーにおけるCOOH官能基の最初の量に対する定量的方法を提供する。
いくつかの場合、COOH官能基の量は、赤外線(IR)技術を用いて素早く評価される。これは、カルボニルシグナル(1709cm-1)の表面積の積分比を、スチレン(1602cm-1)における芳香族プロトンのシグナルと比較することによって可能となる。
分析は、KBrプレート上に蒸着されたフィルム上で行い、後者は、1gの乾燥ゴムを50mLのトルエンに再溶解した後に製造される。用いられる赤外分光計は、名称BRUKER Vector 22で販売されている。
【0029】
c)ポリマー及びゴム組成物に対し、100℃におけるムーニー粘度ML(ML 1+4)は、Standard ASTM D-1646に基づいて測定する。
例えばStandard ASTM D-1646に記載の振動コンシストメーター(consistometer)が用いられる。ムーニー可塑性は、以下の原理によって測定する。未硬化状態(すなわち硬化前)の組成物を、100℃まで加熱した円筒形封入物で鋳造する。1分の予熱後、供試体内で回転子を2rpmで回転させ、この運動を保持するのに用いられるトルクを、4分の回転後に測定する。ムーニー可塑性(ML 1+4)を、“ムーニー単位”で表す(MU、1MU=0.83N.m)。
d)ポリマーのガラス転移温度Tgを、示差熱量計(“示差走査熱量計”)によって測定する。
【0030】
例1 40meq/kgにおいて、3-メルカプトプロピオン酸のグラフト化による処理されたエラストマー溶液内へのCOOH基の導入
1)用いられる出発エラストマー
溶液で調製され、1H NMRで決定される以下の微細構造特性を有するスチレン及びブタジエンのコポリマー(SBR)
スチレン単位の質量含有率 25.7%
ブタジエンから生じる単位の1,2(ビニル)結合の質量含有率 43.0%
このSBRは、-37℃のTg(ΔT=7)及び33.6のムーニー粘度ML(1+4)を有する。
2)この出発エラストマーに適用される発明に基づく又は基づかない処理
a)この出発SBRに適用され、0.4phrの6-PPD(N-(1,3-ジメチルブチル)-N'-p-フェニレンジアミン)の添加を含む抗酸化処理、及びそのように抗酸化されたSBR(SBR No.3)の一部とグラフト化することによるCOOH基の導入からなる本発明の処理、他の部分は、そのままの例(SBR No.1)における非官能性対照エラストマーとして作用させる。
b)本発明に基づかず、ポリマー(SBR No.2)を最初に抗酸化せずにグラフト化を行うことからなる処理。
3)ラジカルグラフト化の実行
45gの各抗酸化SBR(SBR No.1及びSBR No.3)を、750mLのスタイニーボトル(Steinie bottle)で、404mLのシクロヘキサン(又は315g)に溶解させる。80℃のタンクで10分間攪拌しながら80℃まで加熱した後、各ポリマー溶液を窒素で10分間バブリングし、再びタンクで10分間80℃まで加熱した。
同時に、シクロヘキサンの過酸化ラウロイル(Aldrich、97%)溶液を、250mLのスタイニーボトルであらかじめバブリングした過酸化物粉末から調製する。用いる過酸化物の量は、メルカプタン/過酸化物のモル比が48に等しいようにする(メルカプタンの量を、表1に示した)。この過酸化物溶液を、あらかじめ80℃で準備したポリマー溶液内にダブルニードル(double needle)で入れる。
これに続き、3-メルカプトプロピオン酸(Aldrich、99%)を、表1に示す種々の量で、シリンジを用いて注入する。
次に、ボトルを80℃のタンクに入れる。80℃で2時間後、40g/L(又は0.255g)の6-PPDのシクロヘキサン溶液6.4mLを加え、ボトルを15分間80℃のタンクに再び入れた。次に、反応媒体を、10mLの37%強塩酸(pH=2)の存在下でストリッピングする。ストリッピングしたポリマーをローラー乾燥し、最終的に減圧下及び窒素流下50℃のオーブンで乾燥する。
ストリッピングに加えて1又は2度の凝集を行う場合は(表2参照)、これらは、体積比率1/4/1である水/アセトン/35%HClの混合物と共にトルエン(37.5mL/g)に再溶解した後に行う。
以下の表1は、これらの合成として得られた結果、ムーニー粘度ML(1+4)、数平均分子量Mn(SEC技術)、多分散性指標Ip(SEC技術)、COOH官能基の量(IR技術)及び収率に関して示している。
表1

