説明

閉磁気コアと永久磁石とを有する点火コイル、ならびに同コイルの製造方法

本発明は、点火コイルに関し、この点火コイルは、保護筐体(2)と、永久磁石(21)を有する閉磁気コアとを備え、この磁気コアは、保護筐体(2)内に収容されているほぼU字状の第1のコア素子(4)と、ほぼ棒状の第2のコア素子(20)とを備えている。第1のコア素子(4)は、第2のコア素子(20)と接触する少なくとも2つの面(5a、5b)を備えている。コイルは、第2のコア素子(20)の周りに巻かれている少なくとも1つの一次巻線(23)および1つの二次巻線(36)を備え、第2のコア素子(20)とともに、コイルモジュール(3)を形成している。第1のコア素子(4)の接触面(5a、5b)は、筐体(2)内にコイルモジュール(3)を取り付けられるように両方とも傾斜している。本発明は、保護筐体内にコイルモジュールを設けるのを簡単にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閉磁気コアと永久磁石とを有する点火コイルに関する。この点火コイルは、一般に電気工学分野において使用され、より具体的には、点火コイルによって制御される点火プラグの電極間に発生する火花が、シリンダ内のガス状混合物の燃焼を引き起こす調整点火、内燃機関、自動車エンジンにおいて使用される。
【背景技術】
【0002】
閉磁気コア(または回路)と永久磁石とを有する点火コイルは、U字状の第1の磁気コア素子と、棒状の第2の磁気コア素子とを備えている。この第2の磁気コア素子の周りには、一次巻線および二次巻線が巻かれ、この第2のコア素子とともに「コイルモジュール」を形成している。
【0003】
例えば特許文献1(WO94/06134)に記載されているように、点火コイルを組み立てる時、コイルモジュールは、第1のコア素子のUの2つの縦棒の間を横断するように取り付けられ、次いでこのアセンブリは、保護筐体内に挿入される。次いで、点火コイルの種々の素子を電気的に絶縁して、自動車で使用できる密閉されたブロックを形成するために、保護筐体の内部に樹脂を詰めてもよい。
【0004】
最終的な組み立て位置では、棒状の第2のコア素子の終端面は、U字状の第1のコア素子の縦棒の終端内面に接触している。永久磁石は、たいてい、棒状の第2のコア素子の一方の終端を形成している。これにより、点火コイルの能力を増加できる、および/またはその容積を減少できる。
【0005】
しかし、製作公差のために、2つの磁気コア素子を組み立てて一体とするのに問題がある。特に、2つの磁気コア素子を組み立てた際、磁気コア素子間の空隙はゼロになるべきであり、これは、Uの各脚上で接触している2対の面の間の2つの接触面において、そうあるべきである。しかし、2対の面の間の空隙がゼロになるようになっている2つの素子を相互に組み立てるのは非常に困難であり、相互に引き付け合う磁石が存在する場合には、特に困難である。
【0006】
これらの問題を解決するために、特許文献1(WO94/06134)記載の第1のコア素子のUの1つの縦棒の終端内面は、棒状の第2のコア素子の終端面を補完するような傾斜形状を有し、相互に接触する斜面に対して傾斜路を画定している。棒状の第2のコア(または永久磁石)の他方の端面から変形可能な隆起が突き出ており、これが押し潰されることによって、2つの磁気コア素子の間の厳しい誤差に対して余裕を持たせるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第94/06134号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、隆起の間の空隙は、完全にゼロになるまで小さくなることはなく、対向する面の間に空隙が残る。この空隙には、筐体に樹脂を詰めるとき、樹脂が侵入することがあり、これにより、磁気コアの効率、ひいては点火コイルの効率は低下させられる。
【0009】
第1のコア素子のUの2つの縦棒の間に第2のコア素子を取り付けて保持するには、変形可能な隆起に加えて、Uの1つの縦棒上に、当接する肩部の存在が必要であることにも留意されたい。隆起および当接する肩部の製造は、面倒であり、費用もかかる。
【0010】
従って、一方において、2つの磁気コア素子をより簡単に、かつ相互によりしっかりと組み立てて保持でき、他方において、簡単で、従って、製造費が小さい2つの磁気コア素子を備えるコイルを提供することは望ましいことである。
