説明

開閉機器の異常診断方法

【課題】 断路器等の開閉機器の異常部位を特定することができる開閉機器の異常診断方法を提供すること。
【解決手段】 電動機11を動力源として開閉動作させる断路器の異常診断方法であって、前記断路器が正常に動作しているときの電動機11の動作時の入力電流の時間的変化を第1の電流波形として予め操作電流検出手段61で測定して記録部62で記録し、前記断路器の動作の異常の有無を診断するときにおける電動機11の動作時の入力電流の時間的変化を第2の電流波形として操作電流検出手段61で測定し、前記第1の電流波形と前記第2の電流波形を比較することにより前記断路器の異常の有無を診断すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断路器等の開閉機器の異常診断方法に関するものであり、特に、動力源となる電動機の入力電流を測定して開閉機器の異常を診断する開閉機器の異常診断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、断路器等の開閉機器の異常を診断する方法として、開閉機器の開閉動作時に開閉機器の電動操作装置の電動機電流とこの電動機を制御する制御電源の制御電流の流れ始める時間の差を求め、この時間差が一定値を超えたときに開閉機器に異常が発生していると判定していた(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−273510号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述の従来例では、開閉機器として何らかの異常が発生したか否かの判定はできるが、その発生部位まで特定することはできなかった。そのために、異常診断基準も不明確であった。
また、開閉機器の機種別、部位別に判定基準を設定するためには、様々な異常模擬試験データやフィールドデータの収集が必要となるが、そのためには、多大な費用と時間を要するために実現には至っていなかった。
そこで、本発明の課題は、開閉機器の異常部位を特定することができる開閉機器の異常診断方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、電動機を動力源として開閉動作させる断路器等の開閉機器の異常診断方法であって、前記開閉機器が正常に動作しているときの前記動力源となる電動機の動作時の入力電流の時間的変化を第1の電流波形として予め測定して記録し、前記開閉機器の動作の異常の有無を診断するときにおける前記動力源となる電動機の動作時の入力電流の時間的変化を第2の電流波形として測定し、前記第1の電流波形と前記第2の電流波形を比較することにより前記開閉機器の異常の有無を診断することである。
これにより、開閉機器が正常に動作しているときの開閉動作の動力源となる電動機の入力電流波形即ち第1の電流波形と、開閉機器の動作の異常の有無を判断するときの前記電動機の第2の電流波形とを比較して両者の差異があるときには、電動機の負荷の大きさが変化している。そして、この負荷の変化の状態に対応する開閉機器の異常部位を予め調べておくと、上記第1の電流波形と第2の電流波形の比較による電動機の負荷の変化の検出値に対応する開閉機器の異常部位を特定することができる。なお、本発明において、「異常の有無の診断」には「異常部位の診断」を含んでいる。
【0005】
さらに、請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記第2の電流波形が前記第1の電流波形よりも時間的に遅れるときは、前記電動機に電流を供給する電流供給手段の始動不良と診断することである。
これにより、前記第2の電流波形が前記第1の電流波形よりも時間的に遅れるときは、この遅れた時間だけ電動機に電流を供給する電流供給手段のスイッチの接触不良等が発生していると推定することができる。
【0006】
さらに、請求項3記載の発明は、請求項1に記載した発明において、前記電動機が直流分巻電動機であるとき、前記第2の電流波形が始動時の電流の最大電流の状態で時間が経過するときは、前記界磁巻線に電流が流れていないと診断することである。
これにより、前記電動機が直流分巻電動機であるとき、前記第2の電流波形が始動時の電流の最大電流の状態で時間が経過するときは、電動機の回転子が回転していないので逆起電力が発生していない状態であるため、界磁巻線に電流が流れていないので、界磁巻線に電流を供給するスイッチの接触不良等と推定することができる。
【0007】
さらに、請求項4記載の発明は、請求項1に記載した発明において、前記第2の電流波形が電流の流れていない状態を示すときは、前記電動機を始動させる制御系の異常が発生したと診断することである。
これにより、前記第2の電流波形が電流の流れていない状態を示すときは、前記電動機を始動させる制御系の異常が発生したしたことにより、例えば、前記電動機の運転・停止を制御する制御系において、前記制御系の電装品の異常、即ち前記制御系のスイッチの不良、前記制御系の断線等が発生したと推定することができる。
【0008】
さらに、請求項5記載の発明は、電動機を動力源として開閉動作させる断路器等の開閉機器の異常診断方法であって、前記開閉機器の動作の異常を模擬したときの前記動力源となる電動機の動作時の入力電流の時間的変化を第1の電流波形として予め記録し、前記開閉機器の動作の異常の有無を診断するときにおける前記動力源となる電動機の動作時の入力電流の時間的変化を第2の電流波形として測定し、前記第1の電流波形と前記第2の電流波形とを比較することにより前記開閉機器の異常の有無を診断することを特徴とする開閉機器の異常診断方法である。
