説明

開閉式小型電子機器

【課題】第1筺体と第2筺体からなる開閉式小型電子機器において、両筺体を開いた状態で、両筺体の表面を略同一平面上に揃えることが出来る開閉式小型電子機器を提供する。
【解決手段】第1筺体1と第2筺体2とが互いに相対移動可能に連結され第1筺体1の表面には第1ディスプレイ11が設置されると共に第2筺体2の表面には第2ディスプレイ21が設置され、第2筺体2によって第1ディスプレイ11の表面を覆うと共に第2ディスプレイ21の表面を露出させた閉じ状態と第1ディスプレイ11の表面と第2ディスプレイ21の表面とを略同一平面上に並べて露出させた開き状態との間で、第1筺体1と第2筺体2とが互いに相対移動可能であり、第1筺体1と第2筺体2には接面12、22がそれぞれ形成され、開き状態にて両接面12、22が互いに圧接されることによって、第1筺体1に対する第2筺体2の姿勢が保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は携帯電話機等の小型電子機器に関し、特に、互いに開閉可能に連結された第1筐体と第2筐体からなる開閉式小型電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機においては、益々多機能化が進んでおり、これに伴ってディスプレイに表示すべき情報も多種多様となっているため、ディスプレイの大画面化が図られている。しかしながら、ディスプレイの画面の大きさは、筐体の大きさにより制限されるため、ディスプレイの大画面化にも限界がある。
【0003】
ところで、携帯用の表示装置において、2つの筐体を折り畳み可能に連結して、両筐体の内面にそれぞれディスプレイを配備し、2画面によって多くの情報を表示することが提案されている(例えば日本国公開特許公報平11−167354号)。
【0004】
そこで、第1筐体と第2筐体を折り畳み可能に連結した折り畳み式携帯電話機において、第1筐体と第2筐体の内面にそれぞれディスプレイを配備する構成や、第1筐体と第2筐体をスライド可能に連結したスライド式携帯電話機において、第1筐体と第2筐体の表面にそれぞれディスプレイを配備する構成が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−167354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、第1筐体と第2筐体の内面にそれぞれディスプレイを配備した折り畳み式携帯電話機においては、両筐体を閉じた状態では2つのディスプレイが隠れてしまうので、両筐体を閉じた状態で電話通信を行なうときの情報表示を可能とするためには、両筐体を閉じた状態で露出する面に、更に第3のディスプレイを配備する必要があり、構成が複雑となる問題がある。
【0007】
一方、第1筐体と第2筐体の表面にそれぞれディスプレイを配備したスライド式携帯電話機においては、両筐体を開いた状態で2つのディスプレイには段差が生じるため、2つのディスプレイの画面に跨って画像の表示を行なった場合、画像が大きく2つに分断されてしまい、特に連続する画像の場合に違和感が生じる問題があった。
【0008】
そこで本発明の第1の目的は、第1筐体と第2筐体からなる開閉式小型電子機器において、両筐体を開いた状態で、両筐体の表面を略同一平面上に揃えることが出来る開閉式小型電子機器を提供することである。
【0009】
また、本発明の第2の目的は、第1筐体と第2筐体からなる開閉式小型電子機器において、両筐体を閉じた状態では、第3のディスプレイを用いることなく情報表示が可能であり、然も、両筐体を開いた状態では、2つのディスプレイの画面に跨って画像を表示した場合に画像の連続性を保つことが出来る開閉式小型電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る開閉式小型電子機器は、第1筐体(1)と第2筐体(2)とが連結機構に
よって互いに相対移動可能に連結され、第2筐体(2)によって第1筐体(1)の表面の一部若しくは全体を覆う閉じ状態と、両筐体(1)(2)の表面を略同一平面上に並べて露出させた開き状態との間で、第1筐体(1)と第2筐体(2)とが互いに相対移動可能である。
【0011】
又、第1筐体(1)と第2筐体(2)には、前記開き状態にて付勢手段の付勢により互いに接触すべき接面(12)(22)がそれぞれ形成され、前記開き状態にて両接面が互いに接触することによって、第1筐体(1)に対する第2筐体(2)の姿勢が保持される。