【0011】
さらに、第1のコア素子が既に設置されている保護筐体の中に、棒状の第2のコア素子、一次巻線、および二次巻線を備えるコイルモジュールを直接設置できることは望ましいことである。このような点火コイルのアセンブリは、現在のところ、産業的規模では可能ではない。具体的には、装置に永久磁石が存在するために、2つの磁気コア素子は、互いに引き付け合い、これらの素子を、一緒にして、徐々に、かつ正確に位置合わせするのが妨げられるからである。
【0012】
本発明の目的は、上記の欠点を軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、保護筐体と、永久磁石を有する閉磁気コアとを備える点火コイルに関し、この磁気コアは、保護筐体内に収容されているほぼU字状の第1のコア素子と、ほぼ棒状の第2のコア素子とを備え、この第1のコア素子は、第2のコア素子との少なくとも2つの接触面を備え、このコイルは、第2のコア素子の周りに巻かれている少なくとも1つの一次巻線および1つの二次巻線を備え、第2のコア素子ともにコイルモジュールを形成しており、第1のコア素子の接触面は、コイルモジュールを筐体内に設置できるように、両方とも傾斜していることを特徴としている。
【0014】
本発明によると、保護筐体内へのコイルモジュールの設置は簡単になり、かつ点火コイルの製造方法の実施が容易になる。特に、U字状の第1のコア素子が前もって設置されている保護筐体内へのコイルモジュールの設置に関して、「目で確認する必要のない」設置が可能となる。傾斜接触面は、コイルモジュールを保護筐体内に設置するときに、案内傾斜路としての機能を果たすのがよい。例えばこれらの面の一方に沿って、第2のコア素子を移動および案内することができ、反対側の傾斜の存在により、漸進的な移動に対して、十分な間隔が確実に保たれ、かつ例えば従来の当接部または隆起などの確実に設ける必要なしに、起こりうる誤差を補正することができる。従って、コア素子は、より簡単になり、費用も少なくなる。また、2つの傾斜が存在することにより、一方の面の代わりに他方の面に、故意に、または誤って載せることも可能になる。
【0015】
1つの有利な実施形態では、第2のコア素子は、第1のコア素子の接触面に対する少なくとも2つの接触面を備えているので、これらの接触面は、第1のコア素子の接触面の傾斜形状を補完する傾斜形状を有する。「補完する形状」とは、面との均一な接触を可能にする形状のことである。これにより、対向面間の空隙は、最小限となり、さらにはゼロまで小さくすることもできる。
【0016】
1つの有利な実施形態では、第2のコア素子の少なくとも1つの接触面は、永久磁石の面によって形成されている。
【0017】
1つの有利な実施形態では、第2のコア素子は、軸に沿って延びる主杆と、主杆の軸に対して傾斜する横杆とを有するT字状の杆の形態を取り、横杆は、永久磁石を支持している。
【0018】
1つの有利な実施形態では、第1のコア素子は、そのコア素子の形状のU状の縦杆に相当する2つの縦杆を備えており、その接触面は、これらの縦杆の終端面である。
【0019】
この場合の有利な実施形態では、各縦杆には、内側と外側とがあり、第1のコア素子の接触面は、縦杆の内側にある。
【0020】
1つの有利な実施形態では、各縦杆は、概ね軸に沿って延びており、各接触面は、当該縦杆の軸に対して鋭角に傾斜している。
【0021】
1つの有利な実施形態では、保護筐体は、第1のコア素子の周りをオーバーモールドしている。このような筐体は、アセンブリの寸法に正確に合わせるのが容易である。
【0022】
1つの有利な実施形態では、第1のコア素子の接触面は、長さが異なる。これにより、これらの面の中の一方の接触を有利に行うことができ、特に永久磁石が第2のコア素子の一方の終端をなしている場合、磁石との接触を促進するために、永久磁石の接触面の方が大きいことが好ましい。
【0023】
1つの有利な実施形態では、インサートが、二次巻線に接続され、かつ導電体と接触するように配置されている。この導電体は、保護筐体内に収容され、高電圧インサートに接続されている。本発明は、第1のコア素子へのコイルモジュールの正しい配置を確実にして、保護筐体内への二次巻線の正しい配置を確実にし、ひいては、インサートの導電体との適正な接触を確実にしている。
【0024】
