説明

長尺部材の梱包方法および梱包体

【課題】ほぼ直線状である本体部分12の両端に同じ側に屈曲された曲がり部13を持つ形状の長尺部材10を、形状も小さくかつより少ない数の支持部材30でもって、安定した状態に支持しかつ梱包した梱包体Aを提供する。
【解決手段】上記の長尺部材10における本体部分12の2箇所に曲がり部13の屈曲方向に延出する2つの支持補助板20、20を設ける。そして、2つの支持補助板20、20を支持部材30によって支持させた状態で梱包する。2個の支持部材30でもって、ほぼ直線状である本体部分12の両端に同じ側に屈曲された曲がり部13を持つ形状の長尺部材10を、パレット40上に安定した姿勢で固定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は長尺部材、特にほぼ直線状である本体部分の両端に同じ側に屈曲された曲がり部を持つ長尺部材を梱包する梱包方法とその梱包体に関する。
【背景技術】
【0002】
長尺状の機械部品等をパレットに載せて搬送するようなときに、緩衝材としての機能を果たす発泡樹脂製の支持部材によってその両端部を支持した状態として梱包し搬送することが行われている(特許文献1、2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−219791号公報
【特許文献2】特開2010−76783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
梱包品がほぼ直線状の機械部品の場合には、その両端を、必要とされる最小限の大きさの支持部材で部分的に支持することで、安定した梱包体とすることができる。しかし、図5(a)に示すように、自動車のバンパーのようなほぼ直線状である本体部分2と、その両端に同じ側(方向)に屈曲された曲がり部3、3を持つ形状の長尺部材1の場合には、図5(b)に示すように、重心Wは、本体部分2よりも曲がり部3が屈曲する方向に偏位した位置にあることから、曲がり部3、3の先端部分のみを支持部材4、4で支持した姿勢では、長尺部材1は矢印P1方向、すなわち図で時計方向に回転しがちとなり、また、ほぼ直線状の本体部分2のみを支持部材5で支持した姿勢では、長尺部材1は矢印P2方向、すなわち図で反時計方向に回転しがちとなる。そのために、曲がり部3、3の先端部分2箇所と本体部分2の中央部1箇所との計3箇所を支持部材によって支持した状態で梱包体とすることで、搬送中での梱包品の姿勢の安定化を図るのが通常である。
【0005】
もちろん、曲がり部3、3の全体を支持できる長さを持つ支持部材を2個用いることで、または長尺部材1の全体を支持できる平面積の広い支持部材を1個用いることで、ほぼ直線状である本体部分2の両端に同じ側に屈曲された曲がり部3、3を持つ長尺部材1を安定的に支持することができる。しかし、いずれの場合も、支持部材は大型のものにならざるを得ず、多くの材料を必要とし、廃棄するときの環境に対する負荷が大きくなるのを避けられない。さらに、材料費も高くなり、また、非使用時での広い保管スペースも必要となる。
【0006】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたものであり、ほぼ直線状である本体部分の両端に同じ側に屈曲された曲がり部を持つ形状の長尺部材を、形状も小さくかつより少ない数の支持部材でもって、安定した状態に支持しかつ梱包することができるようにし、それにより廃棄時での環境負荷も低減することができる、より改良された梱包方法と梱包体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による梱包方法は、ほぼ直線状である本体部分の両端に同じ側に屈曲された曲がり部を持つ長尺部材を梱包する梱包方法であって、前記本体部分の2箇所に前記曲がり部の屈曲方向に延出された2つの支持補助板を装着し、前記2つの支持補助板を支持部材によって支持させた状態で梱包することを特徴とする。
【0008】
また、本発明による梱包体は、ほぼ直線状である本体部分の両端に同じ側に屈曲された曲がり部を持つ長尺部材の梱包体であって、前記長尺部材は前記本体部分の2箇所に前記曲がり部の屈曲方向に延出された2つの支持補助板を有しており、前記2つの支持補助板が支持部材によって支持された状態で梱包されていることを特徴とする。
【0009】
本発明による梱包方法および梱包体では、長尺部材の本体部分の両端の2箇所に形成された設けた曲がり部の屈曲方向に延出する2つの支持補助板を支持部材で支持するようにしたので、従来の3箇所で支持する場合と比較して、支持部材の数を1つだけ減数することが可能となる。そのために、支持部材に要する材料量の低減が可能であり、廃棄時での環境負荷も低減できる。
