説明

開閉器制御装置および配電自動化システム

【課題】配電線で発生する地絡および/または短絡の事故に対して、事故区間を特定して事故区間を分離する。
【解決手段】開閉器制御装置2は、配電線4に信号を出力する信号発生部14と、配電線4から当該信号を受信して配電線4のインピーダンスを計測する計測処理部13と、配電線4の接続/開放を切り替える開閉器1の入/切を切り替え制御する制御部15と、通信処理部16と、を備え、前記信号発生部14が信号を開閉器1より負荷側(変電所の反対側)の配電線4に出力し、前記計測処理部13が負荷側の配電線4のインピーダンスを計測し、当該計測したインピーダンスに基づいて、事故を検出し、事故区間を特定する。そして、事故を検出した開閉器制御装置2は、開閉器1を切状態とすることによって事故区間を分離することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電線で発生する事故に対して事故区間を特定して分離する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配電線に地絡事故が発生した場合には、以下のような方法で事故区間が特定され分離されている(特許文献1の段落0004〜0015参照)。
変電所から需要家に向けて敷設されている配電線に、事故区間を分離するために開閉器が設けてある。配電線は、変電所の母線に配電線引出口遮断器(以降、単に遮断器と称す。)を介して接続されている。配電線での事故発生時には、変電所に設置された保護継電装置が、母線に接続された遮断器を遮断することによって、配電線を停電状態(無電圧状態)にする。開閉器は、配電線が無電圧となったことを検出すると、接続を開放する(切状態となる)。その後、所定時間経過して遮断器が再投入され、遮断器に最も近い配電線の開閉器が電圧印加されて入状態(接続状態)となり、配電線の末端の開閉器に至るまで順番に開閉器が入状態(接続状態)にされていく。この結果、配電線に発生した事故が一過性の事故の場合、遮断器が遮断している間に事故が除去されれば、遮断器の再投入によって、配電線の開閉器はすべて入状態(接続状態)となって、停電状態から復旧する。しかし、事故が永久事故の場合、遮断器の再投入後に再度遮断器が遮断されることになり、事故発生地点から変電所寄りの開閉器が切状態(開放状態)のままにロックされることによって、事故区間が特定され分離される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3483065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の前記方法は、地絡事故のみに適用できるものであり、短絡事故に適用することはできない。さらに、特許文献1に記載の、開閉器の入/切を制御する開閉器制御装置は、その構成(特許文献1の図15,16参照)上、能動的に事故を検出することができない。また、現実には、地絡事故発生時には、事故区間よりも変電所に近いすべての開閉器で地絡電流が検出される場合が多いため、地絡区間を特定できない場合がある。さらに、事故が永久事故の場合、遮断器が少なくとも2回は遮断されるため、停電時間、停電範囲の面で問題である。
【0005】
そこで、本発明では、配電線で発生する地絡および/または短絡の事故に対して、事故区間を特定して事故区間を分離することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明に係る開閉器制御装置は、配電線に信号を出力する信号発生部と、配電線から当該信号を受信して配電線のインピーダンスを計測する計測処理部と、配電線の接続/開放を切り替える開閉器の入/切を切り替え制御する制御部と、通信処理部と、を備え、前記信号発生部が信号を開閉器より負荷側(変電所の反対側)の配電線に出力し、前記計測処理部が負荷側の配電線のインピーダンスを計測し、当該計測したインピーダンスに基づいて、事故(地絡および/または短絡)を検出し、事故区間を特定する。そして、事故を検出した開閉器制御装置は、開閉器の切状態を継続することによって事故区間を分離する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、配電線で発生する地絡および/または短絡の事故に対して、事故区間を特定して事故区間を分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】配電自動化システムの構成例を示す図である。
【図2】開閉器および開閉器制御装置の構成例を示す図である。
【図3】開閉器のタイミングチャート例(その1)を示す図である。
