説明

開封部材付きスパウト

【課題】 容器を密封している部材を離脱させずに一部分を切って容器を開封させる開封部材付きスパウトを提供することを目的とする。
【解決手段】 キャップ3の開封動作に伴い、容器本体を密封しているシール部材5を破断させる開封部材4を連動させ、そのシール部材5の一部を破断した開封片を形成し、この開封片を容器本体内方向へ確実に押し込み注出口を塞ぐことがないスパウトを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流体状の内容物を収容する容器の注出口であって、特に容器の開口部を封止しているシール部材を破断させる開封部材を備えたスパウトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、熱融着可能な合成樹脂フィルムでラミネートされた紙パック等の容器における飲み口もしくは注出口として合成樹脂製のスパウトが広く用いられている。このスパウトは一般的に、容器と熱融着するフランジを備え、このフランジから円筒状に延びた注出筒の外周面にネジ山が形成されてキャップが螺着可能となっている。また、容器の開口周縁部分とフランジのシール面とを熱融着して容器とスパウトとが一体化して、容器における注出口栓を形成する。
【0003】
また、容器の開口部を密封(封止)させたシール部材を破断させて、容器を開封させる筒状カッターを備えたスパウトが知られている。そのスパウトは、注出筒の内周面に形成されたネジ部とその外周面に形成されたキャップ螺合用ネジ部とが逆ネジとなっていて、開蓋方向にキャップを回転させると筒状カッターがキャップの上昇方向とは逆方向、すなわち容器本体方向に移動する。そして、容器開口部を密封しているシール部材を破断して、キャップの開蓋とともにシール部材を破断して容器本体を開封させる。
【0004】
そのシール部材を破断する筒状カッターを備えたスパウトとして、例えば、特許文献1には、シール部材の切断片が容器内に混入させず、かつ容器本体と突刺具とにより開封片を巻き込まないようにさせるものが開示されている。具体的には、筒状の突刺具の下端に形成された刃先により封止フィルムを破断するものであって、その刃先は異なった高さを有する刃突起と平坦部と台座部とが環状配列されたものである。これにより、環状刃先の台座部は、封止フィルムを突き破ることはなく、刃突起によって突き破られた開封片を容器内方へ押し込み、かつそれまでに突き破られた部分の開封片が、注出口本体と突刺具との間に巻き込まれないようにすることができる。
【0005】
また、特許文献2には、移動筒の回転角を小さくすることで切断部材の一部のみを破断して切残り部を残存させるキャップであって、移動筒の下端には複数の刃部分と所定刃の間に形成された谷部分を有する切断部材が形成されていることが記載されている。さらに、特許文献3には、筒状カッターがスパウトから離脱し容器本体内に落下させないために、注出筒の内周面に形成されたネジ状ストッパーに筒状カッターが係止させる構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−171233号公報
【特許文献2】特開2005−104506号公報
【特許文献3】特開2010−23873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の注出口では、突刺具の刃先に含まれる台座によって封止フィルムを押圧することができるものの、台座や刃突起を環状配列させた刃先であるため、突き破られた開封片を十分に押し込めないおそれがあり、改良の余地があった。
【0008】
また、特許文献2に記載のキャップでは、切残り部を形成し切断片の落下や巻き込み防止のため、刃の尖端が形成する穴同士が繋がる間のみ破断するものであって、この間は頂壁とのテンションを保つために破断部を押圧しないものであった。したがって、破断線の完成後、すなわち頂壁から切断部の切り取り動作が完了した後に切り離されテンションを失った切断片を押し下げるものであり、十分に押し込めず切断片を巻き込むおそれがあり、改良の余地があった。注出筒の内側に突き出て注出流路を閉塞し、内容物の注出を阻害するおそれがあった。
【0009】
