説明

長尺体巻き取り保持装置

【課題】巻回作業時における作業員への負担を少なくすることのできるとともに、収納時にスペースを削減することのできる長尺体巻き取り保持装置を提供すること。
【解決手段】所定箇所に吊下げ係止するための吊下げ手段18を有する本体部12と、該本体部12に対して回転可能に軸支され長手方向の長さが調整可能なアーム状回転体と、該アーム状回転体の長手方向両端部に設けられた長尺体巻回部40と、本体部12に設けられ長尺体巻回部40に長尺体を案内する長尺体ガイド26cと、アーム状回転体を回転させるための回転手段56と、を備え、アーム状回転体の回転によって長尺体ガイド26cにより案内された長尺体を両端の長尺体巻回部40に亘って巻着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺体巻き取り保持装置に関し、特に、鉄塔に張架される送電線のメンテナンス等の高所作業に使用される長尺のロープや光ファイバーなどの通信ケーブル等の長尺且つ巻き取り可能な長尺体を巻き取り保持する長尺体巻き取り保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の長尺ロープや通信ケーブル等の長尺体については、その巻回や解きなどの作業が煩雑なものとなる。このような長尺体の一例として、送電線用鉄塔におけるメンテナンス工事などにおける高所作業に使用するロープは、通常、60〜80mの長さを有しており、作業場所を移動する必要が生じたような場合、一反、使用しているロープを巻き取って回収して運搬し、他の作業場所で再びロープを解き準備をしなければならない。しかし、上述のように、ロープが60m以上の長さを有しているので、人手で回収、運搬及び解き等の作業行う場合、ロープが絡まってしまうことがあり、作業が煩雑化することがあった。このような負担を軽減するために、従来では円柱形状に形成されたロープ巻き取りドラムを使用してロープの回収を行っていた。このロープ巻き取りドラムの使用により、作業員はドラムの取手を回転させることでロープを回収することができ、ロープを作業に使用する際には、ロープの先端側をドラムから離れる方向に引っ張ることでロープをドラムから解くことができる。
【0003】
一方、ロープを巻き取り収容する手段として、特許文献1には、ロープの収容及び輸送を行うロープ用梱包箱が記載されている。このロープ用梱包箱の内部底面には、中心筒が立設されており、ロープを梱包箱内に収容する際には、この中心筒にロープを巻きつけることができる。また、このロープ梱包箱の場合、移動の際にロープを収容して箱を背負う等することにより、ロープの運搬を容易に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実登3059789号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ロープ巻き取りドラムを使用する場合、60〜80mもの長さを有するロープをロープ巻き取りドラムを用いて巻き取り回収するには、非常に径の大きいドラムを用いる必要がある。このように大きな径の円柱形ドラムは、保管に際して著しくスペースを占有するという欠点がある。
【0006】
一方、特許文献1に記載のロープ梱包箱においては、ロープを収容した状態の梱包箱の移送作業が容易となるものの、上記巻き取り作業の際には、上記梱包箱内の中心筒にロープを巻きつける作業を行う必要がある。しかし、このロープの巻き付けは、作業員が中腰になった状態で行なう必要があり、作業員に極めて負担の大きな作業を強いるという問題があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、巻回作業時における作業員への負担を少なくすることのできるとともに、収納時にスペースを削減することのできる長尺体巻き取り保持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために請求項1に記載の長尺体巻き取り保持装置は、ロープ及びケーブル等の長尺体を巻き取り保持する長尺体巻き取り保持装置において、所定箇所に吊下げ係止するための吊下げ手段を有する本体部と、該本体部に対して回転可能に軸支され長手方向の長さが調整可能なアーム状回転体と、該アーム状回転体の長手方向両端部に設けられた長尺体巻回部と、前記本体部に設けられ該長尺体巻回部に長尺体を案内する長尺体ガイドと、前記アーム状回転体を前記回転させるための回転手段と、を有し、前記アーム状回転体の回転によって前記長尺体ガイドにより案内された長尺体が前記両端の長尺体巻回部に亘って巻着されることを特徴とする。