また、本発明は、点火コイルの製造方法にも関し、この点火コイルは、保護筐体と、永久磁石を有する閉磁気コアとを備え、この磁気コアは、保護筐体内に収容されているほぼU字状の第1のコア素子と、ほぼ棒状の第2のコア素子とを備え、この第1のコア素子は、第2のコア素子との少なくとも2つの傾斜接触面を備え、このコイルは、第2のコア素子の周りに巻かれている少なくとも1つの一次巻線と1つの二次巻線とを備えており、この方法は、
−第2のコア素子の周りに一次巻線および二次巻線を配置することにより、コイルモジュールを形成するステップと、
−保護筐体内に第1のコア素子を収容するステップと、
−第1のコア素子の接触面に第2のコア素子を接触させることにより、保護筐体内にコイルモジュールを設置するステップとを備えている。
【0025】
1つの有利な実施形態では、第1のコア素子は、第1のコア素子の周りに保護筐体をオーバーモールドすることにより、保護筐体内に収容されている。このステップは、実施するのが簡単であり、筐体内に第1のコア素子を完全に密閉することができる。
【0026】
1つの有利な実施形態では、第2のコア素子は、第1のコア素子の接触面との少なくとも2つの接触面を備え、第1のコア素子の接触面の傾斜形状を補完する傾斜形状を有しており、コイルモジュールは、第1のコア素子の接触面に沿って、第2のコア素子の接触面を移動させることにより、保護筐体内に設置されている。
【0027】
1つの有利な実施形態では、第2のコア素子の少なくとも1つの終端面は、永久磁石の面で形成されているので、第1のコア素子の接触面に沿って移動させる第2のコア素子の接触面は、永久磁石の接触面である。
【0028】
1つの有利な実施形態では、第2のコア素子の接触面の移動の最後に、第1および第2のコア素子のすべての接触面間の接触と、好ましくは同時に、二次巻線に接続されているインサートと、保護筐体に収容され、高電圧インサートに接続されている導電体との間が接触する。
【0029】
本発明のコイルおよび方法の好ましい実施形態について、添付の図面を参照して、以下の説明を読むことにより、本発明は、より良く理解しうると思う。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明によるU字状の第1のコア素子の周りをオーバーモールドされている保護筐体の透明な斜視図である。
【図2】本発明によるコイルモジュールの素子の分解図である。
【図3】図1の保護筐体の中に設けられている図2のコイルモジュールを示す透明な側面図である。
【図4】図1のU字状の第1のコア素子の斜視図である。
【図5】図2のコイルモジュールの棒状の第2のコア素子の斜視図である。
【図6】図4の第1のコア素子のUの2つの縦棒の間に、図5の第2のコア素子が取り付けられている斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明による点火コイル1は、永久磁石21を有する閉磁気コア(または回路)を備え、この磁気コアは、保護筐体2内に収容されているほぼU字状の第1のコア素子4と、ほぼ棒状の第2のコア素子20とを備え、この第2のコア素子20の周りに、一次巻線23および二次巻線36が巻かれ、これらの巻線の中を、それぞれコイルの入力電流およびコイルの出力電流が従来と同様に流れる。第2のコア素子20および一次巻線23および二次巻線36は、コイルモジュール3を形成している。図3に示すコイル1は、第1のコア素子4を収容している筐体2(図1に示す)内にコイルモジュール3(図2に示す)を組み立てることにより形成されている。
【0032】
図1に示すように、U字状の第1のコア素子4は、一体に保持されている積み重ねられた金属の薄板で形成されている。このコア素子4は、コア素子4の形状のUの基部および縦棒に相当する基部42と2つの縦棒6a、6bとを備えている。第1のコア素子4は、第2のコア素子20との2つの接触面5a、5bを備えている。これらの接触面5a、5bは、平らで傾斜しており、保護筐体2(この中に第1のコア素子4が設置されている)内へのコイルモジュール3(特に第2のコア素子20を備えている)の設置を可能にしている。
【0033】
また、第2のコア素子20は、第1のコア素子4の接触面5a、5bに接触する2つの接触面21a、31b(この例では、終端面)も備えている。この例では、一方の面21aは、永久磁石21の面によって形成されており、この永久磁石21は、第2のコア素子20の面31aに取り付けられている。これについては、後で詳細に説明する。第2のコア素子20の接触面21a、31bは、平らで傾斜しており、それぞれが、第1のコア素子4の、接触するようになされている接触面5a、5bの形状を補完する形状を有する。この形状が合致していることにより、接触面の各対(5a、21a)、(5b、31b)の表面間の均一な接触が可能になる(もちろん、Uの縦棒のそれぞれにおける接触を可能にするような形状とされている)。