【0012】
ここで、両筐体(1)(2)の表面を略同一平面上に並べて露出させた開き状態とは、両筐体(1)(2)の表面が同一平面上に揃い、若しくは両筐体(1)(2)の表面が許容される所定範囲内の段差をもって並んだ状態を意味する。
【0013】
尚、第1筐体(1)の接面(12)と第2筐体(2)の接面(22)とは、前記付勢手段の付勢によって、一定値以上の面圧で互いに接触することが望ましい。
【0014】
上記開閉式小型電子機器によれば、第1筐体(1)に対して第2筐体(2)を閉じた状態では、第1筐体(1)の表面に第2筐体(2)の裏面が重ね合わされて、第1筐体(1)の表面の一部若しくは全体が隠れることになる。
【0015】
第2筐体(2)を閉じ状態から開き状態まで開くと、第1筐体(1)の表面と第2筐体(2)の表面とが共に露出することになる。この開き状態では、第1筐体(1)の接面(12)に第2筐体(2)の接面(22)が接触して、両筐体(1)(2)が両表面を略同一平面上に揃えた一定の相対位置に保持される。
【0016】
又、本発明に係る開閉式小型電子機器は、第1筐体(1)と第2筐体(2)とが連結機構によって互いに相対移動可能に連結され、第1筐体(1)の表面には第1ディスプレイ(11)が設置されると共に、第2筐体(2)の表面には第2ディスプレイ(21)が設置されている。
【0017】
該開閉式小型電子機器においては、第2筐体(2)によって第1ディスプレイ(11)の表面を覆うと共に第2ディスプレイ(21)の表面を露出させた閉じ状態と、第1ディスプレイ(11)の表面と第2ディスプレイ(21)の表面とを略同一平面上に並べて露出させた開き状態との間で、第1筐体(1)と第2筐体(2)とが互いに相対移動可能である。
【0018】
又、第1筐体(1)と第2筐体(2)には、前記開き状態にて付勢手段の付勢により互いに接触すべき接面(12)(22)がそれぞれ形成され、前記開き状態にて両接面(12)(22)が互いに接触することによって、第1筐体(1)に対する第2筐体(2)の姿勢が保持される。
【0019】
ここで、第1ディスプレイ(11)の表面と第2ディスプレイ(21)の表面とを略同一平面上に並べて露出させた開き状態とは、両ディスプレイ(11)(21)の表面が同一平面上に揃い、若しくは両ディスプレイ(11)(21)の表面が許容される所定範囲内の段差をもって並んだ状態を意味する。
【0020】
尚、第1筐体(1)の接面(12)と第2筐体(2)の接面(22)とは、前記付勢手段の付勢によって、一定値以上の面圧で互いに接触することが望ましい。
【0021】
上記本発明の開閉式小型電子機器によれば、第1筐体(1)に対して第2筐体(2)を閉じた状態では、第1筐体(1)の表面に第2筐体(2)の裏面が重ね合わされて、第1ディスプレイ(11)は隠れることになる。
【0022】
この状態では、第2筐体(2)の表面に配備されている第2ディスプレイ(21)が露出しているので、第2ディスプレイ(21)を用いて情報の表示が可能である。
【0023】
第2筐体(2)を閉じ状態から開き状態まで開くと、第1ディスプレイ(11)が露出し、第1ディスプレイ(11)の表面と第2ディスプレイ(21)の表面とが略同一平面上に揃うことになる。この開き状態では、第1筐体(1)の接面(12)に第2筐体(2)の接面(22)が接触して、第1筐体(1)に対する第2筐体(2)の姿勢が保持されているので、両ディスプレイ(11)(21)の画面は確実に一定の位置関係に維持される。
【0024】
この状態では、第1ディスプレイ(11)の画面と第2ディスプレイ(21)の画面とが略同一平面上に揃っているので、2つのディスプレイの画面に跨って画像を表示した場合に画像の連続性を保つことが出来る。
【0025】
具体的態様において、前記閉じ状態から開き状態への相対移動は、第2筐体(2)が閉じ状態から第1筐体(1)の表面に沿ってスライドして中間状態に達するスライド行程と、第2筐体(2)が中間状態から回動して開き状態に達する回動行程とによって実行される。
【0026】
そして、前記連結機構は、スライド行程では第1筐体(1)に対する第2筐体(2)のスライドを案内すると共に、回動行程では第1筐体(1)に対して第2筐体(2)を回動させるヒンジ機構(3)を具え、該ヒンジ機構(3)には、少なくとも回動行程の最終段階で第1筐体(1)に対して第2筐体(2)を閉じ状態に向けて付勢するバネ(35)が内蔵され、該バネ(35)によって前記付勢手段が構成されている。