この表1は、抗酸化剤を用いないSBR No.2におけるCOOH基のラジカルグラフト化が、マクロ構造における変化を伴うことを示しており、ムーニー粘度の増加(+20.4ポイント)から明らかである。さらに、この表1は、本発明のSBR No.3における芳香族アミン官能基を含む抗酸化剤の存在が、グラフト化反応を阻害することなく、マクロ構造の変化を防ぐことを示している。しかし、グラフト化反応の収率は、芳香族アミン官能基を含む抗酸化剤が無いと改善されることに注目すべきである。これらの結果から、さらに明らかとなったのは、40meq/kgに近い量の官能基を得るには、芳香族アミン官能基を含む抗酸化剤が存在するときに、メルカプタンを反応媒体に導入することがさらに必要なことである。
さらに、芳香族アミン官能基を含む抗酸化剤の存在下又は無しでグラフト化されたSBRに対し、グラフト化反応の後に行われるストリッピング及び凝集処理の効果を評価する試みを行った。
【0031】
以下の表2は、“ストリッピング”された又はそれとは別に“ストリッピング”及び1又は2度凝集された各2種のグラフト化エラストマーに対し、NMRによって決定されるCOOH官能基の量の値をmeq/kgで示している。
表2

この表2は、グラフト化されたCOOH基の量が、実際にはグラフト化反応の後に行われる処理、すなわち、ストリッピング又はストリッピングに続く凝集に関わらず同じであることを示している。従って、ストリッピング工程は、エラストマー上にグラフト化されていないメルカプタンを十分に除去する。
【0032】
この例において、3種のエラストマーSBR No.1、SBR No. 2及びSBR No. 3aを用いて、トレッド型のゴム組成物No. 1、No. 2及びNo. 3aを調製した。それぞれは補強充填剤としてシリカを含む。これらの各組成物No. 1、No. 2及びNo. 3aは、以下の構成を有する(phrで表す、すなわちエラストマーの100部分当たりの部分)。
エラストマー 100
シリカ(1) 80
芳香族オイル(“EXERDEX 65”)(5) 39.5
結合剤(2) 6.4
ZnO 2.5
ステアリン酸 2
抗酸化剤(3) 1.9
抗オゾンワックス“C32ST”(6) 1.5
硫黄 1.2
スルフェンアミド(4) 2
ジフェニルグアニジン 1.5
(1)=Rhodiaのシリカ“Zeosil 1165 MP”
(2)=Degussaの結合剤“Si69”
(3)=N-(1,3-ジメチルブチル)-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン
(4)=N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド
(5)=Hansen & Rosenthal Europeanの芳香族オイル
(6)=Repsolの抗オゾンワックス
【0033】
以下の各組成物は、冷却相によって分けられる2つの工程による熱機械加工の第一段階、次に機械加工による第二最終段階で製造される。
エラストマー、3分の2の補強充填剤、カップリング剤、ジフェニルグアニジン及びステアリン酸、続いておよそ1分後、残りの補強充填剤、芳香族オイル及び抗オゾンワックス“C32ST”を、容量が400cm3である“Banbury”型の実験室用密閉式混合機内に連続して入れ、この混合機は70%充填され、最初の温度をおよそ90℃にする。
第一の熱機械加工工程は、約160℃の最大滴下温度が達成されるまで、4〜5分間行う。次に、エラストマーブロックを回収して冷却する。
次に、熱機械加工の第二工程を、約160℃の最大滴下温度が達成されるまで、同様の混合機で抗酸化剤を加えて3〜4分間行う。
熱機械加工の上記第一段階は、この第一段階中のブレードの平均速度を45rpmに特定して行われる。
そのようにして得られた混合物を、回収、冷却し、次に表面的混合機(均一仕上げ機)において、硫黄及びスルフェンアミドを30℃で、3〜4分間全てを混合して加える(機械加工の上記第二段階)。
次に、そのようにして得られた組成物を、切り抜き及び/又は組み立てて所望の寸法、例えばタイヤ、特にトレッドとしての半製品にした後、それらの物理的又は機械的特性を測定することができるようなゴムのシート(厚み2〜3mm)又は薄いフィルムの形態、又は直接用いることのできるプロファイルされた要素の形態のいずれかでカレンダーがけする。
架橋形成は、150℃で40分間行う。
全ての亜鉛一酸化物(ZnO)を、120℃で熱機械加工の第一段階に入れることで、架橋可能組成物No. 1、No. 2及びNo. 3aが得られることに注目すべきである。
結果を、以下の表3に示す。








