説明

長尺部材束の結束装置

【課題】複数の長尺部材を無駄な隙間なく整然と配列された状態の長尺部材束として結束し、かつ装置の外形寸法及び重量を小さいものにしつつ製造コストを抑制する。
【解決手段】結束装置10では、掛止プレート18により掛止リング54が掛止された状態で、締付レバー20に形成された突当支点部60がパイプ束14の外周面に当接しつつ、連結軸40を中心として締付レバー20を、解放位置からバンド部材16にパイプ束14が結束可能となる十分な張力を発生させる結束位置へ揺動可能とされることにより、多数本のパイプ12が水平方向及び高さ方向に沿って配列されて構成されたパイプ束14を十分に大きい張力により確実に結束できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプ材、長尺角材等の一方向へそれぞれ細長く形成された複数本の長尺部材が束ねられた長尺部材束に外周側から巻き付けられ、この長尺部材束を締付けて結束する長尺部材束の結束装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場等では、例えば、足場用の仮設パイプ、配管用パイプ、長尺の鉄筋材、木材等の長尺部材が多数使用されると共に、多数の長尺部材が日常的に外部の資材置場等から搬入され、又は外部の資材置場等へ搬出される。特許文献1には、多数の仮設パイプを建設現場、資材置場等で保管し、又は運搬するために用いられる仮設パイプ収納具が示されている。
【0003】
特許文献1記載の仮設パイプ収納具(以下「収納具」という。)は、上方へ向かって開いた略コ字状の受枠と、この受枠の一端部に回動可能に連結された押え桟と、この押え桟の先端部を受枠の他端部に連結固定する固定装置と、を備えている。収納具では、受枠の内側に多数本の仮設パイプを水平方向及び垂直方向に沿って2次元的に配列された状態としつつ収納した後、押え桟により受枠の上端側を閉止し、押え桟の先端部を固定装置により受枠の他端部に連結固定する。これにより、多数本の仮設パイプを水平方向及び垂直方向に沿って配列した状態に安定的に保持できると共に、この収納具の上側には、仮設パイプを収納した他の収納具を更に複数段積載できるので、仮設パイプ等を保管するための資材置場を効率的に使用でき、かつ多数本の仮設パイプを収納具と共に運搬する作業が容易になる。
【特許文献1】特開平10−167315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたような収納具は、仮設パイプ等の長尺部材からの荷重に耐えるため高い強度が必要なことから、受枠等の構成部材の殆どが金属を素材として形成され、長尺部材からの荷重を受ける受枠等については、溶接により組立てられている。このため、このような構造の収納具は、それ自体の重量及び外形寸法が大きくなると共に、製造単価が高いものになる。
【0005】
また、特許文献1に記載されたような収納具は外形寸法が大きいので、この収納具を用いて多数の長尺部材を保管した場合には、保管スペースを十分に高い効率で使用できないという問題も生じる。さらに、特許文献1に記載されたような収納具には、予め決められた収納本数(例えば、50本、100本)のみの仮設パイプが収納可能とされており、パイプの収納本数を簡単に増減できない。例えば、予め決められた収納本数よりも少ない仮設パイプを収納具に収納すると、仮設パイプと押え桟との間に無駄な隙間できてしまい、収納具内でパイプが安定しなくなる。
本発明の目的は、上記事実を考慮し、複数の長尺部材を無駄な隙間なく整然と配列された状態の長尺部材束として結束でき、しかも装置の外形寸法及び重量を小さいものにしつつ、製造コストも抑制できる長尺部材束の結束装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る結束装置は、一方向へ細長くそれぞれ形成された複数本の長尺部材が束ねられた長尺部材束に外周側から巻き付けられ、該長尺部材束を締付けて結束する長尺部材束の結束装置であって、長尺部材束の外周長に対応する長さを有し、該長尺部材束に外周側から巻き付けられる巻付部材と、前記巻付部材の長手方向一端部に連結された第1の掛止部材と、前記巻付部材の長手方向他端部に回動可能に連結される連結軸が基端