説明

長鎖分岐を有するフルオロポリマーを含む溶融加工性ポリマー組成物

【課題】非フッ素化ポリマーの押出における加工助剤として用いるために適するポリマー溶融添加剤を提供する。
【解決手段】(a)非フッ素化溶融加工性ポリマーおよび(b)フルオロポリマーを含む溶融加工性ポリマー組成物であって、前記フルオロポリマーが少なくとも0.2の長鎖分岐指数(LCBI)および265℃で107Pa以下の零剪断速度粘度を有することを特徴とする溶融加工性ポリマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非フッ素化溶融加工性ポリマーとフルオロポリマーとの混合物を含む溶融加
工性ポリマー組成物に関する。組成物はポリマー加工助剤として用いてもよいか、または
組成物は、例えばポリマーフィルムなどの所望の物品に加工されるべく準備が整った組成
物であってもよい。
【背景技術】
【0002】
いかなる溶融加工性熱可塑性ポリマー組成物についても、臨界剪断速度が存在し、それ
より上では押出物の表面が粗くなり、それ未満では押出物が平滑である。例えば、(非特
許文献1)参照。平滑押出物表面に関する願望が可能な最速の速度(すなわち高剪断速度
)でポリマー組成物を押し出す経済的利点と比較して競合し、その願望を可能な最速の速
度でポリマー組成物を押し出す経済的利点に対して最適化しなければならない。
【0003】
高密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンにおいて観察される押出物の粗さおよび
歪みの種々のタイプの幾つかは、(非特許文献2)によって記載されている。著者らは、
加工条件およびダイ形状の所定の組について、その上で線状低密度ポリエチレン(LLD
PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)およびポリプロピレンなどのポリオレフィンが
表面溶融欠陥を被る臨界剪断応力が存在することを述べている。低剪断速度で、欠陥は「
シャークスキン」、すなわち、より深刻な症状発現において押出方向に対して多少横に走
る稜線として現れる表面光沢の損失の形を取りうる。より高い速度で、押出物は著しく歪
むことになる「連続メルトフラクチャ」を受け得る。連続メルトフラクチャが最初に観察
される速度より低い速度で、LLDPEおよびHDPEは押出物表面が平滑から粗まで変
動する「循環メルトフラクチャ」も受けうる。著者らは、加工条件を調節するか、または
ダイ構成を変えることにより剪断応力を下げると、これらの欠陥を限られた範囲にまで避
けることが可能であるが、全体的に新しい問題を起こさない訳ではないことを更に述べて
いる。例えば、より高い温度での押出は、チューブラフィルム押出においてより弱い泡壁
をもたらし、より広いダイギャップはフィルムの配向に影響を及ぼしうる。
【0004】
熱可塑性ポリマーの押出中に他の問題が生じることが多い。それらの問題には、ダイの
オリフィスにおけるポリマーの堆積(ダイ堆積またはダイ垂れ落ちとして知られている)
、押出運転中の背圧の増加および高い押出温度によるポリマーの過剰な劣化または低い溶
融強度が挙げられる。これらの問題は、プロセスを止めて装置を洗浄しなければならない
か、またはプロセスをより低い速度で運転しなければならないゆえに押出プロセスを遅ら
せる。
【0005】
特定のフルオロカーボン加工助剤は、押出性熱可塑性炭化水素ポリマーにおける溶融欠
陥を部分的に軽減することが知られており、より速くて、より効率的な押出を見込んでい
る。ブラッツ(Blatz)に付与された(特許文献1)には、例えば、溶融押出性炭化
水素ポリマーと合わせたフルオロカーボンポリマー加工助剤の使用が最初に記載されてい
る。ここで、フッ素化ポリマーは少なくとも1:2の原子フッ素対原子炭素の比を有する
フッ素化オレフィンのホモポリマーまたはコポリマーであり、フルオロカーボンポリマー
は炭化水素ポリマーのメルトフロー特性に似たメルトフロー特性を有する。
【0006】
(特許文献2)(チャップマン.Jr(Chapman,Jr.)ら)には、(1)困
難溶融加工性ポリマーの溶融加工温度で、結晶性ならば溶融形態をとるか、または非晶質
ならばそのガラス転移温度より高いフルオロカーボンコポリマー、および(2)少なくと
も1種のテトラフルオロエチレンホモポリマーまたはテトラフルオロエチレンとテトラフ
ルオロエチレンと共重合可能な少なくとも1種のモノマーのコポリマーであって、モル比
が少なくとも1:1であるとともに、困難溶融加工性ポリマーの溶融加工温度で固体であ
るコポリマーを含む、困難溶融加工性ポリマーと合わせて用いるためのフッ素化加工助剤
が記載されている。
【0007】
モルガン(Morgan)らに付与された(特許文献3)には、ポリオレフィン中の加
工助剤として高いヘキサフルオロプロピレン含有率を有するテトラフルオロエチレンとヘ
キサフルオロプロピレンのコポリマーの使用が記載されている。
【0008】
プリースター(Priester)らに付与された(特許文献4)およびチャプマン.
Jr(Chapman Jr.)らに付与された(特許文献5)には、困難溶融加工性ポ
リマーと合わせて用いるための特定の官能性ポリマー鎖末端基を含む特定のフルオロポリ
マー加工助剤の使用が記載されている。
【0009】
チャプマン(Chapman)らに付与された(特許文献6)には、ポリオレフィンと
合わせた、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンのコポリマーおよびテト
ラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとフッ化ビニリデンのターポリマーなど
の単峰半結晶性フルオロプラスチックの使用が開示されている。この特許に記載された溶
融加工性の強化のみが実施例25で示され、実施例25において、線状低密度ポリエチレ
ン中のフルオロポリマーの1000ppmの濃度が押出可能な組成物の押出圧力を低下さ
せると言われている。溶融欠陥の減少は示されていない。
【0010】
デュケセン(Duchesne)およびジョンソン(Johnson)に付与された(
特許文献7)および(特許文献8)には、熱可塑性炭化水素ポリマーのための加工添加剤
としてのポリ(オキシアルキレン)ポリマーとフルオロカーボンポリマーの組み合わせの
使用が開示されている。ポリ(オキシアルキレン)ポリマーおよびフルオロカーボンポリ
マーは、押出中の溶融欠陥の発生を減らすような相対的な濃度および割合で用いられる。
一般には、フルオロポリマーの濃度は最終押出物の0.005〜0.2重量%のレベルで
存在し、ポリ(オキシアルキレン)ポリマーは最終押出物の0.01〜0.8重量%のレ
ベルで存在する。好ましくは、押出物中のフルオロカーボンポリマーの重量および押出物
中のポリ(オキシアルキレン)ポリマーの重量は1:1〜1:10の比内である。
【0011】
ブロング(Blong)らに付与された(特許文献9)には、主成分としての溶融加工
性炭化水素ポリマーと有効量の耐薬品性フルオロポリマー加工助剤の混合剤を含む押出性
熱可塑性炭化水素組成物が開示されている。フルオロポリマーは少なくとも50重量%の
フッ素を含み、本質的に完全にエチレン系不飽和である1種以上のフルオロポリマーを含
む。
【0012】
ジロン(Dillon)らに付与された(特許文献10)には、多峰フルオロポリマー
とポリマー溶融添加剤を含むポリマー組成物とを含有するポリマー加工添加剤が開示され
ている。フルオロポリマーの多峰特性が、熱可塑性ポリマーのシャークスキンなどの溶融
欠陥を減らし、および/または多峰フルオロポリマーを使用しなければ達成できるより高
い押出速度に対してこれらの効果の発生を遅らせることが教示されている。
【0013】
(特許文献11)には、フルオロポリマーを含む溶融加工性ポリマーのための加工助剤
が開示されている。フルオロポリマーの重量平均粒子サイズが押出機ダイ入口に達する時
に2マイクロメートルを上回る手段によりフルオロポリマー加工助剤を導入することによ
って非フッ素化溶融加工性ポリマーの押出加工性が改善されることが述べられている。
【0014】
技術上知られているようなフルオロポリマーに基づく既存の多くの加工助剤にもかかわ
らず、更なる加工助剤を見出すことが必要とされ続けている。望ましくは、こうした加工
助剤は、非フッ素化溶融加工性ポリマーの加工、特に押出において溶融欠陥を減らす上で
非常に効果的である。好ましくは、加工助剤は、非フッ素化ポリマーの押出中のダイ垂れ
落ちを減らす、および/または背圧を減らすことができる。
【0015】
【特許文献1】米国特許第3,125,547号明細書
【特許文献2】米国特許第4,904,735号明細書
【特許文献3】米国特許第5,397,897号明細書
【特許文献4】米国特許第5,064,594号明細書
【特許文献5】米国特許第5,132,368号明細書
【特許文献6】米国特許第5,464,904号明細書
【特許文献7】米国特許第5,015,693号明細書
【特許文献8】米国特許第4,855,013号明細書
【特許文献9】米国特許第5,710,217号明細書
【特許文献10】米国特許第6,277,919号明細書
【特許文献11】国際公開第02/066544号パンフレット
【特許文献12】米国特許第4,558,141号明細書
【特許文献13】米国特許第5,585,449号明細書
【特許文献14】米国特許第4,233,421号明細書
【特許文献15】米国特許第4,912,171号明細書
【特許文献16】米国特許第5,086,123号明細書
【特許文献17】米国特許第5,262,490号明細書
【特許文献18】米国特許第5,929,169号明細書
【特許文献19】米国特許第5,591,804号明細書
【特許文献20】米国特許第3,876,654号明細書
【特許文献21】米国特許第4,233,421号明細書
【特許文献22】米国特許第5,284,184号明細書
【特許文献23】国際公開第02/88,207号パンフレット
【非特許文献1】ウェストオーバー(R.F.Westover)著「溶融押出;ポリマー科学および技術エンサイクロペディア(Melt Extrusion,Encyclopedia of Polymer Science and Technology)」、8巻、頁573〜81、(ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)、1968)
【非特許文献2】ルジン(A.Rudin)ら著「フルオロカーボンエラストマーはポリオレフィンの押出を助ける(Fluorocarbon Elastomer Aids Polyolefin Extrusion)」、Plastics Engineering、1986年3月、頁63〜66
【非特許文献3】シュロフ(R.N.Shroff)、マブリジス(H.Mavridis)、Macromol.,32、8464−8464(1999)
【非特許文献4】シュロフ(R.N.Shroff)、マブリジス(H.Mavridis)、Macromol.,34、7362−7367(2001)
【非特許文献5】ポール(M.Pahl)、グレイブル(W.Gleible)、ラウム(H.Laum)著「Praktischer Rheologie der Kunststoffe und Elastomere」、VDI ベルラグ・デュッセルドルフ(VDI Verlag Dueddeldorf)
【非特許文献6】ラウエンダール(Rauwendaal,C)著「ポリマーの押出(Polymer Extrusion)」、ハンセン・パブリッシャーズ(Hansen Publishers)、頁23−48、1986
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、(a)非フッ素化溶融加工性ポリマーおよび(b)フルオロポリマーを含む
溶融加工性ポリマー組成物であって、前記フルオロポリマーが少なくとも0.2の長鎖分
岐指数(LCBI)および265℃で107Pa以下の零剪断速度粘度を有することを特
徴とする溶融加工性ポリマー組成物を提供する。
【0017】
こうしたフルオロポリマーがシャークスキンおよびメルトフラクチャなどの溶融欠陥の
発生を減らす際に非常に効果的なポリマー加工助剤であることが見出された。特に、これ
らの加工助剤は、一般に、線状であるかまたは0.2未満の長鎖分岐指数および/または
265℃で107Paを上回る零剪断速度粘度を有する類似のフルオロポリマーより速く
非フッ素化溶融加工性ポリマーの溶融物を取り除く。従って、メルトフラクチャのない平
滑表面を有する押出物を得る前の、押出品が高度のメルトフラクチャを示す押出機スター
トアップ後の経過時間を減らすことが可能である。溶融欠陥を減らすおよび/または溶融
物の浄化のための時間を減らすために、より少ないフルオロポリマー加工助剤しか必要と
しないことも可能である。更に、こうしたフルオロポリマーは、非フッ素化溶融加工性ポ
リマーの押出における背圧を減少させることも可能である。
【0018】
本発明は、溶融加工性ポリマー組成物を製造する方法および非フッ素化ポリマーの押出
における加工助剤として用いるためのポリマー溶融添加剤組成物であって、少なくとも0
.2の長鎖分岐指数(LCBI)および265℃で107Pa以下の零剪断速度粘度を有
するフルオロポリマーおよび例えばポリオキシアルキレンポリマーまたはポリカプロラク
トンなどの相乗剤を含むポリマー溶融添加剤組成物を更に提供する。
【0019】
本発明は、メルトフローインデックスが異なる少なくとも2種のフルオロポリマーのブ
レンドを含むポリマー溶融添加剤組成物であって、前記フルオロポリマーの少なくとも1
種が少なくとも0.2のLCBIおよび265℃で107Pa以下の零剪断速度粘度を有
するポリマー溶融添加剤組成物をなお更なる態様において提供する。このような組成物は
非フッ素化ポリマーの加工を改善するだけでなく、フルオロポリマーの加工、特にフルオ
ロポリマーの押出の加工も改善し得る。
【0020】
「非フッ素化」という用語は、ポリマーがフッ素原子を含まないか、またはポリマーが
1:1未満のフッ素原子対炭素原子の比でフッ素原子を含むことを意味する。「溶融加工
性」という用語は、ポリマーを例えば押出機などの一般に用いられる溶融加工装置内で加
工できることを意味する。例えば、非フッ素化ポリマーがポリエチレンである時、ポリエ
チレンは、典型的には5g/10分以下、好ましくは2g/10分以下(2160gの分
銅を用いて190℃でASTM D1238に準拠して測定)のメルトフローインデック
スを有するのがよい。
【0021】
「フルオロポリマー」という用語は、フッ素化主鎖を有するとともにフッ素原子対炭素
原子の比が少なくとも1:1、好ましくは少なくとも1:1.5であるポリマーを意味す
る。従って、フルオロポリマーは主鎖上で部分的にフッ素化されていてもよいか、または
完全にフッ素化された主鎖を有してもよい(すなわち、パーフルオロポリマー)。
【0022】
「溶融加工性ポリマー組成物」という用語は、添加剤または加工助剤として使用できる
組成物を含む。すなわち、組成物はポリマー物品に加工するために用意が整った組成物、
およびポリマー物品に押し出すために用意が整ったポリマー組成物を得るために更なる溶
融加工性非フッ素化ポリマーおよび/または更なる成分と混合しようとするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
溶融加工性ポリマー組成物中で用いるためのフルオロポリマーは非線状ポリマー、すな
わち分岐ポリマーである。分岐または非線状性のレベルは、長鎖分岐指数(LCBI)を
通して特徴付けることが可能である。LCBIは、(非特許文献3)および(非特許文献
4)に記載されたように以下の式により決定することが可能である。
【数1】

