説明

鎖末端官能性化したポリエチレンオキシド及びこれを用いたナノ寸法の遷移金属及びその塩の製造方法

【課題】
リビングアニオン重合及び鎖末端官能性化により得られた一般式(I)〜(IV)の新規な鎖末端官能性化したポリエチレンオキシド及びこれを用いて水溶液中においても安定化可能なナノ寸法の遷移金属またはその塩を簡単に製造する方法を提供する。
【解決手段】
本発明による、ビタミン、抗癌剤などの薬物をはじめとして種々の機能性基を有する水溶性ポリエチレンオキシド系高分子及びこれを用いたナノ寸法の遷移金属またはその塩の製造方法は、造影剤及び抗癌剤の伝達体系として使用可能な新素材を開発する上で有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鎖末端官能性化したポリエチレンオキシド及びこれを用いたナノ寸法の遷移金属及びその塩の製造方法に係り、さらに詳しくは、リビングアニオン重合と鎖末端官能性化により得られた新規な鎖末端官能性化したポリエチレンオキシド系高分子及びこれを用いて水溶液中においても安定化し易いナノ寸法の遷移金属またはその塩の粒子を簡単に製造することのできる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、非水溶性薬物などのカプセル化に有用なポリエチレンオキシドの一方の末端を官能性化させる方法及びこれらの応用分野などが研究されてきている(Harris et al., Nature Reviews Drug Discovery, 2003, Vol. 2, pages 214-221; Zalipsky et al., Bioconjugate Chemistry, 1995, Vol. 6, pages 150-165)。これと関連して、リビングアニオン重合法を用いてポリエチレングリコールなどのポリエチレンオキシドを合成する方法は、文献[Slomkowski et al., "Anionic Ring-opening Polymerization", in Ring-Opening Polymerization: Mechanism, Catalysis, Structure, Utility, Editied by D.J. Brunelle, 1993, Chap. 3, pages 87-128; Quirk et al., "Macromonomers and Macromonomers", in Ring-Opening Polymerization: Mechanism, Catalysis, Structure, Utility, Editied by D.J.Brunelle, 1993, Vol.9, pages 263-293]によく説明されている。
【0003】
また、ポリエチレングリコールとその他の高分子物質とのブロック共重合体を製造する方法は、文献[Jankova et al., Macromolecules, 1998, Vol. 31, pages 538-541; Topp et al., Macromolecules, 1997, Vol. 30, pages 8518-8520]に開示されており、特に、ポリエチレングリコールとポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(PNiPAM)とのブロック共重合体を用いて製造されたミセルは熱応答性を示すことがよく知られている。
【0004】
一方、pH応答性のあるヒドロゲルとしては、カルボキシ基、スルホン酸基、アミン基またはアンモニウム基を有するビニル系単量体の重合により得られた高分子電解質が用いられてきている(Harland et al., "Polyelectrolyte Gels, Properties, Preparation, and Applications," ACS Symp. Series # 480, Am. Chem. Soc., 1992, Chap. 17, page 285)。
【0005】
しかしながら、既存の方法はポリエチレングリコールなどのポリエチレンオキシドの一方の末端をメチル基などにより保護した後、他方の末端を官能性化させる方法であって、多数の段階を経ることが余儀なくされるが故に、歩留まりが低いという不都合があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、非水溶性薬物のカプセル化、増進された透過力及び維持効果を得るために用いられるポリエチレンオキシドに薬物などの種々の官能性化物質を効率よく付着させるための鎖末端官能性化方法及びこれを用いてナノ寸法の遷移金属またはその塩の粒子を簡単に製造可能な方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明においては、下記一般式(I)〜(IV)で表される化合物よりなる群から選ばれる鎖末端官能性化したポリエチレンオキシドを提供する。
【0008】
【化1】

