説明

鏡筒装置及び撮像装置

【課題】従来の鏡筒装置では、遮光部材と化粧リングとの摺動接触によって雑音が発生するという問題があった。
【解決手段】光学系を支持するレンズ鏡筒を構成する鏡筒装置に関する。外側のカム環5と、カム環の内側に位置し且つカム環が光学系の光軸CLを中心として回転することに応じて光軸の方向へ移動する直進環6と、カム環5と直進環6との間の隙間を塞ぐように設けられた遮光部材30とを備えている。遮光部材30は、弾性部材で形成されると共に、カム環5に設けた鏡筒側凹部36に係合可能とされた3つの遮光部材側凸部35が設けられている。遮光部材側凸部35と鏡筒側凹部36との係合により、カム環に対して光学系の光軸と直交する方向に移動可能とし、且つ、光軸を中心とする回転方向にはカム環と連動するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の鏡筒を入れ子式に収納して光軸方向へ出し入れ可能に構成すると共に隣接する鏡筒間の隙間を遮光部材で遮光するようにした鏡筒装置、及び、その鏡筒装置を備えた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の、この種の撮像装置としては、例えば、特許文献1に記載されているようなものがある。特許文献1には、沈胴式レンズ鏡筒及び撮像装置に関するものが記載されている。この特許文献1に記載された沈胴式レンズ鏡筒は、相対移動可能な複数の鏡筒と撮影光学系を備え、少なくとも2つのレンズ保持枠を有し、それぞれのレンズ保持枠に対応する案内機構と駆動機構を備えて構成されている。複数の鏡筒は、外径が異なり同軸上で軸方向に相対移動可能とされており、その複数の鏡筒の内部に撮影光学系が配設されている。撮影光学系は、その光軸方向に並べて配置された少なくとも2つのレンズ保持枠を有し、そのレンズ保持枠のうち最も後方に位置するレンズ保持枠と、そのすぐ前方に位置するレンズ保持枠は、それぞれ対応する案内機構により光軸方向に移動可能に支持されている。更に、最も後方に位置するレンズ保持枠と、そのすぐ前方に位置するレンズ保持枠は、それぞれ対応する駆動機構により光軸方向に移動される構成となっている。また、最も後方に位置するレンズ保持枠を光軸方向に移動させる駆動機構は、モータの駆動により光軸方向に沿って直線移動する移動片を有している。
【0003】
更に、特許文献1に係る沈胴式レンズ鏡筒の、最も後方に位置するレンズ保持枠はコイルスプリングにより前方に付勢され、そのレンズ保持枠に設けられた係合片が後方から移動片に当接している。そして、移動片の直線移動に追従して最も後方に位置するレンズ保持枠が光軸方向に移動するように配設されている。また、複数の鏡筒が最も短縮した沈胴状態において、最も後方に位置するレンズ保持枠は、その駆動機構により最も後方に位置した後端位置となる。前方に位置するレンズ保持枠は、駆動機構により後方に移動されて後端位置に位置する最も後方に位置するレンズ保持枠に当接した後、最も後方に位置するレンズ保持枠と共に後方に移動され、移動片と係合片とが離間した後端位置となる、ことを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−308888号公報
【0005】
しかしながら、上述した従来の沈胴式レンズ鏡筒においては、複数の鏡筒を、それぞれの鏡筒間に所定の隙間を設けて入れ子式に嵌合する構成となっていた。この鏡筒間の隙間は、内外の鏡筒が相対的に移動するためには無くてはならないものであるが、その隙間によって外部の光がレンズ鏡筒内に入り込むことになる。このレンズ鏡筒の内部は、撮影光学系の被写体からの光が透過する部分を除いて、外部からの光がレンズ鏡筒内に入り込むのを防止する必要がある。そのため、一般的に、リング状に形成された遮光部材を設け、その遮光部材を外側に位置する鏡筒の端面に取り付けて、内外に位置する鏡筒間の隙間を塞ぎ、外部の光がレンズ鏡筒内に入り込むのを防止している。
【0006】
上記遮光部材は、紙やゴム等の材料によって形成されており、遮光部材による遮光性を高めるためには、その内径の寸法を内側に位置する鏡筒の外径の寸法よりも小さくして圧入気味に設定する必要がある。一般に、遮光部材は外側の鏡筒の端面部に固定され、内側の鏡筒には化粧リングが取り付けられ、その化粧リングの外周面に遮光部材の内周側が摺動接触するように構成されている。そのため、遮光部材を圧入気味に設定すると、2つの鏡筒が相対的に移動する際に、遮光部材と化粧リングとの間に大きな摺動摩擦力が発生する。その結果、レンズ鏡筒の駆動源である電動モータの摺動負荷が増大することから、電動モータを大型化させる必要があるという問題があった。更に、遮光部材と化粧リングの摺動接触によって音が発生し、その音は摺動負荷の増加に比例するように大きくなり、雑音の発生原因ともなっていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする問題点は、従来の鏡筒装置においても、鏡筒間の隙間から鏡筒内に光が入り込むのを防止するために遮光部材を設けていたが、その遮光部材は鏡筒の端面に接着固定されていて、内周側を化粧リングに圧接する構成となっていた。そのため、遮光性を高めるために遮光部材の寸法を圧入気味に設定すると、化粧リングとの間の摺動摩擦力が大きくなり、駆動モータを大型化する必要があった。更に、遮光部材と化粧リングとの摺動接触によって雑音が発生するという問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の鏡筒装置は、光学系を支持するレンズ鏡筒を構成する鏡筒装置に関する。第1の鏡筒と、第1の鏡筒が光学系の光軸を中心として回転することに応じて、第1の鏡筒に対して光軸方向へ移動する第2の鏡筒と、第2の鏡筒と第1の鏡筒との間の隙間を塞ぐように設けられた遮光部材と、を備えている。遮光部材は、弾性部材で形成されると共に、第1の鏡筒に設けた鏡筒側凹部又は鏡筒側凸部に係合可能とされた一以上の遮光部材側凸部又は遮光部材側凹部が設けられている。そして、一以上の遮光部材側凸部又は遮光部材側凹部と鏡筒側凹部又は鏡筒側凸部との係合により、第1の鏡筒に対して光学系の光軸と直交する方向に移動可能とし、且つ、光軸を中心とする回転方向には第1の鏡筒と連動する。