部に配置されると共に、前記基端部から前記連結軸を中心とする径方向に沿って外周側へ延出する取手部が形成された締付レバーと、前記締付レバーにおける前記連結軸の外周側に配置され、前記基端部と前記取手部との間に延在するスライド溝と、前記スライド溝にスライド可能になるように連結され、前記第1の掛止部材により掛止されると、該第1の掛止部材に連結される第2の掛止部材と、前記締付レバーにおける基端側の端面部に形成され、長尺部材束の外周面に当接しつつ、前記連結軸を中心として前記締付レバーを、前記第1の掛止部材と前記第2の掛止部材とが掛止された状態で、前記巻付部材に長尺部材束に対する結束る張力を発生させる結束位置と、前記第1の掛止部材と前記第2の掛止部材とを掛止及び離脱可能とする解放位置との間で揺動可能とする突当支点部と、を有することを特徴とする。
【0007】
また本発明の請求項2に係る結束装置は、請求項1記載の結束装置において、前記取手部に、前記締付レバーが前記結束位置にある状態で、前記巻付部材に対して連結及び離脱可能され、前記巻付部材に連結されると、前記締付レバーを前記結束位置に拘束するストッパ部材を設けたことを特徴とする。
また本発明の請求項3に係る結束装置は、請求項1又は2記載の結束装置において、前記突当支点部を、前記連結軸を略中心として円弧状に湾曲した湾曲面により形成したことを特徴とする。
また本発明の請求項4に係る結束装置は、請求項1乃至3の何れか1項記載の結束装置において、前記取手部の先端部に、棒状工具が連結及び離脱可能とされた工具連結部を設け、該工具連結部に連結された棒状工具を介して前記締付レバーに揺動方向の操作力を伝達可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上説明した本発明に係る結束装置によれば、複数の長尺部材を無駄な隙間なく整然と配列された状態の長尺部材束として結束でき、しかも装置の外形寸法及び重量を小さいものにしつつ、製造コストも抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係るパイプ束の結束装置について図面を参照しながら説明する。
図1には本発明の実施形態に係るパイプ束の結束装置が示され、図2には図1に示されるパイプ束の結束装置及び、この結束装置により結束されるパイプ束が示されている。
本実施形態に係るパイプ束の結束装置(以下「結束装置」という。)10は、一方向へ細長くそれぞれ形成された複数本のパイプ12が束ねられたパイプ束14に外周側から巻き付けられ、このパイプ束14を外周側から締付けて結束するものである。
【0010】
パイプ束14は、図2に示されるように、それぞれ同一外径を有する多数本(本実施形態では、100本)のパイプ12からなり、複数本のパイプ12が略水平方向に沿って互いに接するように直線的に配列されると共に、この直線的に配列された複数本のパイプ12が高さ方向に沿って複数段(本実施形態では、10段)、互いに接するように積み重ねられて構成されている。パイプ束14は、その長手方向外側から見て、高さ方向に沿って若干扁平となった略六角形の断面形状を有している。
【0011】
上記のようなパイプ束14を構成する際には、上方へ向かって開いた略コ字状の受枠(図示省略)の内側に多数本のパイプ12を順次収納しつつ、これらのパイプ12を水平方向及び高さ方向に沿って配列して行く。このとき、受枠として、水平方向に沿った内幅が上方へ向かってテーパ状に広がるものを用いることで、図2に示されるような略六角形のパイプ束14を簡単に構成でき、また内幅が高さ方向に沿って一定のものを用いれば、略矩形状のパイプ束を簡単に構成できる。
【0012】
図1に示されるように、結束装置10は、薄肉の長尺帯状に形成された巻付部材であるバンド部材16と、このバンド部材16の長手方向一端部に固定された第1の掛止部材である掛止プレート18と、バンド部材16の長手方向他端部に連結された締付レバー20とを備えている。バンド部材16は、ステンレススティール等の錆が生じ難く、高い耐張力を有する金属材料により形成されている。ここで、バンド部材16は、その長さが結束対象となるパイプ束14の外周長に対応するものになるように予め調整されている。
【0013】