【0010】
本発明による梱包体において、前記支持補助板の幅および長さは、支持補助板を支持する支持部材が、梱包する長尺部材の重量によって部分的に潰れたり破損したりしないだけの荷重分散を支持部材に与えることのできる支持面積が得られることを条件に、適宜設定する。好ましくは、支持補助板の長さは、前記長尺部材のほぼ直線状である本体部分から少なくともその重心位置までに達する長さとされ、支持補助板の幅は、その長さにおいて前記した荷重分散に必要な平面積が得られるだけの幅とされる。それにより、少ない材料からなる支持部材でもって、前記長尺部材を不用意に回動しない状態で安定的に支持することができる。
【0011】
本発明による梱包方法および梱包体において、前記支持補助板は、梱包時に長尺部材の本体部分にねじ止めあるいは溶着等によって固定したものであってもよく、長尺部材が部材の一部としてその本体部分の適所に支持補助板として機能することのできる部材を予め備えている場合には、その部材をそのまま用いることもできる。支持補助板を梱包時に固定する場合には、2つの支持補助板は、その本体部分の中心位置から対称の位置に固定することが好ましい。支持補助板として機能することのできる2個以上の部材を予め備えている長尺部材を梱包する場合には、その中から任意の2つの部材を支持補助板として選択し、梱包すればよい。
【0012】
本発明による梱包体は、例えばパレットの上に、前記長尺部材と前記支持部材との組み合わせ体が一段だけ配置されたものでもよく、多段に積層されたものでもよい。多段に積層する場合には、必要に応じて、下位の支持部材と上位の支持部材のとの間に、第2の支持部材が介装される。いずれの場合であっても、梱包品である前記長尺部材に接触しないようにして前記長尺部材と前記支持部材との組み合わせ体の全体に梱包用の止め付けバンドを引き回し、その両端をパレットに固定することで、安定した状態の梱包体が得られる。好ましくは、最上位の支持部材あるいは第2の支持部材の頂部を通るようにして止め付けバンドを引き回す。その際に、止め付けバンドが前記長尺部材に接触するのをより確実に阻止できるように、最上位の支持部材あるいは第2の支持部材の上にガイド部材を配置して、その上を止め付けバンドが通るようにするのが好ましい。
【0013】
本発明による梱包体において、梱包品としての前記長尺部材をその長手方向と平行に複数個並列させた状態で、梱包体とすることもできる。その場合には、支持部材として、並列した前記長尺部材の数に応じた数の前記支持補助板支持部を備えた長尺状の支持部材が用いられる。
【0014】
本発明において、支持部材は梱包品である前記長尺部材に対して適宜の緩衝性を備え、かつ所要の機械的強度を有する任意の材料により作ることができる。好ましくは、成形の容易性や軽量性の観点から、発泡樹脂成形品が好適であり、樹脂材料としては、本発明において、緩衝性を備えた部品受け部材は、所要の緩衝性と機械的強度を備えることを条件に任意の材料で作ることができる。好ましくは、成形性および軽量性の観点から発泡樹脂成形品であり、より好ましくは型内発泡成形品である。より好ましくは熱可塑性樹脂の発泡成形品であり、熱可塑性樹脂には、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリカーボネート系樹脂、ポリ乳酸系樹脂などが挙げられる。なかでも、ポリスチレンとポリエチレンとを含む複合樹脂を用いることが好ましい。発泡体の倍率は、梱包しようとする長尺部材の重量や形状等を勘案して適宜設定すればよいが、緩衝性がよく、軽量で経済的である点から、好ましくは40〜60倍程度、より好ましくは50倍(0.020g/L)程度である。
【0015】
本発明において、梱包品としての「ほぼ直線状である本体部分の両端に同じ側に屈曲された曲がり部を持つ長尺部材」は特に限定されないが、例として、自動車のバンパーを挙げることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ほぼ直線状である本体部分の両端に同じ側に屈曲された曲がり部を持つ形状の長尺部材を、形状も小さくかつより少ない数の支持部材でもって、安定した状態に支持しかつ梱包することができる。それにより、支持部材を廃棄するときの環境負荷を低減することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明において梱包の対象となる梱包品の一例を説明するための図。
【図2】本発明による梱包方法と梱包材の一例を説明するための図であり、図2(a)は全体の斜視図、図2(b)は図2(a)のb−b線での断面図。
