閉塞型睡眠時無呼吸を治療するための流体充填インプラント
閉塞型睡眠時無呼吸を治療するためのインプラント(20)が、柔軟チャンバ(22)と、柔軟チャンバと流体連通する流体リザーバ(24)と、流体リザーバ及び柔軟チャンバと連通しており、それらの間で流体を移送して柔軟チャンバの剛性を選択的に調整する流体移送組立体(26)と、を有する。柔軟チャンバは、舌、軟口蓋、咽頭壁などの患者の中咽頭気道の軟組織内に埋め込み可能である。流体リザーバと流体移送組立体は、患者の下顎下領域内に埋め込み可能である。流体移送組立体は、インプラントの容積の変化が最小又はない状態で2つのチャンバ間で流体を移送して柔軟チャンバの剛性、柔軟性、及び/又は形状を調整するために、患者によって選択的に係合可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に睡眠障害の治療に関し、より具体的には閉塞型睡眠時無呼吸を患う患者を治療するためのインプラント、インプラントシステム、装置及び方法に関する。
【関連技術の記載】
【0002】
閉塞型睡眠時無呼吸(OSA)は、気道の閉塞によって引き起こされ、通常は、睡眠中に喉の軟組織が倒壊及び閉鎖したときに発生する。閉塞は、咽頭腔の一部分に起こることがあり、咽頭の後壁への舌の倒壊、咽頭側壁の倒壊、及び舌の倒壊と軟口蓋(詳細には口蓋垂を含む軟口蓋の後方部分)の衝突の組み合わせによって形成される閉鎖を含むことがある。それぞれの無呼吸事象の間、脳はこの病人を覚醒させて呼吸の再開を開始させる。しかしながら、この種の睡眠は、極めて断片化されており、質が低い。
【0003】
National Institutes of Healthによれば、OSAは1200万人を超える米国人を侵している。処置しないでおくと、OSAは、高血圧、心臓血管疾患、体重増加、性交不能症、頭痛、記憶障害、仕事への支障、及び/又は自動車事故を引き起こす場合がある。OSAの重篤性にも関わらず、公衆及び医療専門家の間での一般的な認識の欠如により、大多数のOSA患者が未診断及び未処置のままとなっている。
【0004】
OSAの処置に向けた多大な努力がなされている。例えば、いびき及び閉塞型睡眠時無呼吸を治療するために軟口蓋を電気的に刺激するための装置が、米国特許第5,284,161号及び同第5,792,067号に開示されている。これらの装置を使用した結果は複雑なものであり、その理由は、これらの装置が、厳格な使用法に辛抱強く従うことを必要とし、睡眠中に患者に不快感を与え、その結果患者を何度も目覚めさせるからである。
【0005】
一般に持続的気道陽圧法(CPAP)と呼ばれる別の処置は、特別に設計された鼻マスク又は枕を通して空気を患者の気道内に送達する。患者が吸い込むときに空気の流れが正圧を形成して、気道を開いたままに維持する。CPAPは、いびき及び閉塞型睡眠時無呼吸を緩和するために有効な非外科的治療であると多くの人々によって考えられているが、患者は、腫脹、鼻の乾燥、及びドライアイなど、マスク及びホースにより生じる不快感についての不満を訴えている。その結果、CPAPに関する患者のコンプライアンスは約40%のみである。
【0006】
OSAの処置には、外科的処置も使用されて来た。そのような処置の1つは口蓋垂口蓋咽頭形成術と呼ばれ、舌と咽頭壁との間を粗動させる軟口蓋の能力を低減するために、軟口蓋の後縁を約2cm除去するものである。別の手技では、手術用レーザーを使用して軟口蓋の表面上に瘢痕組織を形成し、この瘢痕組織は軟口蓋の柔軟性を低下させて、いびき及び/又は気道の閉鎖を低減する。一般に焼灼による口蓋硬化手術(CAPSO)と呼ばれる更に別の処置は、局所麻酔下で行なわれる院内処置であり、それにより、軟口蓋粘膜の中央帯が除去され、その傷が口蓋を補強するために治療される。
【0007】
上述されたもののような外科的手技は、引き続き問題を有している。具体的には、外科的に治療される組織(即ち、口蓋組織の除去又は口蓋組織の瘢痕)の面積は、多くの場合、患者の症状を治療するのに必要な面積より大きい。加えて、上述した外科的手技は、多くの場合苦痛を与え、長い不快な治癒期間を有する。例えば、軟口蓋の瘢痕組織は、患者に持続的な刺激を与える場合がある。その上、上記の手技は、副作用の事象において元に戻すことができない。
【0008】
OSA治療のためのもう1つの外科的手技では、組織内にインプラントされる数個の編組PET円筒を用い、舌又は口蓋垂の組織をより堅く、屈曲しにくいものにする。Restore Medical(St.Paul,MN)から販売されているPillar(商標)口蓋インプラントシステムは、編組ポリエステルフィラメントの円筒形エレメントからなり、軽度〜中程度のOSAに罹患している患者において、気道閉塞の事象を減らすために、これを軟口蓋内に埋め込む。ピラー装置を使用すると、円筒形要素の噴出、感染、及び患者の不快感を含む悪い副作用が生じることがある。
【0009】
InfluENT(Concord,NH)によって商標「REPOSE(商標)」で販売されている別のインプラントシステムは、口腔底の下顎骨の後面に挿入されるチタン骨ネジを使用する。縫合糸のループを舌根に通し、下顎骨ネジに取り付ける。Repose(商標)手技は、舌根の懸吊又はハンモックの状態を達成して、睡眠中に舌根が逸脱しないようにする。しかしながら、覚醒状態の間に舌が活発に活動することに起因して、この装置の縫合要素は舌に対する「チーズカッター」としての働きをする場合があり、装置故障の原因となり、その後の除去を必要とする。
【0010】
OSAを処置する別の試みは、補助気道を形成して、主気道の詰まった部分にバイパスを形成することを含む。同一出願人による米国特許出願第12/182,402号(2008年7月30日出願)(この開示は参考として本明細書に組み込まれる)の1つの実施形態において、補助気道は、咽頭の咽頭壁の下に細長い導管を埋め込むことによって形成される。細長い導管は、咽頭の第1の領域と連通する近位端と、咽頭の第2の領域と連通する遠位端と、咽頭の中咽頭領域にバイパスを形成するために咽頭壁の下に延びる中間部分と、を有する。
【0011】
OSAの処置には、磁石も使用されている。例えば、その開示が本願にて参照により本明細書に組み入れられる、同一出願人による2008年7月31日出願の米国特許出願第12/183,955号の一実施形態では、磁石インプラントは、骨アンカーと、骨アンカーに結合された第1の磁石と、舌アンカーと、舌アンカーに結合された第2の磁石と、第1の磁石と第2の磁石とを整合し、それにより磁石間に反発力が生成されて第2の磁石を第1の磁石から離し、第2の磁石を骨アンカーに向かって追い立てる支持体と、を含む。支持体は、第1の磁石を骨アンカーから一定の距離に維持し、第1の磁石を第2の磁石と整合し、第1の磁石及び第2の磁石の移動を案内する。‘955の出願の1つ以上の実施形態に開示されている磁石インプラントは、堅い停止(hard stop)を有するインプラントを使用する際に見られる「チーズカッター」効果を避けるよう堅い停止を有さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記の進歩にも関わらず、長期的な効果を提供し、患者のコンプライアンスを促し、また患者の不快感を最小にする、最小侵襲性手法によるOSA処置のための更なるシステム、装置及び方法が尚必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施形態では、閉塞型睡眠時無呼吸を治療するためのインプラントは、舌内などの中咽頭気道の軟組織内に埋め込み可能な第1のチャンバと、第1のチャンバと連通する第2のチャンバと、を有する。インプラントはまた、第1のチャンバの剛性を調整するために、第1と第2の両方のチャンバと連通して、第1のチャンバと第2のチャンバとの間で流体を選択的に移送する流体移送組立体を有することが好ましい。一実施形態では、第1のチャンバは、柔軟であり、第2のチャンバは、液体や気体などの流体を収容する流体リザーバを有する。一実施形態では、第1のチャンバは、拡張不能であるか又は拡張が制限されることが好ましく、その結果、第1のチャンバ内の流体圧力が高まったときに第1のチャンバの剛性、柔軟性及び/又は形状が変化する。一実施形態では、インプラントの剛性、柔軟性及び/又は形状は、インプラントの容積の変化が最小か又はない状態で変更され得る。一実施形態では、インプラントは、閉塞型睡眠時無呼吸や便失禁などを治療するために、組織を選択的に支持するために使用されてもよい。
【0014】
一実施形態では、第1のチャンバは、閉塞型睡眠時無呼吸と関連した症状を治療するために、中咽頭気道の軟組織に埋め込み可能であることが望ましい。一実施形態では、第1のチャンバは、中咽頭気道の軟組織の堅さ及び/又は形状を変化させて睡眠中に気道を開いたままにすることなどによって患者の気道に作用し、それにより、閉塞型睡眠時無呼吸症状の発生が最小になる。
【0015】
一実施形態では、第1のチャンバは、患者の舌に埋め込み可能である。第1のチャンバは、また、患者の軟口蓋内、及び/又は咽頭壁内に埋め込み可能である。特定の好ましい実施形態では、複数のインプラントが、舌、軟口蓋及び/又は患者の咽頭壁に埋め込み可能でよい。例えば、第1のチャンバの2つ以上が、舌、軟口蓋、又は咽頭壁に埋め込み可能でよい。一実施形態では、第1のチャンバの1つ以上が、舌に埋め込み可能でよく、第1のチャンバの1つ以上が、軟口蓋や咽頭壁などの別の身体部分に埋め込み可能でよい。
【0016】
本明細書に開示されるインプラントは、患者の前後軸、垂直軸、横軸、又は水平軸に対する広い角度範囲のうちの任意の1つの角度範囲内で配置されてもよい。一実施形態では、インプラントは、前後軸に対して横方向に延在してもよい。一実施形態では、インプラントは、前後軸と平行な方向に延在してもよい。更に別の実施形態では、インプラントは、横軸と前後軸位置との間の角度で配置されてもよい。インプラントは、また、患者の垂直軸、患者の水平軸、又は垂直軸と水平軸との間の任意の角度で配置されてもよい。選択された角度は、患者の治療的有効性を最大にするように選択されることが好ましい。
【0017】
一実施形態では、第2のチャンバと流体移送組立体は、身体内の第1のチャンバから離れた場所に埋め込まれる。一実施形態では、インプラントの第2のチャンバとインプラントの流体移送組立体は、患者の下顎下領域に埋め込み可能である。流体リザーバと流体移送組立体は、柔軟な第1のチャンバの場所から離れた首又は胸部内の皮下に配置されてもよい。ポンプや弁組立体などの埋め込まれた流体移送組立体は、流体を第2のチャンバから第1のチャンバに選択的に移送して第1のチャンバの剛性、柔軟性及び/又は形状を調整するために、患者によって係合可能であることが望ましい。一実施形態では、患者は、自分の触覚を用いて皮膚の下の流体移送組立体を探り、次に流体移送組立体を操作して、流体リザーバと第1のチャンバとの間で流体を物理的に移送する。
【0018】
一実施形態では、インプラントは、インプラントの第1と第2のチャンバ内に使い捨ての流体を含むことが望ましい。流体には、第1のチャンバの剛性、柔軟性及び/又は形状を調整するために第1のチャンバと第2のチャンバとの間で選択的に前後に移送される液体又は気体が挙げられる。
【0019】
一実施形態では、柔軟チャンバは、無応力状態で装置の曲線変形を促進するために、波状又は畝状の管構造で作成されてもよい。一実施形態では、流体は、波状管構造の隙間を通って柔軟チャンバを容易に剛性状態に変えることができ、このとき最小量の流体しか使用する必要がない。
【0020】
一実施形態では、閉塞型睡眠時無呼吸を治療するためのインプラントは、柔軟チャンバと、柔軟チャンバと流体連通した流体リザーバと、流体リザーバ及び柔軟チャンバと連通して流体リザーバと柔軟チャンバとの間で流体を移送する流体移送組立体と、を有する。流体が、流体リザーバから柔軟チャンバに移送されるとき、柔軟チャンバの剛性が調整される。一実施形態では、流体が柔軟チャンバに導入されるとき、柔軟チャンバはより剛性になる。柔軟チャンバの剛性を低下させたいとき(例えば、患者が覚醒したとき)、患者は、流体移送組立体と係合して、流体を柔軟チャンバから流体リザーバに移送してもよい。流体が、柔軟チャンバから引き出され、流体リザーバに戻されるとき、柔軟チャンバの剛性が低下することが好ましい。
【0021】
一実施形態では、インプラントは、柔軟チャンバと流体リザーバを相互接続してその間に流体連通を提供する柔軟導管を有する。柔軟導管は、また、流体移送組立体と、柔軟チャンバ及び流体リザーバ両方と、の間で流体連通を提供してもよい。一実施形態では、インプラントは、前述の流体連通リンクを構成するための2つ以上の柔軟導管を有してもよい。
【0022】
一実施形態では、柔軟チャンバは、取り付ける際に曲線形状に変形することができる真っ直ぐな装置として構成される。変形した柔軟チャンバは、流体が流体リザーバから柔軟チャンバに移送されたときに好ましい形状に変化する。一実施形態では、柔軟チャンバは柔軟であり、流体が流体リザーバと柔軟チャンバとの間で移送される前にわずかに湾曲した形状に変形される。柔軟チャンバは、患者が覚醒しているときに柔軟形状でよい。患者が夜眠る前に、流体が柔軟チャンバに移送され、その結果、柔軟チャンバが剛性になり、無変形形状に戻る。