そこで、この発明は、上記の技術的課題に着目してなされたものであり、容器を密封していた部材の一部分を開蓋動作に伴い破断させ、その開封片を離脱させずかつ開封片が注出流路を塞がないようにさせる開封部材付きスパウトの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記従来技術の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、破断可能なシール部材によって封止される容器口部に設けられるスパウト本体に、その注出口を閉じるキャップが螺着されるとともに、スパウト本体の内部には前記キャップを開蓋方向に回転することに伴って前記シール部材を突き破る方向に螺旋状に回転して移動する筒状の開封部材が設けられた開封部材付きスパウトにおいて、前記開封部材の先端縁に、前記シール部材の外周部を突き刺しつつ回転する刃部と、縁部が平坦面に形成され前記シール部材を押圧する押圧部とが前記シール部材側に突出して形成され、前記押圧部は、前記開封部材が螺旋状に回転して前記シール部材に向けて移動する際の回転方向において前記刃部よりも前方側に配設されるとともに、前記回転方向に対してその先頭部から後尾部へ向けて前記シール部材側に突出するように傾斜しており、その後尾部が前記刃部の先頭部と隣接し、かつ当該押圧部に係る最もシール部材側に突出した部分は前記刃部の頂部よりも突出しないように形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1の構成に加え、前記刃部は、前記回転方向に対して前記刃部の先頭部から頂部へ向けて前記シール部材側に突出するように傾斜する傾斜部を有し、前記押圧部は、前記刃部の傾斜部に形成されていることを特徴とする開封部材付きスパウトである。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1の構成に加え、前記押圧部は、前記開封部材の先端縁で前記刃部に対して前記回転方向での前方側に隣接する位置に形成された突部であることを特徴とする開封部材付きスパウトである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、開封動作に連動して容器本体を密封していたシール部材を開封することができるとともに、その開封の際に破断されたシール部材の開封片を容器本体内に脱落させることを防止し、かつ注出口内を連通させた注出流路を開封片が閉塞することを防止することができる。また、刃部による破断とともに、開封片を押圧部により確実に容器本体側に押し込むことができ、開口部を綺麗に形成することができる。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、請求項1の効果に加え、刃部の傾斜部に押圧部が形成されているため、開封部材の螺旋状の回転動作により、刃部の頂部から突き刺せられ切り裂かれたシール部材を押圧部で円滑に押圧することができる。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、請求項1の効果に加え、開封部材の螺旋状の回転動作における前方側でシール部材の押圧をすることが可能になり、軸線方向の移動に伴う開封片の容器本体内への押し込みを確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の一実施形態に係る容器用注出口の閉蓋状態における側面断面図を模式的に示したものである。
【図2】この発明の一実施形態に係る容器用注出口の開蓋状態における側面断面図を模式的に示したものである。
【図3】容器用注出口の分解図を模式的に示した側面断面図である。
【図4】一実施形態に係る開封部材の側面図と上面斜視図と下面斜視図とを示したものである。