【図4】開閉器のタイミングチャート例(その2)を示す図である。
【図5】事故区間が図1とは異なる場合の配電自動化システムの構成例を示す図である。
【図6】開閉器のタイミングチャート例(その3)を示す図である。
【図7】比較例における配電自動化システムの構成例を示す図である。
【図8】比較例における開閉器制御装置および開閉器の構成例を示す図である。
【図9】比較例における開閉器のタイミングチャート例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明を実施するための形態(以降、「本実施形態」と称す。)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
(比較例)
まず、比較例の配電自動化システムの構成例について、図7を用いて説明する。
図7に示すように、開閉器201(201a,201b,201c,201d)は、不図示の変電所から需要家に向けて敷設されている配電線4に、事故区間を分離するために設けてある。各開閉器201は、配電線4を接続/開放するスイッチを備えている。したがって、配電線4の区間は、図7に示すように、第0区間、第1区間、第2区間、第3区間、・・のように、開閉器201によって分けられる。配電線4は、変電所の母線3にFCB(磁界遮断器:以降、単に遮断器と称す。)6(6a,6b)を介して接続されている。図7において、開閉器201a,201b,201cは、配電線4を接続状態(入状態)にしており、開閉器201dは、配電線4を開放状態(切状態)にしている。したがって、配電線4は、FCB6aに接続されている第1の配電線と、FCB6bに接続されている第2の配電線とに分けられている。開閉器201の入/切の状態は、開閉器制御装置202によって制御される。
【0011】
ここで、開閉器201および開閉器制御装置202の構成例について、図8を用いて説明する。開閉器201は、配電線4の接続/開放(入/切)を切り替えるスイッチ210を備えている。また、開閉器制御装置202は、制御部215および通信処理部216を備えている。
制御部215は、スイッチ210より変電所側の配電線4の電圧を変電所側電源トランス17aを介して取得して電圧の有無を判定し、スイッチ210より負荷側の配電線4の電圧を負荷側電源トランス17bを介して取得して電圧の有無を判定し、スイッチ210の入/切の状態を取得し、それら電圧の有無およびスイッチ210の入/切の状態に基づいて、スイッチ210の次の入/切を制御する機能を有する。また、制御部215は、開閉器201のスイッチ210の入/切の状態を、通信処理部216と通信線5とを介して監視制御装置203(図7参照)に送信したり、監視制御装置203からスイッチ210を入の状態に設定する指示情報を通信線5と通信処理部216とを介して受信したりする機能を有する。
また、通信処理部216は、通信用のインタフェースであり、制御部215と監視制御装置203との間の情報の送受信を通信線5を介して実行する。
【0012】
図7に戻って、不図示の変電所に設置された保護継電装置7は、配電線4の電流をCT(変流器)42を介して取得し、母線3の電圧をPT(変圧器)41を介して取得し、配電線4に地絡事故が発生したか否かを判定する機能を有する。保護継電装置7は、地絡事故が発生したと判定した時には、母線3に接続されたFCB6を切(遮断)状態にする機能を有し、配電線4を停電状態(無電圧状態)にする。また、保護継電装置7は、FCB6を切状態にした後、所定の時間経過後に、入(接続)状態にする機能を有する。なお、FCB6b側には、図示を省略しているが、FCB6a側に対して鏡像の向きになるように、母線3、CT42,PT41、保護継電装置7が設置されているものとする。
【0013】
監視制御装置203は、保護継電装置7からFCB6aの入/切の状態を取得し、通信線5を介して開閉器201の入/切の状態、後述するFCB6aの再投入から再遮断までの時間を取得して事故の区間を特定する機能を有する。また、監視制御装置203は、開閉器制御装置202に開閉器201を入の状態に設定する指示情報を送信する機能を有する。
【0014】
次に、第2区間で地絡事故が発生した場合(図7参照)における、開閉器201の入/切のタイミングチャート例について、図9を用いて説明する。図9の横軸は時間を表している。図9の縦方向は、事故の有無、FCB6aの入/切、開閉器201aの入/切、開閉器201bの入/切、開閉器201cの入/切、開閉器201dの入/切、を表している。
【0015】
以下に、時間の経過と、FCB6aおよび各開閉器201の動作との関係について説明する(適宜、図7,8参照)。