【0023】
一実施形態では、閉塞型睡眠時無呼吸を治療するための外科用インプラントは、患者の中咽頭気道の軟組織内に埋め込み可能な柔軟チャンバを有する。インプラントは、患者の下顎下領域に埋め込み可能で柔軟チャンバと流体連通している流体リザーバを含むことが望ましい。一実施形態では、外科用インプラントは、患者内に埋め込み可能で流体リザーバ及び柔軟チャンバと連通する流体移送組立体を含むことが望ましい。流体移送組立体は、流体リザーバと柔軟チャンバとの間で流体を選択的に移送して柔軟チャンバの剛性、柔軟性及び/又は形状を調整するために、患者によって係合可能であることが望ましい。一実施形態では、柔軟チャンバ、流体リザーバ及び流体移送組立体は、生体適合性材料で作成されてもよい。
【0024】
一実施形態では、流体が、流体リザーバから柔軟チャンバに移送されたとき、柔軟チャンバはより剛性になり、流体が、柔軟チャンバから流体リザーバに戻されたとき、あまり剛性でなくなる。一実施形態では、柔軟チャンバは、流体リザーバと柔軟チャンバとの間で流体が移送されたときに形状を変化させることが好ましい。
【0025】
一実施形態では、閉塞型睡眠時無呼吸を治療するための装置は、舌内に配置され、下顎下領域又は他の軟組織場所内に配置された流体リザーバと流体連通するインプラントを有する。インプラントは、リザーバから舌インプラントに流体を移送して、インプラントの圧力と剛性を高め、それによりインプラントの柔軟性を強制的に変化させるためのポンプ及び/又は弁組立体を有することが好ましい。剛性が高まると、舌の形状が変化して、舌の垂直軸方向の寸法が大きくなり、これにより、舌の前後方向の厚さが減少し、咽頭の口腔−咽頭領域が開く傾向がある。流体移送組立体は、インプラントと一体であり、患者の組織内に埋め込まれることが望ましく、その結果、患者が、睡眠前に装置を加圧して、睡眠中に頤舌筋が弛緩したときの舌形状の形状を維持することができる。覚醒した際、患者は、流体移送組立体(例えば、弁)を作動させて舌インプラント内の圧力を下げ、会話や嚥下などの通常活動のために舌の柔軟性を高めることができる。インプラントの1つ以上は、咽頭壁及び/又は組織内に配置されて、それらの組織を支持するか又はその形状を好ましく変更して、呼吸のために開いた気道を維持し易くすることができる。
【0026】
一実施形態では、柔軟な第1のチャンバは、高分子フィルムなどの1片のフィルム材料か、折り畳まれて流体移送管の端に貼り付けされた1片のフィルム材料のいずれかから形成されることが望ましい。流体移送管は、管の長手方向軸に沿って延在する内腔と連通する管の側壁の孔により供給されることが望ましい。一実施形態では、フィルム材の内側層は、フィルム材の外側層より短いことが望ましい。内側層は、管の側面の孔から遠くの管の端のまわりにだけ固着されることが好ましい。内側層と外側層は、管の端に巻き付けられることが好ましく、内側層は、移送管の遠位端に接着される。外側層は、移送管の側壁孔の近位側に接着されることが望ましい。一実施形態では、2つの内側層及び外側層の周囲が、2つのフィルム層の間に密閉チャンバを構成するように接着され、自由縁は、円筒形状を構成するように接着されることが好ましい。二重壁円筒を構成することによって、2つの層の間の隔室だけが満たされたときに、シリンダの加圧を可能にするのに必要な流体体積を減少させることができる。
【0027】
一実施形態では、柔軟な第1のチャンバは、典型的なバルーン又はパウチと類似の標準的な単一隔室として構成されてもよい。この実施形態では、シリンダがより剛性になることを可能にするために、より大量の流体をチャンバに移送しなければならない。
【0028】
一実施形態では、第1のチャンバは、組織内殖を促進するように適応された表面を有する。組織内殖促進面は、テクスチャ面、多孔質面、編組面、メッシュ面、フリース面、及び骨又は組織内殖を誘導するハイドロキシアパタイトなどの被覆を含む外側面の群れから選択されることが望ましい。一実施形態では、第1のチャンバは、周知の柔軟で耐久性があり生体適合性の材料のうちのいずれかから作成される。一実施形態では、第1のチャンバは、周知の生体適合性高分子と生体適合性エラストマ材料のいずれかで作成されてもよい。一実施形態では、第1のチャンバは、シリコーン、ラテックス、ポリウレタン、ナイロン、ポリエステル、又はこれらの組み合わせで作成されてもよい。
【0029】
本発明は、いかなる特定の動作原理によっても限定されないが、本出願の流体充填インプラントは、先行技術の装置より優れた幾つかの利点を提供する。第1に、流体充填インプラントは、効果的な結果が得られない場合に患者から取り出すことができる。次に、流体充填インプラントは、夜又は睡眠中に加圧されたときに標的組織に作用することが望ましく、それにより、会話又は嚥下に作用する可能性が最小になる。一実施形態では、患者は、外部装置又は器具を必要とせずに流体充填インプラントの剛性と形状を制御してもよい。更に、本発明の流体充填インプラントは、硬質の固定点を必要とせずに舌の形状又は上気道内の他の組織の形状を変化させることが好ましく、それによりインプラントが組織を引き裂いたり組織を切り抜いたりする可能性が最小になる。一実施形態では、流体充填インプラントは、インプラントを著しく剛化させるのに必要な量の流体を生成し、インプラントを柔軟状態に戻すためにインプラントから取り出さなければならない流体の量を少なくするように設計された薄壁圧力チャンバを有する。
【0030】
一実施形態では、柔軟チャンバが、流体によって加圧されたとき、インプラントは、真っ直ぐな円筒状又は他の三次元形状を回復して、弛緩した舌又は軟組織のための支持と形状を提供する。舌の後方変位は最小になり、その結果、気道が拡大される。一実施形態では、患者が、インプラントの剛性を選択的に制御してもよい。患者が睡眠の準備ができたとき、剛性の隔室は、皮膚を介したポンプの活動によって加圧される。手動ポンピングの場合には、バルブが圧搾される。一実施形態では、ポンプは、遠隔操作され、皮膚を介して、電磁結合又は電界エネルギーの使用により活動化されてもよい。覚醒した際、患者は、弁を押して、流体を第2の隔室に移送しインプラントの加圧隔室内の圧力を下げてもよい。柔軟チャンバが、非加圧状態になった後、舌は、自由に動くことができ、インプラントの存在による影響を受けない。したがって、インプラントは、睡眠中だけ舌の動きに作用し、患者が覚醒しているときに患者が会話又は嚥下する能力には作用しない。
【0031】
一実施形態では、インプラントは、加圧円筒を有する。睡眠中に強い嚥下が行なわれた場合には、インプラントは、嚥下を許可するために一時的に変形しもよい。嚥下と関連した筋肉活動が弱まった後で、インプラントは、上気道の弛緩した舌又は組織の支持及び再成形を提供するのに好ましい形状に戻ることが好ましい。
【0032】
1つの好ましい実施形態では、流体充填インプラントを利用して、患者による要求により気道の好ましい支持と再成形をすることができる。一実施形態では、インプラントは、軟質フィルム材料から製造され、したがって、患者は、インプラントが所定の箇所にあることに気付かない。一実施形態では、ポンプ又は弁は、特別な接着継ぎ目又は接合を必要とせずに「単一」型の構造を提供するために一方の端が嚢形状に熱成形され反対端が接着された2層のフィルム内に、直列に含まれてもよい。
【0033】
本発明のこれら及びその他の好ましい実施形態を、下記に詳しく記述する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】鼻腔及び咽頭を含む人頭の断面図。
【図2】正常な呼吸中のヒトの鼻腔及び咽頭の断面図。
【図3】閉塞性睡眠時無呼吸の発現時のヒトの鼻腔及び咽頭の断面図。
【図4】閉塞型睡眠時無呼吸の発現時のヒトの鼻腔及び咽頭の別の断面図。
【図5A】本発明の一実施形態による、柔軟チャンバ、流体リザーバ及び流体移送組立体を含む閉塞型睡眠時無呼吸を治療するためのインプラントを示す図。
【図5B】本発明の一実施形態による、流体リザーバから柔軟チャンバに流体が移送された後のインプラントを示す図。
【図6A】本発明の一実施形態による、図5A及び5Bに示されるインプラントを舌内に埋め込む方法を示す図。
【図6B】本発明の一実施形態による、図5A及び5Bに示されるインプラントを舌内に埋め込む方法を示す図。
【図6C】本発明の一実施形態による、図5A及び5Bに示されるインプラントを舌内に埋め込む方法を示す図。
【図7A】本発明の一実施形態による、図5Aに示される柔軟状態のインプラントを有する人頭の断面図。
【図7B】本発明の一実施形態による、図5Bに示される剛性状態のインプラントを有する人頭の断面図。
【図8A】本発明の一実施形態による、閉塞型睡眠時無呼吸を治療するためのインプラントの分解図。
【図8B】図8Aに示される閉塞型睡眠時無呼吸を治療するためのインプラントの部分組み立て図。
【図8C】本発明の一実施形態による、組み立て後の図8Aと図8Bのインプラントを示す図。
【図9】本発明の一実施形態による、患者の軟口蓋内に配置された少なくとも1つの流体充填インプラントを含む閉塞型睡眠時無呼吸を治療するためのシステムを示す図。
【図10】本発明の一実施形態による、咽頭壁に配置された少なくとも1つの流体充填インプラントを含む閉塞型睡眠時無呼吸を治療するためのシステムを示す図。
【図11】本発明の一実施形態による、閉塞型睡眠時無呼吸の治療用のインプラント。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、鼻腔N、硬口蓋HPの骨B、後方端に口蓋垂UVを有する軟口蓋SP、口M、舌T、気管TR、喉頭蓋EP、食道ES、及び咽頭後壁PPWを含む解剖学的構造を有する人頭の断面を示す。
【0036】
人体において、鼻腔Nと喉頭LXとの間の空気で満たされた空隙は、上気道と呼ばれる。睡眠障害を伴う上気道の最も重要な部分は咽頭PXである。図2を参照すると、咽頭は3つの異なる解剖学的レベルを有する。上咽頭NPは、鼻腔Nの後部に位置する咽頭の上部部分である。中咽頭OPは、軟口蓋SP、喉頭蓋EP、及び舌Tの後部の曲線を含む、咽頭の中間部分である。下咽頭HPは、中咽頭OPの軟組織の下方に位置する咽頭の下部部分である。中咽頭OPは、空気流のための空隙が少なくなる軟組織構造の高率発生に起因して倒壊する可能性が最も高い咽頭部分である。下咽頭HPは、喉頭の開口の下方及び喉頭の後方に位置し、食道まで延びる。
【0037】
当業者には周知であるように、軟口蓋及び舌は共に、柔軟性のある構造体である。軟口蓋SPは、鼻腔Nと口Mとの間に障壁を提供する。多くの場合、軟口蓋SPは必要以上に長く、舌Tの後部と咽頭後壁PPWとの間において相当の距離を延びる。軟口蓋の中央後方端は、口蓋垂と呼ばれ、口蓋垂は、舌の後部の上に軟口蓋から下方に延在する軟組織である。
【0038】
睡眠中は体全体の筋肉が弛緩するが、呼吸器系の筋肉のほとんどは活性状態を維持する。吸入時に、横隔膜は収縮し、陰圧に空気Aを鼻腔N及び口Mの中まで引き込ませる。次いで、空気は咽頭PXを通過して、気管TRを介して肺内に流れる。陰圧は、上気道の組織をわずかに変形させ、これにより気道経路が狭くなる。無呼吸の患者では、軟口蓋SP、舌T、及び/又は喉頭蓋EPは、咽頭後壁PPWにぶつかって倒壊して、気管の中への空気流を遮断する。気道が狭くなるとき、咽頭内の気流が乱れ、これにより、軟口蓋SPが振動し、一般にいびきとして知られる音を生じる。
【0039】
睡眠中、ヒトは、典型的には、空気流の短時間の閉塞及び/又は気管及び肺の中に入る空気流の量のわずかな低下を経験する。10秒を超える空気流の閉塞は、無呼吸と見なされる。50%を超える空気流の減少は、呼吸低下と見なされる。睡眠障害の重症度は、睡眠1時間の間に発生する無呼吸及び呼吸低下の回数で判断される。
【0040】
無呼吸又は呼吸低下が1時間に5回を超えて発生する場合、ほとんどの医療関係者は、その個人が上気道の抵抗問題を有していると診断する。これらの患者の多くは、日中の眠気、抑うつ症、及び集中力の欠如などの睡眠障害に関連した症状を呈することが多い。
【0041】
睡眠1時間の間に10回以上の無呼吸又は呼吸低下の症状を発現する個人は、閉塞型睡眠時無呼吸症候群を有すると正式に分類される。気道が閉塞すると、個人は、無理に吸入するための試みを繰り返し行う。これらの症状の発現の多くは無音であり、個人が無理に空気を肺の中に引き込むときの腹部及び胸壁の動きによって特徴付けられる。典型的には、無呼吸の症状の発現は1分以上続く可能性がある。この間、血中の酸素濃度は低下する。最終的に、閉塞は、個人が大きな音のいびきを引き起こすことによって、又は息苦しい感覚によって目覚めることによって、克服される。
【0042】
