説明

長寿命OLEDディスプレイ

本発明は、少なくとも1種の正孔伝導性材料CAと少なくとも1種のリン光発光体CBとを含む発光層Cを有する有機発光ダイオード、少なくとも1種の正孔伝導性材料と共に又は少なくとも1種のリン光発光体と共に少なくとも1種のカルベン錯体を含む混合物、並びに発光層の寿命を延ばすために少なくとも1種の正孔伝導性材料と少なくとも1種のリン光発光体とを含む混合物のOLEDの発光層としての使用に関する。本発明による有機発光ダイオードは、有機発光ダイオードの少なくとも1つ層中に、好ましくは正孔ブロッキング層及び/又は電子ブロッキング層並びに/あるいは発光層C中に、正孔伝導性材料CA及び発光体CBに加え、ジシリルカルバゾール、ジシリルジベンゾフラン、ジシリルジベンゾチオフェン、ジシリルジベンゾホスホール、ジシリルジベンゾチオフェン−S−オキシド、及びジシリルジベンゾチオフェン−S,S−ジオキシドから選択される少なくとも1種の化合物を有し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の正孔伝導性材料CAと少なくとも1種のリン光発光体CBとを含む発光層Cを有する有機発光ダイオード、少なくとも1種の正孔伝導性材料と共に又は少なくとも1種のリン光発光体と共に少なくとも1種のカルベン錯体を含む混合物、並びに発光層の寿命を延ばすために少なくとも1種の正孔伝導性材料と少なくとも1種のリン光発光体とを含む混合物のOLED中の発光層としての使用に関する。本発明の有機発光ダイオードは、有機発光ダイオードの少なくとも1つの層中に、好ましくは正孔ブロッキング層及び/又は電子ブロッキング層並びに/あるいは発光層C中に、正孔伝導性材料CA及び発光体CBに加え、ジシリルカルバゾール、ジシリルジベンゾフラン、ジシリルジベンゾチオフェン、ジシリルジベンゾホスホール、ジシリルジベンゾチオフェン−S−オキシド、及びジシリルジベンゾチオフェン−S,S−ジオキシドから選択される少なくとも1種の化合物を有し得る。
【0002】
有機発光ダイオード(OLED)は、電流によって励起されると光を放出する物質の特性を利用している。OLEDは、平面表示装置の製造に用いられる陰極線管及び液晶ディスプレイの代替として特に関心が持たれている。非常にコンパクトなデザインと本質的に電力消費量が少ないことから、OLEDを備える装置は、特に携帯用途、例えば、携帯電話やノート型パソコンなどの用途に適している。
【0003】
OLEDの機能と好適な構成(層構成)についての基本原理は、当業者にとって公知であり、例えば、国際特許公開公報第2005/113704号及びその引用文献に記載されている。用いられる発光材料(発光体)は、蛍光材料(蛍光発光体)と同様に、リン光材料(リン光発光体)であってもよい。一重項発光を示す蛍光発光体とは対照的に、リン光発光体は、通常、三重項発光を示す有機金属錯体である(M.A.Baldow et al.,Appl.Phys.Lett.1999,75,4−6)。量子力学的な理由から、リン光発光体を使用する場合、最大4倍までの量子効率、エネルギー効率、及び出力効率が可能である。有機金属リン光発光体を使用する利点を実際に利用するため、長い動作寿命、熱的ストレスに対する高い安定性、並びに低い使用電圧及び動作電圧を有するリン光発光体及び素子用組成物を提供することが求められている。
【0004】
このような要件を満たすため、多数のリン光発光体及び素子用組成物が従来技術において提案されてきた。
【0005】
例えば、国際特許公開公報第2005/019373号は、OLED中に少なくとも1種のカルベン配位子を含む非荷電遷移金属錯体の最初の使用に関するものである。国際特許公開公報第2005/019373号によれば、これらの遷移金属錯体は、OLEDの任意の層に使用することができ、その配位子構造又は中心金属は、遷移金属錯体に求められる特性に合わせて変更することが可能である。例えば、この遷移金属錯体は、OLEDの電子ブロッキング層、励起子ブロッキング層、正孔ブロッキング層、又は発光層に使用することが可能であるが、好ましいのは、この遷移金属錯体をOLED中において発光体分子として使用することである。
【0006】
国際特許公開公報第2005/113704号は、カルベン配位子を有する発光化合物に関するものである。国際特許公開公報第2005/113704号では、様々なカルベン配位子との多数の遷移金属錯体が挙げられており、好ましくは、遷移金属錯体をリン光発光材料として使用することであり、さらに好ましくは、ドーパント物質として使用することである。
【0007】
米国特許第5,668,438号では、陰極、電子輸送層、正孔輸送層、及び陽極から形成された有機発光ダイオードについて開示されており、この電子輸送層及び正孔輸送層は、発光が確実に有機発光ダイオードの正孔輸送層から発せられるように選択されている。米国特許第5,668,438号の一実施形態において、正孔輸送層は蛍光材料でドーピングされている。しかし、リン光材料の使用については、米国特許第5,668,438号では言及されていない。米国特許第5,668,438号における有機発光ダイオードは、特に、従来の有機発光ダイオードより効率が改善されており注目に値する。米国特許第5,668,438号では、一例として、主に2.50eVのバンドギャップを有し緑色蛍光を発する正孔輸送材料の使用について言及しており、これは、2.75eVの典型的なバンドギャップを有し青色蛍光を発する電子輸送材料と一緒に使用されている。
【0008】
独国特許出願公開第10355380号は、ある構造単位L=X及び/又はM=X(ここで、X基は、少なくとも1つの非結合電子対を有し、L基はP、As、Sb、又はBiであり、M基はS、Se、又はTeである)を有する少なくとも1種のマトリックス材料と、発光可能であって、適切な励起により発光し、原子番号>20の少なくとも1種の元素を含む化合物である少なくとも1種の発光材料とを含む材料混合物に関する。この混合物は、電子部品、特にOLEDにおいて使用することができ、独国特許出願公開第10355380号によれば、寿命を大いに延ばすと共に効率の改善にもつながり得る。独国特許出願公開第10355380号における混合物では、別個の正孔ブロッキング層及び別個の電子輸送層、並びに/あるいは電子注入層も使用する必要がないため、OLEDの層構造をかなり単純化することが可能であると指摘されている。実施例では、ホスト材料としてビス(9,9’−スピロビフルオレン−2−イル)フェニルホスフィンオキシドを含むOLED(発光体としてIr(PPy)3でドープされている)が使用されており、このOLEDは緑色発光を示す。
【0009】
良好な発光効率並びに低い使用電圧及び動作電圧だけでなく、特に長い動作寿命を特徴とする有機発光ダイオードが依然として必要とされている。特に、青色光を放つOLEDに対するニーズは非常に高い。
【0010】
したがって、本発明の目的は特に、長い動作寿命を特徴とし、好ましくは電磁波スペクトルの青色領域の光を発する、有機発光ダイオード(OLED)及び有機発光ダイオードの発光層において使用することができる材料を提供することにある。
【0011】
この目的は、
i)陽極Aと、
ii)少なくとも1種の正孔伝導性材料から形成された正孔伝導層Bと、
iii)発光層Cと、
iv)電子伝導層Dと、
v)陰極Eと
(ここで、層A、B、C、D、及びEは、上記の順序で配置され、層AとB、BとC、CとD、及び/又はDとEの間に1つ以上のさらなる層が適用されていてもよい)
を含む有機発光ダイオード(OLED)によって達成される。
【0012】
本発明の有機発光ダイオード(OLED)では、発光層は、少なくとも1種の正孔伝導性材料CA及び少なくともリン光発光体CBを含む。
【0013】
驚いたことに、少なくとも1種のリン光発光体CBと共に少なくとも1種の正孔伝導性材料CAを含むOLED発光層の寿命は、正孔伝導性材料を含まない発光層と比較して、最大100倍長くなり得ることがわかっている。
【0014】
陽極A
陽極Aには、当業者に公知である全ての陽極材料を使用することができる。陽極に好適な材料は、例えば、金属、様々な金属の混合物、金属合金、金属酸化物、又は様々な金属酸化物の混合物を含む材料である。あるいは、陽極は導電性ポリマーであってもよい。好適な材料としては、例えば、元素周期表(CAS版)の第IB族、第IIB族、第IVB族、第VB族、第VIB族、第VIII族、第IVA族、及び第IVB族の金属が挙げられる。陽極が透明でなければならない場合、一般的には、元素周期表(CAS版)の第IIB族、第IIIA族、及び第IVA族の混合金属酸化物が使用され、とりわけインジウム−スズ酸化物(ITO)が特に好ましい。同様に、陽極Aは、有機材料、例えばポリアニリンを含むことも可能であり、これらは、例えば、Nature,vol.357,p477−479(1992年6月11日)に記載されている。発光層において形成された光を放出できるように、少なくとも陽極又は陰極のいずれかが少なくとも部分的に透明でなければならない。
【0015】
正孔伝導層B及び発光層C
正孔伝導性材料B及びCA
正孔伝導層Bは、少なくとも1種の正孔伝導性材料から形成される。本発明によれば、発光層Cは、少なくとも1種のリン光発光体CB及び少なくとも1種の正孔伝導性材料CAを含む。発光層C及び正孔伝導層Bの正孔伝導性材料は、同一であってもよく、又は異なっていてもよい。
【0016】
正孔伝導層Bの少なくとも1種の正孔伝導性材料のHOMO及び発光層Cの少なくとも1種の正孔伝導性材料CAのHOMOは、好ましくは、陽極の仕事関数との差が≦1eVであり、好ましくは約≦0.5eVの範囲である。例えば、使用される陽極材料がITO(これの仕事関数は約5eVである)の場合、層Bに使用される正孔伝導性材料及び層Cに使用される正孔伝導性材料CAは、好ましくは、そのHOMOが≦6eVの材料であり、好ましくは5〜6eVの範囲の材料である。
【0017】
層C及びBにおいて用いられる正孔伝導性材料は、当業者に公知の好適な全ての正孔伝導性材料であってもよい。正孔伝導層Bの少なくとも1種の正孔伝導性材料のバンドギャップと発光層Cの少なくとも1種の正孔伝導性材料のバンドギャップの両方は、好ましくは、発光層Cに使用される少なくとも1種のリン光発光体CBのバンドギャップより大きい。本発明のさらなる実施形態において、正孔伝導層Bのバンドギャップが、発光層Cに使用される少なくとも1種のリン光発光体CBのバンドギャップと等しいか又はより小さいことは同様に可能である。
【0018】
本願によれば、バンドギャップは三重項エネルギーを意味するものと理解される。
【0019】
典型的な正孔伝導性材料は、例えば、Kirk−Othmer,Encyclopedia of Chemical Technology,4th ed.,vol.18,p837−860,1996に開示されている。正孔輸送性分子及び正孔輸送性ポリマーの両方が、正孔伝導性材料として使用することができる。通常使用される正孔伝導性材料は、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(α−NPD)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD)、1,1−ビス[(ジ−4−トリルアミノ)−(3,3’−ジメチル)ビフェニル]−4,4’−ジアミン(ETPD)、テトラキス(3−メチルフェニル)−N,N,N’,N’−2,5−フェニレンジアミン(PDA)、α−フェニル−N,N−ジフェニルアミノスチレン(TPF)、p−(ジエチルアミノ)−ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン(DEH)、トリフェニルアミン(TPA)、ビス[4−(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル](4−メチルフェニル)メタン(MPMP)、1−フェニル−3−[p−(ジエチルアミノ)スチリル]−5−[p−(ジエチルアミノフェニル)]ピラゾリン(PPR又はDEASP)、1,2−トランス−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)シクロブタン(DCZB)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TTB)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(TDTA)、及びポルフィリン化合物、並びにフタロシアニン(例えば、銅フタロシアニンなど)から成る群から選択される。通常使用される正孔輸送性ポリマーは、ポリビニルカルバゾール、(フェニルメチル)ポリシラン、PEDOT(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン))から成る群から選択され、好ましくは、PSS(ポリスチレンスルホネート)及びポリアニリンでドープされたPEDOTである。同様に、ポリスチレンおよびポリカーボネートなどのポリマー中に正孔輸送性分子をドープすることによって正孔輸送性ポリマーを得ることも可能である。好適な正孔輸送性分子は、上述の分子である。
【0020】
上述のように、層Bの少なくとも1種の正孔伝導性材料のバンドギャップ及び層Cの少なくとも1種の正孔伝導性材料CAのバンドギャップは、好ましくは、少なくとも1種のリン光発光体CBのバンドギャップより大きい。本発明のさらなる実施形態において、正孔伝導層Bのバンドギャップが、発光層Cに使用される少なくとも1種のリン光発光体CBのバンドギャップと等しいか又はより小さいことも同様に可能である。
【0021】
前述の通常使用される正孔伝導性材料に加えて、層B及び層Cに好適な正孔伝導性材料として、さらに、例えば遷移金属錯体が挙げられる。また、発光材料として通常使用される材料も好適である。例えば、層Cに使用されるリン光発光体CBのバンドギャップより大きいバンドギャップを有するようなリン光発光体は、層B及び層Cの正孔伝導性材料として使用することができる。前述の材料の群に属する好適な正孔伝導性材料としては、例えば、リン光発光体として以下において言及する遷移金属錯体が挙げられるが、ただし、それらは、使用されるリン光発光体に関する前述の条件を満たす場合においてである。
【0022】
さらに、前述の正孔伝導性材料に加え、本発明のさらなる実施形態において、下記に示す一般式(III)(X=NR37又はPR37)のジシリルカルバゾール及びジシリルベンゾホスホールが、層Bの正孔伝導性材料として、又は発光層Cの成分CAとして好適である。
【0023】
本願において言及したバンドギャップ並びに本発明のOLEDに使用される材料のHOMO及びLUMOのエネルギーは、様々な方法、例えば、溶液電気化学、サイクリックボルタンメトリー、又は紫外光子電子分光法(UPS)により決定することができる。また、電気化学的に決定されたHOMO及び吸収分光法によって決定されたバンドギャップの差から、特定の材料のLUMOの位置を計算してもよい。HOMO及びLUMOの位置に関して本願に列記したデータ、及び本発明のOLEDに使用した材料のバンドギャップの差は、純粋な化合物の固体状態におけるUPSにより決定した。UPSは、当業者に公知の方法であり、UPSの結果に基づいて決定されたHOMO及びLUMOの位置並びにバンドギャップは、当業者において公知である。
【0024】
リン光発光体CB
発光層における好適なリン光発光体CBは、原則として、当業者に公知の全てのリン光発光体である。本発明により、好ましいのは、≧2.5eVのバンドギャップ、好ましくは2.5eV〜3.4eVのバンドギャップ、より好ましくは2.6eV〜3.2eVのバンドギャップ、最も好ましくは2.8eV〜3.2eVのバンドギャップを有するリン光発光体CBを発光層C中において使用することである。したがって、非常に特に好ましいのは、青色光を放つリン光発光体である。上述のように、層B及び層Cに使用される正孔伝導性材料のバンドギャップは、好ましくはリン光発光体のバンドギャップより大きい。リン光発光体のバンドギャップについての上記の値は、簡単な方法により有利に適した層B及び層Cの正孔伝導性材料のバンドギャップを決定するために使用することができる。
【0025】
本発明のOLEDにおいて、元素周期表(CAS版)の第IB族、第IIB族、第IIIB族、第IVB族、第VB族、第VIB族、第VIIB族、第VIIIB族、ランタノイド、及び第IIIA族から選択された少なくとも1つの元素を有するリン光発光体CBを使用することが好ましい。リン光発光体は、好ましくは、元素周期表(CAS版)の第IIB族、第IIIB族、第IVB族、第VB族、第VIB族、第VIIB族、及び第VIII族、Cu、並びにEuから選択された少なくとも1つの元素を有する。さらに好ましくは、リン光発光体は、第IB族、第VIB族、第VIIB族、第VIII族、及びEuから選択された少なくとも1つの元素を有し、好ましくは、その少なくとも1つの元素はCr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Fe、Nb、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、及びEuから選択され、より好ましくは、その少なくとも1つの元素はOs、Rh、Ir、Ru、Pd、及びPtから選択され、さらにより好ましくは、Ru、Rh、Ir、及びPtから選択される。さらに非常に好ましい実施形態では、このリン光発光体は、Ir及びPtから選択される少なくとも1種の元素を有する。
【0026】
非常に特に好ましい実施形態において、層C中の少なくとも1種の正孔伝導性材料CA及び/又はリン光発光体CBはカルベン錯体である。正孔伝導層Bの正孔伝導性材料も、同様にカルベン錯体であってよい。好ましいのは、前述の元素の少なくとも1つを有するカルベン錯体である。カルベン錯体が、正孔伝導性材料として、及びリン光発光体としての両方において使用される場合、その使用されるカルベン錯体は、異なるカルベン錯体であり、正孔伝導性材料として使用されるカルベン錯体のバンドギャップは、リン光発光体として使用されるカルベン錯体のバンドギャップより大きい。発光層において正孔伝導性材料CAとして使用されるカルベン錯体及び正孔伝導層B中の正孔伝導性材料として使用されるカルベン錯体は、同一又は異なっていてもよい。
【0027】
発光層においてリン光発光体として好ましく使用されるカルベン錯体は、好ましい実施形態において、≧2.5eVのバンドギャップ、好ましくは2.5eV〜3.4eVのバンドギャップ、より好ましくは2.6eV〜3.2eVのバンドギャップ、最も好ましくは2.8eV〜3.2eVのバンドギャップを有する。特に好ましくは、リン光発光体CBとして使用されるカルベン錯体は、青色発光化合物である。
【0028】
発光層Cにおいてリン光発光体CBとして、又は層Cにおいて正孔伝導性材料CAとして、あるいは層Bにおいて正孔伝導性材料として、好ましく使用されるカルベン錯体は、一般式I:
【化1】