掛止プレート18は、ステンレススティール等の錆が生じ難く、高い剛性力を有する略長方形の金属板を略J字状に曲げ加工することにより成形されている。掛止プレート18には、図1(B)に示されるように、その一端側に略U字状に湾曲したフック部22が形成されると共に、他端部に長手直角方向に沿って細長いスリット状の挿通孔24が穿設されている。
【0014】
結束装置10では、バンド部材16の一端側が掛止プレート18の挿通孔24に挿入されてU字状に折り返され、バンド部材16の一端側が2層に重ねられた状態とされる。この状態で、2層に重ねられたバンド部材16の一端側に金属製のかしめ金具26が外側から嵌められ、このかしめ金具26が、専用のかしめ工具によりバンド部材16の厚さ方向及び幅方向へそれぞれ、かしめられることにより、バンド部材16の一端側が挿通孔24を介して掛止プレート18の基端部に固定されている。
【0015】
締付レバー20は、全体として一方向へ細長い略角柱状に形成されたレバー本体28を備えている。レバー本体28は、ステンレススティール等の錆が生じ難く、高い剛性力を有する略長方形の金属板をプレス等により曲げ加工することにより成形されている。レバー本体28には、略長方形の背板部30、この背板部30の幅方向両端部からそれぞれパイプ束14側へ直角に屈曲された一対の側板部32及び、一対の側板部32におけるレバー先端側の部分から幅方向内側へそれぞれ屈曲された一対の蓋板部34が形成されている。ここで、レバー本体28は、図1(C)に示されるように、その長手方向に沿って一対の蓋板部34が延在しており、幅方向に沿った断面が閉じた矩形状となった部分付近が取手部36とされている。
レバー本体28には、取手部36とは反対側の基端部38に丸棒状の連結軸40が取り付けられている。連結軸40は、その軸線方向がレバー本体28の幅方向と実質的に一致しており、両端部がレバー本体28における一対の側板部32にそれぞれ固着されている。
【0016】
結束装置10では、バンド部材16の他端側が連結軸40の外周側に巻き付けられてU字状に折り返され、バンド部材16の他端側が2層に重ねられた状態とされる。この状態で、バンド部材16の一端側と同様に、2層に重ねられたバンド部材16の他端側に金属製のかしめ金具26が外側から嵌められ、このかしめ金具26が、専用のかしめ工具によりバンド部材16の厚さ方向及び幅方向へそれぞれ、かしめられることにより、バンド部材16の他端側が連結軸40を介してレバー本体28の基端部に連結されている。このとき、バンド部材16の他端部が連結軸40の外周側に巻き付けられているだけなので、レバー本体28は、連結軸40を中心としてバンド部材16に対して相対的に回転可能になるように連結される。
【0017】
レバー本体28には、図1(B)に示されるように、側板部32にスリット状のスライド溝42が形成されている。このスライド溝42は、基端部38から取手部36の手前付近まで延在しており、一対の側板部32における同一の部位にそれぞれ配置されている。スライド溝42は、その基端側の端部が拘束端部44とされており、この拘束端部44は半円状になるようにR加工されている。拘束端部44は、レバー本体28の長手方向に沿って連結軸40に対しレバー先端側(取手部36側)に位置しており、連結軸40の中心から拘束端部44の中心までの距離は所定の長さLになっている。
【0018】
スライド溝42は、拘束端部44の反対側の端部が解放端部46とされており、この解放端部46は、連結軸40を中心とする径方向(図1の矢印R方向)に沿って取手部36の基端側の端部付近に位置しており、拘束端部44と同様に半円状にR加工されている。スライド溝42には、その両端部にそれぞれレバー本体28の長手方向と平行に延在する内側平行部48及び外側平行部50が形成されると共に、これらの平行部48、50の間に、内周側から外周側へ向かって背板部30側へ傾斜した傾斜部52が形成されている。
【0019】
締付レバー20には、スライド溝42にスライド可能になるように連結された掛止リング54が設けられている。掛止リング54は、金属製のリングが略長方形に屈曲されて成形されており、長手方向一端部にスライド溝42内に挿入されるスライド部56が形成されると共に、他端部に掛止プレート18のフック部22により掛止可能とされた掛止部58が形成されている。これらのスライド部56及び掛止部58は、それぞれ連結軸40の軸線方向と実質的に平行に延在している。
