説明

鏡餅用包装箱およびその型紙

【課題】把手部を有する鏡餅用包装箱において把手部を持ったときに安定になるようにする。
【解決手段】包装箱10の上面部12のほぼ中央の位置に,上面部の一部を用いて起立可能な把手部12A,12Bが形成され,包装箱の上面部12から前面部11に連続する開口20が形成され,この開口を塞ぐとともに把手部の内側面に接する透明シート21が上面部および前面部の内側に糊付けされる。包装箱の一側面または後面が鏡餅の出入口であり,この出入口が底面部または上面部12から連続しかつ直角に折り曲げられる開閉面部15により閉じられる。上面部または底面部から連続しかつ開閉面部の内側に直角に折り曲げられる内側片17Bが設けられ,この内側片の上面部または底面部との境界付近に差込孔22が形成され,開閉面部の先端には差込孔に差込まれる係止舌片15Aが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は鏡餅用包装箱およびその型紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近年,鏡餅は合成樹脂により鏡餅形に形成した合成樹脂製鏡餅形パックという形態で流通,販売されている。この鏡餅形パック内には,餅を充填する場合や,合成樹脂シートで包装した切餅または丸形餅を複数個収納する場合がある。菓子を鏡餅形パック内に入れることもある。
【0003】
いずれにしてもこのような合成樹脂製鏡餅形パックは,そのままの形態で,簡易な飾台に載置した形態で,または厚紙製の三方(供え台)に載せ,必要な飾りを施した鏡餅セットとして販売されるが,各形態に応じて,飾台,供え台,その他の飾りとともに,厚紙製の包装箱に収納されて店頭に陳列される。この種の鏡餅用包装箱には,店頭において包装箱を積み重ねた際に,箱の中に収納された鏡餅形パックが見えるようにするために,少なくとも前面に透視窓を設けているものが多い。
【0004】
鏡餅用包装箱は一般的に直方体形状である。鏡餅セットはその包装箱内に収納された状態で販売されるから,それを購入した消費者は直方体状の包装箱を持ち帰ることになるが,これは持ちにいくという問題がある。特に包装箱が大きい場合には内部の鏡餅形パックの重量も重く,両手を使って持たなければならない。そこで包装箱を別の大きな袋に入れないと簡単には持ち運ぶことができない。
【0005】
この問題点を解決するために,鏡餅用包装箱の上面パネルに把手部分を一体的に設けて,簡単に持ち運べるようにしたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3121163号
【0007】
この鏡餅用包装箱は厚紙製であり,側面の開口が鏡餅の出入口となっている。この側面開口は,箱の底面から連続して形成された蓋パネルを直角に折り曲げて起立させることにより閉鎖される。このとき,蓋パネルの先端部が直角に折り曲げられて上面パネルの下面に沿うように単に挿入されるだけで,包装箱の上面パネルと蓋パネルとは結合されていない。
【0008】
したがって,把手部分を握って重い鏡餅形パックが入った包装箱を持ち上げると,上面パネルの中央部が上に引っ張られ,上面パネルが湾曲して不安定になるとともに,上面パネルと側面の蓋パネルの上端との間にすき間ができてしまい不格好となる。
【発明の開示】
【0009】
この発明は把手部を設けた鏡餅用包装箱において,重い鏡餅形パックを収納した状態で把手部により持ち上げたときにも包装箱の変形が殆どなく,安定して持ち運ぶことができるようにすることを目的とするものである。
【0010】
この発明は,1枚の厚紙を折ることにより直方体状に形成される鏡餅用包装箱において,該包装箱の上面部のほぼ中央の位置に,該上面部の一部を用いて起立可能な把手部が形成され,該包装箱の上面部から前面部に連続する開口が形成され,この開口を塞ぐとともに該把手部の内側面に接する透明シートが該上面部および該前面部の内側に設けられ,該包装箱の一側面または後面が鏡餅の出入口であり,この出入口が底面部または上面部から連続しかつ直角に折り曲げられる開閉面部により閉じられ,該上面部または底面部から連続しかつ該開閉面部の内側に直角に折り曲げられる内側片が設けられ,該内側片の該上面部または底面部との境界付近に差込孔が形成され,該開閉面部の先端には該差込孔に差込まれる係止舌片が形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