【0009】
【化2】

【0010】
【化3】

【0011】
【化4】

【0012】
式中、Rはメチル、n−ブチル、2級ブチルまたは3級ブチルであり、
1及びR5はそれぞれ独立して水素またはメチルであり、
2はN−イソプロピルアミド、スルファベンゼン、スルフィオキサゾール、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファジメトキシン、スルファジアジン、スルファメトキシピリダジン、スルファメタジン、スルフィソイミジン、スルファピリジン、インジスラム及びアンプレナビルよりなる群から選ばれる官能基を有するアミド基であり、
3は水素、イソブチルアクリロニトリル、フェニルまたはハロゲンであり、
4はフェニルまたはイソブチルアクリロニトリルであり、
Xは水素、プロピレンスルホン酸、2−ブロモイソブチリル、2−ブロモプロピオニル、プロピレンスルフィド、メタクリレートまたはフタリック・アンヒドリド基であり、
Yはスルファベンゼン、スルフィオキサゾール、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファジメトキシン、スルファジアジン、スルファメトキシピリダジン、スルパメタジン、スルピソイミディン、スルファピリジン、インジスラム、アンプレナビルなどのスルポンアミドグルプ、葉酸などのビタミングルプ、ドキソルビシン、パクリタキセルまたはバンコマイシンなどの薬物であり、
nは10〜500の整数であり、
kは1〜10の整数であり、
mは5〜50の整数である。
【0013】
本発明において、また、a)アルキルリチウムを開始剤として用いるリビングアニオン重合により数平均分子量(Mn)が500〜100、000g/mol、もうよくには1,000〜20,000g/ molに調節されたポリエチレンオキシドを与えるステップと、b)ステップa)において得られたポリエチレンオキシドを官能性化物質と高真空下で反応させて一般式(I)または(II)で表される化合物を得るステップと、c)ステップb)において得られた 化合物のうち置換基Xが2−ブロモイソブチリル、2−ブロモプロピオニルまたはメタアクリレート基である化合物をN−イソプロピルアクリルアミドまたはスルホンアミドメタクリレート系単量体と溶媒中においてラジカル重合反応させて下記一般式(III)または(IV)で表されるグラフトまたはブロック共重合体を得るステップと、d)ステップb)またはc)において得られた下記一般式(I)〜(IV)の化合物から選ばれる鎖末端官能性化したポリエチレンオキシド系高分子と金属塩水溶液を還元剤の存在下で反応させて上記高分子でミセル化した1〜500nm範囲のナノ寸法の遷移金属またはその塩を得るステップと、を含むナノ寸法の遷移金属またはその塩の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明による方法は、ビタミン、抗癌剤物質、スルホンアミド系物質などの種々の薬物が付着した、分子量の調節されたポリエチレンオキシド系高分子薬物、及びpHまたは熱応答性を有するポリエチレンオキシド系グラフトまたはブロック共重合体を容易に製造することができる他、上記種々の鎖末端官能性化したポリエチレンオキシド系高分子を用いて1〜500nm、好ましくは、1〜100nm範囲のナノ寸法の遷移金属またはその塩の粒子を容易に製造することができて、造影効果及び抗癌剤の伝達体系に用いて好適な新素材を開発する上で有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を詳述する。
【0016】
本発明は、下記一般式(I)〜(IV)よりなる群から選ばれる、数平均分子量500〜100、000g/molのポリエチレンオキシドの鎖末端にビタミン、抗癌剤などの薬物をはじめとする種々の官能性化物質が付着したポリエチレンオキシド及びポリエチレンオキシド系グラフトまたはブロック共重合体などの新規な高分子薬物素材及びこれを用いて上記高分子マトリックス内に安定化させたナノ寸法の遷移金属またはその塩の製造方法に関する。
【0017】
【化5】

【0018】
【化6】

【0019】
【化7】

【0020】
【化8】

【0021】
式中、Rはメチル、n−ブチル、2級ブチルまたは3級ブチルであり、
1及びR5はそれぞれ独立して水素またはメチルであり、
2はN−イソプロピルアミド、スルファベンゼン、スルフィオキサゾール、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファジメトキシン、スルファジアジン、スルファメトキシピリダジン、スルファメタジン、スルフィソイミジン、スルファピリジン、インジスラム及びアンプレナビルよりなる群から選ばれる官能基を有するアミド基であり、
3は水素、イソブチルアクリロニトリル、フェニルまたはハロゲンであり、
4はフェニルまたはイソブチルアクリロニトリルであり、
Xは水素、プロピレンスルホン酸、2−ブロモイソブチリル、2−ブロモプロピオニル、プロピレンスルフィド、メタクリレートまたはフタリック・アンヒドリド基であり、
Yはスルファベンゼン、スルフィオキサゾール、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファジメトキシン、スルファジアジン、スルファメトキシピリダジン、スルメタジン、スルピそイミディン、スルファピリジン、インジスラム、アンプレナビルなどのスルポンアミドグルプ、葉酸などのビタミングルプ、ドキソルビシン、パクリタキセルまたはバンコマイシンなどの薬物であり、
nは10〜500の整数であり、
kは1〜10の整数であり、
mは5〜50の整数である。
【0022】
本発明によるナノ寸法の遷移金属またはその塩の製造方法は、a)アルキルリチウム開始反応によるエチレンオキシドのリビングアニオン重合により分子量の調節されたポリエチレンオキシドを与えるステップと、b)鎖末端官能性化したポリエチレンオキシドを得るステップと、c)ステップb)において得られた官能性化したポリエチレンオキシドのうちマクロモノマー及びマクロ開始剤を用いて水溶液中においてグラフトまたはブロック共重合体を得るステップと、d)ステップb)及びc)において得られた高分子物質を用いてナノ寸法の遷移金属またはその塩を得るステップとを含む。
【0023】
以下、本発明による鎖末端官能性化したポリエチレンオキシド及びこれを用いたナノ寸法の遷移金属またはその塩の製造方法を詳細に説明する。
【0024】
まず、アニオンリビング重合を行うステップa)において、エチレンオキシド単量体を開始剤の存在下で溶媒中において20〜60℃の範囲の温度下でリビングアニオン重合反応させて分子量が500〜100、000に調節されたリビングポリエチレンオキシドが得られる。このとき、重合しようとする高分子の分子量は、単量体の量と開始剤の濃度比とで調節可能である。
【0025】
上記ステップa)において、開始剤としては、アルキルリチウム、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ジイソプロピルアミノリチウムとナトリウム(Na)、カリウム(K)、セシウム(Cs)、ルビジウム(Rb)などのアルカリ金属でリチウムを置換したアルキルアルカリ金属系の開始剤とアルキルアルコキシドアルカリ金属系の開始剤を用いることができる。また、溶媒としては、非極性溶媒(例えば、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンなど)、または極性溶媒(例えば、テトラヒドロフラン(THF))とジメチルスルホキシド(DMSO)との混合溶液(溶媒/DMSO=90/10〜70/30、体積比)を用いることができる。
【0026】
ポリエチレンオキシドの鎖末端官能性化を行うステップb)は、ステップa)において得られたリビングポリエチレンオキシドを、塩酸/メタノール、硫酸/メタノールなどの酸溶液、スルトン(例えば、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトンなど)、エチレンスルフィド、プロピレンスルフィド、トリメリチック・アンヒドリド・クロリド、メタクリロイルクロリド、2−ブロモイソブチリルブロミド、2−ブロモプロピオニルブロミド、2−ブロモプロピオニルクロリドなどと高真空下で反応させることにより行うことができる。
【0027】
ステップb)において用いられる溶媒としては、ベンゼン/DMSO、ベンゼン/メタノール/DMSOなどが挙げられ、反応温度は20〜80℃の範囲であり、反応時間は6〜48時間の範囲である。
【0028】
上記のステップにおいて分子量が調節されたポリエチレンオキシドの鎖末端に種々の機能性基を定量的に取り込むことができ、下記一般式(I)または(II)で表される鎖末端官能性化したポリエチレンオキシドが得られる。ここで、機能性基としては、ヒドロキシル基(−OH)、スルホン酸基(−SO3H)、チオール基(−SH)、カルボキシ基(−COOH)、スルホンアミド基(−SO2NH−)または葉酸などのビタミン;ドキソルビシン、パクリタクセル、バンコマイシンなどの薬物;アンプレナビルなどのスルホンアミド系の薬物などを含んでいてもよい。
【0029】
【化9】