【図5】他実施形態に係る開封部材の側面図と上面斜視図と下面斜視図とを示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明を具体的に説明する。この発明に係る開封部材付きスパウトは、流体状の内容物を収容した容器本体に固着されかつ開封後に注出口として機能するものであって、この容器本体を封止しているシール部材を破断させ容器本体を開封させる機能を備えた注出口である。また、そのシール部材を破断開封させる前において、開封部材付きスパウトを閉蓋しているキャップの開封動作に連動して、この破断開封前のシール部材を破断させるように開封部材を動作させることができるものである。また、開封部材により破断されたシール部材の一部や開封片が容器本体内に離脱しないように、シール部材の一部のみを破断するとともに開口した開口部および連通した注出流路を塞がないように開封片を収容する開封部材付きスパウトである。
【0018】
(実施例1)
図1は、実施例1における開封部材付きスパウト1を模式的に示した側面断面図である。この開封部材付きスパウト1は、各構成部材が合成樹脂材料により形成されており、スパウト本体2の注出筒部21における内周面に装着された開封部材4が、その注出筒部21における外周面に螺合しかつスパウト本体2の開口部を封止するように冠着しているキャップ3の開封動作に連動して、注出筒部21内をシール部材5を突き破る方向に移動しシール部材5を破断するものである。図3に示すように、その開封部材4の先端縁に形成された開封部43に、シール部材5を突き刺しかつ回転により切り裂く刃として機能する突出した刃部44と、このような刃としては機能せずかつシール部材5を押圧する押圧部45とが形成され、この開封部43がシール部材5と接触して破断させるものである。また、スパウト本体2の注出筒部21の下側開口部がシール部材5によって封止されており、基部22に容器本体が固着されている。なお、図示しない容器本体は、内容物を収容するものであって、合成樹脂製フィルムをラミネートしたいわゆるパウチなどの袋状容器であってもよく、紙などを基材とした容器であってもよい。
【0019】
スパウト本体2は、容器本体に収容された内容物を注出可能な注出筒部21と、その容器本体と固着される基部22とを備えている。注出筒部21は、基部22から立ち上がり筒状に延設し一体形成されたものであり、その内周面には開封部材4と螺合する雌ネジ24が形成され、一方外周面にはキャップ2と螺合する雄ネジ23と搬送時に支持することで搬送を容易にさせる環状突起部25とが形成されている。より具体的には、注出筒部21の外周面に形成された雄ネジ23は、キャップ3の内周面に形成された雌ネジ33と螺合するものである。また、注出筒部21の内周面に形成された雌ネジ24は、開封部材4の外周面に形成された雄ネジ41と螺合するものであって、開封部材4が容器本体内へ突出して脱落することを防止するために雌ネジ24における下側のネジ山には凸部24aが形成されている。この凸部24aが開封部材4に形成された凸部41aと係止することで、スパウト本体2は開封部材4の脱落を防止できる。さらに、この雄ネジ23と雌ネジ24とは逆ネジの関係になっている。すなわち、注出筒部21の外周面に螺合しているキャップ3の開封動作によるキャップ3の上昇方向の移動に伴い、この注出筒部21の内周面に螺合している開封部材4はシール部材5を突き破る方向に移動するようにこれら雄ネジ23と雌ネジ24との関係が決まっている。
【0020】
また、その基部22は、容器本体を取り付け可能に機能するものである。例えば、基部22の外周面に容器本体の内側面の縁部を熱融着(ヒートシール)させて、容器本体とスパウト本体2とを一体に取り付けることができる。また、基部22の内周径を注出筒部21の内周径よりも大きくし段差部26を形成し、段差部26の下面と基部22の内周面とにシール部材5が一体的に接着されている。なお、このシール部材5は容器本体と一体に形成されているものであってもよい。また、開蓋した際に開封部材付きスパウト1の開口部をスパウト本体2が形成するものであり、その注出筒部21および基部22の上下両端は開口端となっており、容器本体内と連通するものである。なお、基部22の形状は、利用者がキャップ3を開封する際に摘むもしくは握ることができ、キャップ3の開蓋動作を容易にさせる形状にその外周部分が形成されてもよい。例えば、キャップ3の外周径よりも大径な円状形状の基部22であってもよく、略ひし形に形成されかつ鈍角に形成され対角となる二角部分を滑らかな形状に成形したものであってもよい。
【0021】