表3
組成物 No. 1 No. 2 No. 3a
エラストマー SBR No. 1 SBR No. 2 SBR No. 3a
100℃におけるML(1+4)(ゴム) 30 49 38
非架橋状態における特性
100℃におけるML(1+4) 49 74 68
(“ムーニー混合物”)
架橋状態における特性
Shore A 67.7 59.5 59.6
ME10 5.56 3.35 3.59
ME100 1.87 2.05 2.10
ME300 2.04 2.75 2.76
ME300/ME100 1.09 1.34 1.31
20℃におけるスコット(Scott)破損指標
BL(MPa) 18.5 20.91 20.01
EB(%) 527 484 487
60℃における損失 33.57 19.87 20.2
変形の機能としての動的特性
23℃におけるΔG*(MPa) 4.34 0.29 0.32
23℃におけるTan(δ)最大値 0.338 0.145 0.149
【0034】
架橋状態の特性に関して、一方で、組成物No. 2及びNo. 3a(それぞれSBR No. 2及びSBR No. 3aに基づく)に関する比ME300/ME100が、組成物No. 1に関するそれよりも大きく、他方で、ヒステリシス特性(低い及び高い変形において)が、前記組成物No. 1のそれらと比べて著しく改善されることに注目すべきである。
本発明の組成物No. 3aが、抗酸化剤を用いずに鎖に沿ったCOOH官能基を含むエラストマーに基づく組成物No. 2のムーニー“混合物”の値よりも小さいそれを有することに注目すべきである。
言い換えれば、SBR No. 3aに基づく組成物No. 3aは、鎖に沿ってCOOH官能基、シリカを含み、且つ熱機械加工の第一段階の混合の第一工程中に、120℃において純粋なZnOの導入により特徴づけられ、減少したヒステリシスにより、組成物No. 1のゴム特性と比べて、且つ改善された加工能力により、組成物No. 2と比較して、改善された架橋状態におけるそれらを有する。
【0035】
例2 ラウロイル過酸化物の存在下又は不存在下における、3-メルカプトプロピオン酸又はメルカプトウンデカン酸によるCOOH基のグラフト化テスト
用いられる出発SBRは、例1のそれ(ML(1+4)=33.6)と同様である。
この出発SBRに適用される本発明の処理は、6-PPD(N-(1,3-ジメチルブチル)-N'-p-フェニレンジアミン)の0.4又は0.2phrの添加を含み、且つこのように保護されたSBR(それぞれSBR No. 4又はSBR No. 5)を“現状のままで”グラフト化する抗酸化処理から構成される。
用いられる操作方法は、加えられる生成物の性質及び量又はメルカプタンの導入方法に関して特に明記しない限り、例1に記載のものと同様である。実際、メルカプタンを、例1のポリマー溶液又は過酸化物溶液に直接加えた。操作条件を表No. 4に要約する。






表4

これらのグラフト化操作の結果を、表5に要約する。
表5

この表の結果は、6-PPDがグラフト化形成に不利に影響せず、且つ用いられるメルカプト酸に関わらず、6-PPDがマクロ構造の変化を防ぎ、6-PPDの量が多い場合はなおさらであることを確証している(抗酸化剤を0.2phrのみの異常な割合で加えたことにより、SBR No. 4aが、SBR No. 5aよりも劣化しないマクロ構造を有するために、グラフト化形成における抗酸化剤の量の影響が論証される)。これらの結果から、6-PPDの量が低くなればなるほど、グラフト化収率が高くなることが確証される(SBR No. 4aは、SBR No. 5aよりも少ない良好なグラフト化形成収率を有する)。
例1のSBR No. 4aとSBR No. 3との比較は、メルカプタンの導入方法が、グラフト化形成の有効性において、無視できる影響を有することを示している。
これらの結果はさらに、グラフト化形成が過酸化物を用いずに、マクロ構造の利点を与えることができるが、その収率はそれによって非常に不利に影響することを示している(SBR No. 5bは、SBR No. 5aよりも少ない良好なグラフト化収率を有する)。
【0036】
例3 異なるポリマーにおける3-メルカプトプロピオン酸によるCOOH基のグラフト化テスト
出発ポリマーは、可変性微細構造のSBR、及びBRである。グラフト化形成前に全て、0.4phrの6-PPD又は0.2phrの6-PPD及び0.2phrのBPH(2,2'-メチレンビス-4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)を加えることからなる本発明の処理に付した。
グラフト化形成に用いられる操作方法は、加えられる生成物の量に関して特に明記しない限り、例1に記載のものと同様である。出発ポリマー及び操作条件の特性を、表6に要約する。