【0027】
前記ヒンジ機構(3)は、第1筐体(1)に連繋して第2筐体(2)のスライド方向に沿う摺動が可能な第1カム片(31)と、先端部が第2筐体(2)に対して相対回転可能に連繋すると共に基端部を中心として第2筐体(2)のスライド方向とは直交する軸回りに回転が可能なアーム(37)と、該アーム(37)の基端部に相対回転不能に連繋する第2カム片(32)とを具え、第1カム片(31)のカム面と第2カム片(32)のカム面とが互いに相対回転可能に摺接し、前記バネ(35)によって両カム片(31)(32)がカム面どうしを圧接させる方向に付勢され、両カム面のカム作用によって第2筐体(2)が閉じ状態に向けて駆動される。
【0028】
或いは、前記ヒンジ機構(3)は、第1筐体(1)に相対回転不能に連繋する第1カム片(31)と、先端部が第2筐体(2)に対して相対回転可能且つ第2筐体(2)のスライド方向に沿う摺動が可能に連繋すると共に、基端部を中心として第2筐体のスライド方向とは直交する軸回りに回転が可能なアーム(37)と、該アーム(37)の基端部に相対回転不能に連繋する第2カム片(32)とを具え、第1カム片(31)のカム面と第2カム片(32)のカム面とが互いに相対回転可能に摺接し、前記バネによって両カム片(31)(32)がカム面どうしを圧接させる方向に付勢され、両カム面のカム作用によって第2筐体(2)が閉じ状態に向けて駆動される。
【0029】
更に具体的な態様において、第1筐体(1)及び第2筐体(2)の接面(12)(22)は第1ディスプレイ(11)及び第2ディスプレイ(21)の表面とそれぞれ平行に形成されている。
【0030】
これによって、第1筐体(1)及び第2筐体(2)の接面(12)(22)を可及的に広く形成することが可能となり、この結果、両筐体(1)(2)の接面(12)(22)が互いに圧接された状態における両ディスプレイ(11)(21)の姿勢がより安定したものとなる。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る開閉式小型電子機器によれば、両筐体を開いた状態で、両筐体の表面を略同一平面上に揃えた一定の相対位置に保持することが出来る。
【0032】
又、本発明に係る開閉式小型電子機器によれば、両筐体を閉じた状態では、第2ディスプレイによって情報表示が可能であるばかりでなく、両筐体を開いた状態では、第1ディスプレイと第2ディスプレイの両方によって情報表示が可能であり、両ディスプレイの画面に跨って画像を表示した場合に画像の連続性を保つことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は本発明の第1の実施形態である開閉式小型電子機器において第2筐体が閉じ状態にある状態の斜視図である。
【図2】図2は同上状態の平面図である。
【図3】図3は同上状態の右側面図である。
【図4】図4は同上状態の左側面図である。
【図5】図5は同上状態でのヒンジ機構の位置を表わす斜視図である。
【図6】図6は本発明の第1の実施形態である開閉式小型電子機器において第2筐体が中間状態にある状態の斜視図である。
【図7】図7は同上状態の平面図である。
【図8】図8は同上状態の右側面図である。
【図9】図9は同上状態の左側面図である。
【図10】図10は同上状態でのヒンジ機構の位置を表わす斜視図である。
【図11】図11は本発明の第1の実施形態である開閉式小型電子機器において第2筐体が開き状態にある状態の斜視図である。
【図12】図12は同上状態の平面図である。
【図13】図13は同上状態の右側面図である。
【図14】図14は同上状態の左側面図である。
【図15】図15は同上状態でのヒンジ機構の位置を表わす斜視図である。
【図16】図16は本発明の第1の実施形態である開閉式小型電子機器の分解斜視図である。
【図17】図17は右側のヒンジ機構の斜視図である。
【図18】図18は該ヒンジ機構の正面図である。
【図19】図19は該ヒンジ機構の分解斜視図である。
【図20】図20は該ヒンジ機構のカム動作を表わす一連の斜視図(a)及び正面図(b)である。
【図21】図21は左側のヒンジ機構の斜視図である。
【図22】図22は該ヒンジ機構の分解斜視図である。
【図23】図23は本発明の第2の実施形態である開閉式小型電子機器において第2筐体が閉じ状態にある状態の斜視図である。