[式中、記号はそれぞれ以下のように定義される:
1は、特定の金属原子において可能な任意の酸化状態の、元素周期表(CAS版)の第IB族、第IIB族、第IIIB族、第IVB族、第VB族、第VIB族、第VIIB族、第VIII族、ランタノイド、及び第IIIA族の遷移金属から成る群から選択される金属原子であり(なお、好ましい金属原子は、リン光発光体CBにおいて上述されているような金属原子である)、
カルベンは、非荷電あるいはモノアニオン性の単座配位、二座配位、又は三座配位であり得るカルベン配位子であり、また、このカルベン配位子は、ビスカルベン配位子又はトリスカルベン配位子であってもよく、
Lは、モノアニオン性配位子又はジアニオン性配位子であり、好ましくはモノアニオン性配位子であり、これらは単座配位又は二座配位であってもよく、
Kは、非荷電単座配位子又は二座配位子であり、
nは、カルベン配位子の数であり、nは、少なくとも1であり、好ましくは1〜6であり、n>1の場合、式Iの錯体中のカルベン配位子は、同一又は異なっていてもよく、
mは、配位子Lの数であり、mは0又は≧1であってもよく、好ましくは0〜5であり、m>1の場合、配位子Lは、同一又は異なっていてもよく、
oは、配位子Kの数であり、oは0又は≧1であってもよく、好ましくは0〜5であり、o>1の場合、配位子Kは、同一又は異なっていてもよく、
pは、錯体の電荷であって、0、1、2、3または4であり、
Wは、モノアニオン性対イオンであり、
ここで、n+m+oの合計及び電荷pは、nが少なくとも1である条件において、使用される金属原子の酸化状態及び配位数、錯体の電荷、並びにカルベン、L配位子、及びK配位子の配座数、並びにカルベン及びL配位子の電荷に依存する]
を有する。
【0029】
本発明の特に好ましい実施形態において、リン光発光体CB、正孔伝導層Bで使用される正孔伝導性材料、及び発光層Cで使用される正孔伝導性材料CAは、それぞれ、一般式Iのカルベン錯体であり、層B及び層Cで使用される正孔伝導性材料のバンドギャップは、リン光発光体CBのバンドギャップより大きい。
【0030】
式Iの好ましく使用される好適なカルベン錯体は、国際特許公開公報第2005/019373号、同第2005/113704号、同第06/018292号、同第06/056418号、並びに欧州特許出願公開第061121984号、同第061122289号、同第061161006号、及び同第061160933号で挙げられている(これらは先行優先日を有するが、本願の優先日には公開されていない)。特に好ましいカルベン錯体は、国際特許公開公報第05/019373号、及び同第06/056148号において挙げられている。上記の文献において言及されたカルベン錯体は、正孔伝導層Bにおける正孔伝導性材料又は層Cにおける正孔伝導性材料CAのいずれかとして、並びに/あるいは発光層におけるリン光発光体CBとして使用することができる。層B又は層Cにおいて使用することができる正孔伝導性材料は、発光層Cにおけるリン光発光体として使用される材料以外のカルベン錯体であり得る。正孔伝導性材料として使用されるカルベン錯体は、上述のように、好ましくは、リン光発光体CBとして使用されるカルベン錯体よりも大きいバンドギャップを有する。好ましく使用されるカルベン錯体の好適なバンドギャップについては、同様に、既に上記において言及されている。
【0031】
式Iのカルベン錯体に用いられる金属M1の配位数、並びに使用されるL配位子、K配位子、及びカルベン配位子の性質及び数に応じて、同じ金属M1並びに同じ性質及び数のK配位子、L配位子、及びカルベン配位子を有する相応の金属錯体の様々な異性体が存在し得る。例えば、金属M1との配位数6の錯体(すなわち、8面体錯体)(例えば、Ir(III)錯体など)の場合、この錯体が一般組成MA24の錯体の場合には、シス/トランスの両方の異性体が可能であり、この錯体が一般組成MA33の錯体の場合には、fac/mer異性体(フェイシャル型/メリディオナル型異性体)が可能である。金属M1との配位数4の正方平面型錯体(例えば、Pt(II)錯体)の場合、その錯体が一般組成MA22の錯体の場合には、シス/トランス異性体が可能である。記号A及びBは、それぞれ配位子の結合位置であり、単座配位子だけでなく、二座配位子も存在し得る。非対称二座配位子は、前述の一般組成に従ってA基及びB基を有する。
【0032】
当業者は、シス/トランス異性体及びfac/mer異性体が何を意味するか周知である。さらに、シス/トランス異性体及びfac/mer異性体については、例えば、国際特許公開公報第05/019373号に記載されている。
【0033】
一般的に、式Iの金属錯体の様々な異性体は、当業者に公知の方法(例えば、クロマトグラフィー、昇華、又は結晶化など)によって分離することが可能である。
【0034】
より好ましくは、一般式Iのカルベン錯体は、Ir、Os、Rh、及びPtから成る群から選択される金属原子M1を有し、好ましくは、Os(II)、Rh(III)、Ir(I)、Ir(III)、及びPt(II)から成る群から選択される金属原子M1を有する。特に好ましいのは、Irを、好ましくはIr(III)を用いることである。
【0035】
好適な単座又は二座配位子L、好ましくはモノアニオン性の配位子Lは、単座配位又は二座配位であってもよく、これらは、単座配位又は二座配位のモノアニオン性又はジアニオン性の配位子として通常使用される配位子である。
【0036】
使用される配位子Lは、通常、非光活性配位子である。好適な配位子は、例えば、ハロゲン化物(特にCl-、Br-、I-)、擬ハロゲン化物(特に、CN-、OAc-)、シグマ結合を介して遷移金属原子M1に結合しているアルキル基(例えば、CH3)、アルコキシド、チオレート、アミドなどのモノアニオン性単座配位子である。好適なモノアニオン性二座配位子は、例えば、アセチルアセトネート及びその誘導体、並びに国際特許公開公報第02/15645号で言及されたモノアニオン性二座配位子及び酸化物である。
【0037】
好適な非荷電単座配位子又は二座配位子であるKは、非荷電単座配位子又は二座配位子として通常使用される配位子である。一般的に、式Iの遷移金属−カルベン錯体において用いられる配位子Kは、非光活性配位子である。好適な配位子Kは、例えば、ホスフィン、特にトリアルキルホスフィン(例えば、PEt3、PnBu3)、トリアリールホスフィン(例えば、PPh3)、ホスホネート及びその誘導体、ヒ酸塩及びその誘導体、ホスフィト、CO、ニトリル、アミン、M1とπ−錯体を形成し得るジエン(例えば、2,4−ヘキサジエン、η4−シクロオクタジエン、及びη2−シクロオクタジエン(各場合において、1,3と1,5である))、アリル、メタリル、シクロオクテン、及びノルボルナジエンである。さらに、好適な非荷電二座配位子Kは、欧州特許出願公開第061121984号において開示されているような複素環式非カルベン配位子である。
【0038】
好適なモノアニオン性対イオンW-は、例えば、ハロゲン化物、擬ハロゲン化物、BF4-、PF6-、AsF6-、SbF6-、又はOAc-であり、好ましくはCl-、Br-、I-、CN-、OAc-であり、より好ましくはBr-又はI-である。
【0039】
式Iの遷移金属−カルベン錯体において、カルベン配位子の数nは、少なくとも1であり、好ましくは1〜6である。数nは、遷移金属M1に対するカルベン炭素原子の結合の数に基づいている。このことは、例えば、ブリッジ化されたカルベン配位子が、遷移金属M1への結合を形成することができるカルベン炭素原子を2つ有している場合では、n=2であることを意味している。二座配位カルベン配位子を用いている場合、M1への結合が、カルベン炭素原子及び非カルベン炭素原子を介している場合には、n=1である。そのようなカルベン錯体が好ましく、下記において詳細に説明する。二座配位カルベン錯体が使用され、その際に、M1への結合の1つがカルベン炭素原子を介し、M1へのもう1つの結合が非カルベン炭素原子を介している場合、nは、好ましくは1〜3であり、より好ましくは2又は3であり、最も好ましくは3である。
【0040】
式Iの遷移金属−カルベン錯体において、モノアニオン性配位子Lの数mは、0〜5であり、好ましくは0〜2である。mが>1の場合、配位子Lは、同一又は異なっていてもよく、好ましくは同一である。
【0041】
式Iの遷移金属−カルベン錯体において、非荷電配位子Kの数oは、0〜5であり、好ましくは0〜3である。oが>1の場合、配位子Kは、同一又は異なっていてもよく、好ましくは同一である。
【0042】
数pは、遷移金属錯体の電荷数を意味し、この遷移金属錯体は、非荷電でも(p=0)、又は正に荷電していてもよく、pは1、2、3、又は4であり、好ましくは1、2、3であり、より好ましくは1又は2である。より好ましくは、pは0、1、又は2であり、最も好ましくは、pは0である。同時に、数pは、モノアニオン性対イオンW-の数を意味する。
【0043】
式Iの遷移金属−カルベン錯体が非荷電金属カルベン錯体の場合は、p=0である。遷移金属−カルベン錯体が正に荷電している場合、モノアニオン性対イオンの数pは、遷移金属−カルベン錯体の正の電荷に一致する。
【0044】
カルベン配位子、K配位子、及びL配位子の数、並びにモノアニオン性対イオンW-の数(すなわち、n、o、m、及びp)は、使用される金属原子M1の酸化状態及び配位数、並びに配位子の電荷及び錯体の総電荷に依存している。
【0045】
「カルベン」配位子は、原則として、任意の好適なカルベン配位子であり、好ましくは、前述の文献で開示されているカルベン配位子である。より好ましいカルベン配位子は、一般式II:
【化2】

[式中、一般式IIのカルベン配位子における記号は、それぞれ以下のように定義される:
Do1は、C、P、N、O、S、及びSiから成る群から選択されるドナー原子であり、好ましくはP、N、O、及びSであり、
Do2は、C、N、P、O、及びSから成る群から選択されるドナー原子であり、
rは、Do1がC又はSiの場合には2であり、Do1がN又はPの場合には1であり、Do1がO又はSの場合には0であり、
sは、Do2がCの場合には2であり、Do2がN又はPの場合には1であり、Do2がO又はSの場合には0であり、
Xは、シリレン、アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン、アルケニレン、NR13、PR14、BR15、O、S、SO、SO2、CO、CO−O、O−CO、及び(CR1617Wから成る群から選択されるスペーサーであり(ここで、1つ以上の隣接していない(CR1617)基は、NR13、PR14、BR15、O、S、SO、SO2、CO、CO−O、O−COで置き換えられてもよく、
wは、2〜10であり、
13、R14、R15、R16、R17は、それぞれ、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルである)、
pは、0又は1であり、
qは、0又は1であり、
1、Y2は、それぞれ独立して、水素、あるいはアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキニル、及びアルケニル基から成る群から選択される炭素基であるか、
あるいは
1及びY2が一緒にドナー原子Do1と窒素原子Nとの間にブリッジを形成し(このブリッジは、少なくとも2個の原子を有しており、その少なくとも1個が炭素原子である)、
1、R2は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキニル、又はアルケニル基であるか、
あるいは
1及びR2は、一緒に合計3〜5個の原子を有するブリッジを形成して(その際に、その原子のうちの1〜5個の原子はヘテロ原子であり、かつその残りの原子が炭素原子であってもよい)、以下の基:
【化3】