表6

表7は、これらのグラフト化形成反応の全ての結果を共に導く。
表7

グラフト化形成を、広範なポリマーに適用することがこの表から明らかである。これらの結果は、微細構造とグラフト化形成の有効性との間の関係の存在を論証している。すなわち、ビニルの量が大きくなればなるほど、抗酸化剤がグラフト化形成中に反応媒体に存在することに関わらず(芳香族アミン単独又はフェノールと共に)、収率が高くなる。
【0037】
この例において、8種のエラストマーSBR No. 6、SBR No. 7b、SBR No. 8b、SBR No. 9b、SBR No. 10、SBR No. 11b、BR No. 12及びBR No. 13を用いて、トレッド型のゴム組成物No. 6、No. 7、No. 8、No. 9、No. 10、No. 11、No. 12及びNo. 13を調製し、それぞれは補強充填剤としてシリカを含む。
【0038】
これらの組成物No. 6及びNo. 7のそれぞれは、以下の構成を有する(phrで表す、phrはエラストマーの100部分当たりの部分)。
エラストマー 75
PB113 25
シリカ(1) 80
芳香族オイル(“ENERDEX 65”)(5) 37
結合剤(2) 6.4
ZnO 2.5
ステアリン酸 2
抗酸化剤(3) 1.9
抗オゾンワックス“C32ST”(6) 1.5
硫黄 1.2
スルフェンアミド(4) 2
ジフェニルグアニジン 1.5
(1)=Rhodiaのシリカ“Zeosil 1165 MP”
(2)=Degussaの結合剤“Si69”
(3)=N-(1,3-ジメチルブチル)-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン
(4)=N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド
(5)=Hansen & Rosenthal Europeanの芳香族オイル
(6)=Repsolの抗オゾンワックス
【0039】
これらの組成物No. 8及びNo. 9bのそれぞれは、以下の構成を有する(phrで表す、phrはエラストマーの100部分当たりの部分)。
エラストマー 100
シリカ(1) 50
結合剤(2) 8
ZnO 2.5
ステアリン酸 2
抗酸化剤(3) 2
パラフィン 1
硫黄 1.2
スルフェンアミド(4) 1.2
ジフェニルグアニジン 1
ZBEC(5) 0.2
(1)=Rhodiaのシリカ“Zeosil 1165 MP”
(2)=ブラック上に支持されたDegussaの結合剤“Si69”
(3)=N-(1,3-ジメチルブチル)-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン
(4)=N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド
(5)=亜鉛ジベンジルジチオカルバメート
【0040】
これらの組成物No. 10及びNo. 11のそれぞれは、以下の構成を有する(phrで表す、phrはエラストマーの100部分当たりの部分)。
エラストマー 100
シリカ(1) 50
結合剤(2) 8
ZnO 2.5
ステアリン酸 2
抗酸化剤(3) 2
パラフィン 1
硫黄 1.2
スルフェンアミド(4) 1.2
ジフェニルグアニジン 1
ZBEC(5) 0.2
(1)=Rhodiaのシリカ“Zeosil 1165 MP”
(2)=ブラック上に支持されたDegussaの結合剤“Si69”
(3)=N-(1,3-ジメチルブチル)-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン
(4)=N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド
(5)=亜鉛ジベンジルジチオカルバメート
【0041】
これらの組成物No. 12及びNo. 13のそれぞれは、以下の構成を有する(phrで表す、phrはエラストマーの100部分当たりの部分)。
エラストマー 100
シリカ(1) 80
芳香族オイル(“ENERDEX 65”)(5) 39.5
結合剤(2) 6.4
ZnO 2.5
ステアリン酸 2
抗酸化剤(3) 1.9
抗オゾンワックス“C32ST”(6) 1.5