【0009】
また、本発明の撮像装置は、内部に光学系が配設された複数の鏡筒を有し且つ複数の鏡筒が入れ子式に収納されて軸方向へ相対的に移動可能とされた鏡筒装置と、その鏡筒装置が取り付けられた撮像装置本体と、を備えた撮像装置に関する。鏡筒装置は、第1の鏡筒と、第1の鏡筒が光学系の光軸を中心として回転することに応じて、第1の鏡筒に対し光軸方向へ移動する第2の鏡筒と、第2の鏡筒と第1の鏡筒との間の隙間を塞ぐように設けられた遮光部材と、を備えている。遮光部材は、弾性部材で形成されると共に、第1の鏡筒に設けた鏡筒側凹部又は鏡筒側凸部に係合可能とされた一以上の遮光部材側凸部又は遮光部材側凹部が設けられている。そして、一以上の遮光部材側凸部又は遮光部材側凹部と鏡筒側凹部又は鏡筒側凸部との係合により、第1の鏡筒に対して光学系の光軸と直交する方向に移動可能とし、且つ、光軸を中心とする回転方向には第1の鏡筒と連動する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の鏡筒装置及び撮像装置によれば、遮光部材を弾性部材で形成すると共に、一以上の遮光部材側凸部又は遮光部材側凹部を設けて第1の鏡筒又は第2の鏡筒に設けた鏡筒側凹部又は鏡筒側凸部に係合可能な構成とした。そのため、第1の鏡筒と第2の鏡筒との間の隙間を塞いで遮光している遮光部材の中心が光学系の光軸からズレているために、相対回転による遮光部材の摺動摩擦力が局部的に増大しても、その摩擦力の偏りを軽減させるように遮光部材が半径方向に移動する。これと同時に、遮光部材は、一以上の遮光部材側凸部又は遮光部材側凹部によって第1の鏡筒又は第2の鏡筒に連れ回され、外部の光が鏡筒内に入り込むのを防止することができる。これにより、遮光部材で目的の遮光性を確保しつつ、その遮光部材の摺動摩擦力が増大するのを防止し、動作負荷の軽減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の鏡筒装置の実施の形態の第1の例を示す斜視図である。
【図2】図1に示す鏡筒装置の正面図である。
【図3】図1に示す鏡筒装置を撮影光学系の光軸に沿って断面した説明図である。
【図4】図3の要部を拡大して示す説明図である。
【図5】図1に示す鏡筒装置に係る直進環、カム環、遮光部材及び化粧リングの斜視図である。
【図6】図4に示す遮光部材の正面図である。
【図7】図6に示す遮光部材を断面したもので、図7Aは図6のX−X線拡大断面図、図7Bは図6のY−Y線拡大断面図である。
【図8】図1に示す鏡筒装置に係る遮光部材と鏡筒の接触面との摺動接触状態を説明する説明図である。
【図9】本発明の鏡筒装置に係る遮光部材の第2の実施例を示すもので、図9Aは正面図、図9Bは背面図である。
【図10】本発明の鏡筒装置に係る遮光部材の第3の実施例を示すもので、図10Aは正面図、図10Bは背面図である。
【図11】本発明の鏡筒装置に係る遮光部材の第4の実施例を示すもので、図11Aは正面図、図11Bは鏡筒との係合状態を説明する断面図である。
【図12】本発明の鏡筒装置に係る遮光部材の第5の実施例を示すもので、図12Aは正面図、図12Bは鏡筒との係合状態を説明する断面図である。
【図13】本発明の鏡筒装置に係る遮光部材の第6の実施例を示すもので、図13Aは正面図、図13Bは鏡筒との係合状態を説明する断面図である。
【図14】本発明の鏡筒装置に係る遮光部材の第7の実施例を示すもので、図14Aは正面図、図14Bは鏡筒との係合状態を説明する断面図である。
【図15】本発明の鏡筒装置の実施の形態の第2の例の概略構成を示す説明図である。
【図16】図15の鏡筒装置に係る遮光部材の実施例を示すもので、図16Aは正面図、図16Bは鏡筒との係合状態を示す説明図である。
【図17】本発明の鏡筒装置を用いた撮像装置の第1の実施の例を示すデジタルカメラの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
遮光部材を弾性部材で形成し、その遮光部材を第1の鏡筒又は第2の鏡筒で光学系の光軸と直交する方向へ移動可能に支持すると共に、遮光部材に一以上の凸部又は凹部を設けて第1の鏡筒又は第2の鏡筒に連れ回される構成とした。これにより、遮光部材で第1の鏡筒と第2の鏡筒の間に形成された隙間を閉じて遮光性を確保すると共に、光軸に対する遮光部材の偏心量が大きい場合にも、遮光部材を半径方向へ逃がして摺動摩擦力が局部的に大きくなるのを防止する。これにより、第1の鏡筒と第2の鏡筒の間の隙間に対する遮光性を十分に確保しつつ、摺動摩擦力が局部的に増大するのを防止して駆動源の大型化を防ぐことができる。
【実施例】
【0013】
図1乃至図3は、本発明の鏡筒装置の実施の形態の一例を示すもので、6つの鏡筒を3段階に突出させるように入れ子式に構成した沈胴式レンズ装置1である。この沈胴式レンズ装置1は、直径を異にしてそれぞれ円筒形状に形成された6つの鏡筒、即ち、固定環2と、回転環3と、直進カム環4と、カム環5と、直進環6と、1群枠7とを備えて構成されている。これら6つの鏡筒の軸方向の長さは、略程度の長さに設定されている。
【0014】
直径が最も大きな固定環2の内側に回転環3が相対的に移動可能に嵌合され、その回転環3の内側に直進カム環4が相対的に移動可能に嵌合され、その直進カム環4の内側にカム環5が相対的に移動可能に嵌合されている。そして、カム環5の内側に直進環6が相対的に移動可能に嵌合され、その直進環6の内側に1群枠7が相対的に移動可能に嵌合され、その1群枠7に1群レンズ保持枠8が固定されている。1群レンズ保持枠8には、複数のレンズの組み合わせからなる1群レンズ9が接着剤により接合されて一体的に固定されている。
【0015】