この鏡餅用包装箱によると,上面部に形成された把手部を起立させてこれを手で握って,重い鏡餅形パックが収納された包装箱を持ち運ぶことができる。把手部を起立させてもその下は透明シートで覆われているから,包装箱の内部が外部と通ずることがなく衛生的に保たれる。開閉面部の先端に形成された係止舌片が,上面部または底面部とそれから連続する内側片との境界付近に形成された差込孔に差込まれるから,把手部を持って包装箱を持ち上げたときに上面部に上向きの力が加わっても,側面の開閉面部と上面部又は底面部との間にすき間が生じることはなく,不安定になることもない。
【0012】
差込孔は一実施態様では,該境界に形成されたスリットである。他の実施態様では,該内側片に該境界に沿う線を弦とする半円形の切込みが形成され,この切込みの内側の半円形片がほぼ直角に折り曲げられ,これにより半円形の該差込孔が形成される。この場合には,係止舌片の差込みが容易となるとともに,抜け止めの効果もある。
【0013】
把手部は上記登録実用新案公報に記載のように1つでもよいが,2つ形成することもできる。たとえば,該上面部に該開口の両側縁を連結する連結部を設け,この連結部の両側に連続して把手部をそれぞれ形成するとよい。
【0014】
該前面部および該後面部にそれぞれ連続し,該出入口を塞ぐように折り曲げられる側部内側片を設けると該出入口の閉鎖性が高まる。
【0015】
厚紙とは植物性繊維を材料とするもののみならず,合成繊維を材料の一部または全部とするもの,表面に合成樹脂膜をコーティング等したもの,合成樹脂による厚手のシート等を含むものである。
【0016】
この発明は,1枚の厚紙を折ることにより直方体状の鏡餅用包装箱を形成するための型紙も提供している。この型紙は,底面部,前面部,上面部および後面部が連続して形成され,該上面部のほぼ中央の位置に,該上面部の一部を用いて起立可能な把手部が形成され,該上面部から該前面部に連続する開口が形成され,この開口を塞ぐとともに該把手部の内側面に接する透明シートが該上面部および該後面部の内側に設けられ,該底面部または該上面部から開閉面部が連続して形成され,該上面部または該底面部から内側片が連続して形成され,該内側片の該上面部または底面部との境界付近に差込孔が形成され,該開閉面部の先端には該差込孔に差込まれる係止舌片が形成されていることを特徴とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】鏡餅用包装箱の展開図である。
【図2】鏡餅用包装箱の組立途中の斜視図である。
【図3】鏡餅用包装箱を持ち運ぶために把手部を起立させた状態を示す斜視図である。
【図4】変形例を示す鏡餅用包装箱の斜視図である。
【実施例】
【0018】
図1から図3は実施例を示すもので,図1は鏡餅用包装箱を作るための1枚の型紙(ブランク)を示し,図2はこの型紙を用いて鏡餅用包装箱を組立てる途中の様子を示し(内部に鏡餅セットが収納されている),図3は持ち運ぶために把手部を起立させた状態を示している。
【0019】
図1は包装箱10Aの展開図を示し,厚紙を打ち抜いた1枚の型紙(ブランク)10Aの外面を表わしている。山折りの折り線が一点鎖線で示され,谷折りの折り線が破線で示されている。
【0020】
包装箱10を形成するための1枚の厚紙において,横一列に底面部14,前面部11,上面部12および後面部13および糊代13Aが連続している。底面部14に一方の側面部15(包装箱を前からみたときに右側面部となる)(この側面が開閉面となるので,この側面部は開閉面部,扉部とも呼ばれる)が上記の横一列の方向とは垂直な方向に延びるように連続して形成されている。側面部15の先端部の中央部分には係止舌片15Aが連続して形成されている。係止舌片15Aは側面部15の幅の全体ではなく,中央部にのみ部分的に設けられている。同じように,包装箱を前からみたときに右側面部となる側において,前面部11,上面部12および後面部13には,それぞれ側部内側片17A,上部内側片(内側片)17Bおよび側部内側片17Cが連続的に形成されている。上部内側片17Bには上面部12との境界に沿って(やや上部内側片17B寄りの位置に),係止舌片15Aの幅にほぼ等しい長さのスリット(差込孔)22が形成されている。
【0021】
他方の側面部(包装箱を前からみたときに左側面部となる)を形成する側面片側部16A,側面片上部16B,側面片側部16Cおよび側面片下部16Dが上記の各面部11,12,13および14からそれぞれ,側面部15とは反対側に延びて連続的に形成されている。これらの部分16A〜16Dは包装箱を形成したときにその一部が互いに重なり合って,包装箱10の左側面を閉鎖する。部分16A,16Cには重なり合ったときに噛み合う弧状の辺部18a,18cが形成されている。部分16B,16Dはほぼ台形である。