硫黄 1.2
スルフェンアミド(4) 2
ジフェニルグアニジン 1.5
(1)=Rhodiaのシリカ“Zeosil 1165 MP”
(2)=Degussaの結合剤“Si69”
(3)=N-(1,3-ジメチルブチル)-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン
(4)=N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド
(5)=Hansen & Rosenthal Europeanの芳香族オイル
(6)=Repsolの抗オゾンワックス
【0042】
以下の各組成物No. 6、No. 7、No. 8、No. 9、No. 10、No. 11、No. 12及びNo. 13は、冷却相によって分けられる2工程よる熱機械加工の第一段階、次に機械加工による第二最終段階において製造される。
その容量が400cm3である“Banbury”型の実験室用密閉式混合機内に、70%充填され、且つその最初の温度が約90℃で、エラストマー、3分の2の補強充填剤、カップリング剤、ジフェニルグアニジン及びステアリン酸、続いて、およそ1分後、残りの補強充填剤、芳香族オイル及び抗オゾンワックス“C32ST”又はパラフィン6266を、連続的に導入する。
第一の熱機械加工工程は、約160℃の最大滴下温度が達成されるまで、4〜5分間行う。続いて、エラストマーブロックを回収及び冷却する。
次に、熱機械加工の第二工程を、同様の混合機で3〜4分間、抗酸化剤を加え、約160℃の最大滴下温度が達成されるまで行う。
熱機械加工の上記第一段階は、この第一段階中のブレードの平均速度を45rpmに特定して行われる。
そのようにして得られた混合物を回収し、冷却し、及び続いて、表面的混合機(均一仕上げ機)において、硫黄、スルフェンアミド及びZBEC(もしあれば)を、さらに3〜4分間全てを混合することによって30℃で加える(機械加工の上記第二工程)。
次に、そのようにして得られた組成物を、切り抜き及び/又は組み立てて所望の寸法、例えばタイヤ、特にトレッドとしての半製品にした後、それらの物理的又は機械的特性を測定することができるようなゴムのシート(厚み2〜3mm)又は薄いフィルムの形態、又は直接用いることのできるプロファイルされた要素の形態のいずれかでカレンダーがけする。
架橋形成は、150℃で40分間行う。
全ての亜鉛一酸化物(ZnO)を、120℃で熱機械加工の第一工程中に導入することで、架橋可能組成物No. 6、No. 7、No. 8、No. 9、No. 10、No. 11、No. 12及びNo. 13を得ることができることに注目すべきである。
結果を、以下の表8、9、10及び11に示す。
【0043】
表8
組成物 No. 6 No. 7
エラストマー SBR No. 6 SBR No. 7b
100℃におけるML(1+4)(ゴム) 50.0 54.0
非架橋状態における特性
100℃におけるML(1+4) 58 56
(“ムーニー混合物”)
架橋状態における特性
Shore A 62.3 56.3
ME10 4.44 3.03
ME100 1.64 1.59
ME300 2.03 2.19
ME300/ME100 1.24 1.37
20℃におけるスコット(Scott)破損指標
BL(MPa) 18.97 21.76
EB(%) 512 576
60℃における損失 26.28 21.17
変形の機能としての動的特性
23℃におけるΔG*(MPa) 3.46 0.44
23℃におけるTan(δ)最大値 0.348 0.174
【0044】
架橋状態の特性に関して、一方で、組成物No. 7(SBR No. 7bに基づく)に関する比ME300/ME100が、組成物No. 6に関するそれよりも大きく、他方で、ヒステリシス特性(低い及び高い変形において)が、前記組成物No. 6のそれらと比べて著しく改善されることに注目すべきである。
言い換えれば、SBR No. 7bに基づく組成物No. 7は、鎖に沿ってCOOH官能基、シリカを含み、且つ熱機械加工の第一段階の混合の第一工程中に120℃において純粋なZnOの導入により特徴づけられ、組成物No. 6のゴム特性と比較して、明確に改善された架橋状態のそれらを有する(特に低い変形におけるヒステリシス特性)。