が5〜7員環を形成し、適切であれば、その場合に、既に存在する二重結合に加えて、さらなる二重結合を1つ有していてもよく、あるいは、6又は7員環の場合であれば、さらなる二重結合を2つ有していてもよく、並びにアルキルもしくはアリール基及び/又はドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基で置換されていてもよく、並びに少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよく、並びに5〜7員環が1つ以上のさらなる環と縮合していてもよく、
さらに、Y1及びR1は、以下のように定義され得るブリッジを介して、お互いに結合していてもよく:
アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン、アルケニレン、NR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−CO、及び(CR2122X(ここで、1つ以上の隣接していない(CR2122)基は、NR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−COで置き換えられていてもよく、
xは、2〜10であり、及び
18、R19、R20、R21、R22、R30、R31は、それぞれ、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルである)、
3は、水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキニル、又はアルケニル基であり、
3は、水素、アルキル、アルキニル又はアルケニル基、
あるいは、
【化4】

[ここで、Do2’、q’、s’、R3’、R1’、R2’、X’、及びp’は、それぞれ独立して、Do2、q、s、R3、R1、R2、X、及びpにおいて定義した通りである]
であり、
さらに、n個のカルベン配位子のそれぞれにおけるY2及びY3は、以下のように定義され得るブリッジを介してお互いに結合していてもよい:
アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン、アルケニレン、NR25、PR26、BR27、O、S、SO、SO2、SiR32、R33、CO、CO−O、O−CO、及び(CR2829y(ここで、1つ以上の隣接していない(CR2829)基は、NR25、PR26、BR27、O、S、SO、SO2、SiR32、R33、CO、CO−O、O−COで置き換えられていてもよく、
yは、2〜10であり、
並びに
25、R26、R27、R28、R29、R32、R33は、それぞれ、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキニル、アルケニルである)
]を有する。
【0046】
アリール基、ヘテロアリール基、アルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基、並びにドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基又は置換基、という用語は、それぞれ、欧州特許出願公開第061121984号において詳細に定義されている。
【0047】
アリール基、ヘテロアリール基、アルキル基、及びドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基又は置換基、という用語は、好ましくは、それぞれ以下のように定義される。
【0048】
本発明によるアルキル基、及びアルコキシ基のアルキル部分は、直鎖状又は分岐鎖状又は環状であってもよく、及び/又はアリール、アルコキシ、及びハロゲンからなる群から選択される置換基で置換されていてよい。好適なアリール置換基については後述する。好適なアルキル基の例としては、C1〜C20−アルキル、好ましくは、C1〜C10−アルキル、より好ましくは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、及びオクチル、並びにアリール、アルコキシ、及び/又はハロゲン、特にFで置換された前述のアルキル基の誘導体(例えばCF3)が挙げられる。また、前述の基のn−異性体及び分岐異性体(例えば、イソプロピル、イソブチル、イソペンチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ネオペンチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルヘキシルなども)の両方が含まれる。好ましいアルキル基は、メチル、エチル、tert−ブチル、及びCF3である。
【0049】
本発明による環状アルキル基は、アリール、アルコキシ、及びハロゲンから成る群から選択される置換基で置換されていてもよい。この環状アルキル基は、好ましくは非置換である。好適なアリール置換基については後述する。好適な環状アルキル基の例は、C3〜C20−シクロアルキルであり、好ましくはC3〜C10−シクロアルキルであり、特に好ましいのは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、及びシクロデシルである。また、適切であれば、この環系は、多環式の環系、例えば、デカリニル、ノルボルナニル、ボルナニル、又はアダマンチルであってもよい。この環状アルキル基は、非置換であってもよく、又は1つ以上のさらなる基、特にアルキル、アリール、アルコキシ、及び/又はハロゲンで置換されていてもよい。
【0050】
本願による好適なハロゲン置換基は、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素、好ましくは、フッ素、塩素、及び臭素であり、より好ましくはフッ素及び塩素である。
【0051】
好適なアルコキシ基及びアルキルチオ基は、上記に定義されているような、対応するアルキル基から導かれる。この例としては、OCH3、OC25、OC37、OC49、及びOC817、並びにSCH3、SC25、SC37、SC49、及びSC817が挙げられる。C37、C49、及びC817は、n−異性体及び分岐異性体(例えば、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、及び2−エチルヘキシル)の両方を意味するものと理解される。特に好ましいアルコキシ基又はアルキルチオ基は、メトキシ、エトキシ、n−オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、及びSCH3である。
【0052】
本発明において、アリールは、単環式、二環式、又は三環式芳香族から誘導される、環ヘテロ原子を含まない基を意味する。用語「アリール」について、その系が単環式でない場合、特定の形が既知で安定であるなら、第二の環に対して、飽和形(ペルヒドロ形)又は部分不飽和形(例えば、ジヒドロ形又はテトラヒドロ形)が可能である。換言すれば、本発明における用語「アリール」は、例えば、両方又は3つ全ての基が芳香族であるような二環式又は三環式の基、及び1つの環だけが芳香族であるような二環式又は三環式の基、並びに2つの環が芳香族であるような三環式の基を含む。アリールの例としては、C6〜C30−アリール、好ましくは、C6〜C18−アリールであり(ここで、炭素原子の数は、アリール基本骨格に基づいている)、より好ましくは、フェニル、ナフチル、インダニル、1,2−ジヒドロナフトエンイル、1,4−ジヒドロナフトエンイル、インデニル、アントラセニル、フェナントレニル、又は1,2,3,4−テトラヒドロナフチルが挙げられる。アリールは、より好ましくはフェニル又はナフチルであり、最も好ましくはフェニルである。
【0053】
アリール基は、非置換であってもよく、又は1つ以上のさらなる基で置換されていてもよい。さらなる好適な基は、C1〜C20アルキル、C6〜C30アリール、又はドナー作用もしくはアクセプター作用を有する置換基から成る群から選択される(なお、ドナー作用もしくはアクセプター作用を有する好適な基については後述する)。アリール基は、好ましくは、非置換であるか、あるいは1つ以上のC1〜C20アルコキシ基、CN、CF3、F、又はアミノ基(NR’R’’、ここで、好適なR’及びR’’基はアルキル又はアリールである)で置換されている。下記に示した式(III)の化合物におけるアリール基のさらなる好ましい置換基は、一般式(III)の化合物の最終用途に依存し、それについては後述する。
【0054】
好適なアリールオキシ基、アリールチオ基、及びアリールカルボニルオキシ基は、上記で定義したような相当する前述のアリール基から誘導される。特に好ましいのは、フェノキシ、フェニルチオ、及びフェニルカルボニルオキシである。
【0055】
好適なアミノ基は、一般式−NR’R’’を有する(ここで、R’及びR’’は、それぞれ独立してアルキル又はアリールである)。好適なアルキル基及びアリール基は、それぞれ置換されていてもよく、上記に示されている。好適なアミノ基の例は、ジアリールアミノ基(例えば、ジフェニルアミノ)、及びジアルキルアミノ基(例えば、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ)、及びアリールアルキルアミノ基(例えば、フェニルメチルアミノ)である。
【0056】
5〜30個の環原子を有するヘテロアリールは、非置換又は置換ヘテロアリール、好ましくは、アリール基本骨格の少なくとも1個の炭素原子がヘテロ原子で置き換えられた、前述のアリールから部分的に誘導され得る単環式、二環式、又は三環式複素芳香族を意味するものと理解される。好ましいヘテロ原子は、N、O、及びSである。このヘテロアリール基は、より好ましくは、5〜13個の環原子を有する。特に好ましくは、このヘテロアリール基の基本骨格は、ピリジンなどの系、並びチオフェン、ピロール、イミダゾール、又はフランなどの5員環複素芳香族から選択される。これらの基本骨格は、1つ又は2つの6員環芳香族基に縮合していてもよい。好適な縮合複素芳香族は、カルバゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフリル、ジベンゾフリル、又はジベンゾチオフェニルである。この基本骨格は、1つ、1つ以上、又は全ての置換可能な位置で置換されていてもよく、好適な置換基は、既にC6〜C30アリールの定義において示している置換基と同一である。しかしながら、ヘテロアリール基は、好ましくは非置換である。好適なヘテロアリール基としては、例えば、ピリジン−2−イル、ピリジン−3−イル、ピリジン−4−イル、チオフェン−2−イル、チオフェン−3−イル、ピロール−2−イル、ピロール−3−イル、フラン−2−イル、フラン−3−イル、及びイミダゾール−2−イル、並びにこれらに対応するベンゾ縮合された基、特にカルバゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフリル、ジベンゾフリル、又はジベンゾチオフェニル、が挙げられる。
【0057】
複素環式アルキルは、環状アルキルの基本骨格の少なくとも1個の炭素原子がヘテロ原子で置き換えられた、前述の環状アルキルとは異なる基を意味するものと理解される。好ましいヘテロ原子は、N、O、及びSである。この基本骨格は、1つ、1つ以上、又は全ての置換可能な位置で置換されていてもよく、好適な置換基は、既にアリールの定義で示している置換基と同一である。ここでは、特に、窒素含有基、すなわち、ピロリジン−2−イル、ピロリジン−3−イル、ピペリジン−2−イル、ピペリジン−3−イル、ピペリジン−4−イルを挙げることができる。
【0058】
本願によれば、ドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基は、以下の基を意味するものと理解される。
【0059】
ドナー作用を有する基は、+I効果及び/又は+M効果を有する基を意味するものと理解され、アクセプター作用を有する基は、−I効果及び/又は−M効果を有する基を意味するものと理解される。ドナー作用もしくはアクセプター作用を有する好ましい基は、
1〜C20−アルコキシ、C6〜C30−アリールオキシ、C1〜C20−アルキルチオ、C6〜C30−アリールチオ、SiR343536、ハロゲン基、ハロゲン化C1〜C20−アルキル基、カルボニル(−CO(R34))、カルボニルチオ(−C=O(SR34))、カルボニルオキシ(−C=O(OR34))、オキシカルボニル(−OC=O(R34))、チオカルボニル(−SC=O(R34))、アミノ(−NR3435)、OH、擬ハロゲン基、アミド(−C=O(NR34))、−NR34C=O(R35)、ホスホネート(−P(O)(OR342、ホスフェート(−OP(O)(OR342)、ホスフィン(−PR3435)、ホスフィンオキシド(−P(O)R342)、スルフェート(−OS(O)2OR34)、スルホキシド(−S(O)R34)、スルホネート(−S(O)2OR34)、スルホニル(−S(O)234)、スルホンアミド(−S(O)2NR3435)、NO2、ボロン酸エステル(−OB(OR342)、イミノ(−C=NR3435))、ボラン基、スタンナン基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、オキシム基、ニトロソ基、ジアゾ基、ビニル基、スルホキシミン、アラン、ゲルマン、ボロキシン、及びボラジンである。
【0060】
ドナー作用もしくはアクセプター作用を有する好適な置換基は、
1〜C20−アルコキシ(好ましくは、C1〜C6−アルコキシ、より好ましくは、エトキシ又はメトキシ)、C6〜C30アリールオキシ(好ましくは、C6〜C10−アリールオキシ、より好ましくは、フェニルオキシ)、SiR343536(ここで、R34、R35、及びR36は、好ましくは、それぞれ独立して、置換又は非置換アルキルあるいは置換又は非置換フェニルであり、R34、R35、又はR36基の少なくとも1つは、より好ましくは、置換又は非置換フェニルであり、R34、R35、及びR36基の少なくとも1つは、最も好ましくは、置換フェニルであり、その好適な置換基は上記で示されている)、ハロゲン基(好ましくは、F、Cl、Br、より好ましくは、F又はCl、最も好ましくは、F)、ハロゲン化C1〜C20−アルキル基(好ましくは、ハロゲン化C1〜C6−アルキル基、最も好ましくは、フッ素化C1〜C6−アルキル基、例えば、CF3、CH2F、CHF2、又はC25)、アミノ(好ましくは、ジメチルアミド、ジエチルアミノ、又はジフェニルアミノ)、OH、擬ハロゲン基(好ましくは、CN、SCN、OCN、より好ましくは、CN)、−C(O)OC1〜C4−アルキル(好ましくは、−C(O)OMe)、P(O)R2(好ましくは、P(O)Ph2)、又はSO22(好ましくは、SO2Ph)から成る群から選択される。
【0061】
ドナー作用もしくはアクセプター作用を有する非常に特に好ましい置換基は、メトキシ、フェニルオキシ、ハロゲン化C1〜C4−アルキル(好ましくは、CF3、CH2F、CHF2、C25)、ハロゲン(好ましくは、F)、CN、SiR343536(なお、好適なR34、R35、及びR36基については、既に言及されている)、ジフェニルアミノ、−C(O)OC1〜C4−アルキル(好ましくは、−C(O)OMe)、P(O)Ph2、SO2Phから成る群から選択される。
【0062】
ドナー作用もしくはアクセプター作用を有する前述の基は、さらなる前述の基がドナー作用もしくはアクセプター作用を有し得る可能性を除外するとは意図されていない。例えば、前述のヘテロアリール基は、同様にドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基であり、C1〜C20−アルキル基は、ドナー作用を有する基である。
【0063】
ドナー作用もしくはアクセプター作用を有する前述の基において言及されたR34、R35、及びR36の基は、それぞれ、既に上記で定義されている通りである。すなわち、R34、R35、及びR36は、それぞれ独立して、
置換又は非置換C1〜C20−アルキル、あるいは置換又は非置換C6〜C30−アリール(なお、好適で好ましいアルキル基及びアリール基は上記に示されている)である。より好ましくは、R34、R35、及びR36の基は、C1〜C6−アルキル、例えば、メチル、エチル、又はi−プロピル、フェニル、又はベンジルである。好ましい実施形態において、SiR343536の場合、R34、R35、及びR36は、好ましくはそれぞれ独立して、置換又は非置換C1〜C20−アルキル、あるいは置換又は非置換フェニルであり、より好ましくは、R34、R35、及びR36の基のうちの少なくとも1つは、置換又は非置換フェニルであり、最も好ましくは、R34、R35、及びR36の基のうちの少なくとも1つが置換フェニルである(なお、好適な置換基については、上記に示されている)。
【0064】
式IIの好ましいカルベン配位子は、同様に、欧州特許出願公開第061121984号において開示されているカルベン配位子である。特に好ましいカルベン配位子は以下の一般式aa〜ae:
【化5】