【0034】
説明を簡潔にするために、以降の説明は、相互に直交する3方向X、Y、Zを備える直交座標系を基準にして行う。これらの方向X、Y、Zは、例えば図1などに明示されているように、第1のコア素子4の形状のUの基部42の大きい寸法、Uの縦棒6a、6bの大きい寸法、およびUの基部42の厚さの方向に、それぞれ平行している。点火コイルの素子を筐体2内に設置する時、それらの位置については、これらの方向を基準にして説明する。
【0035】
さらに、ある方向に対する面の傾きについて述べるとき、方向XおよびYにより形成されている部分の断面に含まれる、この面の傾き方向を意味する。
【0036】
さらに、内側、外側、上部、下部の概念は、図1の筐体2おけるものである。
【0037】
保護筐体2は、ほぼ平行6面体の形状を有し、第1のコア素子4の外形に密接に合致するようになっている内面を備えている。第1のコア素子4が筐体2に収容されていると、筐体内で第1のコア素子4の内面だけが見える。より正確には、この例では、保護筐体2は、第1のコア素子4の周りをオーバーモールドしている。
【0038】
この例では、保護筐体2は、上部に開口部7を有し、この開口部7を通して、コイルモジュール3を筐体2内に設置することができる。さらに、保護筐体2は、第1のコア素子4の外面に密接に合致するようになっている形状を有する下壁8および固い側壁を備えており、コイルモジュール3の設置を可能にしている。筐体2の形状は、当業者には適宜定めることが可能であり、より詳細に説明する必要はないと思う。
【0039】
筐体2を従来のやり方で車両に取り付けられるようにするために、車両の対応する手段(図示せず)と相互に作用する固定手段(図示せず)を、筐体2に設けてもよい。
【0040】
保護筐体2の一方の第1の終端に、Uの縦棒の方向Yに平行な軸を有し、第2の筐体14に通じる概ね円筒状の第1の筐体13が配置されている。この第2の筐体14は、Uの基部42の方向Xに平行な軸を有し、概ね円筒状であり、末端部14を形成している。
【0041】
第1の円筒筐体13の内部に、抵抗などの導電素子15が配置され、高電圧インサート16と呼ばれている部品に電気的に接続されている。この高電圧インサート16は、第2の円筒筐体14に収容され、図示していないスパークプラグに接続されるようになっており、スパークプラグがスパークするのに必要な電圧を、スパークプラグに伝達する。
【0042】
図2において、コイルモジュール3は、第2のコア素子20を備え、この第2のコア素子20は、永久磁石21、一次巻線23、および二次巻線36を公知のやり方で支持している。一次巻線23および二次巻線36は、それぞれ、プラスチックのカーカス22、35またはボビンの周りに、公知のやり方で巻かれているので、詳細に説明する必要はないと思う。公知のやり方で、一次巻線23のカーカス22は、第2のコア素子20の周りにうまく納まり、二次巻線36のカーカス35は、一次巻線23の周りにうまく納まる。
【0043】
第2のコア素子20は、例えば、第1のコア素子4と同様のやり方で、一緒に保持されている積み重ねられた金属の薄板で形成されている。
【0044】
この例では、第2のコア素子20は、概ね軸Xに沿って延びる主棒24と傾斜横棒25とを備えるT字状の棒の形態を取り、永久磁石21は、この例では、横棒25の平らな終端面31aに取り付けられている。
【0045】
図示していない別の実施形態では、第2のコア素子20は、第1のコア素子4の2つの縦棒6a、6bの間に取り付けられるようになっている、Tではなく、Iの形態をとってもよい。
【0046】
二次巻線36のボビン35は、一次巻線23およびそのボビン22を収容する中空体の形態をとっている。永久磁石21の側に相当する側の反対側の終端において、ボビン35は、その上部に、軸Xと概ね平行に突出している舌38を備えている。
【0047】