時間t1に地絡が発生し、事故有の状態(永久事故)になったものとする。
時間t2に、FCB6aは、切状態(初回遮断)となる。具体的には、保護継電装置7が、配電線4の電流をCT42を介して取得し、母線3の電圧をPT41を介して取得し、配電線4に地絡事故が発生したと判定して、FCB6aを切状態に制御する。
時間t3に、各開閉器201は、配電線4が無電圧状態になるため、切状態となる。
【0016】
時間t4に、FCB6aは、時間t2から第1の所定時間経過後に入状態に(再投入)される。
時間t5に、開閉器201aが入状態となる。具体的には、開閉器制御装置202aは、時間t4にFCB6aが再投入されたため、変電所側の配電線4の電圧を検出して、時間t4からX時限経過後に、開閉器201aのスイッチ210を入状態に制御する。
時間t6に、開閉器201bが入状態となる。具体的には、開閉器制御装置202bは、時間t5に開閉器201aが入状態にされたため、変電所側の配電線4の電圧を検出して、時間t5からX時限経過後に、開閉器201bのスイッチ210を入状態に制御する。
【0017】
時間t7に、FCB6aは、切状態(再遮断)となる。具体的には、事故有の状態が解消されていないため、保護継電装置7が、配電線4の電流をCT42を介して取得し、母線3の電圧をPT41を介して取得し、配電線4に地絡事故が発生したと判定して、FCB6aを切状態に制御する。
時間t8に、各開閉器201は、配電線4が無電圧状態になるため、切状態となる。このとき、開閉器制御装置202aは、第2の所定時間以上、入状態となっていたので、開閉器201aを切状態にロックする機能を作動させない。しかし、開閉器制御装置202bは、第2の所定時間未満で切状態となったので、開閉器201bを切状態にロックする機能を作動させる。
【0018】
時間t9に、FCB6aは、時間t7から第1の所定時間経過後に入状態に(再再投入)される。
時間t10に、開閉器201aが入状態となる。具体的には、開閉器制御装置202aは、時間t9にFCB6aが再投入されたため、変電所側の配電線4の電圧を検出して、時間t9からX時限経過後に、開閉器201aのスイッチ210を入状態に制御する。
時間t10以降では、開閉器201bは切状態のままである。これは、開閉器制御装置202bが、開閉器201bを切状態にロックさせているためである。したがって、第2区間は、停電状態となって、事故区間を分離することができる。
【0019】
監視制御装置203には再投入から再遮断までの時間を計測するため、その時間から事故区間を検知できる。例えば再遮断までの時間をX時限で除することで区間が判明する。ただし、実際には上記時間だけでなく、開閉器201bが切ロック状態であることも通信線5を介して第2区間が事故区間であることも合わせて確認している。事故区間が判明した後、開閉器201dに入り指令を与えて第3区間の停電状態を解消する。
なお、永久事故の場合には、作業員が地絡事故の現場で復旧作業を行って、停電の原因を取り除く。そして、監視制御装置203から通信線5を介して、切状態にロックされている開閉器201bを入状態に設定する指示情報を送信して、復旧状態にする。
【0020】
なお、一過性の地絡事故の場合には、一般的には、FCB6aが初回遮断された後、再投入されるまでの間に事故が回復されているため、開閉器201は、FCB6aに近い側から順番に入状態に制御されて、復旧状態となる。
【0021】
以上、比較例では、永久事故の場合には、配電線4は、少なくとも2回は停電状態となる上、復旧するまでに時間がかかるという問題があった。また、比較例は、地絡事故にのみ適用できるものであった。
【0022】
(本実施形態における配電自動化システム)
そこで、本実施形態における配電自動化システムでは、地絡および/または短絡の事故に対して、事故区間を特定して事故区間を分離する機能を備えるようにする。
まず、本実施形態における配電自動化システムの構成例について、図1を用いて説明する。なお、図1において、図7で説明した構成と同じものには、同じ符号を付して、説明を省略する。
【0023】
図1に示すように、配電線4、開閉器1、開閉器制御装置2、FCB6、PT41、CT42、母線3、保護継電装置7、通信線5の接続構成は、図7の接続構成と同様である。なお、開閉器1および開閉器制御装置2は、図7の開閉器201および開閉器制御装置202を置き換えたものである。図1において、開閉器1および開閉器制御装置2の台数は、図1では4台であるが、4台に限られなくともよい。
【0024】