【0020】
ここで、掛止プレート18のフック部22により掛止リング54の掛止部58を掛止すれば、掛止プレート18が掛止リング54を介してレバー本体28に連結される。また掛止リング54のスライド部56は、スライド溝42における拘束端部44と解放端部46との間を移動(スライド)可能とされている。
図1(B)に示されるように、レバー本体28には、一対の側板部32の基端側の端面部それぞれ連結軸40を略中心として円弧状に湾曲した湾曲面からなる突当支点部60が形成されている。またレバー本体28の取手部36には、その長手方向を長径方向とする長円状の長孔62が形成されており、この長孔62には略コ字状に屈曲したストッパロッド64の一端側(基端側)が挿入されている。
【0021】
ストッパロッド64は金属製の丸棒が2箇所でそれぞれ直角に屈曲されて成形されており、その基端側には直線状の支軸部66が形成されており、この支軸部66は、長孔62内に回動可能で、かつレバー本体28の長手方向にスライド可能に挿入されている。支軸部66の先端部には、図1(A)に示されるように、ナット68が螺着されている。これにより、ストッパロッド64の支軸部66が長孔62内から脱落することが阻止されている。
【0022】
ストッパロッド64には、支軸部66の先端部から外周側へ屈曲されたアーム部70が形成されている。またストッパロッド64には、アーム部70の先端部からレバー本体28側に屈曲した差込部72が形成されており、この差込部72の先端部には、支軸部66を中心とする径方向に沿って内周側の部位に傾斜突起部74が一体的に形成されている。傾斜突起部74は、差込部72の基端側から先端側へ向かって内周側へ傾斜するスロープ状に形成されている。ここで、差込部72の傾斜突起部74の部分を除く長さDは、バンド部材16の幅Bよりも若干長くなっている。
【0023】
次に、上記のように構成された結束装置10によりパイプ束14を結束する作業方法について説明する。
図2(A)に示されるように、先ず、受枠等を用いて多数のパイプ12を側面視にて、略六角形となるように積上げてパイプ束14を構成した後、このパイプ束14に外周側から結束装置10のバンド部材16を巻き付ける。このとき、結束装置10の使用個数は、パイプ12の全長に応じて適宜増減され、例えば、パイプ12の全長が十分に短い場合には1個の結束装置10でも足りるが、2個の結束装置10によりパイプ束14の両端部をそれぞれ結束するようにすれば、パイプ束14の長さが広い範囲で変化しても、殆ど場合、パイプ束14を安定的に結束可能になる。
【0024】
ここでは、説明を簡単にするため、1個の結束装置10のみによりパイプ束14を結束する場合を説明するが、2個以上の結束装置10を用いる場合でも、1個の結束装置10を用いる場合と同様の作業を繰り返して行えば、それらの結束装置10によりパイプ束14を結束できることは言うまでもない。
次いで、図3に示されるように、作業者は、取手部36の先端側が掛止プレート18に近づくような方向へ揺動させつつ、掛止プレート18のフック部22により掛止リング54の掛止部58を掛止させる。このとき、金属性のバンド部材16はばね性を有しており、外周側へ向かって広がろうとする復元力を発生していることから、バンド部材16には、その復元力に対応する張力が生じている。
【0025】
従って、結束装置10では、バンド部材16の張力が掛止プレート18を介して掛止リング54に作用し、この張力により掛止リング54がスライド溝42の解放端部46側へスライドすると共に、掛止リング54を介してレバー本体28に解放方向(図3では反時計方向)のトルクが伝達される。このトルクにより締付レバー20は、連結軸40を中心とする揺動方向に沿って図3に示される解放位置に保持される。このとき、バンド部材16に生じている張力は比較的低いものであるので、作業員が掛止プレート18と締付レバー20を互いに近づけるような力を作用させれば、掛止プレート18により掛止リング54を掛止し、かつ掛止プレート18を掛止リング54から離脱させる作業がそれぞれ容易に行える。
【0026】