[式中、記号は以下の意味を有する:
3は、アルキル、アルキニル、又はアルケニル基であるか、
あるいは以下の構造:
【化6】

の基であり、
Zは、同一又は異なっており、CR12又はNであり、
Z’は、同一又は異なっており、CR12’又はNであり、
Z’’は、同一又は異なっており、CR10又はNであり、
12、R12’は、同一又は異なっており、それぞれ独立して、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキニル、又はアルケニル基であり、あるいは各場合において、2つのR12基及び/又はR12’基が一緒に少なくとも1個のヘテロ原子を有していてもよい縮合環を形成するか、あるいはR12基及び/又はR12’基がドナー作用又はアクセプター作用を有する基であり、
4、R5、R6、R7、R8、R9、R11、及びR11’は、それぞれ、水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキニル、又はアルケニルであるか、あるいはドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基であり、
10は、Z’’基において、それぞれ独立して、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキニル、又はアルケニルであり、あるいは各場合において、2つのR10基が一緒に少なくとも1個のヘテロ原子を含んでいてもよい縮合環を形成するか、あるいはR10はドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基であり、
さらに、以下の構造:
【化7】

の基は、芳香族基本構造又はR12基の1つを介して、部分aaにおけるR4又はR5あるいはR4及びR5が結合している炭素原子に、部分abにおけるR8又はR8が結合している炭素に、部分acにおけるR10基の1つ又はR10が結合している炭素原子の1つに、並びに部分adにおけるR11又はR11が結合している炭素原子に、ブリッジを介して結合していていもよく、
及び/又は
以下の構造
【化8】

の基は、芳香族基本構造又はR12’の1つを介して、部分aaにおけるR6又はR7あるいはR6及びR7が結合している炭素原子に、部分abにおけるR9又はR9が結合している炭素に、部分acにおけるR10基の1つ又はR10が結合している炭素原子の1つに、並びに部分aeにおけるR11’又はR11’が結合している炭素原子に、ブリッジを介して結合していていもよく、
ここで、各場合におけるブリッジは、以下のように定義してもよく:
アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン、アルケニレン、NR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−CO、及び(CR2122X(ただし1つ以上の隣接していない(CR2122)基はNR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−COで置き換えられてもよく、
xは、2〜10であり、
並びに
18、R19、R20、R21、R22、R30、R31は、それぞれ、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキニル、アルケニルである)、
ここで、以下の構造
【化9】

の基が、R4及びR5が結合している炭素原子(部分aa)に、R8が結合している炭素原子(部分ab)に、R10が結合している炭素原子の1つ(部分ac)に、又はR11が結合している炭素原子(部分ad)に、ブリッジを介して結合している場合、特にR4基もしくはR5基、R8、R10基の1つ、又はR11は、そのブリッジへの結合で置き換えられ、
並びに、以下の構造
【化10】

の基が、R6及びR7が結合している炭素原子(部分aa)に、R9が結合している炭素原子(部分ab)に、R10が結合している炭素原子の1つ(部分ac)に、又はR11が結合している炭素原子(部分ad)に、ブリッジを介して結合している場合、特にR6基もしくはR7基、R9、R10基の1つ、又はR11は、そのブリッジへの結合で置き換えられる]
を有する。
【0065】
カルベン配位子は、「対称」又は「非対称」のいずれかであり得る。「対称」カルベン配位子は、Y3が以下の構造:
【化11】

[式中、記号Z’及びR12’は、それぞれ上記で定義された通りである]
の基であるカルベン配位子を意味するものと理解され、
「非対称」カルベン配位子は、Y3が、水素、アルキル基、アルキニル基、又はアルケニル基、好ましくは、アルキル基、アルキニル基、又はアルケニル基であるカルベン配位子を意味するものと理解され、好ましいアルキル基、アルキニル基、又はアルケニル基、並びに以下の式:
【化12】

の好ましい基の両方が、例えば、欧州特許出願公開第061121984号において示されている。
【0066】
好ましい「対称」カルベン錯体は、例えば、国際特許公開公報第05/019373号において開示されている。
【0067】
特に好ましい「対称」カルベン錯体は、一般式Ia〜Id:
【化13】

[式中、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R12、及びR12’は、それぞれ上記で定義されている通りであり、
Z、Z’は、同一又は異なっており、それぞれ、CH又はNであり、
t及びt’は、同一又は異なっており、好ましくは同一であり、並びに0〜3であり、t又はt’が>1の場合には、R12及びR12’基は、同一又は異なっていてもよく、t又はt’は、好ましくは0又は1であり、t又はt’が1の場合には、R12又はR12’基は、カルベン炭素原子に隣接する窒素原子の結合位置に対しオルト、メタ、又はパラ位であり、並びに
vは、0〜4、好ましくは0、1、又は2であり、最も好ましくは0であり、式Icのアリール基の4個の炭素原子は、それぞれがR10で置換されていてもよいが、vが0の場合は水素原子を有している]
のIr−カルベン錯体である。
【0068】
特に好ましいのは、式Ia〜Idの、Z及びZ’がそれぞれCHであり、R8及びR9がそれぞれHであり、t、t’、及びvがそれぞれ0であり、残りの基がそれぞれ上記で定義された通りであるような「対称」カルベン錯体である。
【0069】
非常に特に好ましい「対称」カルベン錯体は、式Ib及びIcのカルベン錯体であり、ここで、式Ibのカルベン錯体におけるR8及びR9は、最も好ましくはHであり、式Ib及びIcのカルベン錯体におけるt及びt’は、それぞれ独立して0又は1であり、R12及びR12’は、最も好ましくは、それぞれアルキル基又はドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基であり、例えば、F、アルコキシ、アリールオキシ、カルボニル、エステル、アミノ基、アミド基、CHF2、CH2F、CF3、CN、チオ基、及びSCNから成る群から選択され、式Icのカルベン錯体におけるvは、より好ましくは0である。
【0070】
好ましい「非対称」カルベン錯体は、国際特許公開公報第06/056418号において開示されている。
【0071】
特に好ましい「非対称」カルベン錯体は、一般公式le〜li:
【化14】

[式中、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R11、R11’、R12、Z、及びZ’’は、それぞれ、「対称」カルベン錯体に対して定義された通りであり、並びに
3は、好ましくは水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキニル、又はアルケニル基であり、好ましくは、アルキル、ヘテロアリール、又はアリール基であり、より好ましくはアルキル基である]
を有するIr−カルベン錯体である。
【0072】
非常に特に好ましいのは、式If及びIgの「非対称」カルベン錯体である。
【0073】
非常に特に好ましいのは、ZがCR12であり、Z’’がCHであり、Y3がアルキルである「非対称」カルベン錯体であり、その場合、R12は、より好ましくは水素、アルキル、あるいは、例えば、F、アルコキシ、アリールオキシ、カルボニル、エステル、アミノ基、アミド基、CHF2、CH2F、CF3、CN、チオ基、及びSCNから成る群から選択されるドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基であり、4つの可能な置換基R12基のうちの3つは、好ましくは水素であり、R12基の1つは、水素、アルキル、又はドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基である。
【0074】
上記に示したホモレプテイックカルベン錯体、すなわち同一のカルベン配位子を有するカルベン錯体に加えて、例えば、欧州特許出願公開第061122289号で開示されているようなヘテロレプティックカルベン錯体も好適である。さらに好適なのは、カルベン配位子と、さらなる非カルベン配位子とを有するカルベン錯体である。カルベン配位子と非カルベン配位子を有する好適な錯体は、例えば、欧州特許出願公開第061121984号において開示されている。さらに、欧州特許出願公開第061121984号及び同第061161006号において開示されているような特定の遷移金属−カルベン錯体も、本発明のOLEDに使用することができる。
【0075】
本発明のOLEDにおいて好適に使用されるカルベン錯体は、当業者に公知の方法によって製造することができる。好適な製造方法は、例えば、国際特許公開公報第05/019373号、同第06/056418号、欧州特許出願公開第061011094号、同第061121984号、同第061122289号、同第061161006号、及び同第061160933号、並びにそれらの引用文献において開示されている。
【0076】
本発明のOLEDの発光層Cにおいて使用されるリン光発光体CBは、好ましくは、カルベン錯体であり、より好ましくは上記で定義されているようなカルベン錯体である。
【0077】
さらなる好適な実施形態において、正孔伝導層Bの少なくとも1種の正孔伝導性材料及び/又は発光層Cの少なくとも1種の正孔伝導性材料CAは、カルベン錯体であり、好ましくは上記で定義されているようなカルベン錯体である。層B及び層Cの正孔伝導性材料のカルベン錯体は、同一又は異なっていてもよい。
【0078】
特に好ましい実施形態では、発光層Cにおいて使用されるリン光発光体CB、及び発光層Cの少なくとも1種の正孔伝導性材料CA、及び正孔伝導層Bの少なくとも1種の正孔伝導性材料は、それぞれカルベン錯体である。正孔伝導層B及び発光層Cにおける正孔伝導性材料であるカルベン錯体は、発光層Cのリン光発光体CBであるカルベン錯体とは異なっており、正孔伝導性材料として使用されるカルベン錯体のバンドギャップは、リン光発光体として使用されるカルベン錯体のバンドギャップより大きい。
【0079】
電子伝導層D
電子伝導層(電子輸送層としても知られる)に好適な材料は、当業者に公知である。好適な電子伝導層の例としては、アルミニウムトリス−8−ヒドロキシキノリナート(AlQ3)又は1,3,5−トリス(N−フェニル−2−ベンジルイミダゾリル)ベンゼン(TPBI)が挙げられる。
【0080】
陰極E
好適な陰極材料は、一般的に、低い仕事関数を有する金属又は金属の組合せあるいは金属合金である。例としては、Ca、Ba、Cs、Mg、Al、In及びMg/Agが挙げられる。好適な陰極材料は、当業者に公知である。
【0081】
OLED構造
本発明のOLEDは、層A、B、C、D、及びE以外に、さらなる層を有していてもよい。
【0082】
有機発光ダイオードは、好ましくは、発光層Cと電子伝導層Dとの間に、発光層Cと直接接して、少なくとも1種の正孔ブロッカー材料及び/又は励起子ブロッカー材料から形成された正孔ブロッキング層を有しており、その場合、この正孔ブロッカー材料は、同時に励起子ブロッカー材料としても機能し得る。電子伝導層Dが、同時に正孔ブロッキング層として機能することもまた可能である。
【0083】
さらなる実施形態において、有機発光ダイオードは、正孔伝導層Bと発光層Cとの間に、少なくとも1種の電子ブロッカー材料及び/又は励起子ブロッカー材料から形成される電子ブロッキング層を有する。
【0084】
さらに、本発明の有機発光ダイオードは、層A〜E(及び、適切であれば正孔ブロッキング層)に加えて、さらなる層、例えば、正孔注入層を、陽極Aと正孔伝導層Bとの間に含んでいてもよい(正孔注入層に好適な材料は、当業者に公知である)。好適な材料の例としては、銅フタロシアニン(CuPc)又は導電性高分子(例えば、ポリアニリン(PANI)、又はPEDOTなどのポリチオフェン誘導体など)をベースとする材料が挙げられる。さらに、本発明のOLEDは、電子伝導層と陰極の間に、1つ以上の電子注入層を含んでいてもよく、この層は、他の層の1つと部分的に一致してもよく、あるいは陰極の一部から形成されていてもよい。通常、この電子注入層は、高誘電定数を有する材料(例えば、LiF、Li2O、BaF2、MgO、及び又はNaF)から形成された薄膜である。
【0085】
本発明の有機発光ダイオードは、有機発光ダイオードの層の少なくとも1つの層中に、好ましくは正孔ブロッキング層及び/又は電子ブロッキング層並びに/あるいは発光層C中に、正孔伝導性材料CA及び発光体CBに加えて、一般式III:
【化15】

[式中、
Xは、NR37、S、O、PR37、SO2、又はSOであり、
37は、置換又は非置換C1〜C20−アルキル、置換又は非置換C6〜C30アリール、あるいは5〜30個の環原子を有する置換又は非置換ヘテロアリールであり、
38、R39、R40、R41、R42、R43は、それぞれ独立して、置換又は非置換C1〜C20−アルキル、あるいは置換又は非置換C6〜C30−アリール、あるいは一般式(c)の構造であり:
【化16】