また、図1において、配自制御装置9は、開閉器制御装置2との間で、情報の送受信を行い、開閉器1の入/切の状態や事故情報を取得したり、開閉器制御装置2の制御を実行したりする機能を有することである。なお、配自制御装置9と開閉器制御装置2との間の通信は、例えば、100ボー程度で情報の送受信が行えればよい。
また、監視制御装置101は、TC(テレコントロール)8を介して、保護継電装置7からFCB6aの入/切の状態の情報を取得したり、配自制御装置9から開閉器1の入/切の状態や事故情報を取得したりすることができる。また、開閉器1および開閉器制御装置2の内部構成が、図8に示す構成とは異なっている。
【0025】
(本実施形態における開閉器および開閉器制御装置)
次に、本実施形態における開閉器および開閉器制御装置の構成について、図2を用いて説明する。
図2に示すように、開閉器1は、配電線4を接続/開放の状態にするスイッチ10、スイッチ10より負荷側の配電線4に、後記する信号発生部14の出力信号を印加する信号印加点、PT(変圧器)11、CT(変流器)12を備える。PT11は、計測処理部13が負荷側の配電線4の電圧値を取得するために用いられる。また、CT12は、計測処理部13が負荷側の配電線4の電流値を取得するために用いられる。
なお、開閉器1dは、切状態となっていて、FCB6a側の第1の配電線と、FCB6b側の第2の配電線とを分ける突合せ開閉器となっている。図1では、開閉器1dおよび開閉器制御装置2dの内部構成は、開閉器1dの右側が変電所側で左側が負荷側となる(図2の構成の鏡像の)ように接続されているものとする。
【0026】
また、開閉器制御装置2は、計測処理部13、信号発生部14、制御部15、通信処理部16を備えている。
信号発生部14は、制御部15から受信した信号出力指示情報に基づいて、配電線4のインピーダンスを測定するための信号を出力する。
計測処理部13は、開閉器1のPT11およびCT12を介して取得した電圧値および電流値に基づいて、無電圧状態の負荷側の配電線4のインピーダンスを測定する。測定結果は、制御部15に出力される。
【0027】
制御部15は、スイッチ10より変電所側の配電線4の電圧を変電所側電源トランス17aを介して取得して電圧の有無を判定する不図示の第1の手段、スイッチ10より負荷側の配電線4の電圧を負荷側電源トランス17bを介して取得して電圧の有無を判定する不図示の第2の手段、を備え、それら電圧の有無に基づいて、スイッチ10の入/切を制御する機能を有する。具体的には、まず、制御部15は、変電所側の配電線4の電圧が有かつ負荷側の配電線4の電圧が無の場合、信号発生部14に信号を出力させるための信号出力指示情報を信号発生部14に出力する。そして、制御部15は、計測処理部13によって測定されたインピーダンスの値に基づいて、事故(地絡および/または短絡)の有無を判定する。事故有の場合のインピーダンスは、事故無の場合のインピーダンスより小さいため、事故の有無を判定することができる。制御部15は、事故有と判定した場合、スイッチ10を切状態に制御し、事故無と判定された場合、スイッチ10を入状態に制御する機能を有する。
【0028】
また、制御部15は、配自制御装置9から、スイッチ10を入状態に設定する指示情報を受信したとき、信号発生部14から信号を出力させ、負荷側の配電線4のインピーダンスの値を取得し、事故の有無を判定し、その判定結果に基づいて、スイッチ10の入/切を制御する機能を有する。
また、制御部15は、スイッチ10の入/切の状態や事故に関する情報を、通信処理部16、通信線5を経由して、配自制御装置9に送信する機能を有する。
【0029】
また、通信処理部16は、通信インタフェースであり、通信線5を介して配自制御装置9との間で情報を送受信する機能を有する。
【0030】
(開閉器のタイミングチャート例(その1))
開閉器1の入/切の状態のタイミングチャートについて、図3を用いて説明する(適宜、図1,2参照)。なお、事故は第2区間で発生し、永久事故であるものとする。
図3に示すように、時間t1に、事故が発生し、事故有の状態(永久事故)になったものとする。
時間t2に、FCB6aは、切状態(初回遮断)となる。具体的には、保護継電装置7が、配電線4の電流をCT42を介して取得し、母線3の電圧をPT41を介して取得し、配電線4に事故が発生したことを検出し、FCB6aを切状態(遮断状態)に制御する。なお、時間t1と時間t2との間は、例えば、1秒程度である。
時間t3に、配電線4が無電圧状態になるため、開閉器1すべては切状態となる。なお、時間t2と時間t3との間は、例えば、1秒程度である。
【0031】
時間t4に、FCB6aは、時間t2から第3の所定時間経過後に入状態(接続状態)にされる(再投入)。なお、第3の所定時間は、例えば、30秒程度である。