上の式において、η0,brは温度Tで測定された分岐フルオロポリマーの零剪断粘度(単
位:Pa)であり、[η]brは分岐フルオロポリマーを溶解させることができる溶媒中の
温度T’での分岐フルオロポリマーの固有粘度(単位、ml/g)であり、kは定数であ
る。これらの定数は次式
η0,lin=k・[η]αlin 式2
から決定される。ここで、η0,linおよび[η]linは、それぞれ同じ温度TおよびT’で
同じ溶媒中で測定された対応する線状フルオロポリマーの零剪断粘度および固有粘度をそ
れぞれ表す。従って、LCBIは、もちろん同じ溶媒および温度を式1および2において
用いるかぎり選択される測定温度および溶媒の選択とは無関係である。零剪断粘度および
固有粘度は、典型的には凍結凝固フルオロポリマー上で決定される。
【0024】
溶融加工性ポリマー組成物中で用いてもよいフルオロポリマーの幾つかのための試験条
件に加えてaおよびkの値を以下の表に記載している。
【0025】
【表1】

【0026】
上の表において、ポリマー中のモノマー単位の指数はモル%におけるそれぞれの単位の
量を示し、試験条件は次の通りである。
A:265℃での剪断粘度および35℃でのメチルエチルケトン中の固有粘度。
B:230℃での剪断粘度および23℃でのジメチルホルムアミド中の固有粘度。
C:230℃での剪断粘度および110℃でのジメチルホルムアミド中の固有粘度。
定数aが試験したフルオロポリマーとは無関係に見えるのに対して、k値がフルオロポ
リマーの組成および用いられた試験条件により異なることを上表から観察することが可能
である。
【0027】
用いられるフルオロポリマーのLCBIは少なくとも0.2の値を有するのがよい。一
般に、溶融欠陥を減らすフルオロポリマーの有効性は類似の零剪断速度粘度(η0)を有
するポリマーに関するLCBIの値の増加につれて増加する。しかし、分岐(および従っ
てLCBI値)のレベルが大きすぎるようになる時、フルオロポリマーは有機溶媒に溶解
させることができないゲルフラクションを有しうる。こうした高い分岐レベルにおいて、
溶融加工性ポリマー組成物の加工に及ぼすフルオロポリマーの有利な効果は、フルオロポ
リマーの溶融粘度が高すぎるので低下する。日常の実験を通して当業者はLCBIの適切
な値を容易に決定することが可能である。LCBIは、一般には0.2〜5の間、好まし
くは0.5〜1.5の間である。
【0028】
溶融加工性ポリマー組成物中で用いるためのフルオロポリマーは非晶質であってもよい
。すなわち、フルオロポリマーは融点をもたないか、または融点を殆ど示さないか、ある
いは半結晶性フルオロポリマー、すなわち明確に検出可能な融点を有するポリマーである
ことが可能である。一般に、フルオロポリマーは溶融加工性非フッ素化ポリマー(以後ホ
ストポリマーとも呼ぶ)と非相溶性であり、265℃で107Pa以下の零剪断速度粘度
η0を有するのがよい。好ましくは、η0(265℃)は103Pa〜5×106Paの間、
より好ましくは104〜106Paの間である。零剪断速度粘度が265℃における粘度と
して表されるけれども、これはη0を265℃で必ず測定することを要求しない。例えば
、特定のポリマーについては、より低い温度またはより高い温度でη0を測定することが
より適切であるか、または必要な場合がある。しかしながら、より低い温度またはより高
い温度で決定されたη0は、例えば、(非特許文献5)に記載されたアレニウスの式の使
用を通して265℃での値に換算するか、または計算することが可能である。
【0029】
本発明において用いるためのフルオロポリマーは、次式
RCF=CR2 (I)
の少なくとも1種のフッ素化エチレン系不飽和モノマー、好ましくは2種以上のモノマー
から誘導されたインターポリマー化単位を含むフルオロポリマーを含む。
上式中、各Rは独立してH、F、Cl、炭素原子数1〜8のアルキル、炭素原子数1〜
8のアリール、炭素原子1〜10の環式アルキルまたは炭素原子数1〜8のパーフルオロ
アルキルから選択される。R基は、好ましくは1〜3個の炭素原子を含む。このモノマー
において、各R基は、他のR基の各々と同じであってもよい。あるいは、各R基は他のR
基の1つ以上とは異なってもよい。
【0030】
フルオロポリマーは、少なくとも1種の式Iのモノマーと次式
12C=CR12 (II)
(式中、R1はH、Cl、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜10の環式ア
ルキル基または炭素原子数1〜8のアリール基から選択される。)
を有する少なくとも1種の非フッ素化共重合性コモノマーのインターポリマー化から誘導
されたコポリマーも含んでよい。R1は、好ましくは1〜3個の炭素原子を含む。
【0031】
有用なフッ素化された式Iのモノマーの代表的な例には、フッ化ビニリデン、テトラフ
ルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、2−クロロ
ペンタフルオロプロパン、ジクロロジフルオロエチレン、1,1−ジクロロフルオロエチ
レンおよびそれらの混合物が挙げられが、それらに限定されない。パーフルオロ−1,3
−ジオキソールも用いてよい。パーフルオロ−1,3−ジオキソールモノマーおよびそれ
らのモノマーのコポリマーは(特許文献12)(スクイアーズ(Squires))に記
載されている。
【0032】
有用な式IIのモノマーの代表的な例には、エチレン、プロピレンなどが挙げられる。
【0033】
フルオロポリマーの特定の例には、ポリフッ化ビニリデン、2種以上の異なる式Iのモ
ノマーのインターポリマー化から誘導されたフルオロポリマーおよび1種以上の式Iのモ
ノマーと1種以上の式IIのモノマーから誘導されたフルオロポリマーが挙げられる。こ
うしたポリマーの例は、フッ化ビニリデン(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HF
P)から誘導されたインターポリマー化単位を有するポリマーおよびテトラフルオロエチ
レン(TFE)とTFE以外の少なくとも1種の共重合性コモノマー少なくとも5重量%
から誘導されたポリマーである。フルオロポリマーのこの後者のクラスには、TFEとH
FPから誘導されたインターポリマー化単位のポリマー、TFE、HFPおよびVDFか
ら誘導されたインターポリマー化単位のポリマー、TFE、HFPおよび式IIのモノマ
ーから誘導されたインターポリマー化単位のポリマー、TFEと式IIのモノマーから誘
導されたインターポリマー化単位から誘導されたポリマーが挙げられる。
【0034】
フルオロポリマーの所望の分岐レベルは様々な方法で得てもよい。例えば、一実施形態
において、フルオロポリマーの分岐はフルオロポリマーを製造する重合プロセスを通して
得てもよい。従って、分岐フルオロポリマーは、1種以上のフッ素化モノマーおよび任意
の非フッ素化コモノマーと重合中に長鎖分岐を形成させる変性剤の共重合から誘導しても
よい。こうした変性剤は、典型的には、後で更なる重合に参加することができ長鎖分岐を
形成するラジカルをポリマー主鎖上に形成するように重合中に容易に引き抜かれるハロゲ
ン原子、例えば臭素またはヨウ素を含むフッ素化されていても、またはフッ素化されてい
なくてもよいモノマーである。適する変性剤には、例えば、1個以上の臭素原子および/
またはヨウ素原子を有するフッ素化オレフィンまたは非フッ素化オレフィンが挙げられる