【0022】
上面部12には前後の中央に連結部12Cが区画されている。連結部12Cは左右方向に長く,その前後方向にはほぼU字形の把手部12A,12Bが区画されている。連結部12Cの両側縁と把手部12A,12Bの内周縁との間は切除されている(切除された部分(開口)を符号19で示す)。把手部12A,12Bの外周縁の大部分は上面部12から切り離されている(切込みが入れられている)が,数箇所において上面部12とわずかにつながっている(つながっている部分を符号12aで示す)。把手部12A,12Bはその両端部において当然に上面部12(連結部12C)とつながっている。把手部12A,12Bは,それを起立させたときに,切除された部分(開口,空間)19に指を入れて握ることができる程度の大きさが好ましい。
【0023】
前面部11から上面部12の把手部12Aまで,開口20が形成されている。開口20は包装箱10内に収納された鏡餅セットなどが外部から見えるようにするためのもので(透視窓),好ましくはその幅は前,上面部11,12の半分以上であり,長さは前面部11を組立てたときの下部となる部分を除いて前面部11のほぼ全体にわたるほど長い。この開口20を塞ぐように,そして把手部12A,12Bおよび連結部12Cの内側面に接するように,合成樹脂製透明シート21が設けられている。この透明シート21はその全周にわたって前面部11および上面部12の内側面に接着(糊付け)されている。透明シート21は把手部12A,12Bの内側面には接着されていない。好ましくは,透明シート21を連結部12Cの内側面と接着する。
【0024】
図1に示す型紙を折り線で折り曲げて組立てると図2に示すような包装箱10ができる(図2は未完成状態である)。後面部13の糊代13Aは底面部14の一辺部に糊付けされる。左側面部は各部分16A〜16Dを図1に(1)〜(5)で示す順序で順次内側に入るように重ね合わせて形成される。このとき弧状の辺18aと18cとが噛み合う。これらの部分16A〜16Dは重なり合った部分で必要に応じて糊付けされる。包装箱10の表面には適切な模様,図柄,文字等が描かれるのはいうまでもない。
【0025】
包装箱10の右側面が鏡餅セットの出入口である。鏡餅セット30を包装箱10内に収納した後,この出入口の閉鎖は次のようにして行なわれる。まず,側部内側片17A,17Cが直角に折り曲げられ,出入口をほぼ覆う。次に上部内側片17Bが出入口に向けてほぼ直角に折り曲げられる。最後に,側面部15の係止舌片15Aをほぼ直角に折り曲げておき,側面部15を底面部14との境界で直角に折り曲げ,係止舌片15Aをスリット22内に入れる。これで包装箱10の組立てが完了する。
【0026】
鏡餅セット30を収納した包装箱10はこの状態で店頭に陳列される。顧客は,透明シート21で覆われた開口(透視窓)20を通して包装箱10内の鏡餅セット30(たとえば鏡餅形パックが三方に載置され,かつ各種の飾りがつけられたもの)を見ることができる。
【0027】
包装箱10内に収納された鏡餅セットを購入した顧客はその上面部12に形成された把手部12A,12Bを起立させる。すなわち,把手部12A,12Bは上面部12から殆ど切り離されており,わずかなつなぎ部分12aでつながっているだけであるから,把手部12A,12Bを手で起こしていけば,つなぎ部分12aは容易に切断され,図3に示すように起立する。顧客は把手部12A,12Bを手で持って,重い鏡餅形パックが入った包装箱10を運ぶことができる。包装箱10を紙袋等に入れて持ち運ぶ必要はない。
【0028】
把手部12A,12Bを持ち上げたときに上面部12の中央部は上方に引っ張られるが,側面部15の係止舌片15Aが上面部12と上部内側片17Bとの境界に形成されたスリット22内に入っているので,上面部12と側面部15との間にすき間ができて不安定となったり,不格好となることがない。
【0029】
上記実施例では把手部12A,12Bと連結部12Cとの間が切除されている(符号19で示す部分)が,この部分19を完全に切除せずに残しておき,かつ把手部12A,12Bの内周縁のうちの長い縁でのみ連続させ(把手部12A,12Bの内周縁のうち短い縁および連結部12Cと接する縁に切込みを入れる)ておいて,部分19を把手部12A,12Bと重ねるように折り返してもよい。把手部は,上述した実用新案登録第 3121163号に記載のように,把手部12Aのみとしてもよい。逆に把手部12Bのみとしてもよい。上面部12の前面部11側の境界と把手部12Aとの間に,連結部12Cと同じような連結部を設けてもよい。