【図24】図24は同上状態の平面図である。
【図25】図25は同上状態の右側面図である。
【図26】図26は同上状態の左側面図である。
【図27】図27は本発明の第2の実施形態である開閉式小型電子機器において第2筐体が中間状態にある状態の斜視図である。
【図28】図28は同上状態の平面図である。
【図29】図29は同上状態の右側面図である。
【図30】図30は同上状態の左側面図である。
【図31】図31は本発明の第2の実施形態である開閉式小型電子機器において第2筐体が開き状態にある状態の斜視図である。
【図32】図32は同上状態の平面図である。
【図33】図33は同上状態の右側面図である。
【図34】図34は同上状態の左側面図である。
【図35】図35は本発明の第2の実施形態である開閉式小型電子機器のヒンジ機構の動作を説明する一連の右側面図である。
【図36】図36は本発明の第2の実施形態である開閉式小型電子機器における第1ヒンジ機構の斜視図である。
【図37】図37は本発明の第2の実施形態である開閉式小型電子機器における第2ヒンジ機構の正面図である。
【図38】図38は第2ヒンジ機構の右側面図である。
【図39】図39は本発明の第2の実施形態である開閉式小型電子機器の要部を示す断面図である。
【図40】図40は図39のA部を拡大した断面図である。
【図41】図41は一対の接面の他の構成例を表わす側面図である。
【図42】図42は一対の接面の更に他の構成例を表わす側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
【0035】
本発明の第1の実施形態である開閉式小型電子機器は、図6に示す如く、扁平な段付きの直方体状を呈する第1筐体(1)と、扁平な段付きの直方体状を呈する第2筐体(2)とを具え、両筐体(1)(2)が互いに重ね合わされた状態で相対移動可能に連結されている。
【0036】
図16の如く、第1筐体(1)の表面には第1ディスプレイ(11)が配備され、第2筐体(2)の表面には第2ディスプレイ(21)が配備される。
【0037】
又、第1筐体(1)の表面には、第1ディスプレイ(11)の設置領域の奥方に、第1ディスプレイ(11)の表面と平行な接面(12)が形成され、第2筐体(2)の裏面には、第2ディスプレイ(21)の設置領域と重なる位置に、第2ディスプレイ(21)の表面と平行な接面(22)が形成されている。
【0038】
斯くして、第1筐体(1)と第2筐体(2)は、図1〜図4に示す如く第1筐体(1)上に第2筐体(2)が重なって第1ディスプレイ(11)が第2筐体(2)により覆い隠された閉じ状態と、図6〜図9に示す如く第2筐体(2)が第1筐体(1)の第1ディスプレイ(11)の表面に沿ってスライドし、第1ディスプレイ(11)が露出した中間状態と、図11〜図14に示す如く第1筐体(1)に対して第2筐体(2)が回動し、第1ディスプレイ(11)と第2ディスプレイ(21)とが同一平面上に揃った開き状態との間で、往復移動が可能となっている。
【0039】
図3に示す如く第1筐体(1)と第2筐体(2)とは、その右側部にてヒンジ機構(3)により互いに連結されると共に、図4に示す如く第1筐体(1)と第2筐体(2)とは、その左側部にてヒンジ機構(4)により互いに連結されている。
【0040】
右側のヒンジ機構(3)は、図17〜図19に示す如く、第1カム片(31)と、第1
カム片(31)に対して相対回転不能に連結された直方体状の内側係合片(33)と、第1カム片(31)と摺接すべき第2カム片(32)と、第2カム片(32)に対してシャフト(36)を介して直角の姿勢で相対回転不能に連結されたアーム(37)と、該アーム(37)の先端部に対して相対回転可能に連結された直方体状の外側係合片(38)と、第1カム片(31)に対して第2カム片(32)を押圧するコイルバネ(35)と、該コイルバネ(35)を収容する円筒部材(34)とから構成されている。
【0041】
図5に示す如く第1筐体(1)の右側端部には、第2筐体(2)のスライド方向に沿って伸びる溝(13)が形成され、該溝(13)に右側のヒンジ機構(3)が摺動可能に係合し、前記内側係合片(33)は第1筐体(1)に対して相対回転不能、且つ溝(13)に沿って摺動可能に連結される。
【0042】
一方、右側のヒンジ機構(3)の外側係合片(38)は第2筐体(2)に対して相対移動不能に連結される。
【0043】