この1群レンズ9の光軸上の被写体側と反対側に、図示しない2群レンズ及び3群レンズと、図示しない撮像素子等が配置されている。1群〜3群レンズには、必要により4群レンズや5群レンズ等が含まれる場合がある。また、撮像素子等には、赤外線フィルタその他の光学部品が含まれる場合もある。これら1群〜3群レンズと撮像素子等によって、沈胴式レンズ装置1の光学系が構成されている。従って、光学系の光軸CLは、1群レンズ9の光軸と一致されている。なお、撮像素子としては、例えば、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補性金属酸化膜半導体)イメージセンサ等を適用することができる。
【0016】
固定環2の内周面には、光学系の光軸CLを中心として回転環3を回転させるための螺旋溝と、その光軸CLに沿って直進カム環4を直進移動させるための直進溝とが設けられている。更に、固定環2には、沈胴式レンズ装置1を伸張及び収縮動作させるための動力発生部11が設けられている。動力発生部11は、電動モータ12と、その電動モータ12の回転軸の回転を減速し回転力を増大させて回転環3に伝達する動力伝達ギア列13とを有している。直進カム環4は回転環3に対して、光軸方向への相対的な移動は制限されているが、回転方向には回転可能に支持されている。
【0017】
これにより、動力発生部11を動作させてその回転力を回転環3に伝達すると、回転環3が回転駆動される。このとき、回転環3は、固定環2の内周面に設けた螺旋溝にガイドされて、光軸CLを中心として回転しながら光軸方向へ移動する。これに対して直進カム環4は、回転環3に対して、回転方向にはフリーな状態とされているが、光軸方向への相対的な移動が阻止されている。一方、直進カム環4は、固定環2の内周面に設けた直進溝にガイドされて、光軸CL方向へのみ直進移動可能とされている。そのため、動力発生部11から回転力が回転環3に伝達されると、回転環3は動力発生部11による駆動量に応じて、光軸CLを中心に回転しながら光軸方向へ移動する。このとき直進カム環4は、固定環2によって回転動作が阻止されているため、回転せずに回転環3と同じ距離だけ光軸方向へ直進移動する。
【0018】
直進カム環4には、カム環5を回転させながら光軸方向へ移動させるための螺旋溝15が設けられており、その螺旋溝15に、カム環5に設けた案内ピン16が摺動可能に係合されている。カム環5の案内ピン16は、回転環3に設けた直進溝にも係合されており、その直進溝にガイドされてカム環5は、回転環3に対して光軸方向へ相対的に移動可能とされている。このカム環5に、直進環6が光軸方向への相対的な移動が阻止された状態で回転自在に支持されている。カム環5の内周面には、1群枠7を光軸方向へ移動させるためのカム溝17が設けられている。また、直進環6は、直進カム環4に設けた直進溝によりガイドされて回転が阻止された状態で光軸方向へ直進可能とされている。
【0019】
これにより、カム環5は、回転環3が回転駆動されることにより、回転環3の回転量に応じて、光軸CLを中心に同方向へ回転駆動される。これと同時に、回転環3の回転量に応じて直進カム環4が光軸方向へ直進移動するため、直進カム環4の移動量に応じてカム環5も光軸方向へ移動する。このとき直進環6は、直進カム環4によって回転動作が阻止されているため、回転せずにカム環5と同じ距離だけ光軸方向へ直進移動する。
【0020】
また、直進環6には、光軸CLと平行をなすように延在された直進溝18が設けられており、その直進溝18には1群枠7に設けた係合ピン21が摺動可能に係合されている。1群枠7の係合ピン21は、直進環6の直進溝18を貫通してカム環5のカム溝17にも同時に係合されている。その結果、カム環5が回転することにより、1群枠7が回転せずに光軸方向へ直進移動される。即ち、カム環5が回転すると、1群枠7の係合ピン21がカム溝17に沿って移動するが、その係合ピン21は、同時に直進環6の直進溝18にも係合されているため、この直進溝18によって回転動作が防止され、光軸方向へのみ移動されることになる。
【0021】
これら6つの鏡筒の動作をまとめると、次のようなものである。
1)固定環2…カメラ本体に固定され、回転動作をせず、直進動作もしない。
2)回転環3…回転動作を行い、直進動作も行う。
3)直進カム環4…回転動作はせず、直進動作のみ行う。
4)カム環5…回転動作を行い、直進動作も行う。
5)直進環6…回転動作はせず、直進動作のみ行う。
6)1群枠7…回転動作はせず、直進動作のみ行う。
このような6つの鏡筒の動作を介して1群レンズ9と図示しない2群レンズ及び3群レンズが光軸CL方向に移動され、被写体に対するフォーカス操作が実行される。
【0022】
図3に示すように、1群枠7には化粧リングA23が装着され、カム環5には化粧リングB24が装着され、回転環3には化粧リングC25が装着されている。これらの化粧リングA23〜化粧リングC25の使用上の主目的は、意匠性の向上、即ち、沈胴式レンズ装置の外観における見た目の向上を図ることにあるが、後述するように、遮光性能の向上に寄与することもできる。
【0023】
化粧リングA23〜化粧リングC25は、いずれも円筒部23a,24a,25aと、これら円筒部23a〜25aの一端に連続して半径方向内側へ展開された内向きのフランジ状をなす端面部23b,24b,25bによって構成されている。化粧リングA23の円筒部23aは、1群枠7に嵌り合う大きさに形成されており、その端面部23bは、1群枠7の端面部と平行をなすように1群レンズ9の近傍まで延在されている。この端面部23bの内側にバリアカバー26が配置され、その内面に接着剤で固定されて一体に構成されている。この化粧リングA23の内部であって1群枠7とバリアカバー26との間に、1群レンズ9等のレンズ群を透過する光量を調整する図示しないアイリス機構が収納されている。
【0024】
化粧リングB24の円筒部24aは、カム環5に嵌り合う大きさに形成されており、その端面部24bの内径は、化粧リングA23の円筒部23aの外径よりも少し大きく形成されている。また、化粧リングC25の円筒部25aは、回転環3に嵌り合う大きさに形成されており、その端面部25bの内径は、化粧リングB24の円筒部24aの外径よりも少し大きく形成されている。この沈胴式レンズ装置1の沈胴時、即ち、その光軸方向の厚さが最も薄くなった状態において、3つの化粧リングA23〜化粧リングC25の各端面部23b〜25bは、略同一平面上に配置される。一方、沈胴式レンズ装置1の伸長時、各端面部23b〜25bは、各円筒部23a〜25aの端面部23b〜25bと反対側の端部に最も近づいた状態となる。