【0030】
上記実施例では係止舌片は側面部15の中央に1つのみ設けられているが,互いに離れた状態で2つまたは3つ以上の係止舌片を設けてもよい。この場合には,複数の係止舌片に対応して上部内側片17Bと上面部12との境界付近に,これらの係止舌片を差込む複数のスリットを形成するのはいうまでもない。スリットに少し幅を持たせれば係止舌片が差込みやすくなる。
【0031】
図4は差込孔の変形例を示すものであり,上部内側片17Bの中央部に,上面部12との境界に沿う線を弦とする半円形の切込み23が形成され,この切込み23の内側の半円形片23aが上部内側片17Bよりも内側に入るように上面部12に対してほぼ直角に折り曲げられる。包装箱10の右側出入口を閉鎖するときに,側面部15を立上げてその係止舌片15Aを半円形の孔23(切込み23のみならず,それによって形成された半円形の孔も符号23で示す)内に入れると,係止舌片15Aの先端が半円形片23aの表面に当り,この表面上を滑りながら下方に案内されていく。これによって係止舌片15Aの差込みが容易となる。半円形孔23の直径は係止舌片15Aの幅にほぼ等しい程度にしておくと,係止舌片15Aが半円形孔23内に差込まれた後は,係止舌片15Aが半円形孔23の徐々に幅の狭くなる弧状部分に引っ掛かり,抜けにくくなる。
【符号の説明】
【0032】
10 包装箱
10A 型紙(ブランク)
11 前面部
12 上面部
12A,12B 把手部
12C 連結部
13 後面部
14 底面部
15 側面部(開閉面部)
15A 係止舌片
17A,17C 側部内側片
17B 上部内側片
20 開口
21 透明シート
22 スリット(差込孔)
23 半円形孔(差込孔)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1枚の厚紙を折ることにより直方体状に形成される鏡餅用包装箱において,
該包装箱の上面部のほぼ中央の位置に,該上面部の一部を用いて起立可能な把手部が形成され,該包装箱の上面部から前面部に連続する開口が形成され,この開口を塞ぐとともに該把手部の内側面に接する透明シートが該上面部および該前面部の内側に設けられ,
該包装箱の一側面または後面が鏡餅の出入口であり,この出入口が底面部または上面部から連続しかつ直角に折り曲げられる開閉面部により閉じられ,
該上面部または底面部から連続しかつ該開閉面部の内側に直角に折り曲げられる内側片が設けられ,
該内側片の該上面部または底面部との境界付近に差込孔が形成され,該開閉面部の先端には該差込孔に差込まれる係止舌片が形成されていることを特徴とする鏡餅用包装箱。
【請求項2】
該差込孔が該境界に形成されたスリットである,請求項1に記載の鏡餅用包装箱。
【請求項3】
該内側片に該境界に沿う線を弦とする半円形の切込みが形成され,この切込みの内側の半円形片がほぼ直角に折り曲げられ,これにより半円形の該差込孔が形成される,請求項1に記載の鏡餅用包装箱。
【請求項4】
該上面部に該開口の両側縁を連結する連結部が設けられ,この連結部の両側に連続して把手部がそれぞれ形成されている,請求項1から3のいずれか一項に記載の鏡餅用包装箱。
【請求項5】
該前面部および該後面部にそれぞれ連続し,該出入口を塞ぐように折り曲げられる側部内側片が設けられている,請求項1から4のいずれか一項に記載の鏡餅用包装箱。
【請求項6】
1枚の厚紙を折ることにより直方体状の鏡餅用包装箱を形成するための型紙であって,
底面部,前面部,上面部および後面部が連続して形成され,
該上面部のほぼ中央の位置に,該上面部の一部を用いて起立可能な把手部が形成され,該上面部から該前面部に連続する開口が形成され,この開口を塞ぐとともに該把手部の内側面に接する透明シートが該上面部および該後面部の内側に設けられ,
該底面部または該上面部から開閉面部が連続して形成され,
該上面部または該底面部から内側片が連続して形成され,
該内側片の該上面部または底面部との境界付近に差込孔が形成され,該開閉面部の先端には該差込孔に差込まれる係止舌片が形成されていることを特徴とする型紙。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−171622(P2012−171622A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31829(P2011−31829)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】