図2を参照すると、個人が起きている場合、舌Tの後部及び軟口蓋SPは、舌Tの後部及び軟口蓋SPのそれぞれの内部筋肉のために、それらの形状及び緊張を維持している。その結果、咽頭を通る気道Aは開いたままであり、遮るものはない。しかしながら、睡眠中、筋肉の緊張が低下し、舌後面及び軟口蓋がより柔軟及び膨張性となる。
【0043】
図3を参照すると、舌後面及び軟口蓋の形状を維持し、単独で又は群としてそれらを定位置に維持する正常な筋肉の緊張がなくなり、舌Tの後面、喉頭蓋EP、及び軟口蓋SPは容易に倒壊して気道Aを遮断する傾向がある。
【0044】
図4を参照すると、睡眠中に、舌Tの後方端が、鼻腔Nと気管TRの上側端との間の気道Aを塞ぐことがある。また、軟口蓋SPが弛緩し、口蓋垂UVが、舌Tの後部と咽頭後壁PPWの間で滑ることがある。一実施形態では、本発明は、上気道の軟組織が図4に示される位置に移動しないように、上気道の軟組織の形状を硬化し及び/又は変化させるインプラントを提供する。また、図4に示されるように、舌Tが咽頭後壁に対して後方に弛まないように、インプラントが、舌Tを支持することが望ましい。
【0045】
図5Aを参照すると、本発明の一実施形態では、閉塞型睡眠時無呼吸を治療するためのインプラント20が、第1のチャンバ22、第2のチャンバ24及び流体移送組立体26を有する。第1と第2のチャンバ22、24は、流体移送組立体26を介して互いに連通することが好ましい。一実施形態では、第1のチャンバ22は、通常は柔軟であり、流体が第1のチャンバ22に導入されたときにより剛性になる。一実施形態では、第2のチャンバ24は、好ましくは拡張可能であり、流体を貯蔵するように適応されたリザーバを有することが望ましい。
【0046】
一実施形態では、インプラント20は、流体リザーバ22と流体移送組立体26との間に延在する第1の導管28を有することが好ましい。第1の導管28は、流体リザーバ24と流体移送組立体26との間に連通を提供し、その結果、その間に流体が通ることができるようにすることが好ましい。インプラント20は、また、流体移送組立体26と第1のチャンバ22との間に延在することが望ましい第2の導管30を有することが好ましい。
【0047】
図5Bを参照すると、1つの好ましい実施形態では、流体は、流体リザーバ24から押し出され、流体移送組立体26を使用して第1のチャンバ22に導入されてもよい。一実施形態では、流体移送組立体26は、流体リザーバ24から流体を抜き出し、その流体を第1と第2の導管28、30内で移送し、流体を第1のチャンバ22に導入するように圧縮され解放されてもよい。図5Aと図5Bを参照すると、流体が、第2のチャンバ24から第1のチャンバ22に移送されたとき、第1のチャンバ22は、より剛性になり、第1のチャンバ22を、図5Aに示される柔軟状態から、図5Bに示されるより真っ直ぐでより剛性の状態に変換する。第1のチャンバ22が、より真っ直ぐでより剛性になるとき、第1のチャンバ22の遠位先端32が、V1で示される垂直方向に上方に動く。
【0048】
一実施形態では、インプラント20を図5Bに示される剛性状態から図5Aに示される柔軟状態に戻すことが望ましいことがある。これは、第1のチャンバ22から流体を取り出し、第1と第2の導管28及び30を介して流体を第2のチャンバ24又は流体リザーバに移送するために、ポンプや弁など流体移送組立体26を操作することによって達成され得る。一実施形態では、流体移送組立体26は、第1のチャンバ22から流体を取り出すように操作される。次に、流体は、第2の導管30、流体移送組立体26、第1の導管28を通り、流体リザーバ24へと入る。流体が、流体リザーバ24に戻された後、第1のチャンバ22は、図5Aに示される柔軟な状態又は形状をとる。第1のチャンバ22は、患者が第1のチャンバの剛性を高めたくなるまで、図5Aの柔軟状態のままになる。患者は、流体を第1のチャンバ22に導入するか又は流体を第1のチャンバ22から取り出すことによって、第1のチャンバ22の形状を繰り返し及び選択的に変化させてもよい。
【0049】
図6Aを参照すると、一実施形態では、図5Aと図5Bに示され前述されたインプラントは、下顎下領域内又は舌内に切開部40を形成することによって、患者の舌に埋め込まれてもよい。図6Bを参照すると、一実施形態では、インプラント20を切開部40から舌T内へと通すために挿入ツール42が使用されることが望ましい。周知の外科術とツールを使用して、切開部が形成され、装置が舌に埋め込まれる。図6Bと図6Cに示されるように、インプラント20の第1のチャンバ22は、舌内に埋め込まれることが好ましい。第1のチャンバ22は、埋め込み時には加圧されず、舌及び/又は周囲組織の形状と一致したままであることが望ましい。インプラントの流体リザーバ24と流体移送組立体26は、下顎の下に埋め込まれることが望ましい。
【0050】
図7Aは、第1のチャンバ22が舌Tに埋め込まれた後のインプラント20を示す。一実施形態では、埋め込み処置が完了した後、第1のチャンバ22が、舌T内に位置決めされ、リザーバ24と流体移送組立体26が、患者の下顎下領域に位置決めされる。図7Bを参照すると、流体移送組立体26は、流体を流体リザーバ24から第1のチャンバ22に移送するように操作されてもよい。第1のチャンバ22が、流体によって加圧されたとき、第1のチャンバは、図7Bに示される真っ直ぐな円筒形状になるように剛性になり、舌Tに支持と形状を提供する。これに応じて、舌Tの後方変位が最小化され、その結果、図7Bにある矢印の先で示されるように、気道が拡大される。一実施形態では、インプラント20は、患者によって制御されるように適応されることが好ましい。患者が睡眠の準備ができたとき、患者は、皮膚を介して流体移送組立体26と係合して、流体を第1のチャンバ22に導入して、第2のチャンバを図7Aの柔軟状態から図7Bのより剛性状態に変える。一実施形態では、患者は、バルブの圧搾による手動ポンピングを使用してもよい。別の実施形態では、流体移送組立体26は、電磁結合又は電界エネルギーを使用して、皮膚を介して遠隔操作されてもよい。患者は、インプラント20が図7Bに示される形状の状態で眠る。覚醒したとき、患者は、流体移送組立体26と係合して、第1のチャンバ22から流体を取り出して第1のチャンバ22内の圧力を下げることができる。図7Aに示される柔軟又は低圧状態では、舌Tは、自由に動くことができ、インプラント20の存在に影響を受けないことが好ましい。したがって、一実施形態では、睡眠中だけ舌Tに影響を及ぼし、患者が覚醒しているときはインプラントに気付かない。その結果、インプラント20は、会話又は嚥下に影響を及ぼさない。更に、インプラントが、柔軟材料から製造された加圧円筒体なので、患者が睡眠中に強い嚥下をした場合に、インプラントは、一時的に変形して嚥下を許容することができる。嚥下と関連した筋肉活動が終わった後、インプラント20は、弛緩した舌を支持し成形するために図7Bに示される好ましい形状となる。
【0051】
閉塞型睡眠時無呼吸を治療するためのインプラントの大雑把な説明を上に述べた。図8A〜図8Cは、本発明の1つの特定の好ましい実施形態によるインプラントを示す。図8Aを参照すると、一実施形態では、インプラント20の遠位端は、遠位端52を有する移送管50と、管50の外側面に形成された放射状開口54と、を有することが好ましい。放射状開口54は、管50の遠位端52の近くに位置決めされてもよい。流体が、移送管50の遠位端52の方に送り込まれたとき、流体は、中央導管56を通って放射状開口54から出る。インプラントを剛性状態から柔軟状態に変えたいとき、流体は、放射状開口54と細長い導管56を介して取り出される。
【0052】
インプラントの遠位端は、移送管50の外側面の上に固定された内側層58を有する第1のチャンバ22を有することが好ましい。内側層58は、近位縁60と遠位縁62とを有することが好ましい。近位縁60は、管50の外側面の、放射状開口54の遠位端と移送管50の遠位端58との間に固定されることが好ましい。内側層58の遠位縁62は、移送管50の遠位端52を超えて延在することが好ましい。一実施形態では、内側層58は、円筒形要素を形成するように移送管50の外側面に巻き付けられることが好ましい。近位縁60は、流体密封シールを形成するために、移送管50の外側面にそれと共に固定されることが好ましい。
【0053】
第1のチャンバ22は、また、近位縁66と遠位縁68とを有する外側層64を有することが好ましい。外側層64は、内側層58の上に重なることが好ましい。一実施形態では、外側層64の近位縁66は、放射状開口54の近位の位置で、移送管の外側面に取り付けられることが好ましい。外側層64で、円筒形要素を形成するように内側層58と移送管50に巻き付けられることが好ましい。外側層64の遠位縁68は、内側層58の遠位縁62に固定され、遠位縁62と流体密封シールを形成することが好ましい。
【0054】
一実施形態では、内側層58は、長さL1を有する外側層64より短いことが好ましい長さL2を有する。内側層と外側層は、内側層が移送管の遠位端に接着された状態で、移送管の遠位端に巻き付けられることが好ましい。外側層は、放射状開口54の近くで移送管50に接続されることが好ましい。図8Cに示されるように、内側層58と外側層64の周囲が、フィルムの内側層と外側層の間に密閉室を形成するように接着され、自由縁が、円筒形装置を構成するように接着されることが好ましい。二重壁円筒形要素を構成することにより、円筒を加圧するのに必要な流体体積を少なくすることができる。他の実施形態では、第1のチャンバは、第1のチャンバをより柔軟状態からより剛性状態に変えるために使用する流体の量を少なくできるように波状又は「ハチの巣状」内部構造を有してもよい。これらの好ましい設計は、バルーンやパウチなどの中空構造に剛性を提供するのに必要な流体より少ない流体を必要とする。
【0055】
図8Bを参照すると、一実施形態では、内側層58と外側層64は、移送管50の遠位端の上に取り付けられる。内側層58と外側層64のそれぞれの遠位縁62、68は、流体密封シールを構成するように固定されることが好ましい。内側層58の近位縁60は、放射状開口54から遠位にある場所で移送管50の外側面に固定され、外側層64の近位縁66は、放射状開口54の近位にある位置で移送管50の外側面に固定されることが好ましい。放射状開口54を通る流体は、第1のチャンバ22を拡張するために内側層58と外側層64との間の隙間を満たすことが望ましい。
【0056】
図8Cを参照すると、一実施形態では、流体は、導管56内で移送管の遠位端の方に送られる。流体が、移送管50の遠位端に達するとき、流体は、放射状開口54(図示せず)を通り、内側層58と外側層64との間の空間又は隙間を満たす。内側層58と外側層64との間の空間内の流体圧力が高まるとき、第1のチャンバ22はより剛性になる。二層設計を使用することにより、第1のチャンバに剛性を提供するのに必要な流体の体積が最小になり、その結果、第1のチャンバをより柔軟状態からより剛性状態に変えるのに必要な流体が少なくなる。
【0057】
一実施形態では、第1のチャンバ22は、バルーンやパウチと類似の標準的な単一隔室として構成されてもよい。この特定の実施形態では、第1のチャンバが剛性になることを可能にするために、より大量の流体を第2のチャンバに移さなければならないことがある。
【0058】
図9を参照すると、一実施形態では、閉塞型睡眠時無呼吸を治療するためのインプラント120が、口蓋の軟組織内に位置決めされる。1つの特定の実施形態では、インプラントは、軟口蓋SP内に位置決めされた第1のインプラント及び第2のインプラントを含む。図9に示される特定の実施形態では、第1のインプラントは、軟口蓋SP内に位置決めされた第1のチャンバ122Aを含むことが好ましく、第2のインプラントは、軟口蓋SP内に位置決めされた第1のチャンバ122Bを含むことが好ましい。それぞれの第1のチャンバ122A、122B内の流体圧力は、それぞれの第1のチャンバ122A、122Bの形状及び/又は剛性を変化させ、それにより軟口蓋SPの形状を変化させ及び/又は保持するために、高められてもよい。図9に示される実施形態では、流体移送組立体及び流体リザーバ要素は、第1のチャンバ122A、122Bの場所から離れて配置される。
【0059】
図10を参照すると、一実施形態では、本明細書に述べられたインプラントは、患者の咽頭壁PW内に位置決めされる。図10では、システムは、第1のチャンバ222Aを有する第1のインプラントと、第1のチャンバ222Bを有する第2のインプラントと、を有する。それぞれの第1のチャンバ222A、222Bは、咽頭壁PWに埋め込まれる。インプラントの流体リザーバ及び流体移送組立体は、第1のチャンバ222A、222Bの場所から離れて配置されることが好ましい。
【0060】