【0035】
分岐フルオロポリマーを得るために変性剤として用いてもよいオレフィンの例には、一
般式
2C=CXZ (III)
(式中、各Xは同じかまたは異なってもよく、水素、F、Cl、BrおよびIからなる群
から選択される。但し、少なくとも1個のXはBrまたはIを表すことを条件とする。Z
は水素、F、Cl、Br、I、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基また
はパーフルオロポリエーテル基を表す。)
に対応するオレフィンが挙げられる。パーフルオロアルキル基の例には、1〜8個の間の
炭素原子、例えば1〜5個の炭素原子を有する線状または分岐のパーフルオロアルキル基
が挙げられる。パーフルオロアルコキシ基の例には、アルキル基中に1〜8個の間の炭素
原子、例えば1〜5個の間の炭素原子を有し、アルキル基が線状または分岐であってもよ
い基が挙げられる。パーフルオロポリエーテル基の例には、次式
−O(R1fO)n(R2fO)m3f
(上式中、R1fおよびR2fはそれぞれ1〜6個の炭素原子、特に2〜6個の炭素原子の
線状または分岐のパーフルオロアルキレン基であり、mおよびnは独立して0〜10であ
り、m+nは少なくとも1であり、R3fは炭素原子数1〜6のパーフルオロアルキル基で
ある。)
に対応する基が挙げられる。
【0036】
用いてもよい式(III)のオレフィンのサブクラスには、Xが水素、F、Brから選
択されるものが挙げられる。但し、少なくとも1個のXはBrを表すことを条件とする。
Zは水素、F、Br、パーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルコキシ基である。
便利に用いてもよいオレフィンの特定の例には、1−ブロモ−1,2,2−トリフルオロ
エチレン、ブロモトリフルオロエチレン(BTFEと呼ぶ)、臭化ビニル、1,1−ジブ
ロモエチレン、1,2−ジブロモエチレンおよび1−ブロモ−2,3,3,3−テトラフ
ルオロ−プロペンが挙げられる。1−ブロモ−2,2−ジフルオロエチレン(BDFE)
は一般に好ましい。臭素含有オレフィンまたはヨウ素含有オレフィンの混合物を用いるこ
とももちろん可能である。
【0037】
用いてもよいなお更なる変性剤には、次式
a2C=CXa−Rf−(Xbr (IV)
(式中、各Xaは独立して水素、フッ素、臭素、塩素またはヨウ素を表し、Rfは、典型的
には1〜8個の炭素原子を有するパーフルオロアルキレン基、パーフルオロオキシアルキ
レン基またはパーフルオロポリエーテル基であり、Xbは臭素、ヨウ素およびそれらの混
合物から選択されたハロゲンを表し、rは1、2または3である。)
に対応する変性剤が挙げられる。ハロゲンXbは、Rf基の末端位置中に含まれてもよいが
、別案として、Rf基の鎖に沿って含まれることも可能である。式(IV)によるオレフ
ィンの例には、
CH2=CH−CF2−Br
CF2=CF−CF2−CFBr−CF3
CF2=CF−(CF23−CF2Br
CH2=CH−O−(CF2)−CF2Br
CF2=CF−O−CF2−CF2−O−CF2CF2CF2Br
CH2=CH−CF2CF2−I
が挙げられる。
【0038】
前述した変性剤は、重合中に起きる甚だしすぎる分岐を避けるためにかなり低いレベル
で一般に用いられるべきである。フルオロポリマーの分岐の所望量を引き起こすために重
合において典型的に用いられる変性剤の量は、用いられる変性剤の性質および例えば反応
時間および反応温度などの重合条件に応じて異なる。用いようとする変性剤の量は、所望
のLCBI値を達成するように選択される。変性剤の最適な量は当業者によって容易に決
定することが可能であるが、重合にフィードされるモノマーの全重量を基準にして一般に
は1重量%以下、例えば0.7または0.5重量%以下である。有用な量は、0.01〜
1重量%、便利には0.05〜0.5重量%、別案として0.01〜0.3重量%または
0.05〜0.25重量%であってもよい。変性剤は、重合の始めに添加することが可能
である、および/または連続法および/または分割法で重合中に添加してもよい。好まし
くは、変性剤は連続で重合にフィードされる。
【0039】
あるいは、重合中にフルオロポリマーの分岐を引き起こすために、二官能性コモノマー
、すなわち、分子中に2個の重合性基を有するコモノマーを用いることが可能である。こ
うしたコモノマーの例には、(特許文献13)で開示されたフッ素化ビスオレフィンを含
むビスオレフィンが挙げられる。しかし、フルオロポリマーの重合においてこうした二官
能性モノマーを含む時、重合中に実質的な架橋が起きることを避けるように注意を払うべ
きである。
【0040】
加工助剤として用いるためのフルオロポリマーは、溶液重合、懸濁重合および超臨界C
2中での重合を含む既知の重合技術のいずれかにより得ることが可能である。フルオロ
ポリマーは、好ましくは水性乳化重合法を通して製造され、こうした重合法は、バッチ重
合技術、半バッチ重合技術または連続重合技術を含む既知の方式で行うことが可能である
。水性乳化重合法において用いるための反応容器は、典型的には、重合反応中に内圧に耐
えることができる加圧可能な容器である。典型的には、反応容器は、反応器内容物の混合
を通して製造する機械的攪拌機および熱交換システムを含む。フルオロモノマーのいかな
る量も反応容器に投入してもよい。モノマーはバッチ方式または連続方式もしくは半連続
方式で投入してもよい。半連続とは、モノマーの複数のバッチを重合中に容器に投入する
ことを意味する。モノマーをケトルに添加する独立速度は経時的な特定のモノマーの消費
速度に応じて異なる。好ましくは、モノマーの添加速度はモノマーの消費、すなわちポリ
マーへのモノマーの転化の速度に等しい。
【0041】
反応ケトルに水を投入する。その量は決定的ではない。水相に一般にフッ素化界面活性
剤、典型的には非テロゲニックフッ素化界面活性剤も添加する。但し、フッ素化界面活性
剤を添加しない水性乳化重合も実施してもよい。フッ素化界面活性剤を用いる時、フッ素
化界面活性剤は、典型的には0.01重量%〜1重量%の量で用いられる。適するフッ素
化界面活性剤には、水性乳化重合において一般に用いられるあらゆるフッ素化界面活性剤
が挙げられる。特に好ましいフッ素化界面活性剤は、一般式
Y−Rf−Z−M
(式中、Yは水素、ClまたはFを表し、Rfは炭素原子数4〜10の線状または分岐の
過フッ素化アルキレンを表し、ZはCOO-またはSO3-を表し、Mはアルカリ金属イオ
ンまたはアンモニウムイオンを表す。)
に対応する界面活性剤である。本発明において用いるために最も好ましいフッ素化界面活
性剤は、パーフルオロオクタン酸およびパーフルオロオクタンスルホン酸のアンモニウム
塩である。フッ素化界面活性剤の混合物を用いることが可能である。
【0042】
フルオロポリマーの分子量を制御して所望の零電団速度粘度を得るために連鎖移動剤を
用いてもよい。有用な連鎖移動剤には、エタンなどのC2〜C6炭化水素、アルコール、エ
ーテル;、脂肪族カルボン酸エステルおよびマロン酸エステルを含むエステル、ケトンお
よびハロゲン化炭素が挙げられる。特に有用な連鎖移動剤は、ジメチルエーテルおよびメ
チルターシャリーブチルエーテルなどのジアルキルエーテルである。
【0043】
重合は、開始剤または開始剤系を水相に添加することによりモノマーの初期投入後に通
常は開始される。例えば、過酸化物をラジカル開始剤として用いることが可能である。過
酸化物開始剤の特定の例には、過酸化水素;、過酸化ジアセチル、過酸化ジプロピオニル
、過酸化ジブチリル、過酸化ジベンゾイル、過酸化ベンゾイルアセチルなどの過酸化ジア
シル、過酸化ジグルタル酸および過酸化ジラウリルならびに更なる水溶性過酸および例え
ばアンモニウム塩、ナトリウム塩またはカリウム塩などの水溶性過酸の水溶性塩が挙げら
れる。過酸の例には過酢酸が挙げられる。過酸のエステルも用いることが可能であり、過
酸のエステルの例には、t−ブチルペルオキシアセテートおよびt−ブチルペルオキシピ
バレートが挙げられる。用いることが可能である開始剤の更なるクラスは水溶性アゾ化合
物である。開始剤として用いるために適するレドックス系には、例えば、ペルオキシジス
ルフェートと亜硫酸水素塩または二亜硫酸水素塩の組み合わせ、チオスルフェートとペル
オキシジスルフェートの組み合わせまたはペルオキソジスルフェートとヒドラジンの組み
合わせが挙げられる。用いることが可能である更なる開始剤は、過硫酸塩、過マンガン酸
またはマンガン酸あるいは複数のマンガン酸のアンモニウム塩、アルカリ金属塩またはア
ルカリ土類塩である。用いられる開始剤の量は、重合混合物の全重量を基準にして典型的
には0.03〜2重量%の間、好ましくは0.05〜1重量%の間である。開始剤の全量
を重合の始めに添加してもよいか、または70〜80%の転化率まで開始剤を重合中に連
続方式で重合に添加することが可能である。始めに開始剤の一部を添加し、重合中に残り
を追加の1回分でまたは別々の追加分で添加することも可能である。例えば鉄、銅および
銀の水溶性塩などの促進剤も好ましくは添加してよい。
【0044】
重合反応の開始中、密封された反応器ケトルおよびその内容物を都合よく反応温度に予
熱する。重合温度は20℃〜150℃、好ましくは30℃〜110℃、最も好ましくは4
0℃〜100℃である。重合圧力は、典型的には4〜30バールの間、特に8〜20バー
ルである。水性乳化重合系は、緩衝剤および錯生成剤などの補助剤を更に含んでもよい。
【0045】
重合の終わりに得ることができるポリマー固形物の量は、典型的には10〜45重量%
の間、好ましくは20〜40重量%の間であり、得られたフルオロポリマーの平均粒子サ
イズは典型的には50nm〜500nmの間である。
【0046】
なお更なる実施形態において、フルオロポリマーの分岐は分岐をフルオロポリマー上に
グラフトすることにより達成してもよい。例えば、VDFと任意のコモノマーから誘導さ
れたポリマーに関する場合のように脱フッ化水素剤に供した時にフルオロポリマーを脱フ
ッ化水素できる時、フルオロポリマーは脱フッ化水素されることが可能であり、よってフ
ルオロポリマー主鎖中に二重結合が形成される。その後、こうした二重結合は、フルオロ
ポリマーの分岐を引き起こすために後続反応または同時反応で用いることが可能である。
【0047】
脱フッ化水素剤として有用な材料の例には、1,8−ジアザ[5.4.0]ビシクロウ
ンデク−7−エン(DBU)および1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン
(DBN)などの強塩基が挙げられる。ポリヒドロキシ硬化反応に基づくフルオロエラス
トマーの硬化において用いるために知られているオルガノ−オニウム化合物も脱フッ化水
素剤として用いることが可能である。オルガノ−オニウム化合物の例には、有機部分また
は無機部分に結合された少なくとも1個のヘテロ原子、すなわちN、P、S、Oなどの非
炭素原子を含む化合物が挙げられ、例えばアンモニウム塩、ホスホニウム塩およびイミニ
ウム塩が挙げられる。本発明において有用な第四オルガノ−オニウム化合物の1つのクラ
スは、比較的正のイオンおよび比較的負のイオンを広くは含み、ここで、燐、砒素、アン
チモンまたは窒素は、一般に正イオンの中心原子を含み、負イオンは有機アニオンまたは
無機アニオン(例えば、ハロゲン化物、硫酸塩、酢酸塩、燐酸塩、ホスホン酸塩、水酸化
物、アルコキシド、フェノキシド、ビスフェノキシドなど)であってもよい。
【0048】
有用なオルガノ−オニウム化合物の例は記載されており、技術上知られている。例えば
、(特許文献14)(ワーム(Worm))、(特許文献15)(グルータエート(Gr
ootaert)ら)、(特許文献16)(グエンスナー(Guenthner)ら)お
よび(特許文献17)(コルブ(Kolb)ら)、(特許文献18)を参照すること。そ
れらの特許の記載のすべては本明細書に引用して援用する。代表的な例には、
トリフェニルベンジルホスホニウムクロリド
トリブチルアリルホスホニウムクロリド
トリブチルベンジルアンモニウムクロリド
テトラブチルアンモニウムブロミド
トリアリールスルホニウムクロリド
8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムクロリド
ベンジルトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムクロリド
ベンジル(ジメチルアミノ)ジフェニルホスホニウムクロリド
およびそれらの混合物が挙げられる。
【0049】
有用なオルガノ−オニウム化合物のもう1つのクラスは1個以上のフッ素化アルキル側
基を有する化合物が挙げられる。一般に、最も有用なフッ素化オニウム化合物は、(特許
文献19)においてコギオ(Coggio)らによって開示されている。脱フッ化水素剤
の組み合わせを必要ならば用いてもよい。
【0050】
上述したように、脱フッ化水素すると、フルオロポリマーの主鎖に沿って二重結合が生
じ、二重結合は、後でまたは同時に反応させて、フルオロポリマーの分岐を引き起すこと
が可能である。一般に、異なるフルオロポリマー鎖の二重結合間の反応は高温で酸素の存
在下で容易に起きうるか、または二重結合は光例えばUV線による照射によって反応させ
うる。あるいは、ラジカル発生化合物は二重結合の反応を引き起こすために用いてもよい
。例えば、過酸化物は二重結合を反応させるために用いてもよい。適する有機過酸化物は
高温でラジカルを発生させるものである。例えば、50℃より高い温度で分解する過酸化
ジアルキルまたはビス(ジアルキルペルオキシド)を用いてもよい。このタイプの最も有
用な過酸化物の中には、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ターシャリーブチルペルオキシ
)ヘキシン−3および2,5−ジメチル−2,5−ジ(ターシャリーブチルペルオキシ)
ヘキサンがある。他の過酸化物は、過酸化ジクミル、過酸化ジベンゾイル、ターシャリー
ブチルパーベンゾエート、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ−ジイソプロピルベン
ゼン)およびジ[1,3−ジメチル−3−(t−ブチルペルオキシ)−ブチル]カーボネ
ートのような化合物から選択することが可能である。
【0051】
脱フッ化水素反応および/または形成される二重結合の反応は、典型的には、フルオロ
ポリマー鎖の間の反応の限定的な量のみが起きるように制御するべきである。多すぎる量
の二重結合が形成され反応させる時、高すぎる零剪断速度粘度(η0)を有する架橋ポリ
マーが生じうる。
【0052】
二重結合間の反応を引き起こすための更なる実施形態において、脱フッ化水素はポリヒ
ドロキシ化合物の存在下で行ってもよい。フルオロエラストマーの技術上知られているよ
うに、ポリヒドロキシ化合物の存在下で脱フッ化水素すると、フルオロポリマー鎖の間の
反応は引き起こされ、よってフルオロエラストマーへのフルオロポリマーの架橋を引き起
こす。
【0053】
ポリヒドロキシ化合物は、(特許文献20)(パティソン(Pattison))およ
び(特許文献21)(ワーム(Worm))で開示されたポリヒドロキシ化合物などの、
フルオロエラストマーのための架橋剤または共架橋剤として機能することが技術上知られ
ているポリヒドロキシ化合物のいずれであってもよい。代表的な芳香族ポリヒドロキシ化
合物には、ジヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシベンゼン、テトラヒドロキシベンゼン
、ナフタレン、アントラセンおよびビスフェノールのいずれか1種が挙げられる。一般に
用いられる芳香族ポリフェノール、4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデニルビスフ
ェノール(ビスフェノールAFとしてより一般に知られている)、化合物4,4’−ジヒ
ドロキシジフェニルスルホン(ビスフェノールSとしても知られている)および4,4’
−イソプロピリデニルビスフェノール(ビスフェノールAとしても知られている)も用い
ることが可能である。
【0054】
本発明の特定の実施形態において、溶融加工性ポリマー組成物は、メルトフローインデ
ックスが異なる少なくとも2種のフルオロポリマーのブレンドを含み、前記フルオロポリ
マーの少なくとも1種は少なくとも0.2のLCBIおよび265℃で107Pa以下の
零剪断速度粘度を有する。従って、本発明の特定の実施形態において、第1のフルオロポ
リマー成分がメルトフローインデックス(MFIA)を有し、第2のフルオロポリマー成
分がメルトフローインデックス(MFIB)を有し、MFIAがMFIBより大きい、すな
わち、成分Aが成分Bより高い分子量を有するフルオロポリマーのブレンドを用いてもよ
い。一般に、MFIA:MFIBの比は一般には少なくとも2:1、典型的には5:1〜1
6:1であるのがよい。成分A対成分Bの重量比は広く異なってもよく、1:99〜9
9:1の間であることが可能である。
【0055】
他の実施形態において、溶融加工性ポリマー組成物は、少なくとも0.2のLCBIお
よび265℃で107Pa以下の零剪断速度粘度を有する1種以上のフルオロポリマーと
本質的に線状である、すなわち0.2未満、例えば0.1未満のLCBIを有する1種以
上のフルオロポリマーのブレンドを含む。分岐フルオロポリマーを線状フルオロポリマー
とブレンドする時、後者の量は一般に10〜50重量%の間であるのがよい。
【0056】
溶融加工性ポリマー組成物中のフルオロポリマーの量は典型的には比較的少ない。用い
られる厳密な量は、溶融加工性ポリマー組成物を最終形態(例えばフィルム)に押し出そ
うとしているか否か、または最終形態に押し出す前に追加のホストポリマーで更に希釈さ
れるべきマスターバッチまたは加工添加剤として溶融加工性ポリマー組成物を用いようと
しているか否かに応じて異なってもよい。一般には、フルオロポリマーは溶融加工性ポリ
マー組成物の約0.005〜50重量%を構成する。溶融加工性ポリマー組成物がマスタ
ーバッチまたは加工添加剤である場合、フルオロポリマーの量は組成物の約2〜50重量
%の間で異なってもよい。溶融加工性ポリマー組成物を最終形態に押し出そうとし、追加
のホストポリマーによって更に希釈しない場合、溶融加工性ポリマー組成物は、典型的に
はフルオロポリマーのより低い濃度、溶融加工性ポリマー組成物の例えば約0.005〜
2重量%、好ましくは溶融加工性ポリマー組成物の約0.01〜0.2重量%を含む。と
にかく、用いられるフルオロポリマーの上限濃度は、フルオロポリマーの濃度の不利ない
ずれかの物理的作用ではなく経済的限界によって一般に決定される。
【0057】
種々のポリマーが本発明におけるホストポリマーとして有用である。有用なホストポリ
マーは、時には困難溶融加工性と呼ばれる非フッ素化ポリマーである。それらのポリマー
は炭化水素ポリマーと非炭化水素ポリマーの両方を含む。有用なホストポリマーの例には
、ポリアミド、塩素化ポリエチレン、ポリイミド、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリ
スチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリケトン、ポリウレア;、ポリ塩化ビニ
ルなどのポリビニル樹脂、ポリアクリレートおよびポリメチルアクリレートが挙げられが
、それらに限定されない。
【0058】
ホストポリマーの特に有用なクラスはポリオレフィンである。本発明において有用なポ
リオレフィンの代表的な例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1−ブテン)、ポ
リ(3−メチルブテン)、ポリ(4−メチルペンテン)ならびにエチレンと、プロピレン
、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテンお
よび1−オクタデセンのコポリマーである。
【0059】
本発明において有用なポリオレフィンの代表的なブレンドは、ポリエチレンと、ポリプ
ロピレン、線状または分岐の低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンのブレンド、およ
びポリエチレンと前記共重合性モノマーを含むオレフィンコポリマーのブレンドであり、
それらの幾つかを以下で記載する。例えば、エチレンとアクリル酸のコポリマー、エチレ
ンとメチルアクリレートのコポリマー、エチレンとエチルアクリレートのコポリマー、エ
チレンと酢酸ビニルのコポリマー、エチレン、アクリル酸およびエチルアクリレートのコ
ポリマー、ならびにエチレン、アクリル酸および酢酸ビニルのコポリマー。
【0060】
1種以上のオレフィンと、こうしたオレフィンと共重合可能である約30重量%まで、
好ましくは20重量%以下の1種以上のモノマー、例えば酢酸ビニルなどのビニルエステ
ル化合物のコポリマーと同様に、ポリオレフィンはオレフィンの単独重合または共重合に
よって得てもよい。オレフィンは一般構造CH2=CHRによって特徴付けることが可能
である。式中、Rは水素またはアルキル基であり、このアルキル基は一般には10個以下
の炭素原子、好ましくは1〜6個の炭素原子を含む。代表的なオレフィンは、エチレン、
プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンおよび1−オクテン
である。オレフィンと共重合可能である代表的なモノマーには、酢酸ビニル、プロピオン
酸ビニル、酪酸ビニル、クロロ酢酸ビニルおよびクロロプロピオン酸ビニルなどのビニル
エステルモノマー、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、メチルアクリレート、エ
チルアクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、メタクリルアミドおよびアクリロ
ニトリルなどのアクリル酸モノマーおよびアルファアルキルアクリル酸モノマーならびに
それらのアルキルエステル、アミドおよびニトリル、スチレン、o−メトキシスチレン、
p−メトキシスチレンおよびビニルナフタレンなどのビニルアリールモノマー、塩化ビニ
ル、塩化ビニリデンおよび臭化ビニリデンなどのハロゲン化ビニルモノマーおよびハロゲ
ン化ビニリデンモノマー、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルおよび無水マレイン
酸などのマレイン酸およびフマル酸ならびにそれらの無水物のアルキルエステルモノマー
、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルおよび2−
クロロエチルビニルエーテルなどのビニルアルキルエーテルモノマー、ビニルピリジンモ
ノマー、N−ビニルカルバゾールモノマーならびにN−ビニルピロリジンモノマーが挙げ
られる。
【0061】
有用なホストポリマーは、遊離カルボン酸基を含むオレフィンコポリマーまたはそれら
のブレンドの金属塩も含む。ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウ
ム、アルミニウム、バリウム、亜鉛、ジルコニウム、ベリリウム、鉄、ニッケルおよびコ
バルトなどの1価、2価および3価の金属は、前記カルボン酸ポリマーの塩を提供するた
めに使用できる金属の実例である。
【0062】
有用なホストポリマーは、種々の熱可塑性ポリマーのブレンド、ならびに酸化防止剤、
光安定剤、充填剤、粘着防止剤および顔料などの従来の補助剤を含む熱可塑性ポリマーの
ブレンドも含む。
【0063】
ホストポリマーは、粉末、ペレット、グラニュールの形態、または他のあらゆる押出可
能な形態で用いてもよい。本発明において有用な最も好ましいオレフィンポリマーは、エ
チレンおよびプロピレンのホモポリマー、またはエチレンと、1−ブテン、1−ヘキセン
、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、プロピレン、酢酸ビニルおよびメチルアク
リレートのコポリマーなどの炭化水素ポリマーである。本発明の溶融加工性組成物は様々
な方法のいずれかによって調製することが可能である。例えば、ホストポリマーとフルオ
ロポリマーは、コンパウンディングミル、バンバリーミキサーまたはホストポリマー全体
を通してフルオロポリマーを均一に分配する混合押出機によるなどの、プラスチック工業
で通常用いられているブレンド手段のいずれかによって合わせて組み合わせることが可能
である。フルオロポリマーおよびホストポリマーは、例えば粉体、ペレットまたは粒状の
製品の形で用いてもよい。混合操作は、フルオロポリマーの融点または軟化点より高い温
度で最も便利に行われる。但し、微粒子として固体状態で成分をドライブレンドし、その
後、ドライブレンドを二軸スクリュー押出機にフィードすることにより成分の均一分配を
引き起こすことも実行可能である。
【0064】
溶融ブレンドされた得られた混合物はペレット化することが可能であるか、または別段
に所望の粒子サイズまたはサイズ分布に粉砕し、押出機にフィードすることが可能である
。押出機は、典型的には、ブレンドされた混合物を溶融加工する一軸スクリュー押出機で
ある。溶融加工は、典型的には180℃〜280℃の温度で行われる。但し、最適運転温
度はブレンドの融点、溶融粘度および熱安定性に応じて選択される。本発明の組成物を押
し出すために用いてもよい押出機の様々なタイプは、例えば、ラウエンダール(Rauw
endaal,C)著(非特許文献6)によって記載されている。押出機のダイ設計は、
二次加工しようとする所望の押出物に応じて異なることが可能である。例えば、環状ダイ
は、(特許文献22)(ヌーン(Noone)ら)に記載されたものなどの燃料ラインホ
ースを製造する際に有用であるチューブを押し出すために用いることが可能である。この
記載は本明細書に引用して援用する。
【0065】
ブレンドされた組成物は、酸化防止剤、粘着防止剤、顔料および充填剤、例えば、二酸
化チタン、カーボンブラックおよびシリカなどの従来の補助剤を含有することが可能であ
る。粘着防止剤を用いる時、粘着防止剤は、被覆された材料または被覆されていない材料
であってもよい。
【0066】
フルオロポリマーは、いわゆる相乗剤としてのポリ(オキシアルキレン)ポリマー成分
と組み合わせてもよい。相乗剤とは、あたかもより多い量のフルオロポリマーを用いたか
のように非フッ素化ポリマーの押出特性および加工特性において本質的に同じ改善を達成
しつつ、より少ない量のフルオロポリマーの使用を可能にする化合物、一般には非フッ素
化有機化合物を意味する。ポリ(オキシアルキレン)ポリマー成分は1種以上のポリ(オ
キシアルキレン)ポリマーを含んでもよい。有用な加工添加剤組成物は、約5〜95重量
%の間のポリ(オキシアルキレン)ポリマー成分および95〜5重量%の間のフルオロポ
リマーを含む。加工助剤中のフルオロポリマー対ポリ(オキシアルキレン)ポリマー成分
の比は典型的には1/2〜2/1である。
【0067】
ポリ(オキシアルキレン)ポリマー成分は、全溶融加工性組成物の一般には約0.00
5〜20重量%の間、より好ましくは約0.01〜5重量%の間、最も好ましくは約0.
02〜1重量%の間を含んでもよい。一般に、本発明において有用なポリ(オキシアルキ
レン)ポリマーには、ポリ(オキシアルキレン)ポリオールおよびポリ(オキシアルキレ
ン)ポリオール誘導体が挙げられる。こうしたポリ(オキシアルキレン)ポリマーのクラ
スは一般式
A[(OR3xOR2y
(式中、Aは、ポリヒドロキシアルカンまたはポリエーテルポリオール、例えば、エチレ
ングリコール、グリセロール、1,1,1−トリメチロールプロパンおよびポリ(オキシ
プロピレン)グリコールなどの複数(例えば2または3個)の活性水素原子を有する低分
子量開始剤有機化合物の無活性水素残基であり、
yは2または3であり、
(OR3xは複数のオキシアルキレン基OR3を有するポリ(オキシアルキレン)鎖であ
り、R3部分は同じかまたは異なることが可能であり、C1〜C5アルキレン基、好ましく
はC2またはC3アルキレン基からなる群から選択される。xは前記鎖中のオキシアルキレ
ン単位の数である。)
によって表すことが可能である。前記ポリ(オキシアルキレン)鎖はホモポリマー鎖、例
えば、ポリ(オキシエチレン)またはポリ(オキシプロピレン)であることが可能である
か、またはランダムに分配された(すなわち異質混合物)オキシアルキレン基の鎖、例え
ばコポリマー−OCH24−および−OC36−単位であることが可能であるか、あるい
は反復オキシアルキレン基の交互ブロックセグメントまたは交互主鎖セグメントを有する
鎖、例えば(−OC24−)aおよび(−OC36−)bブロック(式中、a+b=5〜5
000以上、好ましくは10〜500)を含むポリマーであることが可能である。
2は、Hまたはアルキル、アリールあるいはアラルキルまたはアルカリールなどのそれ
らの組み合わせなどの有機基であり、酸素および窒素ヘテロ原子を含んでもよい。例えば
、R2は、メチル、ブチル、フェニル、ベンジル;およびアセチル、ベンゾイルおよびス
テアリルなどのアシル基であることが可能である。代表的なポリ(オキシアルキレン)ポ
リマー誘導体は、末端ヒドロキシ基がエーテル誘導体、例えばメトキシ基、またはエステ
ル誘導体、例えばステアレート基に部分的にまたは完全に転化されているポリ(オキシア
ルキレン)ポリオール誘導体を含むことが可能である。他の有用なポリ(オキシアルキレ
ン)誘導体は、例えばジカルボン酸とポリ(オキシアルキレン)グリコールから調製され
たポリエステルである。好ましくは、重量によるポリ(オキシアルキレン)ポリマー誘導
体の主要割合は反復オキシアルキレン基(OR3)である。
【0068】
ポリ(オキシアルキレン)ポリオールおよびポリ(オキシアルキレン)ポリオール誘導
体は、室温で固体であるとともに少なくとも200の分子量、好ましくは約400〜20
,000以上の分子量を有するものであることが可能である。本発明において有用なポリ
(オキシアルキレン)ポリオールには、式H(OC24nOH(式中、nは約15〜3
000である)によって表すことができるポリエチレングリコール、例えば、「カルボワ
ックス(Carbowax)」(商標)PEG8000(式中、nは約181である)な
どの「カルボワックス(Carbowax)」商標で販売されているもの、および「ポリ
オックス(Polyox)」(商標)WSR N−10(式中、nは約2272である)
などの「ポリオックス(Polyox)」という商品名で販売されているものが挙げられ
る。
【0069】
ポリ(オキシアルキレン)ポリマーの代替として、またはポリ(オキシアルキレン)ポ
リマーと組み合わせて、相乗剤として次のポリマーのいずれかを用いることも可能である
。i)シリコーン−ポリエーテルコポリマー、ii)ポリ(ブチレンアジペート)、ポリ
(乳酸)およびポリカプロラクトンポリエステルなどの脂肪族ポリエステルならびに(i
ii)フタル酸ジイソブチルエステルなどの芳香族ポリエステル。
【0070】
溶融加工性ポリマー組成物は、溶融加工性非フッ素化ポリマーの押出において有用であ
り、押出には、例えば、フィルムの押出、押出ブロー成形、射出成形、パイプ、ワイヤお
よびケーブルの押出ならびに繊維の製造が挙げられる。
【0071】
本発明のより良好な理解を助けるために以下の実施例を提示する。これらの実施例は、
本発明のすべての実施形態の網羅的な編集物として解釈されるべきではなく、本発明の範
囲を限定すると不必要に解釈されるべきではない。
【実施例】
【0072】
試験方法
メルトフローインデックス(MFI)は、5kgの支持体重量および265℃の温度で
DIN53735、ISO12086またはASTM D−1238に準拠して行った。
ここで列挙されたMFIは、直径2.1mmおよび長さ8.0mmの標準化押出ダイによ
り得た。
【0073】
希釈されたポリマー溶液の溶液粘度は、DIN53726に準拠して35℃でメチルエ
チルケトン(MEK)中の0.16%ポリマー溶液で通常は決定した。ISO/DIS3
105およびASTM D2515を満たす「コノン・フェンスキー・ルーチン・ビスコ
シメータ(Connon−Fenske−Routine−Viskosimeter)
」(スコット(Fa.Schott))、マインツ/ドイツ国)を測定のために用い、ハ
ーゲンバック(Hagenbach)補正を適用した。ハギンズ(Huggins)式(
ηred=[η]+kH×[η]2×c)およびハギンズ(Huggins)定数KH=0.3
4を用いて、こうして得られた減少した粘度ηredを固有粘度[η]に換算した。減少し
た粘度ηredに加えて固有粘度[η]をml/gの物理単位で報告している。
【0074】
周波数スイープ実験におけるフルオロポリマーの動的機械的データを記録するために、
レオメトリ・サイエンティフィック(Rheometry Scientific)の歪
制御ARESレオメータまたはTAインストルメンツ(TA Instruments
Ltd.)製のAR2000レオメータを用いた。窒素雰囲気内の特定の温度での種々の
周波数スイープのために、25mm平行板形状を用い、典型的には1〜20%の範囲の歪
を加えた。オーケストレータ(Orchestrator)の時間−温度−シフト(TT
S)ツールまたは「レオロジー・アドバンテージ・データ・アナリシス(Reology
Advantage Data Analysis)」(TAインストルメンツ(TA
Instruments Ltd.)ソフトウェアを用いて(一定温度での)個々の周
波数スイープを1つのマスター曲線に重ね合わせた。基準温度として265℃を用いた。
オーケストレータ(Orchestrator)の4パラメータ・Carreauフィッ
ト関数または「シグマプロット(Sigmaplot)」2000ソフトウェアを用いて
、Paで報告された零剪断粘度η0を外挿した。
【0075】
ラテックスの粒子サイズの決定は、ISO/DIS13321に準拠して「マルバーン
ツエタジザー(Malvern Zetazizer)」1000HSAによる動的光
散乱によって行った。測定の前に、重合から生成したままのポリマーラテックスを0.0
01モル/L KCl溶液で希釈した。測定温度はすべての場合に20℃であった。
【0076】
19F核磁気共鳴(NMR)スペクトルを「ブルカー・アドバンス(Bruker Av
ance)」400(400.13MHz)計器で記録した。3000スキャン/測定を
通常は適用した。
【0077】
凍結凝固フルオロポリマーについてフルオロポリマーのために上述した方法により決定
された零剪断速度粘度(η0)および固有粘度([η])の値を用い、上述した式1によ
りLCBI値を計算した。5.8の値をすべてのフルオロポリマーのための式1の定数と
して用いた。1.5×10-8の値をポリマーLCB FC−1〜LCB FC−6のため
の式1の定数kとして用いた。5.5×10-8をLCB FC−7〜FC−8のために用
い、2.4×10-8をLCB FC−9〜LCB FC−11のために用いた。
【0078】
フルオロポリマーの調製
LCBフルオロポリマー(LCB FC−1〜LCB FC−6)の合成
長鎖分岐フルオロポリマーLCB FC−1〜LCB FC−6は、LCB FC−1
の合成を例示している本質的に以下の手順により製造した。
【0079】
インペラ型攪拌機システムが装着された(フィード配管を含む)全体積48.5lの重
合ケトルに29.0lの脱イオン水を投入した。その後、酸素のないケトルを70℃まで
加熱し、攪拌システムを240rpmに設定した。ケトルに8.0バール絶対まで6.0
gのジメチルエーテル(Me2O)および980gのヘキサフルオロプロピレン(HFP
)を、15.5バール絶対反応圧力まで435gのフッ化ビニリデン(VDF)を投入し
た。以下において、HFPのためのフィードラインとして用いられた全体積5.31のス
テンレススチールシリンダーを完全に排気した。完全に排気した後、理想気体の法則によ
り室温で14gに対応する450ミリバールのBDFEをシリンダーに投入した。その後
、シリンダーに5310gのHFPを迅速に投入して乱流条件下でHFPへのBDFEの
十分な分散を確実にした。
【0080】
120mlの水に溶解させた40gの水性アンモニウムペルオキソジスルフェート(A
PS)の添加によって重合を開始させた。反応が始まるにつれて、反応温度を維持し、0
.653のフィード比HFP(kg)/VDF(kg)により気相にVDFおよびHFP
をフィードすることにより15.5バール絶対の反応圧力を維持した。8125gのVD
Fの全フィードに241分で達した時、モノマー弁を閉じることによりモノマーのフィー
ドを中止した。10分以内に、モノマー気相を8.2バールのケトル圧力まで反応させて
下げた。その後、反応器をベントし、3サイクルでN2によりフラッシュした。
【0081】
固形物含有率32.5%のこうして得られた42.4kgのポリマー分散液を反応器の
底で回収した。分散液は動的光散乱により直径383nmのラテックス粒子からなってお
り、凝塊は重合内で目に見えて形成されなかった。
【0082】
5.0lのこのポリマー分散液を冷凍庫内で一晩凍結凝固させた。材料を解凍後、こう
して得られたスポンジ様原料ポリマーを脱イオン水で5回洗浄し、ポリマーを絞り出し、
オーブン内で12時間にわたり130℃で乾燥させた。あるいは、ポリマー分散液をMg
Cl2の水溶液内で凝固させ、チーズクロスフィルタを通して分離し、105℃に設定さ
れた循環空気炉内で乾燥させた。その後、材料を液体窒素でTgより低く冷却し、顆粒状
粒子サイズに「ウィリー(Wiley)」ミル内で粉砕した。ポリマーは半透明であり、
変色のあらゆる兆候を示さなかった。ポリマーは2.30g/10’のMFI(265/
5)およびNMRによるVDF78モル%およびHFP22モル%の組成を有していた。
【0083】
異なる組成を考慮するために適切に修正したことを除き、フルオロポリマーLCB F
C−2〜LCB FC−6を類似の手順により製造した。こうして調製されたポリマーの
組成および特徴を表1に示している。
【0084】
【表2】