【0030】
【化10】

【0031】
式中、R、X、Y及びnは上記の定義の通りである。
【0032】
具体的に、例えば、ステップa)において得られたリビングポリエチレンオキシドを酸/メタノール混合溶液と反応させることにより鎖末端に−OHが導入され、1,3−プロパンスルトンなどのスルトンと反応させるか、または、プロピレンスルフィド単量体と反応させた後、さらに酸/メタノールを混合溶液と反応させることにより、それぞれ−SO3H及び−SH基が導入された一般式(I)の化合物が得られる。
【0033】
さらに、ステップa)において得られたリビングポリエチレンオキシドをトリメリチック・アンヒドリド・クロリドと反応させてアンヒドリド基含有のポリエチレンオキシドを得た後、これを溶媒中において葉酸などのビタミン;ドキソルビシン、パクリタクセル、バンコマイシンなどの薬物、及びアンプレナビルなどのスルホンアミド系薬物などと反応させることにより、ポリエチレンオキシド鎖末端に薬物が導入された一般式(II)の高分子薬物を得ることもできる。
【0034】
グラフトまたはブロック共重合体を得るステップc)においては、ステップb)において得られた鎖末端官能性化したポリエチレンオキシドのうちXが2−ブロモイソブチリル基または2−ブロモプロピオニル基である一般式(I)のマクロ開始剤を用いて、イソプロピルアクリルアミド(NiPAM)、またはスルファジアジンなどのスルホンアミド系メタクリルアミド単量体と溶媒中において開始剤の存在下でラジカル重合反応させて、下記一般式(III)のブロック共重合体、またはXがメタアクリレート基である一般式(I)のマクロモノマーとイソプロピルアクリルアミド(NiPAM)、またはスルファジアジンなどのスルホンアミド系メタクリルアミド単量体と溶媒中において開始剤(BPOまたはAIBN)の存在下でラジカル重合反応させて、下記一般式(IV)で表されるグラフト共重合体である、熱またはpH応答性のポリエチレンオキシド系の共重合体が得られる。
【0035】
【化11】