作業員は、掛止プレート18により掛止リング54を掛止した後、取手部36を把持しつつ、図4に示されるように、解放位置にある締付レバー20を解放位置とは反対側の拘束位置側へ揺動させる。これにより、掛止プレート18を介して掛止リング54に作用するバンド部材16の張力の一部が連結軸40側へ向かう分力に変換される。この分力により解放端部44にあった掛止リング54がスライド溝42に沿って拘束端部46側へ序々にスライドする。また連結軸40側へ向かう分力に変換されたバンド部材16の張力の一部が、掛止リング54を介してレバー本体28に伝達されることにより、レバー本体28がパイプ束14側へ付勢され、その付勢力によりレバー本体28の突当支点部60がパイプ束14の外周面(図4では2本のパイプ12の外周面)に圧接する。
【0027】
ここで、レバー本体28の突当支点部60が連結軸40を中心として湾曲した円弧状の湾曲面により形成されていることから、突当支点部60をパイプ束14の外周面に圧接させつつ、レバー本体28に拘束位置側の力(トルク)を作用させれば、レバー本体28は連結軸40を略中心として揺動可能になる。
このとき、レバー本体28の取手部36が梃子の力点となり、かつ突当支点部60が梃子の支点となるので、レバー本体28が梃子として機能することから、レバー本体28を小さい力で揺動させることができ、またレバー本体28が突当支点部60を介してパイプ束14に回動可能に固定できるので、レバー本体28に大きな力を作用させたときにも、レバー本体28の位置ずれや、脱落を効果的に防止しつつ、レバー本体28を確実に拘束位置側へ揺動させることができる。
【0028】
一方、締付レバー20では、掛止リング54の拘束端部側へのスライド量が、レバー本体28の解放位置から拘束位置側への揺動量に対応するものになる。また掛止プレートにより掛止された掛止リング54がスライド溝42に沿って拘束端部44側へスライドするに従って、結束装置10全体としての周長が序々に短縮され、その短縮量に応じた張力増加がバンド部材16に生じる。
【0029】
結束装置10では、図5に示されるように、締付レバー20を解放位置から所定量、拘束位置側へ揺動させると、掛止リング54がスライド溝42の拘束端部44に達し、掛止リング54のスライド溝42に沿ったスライドが完了する。このとき、掛止リング54のスライド部56が、連結軸40で折り返されて2層になったバンド部材16の他端部に外周側から圧接する。
結束装置10では、締付レバー20が掛止リング54を拘束端部44までスライドさせる位置(スライド完了位置)まで揺動した状態では、バンド部材16の張力がパイプ束14を安定的に結束できるまで増加していない。
【0030】
この後、作業員は、スライド完了位置まで揺動させた締付レバー20を、更に図6に示される拘束位置まで揺動させる。このとき、締付レバー20がスライド完了位置から拘束位置側へ揺動するに従って、掛止リング54のスライド部56がバンド部材16の他端部を内周側へ加圧して、バンド部材16の他端部付近を側面視にて略V字状に屈曲するに内周側へ弾性的に変形させる。これにより、締付レバー20の拘束位置側への揺動に従ってバンド部材16の張力が序々に増加し、締付レバー20が拘束位置まで揺動すると、バンド部材16には、パイプ束14を安定的に結束するために必要となる張力よりも十分に大きい張力が発生する。
【0031】
最後に、作業員は、図7に示されるように、ストッパロッド64の差込部72をパイプ束14の外周面とバンド部材16との間に挿入する。これにより、締付レバー20の拘束位置から解放位置側への揺動が阻止され、締付レバー20が確実に拘束位置に保持される。
なお、パイプ束14とバンド部材16との間に差込部72を挿入するスペースがない場合には、バール等の棒状工具をパイプ束14とバンド部材16との間に挿入し、この棒状工具を梃子としてバンド部材16を外周側へ持ち上げれば、パイプ束14とバンド部材16との間に差込部72の挿入スペースを容易に確保できる。
【0032】
また結束装置10では、差込部72の傾斜突起部74の部分を除く長さDがバンド部材16の幅Bより若干長くなっていることから、バンド部材16の内側に差込部72を挿入すれば、バンド部材16が差込部72における傾斜突起部74の基端側に張力により圧接した状態になり、傾斜突起部74によりバンド部材16が差込部72の先端側へずれることが阻止される。これにより、パイプ束14