【図3】支持部材の他の例を説明するための図。
【図4】図3に示した支持部材を用いた梱包体を説明するための図。
【図5】ほぼ直線状である本体部分の両端に同じ側に屈曲された曲がり部を持つ長尺部材を梱包するときの一般的な態様を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の一実施の形態を説明する。
図1は、本発明による梱包方法および梱包体において梱包の対象となる長尺部材の一例を示している。前記長尺部材10は、基本的には図5で説明した形態の長尺部材1と同じであり、長さL1であるほぼ直線状の本体部分12と、その両端に同じ側(方向)に屈曲する同じ長さL2の曲がり部13、13を持つ。この例において、曲がり部13、13は、本体部分12に対してほぼ90度の角度で屈曲している。従って、この長尺部材10の重心Wの位置は、本体部分12の長手方向の中心Pを通る本体部分12に直交する線上であって、曲がり部13の重量に応じた分だけ本体部分12から曲がり部13側の屈曲する方向に偏位した箇所となる(図2(b)も参照)。
【0019】
上記の長尺部材10を梱包するに際しては、本体部分12の中心Pからそれぞれ所定距離S、Sだけ離れた位置に、2枚の平板状をなす支持補助板20、20を取り付ける。取り付けの態様に制限はない。長尺部材10を実際に使用するときに支持補助板20、20の存在が障害とならない場合には、溶着等によって固着してしまってもよい。使用時に障害物となる場合には、ねじ止め手段や嵌め込み手段などを用いて、支持補助板20、20を着脱自在に取り付ける。
【0020】
支持補助板20、20の長さは、前記した長尺部材10の重心Wの位置を超える長さであることが望ましい。また、支持補助板20、20の横幅は、後記する支持部材30が長尺部材10からの重量によって部分的に潰れたり破損しないだけ支持面積が得られるように、その長さとの関係で、適宜設定する。長尺部材10が、その本体部分12に、支持補助板20、20に相当する部材を予め備えている場合には、別途支持補助板20、20を取り付けることなく、予め備えている部材を支持補助板20、20として用いることができる。
【0021】
図2は、図1に示した長尺部材10を支持部材30を用いて梱包体Aとした状態を示している。この例において、支持部材30は、ポリスチレンとポリエチレンを含む複合樹脂による発泡倍率50倍(0.020g/L)の発泡樹脂一体成形品であり、底板31と前後の縦板32、32とで囲まれた、上方が開放した空間33を有している。空間33は前記した支持補助板20を収容するためのものであり、空間33の底面の大きさは支持補助板20の大きさとほぼ等しいか、それよりもわずかに大きくされている。また、空間33の高さ、すなわち縦板32の高さは、長尺部材10の前記本体部分12の縦幅に支持部材30の厚みを加えた長さとほぼ等しいか、それよりもわずかに大きくされている。
【0022】
梱包に当たっては、パレット40の上に、2個の前記した支持部材30を置く。そして、それぞれの支持部材30の前記空間33、33内に、長尺部材10の支持補助板20が収容されるようにして配置する。それにより、図2に示すように、長尺部材10は、パレット40の表面から支持部材30の底板31の厚みだけ離れた状態で、安定した姿勢で保持される。その後、支持部材30の縦板32、32の上端面を通るようにして、パレット40との間で止め付けバンド41を掛け渡すことで、梱包体Aとされる。
【0023】
上記のように、本発明による梱包体Aでは、長さL1であるほぼ直線状の本体部分12と、その両端に同じ側に屈曲する同じ長さL2の左右の曲がり部13、13を持つ長尺部材10を、2個の支持部材30、30のみで、安定した状態でパレット40の上に配置しかつ固定することができる。また、使用する支持部材30は、長尺部材10に取り付けた(あるいは長尺部材10が予め備える)支持補助板20(あるいは相当体)を収容できる大きさの空間33を備えることのできる大きさであればよく、所要の機械的な強さを備えることを条件に小型化が可能である。従って、本発明による梱包体Aでは、従来の梱包体と比較して、支持部材30に要する材料(例えば、発泡樹脂材料)を少なくすることができる。
【0024】
図3、図4は、支持部材の他の形態とそれを用いた梱包体を示している。この支持部材30Aは、複数個(図示のものでは5個)の前記空間33を一定の間隔をおいて有している点で、図2に示した支持部材30と相違している。この形態の支持部材30Aを用いることにより、複数個(図示のものでは5個)の長尺部材10を同時にかつ安定的に梱包した梱包体Aを容易に得ることができる。なお、この態様の支持部材30Aにおいては、隣接する長尺部材10の前記曲がり部13、13同士が干渉しないようにすることが必要となる。