【0036】
【化12】

【0037】
式中、R、R1、R2、R3、R4、R5、n、k及びmは上記の定義の通りである。
【0038】
上記ステップc)において用いられる反応溶媒としては、水またはステップa)において挙げられた極性または非極性溶媒とDMSOとの混合溶媒を用いることができ、開始剤としては、ベンゾイルパーオキシドまたはアゾビスイソブチロニトリル、銅系原子転移ラジカル重合触媒などを用いることができ、さらに、反応温度は20〜80℃の範囲であることが好ましい。
【0039】
次いで、ステップd)において、ステップb)またはc)において得られた一般式(I)〜(IV)の化合物から選ばれる鎖末端官能性化したポリエチレンオキシド系高分子を溶媒に溶解させた後、金属塩水溶液と還元剤を添加して反応させて、上記高分子でミセル化した形態の1〜500nm、好ましくは、1〜100nm範囲のナノ寸法の遷移金属またはその塩の粒子が得られる。
【0040】
上記ステップd)において、ナノ寸法の金属または遷移金属塩の製造のための出発物質として用いられる金属塩水溶液の濃度は、0.01〜10g/mLの範囲であることが好ましく、高分子:金属塩のモル比が100:1〜1:1の範囲になるように添加する。なお、反応温度は5〜70℃、好ましくは、10〜50℃の範囲であり、還元剤としては、水酸化アンモニウム(NH4OH)、ヒドラジンモノヒドレート(N22)、NaBH4、H2S、Na2Sなどを用いることができる。
【0041】
本発明の方法に従い得られるナノ寸法の金属またはその塩の粒子には特に制限がなく、例えば、Au、Ag、Pt(II)、 Pd(II)、CdS、TiO2、γ−Fe23、Fe34粒子などが挙げられ、得られる金属またはその塩の粒子の粒径及び形状はミセル化に供される高分子の種類に応じて変わりうる。
【0042】
このように、本発明の方法によれば、薬物などをはじめとする種々の機能性基を分子量の調節されたポリエチレンオキシドに効率よく付着することができ、しかも、これを用いて遷移金属またはこれらの塩、例えば、各種の遷移金属の硫化塩(例えば、CdS、PbSなど)、酸化鉄(例えば、Fe34)などのナノ寸法化を容易に達成することができる。このとき、得られるナノ寸法の金属またはその塩の粒子が水溶性のポリエチレンオキシド系高分子でミセル化した形態で得られることから、有機溶媒だけではなく、水溶液中における安定化を達成することができる。
【0043】
すなわち、本発明によれば、アニオンリビング重合法により分子量が調節され、且つ、鎖末端官能性化により種々の機能性基が導入されたポリエチレンオキシド系高分子素材が製造可能になり、これを用いて水溶性高分子マトリックス内に安定化させたナノ寸法の遷移金属またはその塩の粒子が容易に得られる。
【0044】
以下、実施例を挙げて本発明を詳述するが、本発明の範囲が下記の実施例に制限されることはない。
【0045】
<実施例1>
高真空下で容量1Lの丸いパイレックス製フラスコ中に各種の反応物を入れた後、真空ラインに取り付けて空気を完全に抜き取った。アルゴン気流下でn−ブチルリチウム(12mmol)を注射器を用いて注入し、ドライアイス/イソプロパノール槽を用いて反応器の温度を−78℃まで下げた後、反応器中のアルゴンガスを真空ポンプで完全に抜き取った。
【0046】
次いで、精製されたベンゼン300mLを反応器中に注入した後、反応器の温度を徐々に常温まで上げて完全に溶解させた。さらに、氷水槽を用いて、0℃の温度下で、精製された30mL(26.5g)のエチレンオキシド(EO)(30体積%、希釈溶液)を上記反応器中に注入した。約1時間後、t−BuOK(THF20mL中の12mmol)及び精製されたDMSO30mLをブレーキシール及び停止コックを通じて反応器中に投入した。水槽を用いて反応器の温度を35℃まで上げ、5時間攪拌して反応させた。さらに氷水槽を用いて温度を5℃まで下げて重合を10分間行い、これらの過程を数回繰り返し行った。さらに常温下で48時間反応させた後、アンプルを用いて反応物の一部を主反応器から取って減圧蒸留し、溶媒を除去した。次いで、残渣をTHFに溶解させ、ジエチルエーテル中に沈殿させてリビングポリエチレンオキシド(PEO)を得た。常温下、真空オーブン中において48時間乾燥させた後、1H−NMR及びゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により分析した結果、得られた高分子の数平均分子量は2、200g/molであり、EOの高分子への転換率は100mol%以上であった。
【0047】
<実施例2>
実施例1に従い製造された重合体のアルコキシド溶液200mL([POLi]=6.3mmol)に2−ブロモイソブチリルブロミド(20mLのTHF中の20mmol)を入れ、常温下で攪拌しながら24時間反応させた。反応終了後、得られた溶液を減圧蒸留して溶媒を除去し、次いで、得られた残渣をエタノール中において再結晶化させて粉体(PEO系マクロ開始剤)を得た。製造された高分子はGPCによる数平均分子量が2、400g/molであり、1H−NMRスペクトル分析による鎖末端臭化歩留まりは98mol%以上であった。
【0048】
<実施例3>
実施例1に従い製造されたリビングポリエチレンオキシド溶液200mL([POLi]=6.3mmol)にメタクリロイルクロリド(30mmol)を投入し、常温下で24時間反応させた。反応終了後、得られた溶液を減圧蒸留して溶媒を除去し、次いで、得られた残渣をTHFに再溶解させてジエチルエーテルを沈殿させた後、さらにエタノール中において再結晶化してPEO系マクロモノマーを得た。得られた高分子の数平均分子量は2、300g/molであり、1H−NMRスペクトル分析による鎖末端官能性化歩留まりは98mol%以上であった。
【0049】
<実施例4>
実施例1の方法と同様にして製造した分子量5、000g/molのリビングポリエチレンオキシド溶液200mLに1,3−プロパンスルトン/THF溶液を添加した後([POLi]/[スルトン]=1/3、mol/mol)、常温下で24時間反応させてω−スルホン化PEOを合成した。得られた溶液を減圧蒸留して溶媒を一部除去し、ジエチルエーテルに沈殿させた後、さらにTHFに溶解させ、エタノール中において再結晶化させて粉体を得た。合成された高分子のGPC分析による数平均分子量は5、100g/molであり、1H−NMRにより測定した官能性化歩留まりは99mol%以上であった。
【0050】
<実施例5>
実施例4の方法と同様にして製造したリビングポリエチレンオキシド溶液200mL(分子量:5、000g/mol、6.3mmol)に精製されたプロピレンスルフィド([POLi]/[PPS]=1/3、mol/mol)を添加し、常温下、高真空下で6時間反応させて鎖末端にチオール基を導入した。得られた生成物をジメチルエーテルに沈殿させて回収した後、THFに再溶解し、エタノール中において再結晶化させて粉体を得た。製造された鎖末端チオール化ポリエチレンオキシドのGPCによる数平均分子量は5、100g/molであり、1H−NMRにより測定したチオール化歩留まりは98mol%以上であった。
【0051】
<実施例6>
実施例1の方法と同様にして製造した分子量3、400g/molのリビング高分子溶液([ROLi]=0.001mol)に高真空下でトリメリチック・アンヒドリド・クロリド(98%)0.005モルを精製無しにアンプル中に注入し、さらに60mLのTHFを蒸留させて反応器に付着させ、ブレーキシールを用いて反応器中に投入した。これらの反応物は5℃の温度下で1時間、35℃の温度下で15時間反応させた後、ジメチルエーテルに沈殿させて溶媒は除去し、沈殿物をTHFに溶解させ、エタノール中において再結晶化させて鎖末端アンヒドリドポリエチレンオキシド(ω-anhydride poly(ethylene oxide))を製造した。官能性化歩留まりは最初に用いられた高分子溶液の濃度を基準として約98mol%であり、数平均分子量は3、500g/molであった。