及び、このパイプ束14を結束した結束装置10をトラック等で運搬する際や、クレーン等で搬送する際に、振動、衝撃等がパイプ束14に作用しても、結束装置10の締付レバー20が拘束位置から解放位置側へ揺動することを効果的に防止できる。
【0033】
なお、パイプ束14を構成するパイプ12の外径が大きい場合や、パイプ束14を構成するパイプ12の本数が非常に多い場合には、作業員が締付レバー20を解放位置から拘束位置へ揺動させるために必要となる力も非常に大きいものになるが、このような場合にも、バール等の棒状工具を取手部36の先端開口から締付レバー20内に挿入し、この棒状工具を介して締付レバー20に力を伝達するようにすれば、棒状工具の長さに応じて梃子比を大きくできるので、作業員は小さな力で楽に締付レバー20を拘束位置まで揺動させることができる。
【0034】
また、ストッパロッド64の差込部72をバンド部材16から外す際にも、バール等の棒状工具を取手部36の先端開口から締付レバー20内に挿入し、この棒状工具を介して締付レバー20にパイプ束14側の力を伝達するようにすれば、差込部72をパイプ束14側へ容易に移動でき、その状態で、棒状工具を介してバンド部材16の幅方向外側の力を締付レバー20へ伝達すれば、差込部72をバンド部材16から容易に外すこともできる。これにより、バンド部材16の張力により締付レバー20が解放位置へ復帰するので、掛止プレート18を掛止リング54から外せば、結束装置10をパイプ束14から離脱可能になる。
また、本実施形態に係る結束装置10では、バンド部材16の一端部に掛止プレート18を固定し、締付レバー20に掛止リング54を連結したが、これとは逆に、バンド部材16の一端部に掛止リングを固定し、締付レバー20のスライド溝42に掛止プレートをスライド可能に連結するようにしても良い。
【0035】
以上説明した本実施形態に係る結束装置10では、掛止プレート18により掛止リング54が掛止された状態で、締付レバー20に形成された突当支点部60がパイプ束14の外周面に当接しつつ、連結軸40を中心として締付レバー20を、解放位置からバンド部材16にパイプ束14が結束可能となる十分な張力を発生させる結束位置へ揺動可能とされることにより、多数本のパイプ12が水平方向及び高さ方向に沿って配列されて構成されたパイプ束14を十分に大きい張力により確実に結束できる。
【0036】
このとき、パイプ束14を構成する多数本のパイプ12間には無駄な隙間が形成されず、またパイプ束14を構成する多数本のパイプ12と結束装置10との間にも無駄な隙間が形成されないと共に、結束装置10自体の外形寸法も非常に小さいものであるので、パイプ束14を保管するための設置スペースを効率的に使用できる。また、結束装置10は、金属製の受枠、押え桟等からなる従来の収納具と比較し、その重量が非常に軽いものであり、装置を構成する部品の点数も少ないことから、製造コスト(単価)を大幅に低減できる。
【0037】
なお、本実施形態に係る結束装置10は、足場用の仮設パイプ、配管用パイプ等のパイプ12以外にも、長尺の鉄筋材、樋状部材、材木等の長尺部材の束を結束するためにも用いることができる。本実施形態では、巻付部材として帯状のバンド部材16を用いていたが、このようなバンド部材16に代えて、1本乃至複数本の針金を用いても良い。また本実施形態では、レバー本体28として金属板を曲げ加工したものを用いていたが、このような曲げ加工により製造されたレバー本体28に代えて、例えば、鋳造により成形されたレバー本体を用いても良い。このとき、長尺部材の重量等に応じてレバー本体の材質としてはアルミ合金等の金属以外にも、樹脂材料を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態に係るパイプ束の結束装置の構成を示す平面図、側面図及び底面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るパイプ束の結束装置及びパイプ束の構成を示す正面図であり、(A)は結束前の結束装置及びパイプ束を示し、(B)は結束後の結束装置及びパイプ束を示している。
【図3】図2に示される結束装置及びパイプ束を拡大して示す正面図であり、締付レバーが解放位置にある状態を示している。