【0085】
LCBフルオロポリマー(LCB FC−7およびLCB FC−8)の合成
LCB FC−7およびLCB FC−8は、それぞれ0.38モル%BTFEおよび
0.20モル%BTFEにより更に変性された、コモノマーTFE/HFP/VDF32
/33/34(モル%)の組み合わせを含むフルオロポリマーである。こうして得られた
LCBフルオロポリマーは、それぞれ4.35および3.41のLCBIを有していた。
【0086】
ポリマーLCB FC−7を次の手順により製造した。
【0087】
インペラ型攪拌機システムが装着された(フィード配管を含む)全体積48.5lの重
合ケトルに29.0lの脱イオン水を投入した。その後、酸素のないケトルを70℃に加
熱し、攪拌システムを240rpmに設定した。ケトルに約10.7バール絶対の圧力ま
で12.6gのジメチルエーテル(Me2O)、アンモニウムパーフルオロオクタノエー
ト(AFPO)の30%水溶液252gおよび1608gのヘキサフルオロプロピレン(
HFP)を、次に、約13.3バール絶対まで167gのフッ化ビニリデン(VDF)を
、その後、約15.6バール絶対反応圧力まで254gのテトラフルオロエチレン(TF
E)を投入した。以下において、HFPのためのフィードラインとして用いられた全体積
5.3lのステンレススチールシリンダーに別個のシリンダーから84gのBTFEを投
入した。この別個のBTFEフィードラインは、HFPシリンダーに導入されたモノマー
の直接質量検出を可能にする。その後、5000gの全モノマー質量に達するまで、HF
Pシリンダーに追加のHFPを迅速に投入して(乱流条件下でHFPへのBTFEの十分
な分散を確実にした)。
【0088】
120mlの水に溶解させた40gの水性アンモニウムペルオキソジスルフェート(A
PS)の添加によって重合を開始させた。反応が始まるにつれて、反応温度を維持し、2
9.5/38.0/32.5のフィード重量割合TFE/HFP/VDFにより気相にV
DF、TFEおよびHFP/BTFEモノマーブレンドをフィードすることにより15.
5バール絶対の反応圧力を維持した。4209gのVDFの全フィードに265分で達し
た時、モノマー弁を閉じることによりモノマーのフィードを中止した。10分以内に、モ
ノマー気相を8.2バールのケトル圧力まで反応させて下げた。その後、反応器をベント
し、3サイクルでN2によりフラッシュした。
【0089】
固形物含有率30.9%のこうして得られた40.5kgのポリマー分散液を反応器の
底で回収した。分散液は動的光散乱により直径87nmのラテックス粒子からなっており
、凝塊は重合内で目に見えて形成されなかった。
【0090】
5.0lのこのポリマー分散液を冷凍庫内で一晩凍結凝固させた。材料を解凍後、こう
して得られたスポンジ様原料ポリマーを脱イオン水で5回洗浄し、ポリマーを絞り出し、
オーブン内で12時間にわたり130℃で乾燥させた。あるいは、ポリマー分散液をMg
Cl2の水溶液内で凝固させ、チーズクロスフィルタを通して分離し、105℃に設定さ
れた循環空気炉内で乾燥させた。その後、材料を液体窒素でTgより低く冷却し、顆粒状
粒子サイズに「ウィリー(Wiley)」ミル内で粉砕した。ポリマーは半透明であり、
変色のあらゆる兆候を示さなかった。ポリマーは2.30g/10’のMFI(265/
5)およびNMRによるVDF78モル%およびHFP22モル%の組成を有していた。
このポリマーは減少した粘度111.5mgを示した。
【0091】
表2に記載された異なる組成を考慮するために適切に修正したことを除き、フルオロポ
リマーLCB FC−8およびC−3を類似の手順により製造した。
【0092】
【表3】