【0009】
これによれば、回収すべき長尺体を、吊下げ係止されている本体部の長尺体ガイドによりアーム状回転体に案内して、回転手段によりアーム状回転体を回転させることで長尺体を回転体の両端部に設けられている長尺体巻回部に亘って巻着させることができる。すなわち、吊下係止されている装置を用いて巻き取り作業を行うことができるので、作業員等による中腰の作業が要求されることなく、作業の負担を少なくすることができる。また、長尺体を巻き付けている部分は、アーム状の回転体であるので、幅方向への拡がりが小さく、従来の円柱形ドラムと比較して保管スペースを大きく削減することができる。
【0010】
更に、上述のようにアーム状回転体は、長手方向の長さ調整が可能であるので、長尺体巻き取り保持装置の不使用時にはアーム状回転体を縮小させることによって、アーム状回転体の占有スペースをより小さくすることができ、保管スペースをより削減することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の長尺体巻き取り保持装置において、前記回転手段は、前記アーム状回転体に突出形成され操作者により把持され前記回転の駆動力を与えるためのハンドル部として構成されたことを特徴とする。これによれば、工事作業員等の装置の操作者がハンドル部を把持してアーム状回転体を回すだけで、長尺体を長尺体巻回部に容易に巻きつけることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の長尺体巻き取り保持装置において、前記吊下げ係止手段は、送電線が張架される鉄塔の鉄骨に吊下げられる吊下げストラップとして構成されたことを特徴とする。これによれば、本発明にかかる装置を送電線工事において、鉄塔に吊下げることで使用することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3に記載の長尺体巻き取り保持装置において、前記本体部の下端の両側部には、前記吊下げ係止状態で該本体部の振れを防止する振れ防止用ロープを係合するロープ係合部が設けられたことを特徴とする。
【0014】
これによれば、長尺体巻き取り作業中にアーム状回転体を回転させる時に生じるトルクによる本体部の横振れを防止することができる。従って、アーム状回転体が回転されることによる装置全体の揺れを防止することができ、長尺体の巻き取り位置のずれを防ぎ、長尺体の絡まりを阻止することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか1項に記載の長尺体巻き取り保持装置において、前記長尺体ガイドは、前記アーム状回転体の回転軸方向にスライド可能となるように構成され、前記長尺体ガイドのスライドにより、前記長尺体巻回部への前記回転軸方向における長尺体巻回位置を調整することを特徴とする。
【0016】
これによれば、長尺体ガイドをスライドさせて長尺体巻回部上の回転軸方向における長尺体の巻回位置を調節することで、長尺体巻回部の回転軸方向において均一な分布で長尺体を巻き付けることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、回収すべき長尺体を、吊下係止されている長尺体巻き取り保持装置を用いて巻き取ることができるので、作業員等による中腰の作業が要求されることなく、作業の負担を少なくすることができる。また、長尺体を巻き付けている部分は、アーム状の回転体であるので、幅方向への拡がりが小さく、従来の円柱形ドラムと比較して保管スペースを大きく削減することができる。
【0018】
更に、上述のようにアーム状回転体は、長手方向の長さ調整が可能であるので、長尺体巻き取り保持装置の不使用時にはアーム状回転体を縮小させることによって、アーム状回転体の占有スペースをより小さくすることができ、保管スペースをより削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施の形態にかかるロープ巻き取り保持装置の概略斜視図を示している。
【図2】ロープ巻き取り保持装置の分解斜視図を示している。
【図3】ロープ巻き取り回転体の断面構造を示す図である。
【図4】ロープ巻き取り回転体が収縮された状態を示す。