左側のヒンジ機構(4)は、図21及び図22に示す如く、一対の円筒部(44)(44)を一体に具えたアーム(43)と、該アーム(43)を収容するカバー(41)とから構成され、アーム(43)の一方の円筒部(44)から他方の円筒部(44)へ向けてU字状に後述のケーブル(8)が貫通している。
【0044】
図5に示す如く第1筐体(1)の左側端部には、第2筐体(2)のスライド方向に沿って伸びる溝(14)が形成され、該溝(14)に左側のヒンジ機構(4)が摺動可能に係合し、前記一対の円筒部(44)(44)の内、下方の円筒部(44)は第1筐体(1)に対して相対回転可能、且つ溝(14)に沿って摺動可能に連結される。
【0045】
一方、左側のヒンジ機構(4)の上方の円筒部(44)は第2筐体(2)に対して相対回転可能に連結される。
【0046】
又、図7に示す如く、第1ディスプレイ(11)と第2ディスプレイ(21)とは、ケーブル(8)を介して互いに電気接続されており、該ケーブル(8)の一方の端部が第1筐体(1)上のコネクター(5)に連結されると共に、該ケーブル(8)の他方の端部が第2筐体(2)上のコネクター(6)に連結されている。
【0047】
そして、第1筐体(1)上のコネクター(5)から伸びるケーブル(8)は、左側のヒンジ機構(4)の内部を通過して、第2筐体(2)上のコネクター(6)へ至っている。
【0048】
左側のヒンジ機構(4)は、第2筐体(2)上のコネクター(6)との相対位置が不変であるのに対し、第1筐体(1)上のコネクター(5)との相対位置は、第2筐体(2)のスライドに伴って変化するために、ヒンジ機構(4)とコネクター(5)の間を伸びるケーブル(8)の長さには予め余裕が与えられており、その余裕による弛みを吸収するべく、第1筐体(1)上にはテンションレバー(7)が配備されている。
【0049】
テンションレバー(7)は、その基端部が第1筐体(1)上に枢支されると共に、その先端部は第1筐体(1)上を左右に伸びるガイド溝(図示省略)に沿ってガイドされており、第1筐体(1)のスライドに連動して後述の如く揺動する構成となっている。
【0050】
図1〜図4に示す閉じ状態では、第1筐体(1)上に第2筐体(2)が重なっており、第1ディスプレイ(11)は第2筐体(2)によって覆い隠されているが、第2ディスプレイ(21)は露出している。
【0051】
両側のヒンジ機構(3)(4)は、図5に示す如く垂直の姿勢で第1筐体(1)の溝(13)(14)の始端に位置している。
【0052】
このとき、右側のヒンジ機構(3)は、図20(a)(b)の状態(S1)に示す様に、第1カム片(31)と第2カム片(32)とがそれぞれのカム面(31a)(32a)にて互いに摺接している。
【0053】
尚、両カム面(31a)(32a)のカム作用によって、第2カム片(32)には時計方向の回転トルクが発生し、この回転トルクは、ヒンジ機構(3)のアーム(37)を介して、第2筐体(2)に駆動力として伝えられるが、この駆動力は第1筐体(1)の表面によって受け止められるので、第2筐体(2)が移動することはない。
【0054】
又、図2に示す如くテンションレバー(7)は、ヒンジ機構(4)の近傍位置からコネクター(5)の上方位置まで伸びた姿勢で、ケーブル(8)の弛みを吸収している。
【0055】
閉じ状態から第2筐体(2)をスライド方向に押圧すると、第2筐体(2)が第1筐体(1)の第1ディスプレイ(11)の表面に沿ってスライドし、図6〜図9に示す中間状態に達する。このスライド行程において、両側のヒンジ機構(3)(4)は、垂直姿勢のまま第1筐体(1)の溝(13)(14)に沿って移動し、図10に示す如く第1筐体(1)の溝(13)(14)の終端位置に達する。
【0056】
図6〜図9に示す如く、第2筐体(2)が中間状態に達すると、第1筐体(1)の第1ディスプレイ(11)が露出することになるが、第1ディスプレイ(11)と第2ディスプレイ(21)との間には段差が生じている。
【0057】
又、第2筐体(2)が中間状態に達すると、第2筐体(2)は、図8及び図9に示す如く第1筐体(1)の表面による受け止め状態が解除されることになる。
【0058】
この時点で、右側のヒンジ機構(3)においては、図20(a)(b)の状態(S1)に示す様に、第1カム片(31)と第2カム片(32)とがそれぞれのカム面(31a)(32a)にて互いに摺接し、両カム面(31a)(32a)のカム作用によって、第2カム片(32)には時計方向の回転トルクが発生し、この回転トルクは、ヒンジ機構(3)のアーム(37)を介して、第2筐体(2)に駆動力として伝えられる。