【0025】
この場合、隣り合う化粧リングの円筒部の外周面と端面部の内周縁との間には、相対的な移動を確保するために必然的に隙間が形成されており、この隙間から鏡筒内に、外部の光が侵入するおそれがある。そのため、本実施例では、第1の鏡筒の一具体例を示すカム環5と第2の鏡筒の一具体例を示す1群枠7との間に遮光部材30を設け、直進環6と1群枠7との間には遮光部材A31を設け、更に、固定環2と回転環3との間には遮光部材B32を設けている。
【0026】
遮光部材A31と遮光部材B32は、従来から使用されているものと同様のものであり、ゴム或いは紙等によってリング状に形成されている。遮光部材A31は、直進環6の後端面に接着剤で接着固定されており、その内周縁が1群枠7の後端面と接触可能とされている。また、遮光部材B32は、固定環2の先端面に接着剤によって接着固定されており、その内周縁が化粧リングC25の外周面に摺動接触可能とされている。固定環2と回転環3との間の隙間は、鏡筒内部がラビリンス構造となっていて、光が奥まで侵入し難い構造となっているため、遮光部材B32の内周縁を化粧リングC25に接触させるだけで十分な遮光性が得られるからである。
【0027】
なお、回転環3とカム環5との間には遮光部材を設けていない。これは、回転環3とカム環5との間にも隙間はできているが、その隙間の内側が直進環6の一部によって覆われており、外部の光が内部に侵入するおそれがないからである。
【0028】
遮光部材30は、図4〜図7に示すような形状及び構造を有している。即ち、遮光部材30は、本発明の沈胴式レンズ装置1に係る遮光部材の第1の実施例を示すもので、弾性部材によってリング形状に形成された遮光部33と、その遮光部33の強度を補強する補強部34とによって構成されている。そして、遮光部材30には、半径方向外側に突出する3つの遮光部材側凸部35〜35が設けられており、3つの遮光部材側凸部35〜35は周方向に等間隔に配置されている。3つの遮光部材側凸部35〜35は、カム環5の回転動作に連動して遮光部材30が回転動作するように設けたものである。
【0029】
この遮光部材30が、図3及び図4に要部を拡大して示すように、直進環6の前端面(被写体側の端面)を覆うように配置されていて、その一部である3つの遮光部材側凸部35がカム環5側に突出して3つの鏡筒側凹部と係合するように構成されている。遮光部材30の大部分は化粧リングB24の端面部24bによって覆われており、その端面部24bの内周端から半径方向内側へ露出する部分が化粧リングA23の外周面に摺動接触するように構成されている。
【0030】
図6及び図7に示すように、遮光部材30の遮光部33は、伸びたり縮んだりの弾性変形が容易なゴム等の弾性部材によってリング形状に形成されている。ここでいうゴムの具体例としては、例えば、アクリルゴム、シリコンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム等を挙げることができるが、これ以外の各種ゴムを適用できることは勿論である。この遮光部33の外周縁の3箇所に、半径方向外側に突出する3つの遮光部材側突起35a〜35aが設けられている。
【0031】
遮光部33の内径は、化粧リングA23の外径よりも少し小径に形成されており、これにより、遮光部33の内周縁が化粧リングA23の外周面に若干押圧された状態で接触するように構成している。また、遮光部33の外径は、直進環6の外径と略同程度の大きさに形成されている。そして、3つの遮光部材側突起35a〜35aの先端同士を結ぶ円の直径がカム環5の外径と略程度の大きさとなるように形成されている。
【0032】
遮光部材30の補強部34は、遮光部33を周方向に4分割した4つの分割片34a,34b,34c,34dの組み合わせによって構成されている。補強部34の形状は、遮光部33と略同様の形状を有しており、3つの遮光部材側突起35a〜35aと同じ位置に同様の形状を有する3つの補強部側突起35b〜35bが設けられている。この補強部34が遮光部33と異なるところは、補強部34の強度を遮光部33よりも強くした点、補強部34の内径を遮光部33の内径よりも大きくした点、更に、周方向に4分割した点である。
【0033】
補強部34の内径を大きくした理由は、補強部34の内周縁が化粧リングA23の外周面に接触しないようにするためである。また、補強部34を4分割した理由は、補強部34の強度を遮光部33よりも強くしたことに伴うもので、遮光部材30の組立時における圧入力に追従して、補強部34が半径方向外側へ押し広げられるようにするためである。従って、補強部34の分割数は、4分割ではなく、2分割若しくは3分割、或いは5分割以上とすることもできる。これら補強部34の4つの分割片34a〜34dと遮光部33とは、接着剤や熱溶着等により固定されて一体に構成されている。
【0034】
分割片34a〜34dの材質としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)が最も好適である。しかしながら、分割片34a〜34dの材質は、PETに限定されるものではなく、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)その他のプラスチックを用いることができることは勿論である。更に、分割片34a〜34dの材質として、プラスチック以外にも、ゴムや金属等を用いることもできる。
【0035】
遮光部33の3つの遮光部材側突起35a〜35aと、補強部34の3つの補強部側突起35b〜35bとによって遮光部材30の3つの遮光部材側凸部35〜35が構成されている。この実施例では、遮光部材側凸部35は略正方形をなす突起として形成され、周方向に等間隔(120度)に配置されているが、3つの遮光部材側凸部35〜35は、左右対称に配置する構成としてもよく、また、周方向に不等間隔に配置する構成とすることもできる。更に、遮光部材側凸部35の数は、この実施例のものに限定されるものではなく、1つ若しくは2つ、或いは4つ以上設ける構成とすることもできる。即ち、遮光部材側凸部35は、少なくとも1つあれば、本願発明の効果を奏することができる。