【0093】
LCBフルオロポリマーLCB FC−9〜LCB FC−11の合成
LCBフルオロポリマーLCB FC−9〜LCB FC−12は、スリーエム・カン
パニー(3M Company)からTHV200として市販されているTFE/HFP
/VDFターポリマーのグラフト反応または僅かな架橋反応により製造した。
【0094】
清浄化され100℃でオーブン内で乾燥された丸底フラスコに6gのTHV200を投
入した。フラスコをアルゴンまたは窒素の雰囲気でフラッシュし、ゴム隔壁によって密封
した。フラッシュした後にフラスコ内の圧力を維持するために、アルゴンまたは窒素が充
填された気球をフラスコに取り付けた。150mlの無水テトラヒドロフラン(THF)
をシリンジにより添加し、ポリマーが溶解するまで混合物を攪拌した。THF中の1,8
−ジアザビシクロ[5.4.0]−ウンデク−7−エン(DBU)の2g/100ml溶
液の、所望の反応レベルを得るのに関する化学量論量を添加した。混合物は無色からオレ
ンジに変わった。混合物を放置して29時間にわたり攪拌した。ポリマーを脱イオン水中
で沈殿させることによりポリマーを精製し、その後、ポリマーをTHFに溶解させた。ポ
リマーをヘプタン中で沈殿させ、分離し、70℃で真空下で乾燥させた。LCBI値およ
び零剪断速度粘度を表3に記録している。
【0095】
【表4】