【0052】
<実施例7>
実施例6に従い製造されたω−アンヒドリド−ポリエチレンオキシド(Mn=3、500g/mol、1.5g)とドキソルビシンクロリド(0.24g)/MeOH(50mL)を100mLの反応器に入れ、窒素気流下で24時間反応させた。生成物をジメチルエーテルに沈殿させて回収し、さらにエーテルにより数回洗浄した。沈殿物をさらにTHFに溶解させると、PEO−ドキソルビシン(Dox)は溶解されて、未反応のドキソルビシンは溶解されないため、溶液をろ過した後、THF溶液の部分を蒸留させて濃い黄色の固体粉体を得た(PEO−Dox)。鎖末端にドキソルビシンを有するポリエチレンオキシドの高分子薬物を製造した。この数平均分子量は約4、000であり、官能性化歩留まりは、1H−NMRの分析結果、98mol%以上であった。
【0053】
<実施例8>
実施例6に従い製造されたω−アンヒドリド−PEO(Mn=3、500g/mol、0.01mol)とスルファメタジン(0.03mol)/エタノール(50mL)を250mLの反応器に投入した。ここにエタノール100mLを入れ、70℃の温度下で攪拌しながら還流条件下で12時間をかけて反応させた。反応終了後、常温下でジメチルエーテルに沈殿させ、エタノール中において再結晶化させて固体を得た(PEO−スルホンアミド)。なお、その数平均分子量は4、100g/molであり、反応歩留まりは、使用されたPEOを基準として約98mol%以上であった。
【0054】
<実施例9>
実施例6の方法と同様にして製造したω−アンヒドリド−PEO(Mn=2、000g/mol、1g)と葉酸(0.88g、5eq.)をDMSO20mL中において常温下で約24時間反応させた。これをさらにジエチルエーテルに再沈殿させて固体を得た後、これをさらにTHFに溶解させ、エタノール中において再結晶化させて黄色の粉体を得た(PEO−FA)。なお、その数平均分子量は2、200g/molであり、反応歩留まりはPEOを基準として98mol%以上であった。
【0055】
<実施例10>
実施例3に従い製造されたマクロモノマー(1.6mol%)とN−イソプロピルアクリルアミド(NiPAM;98.4mol%)との共重合を行った。
【0056】
まず、250mLの3口フラスコに、4−(ブロモメチル)安息香酸(0.25mmol)及び苛性ソーダ(0.5mmol)を蒸留水20mLと一緒に窒素気流下で投入し、30分をかけてゆっくりと攪拌した。別の100mLの2口フラスコにおいて、ポリエチレンオキシドマクロモノマー(1.15g、0.5mmol)/蒸留水(50mL)溶液をアルゴン気流下で製造した。一方、100mLの2口フラスコ内において、NiPAM(3.4g、30mmol)/蒸留水(50mL)溶液をアルゴン気流下で攪拌しながら製造した。開始剤が入っている反応器中にMe6TREN(リガンド;0.25mmol)/Cu(I)Br(0.25mmol)を注入し、1分後にテフロンチューブ(cannula)を用いてそれぞれマクロモノマー溶液を反応器中に注入させると同時に、注射器を用いてNiPAM溶液を反応器中に注入した後、常温かつアルゴン気流下で攪拌しながら3時間反応させた。3時間後に、過量のHCl溶液を投入して重合反応を止め、50℃の蒸留水に沈殿させて4.5gの粉体を得た。得られたグラフト共重合体の数平均分子量は18、000g/molであった。
【0057】
<実施例11>
実施例3に従い製造されたマクロモノマー(5mol%)とスルホンアミド系メタアクリレート系単量体(MASX;95mol%)との共重合を下記のようにして行った。
【0058】
まず、250mLの3口フラスコに、4−(ブロモメチル)安息香酸(0.25mmol)及び苛性ソーダ(0.5mmol)を蒸留水20mLと一緒に窒素気流下で投入し、30分をかけてゆっくりと攪拌した。別の100mLの2口フラスコにおいて、ポリエチレンオキシドマクロモノマー(1.15g、0.5mmol)蒸留水(50mL)溶液をアルゴン気流下で製造した。一方、100mLの2口フラスコ内において、スルファジメトキシン系メタアクリレート(MASX;3.8g、10mmol)/NaOH(50mmol)/H2O(50mL)溶液をアルゴン気流下で製造した。開始剤が入っている反応器中にMe6TREN(リガンド;0.25mmol)/Cu(I)Br(0.25mmol)を注入し、1分後にテフロンチューブ(cannula)を用いてそれぞれマクロモノマー溶液を反応器中に注入させると同時に、注射器を用いてMASX溶液を反応器中に注入した後、常温かつアルゴン気流下で攪拌しながら3時間反応させた。3時間後に過量のHCl溶液を投入して重合を止め、pH4.5の蒸留水に沈殿させて、約4.9gの粉体を得た。得られたグラフト共重合体の数平均分子量は19、000g/molであった。
【0059】
<実施例12>
実施例2の方法と同様にして製造された、鎖末端に臭素基を有するPEOを開始剤として用いて原子転移ラジカル重合(atom transfer radical polymerization)を行った。
【0060】
まず、250mLの3口フラスコ中にH2O/THF(100mL/10mL)を注入し、さらに合成されたPEO−系マクロ開始剤(Mn=5、000g/mol、1.25g)を投入し、アルゴン気流下で完全に溶解させた。100mLの2口フラスコにおいて、MASX(2.6g;7mmol)/NaOH(0.301g、7mmol)を蒸溜水(50mL)に完全に溶解させた。上記250mLの主反応器中にMe6TREN(0.25mmol)/CuBr(0.25mmol)を注入させて約10分間攪拌した。この反応器中に別のフラスコに既に溶解されているMASX溶液をテフロンチューブ(cannula)を介して投入させ、2時間重合させた。重合を止め、HCl水溶液に沈殿させて粉体を得た。HClを溶かしたメタノールを用いて数回洗浄させ、真空オーブン中において乾燥させた。こうして得られたブロック共重合体の数平均分子量は15、000g/molであった。
【0061】
<実施例13>
実施例12に従い製造されたブロック共重合体(PEO−b−P(スルホンアミド))0.15gを20mLのバイアルに投入し、3mLのDMF(99%)を添加して完全に溶解させた。ここに、1mLのFeCl3(0.146g/10mL(DMF))溶液を注射器を用いてブロック共重合体溶液中に注入させた。次いで、磁気攪拌棒を用いてゆっくりと攪拌しながら10分をかけて定置させた。このとき、バイアル中の溶液は褐色であり、さらに還元剤としての1mLのヒドラジンモノヒドレート(N22、和光純薬製、98%)をそれ以上の色の変化がなくなるまで徐々に加えながら攪拌した。それ以上の色の変化及び起泡が起きなくなったときに、過量のメタノールに沈殿させてろ過した。この後、数回洗浄しかつ乾燥させてベージ色の粉体を得た。なお、この粉体の走査電子顕微鏡による粒度は2〜20nmの範囲であった。
【0062】
<実施例14>