【0036】
図1,2及び図5等に示すように、カム環5の被写体側の端面には、遮光部材30の3つの遮光部材側凸部35〜35に対応して、3つの鏡筒側凹部36〜36が設けられている。3つの鏡筒側凹部36〜36は、カム環5の被写体側のリング形状をなす端面部において周方向に等間隔に配置されており、半径方向に放射状に延在する溝として形成されている。鏡筒側凹部36の幅は、遮光部材側凸部35の幅よりも若干大きく形成されており、遮光部材側凸部35が鏡筒側凹部36にガイドされて半径方向の外側及び内側に移動可能に構成されている。
【0037】
このような構成を有する遮光部材30は、化粧リングA23に対して若干圧入した状態で嵌合される。本実施例では、化粧リングA23に対して、遮光部材30の穴を補強部34側から嵌合させ、補強部34の端面が直進環6の端面と接触するように構成している。このとき、遮光部材30の3つの遮光部材側凸部35〜35がカム環5の端面に設けた3つの鏡筒側凹部36〜36に摺動可能に接触され、遮光部33の内周縁が化粧リングA23の外周面に摺動可能に接触される。この遮光部材30は、カム環5に装着された化粧リング24の端面部24bによって所定位置に移動可能な状態で保持され、所定位置からの脱落が防止されている。
【0038】
従って、遮光部材30は、光学系の光軸CLを中心として、その光軸方向にはカム環5によって一体的に移動され、また、回転方向にもカム環5によって一体的に回転駆動される。一方、光軸CLと直交する方向、即ち半径方向には、カム環5と別体となって独自に移動可能とされている。
【0039】
上述したような構成を有する沈胴式レンズ装置1を伸張又は収縮させるために第1の鏡筒の一実施例を示すカム環5が回転駆動されると、そのカム環5と一体的に遮光部材30が、光軸CLを中心に回転駆動されると共に光軸方向へ移動される。これと同時に、カム環5の回転量に応じて、第2の鏡筒の一実施例を示す1群枠7が光軸方向へ直線的に移動され、この1群枠7と一体的に化粧リングAが光軸CL方向へ移動される。このとき、カム環5の前方に配置されている遮光部材30は、化粧リングAに対して軽く圧入された状態で嵌合されているため、遮光部材30の遮光部33の内周縁が化粧リングA23の外周面に圧着された状態で摺動接触される。
【0040】
このときの遮光部33と化粧リングA23との圧着は、レンズ鏡筒の遮光性を考慮すると、必要不可欠のものである。しかしながら、例えば、遮光部材30が光軸CLに対して偏心して設置されているような場合には、その偏心部分において摺動摩擦力が増大し、回転付加が増加するばかりでなく、擦り音が大きくなり、雑音として聞こえてくるようになる。この点に関して従来の装置では、遮光部材がカム環に接着剤で固定されていて、上記摺動摩擦力の軽減を図ることができないものとなっていたため、沈胴式レンズ装置1を伸張又は収縮時に雑音を発生することがあるという問題があった。
【0041】
これに対して、本願発明の場合、遮光部材30は、カム環5及び直進環6に対して光光軸CLを中心とする光軸方向及び回転方向には一体とされているが、その光軸と直交する方向には微小距離ではあるが移動可能に構成されている。そのため、例えば、遮光部材30が光軸CLに対して偏心して設置されており、その結果、偏心部分において摺動摩擦力が増大したような場合には、その摺動摩擦力によって遮光部材30が半径方向外側へ押圧される。これにより、遮光部材30が、その偏心量を減少させる方向に移動されるため、遮光部33と化粧リングA23とが摺動接触する際に発生する擦り音等の雑音の発生を低減させることができる。
【0042】
特に、この実施例の場合には、遮光部材30がカム環5と一体的に光軸CLを中心に回転移動するのに対して、化粧リングA23は直進環6と一体的に光軸方向へ直進移動する。そのため、遮光部33の内周縁を化粧リングA23の外周面の凹凸に追従させて、その凹凸をゴムシートからなる遮光部材30が乗り越える際の振動を低減し、擦り音等の雑音を小さくすることができる。
【0043】
図8は、遮光部33の内周縁と化粧リングA23の外周面の要部を拡大して示すものである。一般に、沈胴式レンズ装置1に使用される化粧リングA23〜化粧リングC25は、外観上の見た目の良好さ等からアルミニウム合金が使用されており、その外周面は旋盤等の工作機械によって表面加工されている。そのため、化粧リングA23の外周面には螺旋状に延在されたねじ溝状の凹凸(摺動凸部)38が存在し、その凹凸38を有する化粧リング23Aが光軸方向へ直進移動するのに対し、本願発明では遮光部材30を斜めに摺動させる構成とした。これにより、遮光部材30が化粧リングA23の螺旋状の凹凸38を乗り越える際の振動を効果的に低減し、擦り音の発生を抑制又は防止することができる。
【0044】
図8において、実線で示す遮光部33は、その厚さT1を凹凸38のピッチPより小さくした場合であり、一点鎖線で示す遮光部33Aは、その厚さT2を凹凸38のピッチPより大きくした場合を示すものである。このいずれの場合においても、本願発明によれば、高い遮光性を確保しつつ、擦り音を効果的に低減することができる。なお、化粧リングA23の外周面に設ける凹凸は、螺旋状のものに限定されるものではなく、周方向に360度連続する環状溝であっても良い。更に、凹凸の断面形状は三角形に限定されるものではなく、半円形、U字形、逆台形、その他各種の形状に形成されるものでよい。
【0045】
また、この実施例では、遮光部材30を遮光部33と補強部34との組み合わせによって構成した例について説明したが、本願発明に係る遮光部材は、補強部を廃止して遮光部のみで構成することもできる。その際の遮光部材の構成は、例えば、図6及び図7A,7Bに示す構造のものを遮光部のみで形成することによって実現することができる。しかしながら、この場合の遮光部材においても、図に示す形状のものに限定されるものでないことは勿論である。