a、Rbは、それぞれ独立して、置換又は非置換C1〜C20−アルキル、置換又は非置換C6〜C30−アリール、あるいは5〜30個の環原子を有する置換又は非置換ヘテロアリール、あるいはC1〜C20−アルコキシ、C6〜C30−アリールオキシ、C1〜C20−アルキルチオ、C6〜C30−アリールチオ、SiR343536、ハロゲン基、ハロゲン化C1〜C20−アルキル基、カルボニル(−CO(R34))、カルボニルチオ(−C=O(SR34))、カルボニルオキシ(−C=O(OR34))、オキシカルボニル(−OC=(R34))、チオカルボニル(−SC=O(R34))、アミノ(−NR3435)、OH、擬ハロゲン基、アミド(−C=O(NR34))、−NR34C=O(R35)、ホスホネート(−P(O)(OR342)、ホスフェート(−OP(O)(OR342)、ホスフィン(−PR3435)、ホスフィンオキシド(−P(O)R342)、スルフェート(−OS(O)2OR34)、スルホキシド(S(O)R34)、スルホネート(−S(O)2OR34)、スルホニル(−S(O)234)、スルホンアミド(−S(O)2NR3435)、NO2、ボロン酸エステル(−OB(OR342)、イミノ(−C=NR3435))、ボラン基、スタンナン基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、オキシム基、ニトロソ基、ジアゾ基、ビニル基、スルホキシミン、アラン、ゲルマン、ボロキシン、及びボラジンから成る群から選択されるドナー作用又はアクセプター作用を有する置換基であり、
34、R35、R36は、それぞれ独立して、置換又は非置換C1〜C20−アルキル、あるいは置換又は非置換C6〜C30−アリールであり、
q、rは、それぞれ独立して、0、1、2、又は3であり(なお、q又はrが0の場合、このアリール基の置換可能な全ての位置は、水素によって置換されている)、
ここで、式(c)の基における基及び添え字であるX’’’、R41’’’、R42’’’、R43’’’、Ra’’’、Rb’’’、q’’’、及びr’’’は、それぞれ独立して、一般式IIIの化合物の基及び添え字であるX、R41、R42、R43、Ra、Rb、q、及びrにおいて定義された通りである]
のジシリルカルバゾール、ジシリルジベンゾフラン、ジシリルジベンゾチオフェン、ジシリルジベンゾホスホール、ジシリルジベンゾチオフェンS−オキシド、及びジシリルジベンゾチオフェンS,S−ジオキシドから選択される少なくとも1種の化合物を含んでもよい。前述の基及びアルキル、アリール、ヘテロアリール基、ドナー作用又はアクセプター作用を有する基、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルチオ、アリールチオ、ハロゲン、アミノ、及びアミドにおける好適な定義については、上述されている。
【0086】
好ましいR38〜R43基、Ra基、及びRb基は、式IIIの化合物が使用される本発明のOLEDの層並びに本発明のOLEDにおいて使用される特定の層の電子的特性(HOMO及びLUMOの位置)に応じて変わる。しがたって、式IIIの化合物の好適な置換基により、HOMO軌道及びLUMO軌道の位置を本発明のOLEDに使用されるさらなる層に対して調整することにより、OLEDの高い安定性を達成し、それによって動作寿命を延ばし、及び/又は効率を改善することが可能である。
【0087】
好適な正孔ブロッカー材料は、当業者に公知である。通常用いられる材料は、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(バソクプロイン、(BCP))、ビス(2−メチル−8−キノリナト)−4−フェニルフェニラート)アルミニウム(III)(BAIq)、フェノチアジン誘導体、及び1,3,5−トリス(N−フェニル−2−ベンジルイミダゾリル)ベンゼン(TPBI)であり、TPBIは電子伝導性材料としても好適である。さらに、9−(4−tert−ブチルフェニル)−3,6−ビス(トリフェニルシリル)カルバゾール(CzSi)及び9−(フェニル)−3,6−ビス(トリフェニルシリル)カルバゾールも、正孔ブロッカー材料として使用することができる。
【0088】
正孔ブロッカー材料として言及した式IIIの3,6−ジシリルカルバゾール、9−(4−tert−ブチルフェニル)−3,6−ビス(トリフェニルシリル)カルバゾール及び9−(フェニル)−3,6−ビス(トリフェニルシリル)カルバゾール(ここで、
37は、9−(4−tert−ブタyiフェニル)−3,6−ビス(トリフェニルシリル)カルバゾールの場合は4−tert−ブチルフェニルであり、9−(フェニル)−3,6−ビス(トリフェニルシリル)カルバゾールの場合は非置換フェニルであり、
38、R39、R40、R41、R42、R43は、それぞれの非置換フェニルであり、並びに
qおよびrは、それぞれ0である)に加えて、式IIIの前述のさらなる化合物も、好適な正孔ブロッカー材料である。式IIIの好ましい化合物を以下に示す。
【0089】
式IIIの化合物は、その基及び添え字はそれぞれ以下のように定義されるジシリル化合物であり:
Xは、NR37、S、O、PR37、SO2、又はSOであり、好ましくはNR37、S、又はOであり、
37は、置換又は非置換C1〜C20−アルキル、置換又は非置換C6〜C30アリール、あるいは5〜30個の環原子を有する置換又は非置換ヘテロアリールであり、好ましくは、置換又は非置換C6〜C30−アリールであり、より好ましくは、置換又は非置換C6〜C10−アリール又は非置換C1〜C20−アルキルであり、最も好ましくは、置換又は非置換フェニルであり(なお、好適な置換基については、上記に示されている)、
38、R39、R40、R41、R42、R43は、それぞれ独立して、置換又は非置換C1〜C20−アルキル、あるいは置換又は非置換C6〜C30−アリール、あるいは一般式(c)の構造であり、
好ましくは、R38基、R39基、及びR40基の少なくとも1つ及び/又はR41基、R42基、及びR43基の少なくとも1つは、置換又は非置換C6〜C30−アリールであり、より好ましくは、置換又は非置換C6〜C10−アリールであり、最も好ましくは、置換又は非置換フェニルであり(なお、好適な置換基については、上記に示されている)、並びに/あるいはR38基、R39基、及びR40基の少なくとも1つ及び/又はR41基、R42基、及びR43基の少なくとも1つは、構造(c)の基であり、
a、Rbは、それぞれ独立して、置換又は非置換C1〜C20−アルキル、置換又は非置換C6〜C30−アリール、5〜30個の環原子を有する置換又は非置換ヘテロアリール、あるいはドナー作用もしくはアクセプター作用を有する置換基であり(なお、ドナー作用もしくはアクセプター作用を有する好適で好ましい置換基ついては、上記に示している)、
34、R35、R36は、それぞれ独立して、置換又は非置換C1〜C20−アルキルあるいは置換又は非置換C6〜C30−アリールであり、好ましくは、置換又は非置換C1〜C6−アルキルあるいは置換又は非置換C6〜C10−アリールであり、この場合、R34、R35、及びR36は、より好ましくは、それぞれ独立して、置換又は非置換C1〜C20−アルキルあるいは置換又は非置換フェニルであり、より好ましくは、R34基、R35基、及びR36基の少なくとも1つが、置換又は非置換フェニルであり、最も好ましくは、R34基、R35基、及びR36基の少なくとも1つが、置換フェニルであり(なお、好適な置換基については、上記に示されている)、
q、rは、それぞれ独立して、0、1、2、又は3であり、q又はrが0の場合、アリール基の全ての置換可能な位置は、水素原子を有しており、好ましくは0である。
【0090】
一実施形態において、本発明は、式IIIの化合物におけるX基がNR37であり(このR37基は既に上記で定義されている)、式IIIの化合物におけるR37〜R43基、Ra基、又はRb基の少なくとも1つが少なくとも1つのヘテロ原子を有している、本発明の有機発光ダイオードに関する。好ましいヘテロ原子は、N、Si、ハロゲン(特に、F又はCl)、O、S、又はPである。このヘテロ原子は、R37〜R43、Ra、又はRb基の少なくとも1つの置換基として、又は置換基の一部として存在していてもよく、又はR37〜R43、Ra、又はRb基の少なくとも1つの基本骨格中に存在していてもよい。好適な置換基又は基本骨格は、当業者に公知であり、R37〜R43、Ra、又はRb基の定義において示されている。
【0091】
本発明の好ましい実施形態は、式IIIの化合物におけるR38基、R39基、及びR40基少なくとも1つ及び/又はR41基、R42基、及びR43基の少なくとも1つが、置換又は非置換C6〜C30−アリールである、本発明による有機発光ダイオードに関する。好ましいアリール基及びそれらの置換基については、既に上記に示してある。
【0092】
本発明のさらなる実施形態は、一般式IIIの化合物が、一般式IIIa:
【化17】

[式中:
Xは、NR37、S、O、PR37、SO2、又はSOであり、好ましくは、NR37、S、又はOであり、より好ましくはNR37であり、
37は、置換又は非置換C1〜C20−アルキル、置換又は非置換C6〜C30アリール、あるいは5〜30個の環原子を有する置換又は非置換ヘテロアリールであり、好ましくは、置換又は非置換C6〜C30−アリールあるいは置換又は非置換C1〜C20−アルキルであり、より好ましくは、置換又は非置換C6〜C10アリールあるいは非置換C6〜C10−アリールであり、最も好ましくは、置換又は非置換フェニルであり(なお、好適な置換基については、上記に示されている)、
38、R39、R40、R41、R42、R43は、それぞれ独立して、置換又は非置換C1〜C20−アルキルあるいは置換又は非置換C6〜C30−アリールあるいは一般式(c)の構造であり、
好ましくは、R38基、R39基、及びR40基の少なくとも1つ及び/又はR41基、R42基、及びR43基の少なくとも1つが、置換又は非置換C6〜C30−アリールであり、より好ましくは、置換又は非置換C6〜C10−アリールであり、最も好ましくは、置換又は非置換フェニルであり(なお、好適な置換基については、上記に示されている)、並びに/あるいはR38基、R39基、及びR40基の1つ及び/又はR41基、R42基、及びR43基の1つが構造(c)の基であり、
44、R45、R46、R47、R48、R49は、それぞれ独立して水素であるか、あるいはRa及びRbに対して定義された通り、すなわち、それぞれ独立して、置換又は非置換C1〜C20−アルキル、置換又は非置換C6〜C20−アリール、5〜30個の環原子を有する置換又は非置換ヘテロアリール、あるいはドナー作用もしくはアクセプター作用を有する置換基であり(なお、ドナー作用もしくはアクセプター作用を有する好適な置換基については上記に示している)、好ましくは、水素、置換又は非置換C1〜C6−アルキル、置換又は非置換C6〜C10−アリール、あるいはSiR343536であり、より好ましくは水素、メチル、エチル、フェニル、CF3、又はSiR343536であり、ただし、R34、R35、及びR36は、好ましくは、それぞれ独立して、置換又は非置換C1〜C20−アルキル、あるいは置換又は非置換フェニルであり、より好ましくは、R34基、R35基、及びR36基の少なくとも1つが置換又は非置換フェニルであり、最も好ましくは、R34基、R35基、及びR36基の少なくとも1つが置換フェニルであり(なお、好適な置換基については上記に示されている)、
並びに、さらなる基と添え字であるR34、R35、R36については、それぞれ、上記で定義されている通りである]
の3,6−ジシリル置換化合物である、本発明の有機発光ダイオードに関する。
【0093】
特に好ましい実施形態において、本発明の有機発光ダイオードにおいて使用される式(II)の化合物は、R37〜R43基、Ra基、及びRb基並びにX基に対して、以下のような定義を有する:
Xは、NR37であり、
37は、置換又は非置換C6〜C30−アリールであり、好ましくは、置換又は非置換C6〜C10−アリールであり、より好ましくは、置換又は非置換フェニルであり(なお、好適な置換基については、上記に示されている)、
38、R39、R40、R41、R42、R43は、それぞれ独立して、置換又は非置換C1〜C20−アルキル、あるいは置換又は非置換C6〜C30−アリール、あるいは一般式(c)の構造であり、好ましくは、それぞれ独立して、置換又は非置換C1〜C6−アルキル、あるいは置換又は非置換C6〜C10−アリールであり、より好ましくは、置換又は非置換C1〜C6−アルキル、あるいは置換又は非置換フェニルであり、ここで、一実施形態において、R38基、R39基、及びR40基の少なくとも1つ及び/又はR41基、R42基、及びR43基の少なくとも1つは、置換又は非置換C6〜C30−アリールであり、好ましくは、置換又は非置換C6〜C10−アリールであり、より好ましくは、置換又は非置換フェニルであり(なお、好適な置換基については、上記に示されている)、
44、R45、R46、R47、R48、R49は、それぞれ独立して水素であるか、あるいはRa及びRbにおいて定義された通り、すなわち、それぞれ独立して、置換又は非置換C1〜C20−アルキル、置換又は非置換C6〜C30−アリール、5〜30個の環原子を有する置換又は非置換ヘテロアリール、あるいはドナー作用もしくはアクセプター作用を有する置換基であり(なお、ドナー作用もしくはアクセプター作用を有する好適な置換基については既に上記に示されている)、好ましくは、水素、置換又は非置換C1〜C6−アルキル、置換又は非置換C6〜C10−アリール、あるいはSiR343536であり、より好ましくは、水素、メチル、エチル、フェニル、CF3、又はSiR343536であり、
34、R35、R36は、それぞれ独立して、置換又は非置換C1〜C20−アルキル、あるいは置換又は非置換C6〜C30−アリールであり、好ましくは、置換又は非置換C1〜C6−アルキル、あるいは置換又は非置換C6〜C10−アリールであり、ただし、R34、R35、及びR36は、より好ましくは、それぞれ独立して、置換又は非置換C1〜C20−アルキルあるいは置換又は非置換フェニルであり、より好ましくは、R34基、R35基、及びR36基の少なくとも1つが置換又は非置換フェニルであり、最も好ましくは、R34基、R35基、及びR36基の少なくとも1つが置換フェニルである(なお、好適な置換基については、上記に示されている)。
【0094】
さらなる好ましい実施形態において、本発明は、式IIIの化合物が使用され、そのR37基並びに/あるいはR38、R39、及びR40の基の少なくとも1つ及び/又はR41、R42、及びR43の基の少なくとも1つが、独立して、以下の式:
【化18】

[式中、
pは、0、1、2、3、4、又は5であり、好ましくは、0、1、2又は3であり、より好ましくは、0、1、又は2であり、
50は、水素、置換又は非置換C1〜C20−アルキル、置換又は非置換C6〜C30−アリール、5〜30個の環原子を有する置換又は非置換ヘテロアリール、ドナー作用もしくはアクセプター作用を有する置換基である(なお、ドナー作用もしくはアクセプター作用を有する好適な置換基は上記に示されている)、あるいは一般式a又はb:
【化19】

の基であり、ここで、
X’は、N又はPであり、並びに
基及び添え字X’’、R38’、R39’、R40’、R41’、R41’’、R42’、R42’’、R43’、R43’’、Ra’、Ra’’、Rb’、Rb’’、q’、q’’、r’、及びr’’は、それぞれ独立して、基及び添え字X、R38、R39、R40、R41、R42、R43、Ra、Rb、q、及びrに対して定義されている通りであり、
あるいは
38基、R39基、及びR40基の1つ及び/又はR41基、R42基、及びR43基の1つが、一般式c:
【化20】