図11を参照すると、一実施形態では、閉塞型睡眠時無呼吸を治療するためのインプラント320が、中咽頭気道の軟組織内に埋め込めることが望ましい柔軟チャンバ322と、患者の下顎下領域内に埋め込むことができることが好ましい流体リザーバ324と、を有する。柔軟チャンバ322と流体リザーバ324は、その間に延在する流体移送組立体を介して互いに流体連通することが望ましい。流体移送組立体は、柔軟チャンバ322と流体リザーバ324を相互接続する流体導管328を有することが望ましい。インプラント320は、また、柔軟チャンバ322と流体リザーバ324との間で流体を前後に移送することを可能にするダックビル弁(duck-bill valve)などの弁326を有することが好ましい。弁326は、患者によって係合されて、流体リザーバと柔軟チャンバとの間で食塩水などの流体を移送して、柔軟チャンバの剛性、柔軟性、及び/又は形状を調整することができる。一実施形態では、図11に示されるインプラント320は、インプラントの外周に配置された継ぎ目を有する単一構造である。一実施形態では、柔軟チャンバ322、流体リザーバ324、及び流体導管328は、フィルムの周囲で接合された2枚の軟質フィルムを有することができる。弁326は、柔軟チャンバと流体リザーバとの間の流体の流れを制御するために2枚の接合された軟質フィルム間に配置されてもよい。
【0061】
本発明は、如何なる特定の動作原理によっても限定されないが、本明細書に開示される閉塞型睡眠時無呼吸を治療するためのインプラントを利用して、患者からの要求に基づいて気道の好ましい支持と再成形を提供することできると考えられる。本発明のインプラント装置が、軟質フィルム材料から製造されるので、患者が覚醒しているときにはインプラント装置に気付かない。本発明の特定の好ましい実施形態では、インプラントは、軟質フィルムから形成される。一実施形態では、流体移送組立体は、特別な接着、継ぎ目又は継手を必要とせずに「単一」型構造を提供するために、2層のフィルムが一方の端で嚢形状に熱形成され他方の端で接着された状態で、直列に含まれてもよい。
【0062】
一実施形態では、インプラントは、組織内でインプラントを安定させ組織糜爛の可能性を最小にするために、組織内殖を促進する外側面を有してもよい。外側面の調整は、外側面をテクスチャ化し、孔(例えば、穿孔や突き刺し孔)の付加によりインプラントを多孔質化し、インプラントを編組、手術用メッシュ、又はフリース材料でカプセル化し、及び/又はインプラントをヒドロキシアパタイト等の骨成長刺激剤で被覆することによって達成されてもよい。
【0063】
本発明は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群及び呼吸低下を治療するのに用いられる従来技術の方法及び装置に優る多くの利点を提供する。まず、本明細書に開示される方法、システム及び装置は、侵襲が最低限の単純な外科的手技を提供する。典型的には、本明細書に開示される方法、システム及び装置は、外来処置の間に利用することができる。加えて、本明細書に開示される方法、システム及び装置は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群及び呼吸低下の治療の即効性及び長期的結果の両方を提供する。更に、本明細書に開示される方法、システム及び装置は、かなり高い患者コンプライアンスを必要としない。
【0064】
更に、本発明は、舌を下顎などの固定硬質構造に固定しない。よって、本発明は嚥下又は発語に影響する可能性が大幅に低くなり、これにより、先行技術の装置、システム及び方法に対して大きな改善をもたらす。本発明はまた、好ましくは、長期的な生物適合性を有する材料を用いる。
【0065】
本明細書に開示した様々な実施形態はヒトでの使用に関連しているが、全ての哺乳動物、及び気道を有する全ての動物内で使用できることが想定される。更に、本明細書に開示される方法、システム及び装置は、生体適合性である任意の材料、並びに装置が埋め込まれた後の拒絶反応を最小限にする、組織の内部成長を促進する、粘膜層の形成を促進する、及び身体による装置の許容を改善する任意の溶液又は構成成分を組み込むことができる。
【0066】
本出願は、同一出願人の2008年7月30日に出願された米国特許出願第12/182,402号、2008年7月31日に出願された第12/183,955号、2008年10月24日に出願された第12/257,563号、2008年10月30日に出願された第12/261,102号、2008年12月1日に出願された第12/325,350号、並びに米国特許出願公開第2007/0005109号及び第2007/0005110号に開示される特徴の1つ以上を含んでもよく、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0067】
本明細書に使用される項目は整理目的のものであり、本明細書又は請求項の範囲を制限するために使用することを意図したものではない。本出願全体に使用される用語「〜得る(may)」は、許可の意味(即ち、その可能性を有するという意味)で使用されるものであり、命令の意味(即ち、しなければならないという意味)ではない。同様に、「含む(include、including、及びincludes)」は、それらを含むが限定されないことを意味する。理解を促進するために、可能な場合には、図に共通の同様要素を指定するために、同様の参照番号が使用される。
【0068】
前述の事項は、本発明の実施形態に向けられているが、本発明の基本的範囲から逸脱することなく、本発明の他の実施形態、及び更なる実施形態を考案することができる。したがって、本発明の範囲は、添付の「特許請求の範囲」に明記されるようにのみ限定される。
【0069】
〔実施の態様〕
(1) 閉塞型睡眠時無呼吸を治療するためのインプラントであって、
中咽頭気道の軟組織内に埋め込み可能な第1のチャンバと、
前記第1のチャンバと連通する第2のチャンバと、
前記第1と第2のチャンバと連通しており、前記第1のチャンバの剛性を調整するために前記第1のチャンバと第2のチャンバとの間で流体を移送する流体移送組立体と、を有するインプラント。
(2) 前記第1のチャンバが、柔軟チャンバを有し、前記第2のチャンバが、流体リザーバを有する、実施態様1に記載のインプラント。
(3) 前記第1のチャンバ、前記第2のチャンバ、及び前記流体移送組立体が、単一構造を有する、実施態様1に記載のインプラント。
(4) 前記第1のチャンバが、舌内に埋め込み可能である、実施態様1に記載のインプラント。
(5) 前記第1のチャンバが、患者の前後軸、横軸、垂直軸、又は水平軸に対して任意の選択角度で前記軟組織内に埋め込み可能である、実施態様1に記載のインプラント。
(6) 前記第1のチャンバが、軟口蓋内に埋め込み可能である、実施態様1に記載のインプラント。
(7) 前記第1のチャンバが、咽頭壁内に埋め込み可能である、実施態様1に記載のインプラント。
(8) 前記第2のチャンバと前記流体移送組立体が、患者の下顎下領域内に埋め込み可能である、実施態様1に記載のインプラント。
(9) 前記インプラントの前記第1と第2のチャンバ内に使い捨ての流体を更に含み、前記流体が、液体又は気体を含む、実施態様1に記載のインプラント。
(10) 閉塞型睡眠時無呼吸を治療するためのインプラントであって、
柔軟チャンバと、
前記柔軟チャンバと流体連通した流体リザーバと、
前記流体リザーバ及び前記柔軟チャンバと連通しており、それらの間で流体を移送して前記柔軟チャンバの剛性を選択的に調整する流体移送組立体と、を有するインプラント。
【0070】
(11) 前記柔軟チャンバが、患者の中咽頭気道の軟組織内に埋め込み可能であり、前記流体リザーバと前記流体移送組立体が、前記患者の前記下顎下領域内に埋め込み可能である、実施態様10に記載のインプラント。
(12) 前記柔軟チャンバの剛性は、流体が前記流体リザーバから前記柔軟チャンバに移送されたときに増大し、前記柔軟チャンバの剛性は、前記流体が前記柔軟チャンバから前記流体リザーバに移送されたときに低下する、実施態様10に記載のインプラント。
(13) 前記柔軟チャンバと前記流体リザーバとの間に延在してそれらの間で流体を移送するための柔軟導管を更に有する、実施態様10に記載のインプラント。
(14) 前記柔軟チャンバは、前記流体が前記流体リザーバから前記柔軟チャンバに移送されたときにより剛性になり、前記流体が前記柔軟チャンバから前記流体リザーバに戻されたときにより剛性でなくなる、実施態様11に記載のインプラント。
(15) 前記柔軟チャンバは、前記流体が前記流体リザーバと前記柔軟チャンバとの間で移送されたときに形状を変化させるように適応された、実施態様10に記載のインプラント。
(16) 前記第1のチャンバが、上気道の軟組織、舌の矢状面の中線、軟口蓋、又は咽頭壁に埋め込み可能である、実施態様10に記載のインプラント。
(17) 閉塞型睡眠時無呼吸を治療するための外科用インプラントであって、
患者の中咽頭気道の軟組織内に埋め込み可能な柔軟チャンバと、
前記患者の下顎下領域内に埋め込み可能でありかつ前記柔軟チャンバと流体連通した流体リザーバと、
前記患者内に埋め込み可能でありかつ前記流体リザーバ及び前記柔軟チャンバと連通する流体移送組立体と、を有し、前記流体移送組立体が、前記流体リザーバと前記柔軟チャンバとの間で流体を移送して前記柔軟チャンバの剛性を調整するために前記患者によって係合可能である、外科用インプラント。
(18) 前記柔軟チャンバ、前記流体リザーバ、及び前記流体移送組立体が、生体適合性材料を含む、実施態様17に記載の外科用インプラント。
(19) 前記柔軟チャンバは、前記流体が前記流体リザーバから前記柔軟チャンバに移送されたときにより剛性になり、前記流体が前記柔軟チャンバから前記流体リザーバに戻されたときにより剛性でなくなる、実施態様17に記載の外科用インプラント。
(20) 前記柔軟チャンバは、前記流体が前記流体リザーバと前記柔軟チャンバとの間で移送されたときに形状を変化させるように適応された、実施態様17に記載の外科用インプラント。
【0071】
(21) 前記流体移送組立体が、
前記柔軟チャンバと前記流体リザーバとの間に延在する導管と、
前記導管内に配置されて、前記柔軟チャンバと前記流体リザーバとの間の流体流れを調整する弁と、を有する、実施態様17に記載の外科用インプラント。
(22) 前記弁は、前記柔軟チャンバ内の流体と前記流体リザーバ内の流体との正圧差に応じて開くように適応された、実施態様21に記載の外科用インプラント。
(23) 前記柔軟チャンバ、前記流体リザーバ及び前記流体移送組立体が、単一構造を有する、実施態様17に記載の外科用インプラント。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に睡眠障害の治療に関し、より具体的には閉塞型睡眠時無呼吸を患う患者を治療するためのインプラント、インプラントシステム、装置及び方法に関する。
【関連技術の記載】
【0002】
閉塞型睡眠時無呼吸(OSA)は、気道の閉塞によって引き起こされ、通常は、睡眠中に喉の軟組織が倒壊及び閉鎖したときに発生する。閉塞は、咽頭腔の一部分に起こることがあり、咽頭の後壁への舌の倒壊、咽頭側壁の倒壊、及び舌の倒壊と軟口蓋(詳細には口蓋垂を含む軟口蓋の後方部分)の衝突の組み合わせによって形成される閉鎖を含むことがある。それぞれの無呼吸事象の間、脳はこの病人を覚醒させて呼吸の再開を開始させる。しかしながら、この種の睡眠は、極めて断片化されており、質が低い。
【0003】
National Institutes of Healthによれば、OSAは1200万人を超える米国人を侵している。処置しないでおくと、OSAは、高血圧、心臓血管疾患、体重増加、性交不能症、頭痛、記憶障害、仕事への支障、及び/又は自動車事故を引き起こす場合がある。OSAの重篤性にも関わらず、公衆及び医療専門家の間での一般的な認識の欠如により、大多数のOSA患者が未診断及び未処置のままとなっている。
【0004】
OSAの処置に向けた多大な努力がなされている。例えば、いびき及び閉塞型睡眠時無呼吸を治療するために軟口蓋を電気的に刺激するための装置が、米国特許第5,284,161号及び同第5,792,067号に開示されている。これらの装置を使用した結果は複雑なものであり、その理由は、これらの装置が、厳格な使用法に辛抱強く従うことを必要とし、睡眠中に患者に不快感を与え、その結果患者を何度も目覚めさせるからである。
【0005】
一般に持続的気道陽圧法(CPAP)と呼ばれる別の処置は、特別に設計された鼻マスク又は枕を通して空気を患者の気道内に送達する。患者が吸い込むときに空気の流れが正圧を形成して、気道を開いたままに維持する。CPAPは、いびき及び閉塞型睡眠時無呼吸を緩和するために有効な非外科的治療であると多くの人々によって考えられているが、患者は、腫脹、鼻の乾燥、及びドライアイなど、マスク及びホースにより生じる不快感についての不満を訴えている。その結果、CPAPに関する患者のコンプライアンスは約40%のみである。
【0006】
OSAの処置には、外科的処置も使用されて来た。そのような処置の1つは口蓋垂口蓋咽頭形成術と呼ばれ、舌と咽頭壁との間を粗動させる軟口蓋の能力を低減するために、軟口蓋の後縁を約2cm除去するものである。別の手技では、手術用レーザーを使用して軟口蓋の表面上に瘢痕組織を形成し、この瘢痕組織は軟口蓋の柔軟性を低下させて、いびき及び/又は気道の閉鎖を低減する。一般に焼灼による口蓋硬化手術(CAPSO)と呼ばれる更に別の処置は、局所麻酔下で行なわれる院内処置であり、それにより、軟口蓋粘膜の中央帯が除去され、その傷が口蓋を補強するために治療される。