【0096】
ポリマー溶融加工性添加剤としてのLCBフルオロポリマーの評価
実施例1〜6および比較例C−1およびC−2
実施例1〜6において、LCBフルオロポリマーLCB FC−1〜LCB FC−6
のポリマー溶融加工性添加剤としての性能を試験した。(特許文献23)で開示されたよ
うにVDF78/HFP22−コポリマーを用いて比較例C−1を製造した。コポリマーは、
ηred=118ml/gの減少した粘度、零剪断粘度η0(265℃)=2.6×104
aおよび0.16のLCBIを有していた。ηred=121.5ml/g、零剪断粘度η0
(265℃)=3.03×107Paおよび2.81のLCBIを有する(NMRで決定
した)VDF78/HFP22−コポリマーを含むダウ・デュポン・エラストマー(Dow
DuPont Elastomer)(DDE)製の市販加工助剤「バイトン(Vito
n)」(商標)Z−200により比較例C−2を製造した。
【0097】
第1の工程において、フルオロポリマーLCB FC−1〜LCB FC−6を1:2
の比でポリエチレングリコールとブレンドした。フルオロポリマーとPEGの混合物をP
PAと更に呼ぶ。試験のために用いられたポリオレフィンは、0.7g/10’のMFI
(190/2.16)を有する市販ブテン変性線状低密度ポリエチレン(エクソンモービ
ル(ExxonMobil)製のLLDPE)(ホスト樹脂)であった。押出の前に、2
.8g/10’のMFI(190/2.16)を有するキャリア樹脂(エクソンモービル
(ExxonMobil)製のLLDPE)中で2重量%添加剤濃度にPPAのマスター
バッチを配合した。十分な混転は、LLDPEホスト樹脂とLLDPEキャリア樹脂のブ
レンドを提供した。LLDPE中のPPAのこうして得られた濃度は400ppmであっ
た。2%FSU 105E(スリップ剤および粘着防止剤を含む、シュールマン(A.S
chulman)から入手できる)を添加して配合を完成させた。
【0098】
以下の部品の実験室規模「コリン(Collin)」ブローフィルムラインで押出実験
を行った。
【0099】
【表5】