実施例4に従い製造された鎖末端スルホン酸化したPEO0.51gを20mLのバイアルに投入し、5mLのDMF(99%)を注入してPEOを完全に溶解させた。次いで、2mLのFeCl2(0.4g/mLDMF)溶液を注射器を用いてバイアル中に注入させ、さらに5mLのNaOH(12.5N)水溶液を添加した後、60℃まで昇温させて攪拌した。注射器を用いて1.5mLのNH4OHを注入し、約6時間攪拌した後、さらに常温まで降温させて24時間攪拌しながら反応させた。褐色の不溶性の部分はろ過させて除去し、溶液の部分は減圧蒸留して溶媒を除去し、さらにメタノールに溶解させ、ジメチルエーテルに沈殿させて黄色の粉体を得た。なお、この粉体の走査電子顕微鏡による粒度は3〜10nmの範囲であった。
【0063】
<実施例15>
実施例5に従い製造された鎖末端にチオール基を有するポリエチレンオキシド(Mn=5、100g/mol)0.51gを10mLのテトラヒドロフラン(THF)に完全に溶解させた。30mLのバイアル内にHAuCl4(2.0×10-4モル)を入れた後、THF(10mL)に溶解させた。ここに、THF/メタノール混合溶液(9/1、v/v)10mLに溶解させたNaBH4(1.6×10-2モル)を注射器を用いて注入した。その後、THFに溶解させた高分子溶液を注射器を用いて投入し、常温下、24時間攪拌した。反応を終了させ、溶媒を一部除去し、ジメチルエーテルに沈殿させて薄い紫色の粉体を得た。なお、この粉体の走査電子顕微鏡の分析による粒度は2〜10nmの範囲であった。
【0064】
<実施例16>
実施例4に従い製造された鎖末端スルホン酸化したPEO0.51gを20mLのバイアルに投入し、5mLのTHF(99%)を注入して完全に溶解させた。30mLのバイアルにHAuCl4(2.0×10-4モル)を入れた後、THF(10mL)に溶解させた。ここに、THFとメタノールとの混合溶液(9/1、v/v)10mLに溶解させたNaBH4(1.6×10-2モル)を注射器を用いて注入した。その後、THFに溶解させた高分子溶液を注射器を用いて投入し、常温下、24時間攪拌した。反応終了後、減圧蒸留して溶媒を一部除去し、ジメチルエーテルに沈殿させて薄い紫色の粉体を得た。なお、この粉体の走査電子顕微鏡の分析による粒度は3〜20nmの範囲であった。
【0065】
<実施例17>
実施例7に従い製造されたω−Dox−PEO(Mn=4、000g/mol)1.0gを20mLのバイアルに入れ、10mLのメタノールを加えて完全に溶解させた。ここに、1mLのFeCl3溶液(0.48g/100mLのメタノール)をピペットを用いて注入した後、N221mLを注射器を用いてゆっくりと注入した。2時間をかけて攪拌しながら反応させた後、不溶性の部分をろ過させ、ジエチルエーテルに沈殿させて数回洗浄して紫色の粉体を得た。なお、この粉体に対して走査電子顕微鏡の写真分析を行ったところ、2〜20nm粒径のナノハイブリッドが形成されていた。
【0066】
<実施例18>
実施例9に従い製造されたω−FA−PEO(Mn=2、200g/mol)1.5gを50mLの脱酸素化蒸留水に溶解させた後、FeCl2/FeCl3(1/2mol/mol、0.4g/1.0g)を入れて攪拌しながら80℃まで昇温させた。ここに、NH4OH1.5mLを入れて30分間攪拌した。さらに、反応温度を常温まで下げ、攪拌しながら24時間反応させた。黒褐色の不溶性の部分をろ過し、溶液の部分の水を除去した後、メタノールに溶解させ、ジメチルエーテルに沈殿させて黄色の粉体を得た。なお、この粉体に対して走査電子顕微鏡による写真分析を行ったところ、粒度は2〜10nmの範囲であった。
【0067】
<実施例19>
実施例11に従い製造されたグラフト共重合体0.15gを20mLのバイアルに入れ、3mLのDMF(99%)を添加して完全に溶解させた。ここに、FeCl3(0.146g/10mL(DMF))溶液1mLを注射器を用いて添加した後、磁気攪拌棒を用いてゆっくりと攪拌させながら10分間定置させた。このとき、溶液は褐色であった。ここに、還元剤としてのヒドラジンモノヒドレート(N22、和光純薬製、98%)1mLを徐々に加えながらそれ以上の色の変化がなくなるまで攪拌した。それ以上の色の変化及び起泡が起きなくなったときに、過量のメタノールに沈殿させてろ過した後、数回洗浄しかつ乾燥してベージ色の粉体を得た。なお、この粉体の走査電子顕微鏡による粒度は3〜30nmの範囲であった。
【0068】
<実施例20>
実施例6に従い製造されたω−アンヒドリド−PEO(Mn=3、500g/mol、0.01mol)とアンプレナビル(0.03mol)/エタノール(50mL)を250mLの反応器中の投入し、100mLのエタノールを添加した。70℃の温度下で攪拌しながら、還流条件下で12時間反応させた。反応終了後、得られた生成物を常温下でジエチルエーテルに沈殿させ、エタノール中において再結晶させて固体を得た(PEO−スルホンアミド)。なお、GPC分析による高分子の水平均分子量は4、200g/molであり、反応歩留まりは、使用されたPEOを基準として約98mol%以上であった。
【0069】
<実施例21>
実施例4に従い製造された鎖末端スルホン酸化したPEO(Mn=5、100g/mol)0.51gを20mLのバイアルに入れた後、トルエン/メタノール(90/10、v/v)5mLを注入して完全に溶解させた。ここに、トルエン/メタノール(90/10、v/v)混合溶液10mLに溶解させたカードミウムアセテート水和物(Cd(OAc)2・xH2O、0.147g、6.38×10-4モル)を入れて攪拌しながら、注射器を用いてH2Sガスを徐々に注入した。溶液の色が無色から黄色へと変色されると、H2Sガスの注入を中断させ、6時間反応させた後、ジエチルエーテルに沈殿させて黄色の粉体を得た。なお、この粉体の走査電子顕微鏡の分析による粒度は、2〜30nmの範囲であった。
【0070】
<実施例22>
実施例5に従い製造された鎖末端チオール基を有するPEO(Mn=5、100g/mol)0.51gを20mLのバイアルに投入した後、トルエン/メタノール(90/10、v/v)5mLを添加した以外は、実施例21の方法と同様にして行った。なお、走査電子顕微鏡の分析によるCdS粒子の粒度は、2〜30nmの範囲であった。
【0071】
<実施例23>
実施例9に従い製造されたω−FA−PEO(Mn=2、200g/mol)1.5gを脱酸素化蒸留水50mLに溶解させ、AgNO3(0.01mol)を投入した後に攪拌しながら、40℃まで昇温させた。さらに、1.5mLのNH4OH溶液を注入し、30分間攪拌した。次いで、反応温度を常温まで下げて攪拌しながら、24時間反応させた。黒褐色の不溶性の部分をろ過させて除去し、溶液の部分の水を除去した後、メタノールに溶解させてジメチルエーテルに沈殿させ、黄色の粉体を得た。なお、この粉体の走査電子顕微鏡写真分析による粒度は、2〜50nmの範囲であった。
【0072】
<実施例24>
実施例5に従い製造されたω−チオール化−PEO(Mn=5、200g/mol)2.5gを50mLの脱酸素化蒸留水に溶解させ、AgNO3(0.01mol)を投入した後に攪拌しながら、40℃まで昇温させた。さらに、1.5mLのNH4OH溶液を注入し、30分間攪拌した。次いで、反応温度を常温まで下げて攪拌しながら、24時間反応させた。黒褐色の不溶性の部分をろ過させて除去し、溶液の部分の水を除去した後、メタノールに溶解させ、ジメチルエーテルに沈殿させて黄色の粉体を得た。なお、この粉体の走査電子顕微鏡写真分析による粒度は、2〜50nmの範囲であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)〜(IV)で表される化合物よりなる群から選ばれる鎖末端官能性化したポリエチレンオキシド:
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