の基であり、ここで、基及び添え字X’’’、R41’’’、R42'’’、R43’’’、Ra’’’、Rb’’’、q’’’、及びR’’’は、それぞれ独立して基及び添え字X、R41、R42、R43、Ra、Rb、q、及びrに対して定義されている通りである]
で表される置換又は非置換C6−アリールである、有機発光ダイオードに関する。
【0095】
好ましいR50基は、水素、置換又は非置換C1〜C6−アルキル、置換又は非置換C6〜C10−アリール、5〜13個の環原子を有する置換又は非置換ヘテロアリール(好ましくは、カルバゾリル)、あるいはC1〜C20−アルコキシ(好ましくは、C1〜C6−アルコキシ、より好ましくは、エトキシ又はメトキシ)、C6〜C30アリールオキシ(好ましくは、C6〜C10−アリールオキシ、より好ましくは、フェニルオキシ)、SiR343536、ハロゲン基(好ましくは、F、Cl、Br、より好ましくは、F又はCl、最も好ましくは、F)、ハロゲン化C1〜C20−アルキル基(好ましくは、ハロゲン化C1〜C6−アルキル基、最も好ましくは、フッ素化C1〜C6−アルキル基、例えば、CF3、CH2F、CHF2、又はC25など)、アミノ(好ましくは、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、又はジフェニルアミノ、より好ましくは、ジフェニルアミノ)、OH、擬ハロゲン基(好ましくは、CN、SCN、又はOCN、より好ましくは、CN)、C(O)OC1〜C4−アルキル(好ましくは、−C(O)OMe)、P(O)Ph2、SO2Phから成る群から選択されるドナー作用もしくはアクセプター作用を有する置換基であり、ここで、R34、R35、及びR36は、それぞれ独立して、置換又は非置換C1〜C6−アルキル、あるいは置換又は非置換C6〜C10−アリールであり、SiR343536の場合には、好ましくは、それぞれ独立して、置換又は非置換アルキル、あるいは置換又は非置換フェニルであり、より好ましくは、R34基、R35基、及びR36基の少なくとも1つは、置換又は非置換フェニルであり、最も好ましくは、R34基、R35基、及びR36基の少なくとも1つが置換フェニルである(なお、好適な置換基は上記に示されている)。より好ましくは、R50基は、それぞれ独立して、メトキシ、フェニルオキシ、非置換C1〜C4−アルキル(好ましくは、メチル)、ハロゲン化C1〜C4−アルキル(好ましくは、CF3、CHF2、CH2F、C25)、CN、ハロゲン(好ましくは、F)、−C(O)O−C1〜C4−アルキル(好ましくは、−C(O)OMe)、P(O)Ph2、並びに5〜13個の環原子を有する置換又は非置換ヘテロアリール(好ましくは、カルバゾリル)から成る群から選択される。
【0096】
本発明のさらなる実施形態において、式IIIの化合物における添え字r及びqは、それぞれ0であり、すなわち、このアリール基の置換可能な全ての位置が水素原子を有している。他の全ての基及び添え字では、前述の好ましいものが適用される。
【0097】
本発明に従って用いられる式IIIの化合物は、本発明の有機発光ダイオードの様々な層において使用してもよい。なお、本発明のOLEDにおける好適で好ましい層組成は上記に示されている。
【0098】
一実施形態において、本発明は、発光層Eにおいて式IIIの化合物がマトリックスとして用いられる有機発光ダイオードに関する。この場合、式(III)の化合物は、成分CA及びCBに加えて、発光層においても使用される。さらに、成分CBに加えて、正孔伝導性材料CAとして式(III)のジシリルカルバゾール又はジシリルベンゾホスホール(X=NR37又はPR37)を使用することも可能である。
【0099】
さらなる実施形態において、本発明は、電子のブロッキング層において電子/励起子ブロッカーとして、並びに/あるいは正孔注入層及び/又は正孔伝導層において、式IIIの化合物を使用する本発明の有機発光ダイオードに関する。さらに発光層C及び/又は前述の層の1つ以上に、式IIIの化合物が存在していることも同様に可能である。
【0100】
さらなる実施形態において、本発明は、正孔のブロッキング層において正孔/励起子ブロッカーとして、並びに/あるいは電子注入層及び/又は電子伝導層において、式IIIの化合物を使用する本発明の有機発光ダイオードに関する。発光層C及び/又は前述の層の1つ以上に、式IIIの化合物が存在することも同様に可能である。
【0101】
さらなる実施形態において、本発明は、正孔のブロッキング層において正孔/励起子ブロッカーとして、並びに/あるいは電子注入層及び/又は電子伝導層において、式(III)の化合物を使用する本発明の有機発光ダイオードに関する。発光層C及び/又は前述の層の1つ以上に式(III)の化合物が存在することも同様に可能である。
【0102】
式IIIの化合物が使用される層に応じて、式IIIの化合物は、様々な好ましいR37基、R38基、R39基、R40基、R41基、R42基、R43基、Ra基、及びRb基、並びに様々なX基を有する。式IIIの化合物のR37〜R43基、Ra基、及びRb基並びにX基は、本発明のOLEDにおいて式IIIの化合物を使用することができる層の機能だけでなく、さらに、本発明のOLEDに使用される特定の層の電気特性(HOMO及びLUMOの相対位置)にも依存している。したがって、式(II)の化合物の好適な置換基により、本発明のOLEDに使用されるさらなる層にHOMO及びLUMO軌道位置を調整し、それによって、OLEDの高い安定性とそれによる長い動作寿命及び高効率をを達成することが可能である。
【0103】
OLEDの個々の層におけるHOMO及びLUMOの相対位置に関する原理は、当業者に公知である。その原理については、発光層に関して、電子のブロッキング層及び正孔のブロッキング層の特性に関する実施例により、本明細書の以下において詳細に述べる。
【0104】
電子のブロッキング層のLUMOは、発光層において使用される材料(使用される発光材料及びマトリックス材料の両方)のLUMOよりエネルギー的に高い。電子のブロッキング層のLUMOと発光層の材料のLUMOのエネルギー的な差が大きいほど、電子のブロッキング層の電子及び/又は励起子ブロッキング特性はより良好である。したがって、電子及び/又は励起子ブロッカー材料として好適な式IIIの化合物の好適な置換基のパターンは、発光層に使用される材料の電子特性(特に、LUMOの位置)などの要因によって変わる。
【0105】
電子のブロッキング層のHOMOは、発光層に存在する材料(存在する発光材料と任意のマトリックス材料の両方)のHOMOよりもエネルギー的に高い。正孔のブロッキング層のHOMOと発光層の材料のLUMOのエネルギー的な差が大きいほど、正孔のブロッキング層の正孔及び/又は励起子ブロッキング特性はより良好である。したがって、正孔及び/又は励起子ブロッカー材料として好適な式(II)の化合物の好適な置換基のパターンは、発光層に存在する材料の電子特性(特に、HUMOの位置)などの要因によって変わる。
【0106】
本発明のOLEDに使用される様々な層のHOMO及びLUMOの相対位置に関する同様の考慮は、OLEDに使用されるさらなる層に対しても適用されるものであり、これは当業者に公知である。
【0107】
本発明のOLEDの様々な層における使用に応じて、式IIIの化合物の好ましい好適なR37基、R38基、R39基、R40基、R41基、R42基、R43基、Ra基、及びRb基を下記に示す。式IIIの化合物の置換基で下記に示したもの以外は、原則として、OLEDのさらなる層の電子特性に応じて、特に発光層の電子特性に応じて、様々な層での使用に好適であることを指摘しておく。
【0108】
発光層Cにおける成分CA及び成分CB以外のさらなる材料としての使用に対して、並びに電子のブロッキング層及び/又は正孔注入層及び/又は正孔伝導層における使用に対して、特に好適な一般式IIIの化合物
本発明の好ましい実施形態は、成分CA及びCBに加えて、式IIIの化合物が、電子のブロッキング層及、正孔注入層及び/又は正孔伝導層及び/又は発光層Cにおいて使用されている有機発光ダイオードに関する。
【0109】
前述の層の少なくとも1つの層において使用することができる式IIIの好ましい化合物は、置換又は非置換C1〜C20−アルキル、5〜30個の環原子を有するヘテロアリール、置換又は非置換C6〜C30−アリール、アルキル置換C6〜C30−アリール(ここで、「アルキル置換」は、C1〜C20−アルキル置換C6〜C30−アリールを意味する)、ドナー作用を有する少なくとも1つの置換基で置換されたC6〜C30−アリール、あるいは5〜30個の環原子を有するヘテロアリールで置換されたC6〜C30−アリール置換、あるいはドナー作用を有する置換基又はR38、R39、R40、R41、R42、もしくはR43の場合は水素、である少なくとも1つのR37基、R38基、R39基、R40基、R41基、R42基、又はR43基を有する。
【0110】
ドナー作用を有する好適な置換基(電子供与性基)は、好ましくは、置換及び非置換C1〜C6−アルキル(好ましくは、メチル)、置換及び非置換C6〜C10−アリール、5〜30個の環原子を有する電子リッチな置換及び非置換ヘテロアリール(好ましくは、カルバゾリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、オキサゾリル、チオフェニルから成る群から選択され、好ましくは、カルバゾリル及びチオフェニル)、C1〜C20−アルコキシ(好ましくは、C1〜C6−アルコキシ、より好ましくはメトキシ及びエトキシ)、C6〜C30−アリールオキシ(好ましくは、C6〜C10アリールオキシ、より好ましくはフェニルオキシ)、C1〜C20−アルキルチオ(好ましくは、C1〜C6−アルキルチオ、より好ましくは、−SCH3)、C6〜C30−アリールチオ(好ましくは、C6〜C10−アリールチオ、より好ましくは、−SPh)、F、SiR343536(ここで、R34、R35、及びR36は、好ましくは、ドナー置換フェニル基)、アミノ(−NR3435)(好ましくは、ジフェニルアミノ)、ホスフィン(−PR3435)、ヒドラジン基、OH、ドナー置換ビニル基から成る群から選択される(ここでR34、R35、及びR36は、それぞれ、上記で定義された通りであり、好ましくはドナー置換フェニル基である)。
【0111】
ドナー作用を有する非常に特に好ましい置換基は、ジフェニルアミノ、カルバゾリル、メトキシ、フェノキシから成る群から選択され、特に好ましいのは、メトキシ及びカルバゾイルである。
【0112】
より好ましくは、前述の層において使用される少なくとも1つの基が、ドナー作用を有する少なくとも1つの置換基及び/又は5〜30個の環原子を有する少なくとも1つのヘテロアリール基で置換された式(d):
【化21】

[式中、
p’は、1、2、3、4、又は5であり、好ましくは、1、2、又は3であり、より好ましくは、1又は2であり、並びに
51は、各場合において独立して、置換又は非置換C1〜C6−アルキル(好ましくは、メチル)、置換又は非置換C6〜C10−アリール、C1〜C20−アルコキシ(好ましくは、C1〜C6アルコキシ、より好ましくはメトキシ及びエトキシ)、C6〜C30−アリールオキシ(好ましくは、C6〜C10−アリールオキシ、より好ましくはフェニルオキシ)、C1〜C20−アルキルチオ(好ましくは、C1〜C6−アルキルチオ、より好ましくは−SCH3)、C6〜C30−アリールチオ(好ましくは、C6〜C10−アリールチオ、より好ましくは−SPh)、SiR343536(ここで、R34、R35、及びR36は、それぞれ、上記で定義された通りであり、好ましくは、それぞれ、ドナー置換フェニル基である)、アミノ(−NR3435)(好ましくは、ジフェニルアミノ)、アミド(−NR34(C=O(R35))、ホスフィン(−PR3435)、ヒドラジン基、OH、ドナー置換ビニル基であり(ここで、R34、R35、及びR36は、それぞれ、上記で定義された通りであり、好ましくは、それぞれ、ドナー置換フェニル基である)、
あるいは、R51は、5〜30個の環原子を有する電子リッチな置換又は非置換ヘテロアリールであり、好ましくは、カルバゾリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、オキサゾリル、チオフェニルから成る群から選択され、より好ましくはカルバゾリル及びピロリルである]
で表されるC6−アリール基である。
【0113】
好ましいR51基は、メトキシ、エトキシ、フェノキシ(非常に特に好ましいのは、メトキシ)、並びにカルバゾリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、オキサゾリル、及びチオフェニル(非常に特に好ましいのは、メトキシ、フェニルオキシ、カルバゾリル)、並びにNR3435(ここで、R34及びR35は、それぞれ、フェニル又はトリルである)から成る群から選択される。
【0114】
より好ましくは、前述の層において使用される式(III)の化合物が、
【化22】

から成る群から選択される少なくとも1つのR37基、R38基、R39基、R40基、R41基、R42基、又はR43基を有する。
【0115】
好適な実施形態において、少なくともR1基は、ドナー作用を有する少なくとも1つの置換基及び/又は5〜30個の環原子を有する少なくとも1つのヘテロアリール基で置換された式(d)のC6−アリール基であり、
並びに、R38基、R39基、R40基、R41基、R42、及びR43基は、好ましくは、それぞれ、フェニル、メチル、あるいはメトキシ置換フェニル又はフェニルオキシ置換フェニルである。
【0116】
発光層C(成分CA及び成分CBに加えて)並びに/あるいは正孔のブロッキング層、電子注入層及び/又は電子伝導層における式IIIの化合物の使用
本発明は、さらに、発光層C(成分CA及びCBに加えて)、正孔のブロッキング層、電子注入層、及び電子伝導層から選択される層の少なくとも1つに、式IIIの少なくとも1種の化合物が存在する、本発明の有機発光ダイオードに関する。
【0117】
前述の層において使用される式IIIの好ましい化合物は、アクセプター作用を有する少なくとも1つの置換基(電子吸引性基)で置換されたC1〜C20−アルキル、アクセプター作用を有する少なくとも1つの置換基で置換されたC6〜C30−アリール、5〜30個の環原子を有する少なくとも1つのヘテロアリール基で置換されたC6〜C30−アリール、又はアクセプター作用を有する置換基である、少なくとも1つのR37、R38、R39、R40、R41、R42、又はR43基を有する。
【0118】
アクセプター作用を有する好適な置換基(電子吸引性基)は、5〜30個の環原子を有する電子不足ヘテロアリール、カルボニル(−CO(R34))、カルボニルチオ(−C=O(SR34))、カルボニルオキシ(−C=O(OR34))、オキシカルボニル(−OC=O(R34))、チオカルボニル(−SC=O(R34))、OH、ハロゲン、ハロゲン置換C1〜C20−アルキル、擬ハロゲン基、アミド(−C=O(NR34)、ホスホネート(−P(O)(OR342)、ホスフェート(−OP(O)(OR342)、ホスフィンオキシド(−P(O)R3435)、スルホニル(−S(O)234)、スルホネート(−S(O)2OR34)、スルフェート(−OS(O)234)、スルホキシド(−S(O)R34)、スルホンアミド(−S(O)2NR3435)、NO2、ボロン酸エステル(−OB(OR342、イミノ(−C=NR3435))、ヒドラジン基、ヒドラゾール基、オキシム基、ニトロソ基、ジアゾ基、スルホキシミン、SiR343536、ボラン基、スタンナン基、アクセプター置換ビニル基、ボロキシン、及びボラジン(ここで、R34、R35、及びR36は、それぞれ、置換又は非置換C1〜C20−アルキル(好ましくは、置換又は非置換C1〜C6−アルキル)、あるいは置換又は非置換C6〜C30−アリール(好ましくは、置換又は非置換C6〜C10−アリール)である)から成る群から選択される。
【0119】
アクセプター作用を有する好ましい置換基は、ハロゲン(好ましくは、F)、ハロゲン置換アルキル(好ましくは、CF3、CH2F、CHF2、C25、C334)、擬ハロゲン(好ましくは、CN)、カルボニルオキシ(−C=O(OR14))(好ましくは、−C=O(OCH3))、ホスフィンオキシド(好ましくは、P(O)Ph2))、及びスルホニル(好ましくは、S(O)2Ph2)から成る群から選択される。
【0120】
前述の層において使用される少なくとも1つの基は、より好ましくは、式(e):
【化23】