時間t5に、開閉器1aが入状態となる。具体的には、開閉器制御装置2aは、時間t4にFCB6aが再投入されたため、変電所側の配電線4の電圧を変電所側電源トランス17aを介して取得して電圧有と判定し、信号発生部14から信号を出力して、負荷側の配電線4(第1区間)のインピーダンスを測定する。このとき、負荷側の配電線4(第1区間)は、無電圧状態である。そして、制御部15は、第1区間に事故を検出せず、変電所側の配電線4(第0区間)に電圧を検出しているため、時間t4からX時限経過後に、開閉器1aのスイッチ10を入状態(接続状態)に制御する。
【0032】
時間t6に、開閉器1bは切状態のままとなる。具体的には、開閉器制御装置2bは、時間t5に開閉器1aが入状態にされたため、変電所側の配電線4の電圧を変電所側電源トランス17aを介して取得して電圧有と判定し、信号発生部14から信号を出力して、負荷側の配電線4(第2区間)のインピーダンスを測定する。このとき、負荷側の配電線4(第2区間)は、無電圧状態である。そして、制御部15は、第2区間で事故を検出することになるため、開閉器1bのスイッチ10を切状態のままに制御する。次に、制御部15は、通信処理部16、通信線5を介して、事故を検出したことを示す事故情報を配自制御装置9に送信する。
【0033】
また、時間t7に、配自制御装置9は、開閉器制御装置2dに、開閉器1dを入状態とする指示情報を送信する。開閉器制御装置2dは、信号発生部14から信号を出力して、開閉器1dのスイッチ10より負荷側の配電線4(第3区間)のインピーダンスを測定する。これは、開閉器1dおよび開閉器制御装置2dの内部構成が、図2の構成の鏡像のようになっているためである。そして、制御部15は、第3区間に事故を検出せず、変電所側の配電線4の電圧を検出しているため、開閉器1dのスイッチ10を入状態に制御する。すなわち、第3区間は、FCB6b側から配電される。なお、時間t6とt7との間の時間は、通信線5を介する通信において情報が衝突しない範囲で、X時限より小さくても構わない。
【0034】
また、配自制御装置9は、時間t7の時点で既に第2区間が事故区間であることを分かっているため、開閉器1cを入状態とする指示情報を送信しない。すなわち、開閉器制御装置2cは、指示情報を受信せず、変電所側の配電線4(第2区間)が無電圧状態のままであるため、開閉器1cを切状態のままに制御する。
【0035】
以上説明したように、開閉器制御装置2は、信号発生部14を備えて、無電圧状態の負荷側の配電線4のインピーダンスを測定する機能を有しているため、開閉器1のスイッチ10を入状態にする前に、負荷側の配電線4の事故の有無を判定することができる。したがって、配電自動化システム100は、比較例の図9で説明したような、FCB6aが2回遮断されることはなく、事故区間(第2区間)を特定でき、また、事故区間(第2区間)を分離できる。また、配電自動化システム100は、比較例に比べて、停電復旧までの時間を短縮できる。
【0036】
(開閉器のタイミングチャート例(その2))
次に、図3に示したタイミングチャート例に比べて早く停電状態から復旧させる別の例について、図4を用いて説明する(適宜、図1,2参照)。
事故区間は、図3の場合と同様に、第2区間であるものとする。
時間t1〜t4までは、図3の場合と同様に進行するので、説明を省略する。ただし、開閉器1dおよび開閉器制御装置2dの内部構成が、図2の構成の鏡像のようになっているものとする。
【0037】
また、時間t4に、配自制御装置9は、開閉器制御装置2dに、開閉器1dを入状態とする指示情報を送信する。開閉器制御装置2dは、信号発生部14から信号を出力して、開閉器1dのスイッチ10より負荷側の配電線4(第3区間)のインピーダンスを測定する。これは、開閉器1dおよび開閉器制御装置2dの内部構成が、図2の構成の鏡像のようになっているためである。そして、制御部15は、第3区間に事故を検出せず、変電所側の配電線4に電圧を検出しているため、開閉器1dのスイッチ10を入状態に制御する。すなわち、第3区間は、FCB6b側から配電される。
【0038】
時間t5に、開閉器1aが入状態となる。具体的には、開閉器制御装置2aは、時間t4にFCB6aが再投入されたため、変電所側の配電線4の電圧を変電所側電源トランス17aを介して取得して電圧有と判定し、信号発生部14から信号を出力して、負荷側の配電線4(第1区間)のインピーダンスを測定する。このとき、負荷側の配電線4(第1区間)は、無電圧状態である。そして、制御部15は、第1区間に事故を検出せず、変電所側の配電線4(第0区間)に電圧を検出しているため、時間t4からX時限経過後に、開閉器1aのスイッチ10を入状態(接続状態)に制御する。