キャップ3は、開封部材付きスパウト1の口部を封止するものであって、スパウト本体2の開口端を封止する天板部31と、この天板部31の周縁部分から垂下しかつスパウト本体2の注出筒部21における外周面の一部を被覆するように形成されたスカート部32と、この天板部31の下面部分から垂下しかつ開封部材4の係止リブ42と係止するように形成された係止片34とを備えている。そのスカート部32の内周面にはスパウト本体2の注出筒部21の外周面に形成された雄ネジ23と螺合する雌ネジ33が形成されている。
【0022】
また、天板部31には複数の係止片34が垂下し形成され、この係止片34は、例えば水平断面が天板部31の円周方向において円弧状となりかつ半径方向において直線状となる略三角形となるような楔形状に形成されている。より具体的には、開封部材4に形成された係止リブ42の数に対応して係止片34が形成されるものであって、キャップ3は開閉封動作に伴い回転し、その開封動作において係止片34における半径方向の直線状に形成された係止面34aが、開封部材4の係止リブ42に当接する。一方、その閉封動作において係止片34における円周方向の円弧部分の円弧面では、係止面34aとは異なる面となす頂角部分である係止角34bが、開封部材4の係止リブ42に当接する。
【0023】
さらに、軸線方向に垂下するように形成された係止片34は、係止面34aを形成する部分が係止角34bを形成する部分よりも長く垂下するように形成され、その係止角34bの下端から係止面34aの下端へと軸線方向に対して傾斜するように傾斜面34cが形成されている。言い換えれば、スパウト本体2の注出筒部21に対してキャップ3が上昇しかつ開封部材4がシール部材5を突き破る方向へ移動する開封動作において、すなわち係止片34の係止面34aが開封部材4の係止リブ42と係止している状態において、係止片34の係止角34bの下端が開封部材4の上端面よりも上側に移動した場合でも、その係止面34aと係止リブ42との係止状態が継続されることになる。なお、係止部34の傾斜面34cは、係止角34bの下端から係止面34aの下端へ直線状に形成されるものであってもよく、曲線的に湾曲状に形成されるものであってもよい。
【0024】
開封部材4は、スパウト本体2の内部に装着されキャップ3の開封動作に伴い容器本体内方に突出するように注出筒部21に対して容器本体内の方向へ移動が可能なように、その外周面にはスパウト本体2の内周面に形成された雌ネジ24と螺合する雄ネジ41が形成されている。この雄ネジ41における上側のネジ山部分には、注出筒部21から開封部材4が容器本体内に離脱しないように雌ネジ24の凸部24aと係止する凸部41aが形成されている。したがって、この開封部材4は、キャップ3が開封方向に回転することに伴って、容器本体の開口部を封止しているシール部材5を突き破る方向に螺旋状に回転して移動するものである。
【0025】
この開封部材4は、容器本体内に収容された内容物が通過可能な筒状に形成され、その内周面には、軸線方向に延設されキャップ3の係止片34と係止する係止リブ42が形成されている。この係止リブ42が係止片34に係止しているとき、キャップ3の回転方向と同じ方向に開封部材4は回転する。したがって、スパウト本体2の注出筒部21における雄ネジ23と雌ネジ24とが逆ネジの関係にあるため、開封動作に連動してキャップ3に連れ回される開封部材4は、キャップ3の上昇方向とは逆にシール部材5を突き破る方向へ移動する。なお、雄ネジ41および雌ネジ24は複数のネジ山による多条ネジであって、雄ネジ23および雌ネジ33は単数のネジ山による単条ネジであってもよい。すなわち、ネジ山の条数が限定されるものではなく、キャップ3の回転に対するこのキャップ3の軸線方向の移動距離に比べて、開封部材4の軸線方向の移動距離が大きくなるように構成されているのが好ましい。さらに、開封部材4の下端には、筒状下端の水平面から下方向に突出しシール部材5を破断するための開封部43が形成されている。
【0026】