【0100】
46rpmのスクリュー速度で、押出機産出量は11kg/時間であり、温度分布は以
下の通りであった。
ゾーン1:205℃
ゾーン2:205℃
ゾーン3:210℃
ゾーン4:220℃
ダイ:205℃
【0101】
ホスト樹脂配合物を少なくとも60分にわたり走らせることによりベースライン条件を
確立した。押出機ゲート圧力、溶融温度およびフィルムの状態をこの時に記録した。押出
条件のフルセットを5分ごとに記録した(例えば、ゲート圧力、Pgate)。評価しようと
する樹脂のためのベースラインを一旦確立すると、400ppmのPPA(キャリア樹脂
とホスト樹脂のブレンド樹脂)を含む樹脂を押出機に投入し、時間を記録した。5分間隔
で、フィルムサンプルを採取し、メルトフラクチャ排除(%MF)に関して目視で検査し
た。メルトフラクチャを60分で0%に減らした場合、データポイントは完全であった。
そうでない場合、PPAレベルを600ppmに上げ、プロセスを最大でもう60分にわ
たり繰り返した。結果を表4および5においてまとめている。
【0102】
【表6】

【0103】
【表7】

【0104】
線状目盛りでプロットされたX軸上の押出時間に対してY軸をlog目盛りでプロット
する場合、表4および5にまとめられたメルトフラクチャ排除データをうまく線形化する
ことが可能である(括弧内のデータはこの検討には含めなかった)。本明細書において、
一般タイプの線状関数
log{メルトフラクチャ[%]}=b0−b1×t[分]
を用いてデータを近似化する。
上式中、回帰線の勾配である係数b1はメルトフラクチャ排除の速度を定量化する。係
数b0およびb1ならびに相関係数r2を表6でまとめている。
【0105】
【表8】

【0106】
上の2つの回帰関数の勾配から分かるように、実施例1〜6のフルオロポリマーは、比
較フルオロポリマーより明らかに性能が優れている。例えば、実施例1のフルオロポリマ
ーが比較例C−1の材料より6.2倍速くLLDPEのメルトフラクチャを取り除き、そ
して比較例C−2の材料より5.1倍速くLLDPEのメルトフラクチャを除くことに注
目すること。
【0107】
実施例7および8ならびに比較例C−3
実施例7および8において、1g/10’のMFI(190/2.16)を有するエク
ソンモービル(ExxonMobil)製のブテン変性線状低密度ポリエチレン(グレー
ドLL 1001.32)(ホスト樹脂)を用いて、実施例1〜6と同じ方法でPPA混
合物を製造した。
【0108】
押出の前に、2g/10’のMFI(190/2.16)を有するキャリア樹脂(エク
ソンモービル(ExxonMobil)製の「エスコレン(Escorene)」(商標
).5002LLDPE)中で3%添加剤濃度にPPAのマスターバッチを配合した。十
分な混転は、LLDPEホスト樹脂とLLDPEキャリア樹脂のブレンドを提供した。L
LDPE中のPPAのこうして得られた濃度は750ppmであった。3000ppmの
「キマソーブ(Chimassorb)を添加して配合を完成させた。実験室規模「キー
フェル(Kiefel)」ブローフィルムラインで押出実験を行った。「キーフェル(K
iefel)」フィルムラインは、40mm押出機およびダイ、L/D24/1、ダイギ
ャップ0.6mm、スパイラルダイデザインおよびシングルリップ空気環からなっていた
。各ブローフィルムラインの試験の前に、30%シリカマスターバッチを押し出すことに
より装置をパージし、残留PPAを取り除いた。その後、基樹脂を添加し、一定圧力条件
を得るまで(一般に1時間)押し出した。その後、PPAマスターバッチとブレンドされ
た基樹脂を1時間の間押し出した。残留メルトフラクチャを記録した。
【0109】
0.78モル%BTFEで変性され44のLCBIによって特徴付けられる、TFE/
HFP/VDF32/33/34ポリマーを含むPPAにより比較例C−3を製造した。
メツロフラクチャの結果および圧力を表7で記録した。
【0110】
【表9】