【0046】
図9〜図14は、本発明の沈胴式レンズ装置1に係る遮光部材の他の実施例を示すものである。図9A及び9Bは、遮光部材の第2の実施例を示すもので、この遮光部材40が前述した第1の実施例に係る遮光部材30と異なるところは、3つの遮光部材側凸部41の先端側を細くして先細形状に形成した点である。遮光部材側凸部41は、周方向両側の側面をテーパ状に形成して先細とすることによって構成されている。この遮光部材40の3つの遮光部材側凸部41の形状に対応して、カム環5の端面には、遮光部材40の形状に見合う形状を有する3つの鏡筒側凹部42が形成されている。
【0047】
遮光部材40は、遮光部43と補強部44とによって構成されている。補強部44は、3つの分割片の組み合わせによって形成されており、3つの分割片は同一形状を有している。即ち、補強部44の分割片は、周方向に120度弱に連続された円弧状部分と、その円弧状部分の周方向中間部において半径方向外側へ突出するように形成された補強側突起とを有している。その他の構成は、第1の実施例に係る遮光部材30と同様である。この遮光部材40を用いることによっても、遮光部材30を用いた場合と同様の効果を得ることができる。特に、第2の実施例の場合には、遮光部材側凸部41を半径方向外側を細くしたテーパ形状としているため、遮光部材40が半径方向に移動すると、その移動側に位置する遮光部材側凸部41が鏡筒側凹部42に噛み合うように係合される。そのため、遮光部材側凸部41と鏡筒側凹部42との係合力を高め、カム環5の回転力を遮光部材40に確実に伝達することが可能となる。
【0048】
図10A及び10Bは、遮光部材の第3の実施例を示すもので、この遮光部材50が第1の実施例に係る遮光部材30と異なるところは、遮光部材側凸部に替えて、3つの遮光部材側凹部51〜51を形成した点である。遮光部材側凹部51は、半径方向外側に開口されたV字状の切欠きとして構成されている。この遮光部材50の3つの遮光部材側凹部51の形状に対応して、カム環5の端面には、遮光部材50の形状に見合う形状を有する3つの鏡筒側凸部52が形成されている。
【0049】
遮光部材50は、遮光部53と補強部54とによって構成されている。補強部54は、3つの分割片の組み合わせによって形成されており、3つの分割片は同一形状を有している。即ち、補強部54の分割片は、周方向に120度弱に連続された円弧状部分を有している。その他の構成は、第1の実施例に係る遮光部材30と同様であり、遮光部材40及び遮光部材50は、いずれも直径方向へ少し移動できるようになっている。
【0050】
この遮光部材50を用いることによっても、遮光部材30を用いた場合と同様の効果を得ることができる。特に、第3の実施例の場合にも、遮光部材側凹部51を半径方向外側に開口したV字形状としているため、遮光部材50が半径方向に移動すると、その移動側に位置する遮光部材側凹部51が鏡筒側凸部52に噛み合うように係合される。そのため、遮光部材側凹部51と鏡筒側凸部52との係合力を高め、カム環5の回転力を遮光部材50に確実に伝達することが可能となる。
【0051】
図11A及び11Bは、遮光部材の第4の実施例を示すものである。この遮光部材60が第1の実施例に係る遮光部材30と異なるところは、補強部を廃止して遮光部だけで遮光部材60を構成すると共に、遮光部材側凸部も廃止して、3つの長穴を3つの遮光部材側凹部61〜61として形成した点である。3つの長穴61〜61は、周方向に等間隔あけて配置されていて、鏡筒側凸部62よりも大きい長穴として形成されている。この遮光部材60の3つの遮光部材側凸部61〜61の形状に対応して、カム環5の端面の対向位置に、3つの長穴61〜61にそれぞれ係合される3つの突起が鏡筒側凸部62の具体例として形成されている。
【0052】
図12A及び12Bは、遮光部材の第5の実施例を示すもので、この遮光部材70が第4の実施例に係る遮光部材60と異なるところは、突起と長穴を逆側に設定し、遮光部材70に突起を設けて遮光部材側凸部71として構成したものである。それぞれ突起からなる3つの遮光部材側凸部71〜71は、周方向に等間隔あけて配置されている。この遮光部材70の3つの遮光部材側凸部71〜71の形状に対応して、カム環5の端面の対向位置に、3つの長穴が鏡筒側凹部72の具体例として形成されている。3つの鏡筒側凹部72〜72は、周方向に等間隔あけて配置されていて、遮光部材側凸部71よりも大きい長穴として構成されている。
【0053】
その他の構成は、第1の実施例に係る遮光部材30と同様であり、遮光部材60及び遮光部材70は、いずれも直径方向へ少し移動できるようになっている。これら第4の実施例に係る遮光部材60及び第5の実施例に係る遮光部材70のような構成とすることによっても、第1の実施例に係る遮光部材30等と同様の効果を得ることができる。
【0054】
図13A及び13Bは、遮光部材の第6の実施例を示すもので、この遮光部材80が第4の実施例に係る遮光部材60と異なるところは、遮光部材側凹部を三角形の穴として形成した点である。三角穴からなる3つの遮光部材側凹部81〜81は、半径方向内側を底辺として半径方向外側が尖った形状となるように配置すると共に、周方向に等間隔あけて設けられている。この遮光部材80の3つの遮光部材側凹部81〜81の形状に対応して、カム環5の端面の対向位置に、3つの三角柱をなす突起が鏡筒側凸部82の具体例として形成されている。鏡筒側凸部82は、遮光部材側凹部81と相似形をなすように形成されている。そして、3つの鏡筒側凸部82〜82は周方向に等間隔あけて配置されていて、遮光部材80が直径方向に少しだけ移動できるように構成されている。
【0055】