係止リブ42は、筒状の開封部材4の内周部分に軸線方向に沿って複数延設されており、その内周面から半径方向の中心にむけて突出した突起状の水平断面となるように形成される。例えば、その水平断面が四角形状となるように半径方向に突出した係止リブ42の場合、係止片34と当接する面が異なることになる。すなわち、係止片34の係止面34aと当接する開封係止面42aと、係止片34の係止角34bと当接するセッティング係止面42bとが、その円周方向において形成されている。また、その内周面に等間隔に複数の係止リブ42を配設する場合、90°間隔に四つの係止リブ42を配置する。すなわち、係止リブ42の個数および配置に対応する一または複数の係止片34がキャップ3の天板部31から垂下するように形成される。
【0027】
さらに、その開封係止面42aの上端は、セッティング係止面42bの上端よりも上側に突出するように形成されていてもよい。例えば、開封部材4の筒上下端面を水平面とし、これら水平面である基線に対して、セッティング係止面42bの上端部分が上端基線よりも下側に位置する場合、開封係止面42aの上端部分はその上端基線よりも上側に突出した位置に配設される。すなわち、係止リブ42の上端には、開封係止面42aの上端からセッティング係止面42bの上端へ向けて、軸線方向の下側に傾斜するように傾斜面42cが形成される。なお、軸線方向に対し鉛直な面に平行な面を水平面という。
【0028】
加えて、その筒下端面における下端基線より下側に突出した部分が開封部材4における開封部43となる。言い換えれば、スパウト本体2内に開封部材4が装着されている状態では、この開封部材4のシール部材5側の先端縁に、シール部材5側に突出した開封部43が配設されることになる。この開封部43は、シール部材5を軸線方向に突き刺しかつ回転による切り裂きにより破断可能な刃部44と、シール部材5を押圧する押圧部45とを含む。この実施形態に係る開封部材4では、刃部44を複数備えた開封部43とし、この開封部43によってシール部材5の破断および開封後に連通された注出流路を塞がないように一部破断された開封片を収容するものである。
【0029】
図4に示すように、この刃部44は、略三角形状に筒下端面から下側に突出しかつその縁部が鋭利に形成されており、開封部材4がシール部材5を突き破る方向に移動する際の回転方向における前方側で水平面に対し傾斜している前刃44aとその後方側で傾斜している後刃44bとの間に頂部44cが形成されている。軸線方向におけるシール部材5側へ最も突出した頂部44cよりも後退した位置に前後刃44a,bが配置されている。言い換えれば、この前後刃44a,bは、その回転方向に対して頂部44cが最も突出した三角形状における傾斜部を形成している。
【0030】
これら前刃44aと後刃44bと頂部44cとの縁部が鋭利に形成されるとは、半径方向に水平面から傾斜する面である刃面Sを有することであり、前刃44aは刃面Saを、後刃44bは刃面Sbを、頂部44cは刃面Scを有することである。言い換えれば、刃面Sは、厚さ方向で傾斜している傾斜面と言える。これら刃面Sa,Sb,Scの鋭利さはそれぞれ設定できるものであり、例えば、刃面Scに比べ刃面Sa,Sbが鋭くなるようにそれぞれの傾斜角度を設定することができる。これら刃部44は、各刃が隣接するように配設され、開封部材4がシール部材5を突き破る方向に移動する際の回転方向において、各後刃44bの後尾部に次の刃部44に係る前刃44aの先頭部が繋がるようにして配設されている。さらに、回転方向の先頭における刃部44の前刃44aの先頭部は、押圧部45を介して水平面となる筒下端面に連なるように形成されている。
【0031】
その押圧部45は、縁部が半径方向に平坦な面に形成され、シール部材5を下方向に押し込むとともに、破断されたシール部材5である開封片5aが開口部分を塞がないように開封片5aを開封部材4の外周面の外側に収容するものである。この押圧部45は、開封部材4がシール部材5を突き破る方向に移動する際の回転方向において、刃部44よりも前方に配設されるとともに、その回転方向に対してその先頭部から後尾部へ向けてシール部材5側に突出するように傾斜しており、その後尾部が刃部44の前刃44aの先頭部と連なるように形成されている。また、押圧部45は、筒下端面から刃部44の頂部44cまでの高さに対してこの高さの半分以上の高さまで形成されている。すなわち、押圧部45と前刃44aとの接点部分が、下端基線から頂部44cまでの高さの半分以上の位置にくるように、押圧部45が形成されている。
【0032】