【図5】ロープ巻き取り回転体の回転状態を説明する図である。
【図6】ロープ巻き取り保持装置の鉄塔への設置状態を示す図である。
【図7】ロープ巻回部上の巻回位置の調整について説明する図である。
【図8】ロープの巻き取り状態を説明する図である。
【図9】ロープをロープ巻き取り保持装置から解く状態を示す図である。
【図10】ロープを巻いた状態のままロープ巻き取り保持装置から取外す状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、本実施の形態では、長尺体が鉄塔作業用のロープである場合について説明する。
【0021】
図1は、本実施の形態に係るロープ巻き取り保持装置の概略斜視図を示しており、図2は、ロープ巻き取り保持装置の分離状態を示す説明図である。図示のように、ロープ巻き取り保持装置10は、枠状の本体12と、この枠状本体12に対して矢印A方向に回転自在に取り付けられたアーム状のアーム状回転体14から構成されている。
【0022】
枠状本体12は、上部フレーム部16を有し、この上部フレーム部16には、本体12を鉄塔に吊下げるための吊下げストラップ18が設けられている。また、上部フレーム部16の両端から直交して一対の側部フレーム部20、22が延出して形成されている。この側部フレーム部20、22は、上部フレーム部16の両端から所定長さ水平に延出した位置にあるそれぞれの屈曲部20a、22aにおいて下方に屈曲して延在している。一対の側部フレーム部20、22の屈曲部20a、22aの直下位置には、側部フレーム部20、22間に亘って板状の上部背板24が取り付けられている。この上部背板24には、一方の側部フレーム部22寄りの上部位置において、アーム状回転体14に対して反対側の面にロープ案内用部材26が取り付けられている。このロープ案内用部材26は、その図示しない基端部分で図の一点鎖線の矢印B方向において回転可能となるように上部背板24に対して軸支されており、該基端部分から上方に延在して途中位置で屈曲して枠状本体12の前方側に延出している外管部26aを有している。
【0023】
また、外管部26aには、管内部でスライドする内管部26bが設けられている。そして、内管部26bの先端部分には、該先端部分から延出するようにリング状部材26cが設けられている。なお、このリング状部材26cは、外管部26aに設けられているリング位置調節ボルト28を緩めることによって、内管部26bが外管部26aに対して摺動する構成となっている。従って、リング位置調節ボルト28を緩めて内管部26bを外管部26aから所望の突出量とし、その状態でリング位置調節ボルト28を締めることで内管部26bの位置を固定できる。すなわち、内管部26b(リング状部材26c)の外管部26aに対する突出量を調節することができる。
【0024】
また、一対の側部フレーム部20、22には、その下部位置において側部フレーム部20と側部フレーム部22の間に亘って下部背板32が取り付けられている。この下部背板32のアーム状回転体14側の略中央位置には、アーム状回転体14を螺合させるための螺状部33を有するボルト34が設けられている。
【0025】
更に、一対の側部フレーム部20、22のそれぞれの最下端部には、枠状本体12の横振れを防止するためにその位置を固定する係留ワイヤを係合させるロープ係合部36、38が設けられている。このロープ係合部36、38には、それぞれ、ワイヤを挿通させて係止させるためにワイヤ挿通孔36a、38aが設けられている。なお、このロープ係合部36、38は、アーム状回転体14の枠状本体12に対する回転の際に、係合されたワイヤがアーム状回転体14と接触しないように、アーム状回転体14から離間する方向に傾斜して設けられている。
【0026】
一方、アーム状回転体14は、複数の管で構成されている伸縮部39と、この伸縮部39の両端に設けられているロープ巻き付け部40−1、40−2により構成されている。伸縮部39は、中央管41と、この中央管41と同じ長さで若干小さい径を有しこの中央管41の内部でスライドする第1内管42と、この第1内管42とほぼ同じ長さで若干小さい径を有し第1内管42の内部でスライドする第2内管44により構成されており、これら第1内管42、第2内管44に、それぞれ、上述のロープ巻き付け部40−1、40−2が設けられている。
【0027】