【0045】
表9
組成物 No. 8 No. 9
エラストマー SBR No. 8 SBR No. 9b
100℃におけるML(1+4)(ゴム) 55.0 58.0
非架橋状態における特性
100℃におけるML(1+4) 56 74
(“ムーニー混合物”)
架橋状態における特性
Shore A 69.5 66.0
ME10 7.28 5.91
ME100 2.67 2.74
ME300 3.43 4.06
ME300/ME100 1.28 1.48
20℃におけるスコット(Scott)破損指標
BL(MPa) 21.56 23.69
EB(%) 385 371
60℃における損失 23.17 18.10
変形の機能としての動的特性
23℃におけるΔG*(MPa) 2.87 0.53
23℃におけるTan(δ)最大値 0.195 0.103
【0046】
架橋状態の特性に関して、一方で、組成物No. 9(SBR No. 9bに基づく)に関する比ME300/ME100が、組成物No. 8に関するそれよりも大きく、他方で、ヒステリシス特性(低い及び高い変形において)が、前記組成物No. 8のそれらと比べて著しく改善されることに注目すべきである。
言い換えれば、SBR No. 9bに基づく組成物No. 9は、鎖に沿ってCOOH官能基、シリカを含み、且つ熱機械加工の第一段階の混合の第一工程中に120℃において純粋なZnOの導入により特徴づけられ、組成物No. 8のゴム特性と比較して、明確に改善された架橋状態のそれらを有する(特に低い変形におけるヒステリシス特性)。


















【0047】
表10
組成物 No. 10 No. 11
エラストマー SBR No. 10 SBR No. 11b
100℃におけるML(1+4)(ゴム) 54.5 60.0
非架橋状態における特性
100℃におけるML(1+4) 53.3 76.4
(“ムーニー混合物”)
架橋状態における特性
Shore A 69.2 66.6
ME10 6.69 5.47
ME100 2.14 2.25
ME300 2.72 3.27
ME300/ME100 1.27 1.45
20℃におけるスコット(Scott)破損指標
BL(MPa) 26.26 20.41
EB(%) 475 347
60℃における損失 29.2 24.1
変形の機能としての動的特性
23℃におけるΔG*(MPa) 3.37 0.73
23℃におけるTan(δ)最大値 0.233 0.140
【0048】
架橋状態の特性に関して、一方で、組成物No. 11(SBR No. 11bに基づく)に関する比ME300/ME100が、組成物No. 10に関するそれよりも大きく、他方で、ヒステリシス特性(低い及び高い変形において)が、前記組成物No. 10のそれらと比べて著しく改善されることに注目すべきである。
言い換えれば、SBR No.11bに基づく組成物No. 11は、鎖に沿ってCOOH官能基、シリカを含み、且つ熱機械加工の第一段階の混合の第一工程中に120℃において純粋なZnOの導入により特徴づけられ、組成物No. 10のゴム特性と比較して、明確に改善された架橋状態のそれらを有する(特に低い変形におけるヒステリシス特性)。



















【0049】
表11
組成物 No. 12 No. 13
エラストマー BR No. 12 BR No. 13
100℃におけるML(1+4)(ゴム) 30.0 39.5
非架橋状態における特性
100℃におけるML(1+4) 80.4 95.1
(“ムーニー混合物”)
架橋状態における特性
Shore A 61.9 58.0
ME10 4.59 3.72
ME100 1.47 1.49
ME300 1.47 1.67
ME300/ME100 1.00 1.12
20℃におけるスコット(Scott)破損指標
BL(MPa) 17.99 17.17
EB(%) 628 523
60℃における損失 23.7 20.6
変形の機能としての動的特性
23℃におけるΔG*(MPa) 3.05 0.69
23℃におけるTan(δ)最大値 0.254 0.133
【0050】
架橋状態の特性に関して、一方で、組成物No. 13(BR No. 13に基づく)に関する比ME300/ME100が、組成物No. 12に関するそれよりも大きく、他方で、ヒステリシス特性(低い及び高い変形において)が、前記組成物No. 12のそれらと比べて著しく改善されることに注目すべきである。
言い換えれば、BR No. 13に基づく組成物No. 13は、鎖に沿ってCOOH官能基、シリカを含み、且つ熱機械加工の第一段階の混合の第一工程中に120℃において純粋なZnOの導入により特徴づけられ、組成物No. 12のゴム特性と比較して、明確に改善された架橋状態のそれらを有する(特に低い変形におけるヒステリシス特性)。
【0051】
例4 溶媒を用いない3-メルカプトウンデカン酸によるCOOH基のグラフト化テスト
用いられる出発SBRは、例3のSBR No. 6と同様である(ML(1+4)=50)。
この出発SBRに適用される本発明の処理は、0.4又は0.2phrの6-PPD(N-(1,3-ジメチルブチル)-N'-p-フェニレンジアミン)の添加を含み、且つそのように酸化されたSBR(SBR No. 14)を“そのままで”グラフト化する抗酸化処理からなる。
用いられる操作方法は、以下の通りである。
反応を、戸外において、表12に示されている通りの操作の全保持時間の間、40℃又は100℃に保持されるブラベンダー(Brabender)型の混合機械で行う。
40gのゴムを加え、混合機において2分間予熱する。次に、ラウロイル過酸化物(もしあれば)を、“そのままで”(粉末形態)で加え、続いてメルカプトウンデカン酸も粉末形態で加える。これら2種の試薬を、当該テスト(表12参照)に従い、種々の割合で加える。反応混合物を、5分間混合し、ブラベンダーを止め、ゴムを回収、冷却し、分析する。
得られたゴムの特性を、表13に示す。