【0059】
従って、第2筐体(2)は前記駆動力を受けて回動し、図11〜図14に示す開き状態まで回動することになる。
【0060】
中間状態から開き状態への回動行程では、右側のヒンジ機構(3)は、図20(a)(b)のステップ(S2)に示す様に、第1カム片(31)のカム面(31a)と第2カム片(32)のカム面(32a)との相対的な摺動が進行し、この過程においても、両カム面(31a)(32a)のカム作用によって第2カム片(32)には時計方向の回転トルクが発生し、この回転トルクによって第2筐体(2)に対する駆動力が維持される。
【0061】
その後、第2筐体(2)が開き状態に達すると、両側のヒンジ機構(3)(4)は、図15に示す如く第1筐体(1)の溝(13)(14)の終端位置にて所定の傾斜姿勢まで回動することになるが、右側のヒンジ機構(3)においては、図20(a)(b)の状態(S3)に示す様に、第1カム片(31)のカム面(31a)と第2カム片(32)のカム面(32a)とは、カム曲線の終端の直前で摺接しているため、依然としてカム作用が発揮され、第2カム片(32)に対する時計方向の回転トルクが維持されている。
【0062】
従って、第2筐体(2)に対する駆動力は継続し、これによって、第2筐体(2)の裏面に形成されている接面(22)が、第1筐体(1)の表面に形成されている接面(12)に圧接され、この圧接状態が維持されることになる。
【0063】
この結果、第2筐体(2)の開き状態では、第2筐体(2)の第2ディスプレイ(21)の表面が、第1筐体(1)の第1ディスプレイ(11)の表面と同一平面上に揃い、この状態が保持される。
【0064】
又、図12に示す如くテンションレバー(7)は、ヒンジ機構(4)の近傍位置からコネクター(5)の上方位置まで伸びた姿勢で、ケーブル(8)の弛みを吸収する。
【0065】
第2筐体(2)を開き状態から閉じ状態まで閉じる際は、第2筐体(2)に対して逆方向の力をかける。これによって、第2筐体(2)は、図11に示す開き状態から図6に示す中間状態を経て図1に示す閉じ状態に戻ることになる。
【0066】
本発明の第2の実施形態である開閉式小型電子機器は、図31に示す如く、扁平な段付きの直方体状を呈する第1筐体(1)と、扁平な段付きの直方体状を呈する第2筐体(2)とを具え、両筐体(1)(2)が互いに重ね合わされた状態で相対移動可能に連結されている。
【0067】
第1筐体(1)の表面には第1ディスプレイ(11)が配備され、第2筐体(2)の表面には第2ディスプレイ(21)が配備される。
【0068】
又、図27に示す如く、第1筐体(1)の表面には、第1ディスプレイ(11)の設置領域の奥方に、第1ディスプレイ(11)の表面と平行な接面(12)が形成され、第2筐体(2)の裏面には、第2ディスプレイ(21)の設置領域と重なる位置に、第2ディスプレイ(21)の表面と平行な接面(22)が形成されている。
【0069】
斯くして、第1筐体(1)と第2筐体(2)は、図23〜図26に示す如く第1筐体(1)上に第2筐体(2)が重なって第1ディスプレイ(11)が第2筐体(2)により覆い隠された閉じ状態と、図27〜図30に示す如く第2筐体(2)が第1筐体(1)の第1ディスプレイ(11)の表面に沿ってスライドし、第1ディスプレイ(11)の一部若しくは全体が露出した中間状態と、図31〜図34に示す如く第1筐体(1)に対して第2筐体(2)が回動し、第1ディスプレイ(11)と第2ディスプレイ(21)とが同一平面上に揃った開き状態との間で、往復移動が可能となっている。
【0070】
図25に示す如く第1筐体(1)と第2筐体(2)とは、その右側部にて第1ヒンジ機構(301)と第2ヒンジ機構(302)により互いに連結されると共に、図26に示す如く第1筐体(1)と第2筐体(2)とは、その左側部にて第1ヒンジ機構(301)と第2ヒンジ機構(302)により互いに連結されている。
【0071】
尚、第1筐体(1)と第2筐体(2)の両側に配備されている左右一対の第1ヒンジ機構(301)(301)と左右一対の第2ヒンジ機構(302)(302)はそれぞれ、左右対称の構造を有している。
【0072】