【0025】
なお、本発明による梱包方法および梱包体において、梱包の対象となる長尺部材10によっては、左右の曲がり部13、13の大きさや形状が異なっている場合がある。また、本体部分12も長手方向で形状が異なっている場合もある。そのような場合には、長尺部材10の重心Wの位置を長尺部材10ごとに演算して求め、少なくともその重心位置を挟むようにして、2つの支持補助板20、20を取り付ける。その場合に、2つの支持補助板20、20の取り付け位置との関係で、それぞれが負担する荷重の大きさが異なってくる場合には、それに応じて、単位面積あたりの荷重が等しくなるように2つの支持補助板20、20を異なった面積のものとすることが好ましい。また、支持部材30においても、支持補助板20の面積に応じて、その空間33の底面の大きさを適宜設定することで、少ない材料で所期の目的を達成できる支持部材30とすることができる。
【0026】
また、図1に示した長尺部材10では、本体部分12の下縁側に2つの支持補助板20、20を取り付けたが、上縁側に取り付けてもよい。場合によっては、一方を下縁側、他方を上縁側に取り付けてもよい。長尺部材10が曲がり部13、13側に延出する多数の部材を予め有している形状のものである場合には、そこから適宜の2個を選択して支持補助板20、20として用いるようにしてもよい。いずれにしても、その支持補助板20の位置および形状に応じて、支持部材30の前記空間33の大きさと形状、およびパレット40上での配置位置を設定する。さらに、左右の曲がり部13、13の形状は任意であり、図1に示すような板状体でなく曲率を備えた形状であってもよく、本体部分12に対しても弧を含む任意の角度で屈曲していてもよい。
【0027】
図2に示した形状の梱包体Aにおいて、梱包された長尺部材10の上方がフリーになっていることから、搬送中の振動等で長尺部材10が上下方向に不規則に移動することが起こり得る。特に図示しないが、それを回避するために、長尺部材10の上方側を押さえ込むことのできる適宜形状の第2の支持部材を用いるようにしてもよい。第2の支持部材の上を通るようにして止め付けバンド41を掛け渡すことで、一層安定した状態の梱包体が得られる。
【0028】
また、図2、図4では、長尺部材10が1段である梱包体を示したが、下位の支持部材30の上に、上位の支持部材30を必要な場合には前記第2の支持部材とともに積み上げることで、長尺部材10が2段以上に積層された梱包体とすることもできる。
【符号の説明】
【0029】
A…梱包体、
10…長尺部材、
12…ほぼ直線状の本体部分、
13…左右の曲がり部、
20…支持補助板、
30…支持部材、
31…支持部材の底板、
32…支持部材の縦板、
33…支持補助板を収容するための支持部材の空間、
40…パレット、
41…止め付けバンド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ほぼ直線状である本体部分の両端に同じ側に屈曲された曲がり部を持つ長尺部材を梱包する梱包方法であって、
前記本体部分の2箇所に前記曲がり部の屈曲方向に延出された2つの支持補助板を装着し、前記2つの支持補助板を支持部材によって支持させた状態で梱包することを特徴とする両端に曲がり部を持つ長尺部材の梱包方法。
【請求項2】
ほぼ直線状である本体部分の両端に同じ側に屈曲された曲がり部を持つ長尺部材の梱包体であって、
前記長尺部材は前記本体部分の2箇所に前記曲がり部の屈曲方向に延出された2つの支持補助板を有しており、前記2つの支持補助板が支持部材によって支持された状態で梱包されていることを特徴とする両端に曲がり部を持つ長尺部材の梱包体。
【請求項3】
前記長尺部材と前記支持部材との組み合わせ体が必要な場合には第2の支持部材を介装して多段に積層されていることを特徴とする請求項2に記載の両端に曲がり部を持つ長尺部材の梱包体。
【請求項4】
前記長尺部材が自動車のバンパーであることを特徴とする請求項2または3に記載の両端に曲がり部を持つ長尺部材の梱包体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−62097(P2012−62097A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208761(P2010−208761)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】