図14A及び14Bは、遮光部材の第7の実施例を示すもので、この遮光部材90が第6の実施例に係る遮光部材80と異なるところは、三角穴からなる遮光部材側凹部の方向を逆方向に設定した点である。3つの遮光部材側凹部91〜91は、半径方向外側を底辺として半径方向内側が尖った形状となるように配置すると共に、周方向に等間隔あけて設けられている。この遮光部材90の3つの遮光部材側凹部91〜91の形状に対応して、カム環5の端面の対向位置に、3つの三角柱をなす突起が鏡筒側凸部92の具体例として形成されている。鏡筒側凸部92は、遮光部材側凹部91と相似形をなすように形成されている。そして、3つの鏡筒側凸部92〜92は周方向に等間隔あけて配置されていて、遮光部材90が直径方向に少しだけ移動できるように構成されている。
【0056】
これら第6の実施例に係る遮光部材80及び第7の実施例に係る遮光部材90のような構成とすることによっても、第1の実施例に係る遮光部材30等と同様の効果を得ることができる。なお、遮光部材側凸部及び遮光部材側凹部並びに鏡筒側凹部及び鏡筒側凸部の形状としては、上述した実施例のものに限定されるものではなく、これら実施例の任意の組み合わせ、或いは、周知形状のものを適用することができることは勿論である。
【0057】
図15は、本発明の鏡筒装置の実施の形態の第2の例の概略構成を示す説明図である。この実施例で示す鏡筒装置101は、遮光部材100を、第1の鏡筒の第2の実施例を示す内側鏡筒102によって支持し、その遮光側の外周縁を第2の鏡筒の第2の実施例を示す外側鏡筒103の内周面に摺動接触するように構成したものである。内側鏡筒102に対して外側鏡筒103は、相対的に回動可能であって、且つ、軸方向である光軸方向にも移動可能に構成されている。図示実施例では、内側鏡筒102の外周面に螺旋状のガイド溝105を設けると共に、このガイド溝105に摺動可能に係合されるガイドピン106が外側鏡筒103に設けられている。このガイドピン106とガイド溝105の係合により、内側鏡筒102と外側鏡筒103とが、相対的に回動可能且つ光軸方向へ移動可能とされている。
【0058】
遮光部材100は、図16A及び16Bに示すような構成を有している。即ち、遮光部材100は、遮光部111と補強部112とによって構成されている。遮光部111は、伸びたり縮んだりの弾性変形が容易なゴム等の弾性部材によってリング形状に形成されている。この遮光部111の内周縁の3箇所に、半径方向内側に突出する3つの遮光部材側突起が設けられている。
【0059】
遮光部材100の遮光部111の外径は、外側鏡筒103の内径よりも少し大径に形成されており、これにより、遮光部111の外周縁が外側鏡筒103の内周面に若干押圧された状態で接触するように構成している。また、遮光部111の内径は、内側鏡筒102の外径よりも小径に形成されている。そして、3つの遮光部材側突起の先端同士を結ぶ円の直径が内側鏡筒102の内径よりも少し大径となるように形成されている。
【0060】
遮光部材100の補強部112は、遮光部111を周方向に3分割した3つの分割片の組み合わせによって構成されている。3つの分割片が組み合わされた補強部112の形状は、遮光部111と略同様の形状を有しており、3つの遮光部材側突起と同じ位置に同様の形状を有する3つの補強部側突起が設けられている。この補強部112が遮光部111と異なるところは、補強部112の強度を遮光部111よりも強くした点、補強部112の外径を遮光部111の外径よりも小さくした点、更に、周方向に3分割した点である。即ち、補強部112の分割片は、周方向に120度弱に連続された円弧状部分を有している。そして、各分割片の内側であって、周方向の中間部に、半径方向内側に突出する補強部側突起が形成されている。
【0061】
これら補強部112の3つの補強部側突起と遮光部111の3つの遮光部材側突起とによって遮光部材100の遮光部材側凸部113が構成されている。その他の構成は、第1の実施例に係る遮光部材30等と同様である。
【0062】
このような遮光部材100の形状に対応して、内側鏡筒102の被写体側の端面に、3つの遮光部材側凸部113〜113に見合う形状を有する3つの鏡筒側凹部115〜115が設けられている。3つの鏡筒側凹部115〜115は、内側鏡筒102の被写体側のリング形状をなす端面部において周方向に等間隔に配置されており、半径方向外側に開口する切欠きとして形成されている。鏡筒側凹部115の幅は、遮光部材側凸部113の幅よりも若干大きく形成されており、遮光部材側凸部115が鏡筒側凹部115にガイドされて半径方向の外側及び内側に移動可能に構成されている。
【0063】
このような構成を有する遮光部材100は、内側鏡筒102の被写体側の端面部に装着されて取り付けられる。内側鏡筒102の端面部には遮光部材係止板120が取り付けられ、この遮光部材係止板120によって遮光部材100の抜け出しが防止されている。内側鏡筒102に装着された状態の遮光部材100は、外側鏡筒103に対して若干圧入した状態で嵌合される。このように構成することによっても、上述した第1の実施例と同様の効果を得ることができる。即ち、遮光部材100により、内側鏡筒102と外側鏡筒103との間の隙間を確実に遮光しつつ、両鏡筒の相対的な移動時における摺動摩擦力を低減させることができる。
【0064】
図17は、上述した沈胴式レンズ装置1を適用した撮像装置の一実施例を示すデジタルスチルカメラ200を示すものである。このデジタルスチルカメラ200は、外装を構成するケース201と、そのケース201に取り付けられた沈胴式レンズ装置1とを備えて構成されている。ケース201の前面右側部寄りの箇所に、撮影光学系が内蔵された沈胴式レンズ装置1が設けられている。図17は、沈胴式レンズ装置1が伸張した使用状態(広角位置、望遠位置、及び広角乃至望遠の中間位置)を示している。この状態から、沈胴式レンズ装置1を後退動作させて沈胴状態(収容位置)にすることにより、ケース201の前面と沈胴式レンズ装置1の前面とが略同一平面となるように構成されている。
【0065】