式中、Rはメチル、n−ブチル、2級ブチル(sec-butyl)または3級ブチル(tert-butyl)であり、
1及びR5はそれぞれ独立して水素またはメチルであり、
2はN−イソプロピルアミド、スルファベンゼン、スルフィオキサゾール、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファジメトキシン、スルファジアジン、スルファメトキシピリダジン、スルファメタジン、スルフィソイミジン、スルファピリジン、インジスラム及びアンプレナビルよりなる群から選ばれる官能基を有するアミド基であり、
3は水素、イソブチルアクリロニトリル、フェニルまたはハロゲンであり、
4はフェニルまたはイソブチルアクリロニトリルであり、
Xは水素、プロピレンスルホン酸、2−ブロモイソブチリル、2−ブロモプロピオニル、プロピレンスルフィド、メタクリレートまたはフタリック・アンヒドリド基であり、
Yはスルファベンゼン、スルフィオキサゾール、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファジメトキシン、スルファジアジン、スルファメトキシピリダジン、スルパメタジン、スルピソイミディン、スルファピリジン、インジスラム、アンプレナビル、葉酸、ドキソルビシン、パクリタキセルまたはバンコマイシンであり、
nは10〜500の整数であり、
kは1〜10の整数であり、
mは5〜50の整数である。
【請求項2】
a)アルキルリチウムを開始剤として用いるリビングアニオン重合により数平均分子量(Mn)が500〜100、000g/molに調節されたポリエチレンオキシドを与えるステップと、
b)ステップa)において得られたポリエチレンオキシドを官能性化物質と高真空下で反応させて一般式(I)または(II)で表される化合物を得るステップと、
c)ステップb)において得られた一般式(I)の化合物のうち置換基Xが2−ブロモイソブチリル、2−ブロモプロビオニルまたはメタアクリレート基である化合物をN−イソプロピルアクリルアミドまたはスルホンアミドメタクリレート系単量体と溶媒中においてラジカル重合反応させて下記一般式(III)または(IV)で表されるグラフトまたはブロック共重合体を得るステップと、
d)ステップb)またはc)において得られた下記一般式(I)〜(IV)の化合物から選ばれる鎖末端官能性化したポリエチレンオキシド系高分子と金属塩水溶液を還元剤の存在下で反応させて前記高分子でミセル化した1〜500nm範囲のナノ寸法の遷移金属またはその塩を得るステップと、
を含むナノ寸法の遷移金属またはその塩の製造方法:
【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