本実施の形態では、この伸縮部39は、中央管41の内部において、第1内管42及び第2内管44をスライドさせてこれら2個の管を重ねた状態で中央管41に収容されることで、アーム状回転体14を縮めてコンパクト化することができる。なお、図3は、伸縮部39の縮めた状態におけるロープ巻き取り保持装置10を示す図である。図示のように、伸縮部39の長さが収縮するので、ロープ巻き取り保持装置10の不使用時においては、アーム状回転体14を縮小させることによって、装置10全体としての占有スペースをより小さくすることができる。
【0028】
図4は、アーム状回転体14を枠状本体12に取り付けた状態における伸縮部39の中央部分の概略断面構造を示す図である。図示のように、中央管41は、枠状本体12のボルト34の螺合部36に螺合された固定ナット46により締め付けられ、下部背板32に設けられたベアリング48に押し付けられることにより下部背板32に支持される。なお、このように、中央管41が下部背板32に設けられたベアリング48に支持されることで、アーム状回転体14のA方向(図1参照)の回転が許容されている。
【0029】
また、この固定ナット46には、中央管41に接触する側の面に、第1の段差部46aが形成されている。従って、この第1の段差部46aによって、中央管41内部の第1内管42が締め付けられる。また、第1の段差部46aにおける第1内管42側の面には、その第2の段差部46bが形成されている。従って、この第2の段差部46bによって第1内管42内部の第2内管44が締め付けられる。なお、本実施の形態では、この固定ナット46の緩みを防止する目的で、固定ナット46をロックするロックナット50が設けられた、いわゆるダブルナット構造をとっている。また、第2内管44内部におけるボルト36の部分には、スペーサ47が設けられている。
【0030】
更に、中央管41の一方の側面部41aには、ピン取り付け片52が設けられており、このピン取り付け片52には、アーム状回転体14の枠状本体12に対する回転を制止する回転制止ピン54が着脱自在に取り付けられている。従って、ロープの巻き取り作業を行う時、すなわち、アーム状回転体14を回転させる必要がある場合には、この回転制止ピン54を取り付け片52から取外し、一方、ロープ巻き取り保持装置10の移送時などには回転制止ピン54を取り付けてアーム状回転体14の回転を制止する。なお、本実施の形態では、中央管41の一方の側面部41a側のみに回転制止ピン54を取り付けるようにしているが、この回転制止ピン54を他方の側面部にも取り付けるようにして、アーム状回転体14の回転をより確実に制止するようにしても良い。
【0031】
一方、ロープ巻き付け部40−1が設けられている第1内管42の巻き付け部40−1寄り位置には、アーム状回転体14を枠状本体12に対して回転させるためのハンドル56が枠状本体12の逆側(装置正面側)に突出して形成されている。これによれば、作業員等の装置の操作者は、このハンドル56を把持して回転駆動力を与えるだけで、アーム状回転体14を容易に回転させることができる。
【0032】
図5には、アーム状回転体14が回転する様子を概略的に示す。図示のように、作業員等がハンドル56を把持して、矢印A方向に駆動力を与えると、アーム状回転体14は矢印A方向に回転する。また、当然、逆向きの回転力を与えることでアーム状回転体14は矢印A方向と反対方向に回転する。
【0033】
なお、ハンドル56はロープ巻き付け部40−2が設けられている第2内管44に設けても良い。また、本実施の形態では、このハンドル56は、アーム状回転体14の収縮状態において、中央管41に設けられた切欠き58に収容される。
【0034】
一方、第1内管42及び第2内管44に設けられているロープ巻き付け部40−1、40−2は、それぞれロープを巻きつける部分であるロープ巻き付け面60−1、60−2を有している。そして、このロープ巻き付け面60−1における枠状本体12の側端部分には、手前側ロープガイド壁部62a−1が立設され、他方の側端部分には、奥側ロープガイド壁部62b−1が立設されている。なお、ロープ巻き付け面60−2に対しても、ロープ巻き付け面60−1と同様に手前側ロープガイド壁部62a−2、及び奥側ロープガイド壁部62b−2が立設されている。
【0035】
本実施の形態では、これらロープガイド壁部62a−1、62b−1、62a−2、62b−2は、それぞれ正面視で略円弧形状を有しており、3個の開口部を有している。また、手前側ロープガイド壁部62a−1及び62a−2には、これら壁部62a−1、62a−2における中央部分の開口64を通ってきたロープを引掛けるロープ引掛け部66が設けられている。