【0007】
上述されたもののような外科的手技は、引き続き問題を有している。具体的には、外科的に治療される組織(即ち、口蓋組織の除去又は口蓋組織の瘢痕)の面積は、多くの場合、患者の症状を治療するのに必要な面積より大きい。加えて、上述した外科的手技は、多くの場合苦痛を与え、長い不快な治癒期間を有する。例えば、軟口蓋の瘢痕組織は、患者に持続的な刺激を与える場合がある。その上、上記の手技は、副作用の事象において元に戻すことができない。
【0008】
OSA治療のためのもう1つの外科的手技では、組織内にインプラントされる数個の編組PET円筒を用い、舌又は口蓋垂の組織をより堅く、屈曲しにくいものにする。Restore Medical(St.Paul,MN)から販売されているPillar(商標)口蓋インプラントシステムは、編組ポリエステルフィラメントの円筒形エレメントからなり、軽度〜中程度のOSAに罹患している患者において、気道閉塞の事象を減らすために、これを軟口蓋内に埋め込む。ピラー装置を使用すると、円筒形要素の噴出、感染、及び患者の不快感を含む悪い副作用が生じることがある。
【0009】
InfluENT(Concord,NH)によって商標「REPOSE(商標)」で販売されている別のインプラントシステムは、口腔底の下顎骨の後面に挿入されるチタン骨ネジを使用する。縫合糸のループを舌根に通し、下顎骨ネジに取り付ける。Repose(商標)手技は、舌根の懸吊又はハンモックの状態を達成して、睡眠中に舌根が逸脱しないようにする。しかしながら、覚醒状態の間に舌が活発に活動することに起因して、この装置の縫合要素は舌に対する「チーズカッター」としての働きをする場合があり、装置故障の原因となり、その後の除去を必要とする。
【0010】
OSAを処置する別の試みは、補助気道を形成して、主気道の詰まった部分にバイパスを形成することを含む。同一出願人による米国特許出願第12/182,402号(2008年7月30日出願)(この開示は参考として本明細書に組み込まれる)の1つの実施形態において、補助気道は、咽頭の咽頭壁の下に細長い導管を埋め込むことによって形成される。細長い導管は、咽頭の第1の領域と連通する近位端と、咽頭の第2の領域と連通する遠位端と、咽頭の中咽頭領域にバイパスを形成するために咽頭壁の下に延びる中間部分と、を有する。
【0011】
OSAの処置には、磁石も使用されている。例えば、その開示が本願にて参照により本明細書に組み入れられる、同一出願人による2008年7月31日出願の米国特許出願第12/183,955号の一実施形態では、磁石インプラントは、骨アンカーと、骨アンカーに結合された第1の磁石と、舌アンカーと、舌アンカーに結合された第2の磁石と、第1の磁石と第2の磁石とを整合し、それにより磁石間に反発力が生成されて第2の磁石を第1の磁石から離し、第2の磁石を骨アンカーに向かって追い立てる支持体と、を含む。支持体は、第1の磁石を骨アンカーから一定の距離に維持し、第1の磁石を第2の磁石と整合し、第1の磁石及び第2の磁石の移動を案内する。‘955の出願の1つ以上の実施形態に開示されている磁石インプラントは、堅い停止(hard stop)を有するインプラントを使用する際に見られる「チーズカッター」効果を避けるよう堅い停止を有さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記の進歩にも関わらず、長期的な効果を提供し、患者のコンプライアンスを促し、また患者の不快感を最小にする、最小侵襲性手法によるOSA処置のための更なるシステム、装置及び方法が尚必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施形態では、閉塞型睡眠時無呼吸を治療するためのインプラントは、舌内などの中咽頭気道の軟組織内に埋め込み可能な第1のチャンバと、第1のチャンバと連通する第2のチャンバと、を有する。インプラントはまた、第1のチャンバの剛性を調整するために、第1と第2の両方のチャンバと連通して、第1のチャンバと第2のチャンバとの間で流体を選択的に移送する流体移送組立体を有することが好ましい。一実施形態では、第1のチャンバは、柔軟であり、第2のチャンバは、液体や気体などの流体を収容する流体リザーバを有する。一実施形態では、第1のチャンバは、拡張不能であるか又は拡張が制限されることが好ましく、その結果、第1のチャンバ内の流体圧力が高まったときに第1のチャンバの剛性、柔軟性及び/又は形状が変化する。一実施形態では、インプラントの剛性、柔軟性及び/又は形状は、インプラントの容積の変化が最小か又はない状態で変更され得る。一実施形態では、インプラントは、閉塞型睡眠時無呼吸や便失禁などを治療するために、組織を選択的に支持するために使用されてもよい。
【0014】
一実施形態では、第1のチャンバは、閉塞型睡眠時無呼吸と関連した症状を治療するために、中咽頭気道の軟組織に埋め込み可能であることが望ましい。一実施形態では、第1のチャンバは、中咽頭気道の軟組織の堅さ及び/又は形状を変化させて睡眠中に気道を開いたままにすることなどによって患者の気道に作用し、それにより、閉塞型睡眠時無呼吸症状の発生が最小になる。
【0015】
一実施形態では、第1のチャンバは、患者の舌に埋め込み可能である。第1のチャンバは、また、患者の軟口蓋内、及び/又は咽頭壁内に埋め込み可能である。特定の好ましい実施形態では、複数のインプラントが、舌、軟口蓋及び/又は患者の咽頭壁に埋め込み可能でよい。例えば、第1のチャンバの2つ以上が、舌、軟口蓋、又は咽頭壁に埋め込み可能でよい。一実施形態では、第1のチャンバの1つ以上が、舌に埋め込み可能でよく、第1のチャンバの1つ以上が、軟口蓋や咽頭壁などの別の身体部分に埋め込み可能でよい。
【0016】
本明細書に開示されるインプラントは、患者の前後軸、垂直軸、横軸、又は水平軸に対する広い角度範囲のうちの任意の1つの角度範囲内で配置されてもよい。一実施形態では、インプラントは、前後軸に対して横方向に延在してもよい。一実施形態では、インプラントは、前後軸と平行な方向に延在してもよい。更に別の実施形態では、インプラントは、横軸と前後軸位置との間の角度で配置されてもよい。インプラントは、また、患者の垂直軸、患者の水平軸、又は垂直軸と水平軸との間の任意の角度で配置されてもよい。選択された角度は、患者の治療的有効性を最大にするように選択されることが好ましい。
【0017】
一実施形態では、第2のチャンバと流体移送組立体は、身体内の第1のチャンバから離れた場所に埋め込まれる。一実施形態では、インプラントの第2のチャンバとインプラントの流体移送組立体は、患者の下顎下領域に埋め込み可能である。流体リザーバと流体移送組立体は、柔軟な第1のチャンバの場所から離れた首又は胸部内の皮下に配置されてもよい。ポンプや弁組立体などの埋め込まれた流体移送組立体は、流体を第2のチャンバから第1のチャンバに選択的に移送して第1のチャンバの剛性、柔軟性及び/又は形状を調整するために、患者によって係合可能であることが望ましい。一実施形態では、患者は、自分の触覚を用いて皮膚の下の流体移送組立体を探り、次に流体移送組立体を操作して、流体リザーバと第1のチャンバとの間で流体を物理的に移送する。
【0018】
一実施形態では、インプラントは、インプラントの第1と第2のチャンバ内に使い捨ての流体を含むことが望ましい。流体には、第1のチャンバの剛性、柔軟性及び/又は形状を調整するために第1のチャンバと第2のチャンバとの間で選択的に前後に移送される液体又は気体が挙げられる。
【0019】
一実施形態では、柔軟チャンバは、無応力状態で装置の曲線変形を促進するために、波状又は畝状の管構造で作成されてもよい。一実施形態では、流体は、波状管構造の隙間を通って柔軟チャンバを容易に剛性状態に変えることができ、このとき最小量の流体しか使用する必要がない。
【0020】
一実施形態では、閉塞型睡眠時無呼吸を治療するためのインプラントは、柔軟チャンバと、柔軟チャンバと流体連通した流体リザーバと、流体リザーバ及び柔軟チャンバと連通して流体リザーバと柔軟チャンバとの間で流体を移送する流体移送組立体と、を有する。流体が、流体リザーバから柔軟チャンバに移送されるとき、柔軟チャンバの剛性が調整される。一実施形態では、流体が柔軟チャンバに導入されるとき、柔軟チャンバはより剛性になる。柔軟チャンバの剛性を低下させたいとき(例えば、患者が覚醒したとき)、患者は、流体移送組立体と係合して、流体を柔軟チャンバから流体リザーバに移送してもよい。流体が、柔軟チャンバから引き出され、流体リザーバに戻されるとき、柔軟チャンバの剛性が低下することが好ましい。
【0021】
一実施形態では、インプラントは、柔軟チャンバと流体リザーバを相互接続してその間に流体連通を提供する柔軟導管を有する。柔軟導管は、また、流体移送組立体と、柔軟チャンバ及び流体リザーバ両方と、の間で流体連通を提供してもよい。一実施形態では、インプラントは、前述の流体連通リンクを構成するための2つ以上の柔軟導管を有してもよい。
【0022】
一実施形態では、柔軟チャンバは、取り付ける際に曲線形状に変形することができる真っ直ぐな装置として構成される。変形した柔軟チャンバは、流体が流体リザーバから柔軟チャンバに移送されたときに好ましい形状に変化する。一実施形態では、柔軟チャンバは柔軟であり、流体が流体リザーバと柔軟チャンバとの間で移送される前にわずかに湾曲した形状に変形される。柔軟チャンバは、患者が覚醒しているときに柔軟形状でよい。患者が夜眠る前に、流体が柔軟チャンバに移送され、その結果、柔軟チャンバが剛性になり、無変形形状に戻る。
【0023】
一実施形態では、閉塞型睡眠時無呼吸を治療するための外科用インプラントは、患者の中咽頭気道の軟組織内に埋め込み可能な柔軟チャンバを有する。インプラントは、患者の下顎下領域に埋め込み可能で柔軟チャンバと流体連通している流体リザーバを含むことが望ましい。一実施形態では、外科用インプラントは、患者内に埋め込み可能で流体リザーバ及び柔軟チャンバと連通する流体移送組立体を含むことが望ましい。流体移送組立体は、流体リザーバと柔軟チャンバとの間で流体を選択的に移送して柔軟チャンバの剛性、柔軟性及び/又は形状を調整するために、患者によって係合可能であることが望ましい。一実施形態では、柔軟チャンバ、流体リザーバ及び流体移送組立体は、生体適合性材料で作成されてもよい。
【0024】
一実施形態では、流体が、流体リザーバから柔軟チャンバに移送されたとき、柔軟チャンバはより剛性になり、流体が、柔軟チャンバから流体リザーバに戻されたとき、あまり剛性でなくなる。一実施形態では、柔軟チャンバは、流体リザーバと柔軟チャンバとの間で流体が移送されたときに形状を変化させることが好ましい。
【0025】
一実施形態では、閉塞型睡眠時無呼吸を治療するための装置は、舌内に配置され、下顎下領域又は他の軟組織場所内に配置された流体リザーバと流体連通するインプラントを有する。インプラントは、リザーバから舌インプラントに流体を移送して、インプラントの圧力と剛性を高め、それによりインプラントの柔軟性を強制的に変化させるためのポンプ及び/又は弁組立体を有することが好ましい。剛性が高まると、舌の形状が変化して、舌の垂直軸方向の寸法が大きくなり、これにより、舌の前後方向の厚さが減少し、咽頭の口腔−咽頭領域が開く傾向がある。流体移送組立体は、インプラントと一体であり、患者の組織内に埋め込まれることが望ましく、その結果、患者が、睡眠前に装置を加圧して、睡眠中に頤舌筋が弛緩したときの舌形状の形状を維持することができる。覚醒した際、患者は、流体移送組立体(例えば、弁)を作動させて舌インプラント内の圧力を下げ、会話や嚥下などの通常活動のために舌の柔軟性を高めることができる。インプラントの1つ以上は、咽頭壁及び/又は組織内に配置されて、それらの組織を支持するか又はその形状を好ましく変更して、呼吸のために開いた気道を維持し易くすることができる。
【0026】
一実施形態では、柔軟な第1のチャンバは、高分子フィルムなどの1片のフィルム材料か、折り畳まれて流体移送管の端に貼り付けされた1片のフィルム材料のいずれかから形成されることが望ましい。流体移送管は、管の長手方向軸に沿って延在する内腔と連通する管の側壁の孔により供給されることが望ましい。一実施形態では、フィルム材の内側層は、フィルム材の外側層より短いことが望ましい。内側層は、管の側面の孔から遠くの管の端のまわりにだけ固着されることが好ましい。内側層と外側層は、管の端に巻き付けられることが好ましく、内側層は、移送管の遠位端に接着される。外側層は、移送管の側壁孔の近位側に接着されることが望ましい。一実施形態では、2つの内側層及び外側層の周囲が、2つのフィルム層の間に密閉チャンバを構成するように接着され、自由縁は、円筒形状を構成するように接着されることが好ましい。二重壁円筒を構成することによって、2つの層の間の隔室だけが満たされたときに、シリンダの加圧を可能にするのに必要な流体体積を減少させることができる。