【0052】
表12

表13

これらの結果は、グラフト化が、溶媒を用いず、40℃及び100℃において、過酸化物を用いても用いなくても行うことができることを示している。過酸化物の無い場合、SBR No. 14b及び14cで示されているように、過酸化物と共に行われるテストと同じ量の官能基を得るには、より多くメルカプトを充填する必要がある。溶液におけるグラフト化のように、マクロ構造の劣化は、過酸化物が無いと弱まる。さらにこれらの表から明らかなのは、マクロ構造の変化は、反応温度が高くなればなるほど、全てが高まることである(粘度の変量は、SBR No. 14cの方がSBR No. 14bよりも多いが、後者は6倍よりも多いメルカプト酸と共に行う)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鎖に沿って官能基を含むグラフト化ジエンエラストマーを得る方法であって、当該方法が、溶液中又は溶媒無しで、メルカプタン型の試薬によって行われ、且つ出発エラストマーの鎖に前記基をグラフト化することを意図するラジカルグラフト化反応を含み、前記方法が、前記グラフト化反応の前に、少なくとも1種の芳香族アミン官能基を含む抗酸化剤による抗酸化処理工程を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記抗酸化剤が、ナフチルアミン、ジフェニルアミン、p-フェニレンジアミン及びこれらの化合物の混合物からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記抗酸化剤が、少なくとも1種のフェノール官能基をさらに含む、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
さらに、少なくとも1種のフェノール官能基を含む少なくとも1種の第二の抗酸化剤が用いられる、請求項1又は2記載の方法。
【請求項5】
前記第二の抗酸化剤が、トリアルキルフェノール、ヒドロキノン、ポリフェノール及びそのような化合物の混合物からなる群から選択される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
抗酸化剤の全量が、0.2phr〜1.0phr(phrは、前記出発ジエンエラストマーの100部分当たりの質量部)の範囲内である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記メルカプタン型の試薬が、ヒドロキシル、カルボニル、エーテル、アミン、ニトリル及びシラン基からなる群から選択される官能基を含むことにより、前記グラフト化エラストマーが、その鎖に沿って所望の各ヒドロキシル、カルボニル、エーテル、アミン、ニトリル又はシラン基を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記メルカプタン型の試薬が、カルボン酸、カルボン酸エステル、アミド及びケトン基からなる群に属するカルボニル官能基を含むことにより、前記グラフト化エラストマーが、その鎖に沿って所望のカルボン酸、カルボン酸エステル、アミド又はケトン基を含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記メルカプタン型の試薬、例えばメルカプトプロピオン酸又はメルカプトウンデカン酸が、カルボン酸官能基を含むことにより、前記グラフト化エラストマーが、その鎖に沿ってカルボン酸基を含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記グラフト化反応が、ラジカル開始剤の存在下で行われる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記ラジカル開始剤が、過酸化物である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記出発エラストマーが、30%よりも多いモル比の共役ジエン由来の単位を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載のグラフト化ジエンエラストマーを得る方法。
【請求項13】
請求項12記載のグラフト化ジエンエラストマーを得る方法であって、前記出発エラストマーが、
・4〜12個の炭素原子を有する共役ジエンモノマーの溶液重合によって得られるホモポリマー、例えばポリブタジエン又はポリイソプレン、又は
・1種以上の共役ジエン、及び/又は8〜20個の炭素原子を有する1種以上のビニル芳香族化合物との溶液共重合によって得られるコポリマー、例えばブタジエン/ビニル芳香族化合物又はブタジエン/ビニル芳香族化合物/イソプレンコポリマー
である、方法。
【請求項14】