舌38の下のボビン35の両側にノッチ40が配置されている。これら2つのノッチ40は、T字状の電気接触素子41の突起を受け入れるようになっている。この電気接触素子41は、インサート41または二次インサート41と呼ばれ、その機能は、公知のやり方で、二次巻線36と、高電圧インサート16に接続されている導電素子15との間を、電気的に接触させることである。舌38は、二次インサート41を保護するとともに、その位置合わせをする。点火コイル1(図3に示す)の設置位置において、第2のコア素子20の接触面21a、31bが、第1のコア素子4の、保護筐体2が周りをオーバーモールドしている接触面5a、5bと接触している時、コア素子4と20の相対的位置が、(保護筐体2に固定されている)導電素子15に対する(コイルモジュール3に固定され、ひいては第1のコア素子20に固定されている)二次インサート41の相対的位置を確実にする。
【0048】
この実施形態において、第1のコア素子4の2つの縦棒6a、6bは非対称であり、磁石21の面21aと接触するようになっている傾斜面5aの方が、方向XおよびYで形成されている断面において、他方の傾斜面5bより寸法が大きい。この構造は、磁石21に接触する面5aに、磁石21を用いて第2のコア素子20を案内する傾斜路の機能を与えるようになっている。従って、コイルモジュール3を保護筐体2に設置する時、磁石21の面21aは、第1のコア素子4および第2のコア素子20の反対側の面5b、31bが互いに接触するまで、第1のコア素子4の対応する接触面5aに沿って移動する。この例では、より大きな傾斜面5aを有する縦棒6aの寸法は、他の縦棒6bの寸法よりYの方向において大きく、これにより、第2のコア素子20との最初の接触が、好ましいことに、この大きい方の縦棒6aで行われることが確実になる。
【0049】
第1のコア素子4の接触面5a、5bは、その内側にある。接触面5a、5bのそれぞれは、縦棒6a、6bの一方の終端43a、43bからそれぞれ延びており、XおよびYの平面における縦棒6a、6bの対応する厚さは、図4から分かるように、この終端からコア素子4の基部42に向かって増大している。
【0050】
接触面5a、5bは、方向Yに対して、それぞれ鋭角α、α’で傾斜しており、これらの角度α、α’は、この例では同一の値であるが、三角法的に方向は逆である。
【0051】
当然ながら、図示していない変形形態では、第1のコア素子4の2つの縦棒6a、6bは、対称でもよい。縦棒6a、6bの形状についての他の構成も想定することができるが、コイルモジュール3を保護筐体2内に設置する時、第2のコア素子20を移動させることがきるように、第1のコア素子4の各縦棒6a、6bは、傾斜面5a、5bを有していることが不可欠である。
【0052】
図5に示すように、第2のコア素子20の終端面21a、31bは、第2のコア素子20の形状Tの主棒24の方向に直角の方向Pに対して、それぞれ鋭角β、β’で傾斜している。これらの角度β、β’は、この例では、第1のコア素子4の接触面5a、5bが方向Yとなす角度α、α’とそれぞれ等しい。第2のコア素子20は、その主棒24の主方向が、第1のコア素子4の形状のUの基部の方向Xに平行に延びるように、筐体2に設けられるようになされている。すなわち、その主棒24に直角の方向Pが、Uの縦棒の方向Yに平行に延びている。従って、接触面(5a、5b)、(21a、31b)は補完的で、均一に接触するようになっており、第1のコア素子4と第2のコア素子20との間の空隙が確実にゼロになるようになされている。
【0053】
図6は、コア素子4と20のこの相対位置について示す(この図ではコア素子4、20だけを示し、一次巻線23、二次巻線36、および保護筐体2は示していない)
【0054】
次に、保護筐体2の中にコイルモジュール3を設ける方法について、詳細に説明する。
【0055】
上に説明したように、保護筐体2は、第1のコア素子4の周りをオーバーモールドしている。さらに、コイルモジュール3は、前もって組み立てられている。すなわち、第2のコア素子20が、一次巻線23のボビン22に挿入されており、このボビン22自体は、二次巻線36のボビン35に挿入されている。
【0056】
第1のコア素子4の接触面5a、5bの傾斜形状により、第1のコア素子4が収容されている保護筐体2の中に、コイルモジュール3を直接挿入することができる。この設置は、いわば「目で確認する必要がなく」行われ、従来技術では産業的に想定することができなかったことである。特に、一方の側、または他方の側で誤った位置合わせを行った場合に、両側の傾斜の存在により、この誤った位置合わせを補正することができる。
【0057】