押圧部45は刃部44のようにシール部材5を切り裂くものではなく、具体的には、押圧部45の縁部が刃部44のような鋭利な形状に形成されていない。例えば、刃部44においてシール部材5に当接する刃面Sが半径方向に傾斜して鋭利であることに対して、この押圧部45においてシール部材5に当接する面は半径方向に平行な平坦面となる。言い換えれば、筒下端面を形成する水平面における端部が軸線方向に傾斜して押圧部45を形成している。すなわち、開封部43における先頭の山を、押圧部45と先頭の刃部44とした場合、頂部44cよりも開封動作時の回転方向前方側における傾斜部は、緩斜である押圧部45と急傾である前刃44aとにより形成される。また、開封部材4の下端面を下から見た場合、その半円部分は開封部43が形成されない平坦部分であり、残りの半円部分に押圧部45と複数の刃部44とが隣接して収まるように開封部43が配設されている。
【0033】
また、開封部材付きスパウト1は、スパウト本体2の注出筒部21の下端部を封止するシール部材5を有している。このシール部材5は、アルミ箔やガスバリア性の樹脂フィルム等を主体とするシート材を、カップ状に成形したものであり、スパウト本体2の注出筒部21の下側開口部を塞ぐとともに、スパウト本体2の基部22の内面を覆うように設けられている。また、このシール部材5は、開封部材4の螺旋状の回転によって破断可能な材質によって形成されていればよい。なお、このシート部材5は、容器本体と一体に形成されてもよい。
【0034】
次に、この実施例1における開封部材付きスパウト1の開封動作について説明する。シール部材5が容器本体を密封している状態は図1に例示する状態であり、シール部材5が開封部材4により破断されて開封片5aを収容して開封している状態を図2に例示する状態である。
【0035】
キャップ3を開封方向に回転動作させると、係止片34が係止リブ42と係止して同じ回転方向に回転し始める。その際、雌ネジ33および雄ネジ23と、雌ネジ24および雄ネジ41とが逆ネジの関係であるため、注出筒部21に対してキャップ3は上昇移動しかつ開封部材4はシール部材5を突き破る方向に移動する。この開封部材4が所定高さまで軸線方向に移動してくると、開封部材4の下端に形成された開封部43がシール部材5に接触する。
【0036】
その開封部43とシール部材5の外周部との接触は、刃部44の頂部44cから始まり、開封動作の進行に伴い徐々に前後刃44a,bへと、当接部分が変化する。このとき、シール部材5は、刃部44における、軸線方向の移動により容器本体内へ移動する際に突き刺しと、螺旋状に回転することに伴う円周方向へ移動に伴い刃面Sによる切り裂きとにより破断される。
【0037】
そして、シール部材5が刃面Saとの当接から、押圧部45における押圧面との当接状態へと移行する。この状態において、刃面Sによりシール部材5が切り裂かれることはないが、押圧部45により下方向へとシール部材5が押圧され押し込まれる。さらに、シール部材5と当接したままの押圧部45が円周方向に回転移動することに伴い、シール部材5が押圧部45により回転方向へ引っ張られ、押圧部45と当接する周辺部分では波打つような形状にしわがシール部材5に形成され、その周辺部分におけるシール部材5の一部分が破られる。そして、押圧部45がさらに回転移動すると、シール部材5は破断されるにつれて徐々に水平方向への張りを失うため、シール部材5と押圧部45とが当接してもシール部材5は破られずに、押圧部45の傾斜に沿って下方に押し込まれることとなる。その結果、開封部材4の外周面とスパウト本体2の基部22の内周面との間に垂下するように収容された開封片5aが形成される。
【0038】
この押圧部45がシール部材5と当接を始め、刃部44による破断が終了した後も、上述のように開封片5aが開封部材4と基部22との間に収容されるまで、シール部材5は押圧部45により下側に押し込まれている。なお、図1などで例示した上下方向を逆にした場合であっても、この開封部材付きスパウト1におけるシール部材5の開封において、開封部材4によるシール部材5の破断により、開封片5aが徐々に立ち上がるようにしながら開封部材4と基部22との間に収容されることが確認された。すなわち、押圧部45によるシール部材5の押圧により、上下方向の如何に拘わらず開口部を塞がずに開封片5aを形成させることができる。