時間t6以降については、図3の場合と同様に、開閉器1bおよび開閉器1cは切状態のままとなる。
【0039】
以上説明したように、開閉器制御装置2は、信号発生部14を備えて、無電圧状態の負荷側の配電線4のインピーダンスを測定する機能を有しているため、開閉器1を入状態にする前に、負荷側の配電線4の事故の有無を判定することができる。したがって、図3に示したタイミングチャートでは、停電状態からの復旧までに、時間t7までかかっていたのに対して、図4に示したタイミングチャートでは、時間t5までしか時間を要しないで、無事故区間の停電状態を復旧することが可能である。
【0040】
(開閉器のタイミングチャート例(その3))
次に、図5に示すように、事故区間(第1区間)と開閉器1d(突合せ開閉器)との間に、複数の区間(第2区間および第3区間)が存在する場合のタイミングチャートについて、図6を用いて説明する(適宜、図2,5参照)。なお、事故は第1区間で発生し、永久事故であるものとする。
【0041】
図6に示すように、時間t1に、事故が発生し、事故有の状態(永久事故)になったものとする。
時間t2に、FCB6aは、切状態(初回遮断)となる。
時間t3に、配電線4が無電圧状態になるため、開閉器1すべては切状態となる。
【0042】
時間t4に、FCB6aは、時間t2から第3の所定時間経過後に入状態にされる(再投入)。
また、時間t4に、配自制御装置9は、開閉器制御装置2dに、開閉器1dを入状態とする指示情報を送信する。開閉器制御装置2dは、信号発生部14から信号を出力して、開閉器1dのスイッチ10より負荷側の配電線4(第3区間)のインピーダンスを測定する。これは、開閉器1dおよび開閉器制御装置2dの内部構成が、図2の構成の鏡像のようになっているためである。そして、制御部15は、第3区間に事故を検出せず、変電所側の配電線4の電圧を検出しているため、開閉器1dのスイッチ10を入状態に制御する。すなわち、第3区間は、FCB6b側から配電される。
【0043】
時間t5に、開閉器1aは切状態のままとなる。具体的には、開閉器制御装置2aは、時間t4にFCB6aが入状態にされたため、変電所側の配電線4の電圧を変電所側電源トランス17aを介して取得して電圧有と判定し、信号発生部14から信号を出力して、負荷側の配電線4(第1区間)のインピーダンスを測定する。このとき、負荷側の配電線4(第1区間)は、無電圧状態である。そして、制御部15は、第1区間に事故を検出するため、開閉器1aのスイッチ10を切状態のままに制御する。次に、制御部15は、通信処理部16、通信線5を介して、事故を検出したことを示す事故情報を配自制御装置9に送信する。
【0044】
時間t6に、配自制御装置9は、開閉器制御装置2bに、第2区間において事故の有無を判定するために、開閉器1bを入状態に設定する指示情報を送信する。開閉器制御装置2bは、信号発生部14から信号を出力して、スイッチ10より負荷側の配電線4(第2区間)のインピーダンスを測定する。そして、制御部15は、第2区間に事故を検出しない。しかし、制御部15は、変電所側の配電線4の電圧を検出しないため、開閉器1bのスイッチ10を切状態のままとする。そして、制御部15は、通信処理部16、通信線5を介して、第2区間に事故を検出しないことを示す無事故情報を配自制御装置9に送信する。
【0045】
時間t7に、配自制御装置9は、第2区間に事故が検出されないため、開閉器制御装置2cに、開閉器1cを入状態とする指示情報を送信する。制御部15は、負荷側の配電線4(第3区間)の電圧を検出しているため、開閉器1cのスイッチ10を入状態に制御する。すなわち、第2区間は、FCB6b側から配電される。なお、時間t5とt6との間および時間t6とt7との間は、通信線5を介する通信において情報が衝突しない範囲で、X時限より小さくても構わない。
【0046】
以上説明したように、開閉器制御装置2は、信号発生部14を備えて、負荷側の配電線4のインピーダンスを測定する機能を有しているため、開閉器1を入状態にする前に、負荷側の配電線4の事故の有無を判定することができる。したがって、FCB6aが再遮断されることはなく、事故区間(第1区間)を特定でき、また、事故区間(第1区間)を分離できる。
【0047】