この挿入中に、第2のコア素子20は、永久磁石21の面21aを介して、第1のコア素子4の傾斜接触面5aに接触し、次いでそれに沿って移動する。この移動は、第2のコア素子20の反対側の接触面31bが、第1のコア素子4の他方の接触面5bに接触するまで行われる。普通、反対側の接触面5b、31bがこのように接触すると、弾発的な音がして、第1のコア素子4に対して第2のコア素子20が正しく位置合わせされたことがわかる。すなわち、保護筐体2に対してコイルモジュール3が正しく位置合わせされたことがわかる。
【0058】
第1のコア素子4と第2のコア素子20とで形成されている点火コイル1の磁気コアは、このようにして閉じられる。
【0059】
さらに、特に有利なことに、最終の設置位置において、2対の接触面(5a、31a)、(5b、31b)間の接触と同時に、二次インサート41と、高電圧インサート16に接続されている導電素子15との間が接触する。そのため、二次巻線36からスパークプラグへの電気伝導の継続は確実となり、点火コイル1がその機能を適切に全うすることができるようになる。
【0060】
図示していない別の実施形態では、永久磁石21は、磁気コアの別の位置に取り付けられている。磁石21がどこに取り付けられても、第1のコア素子4に対する第2のコア素子20の移動は、磁石21の面に沿って行ってもよいし、また行わなくてもよい。磁石21が取り付けられていないコア素子20、4に、磁石21は、引き付けられる傾向があるので、この移動は、磁石21の面に沿って行われるのが好ましい。
【符号の説明】
【0061】
1 点火コイル
2 保護筐体
3 コイルモジュール
4 第1のコア素子
5a、5b (第1のコア素子の)接触面
6a、6b (第1のコア素子の)縦棒
7 開口部
8 下壁
13 第1の筐体
14 第2の筐体
15 導電素子
16 高電圧インサート
20 第2のコア素子
21 永久磁石
21a (永久磁石の)接触面
22、35 カーカス、ボビン
23 一次巻線
24 (第2のコア素子の)主棒
25 (第2のコア素子の)傾斜横棒
31a (第2のコア素子の)面
31b (第2のコア素子の)接触面
36 二次巻線
38 舌
40 ノッチ
41 電気接触素子、インサート、二次インサート
42 基部
43a、43b 終端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護筐体(2)と、永久磁石(21)を有する閉磁気コアとを備えている点火コイルであって、前記磁気コアは、前記保護筐体(2)に収容されているほぼU字状の第1のコア素子(4)と、ほぼ棒状の第2のコア素子(20)とを備え、前記第1のコア素子(4)は、前記第2のコア素子(20)との少なくとも2つの接触面(5a、5b)を備え、前記コイルは、前記第2のコア素子(20)の周りに巻かれている少なくとも1つの一次巻線(23)と、1つの二次巻線(36)とを備え、前記第2のコア素子(20)とともにコイルモジュール(3)を形成しており、前記第1のコア素子(4)の接触面(5a、5b)は両方とも傾斜していて、前記コイルモジュール(3)を前記筐体(2)内に設置できるようになっていることを特徴とする点火コイル。
【請求項2】
前記第2のコア素子(20)は、前記第1のコア素子(4)の接触面(5a、5b)との少なくとも2つの接触面(21a、31b)を備えており、これらの接触面(21a、31b)は、前記第1のコア素子(4)の接触面の傾斜形状を補完する傾斜形状を有することを特徴とする請求項1に記載の点火コイル。
【請求項3】
前記第2のコア素子(20)の少なくとも1つの接触面(31a)は、前記永久磁石(21)の面により形成されていることを特徴とする請求項2に記載の点火コイル。
【請求項4】
前記第1のコア素子(4)は、そのU形状の縦棒に相当する2つの縦棒(6a、6b)を備えており、その接触面(5a、5b)は、前記縦棒(6a、6b)の終端面であることを特徴とする請求項1に記載の点火コイル。
【請求項5】
各縦棒には内側および外側があり、前記第1のコア素子(4)の前記接触面(5a、5b)は、前記縦棒(6a、6b)の内側にあることを特徴とする請求項4に記載の点火コイル。
【請求項6】
各縦棒(6a、6b)は、概ね軸(Y)に沿って延びており、各接触面(5a、5b)は、前記縦棒(6a、6b)の軸に対して鋭角で傾斜していることを特徴とする請求項4または5に記載の点火コイル。
【請求項7】