[式中、
p’’は、1、2、3、4、又は5であり、好ましくは、1、2、又は3であり、より好ましくは1又は2であり、並びに
52は、カルボニル(−CO(R34))、カルボニルチオ(−C=O(SR34))、カルボニルオキシ(−C=O(OR34))、オキシカルボニル(−OC=O(R34))、チオカルボニル(−SC=O(R34))、OH、ハロゲン、ハロゲン置換C1〜C20−アルキル、擬ハロゲン基、アミド(−C=O(NR34)、ホスホネート(−P(O)(OR342)、ホスフェート(−OP(O)(OR342)、ホスフィンオキシド(−P(O)R3435)、スルホニル(−S(O)234)、スルホネート(−S(O)2OR34)、スルフェート(−OS(O)234)、スルホキシド(−S(O)R34)、スルホンアミド(−S(O)2NR3435)、NO2、ボロン酸エステル(−OB(OR342、イミノ(−C=NR3435))、ヒドラジン基、ヒドラゾール基、オキシム基、ニトロソ基、ジアゾ基、スルホキシミン、SiR343536、ボラン基、スタンナン基、アクセプター置換ビニル基、ボロキシン、及びボラジンであり(ここで、R34、R35、及びR36は、それぞれ、置換又は非置換C1〜C20−アルキル(好ましくは、置換又は非置換C1〜C6−アルキル)、あるいは置換又は非置換C6〜C30−アリール(好ましくは、置換又は非置換C6〜C10−アリール)である)、好ましくは、ハロゲン(好ましくは、F)、ハロゲン置換アルキル(好ましくは、CF3、CH2F、CHF2、C25、C334)、擬ハロゲン(好ましくは、CN)、カルボニルオキシ(−C=O(OR34))(好ましくは、−C=O(OCH3))、ホスフィンオキシド(好ましくは、P(O)Ph2)、及びスルホニル(好ましくは、S(O)2Ph2)であり、
あるいは、R52は、5〜30個の環原子を有する置換又は非置換の電子不足ヘテロアリールであり、好ましくは、ピリジン、ピリミジン、及びトリアジンから成る群から選択される]
で表されるC6−アリール基である。
【0121】
より好ましくは、前述の層において使用される式IIIの化合物は、
【化24】

から成る群から選択される少なくとも1つのR37、R38、R39、R40、R41、R42、又はR43基を有する。
【0122】
本発明に従って使用される式IIIの化合物の製造
式IIIの化合物は、原則として、当業者に公知の方法によって製造することができる。例えば、式IIIのカルバゾール(X=NR37)は、ジフェニルアミン(又はその好適に置換された誘導体)から酸化閉環により、そして適切であればその後に、例えば、窒素上における置換により、熱的に又は光化学的に製造することができる。さらに、式(II)のカルバゾールは、酸化により好適に置換されたテトラヒドロカルバゾールから出発して得ることができる。典型的なカルバゾール合成法は、ボルシェ・ドレクセル環化(Borsche,Ann.,359,49(1908);Drechsel,J.prakt. Chem.,[2],38,69,1888)である。前述のテトラヒドロカルバゾールは、当業者に公知の方法により製造することができる。例えば、適切であれば、好適に置換されたフェニルヒドラジンと、適切であれば、好適に置換されたシクロヘキサノンとの縮合により対応するイミンを得る。その後の工程において、酸触媒転位及び閉環反応を行い、対応するテトラヒドロカルバゾールを得る。同様に、1段階においてイミンの製造及び転位及び閉環反応を実施することも可能である。上述のように、得られたイミンを酸化して、所望のカルバゾールを得る。
【0123】
式IIIの化合物は、式IV:
【化25】

[式中、Xは、NR37、SO、SO2、S、O、PR37、NH、又はPHである]の対応する基本構造から出発して好適に製造する。式(III)の好適な基本構造物は、市販されているものでもよいし(特に、Xが、SO、SO2、S、O、NH、又はPHの場合に)、又は当業者に公知の方法により製造することもできる。
【0124】
XがNH又はPHの場合、R37基は、Ra基、Rb基、SiR383940基、SiR414243基の導入の前又は後に導入することができる。ただし、Ra基及びRb基は、式IIIの化合物又はRa基、Rb基、SiR383940基、SiR414243基の導入に好適な前駆体化合物に存在する。したがって、3つの変法(X=NR37及びPR37の場合)が可能である。
【0125】
変法a)
ia)Ra基、Rb基、SiR383940基、及びSiR414243基の導入に好適な前駆体化合物を製造する
iia)R37基を導入する
iiia)Ra基、Rb基(存在している)、並びにSiR383940基及びSiR414243基を導入する
【0126】
変法b)
変法b)は、特にR37が置換又は非置換C1〜C20−アルキルあるいは非置換C6〜C30−アリール又はC1〜C20−アルキル置換C6〜C30−アリールの場合に好ましい。
ib)R37を導入する
iib)Ra基、Rb基、SiR383940基、及びSiR414243基の導入に好適な前駆体化合物を製造する
iiib)Ra基、Rb基(存在している)並びにSiR383940基及びSiR414243基を導入する
【0127】
変法c)
ic)Ra基、Rb基、SiR383940基、及びSiR414243基の導入に好適な前駆体化合物を製造する
iic)Ra基、Rb基(存在している)、並びにSiR383940基及びSiR414243基を導入する
iiic)R37基を導入する
【0128】
式(III)のXがNR37、SO、SO2、S、O、又はPR37の場合、「R37基を導入する」工程は省かれ、その方法は以下の工程(変法d)を含む。
id)Ra基、Rb基、SiR383940基、及びSiR414243基の導入に好適な前駆体化合物を製造する
iid)Ra基、Rb基(存在している)、並びにSiR383940基及びSiR414243基を導入する
【0129】
工程ia)、iib)、ic)、及びid)
a基、Rb基、SiR383940基、SiR414243基の導入に好適な前駆体化合物は、特に、対応するようにハロゲン化された化合物、好ましくは臭素化された化合物であり、対応する基本骨格を、当業者に公知の方法によってハロゲン化することができる。特に好ましいのは、氷酢酸又はクロロホルム中において低温(例えば、0℃)でBr2を用いて臭素化することである。好適な方法は、例えば、X=NPhの場合は、M.Park,J.R.Buck,C.J.Rizzo,Tetrahedron,1998,54,12707−12714において開示されており、X=Sの場合は、W.Yang et al.,J.Mater.Chem.2003,13,1351において開示されている。さらに、臭素化された生成物には、市販されているものもある。
【0130】
工程iia)、ib、)、及びiiic)
37基を、当業者に公知の方法によって導入する。
【0131】
37基は、好ましくは、好適なハロゲン化又は非ハロゲン化基本骨格(ここで、XはNH又はPHである)と、式R37−Hal(ここで、R37は既に上記において定義されており、Halは、F、Cl、Br、又はI、好ましくはBr、I、又はFである)のハロゲン化アルキル、又はハロゲン化アリール、又はハロゲン化ヘテロアリールとの反応によって導入される。
【0132】
好ましいのは、好適なハロゲン化又は非ハロゲン化基本骨格(ここで、XはNH又はPHである)と、DMF中におけるNaHの存在下でのフッ化アルキル、フッ化アリール、又はフッ化ヘテロアリールとの反応(求核置換)によって、あるいは、Cu/塩基又はPd触媒の存在下での臭化アルキルもしくはヨウ化アルキル、臭化アリールもしくはヨウ化アリール、又は臭化ヘテロアリールもしくはヨウ化ヘテロアリールとの反応によって、R37基を導入することである。
【0133】
工程iiia)、iiib)、iic、)、及びiid)
所望する式IIIのシリル化化合物は、ハロゲン化前駆体化合物から出発して、ハロゲン/金属交換、及びそれに続いて当業者に公知の方法によるシリル化によって製造する。
【0134】
式IIIのさらなる好ましい化合物、及び式IIIの化合物の好適な製造方法についての詳細は、本発明の出願と同時に出願され、本出願の優先日において未公開であった出願(名称「Organic light−emitting diodes comprising carbene−transition metal complex emitters and at least one compound selected from disilylcarbazoles, disilyldibenzofurans, disilyldibenzothiophenes, disilyldibenzophospholes, disilyldibenzothiophene S−oxides and disilyldibenzothiophene S,S−dioxides」)に示されている。
【0135】
好ましい実施形態において、式IIIの化合物は、正孔及び/又は電子ブロッカー層において励起子ブロッカーとして、並びに/あるいは成分CA及び成分CBを含む発光層Cにおいてさらなる材料として用いられる。式IIIの化合物が、ジシリルカルバゾール又はジシリルジベンゾホスホールの場合(式IIIのXは、NR1又はPR1)、式IIIの化合物は、さらなる実施形態において、発光層中の成分CB以外の成分CAとして用いることができる。
【0136】
したがって、本発明は、さらに、少なくとも1種の式IIIの化合物が、正孔ブロッカー材料及び/又は励起子ブロッカー材料として正孔ブロッキング層中に存在する、本発明の有機発光ダイオードを提供する。好ましくは、有機発光ダイオードで使用される正孔伝導性材料CAは、XがNR1又はPR1であるような少なくとも1種の式IIIの化合物である。
【0137】
したがって、本発明は、さらに、少なくとも1種の式IIIの化合物が電子ブロッカー材料及び/又は励起子ブロッカー材料として電子ブロッキング層中に存在する、本発明の有機発光ダイオードを提供する。好ましくは、有機発光ダイオードで使用される正孔伝導性材料CAは、XがNR1又はPR1であるような少なくとも1種の式IIIの化合物である。
【0138】
非常に特に好ましいのは、正孔ブロッキング層において式IIIの化合物を正孔及び/又は励起子ブロッカーとして使用することである。正孔ブロッカーとして好適な、式IIIの好ましい化合物は、既に上記に示されている。これらの材料は、同時に正孔ブロッキング層において励起子ブロッカーとして用いることもできる。好ましい実施形態において、9−(4−tert−ブチルフェニル)−3,6−ビス(トリフェニルシリル)カルバゾール(CzSi)及び9−(フェニル)−3,6−ビス(トリフェニルシリル)カルバゾールは、正孔ブロッカー材料として用いられている。
【0139】
一般的に、本発明のOLEDの様々な層は、当業者に公知の通常採用される層厚である。好適な層厚は、例えば、陽極Aは50〜500nm、好ましくは100〜200nm、正孔伝導層Bは5〜100nm、好ましくは20〜80nm、発光層Cは1〜100nm、好ましくは10〜80nm、電子伝導層Dは5〜100nm、好ましくは20〜80nm、陰極Eは20〜1000nm、好ましくは30〜500nmである。本発明のOLED中に存在するさらなる正孔ブロッキング層の厚さは、一般的に、2〜100nm、好ましくは5〜50nmである。電子伝導層及び/又は正孔伝導層は、それらが電気的にドープされている場合、示された層厚よりも、厚い層厚を有することも可能である。
【0140】
本発明によるOLEDの製造は、当業者に公知の方法によって行なうことができる。一般的に、このOLEDは、個々の層を好適な基板上に連続的に蒸着することによって製造される。好適な基板は、例えば、ガラス、無機半導体、又はポリマーフィルムである。蒸着には、通常用いられる技術、すなわち、熱蒸着、化学的気相成長法(CVD)、物理的気相成長法(PVD)、及び他の方法を用いることができる。代替方法としては、OLEDの有機層を、好適な溶媒中の溶液又は分散液から当業者に公知の塗工技術により塗工することができる。本発明に従って、正孔伝導層B及び発光層Cにおいて好適に使用される一般式Iの遷移金属−カルベン錯体は、好ましくは、蒸着法によって適用される。
【0141】
OLEDにおける使用に好適な混合物
上述のように、驚いたことに、本発明に従って、少なくとも1種の正孔伝導性材料CA及び少なくとも1種のリン光発光体CBの混合物から発光層Cが形成される場合、驚くほど長い寿命を有するOLEDを提供することが可能であることがわかっている。一般的に、本発明のOLEDにおいて使用される発光層Cは、5〜99質量%、好ましくは20〜97質量%、より好ましくは50〜95質量%、最も好ましくは70〜95質量%の少なくとも1種の正孔伝導性材料CA、並びに1〜95質量%、好ましくは3〜80質量%、より好ましくは5〜60質量%、最も好ましくは5〜30質量%の少なくとも1種のリン光発光体CBを含む(なお、少なくとも1種の正孔伝導性材料CA及び少なくとも1種のリン光発光体CBの合計量は、100質量%である)。また、少量のリン光発光体でさえ、高効率の本発明のOLEDを得るには十分であることがわかっている。非常に特に好ましい実施形態において、本発明のOLEDの発光層Cは、5〜20質量%の少なくとも1種のリン光発光体CB及び80〜95質量%の少なくとも1種の正孔伝導性材料CAを含む(ここで、少なくとも1種の正孔伝導性材料CA及び少なくとも1種のリン光発光体CBの合計量は、100質量%である)。原則として、発光層Cは、成分CA及びCBと同様に、さらなる機能材料を含むことも可能である。例えば、発光層Cは、さらに、少なくとも1種の式IIIの化合物を含んでいてもよい(なお、式IIIの好ましい化合物については上記において示されている)。
【0142】
したがって、本発明は、さらに、少なくとも1種の正孔伝導性材料と共に、又は少なくとも1種のリン光発光体と共に、第一のカルベン錯体以外の少なくとも1種のカルベン錯体を含む混合物に関する。
【0143】
本発明は、さらに、少なくとも2種の異なるカルベン錯体CA及びCBを含み、カルベン錯体CAのバンドギャップがカルベン錯体CBのバンドギャップよりも大きい混合物を提供する。カルベン錯体CBは、好ましくは、≧2.5eVのバンドギャップ、より好ましくは2.5eV〜3.4eVのバンドギャップ、さらにより好ましくは2.6eV〜3.2eVのバンドギャップ、非常に特に好ましくは2.8eV〜3.2eVのバンドギャップを有する。非常に特に好ましい実施形態において、カルベン錯体CBは青色を発するカルベン錯体である。
【0144】
カルベン錯体CA及びCBは、好ましくは、それぞれ一般式Iのカルベン錯体であるが、このカルベン錯体CAとCBは異なっている。式Iの好適で好ましいカルベン錯体と、カルベン錯体CA及びCBの好適な量の比率は、上述されている。
【0145】
さらなる実施形態において、本発明は、さらに、少なくとも1種の正孔伝導性材料と共に又は少なくとも1種のリン光発光体と共に、第一のカルベン錯体以外に少なくとも1種のカルベン錯体を含む混合物であって、少なくとも1種のカルベン錯体CB及び正孔伝導性材料CAとして少なくとも1種の、請求項10に記載の式IIIの化合物(ここで、XはNR1又はPR1である)を含む混合物に関する。
【0146】
少なくとも1種の正孔伝導性材料CA及び少なくとも1種のリン光発光体CBを含む混合物をOLEDにおいて発光層として使用する場合、OLEDの十分な長寿命化を達成することができることがわかっている。したがって、本発明は、さらに、OLEDの寿命を延ばすための、OLEDにおいて発光層として少なくとも1種の正孔伝導性材料CA及び少なくとも1種のリン光発光体CBを含む混合物の使用を提供する。好ましい混合物は、上記で定義されているような混合物であり、特に好ましいのは、正孔伝導性材料として使用されるカルベン錯体CAのバンドギャップがリン光発光体として使用されるカルベン錯体CBのバンドギャップより大きい、2種のカルベン錯体CA及びCBの混合物の使用である。発光層における少なくとも1種の正孔伝導性材料及び少なくとも1種のリン光発光体の、好ましいカルベン錯体及び好適な量は、上述されている。
【0147】
次の実施例により、本発明を更に説明する。
【0148】
実施例
実施例:OLEDの製造
陽極として使用されるITO基板は、最初に、LCD生産用の業務用洗剤(Deconex(登録商標)20NS及び中和剤25ORGAN−ACID(登録商標))により洗浄し、引き続きアセトン/イソプロパノール混合液による超音波浴にて洗浄する。全ての有機残留物を除去するために、さらに25分間、この基板をオゾン炉中で連続的なオゾン流に晒す。また、この処理により、ITOの正孔注入特性も改善される。
【0149】
次いで、以下に示す有機材料を、洗浄された基板上に約10-7mbarにて約0.5〜5nm/分の速度で蒸着する。この基板に適用した正孔伝導体及び励起子ブロッカーは、厚さ30nmのIr(dpbic)3である。
【0150】
【化26】