【0039】
また、開封片5aは、シール部材5から完全に離脱されないものであり、円周方向における一部が破断されないものである。これは、開封部43における一連に隣接して配置された刃部44における先頭の刃部44の前刃44aの先頭部と、最後尾の刃部44の後刃44bの後尾部とが、円周上で繋がるよりも前に、刃部44が封止面よりも下降してしまうためである。なお、この刃部44がシール部材5に当接して回転している角度は、約200°〜250°であれば、開封片5aが綺麗に形成される。また、実験により、その回転角度が約225°のときに刃部44が封止面より下降しきるように設定できることが確認された。
【0040】
(実施例2)
次に、この発明における別実施形態について説明する。この実施例2は、実施例1における開封部材4の開封部43に形成された押圧部45に換えて、押圧部45とは別形状の押圧部75を備えた開封部材7を使用したものである。したがって、この押圧部45,75の相違以外は、実施例1と実施例2とは同じ構成を備えるものであり、同一構成については説明を省略する。
【0041】
この押圧部75は、半径側面から開封部材7を見た場合に三角状に形成され、下降移動する際の回転方向の前方側に押圧面75aと後方側に押圧面75bとの間に頂部75cを有する。押圧面75bの後尾部と先頭の刃部44の前刃44aの先頭部とが接するように、押圧面75と刃部44が隣接されている。この押圧部75は押圧部45と同様に、刃部44のように鋭利には形成されず、平坦面に形成された押圧面75a,bとを備えている。なお、押圧面75aに対して押圧面75bの傾斜が緩やかになるように形成されている。
【0042】
なお、この発明に係る開封部材付きスパウトは上述の実施形態に限定されるものではない。この発明を逸脱しない範囲において、適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0043】
1…容器用注出口、 2…注出口本体、 3…キャップ、 4,7…開封部材、 5…シール部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
破断可能なシール部材によって封止される容器口部に設けられるスパウト本体に、その注出口を閉じるキャップが螺着されるとともに、スパウト本体の内部には前記キャップを開蓋方向に回転することに伴って前記シール部材を突き破る方向に螺旋状に回転して移動する筒状の開封部材が設けられた開封部材付きスパウトにおいて、
前記開封部材の先端縁に、前記シール部材の外周部を突き刺しつつ回転する刃部と、縁部が平坦面に形成され前記シール部材を押圧する押圧部とが前記シール部材側に突出して形成され、
前記押圧部は、前記開封部材が螺旋状に回転して前記シール部材に向けて移動する際の回転方向において前記刃部よりも前方側に配設されるとともに、前記回転方向に対してその先頭部から後尾部へ向けて前記シール部材側に突出するように傾斜しており、その後尾部が前記刃部の先頭部と隣接し、かつ当該押圧部に係る最もシール部材側に突出した部分は前記刃部の頂部よりも突出しないように形成されている
ことを特徴とする開封部材付きスパウト。
【請求項2】
前記刃部は、前記回転方向に対して前記刃部の先頭部から頂部へ向けて前記シール部材側に突出するように傾斜する傾斜部を有し、
前記押圧部は、前記刃部の傾斜部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の開封部材付きスパウト。
【請求項3】
前記押圧部は、前記開封部材の先端縁で前記刃部に対して前記回転方向での前方側に隣接する位置に形成された突部である
ことを特徴とする請求項1に記載の開封部材付きスパウト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−79091(P2013−79091A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219134(P2011−219134)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000208455)大和製罐株式会社 (309)
【Fターム(参考)】