以上、本実施形態における開閉器制御装置2は、配電線4に信号を出力する信号発生部14と、配電線4から当該信号を受信して配電線4のインピーダンスを計測する計測処理部13と、配電線4の接続/開放を切り替える開閉器1の入/切を切り替え制御する制御部15と、通信処理部16と、を備え、前記信号発生部14が信号を開閉器1より負荷側(変電所の反対側)の配電線4に出力し、前記計測処理部13が負荷側の配電線4のインピーダンスを計測し、当該計測したインピーダンスに基づいて、事故を検出し、事故区間を特定する。そして、事故を検出した開閉器制御装置2は、開閉器1を切状態とすることによって事故区間を分離することができる。
【0048】
また、本実施形態における配電自動化システム100は、配電線4の区間を分割するように設定された開閉器1と、前記した開閉器制御装置2と、開閉器1のスイッチ10の入/切の状態や事故に関する情報を取得して、開閉器制御装置2に対して開閉器1を入状態に設定する指示情報を送信する配自制御装置9とを備えている。したがって、開閉器制御装置2が、開閉器1を入状態にする前に、無電圧状態の負荷側の配電線4について事故の有無を判定するため、容易に事故区間を特定し、事故区間を分離することができる。
【0049】
ここで、開閉器制御装置2の動作について整理して以下に説明する(適宜、図2参照)。
開閉器制御装置2は、配電線4が無電圧状態になったとき、開閉器1のスイッチ10を切状態とする。
開閉器制御装置2は、変電所側の配電線4に電圧を検出した場合、インピーダンスの測定を実行する。次に、開閉器制御装置2は、インピーダンスの測定結果に基づいて、事故(地絡および/または短絡)の有無を判定する。そして、開閉器制御装置2は、事故無と判定した場合、電圧を検出した時からX時限後に、開閉器1のスイッチ10を入状態とする。また、開閉器制御装置2は、負荷側の配電線4に事故を検出した場合、開閉器1のスイッチ10を切状態とする。
また、開閉器制御装置2は、開閉器1を入状態に設定する指示情報を受信して、負荷側の配電線4に事故を検出せず、変電所側の配電線4に電圧を検出しない場合、開閉器1のスイッチ10を切状態とする。
また、開閉器制御装置2は、開閉器1を入状態に設定する指示情報を受信して、負荷側の配電線4に電圧を検出した場合、開閉器1のスイッチ10を入状態とする。
【0050】
図3,4,6の説明では、開閉器1dおよび開閉器制御装置2dの内部構成が、開閉器1dの右側が変電所側で、左側が負荷側となる(図2の構成の鏡像の)ように接続されているものとしていた。それに対して、開閉器1dおよび開閉器制御装置2dの内部構成が、図2の構成であった場合でも、事故区間を特定し、事故区間を分離することができることを示すために、図3のタイミングチャートを用いて以下に説明する。
【0051】
時間t1〜t5までは、図3の説明と同様である。
時間t6に、配自制御装置9は、開閉器制御装置2cに、第3区間において事故の有無を判定するために、開閉器1cを入状態に設定する指示情報を送信する。開閉器制御装置2cは、信号発生部14から信号を出力して、スイッチ10より負荷側の配電線4(第3区間)のインピーダンスを測定する。そして、制御部15は、第3区間に事故を検出しない。しかし、制御部15は、変電所側の配電線4の電圧を検出しないため、開閉器1cのスイッチ10を切状態のままとする。そして、制御部15は、通信処理部16、通信線5を介して、第3区間に事故を検出しないことを示す事故情報を配自制御装置9に送信する。
【0052】
次に、時間t7に、配自制御装置9は、第3区間に事故が検出されないため、開閉器制御装置2dに、開閉器1dを入状態とする指示情報を送信する。制御部15は、負荷側の配電線4の電圧を検出しているため、開閉器1dのスイッチ10を入状態に制御する。すなわち、第3区間は、FCB6b側から配電される。
このようにして、配電自動化システム100は、事故区間(第2区間)を特定し、事故区間(第2区間)を分離することができる。
【符号の説明】
【0053】
1(1a,1b,1c,1d) 開閉器
2(2a,2b,2c,2d) 開閉器制御装置
3 母線
4 配電線
5 通信線
6 FCB(遮断器)
7 保護継電装置
9 配自制御装置
10 スイッチ
11,41 PT
12,42 CT
13 計測処理部
14 信号発生部
15 制御部
16 通信処理部
17a 変電所側電源トランス
17b 負荷側電源トランス
100 配電自動化システム
101 監視制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変電所の母線から配線される配電線を接続する場合には入状態とし、前記配電線を開放する場合には切状態とするスイッチを備える開閉器に接続され、前記スイッチの入状態または切状態を制御する開閉器制御装置であって、
前記スイッチより負荷側の前記配電線に信号を出力する信号発生部と、