抗酸化剤処理の第二工程が、ラジカルグラフト化反応後に行われる、請求項1〜13のいずれか1項に記載のグラフト化ジエンエラストマーを得る方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法によって得ることのできる、その鎖に沿って官能基を含むグラフト化ジエンエラストマー。
【請求項16】
タイヤトレッドを構成するのに用いることのできる架橋可能又は架橋ゴム組成物であって、少なくとも1種の補強無機充填剤、及び請求項12〜14のいずれか1項に記載の方法によって得ることのできるグラフト化ジエンエラストマーを含む、ゴム組成物。
【請求項17】
前記グラフト化エラストマーが含む前記官能基が、ヒドロキシル、カルボニル、エーテル、アミン、ニトリル及びシラン基からなる群に属する、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
前記官能基が、カルボニル型であり、且つカルボン酸、カルボン酸エステル、アミド及びケトン基からなる群に属する、請求項16記載の組成物。
【請求項19】
前記官能基が、カルボン酸型である、請求項16記載の組成物。
【請求項20】
請求項16〜19のいずれか1項に記載の組成物であって、前記グラフト化エラストマーが、
・4〜12個の炭素原子を有する共役ジエンモノマーの溶液重合によって得られるホモポリマー、例えばポリブタジエン又はポリイソプレン、又は
・1種以上の共役ジエン、及び/又は8〜20個の炭素原子を有する1種以上のビニル芳香族化合物との溶液共重合によって得られるコポリマー、例えばブタジエン/ビニル芳香族化合物又はブタジエン/ビニル芳香族化合物/イソプレンコポリマー
から得られる、組成物。
【請求項21】
前記グラフト化エラストマーが、溶液において調製されるブタジエン/ビニル芳香族化合物コポリマーから得られる、請求項20記載の組成物。
【請求項22】
前記グラフト化エラストマーが、100,000g/molよりも多い数平均分子量Mnを有する、請求項16〜21のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項23】
大部分の割合で前記グラフト化エラストマーを含むエラストマーマトリックスに基づく、請求項16〜22のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項24】
前記グラフト化エラストマーから構成されるエラストマーマトリックスを含む、請求項16〜23のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項25】
前記組成物が、前記補強無機充填剤を含む補強充填剤を含み、前記補強無機充填剤が、50%よりも多く、100%程度の質量フラクションで前記補強充填剤に存在する、請求項16〜24のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項26】
請求項16〜25のいずれか1項に記載の架橋可能組成物を得る方法であって、
(i)請求項12〜14のいずれか1項に記載の方法によって得ることのできるグラフト化ジエンエラストマーの調製、
(ii)最高温度130℃〜200℃において、前記グラフト化エラストマー及び補強無機充填剤を含み、架橋形成系を除く前記組成物の成分の熱機械加工の第一段階を行うこと、次に
(iii)前記第一段階の前記最高温度よりも低い温度において、前記架橋形成系を組み込む間に、機械加工の第二段階を行うこと
を含む、方法。
【請求項27】
請求項16〜25のいずれか1項に記載の架橋可能又は架橋ゴム組成物を含む、タイヤトレッド。
【請求項28】
前記架橋可能又は架橋ゴム組成物から形成される、請求項27記載のタイヤトレッド。
【請求項29】
請求項27又は28記載のトレッドを含む、減少した転がり抵抗を有するタイヤ。

【公表番号】特表2006−524725(P2006−524725A)
【公表日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505312(P2006−505312)
【出願日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【国際出願番号】PCT/EP2004/004510
【国際公開番号】WO2004/096865
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(599093568)ソシエテ ド テクノロジー ミシュラン (552)
【出願人】(599105403)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (228)
【Fターム(参考)】