第1ヒンジ機構(301)は、図17〜図19に示すヒンジ機構(3)と同様の構造を有しており、図36に示す如く、第1カム片(31)と、第1カム片(31)に対して相対回転不能に連結された直方体状の内側係合片(300)と、第1カム片(31)と摺接すべき第2カム片(32)と、第2カム片(32)に対してシャフト(36)を介して直角の姿勢で相対回転不能に連結されたアーム(37)と、該アーム(37)の先端部に対
してシャフト(304)を介して相対回転可能に連結された直方体状の外側係合片(303)と、第1カム片(31)に対して第2カム片(32)を押圧するコイルバネ(図示省略)と、該コイルバネを収容する円筒部材(34)とから構成されている。
【0073】
これに対して、第2ヒンジ機構(302)は、図37及び図38に示す如く、シャフト(304)と、該シャフト(304)の一方の端部に相対回転可能に連結された直方体状の内側係合片(306)と、シャフト(304)の他方の端部に直角の姿勢で相対回転不能に連結されたアーム(307)と、該アーム(307)の先端部に対してシャフト(309)を介して相対回転可能に連結された直方体状の外側係合片(308)とから構成されている。
【0074】
図39及び図40に示す如く第2筐体(2)の側壁の内面には、第2筐体(2)のスライド方向に沿って伸びる一対の突条(23)(23)が形成され、突条(23)(23)の間に形成された溝(24)に、第1ヒンジ機構(301)の外側係合片(303)が摺動可能に係合している。
【0075】
又、図36に示す第1ヒンジ機構(301)の内側係合片(300)は、第1筐体(1)に対して相対回転不能且つ摺動不能に係合している。
【0076】
図37及び図38に示す第2ヒンジ機構(302)についても同様に、外側係合片(308)は、第2筐体(2)に形成された溝(図示省略)に摺動可能に係合すると共に、内側係合片(306)は第1筐体(1)に対して相対回転不能且つ摺動不能に係合している。
【0077】
図23〜図26に示す閉じ状態では、第1筐体(1)上に第2筐体(2)が重なっており、第1ディスプレイ(11)は第2筐体(2)によって覆い隠されているが、第2ディスプレイ(21)は露出している。
【0078】
このとき、第1ヒンジ機構(301)は、図36に示す第1カム片(31)と第2カム片(32)とがカム曲線の傾斜領域で摺接しており、そのカム作用によって、図35(a)に示す如く反時計方向の回転トルクT1を発生する。この回転トルクは、図25に示す第2筐体(2)に駆動力として伝えられ、これによって第2筐体(2)の裏面は第1筐体(1)の表面に圧接され、第2筐体(2)は閉じ状態に維持される。
【0079】
閉じ状態から第2筐体(2)をスライド方向に押圧すると、第2筐体(2)が第1筐体(1)の第1ディスプレイ(11)の表面に沿ってスライドし、図27〜図30に示す中間状態に達する。このスライド行程において、第1及び第2ヒンジ機構(301)(302)は同じ姿勢を維持し、両ヒンジ機構(301)(302)の外側係合片(303)(308)が第2筐体(2)の溝(24)に対して相対的に摺動する。この様にして、第2筐体(2)は閉じ状態から中間状態へ向けて水平に移動する。
【0080】
この過程で、第1ヒンジ機構(301)の第1カム片(31)と第2カム片(32)の摺接位置が、カム曲線の傾斜領域から平坦領域を経て反対側の傾斜領域に移行することにより、前記コイルバネによる付勢方向が反転することになる。
【0081】
図27に示す如く、第2筐体(2)が中間状態に達すると、第1筐体(1)の第1ディスプレイ(11)の一部若しくは全体が露出することになるが、第1ディスプレイ(11)と第2ディスプレイ(21)との間には段差が生じている。
【0082】
又、第2筐体(2)が中間状態に達すると、第1ヒンジ機構(301)においては、第
1カム片(31)と第2カム片(32)とがカム曲線の傾斜領域で互いに摺接し、そのカム作用によって、図35(c)に示す如く時計方向の回転トルクT2を発生する。この回転トルクは、図33に示す第2筐体(2)に駆動力として伝えられ、これによって第2筐体(2)は、図31〜図34に示す開き状態まで回動し、最終的に第2筐体(2)の接面(22)が第1筐体(1)の接面(12)に圧接されて、第2筐体(2)は開き状態に維持される。
【0083】
この結果、第2筐体(2)の開き状態では、第2筐体(2)の第2ディスプレイ(21)の表面が、第1筐体(1)の第1ディスプレイ(11)の表面と同一平面上に揃い、この状態が保持される。
【0084】