ケース201の上面であって、沈胴式レンズ装置1と反対側には、シャッタボタン202が設けられている。ケース201の前面上部には、フラッシュ装置の閃光を発光するフラッシュ部203が設けられている。そして、図示しないケース201の背面には、撮像した映像や操作機能を表示するディスプレイや、電源のオン・オフ、撮影モードや再生モード等の切り替えその他の操作を行うための複数の操作スイッチが設けられている。更に、ケース201の内部には、撮像素子から出力された撮像信号に基づいて画像データを生成し、メモリーカード等の記憶媒体に記録する画像処理部、前記画像データをディスプレイに表示させる表示処理部、制御部等が内蔵されている。制御部は、操作スイッチやシャッタボタン202の操作に応じて画像処理部、表示処理部、駆動部等を制御するCPUを含んでいる。
【0066】
このような構成を有するデジタルスチルカメラ200に沈胴式レンズ装置1等を用いることにより、動作負荷を低減して容易に伸張・後退動作させることができると共に、その動作時における擦り音の発生を低減させることができる。これにより、沈胴式レンズ装置1の動力源を小さくして装置全体の小型化を図ることができると共に、遮光部材が摺動する際の擦り音の発生を小さくして、雑音の発生を抑制若しくは防止することができる。
【0067】
以上説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で各種の変形実施が可能である。例えば、前述の実施例では、デジタルスチルカメラに適用した例について説明したが、監視カメラ、車載用カメラ、テレビ電話、パーソナルコンピュータ用カメラ、その他各種の撮像装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0068】
1…沈胴式レンズ装置(鏡筒装置)、 2…固定環、 3…回転環、 4…直進カム環、 5…カム環(第1の鏡筒)、 6…直進環、 7…1群枠(第2の鏡筒)、 8…1群レンズ保持枠、 9…1群レンズ、 11…動力発生部、 23…化粧リングA、 23a,24a,25a…円筒部、 23b,24b,25b…端面部、 24…化粧リングB、 25…化粧リングC、 30,40,50,60,70,80,90,100…遮光部材、 33,111…遮光部、 34,112…補強部、 35,41,71,113…遮光部材側凸部、 36,42,72,115…鏡筒側凹部、 51,61,81,91…遮光部材側凹部、 52,62,82,92…鏡筒側凸部、 101…鏡筒装置、 102…第1の鏡筒(内側鏡筒)、 103…第2の鏡筒(外側鏡筒)、 200…デジタルスチルカメラ(撮像装置)、 201…ケース、 202…シャッタボタン



【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系を支持するレンズ鏡筒を構成する鏡筒装置において、
第1の鏡筒と、
前記第1の鏡筒が前記光学系の光軸を中心として回転することに応じて、前記第1の鏡筒に対して前記光軸の方向へ移動する第2の鏡筒と、
前記第2の鏡筒と前記第1の鏡筒との間の隙間を塞ぐように設けられた遮光部材と、を備え、
前記遮光部材は、弾性部材で形成されると共に、前記第1の鏡筒に設けた鏡筒側凹部又は鏡筒側凸部に係合可能とされた一以上の遮光部材側凸部又は遮光部材側凹部が設けられ、
前記一以上の遮光部材側凸部又は遮光部材側凹部と前記鏡筒側凹部又は鏡筒側凸部との係合により、前記第1の鏡筒に対して前記光学系の光軸と直交する方向に移動可能とし、且つ、前記光軸を中心とする回転方向には前記第1の鏡筒と連動する
鏡筒装置。
【請求項2】
前記遮光部材は、前記第2の鏡筒に摺動接触されるリング形状をなす弾性部材により形成された遮光部と、第1の鏡筒に対して前記一以上の遮光部材側凸部又は遮光部材側凹部により係合される補強部と、を有し、
前記遮光部と前記補強部を接合して一体に形成した
請求項1記載の鏡筒装置。
【請求項3】
前記補強部は、周方向に連続する一体の部材からなる
請求項2記載の鏡筒装置。
【請求項4】
前記補強部は、周方向に複数に分割された複数の分割片からなる
請求項2記載の鏡筒装置。
【請求項5】
前記複数の分割片は、二又は三以上の円弧状に形成された同一部材からなる
請求項4記載の鏡筒装置。
【請求項6】
前記補強部は、前記遮光部よりも硬い
請求項2,3,4及び5のいずれか1記載の鏡筒装置。
【請求項7】
前記一以上の遮光部材側凸部は、半径方向外側又は半径方向内側に突出する突起片からなり、
前記突起片を、先端側を細くして先細形状に形成した
請求項1乃至6のいずれか1記載の鏡筒装置。
【請求項8】
前記遮光部材が摺動接触する第2の鏡筒の接触面に、前記光学系の光軸と略交差する方向に延在する摺動凸部を設けた
請求項1記載の鏡筒装置。
【請求項9】
前記遮光部の厚さが前記摺動凸部の前記光軸の光軸方向のピッチよりも小さく、前記光軸方向から見ると前記遮光部が前記摺動凸部に重なる
請求項8記載の鏡筒装置。
【請求項10】
前記第1の鏡筒は、前記第2の鏡筒の外側に位置する
請求項1記載の鏡筒装置。
【請求項11】
内部に光学系が配設された複数の鏡筒を有し且つ前記複数の鏡筒が入れ子式に収納されて軸方向へ相対的に移動可能とされた鏡筒装置と、
前記鏡筒装置が取り付けられた撮像装置本体と、を備えた撮像装置において、
前記鏡筒装置は、
第1の鏡筒と、
前記第1の鏡筒が前記光学系の光軸を中心として回転することに応じて、前記第1の鏡筒に対して前記光軸の方向へ移動する第2の鏡筒と、
前記第2の鏡筒と前記第1の鏡筒との間の隙間を塞ぐように設けられた遮光部材と、を備え、
前記遮光部材は、弾性部材で形成されると共に、前記第1の鏡筒に設けた鏡筒側凹部又は鏡筒側凸部に係合可能とされた一以上の遮光部材側凸部又は遮光部材側凹部が設けられ、
前記一以上の遮光部材側凸部又は遮光部材側凹部と前記鏡筒側凹部又は鏡筒側凸部との係合により、前記第1の鏡筒に対して前記光学系の光軸と直交する方向に移動可能とし、且つ、前記光軸を中心とする回転方向には前記第1の鏡筒と連動する
撮像装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−118343(P2012−118343A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268742(P2010−268742)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】