当該信号の電圧値および電流値を取得して前記負荷側の配電線のインピーダンスを計測する計測処理部と、
前記信号発生部に信号を出力させ、前記計測処理部から取得したインピーダンスの値に基づいて事故の有無を判定し、判定結果に基づいて、前記開閉器を入状態または切状態に制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記スイッチが切状態のときに、前記信号発生部に信号を出力させ、前記計測処理部から取得したインピーダンスの値に基づいて事故の有無を判定し、事故有と判定した場合、前記開閉器を切状態に制御し、事故無と判定した場合、前記開閉器を入状態に制御する
ことを特徴とする開閉器制御装置。
【請求項2】
前記開閉器制御装置は、
前記変電所側の配電線の電圧を取得して、電圧の有無を判定する第1の手段、を備え、
前記制御部は、
前記スイッチが切状態のときに、前記第1の手段が電圧有と判定した場合、
前記信号発生部に信号を出力させ、前記計測処理部から取得したインピーダンスの値に基づいて事故の有無を判定し、事故有と判定した場合、前記開閉器を切状態に制御し、事故無と判定した場合、前記開閉器を入状態に制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の開閉器制御装置。
【請求項3】
前記開閉器制御装置は、
通信線を介して、前記開閉器のスイッチを入状態にする指示を示す指示情報を送信する配自制御装置と通信可能に接続され、
前記負荷側の配電線の電圧を取得して、電圧の有無を判定する第2の手段、を備え、
前記制御部は、
前記スイッチが切状態で、前記配自制御装置から前記指示情報を受信した際であって、
前記第2の手段が電圧有と判定した場合、前記開閉器を入状態に制御し、
前記第1の手段が電圧無と判定した場合、前記信号発生部に信号を出力させ、前記計測処理部から取得したインピーダンスの値に基づいて事故の有無を判定し、事故無と判定したとき、前記開閉器を切状態に制御する
ことを特徴とする請求項3に記載の開閉器制御装置。
【請求項4】
第1の変電所の母線から第1の遮断器を介して配線される第1の配電線と、第2の変電所の母線から第2の遮断器を介して配線される第2の配電線と、前記第1の配電線と前記第2の配電線とを接続する位置とに設置され、前記配電線を接続する場合には入状態とし、前記配電線を開放する場合には切状態とするスイッチを備える複数の開閉器と、
前記開閉器ごとに接続され、前記スイッチより負荷側の前記配電線に信号を出力する信号発生部と、当該信号の電圧値および電流値を取得して前記負荷側の配電線のインピーダンスを計測する計測処理部と、前記信号発生部に信号を出力させ、前記計測処理部から取得したインピーダンスの値に基づいて事故の有無を判定し、判定結果に基づいて、前記開閉器を入状態または切状態に制御する制御部と、前記変電所側の配電線の電圧を取得して当該電圧の有無を判定する第1の手段と、前記負荷側の配電線の電圧を取得して当該電圧の有無を判定する第2の手段と、を備える開閉器制御装置と、
通信線を介して、前記開閉器のスイッチを入状態にする指示を示す指示情報を前記開閉器制御装置に送信する配自制御装置と、
を備え、
前記開閉器制御装置は、
(1)前記スイッチが切状態の際に、前記信号発生部に信号を出力させ、前記計測処理部から取得したインピーダンスの値に基づいて事故の有無を判定し、事故有と判定した場合、前記開閉器を切状態に制御し、事故無と判定した場合、前記開閉器を入状態に制御する処理、
(2)前記スイッチが切状態の際に、前記第1の手段が電圧有と判定した場合、前記信号発生部に信号を出力させ、前記計測処理部から取得したインピーダンスの値に基づいて事故の有無を判定し、事故有と判定した場合、前記開閉器を切状態に制御し、事故無と判定した場合、前記開閉器を入状態に制御する処理、
(3)前記スイッチが切状態で、前記配自制御装置から前記指示情報を受信した際であって、前記第2の手段が電圧有と判定した場合、前記開閉器を入状態に制御し、前記第1の手段が電圧無と判定した場合、前記信号発生部に信号を出力させ、前記計測処理部から取得したインピーダンスの値に基づいて事故の有無を判定し、事故無と判定したとき、前記開閉器を切状態に制御する処理、
のうちのいずれかの処理または組み合わせた処理を用いて、前記開閉器によって分断された前記配電線の区間の事故の有無を特定し、前記特定した事故有の前記区間を前記配電線から分離する
ことを特徴とする配電自動化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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