(製造については、国際特許公開公報第2005/019373号におけるIr錯体(7)を参照のこと)
続いて、30質量%の化合物Ir(cn−pmbic)3
【化27】

及び70質量%の化合物Ir(dpbic)3から成る混合物を、20nmの厚さに蒸着する。ここで、前者の化合物は発光体として機能し、後者はマトリックス材料として機能する。
【0151】
続いて、層厚5nmの励起子及び正孔ブロッカーとして材料9−(フェニル)−3,6−ビス(トリフェニルシリル)−9H−カルバゾールを蒸着する。
【0152】
【化28】

【0153】
次に、電子輸送材料TPBI(1,3,5−トリス(N−フェニル−2−ベンジルイミダゾリル)ベンゼン)を層厚50nmに、次いでフッ化リチウム層を0.75nm厚に、及び最後にAl電極を110nm厚に蒸着する。
【0154】
OLEDを特徴付けるために、エレクトロルミネセンススペクトルを様々な電流及び電圧で記録する。さらに、電流−電圧特性を、放射された光出力と共に測定する。この光出力は、輝度計を用いた較正により光度測定パラメーターに変換することができる。寿命を評価するために、OLEDを3.2のmA/cm2の一定電流密度で動作させ、光出力の低下を記録する。寿命は、輝度が初期の輝度の半分に低下するまでの時間として定義される。
【0155】
比較のため、電子伝導性ホスト材料を用いたOLEDを作製した。構造は、層厚が30nmのIr(DPBIC)3、30%Ir(CN−PMBIC)3及び70%電子伝導ホスト材料による20nmの混合物、50nmのTPBI、0.75nmのフッ化リチウム層、110nmのアルミニウムである。
【0156】
本発明のOLEDの寿命は、比較例のOLEDに比べて50倍改善されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)陽極Aと、
ii)少なくとも1種の正孔伝導性材料から形成された正孔伝導層Bと、
iii)発光層Cと、
iv)電子伝導層Dと、
v)陰極Eと
を含み、該層A、B、C、D、及びEが、上記の順序で配置され、該層AとB、BとC、CとD、及び/又はDとEの間に1つ以上のさらなる層が配置されていてもよく、該発光層Cが、少なくとも1種の正孔伝導性材料CAと少なくとも1種のリン光発光体CBとを含む、有機発光ダイオード。
【請求項2】
前記正孔伝導層Bの前記少なくとも1種の正孔伝導性材料のHOMO及び前記発光層C中に存在する前記少なくとも1種の正孔伝導性材料CAのHOMOと、前記陽極Aの仕事関数との差が≦1eVである、請求項1に記載の有機発光ダイオード。
【請求項3】
前記正孔伝導層Bの前記少なくとも1種の正孔伝導性材料及び前記発光層Cの前記少なくとも1種の正孔伝導性材料CAのバンドギャップが、前記リン光発光体CBのバンドギャップよりも大きい、請求項1又は2に記載の有機発光ダイオード。
【請求項4】
前記発光層中の前記リン光発光体CBのバンドギャップが≧2.5eVである、請求項1から3までのいずれかに記載の有機発光ダイオード。
【請求項5】
前記少なくとも1種のリン光発光体CBが、元素周期表(CAS版)の第IB族、第IIB族、第IIIB族、第IVB族、第VB族、第VIB族、第VIIB族、第VIII族、ランタノイド、及び第IIIA族から選択される少なくとも1種の元素を含む、請求項1から4までのいずれかに記載の有機発光ダイオード。
【請求項6】
前記少なくとも1種のリン光発光体が、カルベン錯体であり、好ましくは、一般式I
【化1】

[式中、記号はそれぞれ以下のように定義される:
1は、特定の金属において可能な酸化状態の、元素周期表(CAS版)の第IB族、第IIB族、第IIIB族、第IVB族、第VB族、第VIB族、第VIIB族、第VIII族、ランタノイド、及び第IIIA族の遷移金属から成る群から選択される金属原子であり、
カルベンは、非荷電又はモノアニオン性の単座配位、二座配位、又は三座配位であってもよいカルベン配位子であり、また、該カルベン配位子はビスカルベン配位子又はトリスカルベン配位子であってもよく、
Lは、単座配位又は二座配位であってもよいモノアニオン性配位子又はジアニオン性配位子、好ましくはモノアニオン性配位子であり、
Kは、非荷電単座配位子又は二座配位子であり、
nは、カルベン配位子の数であって、少なくとも1であり、好ましくは1〜6であり、n>1の場合、式Iの錯体中のカルベン配位子は、同一又は異なっていてもよく、
mは、配位子Lの数であり、0又は≧1であってよく、好ましくは0〜5であってもよく、なお、m>1の場合、配位子Lは、同一又は異なっていてもよく、
oは、配位子Kの数であり、0又は≧1であってもよく、好ましくは0〜5であってもよく、なお、o>1の場合、配位子Kは、同一又は異なっていてもよく、
pは、錯体の電荷であって、0,1,2,3または4であり、
Wは、モノアニオン性対イオンであり、
ここで、n+m+oの合計及びpは、nが少なくとも1である条件において、使用される金属原子の酸化状態及び配位数、錯体の電荷、並びに前記カルベン配位子、L配位子、及びK配位子の配座数、並びに前記カルベン配位子及びL配位子の電荷に依存する]
の遷移金属−カルベン錯体である、請求項1から5までのいずれかに記載の有機発光ダイオード。
【請求項7】
前記正孔伝導層Bの前記少なくとも1種の正孔伝導性材料及び/又は前記発光層Cの前記少なくとも1種の正孔伝導性材料CAが、カルベン錯体、好ましくは式Iのカルベン錯体を含み、該層B及び層Cの該正孔伝導性材料の該カルベン錯体は同一又は異なっていてもよく、該正孔伝導性材料として用いられる該カルベン錯体のバンドギャップが、前記少なくとも1種のリン光発光体CBのバンドギャップより大きい、請求項1から6までのいずれかに記載の有機発光ダイオード。
【請求項8】
少なくとも1種の正孔ブロッカー材料及び/又は励起子ブロッカー材料から形成される正孔ブロッキング層が、前記発光層Cと前記電子伝導層Dとの間に、前記発光層Cと直接接して存在する、請求項1から7までのいずれかに記載の有機発光ダイオード。
【請求項9】
少なくとも1種の電子ブロッカー材料及び/又は励起子ブロッキング材料から形成される電子ブロッキング層が、前記正孔伝導層Bと前記発光層Cとの間に存在する、請求項1から8までのいずれかに記載の有機発光ダイオード。
【請求項10】
一般式III:
【化2】

[式中、
Xは、NR37、S、O、PR37、SO2、又はSOであり、
37は、置換又は非置換C1〜C20−アルキル、置換又は非置換C6〜C30−アリール、あるいは5〜30個の環原子を有する置換又は非置換ヘテロアリールであり、
38、R39、R40、R41、R42、R43は、それぞれ独立して、置換又は非置換C1〜C20−アルキル、あるいは置換又は非置換C6〜C30−アリール、あるいは一般式(c)
【化3】

の構造であり、
a、Rbは、それぞれ独立して、置換又は非置換C1〜C20−アルキル、置換又は非置換C6〜C30−アリール、あるいは5〜30個の環原子を有する置換又は非置換ヘテロアリール、あるいはC1〜C20−アルコキシ、C6〜C30−アリールオキシ、C1〜C20−アルキルチオ、C6〜C30−アリールチオ、SiR343536、ハロゲン基、ハロゲン化C1〜C20−アルキル基、カルボニル(−CO(R34))、カルボニルチオ(−C=O(SR34))、カルボニルオキシ(−C=O(OR34))、オキシカルボニル(−OC=O(R34))、チオカルボニル(−SC=O(R34))、アミノ(−NR3435)、OH、擬ハロゲン基、アミド(−C=O(NR34))、−NR34C=O(R35)、ホスホネート(−P(O)(OR342、ホスフェート(−OP(O)(OR342)、ホスフィン(−PR3435)、ホスフィンオキシド(−P(O)R342)、スルフェート(−OS(O)2OR34)、スルホキシド(S(O)R34)、スルホネート(−S(O)2OR34)、スルホニル(−S(O)234)、スルホンアミド(−S(O)2NR3435)、NO2、ボロン酸エステル(−OB(OR342)、イミノ(−C=NR3435))、ボラン基、スタンナン基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、オキシム基、ニトロソ基、ジアゾ基、ビニル基、スルホキシミン、アラン、ゲルマン、ボロキシン、及びボラジンから成る群から選択されるドナー作用又はアクセプター作用を有する置換基であり、
34、R35、R36は、それぞれ独立して、置換又は非置換C1〜C20−アルキルあるいは置換又は非置換C6〜C30−アリールであり、
q、rは、それぞれ独立して、0,1,2,又は3であり(q又はrが0の場合、このアリールラジカルの置換可能な全ての位置は、水素によって置換される)、
ここで、式(c)の基における基及び添え字であるX’’’、R41’’’、R42’’’、R43’’’、Ra’’’、Rb’’’、q’’’、及びr’’’は、それぞれ独立して、一般式IIIの化合物の基及び添え字であるX、R41、R42、R43、Ra、Rb、q、及びrにおいて定義された通りである]
で表される少なくとも1種の化合物が、前記有機発光ダイオードの前記層の少なくとも1つに存在する、請求項1から9までのいずれかに記載の有機発光ダイオード。
【請求項11】
前記式IIIの少なくとも1種の化合物が、正孔ブロッカー材料及び/又は励起子ブロッカー材料として前記正孔ブロッキング層中に存在する、請求項10に記載の有機発光ダイオード。
【請求項12】
前記式IIIの少なくとも1種の化合物が、電子ブロッカー材料及び/又は励起子ブロッカー材料として前記電子ブロッキング層中に存在する、請求項10に記載の有機発光ダイオード。
【請求項13】
使用される前記正孔伝導性材料CAが、前記式IIIの少なくとも1種の化合物(Xは、NR1又はPR1である)である、請求項11又は12に記載の有機発光ダイオード。
【請求項14】
少なくとも1種の正孔伝導性材料と共に又は少なくとも1種のリン光発光体と共に、第一のカルベン錯体以外に少なくとも1種のカルベン錯体を含む混合物。
【請求項15】
少なくとも2種の異なるカルベン錯体CA及びCBを含み、該カルベン錯体CAのバンドギャップが、該カルベン錯体CBのバンドギャップより大きく、該カルベン錯体CBが、好ましくは≧2.5eVのバンドギャップを有する、請求項14に記載の混合物。
【請求項16】
前記カルベン錯体CA及びCBが、それぞれ、請求項6に記載の一般式Iを有する、請求項15に記載の混合物。
【請求項17】
少なくとも1種のカルベン錯体CBと、正孔伝導性材料CAとして請求項10に記載の式IIIの少なくとも1種の化合物(なお、Xは、NR1又はPR1である)とを含む、請求項14に記載の混合物。
【請求項18】
OLEDの寿命を延ばすため、OLED中の発光層としての、少なくとも1種の正孔伝導性材料と少なくとも1種のリン光発光体とを含む混合物の使用。
【請求項19】
請求項14から17までのいずれかに記載の混合物を用いた、請求項18に記載の使用。

【公表番号】特表2010−504634(P2010−504634A)
【公表日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−528686(P2009−528686)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際出願番号】PCT/EP2007/059648
【国際公開番号】WO2008/034758
【国際公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】