【0027】
一実施形態では、柔軟な第1のチャンバは、典型的なバルーン又はパウチと類似の標準的な単一隔室として構成されてもよい。この実施形態では、シリンダがより剛性になることを可能にするために、より大量の流体をチャンバに移送しなければならない。
【0028】
一実施形態では、第1のチャンバは、組織内殖を促進するように適応された表面を有する。組織内殖促進面は、テクスチャ面、多孔質面、編組面、メッシュ面、フリース面、及び骨又は組織内殖を誘導するハイドロキシアパタイトなどの被覆を含む外側面の群れから選択されることが望ましい。一実施形態では、第1のチャンバは、周知の柔軟で耐久性があり生体適合性の材料のうちのいずれかから作成される。一実施形態では、第1のチャンバは、周知の生体適合性高分子と生体適合性エラストマ材料のいずれかで作成されてもよい。一実施形態では、第1のチャンバは、シリコーン、ラテックス、ポリウレタン、ナイロン、ポリエステル、又はこれらの組み合わせで作成されてもよい。
【0029】
本発明は、いかなる特定の動作原理によっても限定されないが、本出願の流体充填インプラントは、先行技術の装置より優れた幾つかの利点を提供する。第1に、流体充填インプラントは、効果的な結果が得られない場合に患者から取り出すことができる。次に、流体充填インプラントは、夜又は睡眠中に加圧されたときに標的組織に作用することが望ましく、それにより、会話又は嚥下に作用する可能性が最小になる。一実施形態では、患者は、外部装置又は器具を必要とせずに流体充填インプラントの剛性と形状を制御してもよい。更に、本発明の流体充填インプラントは、硬質の固定点を必要とせずに舌の形状又は上気道内の他の組織の形状を変化させることが好ましく、それによりインプラントが組織を引き裂いたり組織を切り抜いたりする可能性が最小になる。一実施形態では、流体充填インプラントは、インプラントを著しく剛化させるのに必要な量の流体を生成し、インプラントを柔軟状態に戻すためにインプラントから取り出さなければならない流体の量を少なくするように設計された薄壁圧力チャンバを有する。
【0030】
一実施形態では、柔軟チャンバが、流体によって加圧されたとき、インプラントは、真っ直ぐな円筒状又は他の三次元形状を回復して、弛緩した舌又は軟組織のための支持と形状を提供する。舌の後方変位は最小になり、その結果、気道が拡大される。一実施形態では、患者が、インプラントの剛性を選択的に制御してもよい。患者が睡眠の準備ができたとき、剛性の隔室は、皮膚を介したポンプの活動によって加圧される。手動ポンピングの場合には、バルブが圧搾される。一実施形態では、ポンプは、遠隔操作され、皮膚を介して、電磁結合又は電界エネルギーの使用により活動化されてもよい。覚醒した際、患者は、弁を押して、流体を第2の隔室に移送しインプラントの加圧隔室内の圧力を下げてもよい。柔軟チャンバが、非加圧状態になった後、舌は、自由に動くことができ、インプラントの存在による影響を受けない。したがって、インプラントは、睡眠中だけ舌の動きに作用し、患者が覚醒しているときに患者が会話又は嚥下する能力には作用しない。
【0031】
一実施形態では、インプラントは、加圧円筒を有する。睡眠中に強い嚥下が行なわれた場合には、インプラントは、嚥下を許可するために一時的に変形しもよい。嚥下と関連した筋肉活動が弱まった後で、インプラントは、上気道の弛緩した舌又は組織の支持及び再成形を提供するのに好ましい形状に戻ることが好ましい。
【0032】
1つの好ましい実施形態では、流体充填インプラントを利用して、患者による要求により気道の好ましい支持と再成形をすることができる。一実施形態では、インプラントは、軟質フィルム材料から製造され、したがって、患者は、インプラントが所定の箇所にあることに気付かない。一実施形態では、ポンプ又は弁は、特別な接着継ぎ目又は接合を必要とせずに「単一」型の構造を提供するために一方の端が嚢形状に熱成形され反対端が接着された2層のフィルム内に、直列に含まれてもよい。
【0033】
本発明のこれら及びその他の好ましい実施形態を、下記に詳しく記述する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】鼻腔及び咽頭を含む人頭の断面図。
【図2】正常な呼吸中のヒトの鼻腔及び咽頭の断面図。
【図3】閉塞性睡眠時無呼吸の発現時のヒトの鼻腔及び咽頭の断面図。
【図4】閉塞型睡眠時無呼吸の発現時のヒトの鼻腔及び咽頭の別の断面図。
【図5A】本発明の一実施形態による、柔軟チャンバ、流体リザーバ及び流体移送組立体を含む閉塞型睡眠時無呼吸を治療するためのインプラントを示す図。
【図5B】本発明の一実施形態による、流体リザーバから柔軟チャンバに流体が移送された後のインプラントを示す図。
【図6A】本発明の一実施形態による、図5A及び5Bに示されるインプラントを舌内に埋め込む方法を示す図。
【図6B】本発明の一実施形態による、図5A及び5Bに示されるインプラントを舌内に埋め込む方法を示す図。
【図6C】本発明の一実施形態による、図5A及び5Bに示されるインプラントを舌内に埋め込む方法を示す図。
【図7A】本発明の一実施形態による、図5Aに示される柔軟状態のインプラントを有する人頭の断面図。
【図7B】本発明の一実施形態による、図5Bに示される剛性状態のインプラントを有する人頭の断面図。
【図8A】本発明の一実施形態による、閉塞型睡眠時無呼吸を治療するためのインプラントの分解図。
【図8B】図8Aに示される閉塞型睡眠時無呼吸を治療するためのインプラントの部分組み立て図。
【図8C】本発明の一実施形態による、組み立て後の図8Aと図8Bのインプラントを示す図。
【図9】本発明の一実施形態による、患者の軟口蓋内に配置された少なくとも1つの流体充填インプラントを含む閉塞型睡眠時無呼吸を治療するためのシステムを示す図。
【図10】本発明の一実施形態による、咽頭壁に配置された少なくとも1つの流体充填インプラントを含む閉塞型睡眠時無呼吸を治療するためのシステムを示す図。
【図11】本発明の一実施形態による、閉塞型睡眠時無呼吸の治療用のインプラント。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、鼻腔N、硬口蓋HPの骨B、後方端に口蓋垂UVを有する軟口蓋SP、口M、舌T、気管TR、喉頭蓋EP、食道ES、及び咽頭後壁PPWを含む解剖学的構造を有する人頭の断面を示す。
【0036】
人体において、鼻腔Nと喉頭LXとの間の空気で満たされた空隙は、上気道と呼ばれる。睡眠障害を伴う上気道の最も重要な部分は咽頭PXである。図2を参照すると、咽頭は3つの異なる解剖学的レベルを有する。上咽頭NPは、鼻腔Nの後部に位置する咽頭の上部部分である。中咽頭OPは、軟口蓋SP、喉頭蓋EP、及び舌Tの後部の曲線を含む、咽頭の中間部分である。下咽頭HPは、中咽頭OPの軟組織の下方に位置する咽頭の下部部分である。中咽頭OPは、空気流のための空隙が少なくなる軟組織構造の高率発生に起因して倒壊する可能性が最も高い咽頭部分である。下咽頭HPは、喉頭の開口の下方及び喉頭の後方に位置し、食道まで延びる。
【0037】
当業者には周知であるように、軟口蓋及び舌は共に、柔軟性のある構造体である。軟口蓋SPは、鼻腔Nと口Mとの間に障壁を提供する。多くの場合、軟口蓋SPは必要以上に長く、舌Tの後部と咽頭後壁PPWとの間において相当の距離を延びる。軟口蓋の中央後方端は、口蓋垂と呼ばれ、口蓋垂は、舌の後部の上に軟口蓋から下方に延在する軟組織である。
【0038】
睡眠中は体全体の筋肉が弛緩するが、呼吸器系の筋肉のほとんどは活性状態を維持する。吸入時に、横隔膜は収縮し、陰圧に空気Aを鼻腔N及び口Mの中まで引き込ませる。次いで、空気は咽頭PXを通過して、気管TRを介して肺内に流れる。陰圧は、上気道の組織をわずかに変形させ、これにより気道経路が狭くなる。無呼吸の患者では、軟口蓋SP、舌T、及び/又は喉頭蓋EPは、咽頭後壁PPWにぶつかって倒壊して、気管の中への空気流を遮断する。気道が狭くなるとき、咽頭内の気流が乱れ、これにより、軟口蓋SPが振動し、一般にいびきとして知られる音を生じる。
【0039】
睡眠中、ヒトは、典型的には、空気流の短時間の閉塞及び/又は気管及び肺の中に入る空気流の量のわずかな低下を経験する。10秒を超える空気流の閉塞は、無呼吸と見なされる。50%を超える空気流の減少は、呼吸低下と見なされる。睡眠障害の重症度は、睡眠1時間の間に発生する無呼吸及び呼吸低下の回数で判断される。
【0040】
無呼吸又は呼吸低下が1時間に5回を超えて発生する場合、ほとんどの医療関係者は、その個人が上気道の抵抗問題を有していると診断する。これらの患者の多くは、日中の眠気、抑うつ症、及び集中力の欠如などの睡眠障害に関連した症状を呈することが多い。
【0041】
睡眠1時間の間に10回以上の無呼吸又は呼吸低下の症状を発現する個人は、閉塞型睡眠時無呼吸症候群を有すると正式に分類される。気道が閉塞すると、個人は、無理に吸入するための試みを繰り返し行う。これらの症状の発現の多くは無音であり、個人が無理に空気を肺の中に引き込むときの腹部及び胸壁の動きによって特徴付けられる。典型的には、無呼吸の症状の発現は1分以上続く可能性がある。この間、血中の酸素濃度は低下する。最終的に、閉塞は、個人が大きな音のいびきを引き起こすことによって、又は息苦しい感覚によって目覚めることによって、克服される。
【0042】
図2を参照すると、個人が起きている場合、舌Tの後部及び軟口蓋SPは、舌Tの後部及び軟口蓋SPのそれぞれの内部筋肉のために、それらの形状及び緊張を維持している。その結果、咽頭を通る気道Aは開いたままであり、遮るものはない。しかしながら、睡眠中、筋肉の緊張が低下し、舌後面及び軟口蓋がより柔軟及び膨張性となる。
【0043】
図3を参照すると、舌後面及び軟口蓋の形状を維持し、単独で又は群としてそれらを定位置に維持する正常な筋肉の緊張がなくなり、舌Tの後面、喉頭蓋EP、及び軟口蓋SPは容易に倒壊して気道Aを遮断する傾向がある。
【0044】
図4を参照すると、睡眠中に、舌Tの後方端が、鼻腔Nと気管TRの上側端との間の気道Aを塞ぐことがある。また、軟口蓋SPが弛緩し、口蓋垂UVが、舌Tの後部と咽頭後壁PPWの間で滑ることがある。一実施形態では、本発明は、上気道の軟組織が図4に示される位置に移動しないように、上気道の軟組織の形状を硬化し及び/又は変化させるインプラントを提供する。また、図4に示されるように、舌Tが咽頭後壁に対して後方に弛まないように、インプラントが、舌Tを支持することが望ましい。
【0045】
図5Aを参照すると、本発明の一実施形態では、閉塞型睡眠時無呼吸を治療するためのインプラント20が、第1のチャンバ22、第2のチャンバ24及び流体移送組立体26を有する。第1と第2のチャンバ22、24は、流体移送組立体26を介して互いに連通することが好ましい。一実施形態では、第1のチャンバ22は、通常は柔軟であり、流体が第1のチャンバ22に導入されたときにより剛性になる。一実施形態では、第2のチャンバ24は、好ましくは拡張可能であり、流体を貯蔵するように適応されたリザーバを有することが望ましい。
【0046】
一実施形態では、インプラント20は、流体リザーバ22と流体移送組立体26との間に延在する第1の導管28を有することが好ましい。第1の導管28は、流体リザーバ24と流体移送組立体26との間に連通を提供し、その結果、その間に流体が通ることができるようにすることが好ましい。インプラント20は、また、流体移送組立体26と第1のチャンバ22との間に延在することが望ましい第2の導管30を有することが好ましい。
【0047】
図5Bを参照すると、1つの好ましい実施形態では、流体は、流体リザーバ24から押し出され、流体移送組立体26を使用して第1のチャンバ22に導入されてもよい。一実施形態では、流体移送組立体26は、流体リザーバ24から流体を抜き出し、その流体を第1と第2の導管28、30内で移送し、流体を第1のチャンバ22に導入するように圧縮され解放されてもよい。図5Aと図5Bを参照すると、流体が、第2のチャンバ24から第1のチャンバ22に移送されたとき、第1のチャンバ22は、より剛性になり、第1のチャンバ22を、図5Aに示される柔軟状態から、図5Bに示されるより真っ直ぐでより剛性の状態に変換する。第1のチャンバ22が、より真っ直ぐでより剛性になるとき、第1のチャンバ22の遠位先端32が、V1で示される垂直方向に上方に動く。
【0048】
一実施形態では、インプラント20を図5Bに示される剛性状態から図5Aに示される柔軟状態に戻すことが望ましいことがある。これは、第1のチャンバ22から流体を取り出し、第1と第2の導管28及び30を介して流体を第2のチャンバ24又は流体リザーバに移送するために、ポンプや弁など流体移送組立体26を操作することによって達成され得る。一実施形態では、流体移送組立体26は、第1のチャンバ22から流体を取り出すように操作される。次に、流体は、第2の導管30、流体移送組立体26、第1の導管28を通り、流体リザーバ24へと入る。流体が、流体リザーバ24に戻された後、第1のチャンバ22は、図5Aに示される柔軟な状態又は形状をとる。第1のチャンバ22は、患者が第1のチャンバの剛性を高めたくなるまで、図5Aの柔軟状態のままになる。患者は、流体を第1のチャンバ22に導入するか又は流体を第1のチャンバ22から取り出すことによって、第1のチャンバ22の形状を繰り返し及び選択的に変化させてもよい。