これにより、前記開閉機器の動作の異常を模擬したときの前記動力源となる電動機の動作時の入力電流の時間的変化を第1の電流波形として予め記録し、前記開閉機器の動作の異常の有無を診断するときにおける前記動力源となる電動機の動作時の入力電流の時間的変化を第2の電流波形として測定し、前記第1の電流波形と前記第2の電流波形とを比較することにより、前記開閉機器の模擬した異常と同一の異常の有無を診断することができる。
【0009】
さらに、請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、電動機の負荷トルクは摩擦係数に依存していることから、前記開閉機器の異常状態の模擬は、前記開閉機器の開閉動作に関係するボールベアリング等の部品の摩擦係数と応答倍率に基づき前記動力源となる電動機の負荷トルク・電流特性から、前記電流波形のシミュレーションをすることができるものであって、前記摩擦係数を変化させることにより前記異常状態を模擬するものであることを特徴とする開閉機器の異常診断方法である。
すなわち、電動機の回転軸にかかるトルクは、部品の摩擦係数、部品にかかる応力、応答倍率の積であり、異常発生時は部品の摩擦係数が変化するため、この値を変化させることにより容易に異常発生時のトルクのシミュレーションをすることができる。このトルクのシミュレーションの結果と電動機の負荷トルク・電流特性に基づき、モータ電流波形のシミュレーションを行うことができる。
なお、ここでいう「摩擦係数」は、前記部品(リンク機構、歯車列等を含む。)の動作時の摩擦係数であり、例えば前記部品がボールベアリングのときは、ボールベアリングの動作時の摩擦係数である。また、「応答倍率」は、前記部品の出力側の変位(回転角を含む。)の入力側の変位に対する比をいう。このため、例えば前記部品がリンク機構のときはリンク機構の出力側の変位の入力側の変位に対する比をいい、前記部品が歯車列のときは歯車列の出力側の回転角の入力側の回転角に対する比をいう。
これにより、前記開閉機器の開閉動作に関係するボールベアリング等の部品の摩擦係数
を変化させることにより前記開閉機器の様々な異常状態を模擬するので、前記部品の摩擦係数と応答倍率から前記動力源となる電動機の負荷トルク・電流特性に基づき前記電流波形のシミュレーションを容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、開閉機器の異常部位を特定することができる。
さらに、請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果とともに、前記電動機に電流を供給する電流供給手段のスイッチの接触不良等を診断することができる。
さらに、請求項3記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果とともに、前記電動機の界磁巻線に電流を供給するスイッチの接触不良等を診断することができる。
さらに、請求項4記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果とともに、前記電動機を始動させる制御系の断線等を診断することができる。
さらに、請求項5記載の発明によれば、前記開閉機器の異常を模擬し、この異常と同一の異常の有無を診断することができる。
さらに、請求項6記載の発明によれば、請求項5記載の発明の効果とともに、前記異常の模擬が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明における実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る開閉機器の異常診断方法の診断対象となる断路器(開閉機器の一例)を示し、図2は図1の断路器のリンク機構を示し((a)は平面を示し、(b)は正面を示す。)、図3は断路器の電動操作装置の内部を示し、図4は図1の断路器の接点を示し((a)は平面を示し、(b)は正面を示す。)、図5から図10まではそれぞれ断路器の異常診断方法の具体例を示す。
【0012】
図1に示すように、診断対象となる三相の断路器1(請求項記載の「開閉機器」の一例である。)は、動力源となる電動機11(図3(a)参照)を内蔵している電動操作装置10と、電動機11により回転する回転軸21で駆動されるリンク機構22と、リンク機構22で駆動されて開閉動作する第1相部分30、第2相部分40および第3相部分50を備えている。なお、第2相部分40および第3相部分50の構造は、第1相部分30の構造と同様である。
【0013】
図3(a)に示すように、電動動作装置10に内蔵されている電動機11は直流分巻電動機であり、界磁巻線11aを備えている。電流供給手段12は直流電源13、直流電源13と電動機11を接続する第1リレー14および界磁巻線11aを電動機11に接続する第2リレー15を有している。各リレー14、15は制御系16により制御される。
さらに、直流電源13から電動機11に供給される電流値を検出する操作電流検出手段61が配設され、操作電流検出手段61の検出値を経時的に記録する記録部62が操作電流検出手段61に接続されている。
【0014】