【図4】図2に示される結束装置及びパイプ束を拡大して示す正面図であり、締付レバーが解放位置とスライド完了位置との間にある状態を示している。
【図5】図2に示される結束装置及びパイプ束を拡大して示す正面図であり、締付レバーがスライド完了位置にある状態を示している。
【図6】図2に示される結束装置及びパイプ束を拡大して示す正面図であり、締付レバーが拘束位置にあり、ストッパロッドによりバンド部材に連結されていない状態を示している。
【図7】図2に示される結束装置及びパイプ束を拡大して示す正面図であり、締付レバーが拘束位置にあり、ストッパロッドによりバンド部材に連結されている状態を示している。
【符号の説明】
【0039】
10 結束装置
12 パイプ(長尺部材)
14 パイプ束
16 バンド部材
18 掛止プレート(第1の掛止部材)
20 締付レバー
22 フック部
24 挿通孔
26 かしめ金具
28 レバー本体
30 背板部
32 側板部
34 蓋板部
36 取手部
38 基端部
40 連結軸
42 スライド溝
44 拘束端部
46 解放端部
48 内側平行部
50 外側平行部
52 傾斜部
54 掛止リング(第2の掛止部材)
56 スライド部
58 掛止部
60 突当支点部
62 長孔
64 ストッパロッド
66 支軸部
68 ナット
70 バンドフック部
72 差込部
74 傾斜突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向へ細長くそれぞれ形成された複数本の長尺部材が束ねられた長尺部材束に外周側から巻き付けられ、該長尺部材束を締付けて結束する長尺部材束の結束装置であって、
長尺部材束の外周長に対応する長さを有し、該長尺部材束に外周側から巻き付けられる巻付部材と、
前記巻付部材の長手方向一端部に連結された第1の掛止部材と、
前記巻付部材の長手方向他端部に回動可能に連結される連結軸が基端部に配置されると共に、前記基端部から前記連結軸を中心とする径方向に沿って外周側へ延出する取手部が形成された締付レバーと、
前記締付レバーにおける前記連結軸の外周側に配置され、前記基端部と前記取手部との間に延在するスライド溝と、
前記スライド溝にスライド可能になるように連結され、前記第1の掛止部材により掛止されると、該第1の掛止部材に連結される第2の掛止部材と、
前記締付レバーにおける基端側の端面部に形成され、長尺部材束の外周面に当接しつつ、前記連結軸を中心として前記締付レバーを、前記第1の掛止部材と前記第2の掛止部材とが掛止された状態で、前記巻付部材に長尺部材束に対する結束張力を発生させる結束位置と、前記第1の掛止部材と前記第2の掛止部材とを掛止及び離脱可能とする解放位置との間で揺動可能とする突当支点部と、
を有することを特徴とする長尺部材束の結束装置。
【請求項2】
前記取手部に、前記締付レバーが前記結束位置にある状態で、前記巻付部材に対して連結及び離脱可能され、前記巻付部材に連結されると、前記締付レバーを前記結束位置に拘束するストッパ部材を設けたことを特徴とする請求項1記載の長尺部材束の結束装置。
【請求項3】
前記突当支点部を、前記連結軸を略中心として円弧状に湾曲した湾曲面により形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の長尺部材束の結束装置。
【請求項4】
前記取手部の先端部に、棒状工具が連結及び離脱可能とされた工具連結部を設け、該工具連結部に連結された棒状工具を介して前記締付レバーに揺動方向の操作力を伝達可能としたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の長尺部材束の結束装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−227330(P2009−227330A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−78593(P2008−78593)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(508090686)株式会社岡村工務店 (1)
【Fターム(参考)】