上述の如く、本発明に係る開閉式小型電子機器によれば、第1筐体(1)と第2筐体(2)を閉じた状態では、第2ディスプレイ(21)によって情報表示が可能であるばかりでなく、両筐体(1)(2)を開いた状態では、第1ディスプレイ(11)と第2ディスプレイ(21)の両方によって情報表示が可能であり、両ディスプレイ(11)(21)の画面に跨って画像を表示した場合に画像の連続性を保つことが出来る。
【0085】
又、第1筐体(1)及び第2筐体(2)の接面(12)(22)はそれぞれ第1ディスプレイ(11)及び第2ディスプレイ(21)の表面と平行な向きに広く形成されているので、両接面(12)(22)が互いに圧接された状態における両ディスプレイ(11)(21)の姿勢がより安定したものとなる。
【0086】
更に又、図23〜図40に示す本発明の第2実施形態によれば、第1及び第2筐体(1)(2)の左右にはそれぞれ、同時に回動する第1ヒンジ機構(301)と第2リンク機構(302)が配備されて、4節リンク機構が構成されているので、スライド行程及び回動行程では第1筐体(1)に対する第2筐体(2)の姿勢が安定し、閉じ状態及び開き状態においても、第2筐体(2)の位置及び姿勢は確実なものとなる。
【0087】
尚、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【0088】
例えば図41(a)(b)に示す如く、第1筐体(1)と第2筐体(2)を閉じた状態で互いに対向すべき係合面(15)(25)を、ディスプレイ面に対して傾斜した斜面に形成することも可能である。
【0089】
又、図42(a)(b)に示す如く、第1筐体(1)と第2筐体(2)を開いた状態で互いに圧接されるべき接面(16)(26)を、ディスプレイ面に対して傾斜した斜面に形成することも可能である。
【0090】
又、上記実施形態では、第1筐体(1)と第2筐体(2)の表面にそれぞれディスプレイ(11)(21)を配置した構成を説明したが、本発明はこの様な構成に限定されるものではない。例えば、第1筐体(1)と第2筐体(2)の表面に、それぞれディスプレイ(11)(21)に代えて、又はディスプレイ(11)(21)と共に、入力のためのキー操作部などのその他の機能部を設けてもよい。
【0091】
更に、2つのディスプレイ(11)(21)の一方又は双方が、指やペン等の入力操作手段でタッチすることにより機器制御のための情報を入力する、タッチパネル機能を具えていてもよい。この場合、タッチパネルとして、例えば、表面型静電容量方式、投影型静電容量方式、電磁誘導方式、赤外線方式、抵抗膜方式、表面弾性波方式等、適宜な方式を用いることが出来る。
【符号の説明】
【0092】
1 第1筐体
11 第1ディスプレイ
12 接面
13 溝
14 溝
2 第2筐体
21 第2ディスプレイ
22 接面
24 溝
3 ヒンジ機構
31 第1カム片
32 第2カム片
35 コイルバネ
37 アーム
301 第1ヒンジ機構
302 第2ヒンジ機構
5 コネクター
6 コネクター
7 テンションレバー
8 ケーブル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1筐体と第2筐体とが連結機構によって相対移動可能に連結され、第2筐体によって第1筐体の表面を覆う閉じ状態と、両筐体の表面を略同一平面上に並べて露出させた開き状態との間で、第1筐体と第2筐体とが相対移動可能であり、第1筐体と第2筐体には、前記開き状態にて付勢手段に付勢されて互いに接触すべき接面がそれぞれ形成されていると共に、
前記閉じ状態から前記開き状態への回動行程において、前記第2筐体に駆動力を付与する駆動力付与部を備えることを特徴とする開閉式小型電子機器。

【図37】
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【図38】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【公開番号】特開2013−9395(P2013−9395A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−174331(P2012−174331)
【出願日】平成24年8月6日(2012.8.6)
【分割の表示】特願2010−501908(P2010−501908)の分割
【原出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】