【0036】
上記構成を有する本実施の形態におけるロープ巻き取り保持装置10の設置状況について説明する。
【0037】
図6は、送電線工事を行なう鉄塔100において、本実施の形態にかかる装置を使用している状態を示した説明図である。図示のように、ロープ巻き取り保持装置10は、枠状本体12に設けられた吊下げストラップ18によって鉄塔100に吊下げられる。特に、本実施の形態では、地上102にいる作業員が作業をするために好適位置に位置するロープ巻き取り保持装置10−1と、地上102から若干高い位置にいる作業員が作業をするための好適位置に位置するロープ巻き取り保持装置10−2が吊下げ設置されている。
【0038】
また、これらロープ巻き取り保持装置10−1、10−2は、枠状本体12の振れを防止するために、ロープ係合部36、38にそれぞれ振れ止めロープ68の一端が取り付けられており、この振れ止めロープ68の他端は、鉄塔100に巻き付けるなどして固着されている。このように、枠状本体12を振れ止めロープ68で支持することによって、後述するロープRの巻き取り作業中にアーム状回転体14を回転させる時に生じるトルクによるロープ巻き取り保持装置10の揺れを防止して、ロープRの巻き取り位置のずれを防ぎ、ロープRの絡まりを阻止することができる。
【0039】
以下、上述のように設置されたロープ巻き取り保持装置10によるロープRの巻き取り、及びそれを解く作業について説明する。
【0040】
図7は、ロープRを巻きつける際のロープ巻き付け部40における巻き付け位置の調節方法を説明する説明図であり、図8は、アーム状回転体14にロープRが巻き付いている状態を示す図である。
【0041】
先ず、図7に示すように、リング状部材26cをロープガイド壁部62−a1寄りの上方に位置するようにスライドさせる。なお、リング状部材26cをスライドさせた位置を仮想線で示す。そして、作業員は、図示しない鉄塔100の上方にいる作業員から送られるロープRをリング状部材26c、開口30、及び中央部開口64−1を通して案内し、ロープ引掛け部66−1に引掛ける。なお、ロープRをロープ引掛け部66−1に引掛けた後に、リング状部材26cをスライドさせても良い。
【0042】
次に、作業員等がハンドル56を把持して力を加えることによりアーム状回転体14を矢印A方向に回転させる。このようにアーム状回転体14を回転させると、ロープRはロープ引掛け部66−1に引掛けられた状態で引っ張られ、ロープ巻き付け部40−1のロープガイド壁部62a―1寄り位置から巻きつけられはじめ、反対側のロープ巻き付け部40−2にも巻きつけられる。
【0043】
その後、リング状部材26cをロープガイド壁部62b−1側にスライドさせて、ロープ巻回位置を調節しながらアーム状回転体14を回転させてロープRの巻き付けを行なうことによって、図8に示すように、ロープRが、ロープ巻き付け部40−1とロープ巻き付け部40−2を跨いで巻着する状態となる。
【0044】
上述のように、送電線から回収すべきロープRを、鉄塔100に吊下げ係止されている枠状本体12に設けられているアーム状回転体14を回転させるだけでロープRの巻き取りを行うことができるので、長尺のロープを巻き取る際における中腰の作業等の煩雑な作業が要求されることなく、工事作業員への負担を大きく減らすことができる。
【0045】
更に、図9には、ロープRを解く作業を説明する図である。図示のように、ロープ案内部材26を枠状本体12の側方に位置するように回転させ、ロープ巻き付け部40−1からロープRの端部を図のD方向に引っ張ることによって、アーム状回転体14がロープRの巻き取りの際の回転方向(上記A方向)と反対のE方向に回転し、ロープが解ける。従って、アーム状回転体14に巻き取り保持していたロープRの再度の使用も容易に行うことができる。なお、図に示すようにリング状部材26cをスライドさせることで、このスライド方向に沿ったロープの取り出し方向を調整することができる。
【0046】
一方、図10には、アーム状回転体14からロープRを巻回状態のまま取外す様子を示した図である。例えば、作業員がロープRを巻かれた状態のまま持ち運ぶ必要がある場合等において、図示のように、アーム状回転体14の第1内管42及び第2内管44をスライドさせて伸縮部39を収縮させることによって、両端のロープ巻きつけ部40−1、40−2によるロープRへの拘束力が弱まり、ロープRを巻かれた状態のまま容易に取外して、絡まることなく回収することができる。