【0049】
図6Aを参照すると、一実施形態では、図5Aと図5Bに示され前述されたインプラントは、下顎下領域内又は舌内に切開部40を形成することによって、患者の舌に埋め込まれてもよい。図6Bを参照すると、一実施形態では、インプラント20を切開部40から舌T内へと通すために挿入ツール42が使用されることが望ましい。周知の外科術とツールを使用して、切開部が形成され、装置が舌に埋め込まれる。図6Bと図6Cに示されるように、インプラント20の第1のチャンバ22は、舌内に埋め込まれることが好ましい。第1のチャンバ22は、埋め込み時には加圧されず、舌及び/又は周囲組織の形状と一致したままであることが望ましい。インプラントの流体リザーバ24と流体移送組立体26は、下顎の下に埋め込まれることが望ましい。
【0050】
図7Aは、第1のチャンバ22が舌Tに埋め込まれた後のインプラント20を示す。一実施形態では、埋め込み処置が完了した後、第1のチャンバ22が、舌T内に位置決めされ、リザーバ24と流体移送組立体26が、患者の下顎下領域に位置決めされる。図7Bを参照すると、流体移送組立体26は、流体を流体リザーバ24から第1のチャンバ22に移送するように操作されてもよい。第1のチャンバ22が、流体によって加圧されたとき、第1のチャンバは、図7Bに示される真っ直ぐな円筒形状になるように剛性になり、舌Tに支持と形状を提供する。これに応じて、舌Tの後方変位が最小化され、その結果、図7Bにある矢印の先で示されるように、気道が拡大される。一実施形態では、インプラント20は、患者によって制御されるように適応されることが好ましい。患者が睡眠の準備ができたとき、患者は、皮膚を介して流体移送組立体26と係合して、流体を第1のチャンバ22に導入して、第2のチャンバを図7Aの柔軟状態から図7Bのより剛性状態に変える。一実施形態では、患者は、バルブの圧搾による手動ポンピングを使用してもよい。別の実施形態では、流体移送組立体26は、電磁結合又は電界エネルギーを使用して、皮膚を介して遠隔操作されてもよい。患者は、インプラント20が図7Bに示される形状の状態で眠る。覚醒したとき、患者は、流体移送組立体26と係合して、第1のチャンバ22から流体を取り出して第1のチャンバ22内の圧力を下げることができる。図7Aに示される柔軟又は低圧状態では、舌Tは、自由に動くことができ、インプラント20の存在に影響を受けないことが好ましい。したがって、一実施形態では、睡眠中だけ舌Tに影響を及ぼし、患者が覚醒しているときはインプラントに気付かない。その結果、インプラント20は、会話又は嚥下に影響を及ぼさない。更に、インプラントが、柔軟材料から製造された加圧円筒体なので、患者が睡眠中に強い嚥下をした場合に、インプラントは、一時的に変形して嚥下を許容することができる。嚥下と関連した筋肉活動が終わった後、インプラント20は、弛緩した舌を支持し成形するために図7Bに示される好ましい形状となる。
【0051】
閉塞型睡眠時無呼吸を治療するためのインプラントの大雑把な説明を上に述べた。図8A〜図8Cは、本発明の1つの特定の好ましい実施形態によるインプラントを示す。図8Aを参照すると、一実施形態では、インプラント20の遠位端は、遠位端52を有する移送管50と、管50の外側面に形成された放射状開口54と、を有することが好ましい。放射状開口54は、管50の遠位端52の近くに位置決めされてもよい。流体が、移送管50の遠位端52の方に送り込まれたとき、流体は、中央導管56を通って放射状開口54から出る。インプラントを剛性状態から柔軟状態に変えたいとき、流体は、放射状開口54と細長い導管56を介して取り出される。
【0052】
インプラントの遠位端は、移送管50の外側面の上に固定された内側層58を有する第1のチャンバ22を有することが好ましい。内側層58は、近位縁60と遠位縁62とを有することが好ましい。近位縁60は、管50の外側面の、放射状開口54の遠位端と移送管50の遠位端58との間に固定されることが好ましい。内側層58の遠位縁62は、移送管50の遠位端52を超えて延在することが好ましい。一実施形態では、内側層58は、円筒形要素を形成するように移送管50の外側面に巻き付けられることが好ましい。近位縁60は、流体密封シールを形成するために、移送管50の外側面にそれと共に固定されることが好ましい。
【0053】
第1のチャンバ22は、また、近位縁66と遠位縁68とを有する外側層64を有することが好ましい。外側層64は、内側層58の上に重なることが好ましい。一実施形態では、外側層64の近位縁66は、放射状開口54の近位の位置で、移送管の外側面に取り付けられることが好ましい。外側層64で、円筒形要素を形成するように内側層58と移送管50に巻き付けられることが好ましい。外側層64の遠位縁68は、内側層58の遠位縁62に固定され、遠位縁62と流体密封シールを形成することが好ましい。
【0054】
一実施形態では、内側層58は、長さL1を有する外側層64より短いことが好ましい長さL2を有する。内側層と外側層は、内側層が移送管の遠位端に接着された状態で、移送管の遠位端に巻き付けられることが好ましい。外側層は、放射状開口54の近くで移送管50に接続されることが好ましい。図8Cに示されるように、内側層58と外側層64の周囲が、フィルムの内側層と外側層の間に密閉室を形成するように接着され、自由縁が、円筒形装置を構成するように接着されることが好ましい。二重壁円筒形要素を構成することにより、円筒を加圧するのに必要な流体体積を少なくすることができる。他の実施形態では、第1のチャンバは、第1のチャンバをより柔軟状態からより剛性状態に変えるために使用する流体の量を少なくできるように波状又は「ハチの巣状」内部構造を有してもよい。これらの好ましい設計は、バルーンやパウチなどの中空構造に剛性を提供するのに必要な流体より少ない流体を必要とする。
【0055】
図8Bを参照すると、一実施形態では、内側層58と外側層64は、移送管50の遠位端の上に取り付けられる。内側層58と外側層64のそれぞれの遠位縁62、68は、流体密封シールを構成するように固定されることが好ましい。内側層58の近位縁60は、放射状開口54から遠位にある場所で移送管50の外側面に固定され、外側層64の近位縁66は、放射状開口54の近位にある位置で移送管50の外側面に固定されることが好ましい。放射状開口54を通る流体は、第1のチャンバ22を拡張するために内側層58と外側層64との間の隙間を満たすことが望ましい。
【0056】
図8Cを参照すると、一実施形態では、流体は、導管56内で移送管の遠位端の方に送られる。流体が、移送管50の遠位端に達するとき、流体は、放射状開口54(図示せず)を通り、内側層58と外側層64との間の空間又は隙間を満たす。内側層58と外側層64との間の空間内の流体圧力が高まるとき、第1のチャンバ22はより剛性になる。二層設計を使用することにより、第1のチャンバに剛性を提供するのに必要な流体の体積が最小になり、その結果、第1のチャンバをより柔軟状態からより剛性状態に変えるのに必要な流体が少なくなる。
【0057】
一実施形態では、第1のチャンバ22は、バルーンやパウチと類似の標準的な単一隔室として構成されてもよい。この特定の実施形態では、第1のチャンバが剛性になることを可能にするために、より大量の流体を第2のチャンバに移さなければならないことがある。
【0058】
図9を参照すると、一実施形態では、閉塞型睡眠時無呼吸を治療するためのインプラント120が、口蓋の軟組織内に位置決めされる。1つの特定の実施形態では、インプラントは、軟口蓋SP内に位置決めされた第1のインプラント及び第2のインプラントを含む。図9に示される特定の実施形態では、第1のインプラントは、軟口蓋SP内に位置決めされた第1のチャンバ122Aを含むことが好ましく、第2のインプラントは、軟口蓋SP内に位置決めされた第1のチャンバ122Bを含むことが好ましい。それぞれの第1のチャンバ122A、122B内の流体圧力は、それぞれの第1のチャンバ122A、122Bの形状及び/又は剛性を変化させ、それにより軟口蓋SPの形状を変化させ及び/又は保持するために、高められてもよい。図9に示される実施形態では、流体移送組立体及び流体リザーバ要素は、第1のチャンバ122A、122Bの場所から離れて配置される。
【0059】
図10を参照すると、一実施形態では、本明細書に述べられたインプラントは、患者の咽頭壁PW内に位置決めされる。図10では、システムは、第1のチャンバ222Aを有する第1のインプラントと、第1のチャンバ222Bを有する第2のインプラントと、を有する。それぞれの第1のチャンバ222A、222Bは、咽頭壁PWに埋め込まれる。インプラントの流体リザーバ及び流体移送組立体は、第1のチャンバ222A、222Bの場所から離れて配置されることが好ましい。
【0060】
図11を参照すると、一実施形態では、閉塞型睡眠時無呼吸を治療するためのインプラント320が、中咽頭気道の軟組織内に埋め込めることが望ましい柔軟チャンバ322と、患者の下顎下領域内に埋め込むことができることが好ましい流体リザーバ324と、を有する。柔軟チャンバ322と流体リザーバ324は、その間に延在する流体移送組立体を介して互いに流体連通することが望ましい。流体移送組立体は、柔軟チャンバ322と流体リザーバ324を相互接続する流体導管328を有することが望ましい。インプラント320は、また、柔軟チャンバ322と流体リザーバ324との間で流体を前後に移送することを可能にするダックビル弁(duck-bill valve)などの弁326を有することが好ましい。弁326は、患者によって係合されて、流体リザーバと柔軟チャンバとの間で食塩水などの流体を移送して、柔軟チャンバの剛性、柔軟性、及び/又は形状を調整することができる。一実施形態では、図11に示されるインプラント320は、インプラントの外周に配置された継ぎ目を有する単一構造である。一実施形態では、柔軟チャンバ322、流体リザーバ324、及び流体導管328は、フィルムの周囲で接合された2枚の軟質フィルムを有することができる。弁326は、柔軟チャンバと流体リザーバとの間の流体の流れを制御するために2枚の接合された軟質フィルム間に配置されてもよい。
【0061】
本発明は、如何なる特定の動作原理によっても限定されないが、本明細書に開示される閉塞型睡眠時無呼吸を治療するためのインプラントを利用して、患者からの要求に基づいて気道の好ましい支持と再成形を提供することできると考えられる。本発明のインプラント装置が、軟質フィルム材料から製造されるので、患者が覚醒しているときにはインプラント装置に気付かない。本発明の特定の好ましい実施形態では、インプラントは、軟質フィルムから形成される。一実施形態では、流体移送組立体は、特別な接着、継ぎ目又は継手を必要とせずに「単一」型構造を提供するために、2層のフィルムが一方の端で嚢形状に熱形成され他方の端で接着された状態で、直列に含まれてもよい。
【0062】
一実施形態では、インプラントは、組織内でインプラントを安定させ組織糜爛の可能性を最小にするために、組織内殖を促進する外側面を有してもよい。外側面の調整は、外側面をテクスチャ化し、孔(例えば、穿孔や突き刺し孔)の付加によりインプラントを多孔質化し、インプラントを編組、手術用メッシュ、又はフリース材料でカプセル化し、及び/又はインプラントをヒドロキシアパタイト等の骨成長刺激剤で被覆することによって達成されてもよい。
【0063】
本発明は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群及び呼吸低下を治療するのに用いられる従来技術の方法及び装置に優る多くの利点を提供する。まず、本明細書に開示される方法、システム及び装置は、侵襲が最低限の単純な外科的手技を提供する。典型的には、本明細書に開示される方法、システム及び装置は、外来処置の間に利用することができる。加えて、本明細書に開示される方法、システム及び装置は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群及び呼吸低下の治療の即効性及び長期的結果の両方を提供する。更に、本明細書に開示される方法、システム及び装置は、かなり高い患者コンプライアンスを必要としない。
【0064】
更に、本発明は、舌を下顎などの固定硬質構造に固定しない。よって、本発明は嚥下又は発語に影響する可能性が大幅に低くなり、これにより、先行技術の装置、システム及び方法に対して大きな改善をもたらす。本発明はまた、好ましくは、長期的な生物適合性を有する材料を用いる。
【0065】