式中、Rはメチル、n−ブチル、2級ブチルまたは3級ブチルであり、
1及びR5はそれぞれ独立して水素またはメチルであり、
2はN−イソプロピルアミド、スルファベンゼン、スルフィオキサゾール、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファジメトキシン、スルファジアジン、スルファメトキシピリダジン、スルファメタジン、スルフィソイミジン、スルファピリジン、インジスラム及びアンプレナビルよりなる群から選ばれる官能基を有するアミド基であり、
3は水素、イソブチルアクリロニトリル、フェニルまたはハロゲンであり、
4はフェニルまたはイソブチルアクリロニトリルであり、
Xは水素、プロピレンスルホン酸、2−ブロモイソブチリル、2−ブロモプロピオニル、プロピレンスルフィド、メタクリレートまたはフタリック・アンヒドリド基であり、
Yはスルファベンゼン、スルフィオキサゾール、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファジメトキシン、スルファジアジン、スルファメトキシピリダジン、スルパメタジン、スルピソイミディン、スルファピリジン、インジスラム、アンプレナビル、葉酸、ドキソルビシン、パクリタキセルまたはバンコマイシンであり、
nは10〜500の整数であり、
kは1〜10の整数であり、
mは5〜50の整数である。
【請求項3】
ステップa)においてリビングアニオン重合により得られるポリエチレンオキシドの数平均分子量が1、000〜20、000g/molの範囲であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
官能性化物質が、塩酸/メタノール、硫酸/メタノール、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、エチレンスルフィド、プロピレンスルフィド、トリメリチック・アンヒドリド・クロリド、メタクリロイルクロリド、2−ブロモイソブチリルブロミド、2−ブロモプロピオニルクロリドよりなる群から選ばれるものであることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
ステップd)において用いられる溶媒が、非極性溶媒または極性溶媒とジメチルスルホキシドとの混合溶液、または水であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項6】
還元剤が、NH4OH、N22、H2S、H22及びNaBH4よりなる群から選ばれるものであることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項7】
ナノ寸法の遷移金属またはその塩の粒子径が1〜100nmの範囲であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項8】
金属またはその塩の粒子がAu、Ag、Pt(II)、Pd(II)、CdS、TiO2、γ−Fe23及びFe34粒子よりなる群から選ばれるものであることを特徴とする請求項2に記載の方法。

【公表番号】特表2009−500488(P2009−500488A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520184(P2008−520184)
【出願日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際出願番号】PCT/KR2006/002644
【国際公開番号】WO2007/007976
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パイレックス
2.テフロン
【出願人】(504466616)ヨウル チョン ケミカル カンパニー, リミテッド (16)
【Fターム(参考)】