【0111】
実施例9〜12
PPA中の化学変性ターポリマーLCB FC−9〜LCB FC−12により実施例
9〜12を製造した。これらの添加剤をレオメトリによって試験した。従って、「ハッケ
・レオコード(Haake Rheocord)」(商標)System40トルクレオ
メータおよびローラーブレードが装着された「レオミックス(Rheomix)」(商標
)3000E混合ボール付属品を用いて配合物を調製した。1g/10’のMFI(19
0/2.16)を有するエクソンモービル(ExxonMobil)製のブテン変性線状
低密度ポリエチレン(グレードLL、1001.32)(ホスト樹脂)中で添加剤を配合
した。混合シーケンスは15rpmで2分の材料装填時間で始まり、次の3分目の間、ロ
ータ速度を50rpmに上げ、継続時間にわたり一定で保持した。ボールの温度を180
℃で2分にわたり初期的にプログラミングし、その後、160℃に1分にわたり下げ、継
続時間の残りに関してその温度で保持した。全体の混合サイクルは8分にわたり続いた。
全バッチサイズは190グラムであり、サンプルの最終溶融温度は180℃〜200℃の
範囲内であった。フルオロポリマーのマスターバッチ濃度を1%のレベルで調製し、全バ
ッチサイズは樹脂A190グラムであった。混合物を放置してその溶融温度より下に冷却
した。冷却した混合物を液圧ベールカッターで小片に切断した。
【0112】
上述した手順を用いて上述した1%フルオロポリマーコンセントレートをより多くのポ
リエチレン樹脂で希釈してポリエチレンとフルオロポリマーコンセントレートの所望量を
混合することにより、より低いフルオロポリマー濃度を含む組成物を調製した。典型的な
フルオロポリマー試験レベルは1000ppmであった。冷却した混合物を再び切断し、
その後、「レッツミュール(Retschmuhl)グラインダ内で周囲温度で粉砕した

【0113】
添加剤の性能を190℃で「インストロン・キャピラリ・レオメータ(Instron
Capillary Rheometer)」(ICR)で評価した。3210キャピ
ラリ・レオメータ・バレルが装着された「インストロン(Instron)」(商標)4
202メインフレームを用いて実験を行った。ダイは、段積み可能な部品から製造された
スリットであった。ダイの寸法は、幅3.81mm×長さ14.45mmであり、ダイギ
ャップは0.254mmであった。試験温度は190℃であった。上の方法により調製さ
れた粉砕サンプルをレオメータバレルに詰め、放置して10分にわたり保圧した。これを
行って、試験が始まる前に均一溶融温度を確保した。
【0114】
清浄化されたばかりのダイを用いて、サンプルを200s-1の剪断速度で押し出し、帯
形記録計は時間に対するキャピラリピストン上の圧力を表示し、データ取得カードが装着
されたコンピュータを用いて圧力データを記録した。フルオロポリマー添加剤を含むサン
プルを押し出すにつれて、圧力は下がり、必要とされる押出力を下げるようにフルオロポ
リマーが機能したことを示唆した。圧力が平衡に達した時、最終圧力を記録した。サンプ
ルが試験バレルの末端によって平衡に達しなかった場合、バレルに装填しなおし、試験を
続けた。
【0115】
各試験の終わりに、キャピラリダイを取り外し、バレルをブラシおよびコットンガーゼ
で清浄化した。ダイを分解し、ダイフェースを超音波浴内でブタノンに15分にわたり浸
漬させた。
【0116】
フルオロポリマー添加剤のない基樹脂を同じ方式で試験して、比較のためのベースライ
ンを確立した。これらのベースラインを用いて、フルオロポリマーの存在によって提供さ
れた押出圧力の%減少を決定することが可能である。ここで、レオメータのピストン上の
荷重は圧力に直接比例し、それを計算のために用いた。%減少は、フルオロポリマーのな
いポリマーに関する荷重(L)とフルオロポリマー添加剤を有するポリマーに関する荷重
(Lad)の差をフルオロポリマーのない基ポリマーに関する荷重(L)で除したもの、す
なわち、%減少=(L−Lad)/Lとしてここで定義される。この値は、通常2%以内で
再現可能である。圧力減少のデータを表8に示している。
【0117】
【表10】

【0118】
本発明によるフルオロポリマーLCB FC−9〜LCB FC−12が押出圧力の減
少において非常に効果的であることが上表から分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)非フッ素化溶融加工性ポリマーおよび(b)フルオロポリマーを含む溶融加工性
ポリマー組成物であって、前記フルオロポリマーが少なくとも0.2の長鎖分岐指数(L
CBI)および265℃で107Pa以下の零剪断速度粘度を有することを特徴とする溶
融加工性ポリマー組成物。
【請求項2】
前記フルオロポリマーは265℃で103Paと5×106Paとの間の零剪断速度粘度
を有する、請求項1に記載の溶融加工性ポリマー組成物。
【請求項3】
前記フルオロポリマーは、前記非フッ素化溶融加工性ポリマーおよび前記フルオロポリ
マーの全重量を基準にして50重量%未満の量で存在する、請求項1に記載の溶融加工性
ポリマー組成物。
【請求項4】
前記フルオロポリマーの量は、前記非フッ素化溶融加工性ポリマーおよび前記フルオロ
ポリマーの全重量を基準にして2〜50重量%の間である、請求項3に記載の溶融加工性
ポリマー組成物。
【請求項5】
前記フルオロポリマーの量は、前記非フッ素化溶融加工性ポリマーおよび前記フルオロ
ポリマーの全重量を基準にして0.005〜2重量%の間である、請求項3に記載の溶融
加工性ポリマー組成物。
【請求項6】
LCBIは0.2〜5の間である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の溶融加工性ポ
リマー組成物。
【請求項7】
前記フルオロポリマーは1種以上のフッ素化モノマーおよび任意に1種以上の非フッ素
化コモノマーから誘導される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の溶融加工性ポリマー
組成物。
【請求項8】
前記フルオロポリマーは、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンと任意にヘキサ
フルオロプロピレンとのコポリマーまたはヘキサフルオロプロピレンとフッ化ビニリデン
とのコポリマーである、請求項7に記載の溶融加工性ポリマー組成物。
【請求項9】
前記フルオロポリマーは非晶質である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の溶融加工
性ポリマー組成物。
【請求項10】
前記溶融加工性非フッ素化ポリマーは、炭化水素ポリマー、ポリアミド、塩素化ポリエ
チレン、ポリイミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、
ポリケトン、ポリウレア、ポリビニル樹脂、ポリアクリレートおよびポリメチルアクリレ
ートからなる群から選択される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の溶融加工性ポリマ
ー組成物。
【請求項11】
前記溶融加工性ポリマー組成物はメルトフローインデックスが異なる少なくとも2種の
フルオロポリマーのブレンドを含み、前記フルオロポリマーの少なくとも1種は少なくと
も0.2のLCBIおよび265℃で107Pa以下の零剪断速度粘度を有する、請求項
1〜10のいずれか1項に記載の溶融加工性ポリマー組成物。
【請求項12】
1種以上の線状フルオロポリマーを更に含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の
溶融加工性ポリマー組成物。
【請求項13】
前記組成物は相乗剤を更に含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の溶融加工性ポ
リマー組成物。
【請求項14】
前記フルオロポリマーは、1種以上のフッ素化モノマーと(i)オレフィンの二重結合
の炭素に結合された臭素原子またはヨウ素原子を有するオレフィン、(ii)式(IV)

a2C=CXa−Rf−(Xbr
(式中、各Xaは独立して水素、フッ素、臭素、塩素またはヨウ素を表し、Rfはパーフル
オロアルキレン基、パーフルオロオキシアルキレン基またはパーフルオロポリエーテル基
であり、XbはCl、BrまたはIであり、rは1、2または3である)に対応するオレ
フィン、および(iii)それらの混合物から選択された1種以上の変性剤と(c)任意
に1種以上のコモノマーとの共重合から誘導される、請求項1〜13のいずれか1項に記
載の溶融加工性ポリマー組成物。
【請求項15】
前記フルオロポリマーは、脱フッ化水素化できるフルオロポリマーを脱フッ化水素化し
てフルオロポリマー主鎖中に二重結合を形成し、後でおよび/または同時に、形成された
二重結合の少なくとも1部の間で反応を引き起こしてフルオロポリマー鎖間の連結を形成
することにより得られる、請求項1〜14のいずれか1項に記載の溶融加工性ポリマー組
成物。
【請求項16】
(a)非フッ素化溶融加工性ポリマーおよび(b)少なくとも0.2の長鎖分岐指数(
LCBI)および265℃で107Pa以下の零剪断速度粘度を有するフルオロポリマー
をブレンドすることによって溶融加工性ポリマー組成物を製造する方法。
【請求項17】
非フッ素化ポリマーの押出における加工助剤として用いるためのポリマー溶融添加剤組
成物であって、少なくとも0.2の長鎖分岐指数(LCBI)および265℃で107
a以下の零剪断速度粘度を有するフルオロポリマーおよび相乗剤を含むポリマー溶融添加
剤組成物。
【請求項18】
メルトフローインデックスが異なる少なくとも2種のフルオロポリマーのブレンドを含
むポリマー溶融添加剤組成物であって、前記フルオロポリマーの少なくとも1種が少なく
とも0.2のLCBIおよび265℃で107Pa以下の零剪断速度粘度を有するポリマ
ー溶融添加剤組成物。
【請求項19】
1種以上の線状フルオロポリマーと少なくとも0.2のLCBIおよび265℃で10
7Pa以下の零剪断速度粘度を有する1種以上のフルオロポリマーのブレンドを含むポリ
マー溶融添加剤組成物。
【請求項20】
前記フルオロポリマーの少なくとも1種はフッ化ビニリデンから誘導可能な単位を含む
フルオロポリマーである、請求項18または19に記載のポリマー溶融添加剤組成物。
【請求項21】
非フッ素化ポリマーの押出における加工助剤として用いるためのポリマー溶融添加剤組
成物であって、少なくとも0.2の長鎖分岐指数(LCBI)および265℃で107
a以下の零剪断速度粘度を有するフルオロポリマーを含むポリマー溶融添加剤組成物。
【請求項22】
前記フルオロポリマーは多峰性である、請求項21に記載のポリマー溶融添加剤組成物


【公開番号】特開2011−6696(P2011−6696A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198490(P2010−198490)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【分割の表示】特願2006−533668(P2006−533668)の分割
【原出願日】平成16年6月9日(2004.6.9)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】