前記保護筐体(2)は、前記第1のコア素子(4)の周りをオーバーモールドしていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の点火コイル。
【請求項8】
前記第1のコア素子(4)の前記接触面(5a、5b)は、長さが異なることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の点火コイル。
【請求項9】
インサート(41)は、前記二次巻線(36)に接続され、前記保護筐体(2)に収容され、高電圧インサート(16)に接続している導電体(15)に接触するようになっていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の点火コイル。
【請求項10】
保護筐体(2)と、永久磁石(21)を有する閉磁気コアとを備えている点火コイルの製造方法であって、前記磁気コアは、前記保護筐体(2)に収容されているほぼU字状の第1のコア素子(4)と、ほぼ棒状の第2のコア素子(20)とを備え、前記第1のコア素子(4)は、前記第2のコア素子(20)との少なくとも2つの傾斜接触面(5a、5b)を備え、前記コイルは、前記第2のコア素子(20)の周りに巻かれている少なくとも1つの一次巻線(23)と、1つの二次巻線(36)とを備えており、かつこの方法は、
−前記第2のコア素子(20)の周りに前記一次巻線(23)および前記二次巻線(36)を配置することにより、コイルモジュール(3)を形成するステップと、
−前記保護筐体(2)内に前記第1のコア素子(4)を収容するステップと、
−前記第1のコア素子(4)の前記接触面(5a、5b)に前記第2のコア素子(20)を接触させることにより、前記保護筐体(2)内に前記コイルモジュール(3)を設置するステップとを有することを特徴とする方法。
【請求項11】
前記第1のコア素子(4)の周りに前記保護筐体(2)をオーバーモールドすることにより、前記第1のコア素子(4)を前記保護筐体(2)内に収容することを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記第2のコア素子(20)は、前記第1のコア素子(4)の前記接触面(5a、5b)との少なくとも2つの接触面(31a、31b)を備え、前記第1のコア素子(4)の前記接触面(5a、5b)の傾斜形状を補完する傾斜形状を有しており、前記第1のコア素子(4)の接触面(5a、5b)に沿って、前記第2のコア素子(20)の接触面(31a、31b)を移動させることによって、前記コイルモジュール(3)が保護筐体(2)内に設置されていることを特徴とする請求項10または11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記第2のコア素子(20)の少なくとも1つの終端面(31a)は、前記永久磁石(21)の面により形成されており、前記第1のコア素子(4)の接触面(5a、5b)に沿って移動させる前記第2のコア素子(20)の接触面(31a)は、前記永久磁石(21)の接触面であることを特徴とする請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記第2のコア素子(20)の接触面(31a、31b)における移動の最後に、前記第1および第2のコア素子(4、20)の接触面(5a、5b、31a、31b)の全ての間の接触と同時に、前記二次巻線(36)に接続されているインサート(41)と、前記保護筐体(2)に収容され、高電圧インサート(16)に接続されている導電体(15)とが接触することを特徴とする請求項12または13に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−507783(P2013−507783A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533669(P2012−533669)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【国際出願番号】PCT/FR2010/051988
【国際公開番号】WO2011/045498
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(508021716)ヴァレオ システム ドゥ コントロール モトゥール (27)
【Fターム(参考)】