本明細書に開示した様々な実施形態はヒトでの使用に関連しているが、全ての哺乳動物、及び気道を有する全ての動物内で使用できることが想定される。更に、本明細書に開示される方法、システム及び装置は、生体適合性である任意の材料、並びに装置が埋め込まれた後の拒絶反応を最小限にする、組織の内部成長を促進する、粘膜層の形成を促進する、及び身体による装置の許容を改善する任意の溶液又は構成成分を組み込むことができる。
【0066】
本出願は、同一出願人の2008年7月30日に出願された米国特許出願第12/182,402号、2008年7月31日に出願された第12/183,955号、2008年10月24日に出願された第12/257,563号、2008年10月30日に出願された第12/261,102号、2008年12月1日に出願された第12/325,350号、並びに米国特許出願公開第2007/0005109号及び第2007/0005110号に開示される特徴の1つ以上を含んでもよく、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0067】
本明細書に使用される項目は整理目的のものであり、本明細書又は請求項の範囲を制限するために使用することを意図したものではない。本出願全体に使用される用語「〜得る(may)」は、許可の意味(即ち、その可能性を有するという意味)で使用されるものであり、命令の意味(即ち、しなければならないという意味)ではない。同様に、「含む(include、including、及びincludes)」は、それらを含むが限定されないことを意味する。理解を促進するために、可能な場合には、図に共通の同様要素を指定するために、同様の参照番号が使用される。
【0068】
前述の事項は、本発明の実施形態に向けられているが、本発明の基本的範囲から逸脱することなく、本発明の他の実施形態、及び更なる実施形態を考案することができる。したがって、本発明の範囲は、添付の「特許請求の範囲」に明記されるようにのみ限定される。
【0069】
〔実施の態様〕
(1) 閉塞型睡眠時無呼吸を治療するためのインプラントであって、
中咽頭気道の軟組織内に埋め込み可能な第1のチャンバと、
前記第1のチャンバと連通する第2のチャンバと、
前記第1と第2のチャンバと連通しており、前記第1のチャンバの剛性を調整するために前記第1のチャンバと第2のチャンバとの間で流体を移送する流体移送組立体と、を有するインプラント。
(2) 前記第1のチャンバが、柔軟チャンバを有し、前記第2のチャンバが、流体リザーバを有する、実施態様1に記載のインプラント。
(3) 前記第1のチャンバ、前記第2のチャンバ、及び前記流体移送組立体が、単一構造を有する、実施態様1に記載のインプラント。
(4) 前記第1のチャンバが、舌内に埋め込み可能である、実施態様1に記載のインプラント。
(5) 前記第1のチャンバが、患者の前後軸、横軸、垂直軸、又は水平軸に対して任意の選択角度で前記軟組織内に埋め込み可能である、実施態様1に記載のインプラント。
(6) 前記第1のチャンバが、軟口蓋内に埋め込み可能である、実施態様1に記載のインプラント。
(7) 前記第1のチャンバが、咽頭壁内に埋め込み可能である、実施態様1に記載のインプラント。
(8) 前記第2のチャンバと前記流体移送組立体が、患者の下顎下領域内に埋め込み可能である、実施態様1に記載のインプラント。
(9) 前記インプラントの前記第1と第2のチャンバ内に使い捨ての流体を更に含み、前記流体が、液体又は気体を含む、実施態様1に記載のインプラント。
(10) 閉塞型睡眠時無呼吸を治療するためのインプラントであって、
柔軟チャンバと、
前記柔軟チャンバと流体連通した流体リザーバと、
前記流体リザーバ及び前記柔軟チャンバと連通しており、それらの間で流体を移送して前記柔軟チャンバの剛性を選択的に調整する流体移送組立体と、を有するインプラント。
【0070】
(11) 前記柔軟チャンバが、患者の中咽頭気道の軟組織内に埋め込み可能であり、前記流体リザーバと前記流体移送組立体が、前記患者の前記下顎下領域内に埋め込み可能である、実施態様10に記載のインプラント。
(12) 前記柔軟チャンバの剛性は、流体が前記流体リザーバから前記柔軟チャンバに移送されたときに増大し、前記柔軟チャンバの剛性は、前記流体が前記柔軟チャンバから前記流体リザーバに移送されたときに低下する、実施態様10に記載のインプラント。
(13) 前記柔軟チャンバと前記流体リザーバとの間に延在してそれらの間で流体を移送するための柔軟導管を更に有する、実施態様10に記載のインプラント。
(14) 前記柔軟チャンバは、前記流体が前記流体リザーバから前記柔軟チャンバに移送されたときにより剛性になり、前記流体が前記柔軟チャンバから前記流体リザーバに戻されたときにより剛性でなくなる、実施態様11に記載のインプラント。
(15) 前記柔軟チャンバは、前記流体が前記流体リザーバと前記柔軟チャンバとの間で移送されたときに形状を変化させるように適応された、実施態様10に記載のインプラント。
(16) 前記第1のチャンバが、上気道の軟組織、舌の矢状面の中線、軟口蓋、又は咽頭壁に埋め込み可能である、実施態様10に記載のインプラント。
(17) 閉塞型睡眠時無呼吸を治療するための外科用インプラントであって、
患者の中咽頭気道の軟組織内に埋め込み可能な柔軟チャンバと、
前記患者の下顎下領域内に埋め込み可能でありかつ前記柔軟チャンバと流体連通した流体リザーバと、
前記患者内に埋め込み可能でありかつ前記流体リザーバ及び前記柔軟チャンバと連通する流体移送組立体と、を有し、前記流体移送組立体が、前記流体リザーバと前記柔軟チャンバとの間で流体を移送して前記柔軟チャンバの剛性を調整するために前記患者によって係合可能である、外科用インプラント。
(18) 前記柔軟チャンバ、前記流体リザーバ、及び前記流体移送組立体が、生体適合性材料を含む、実施態様17に記載の外科用インプラント。
(19) 前記柔軟チャンバは、前記流体が前記流体リザーバから前記柔軟チャンバに移送されたときにより剛性になり、前記流体が前記柔軟チャンバから前記流体リザーバに戻されたときにより剛性でなくなる、実施態様17に記載の外科用インプラント。
(20) 前記柔軟チャンバは、前記流体が前記流体リザーバと前記柔軟チャンバとの間で移送されたときに形状を変化させるように適応された、実施態様17に記載の外科用インプラント。
【0071】
(21) 前記流体移送組立体が、
前記柔軟チャンバと前記流体リザーバとの間に延在する導管と、
前記導管内に配置されて、前記柔軟チャンバと前記流体リザーバとの間の流体流れを調整する弁と、を有する、実施態様17に記載の外科用インプラント。
(22) 前記弁は、前記柔軟チャンバ内の流体と前記流体リザーバ内の流体との正圧差に応じて開くように適応された、実施態様21に記載の外科用インプラント。
(23) 前記柔軟チャンバ、前記流体リザーバ及び前記流体移送組立体が、単一構造を有する、実施態様17に記載の外科用インプラント。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉塞型睡眠時無呼吸を治療するためのインプラントであって、
中咽頭気道の軟組織内に埋め込み可能な第1のチャンバと、
前記第1のチャンバと連通する第2のチャンバと、
前記第1と第2のチャンバと連通しており、前記第1のチャンバの剛性を調整するために前記第1のチャンバと第2のチャンバとの間で流体を移送する流体移送組立体と、を有するインプラント。
【請求項2】
前記第1のチャンバが、柔軟チャンバを有し、前記第2のチャンバが、流体リザーバを有する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項3】
前記第1のチャンバ、前記第2のチャンバ、及び前記流体移送組立体が、単一構造を有する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項4】
前記第1のチャンバが、舌内に埋め込み可能である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項5】
前記第1のチャンバが、患者の前後軸、横軸、垂直軸、又は水平軸に対して任意の選択角度で前記軟組織内に埋め込み可能である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項6】
前記第1のチャンバが、軟口蓋内に埋め込み可能である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項7】
前記第1のチャンバが、咽頭壁内に埋め込み可能である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項8】
前記第2のチャンバと前記流体移送組立体が、患者の下顎下領域内に埋め込み可能である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項9】
前記インプラントの前記第1と第2のチャンバ内に使い捨ての流体を更に含み、前記流体が、液体又は気体を含む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項1】
閉塞型睡眠時無呼吸を治療するためのインプラントであって、
中咽頭気道の軟組織内に埋め込み可能な第1のチャンバと、
前記第1のチャンバと連通する第2のチャンバと、
前記第1と第2のチャンバと連通しており、前記第1のチャンバの剛性を調整するために前記第1のチャンバと第2のチャンバとの間で流体を移送する流体移送組立体と、を有するインプラント。
【請求項2】
前記第1のチャンバが、柔軟チャンバを有し、前記第2のチャンバが、流体リザーバを有する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項3】
前記第1のチャンバ、前記第2のチャンバ、及び前記流体移送組立体が、単一構造を有する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項4】
前記第1のチャンバが、舌内に埋め込み可能である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項5】
前記第1のチャンバが、患者の前後軸、横軸、垂直軸、又は水平軸に対して任意の選択角度で前記軟組織内に埋め込み可能である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項6】
前記第1のチャンバが、軟口蓋内に埋め込み可能である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項7】
前記第1のチャンバが、咽頭壁内に埋め込み可能である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項8】
前記第2のチャンバと前記流体移送組立体が、患者の下顎下領域内に埋め込み可能である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項9】
前記インプラントの前記第1と第2のチャンバ内に使い捨ての流体を更に含み、前記流体が、液体又は気体を含む、請求項1に記載のインプラント。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2013−509240(P2013−509240A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−536858(P2012−536858)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/052628
【国際公開番号】WO2011/059628
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(512080321)エシコン・インコーポレイテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】Ethicon, Inc.
【住所又は居所原語表記】P.O. Box 151, U.S. Route 22, Somerville, NJ 08876, United States of America
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/052628
【国際公開番号】WO2011/059628
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(512080321)エシコン・インコーポレイテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】Ethicon, Inc.
【住所又は居所原語表記】P.O. Box 151, U.S. Route 22, Somerville, NJ 08876, United States of America
【Fターム(参考)】
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