【0047】
そして、本実施の形態におけるロープ巻き取り保持装置10を倉庫等に保管して置く場合においては、枠状本体12とアーム状回転体14を分離して、複数の枠状本体12、及び複数のアーム状回転体14をそれぞれ重ねて保管場所に保管することによって、従来の円柱形ドラムよりも小さなスペースで保管することができる。
【0048】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、本実施の形態では、長尺体としてロープRを巻き取り保持する場合を説明したが、これに限られることなく、例えば、光ファイバー等の通信ケーブルの巻き取り保持に使用しても良い。
【0049】
特に、このように光ファイバーのような強度の低いケーブルを巻き取る場合においては、上述の案内部材26のリング状部材26cの輪の内周面部分に、ケーブルの巻き取り及び引き出し時の移動方向に沿って回転可能な金車状のローラ回転体を複数形成することが好ましい。これにより、強度の低いケーブルの巻き取り及び引き出し時における、ケーブルとリング部材26cの内周面との接触抵抗を大幅に軽減することができる。
【0050】
また、上記実施の形態においては、上述の伸縮部39の伸縮、すなわち、アーム状回転体14の長さ調整をロープの取外しの際に行ったが、これに限られるものではなく、回収すべきロープの長尺に合わせて伸縮部39を伸縮させ、アーム状回転体14の長さを調節するようにしても良い。
【符号の説明】
【0051】
10 ロープ巻き取り保持装置(長尺体巻き取り保持装置)
12 枠状本体(本体部)
14 アーム状回転体
18 吊下げベルト(吊下げ係止手段)
26c リング状部材(長尺体ガイド)
40 ロープ巻き付け部(長尺体巻回部)
56 ハンドル(回転手段)
R ロープ(長尺体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロープ及びケーブル等の長尺体を巻き取り保持する長尺体巻き取り保持装置において、
所定箇所に吊下げ係止するための吊下げ手段を有する本体部と、
該本体部に対して回転可能に軸支され長手方向の長さが調整可能なアーム状回転体と、
該アーム状回転体の長手方向両端部に設けられた長尺体巻回部と、
前記本体部に設けられ該長尺体巻回部に長尺体を案内する長尺体ガイドと、
前記アーム状回転体を前記回転させるための回転手段と、
を有し、
前記アーム状回転体の回転によって前記長尺体ガイドにより案内された長尺体が前記両端の長尺体巻回部に亘って巻着されることを特徴とする長尺体巻き取り保持装置。
【請求項2】
前記回転手段は、
前記アーム状回転体に突出形成され、操作者により把持され前記回転の駆動力を与えるためのハンドル部として構成されたことを特徴とする請求項1に記載の長尺体巻き取り保持装置。
【請求項3】
前記吊下げ係止手段は、
送電線が張架される鉄塔の鉄骨に吊下げられる吊下げストラップとして構成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の長尺体巻き取り保持装置。
【請求項4】
前記本体部の下端の両側部には、
前記吊下げ係止状態で該本体部の振れを防止する振れ防止用ロープを係合するロープ係合部が設けられたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の長尺体巻き取り保持装置。
【請求項5】
前記長尺体ガイドは、前記アーム状回転体の回転軸方向にスライド可能となるように構成され、
前記長尺体ガイドのスライドにより、前記長尺体巻回部への前記回転軸方向における長尺体巻回位置を調整することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の長尺体巻き取り保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−208811(P2010−208811A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57425(P2009−57425)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(591080678)株式会社中電工 (64)
【Fターム(参考)】