さらに、図3(b)に示すように、自動安全装置71が電動操作装置10内に配設されている。この自動安全装置71は電動機11の縦軸状の回転軸21に固定された円板部72および電動操作装置10の側壁10aに固定された支点73aに回動自在に連結されたレバー73を備えている。円板部72の周縁部分には溝72a、72bが形成され、レバー73の先端部が溝72a、72bに係合する。なお、支点73aの軸には、つる巻バネ74が配設され、このつる巻バネ74がレバー73を円板部72に押し付ける方向に付勢している。さらに、レバー73の中央部分の支点73bにはソレノイド75の先端部が回動自在に連結され、ソレノイド75の作動によりレバー73は円板部72から引き離される。なお、図3(a)に示すように、ソレノイド75は制御系16により制御される。
【0015】
さらに、図3(c)に示すように、回転軸21にはカム76が取り付けられ、電動操作装置10の側壁10bに固定された支点77aに回動自在に連結されたレバー77が配置され、レバー77をカム76に押し付けるように付勢するコイルバネ78がレバー77の先端部と電動操作装置10の側壁10cとの間に取り付けられている。
【0016】
図1に示すように、断路器1のべース20の中央部には、ボールベアリング21aが取り付けられ、ベース20の両端にはスラストボールベアリング31a、32a(図2(b)参照)が取り付けられている。縦軸状の回転軸21の上端部はボールベアリング21aにより回動自在に支えられ、柱状の碍子31の下端部はスラストボールベアリング31aにより回動自在に支えられ、柱状の碍子32の下端部はスラストボールベアリング32a(図2(b)参照)により回動自在に支えられている。
【0017】
上記第1相部分30は回転可能なブレード33、34により開閉する接点35を備えている。なお、ブレード33の基部は柱状の碍子31の上端部に固定され、ブレード34の基部は柱状の碍子32の上端部に固定されている。なお、第2相部分40および第3相部分50の構造は、第1相部分30の構造と同様であるので、以下においては第2相部分40および第3相部分50の構造の説明を省略する。
図4(a)に示すように、ブレード33の先端部とブレード34の先端部に接点35が固定されている。接点35はブレード33の先端部に固定された接触子36およびブレード34の先端部に固定された接触子37を備えている。接触子36は、一対の板バネ状部分36a、36bおよびこの板バネ状部分36a、36bの間隔を狭めるように付勢するコイルバネ36c、36dを有している。また、接触子37は、接点35が投入時(閉じた時)に一対の板バネ状部分36a、36bに挟まれるようになる(図4(b)参照)。
【0018】
また、図2(b)に示すように、電動機11(図3(a)参照)により回転する回転軸21の上端部にはリンク機構22が連結されている。リンク機構22は、回転軸21の上端部に取り付けられた横向きのアーム23、アーム23の先端部に一端部が連結ピン25で回動自在に連結された連結部24、連結部24の他端部に回動自在に先端部が連結された横向きのアーム31bを有している。なお、アーム31bの基部は碍子31の下端部に取り付けられている。
さらに、アーム31bの先端部に極間連結部26の一端部が回動自在に連結され、極間連結部26の他端部は横向きのアーム32bの先端部に回動自在に連結されている。アーム32bの基部は碍子32の下端部に固定されている。
さらに、碍子32の下端部には、図2(a)に示すように、横向きのアーム32c、32dの基部が固定されている。なお、アーム32cの先端部とアーム32dの先端部は互いに反対方向に向いている。アーム32cの先端部には、連結部38の一端部が回動自在に連結され、また、アーム32dの先端部には、連結部39の一端部が回動自在に連結されている。図1に示すように、連結部38、39は、第1相部分30の動作を第2相部分40および第3相部分50に伝えるものであり、これにより、第2相部分40および第3相部分50は第1相部分30と連動して動作する。
【0019】
以上により、図1の状態で、電動機11(図3参照)の回転により回転軸21が矢印21xの方向(反時計回りの方向)に回転すると、碍子31が矢印31xの方向(反時計回りの方向)に回転し、極間連結部26が矢印26xの方向(碍子32の方向)に移動し、碍子32が矢印32xの方向(時計回りの方向)に回転する。これにより、第1相部分30においてブレード33が矢印33xの方向(反時計回りの方向)に回転し、ブレード34が矢印34xの方向(時計回りの方向)に回転するので、接点35が開放される。同時に、連結部38が矢印38xの方向に移動し、連結部39が矢印39xの方向(矢印38xの方向と反対の方向)に移動するので、第2相部分40および第3相部分50が第1相部分30と同様の動作をする。
さらに、接点35が開放状態で、電動機11により回転軸21が矢印21xの方向と反対の方向(時計回りの方向)に回転すると、第1相部分30の接点35が投入され(閉じ)、第2相部分40および第3相部分50も第1相部分30と同様の動作をする。
【0020】
以上の構成の断路器1の異常の有無(異常があるときの異常部位を含む。)の診断方法は以下のようになる。
(1)断路器1が正常に動作しているときの電動機11の動作時の入力電流の時間的変化を操作電流検出手段61により第1の電流波形として予め測定して記録部62に記録し、断路器1の動作の異常の有無を診断するときにおける電動機11の動作時の入力電流の時間的変化を操作電流検出手段61により第2の電流波形として測定し、前記第1の電流波形と前記第2の電流波形を比較する。
これにより、前記第1の電流波形と第2の電流波形とを比較して両者の差異があるときには、電動機11の負荷の大きさが変化している。そして、この負荷の変化の状態に対応する断路器1の異常部位を予め調べておくと、前記第1の電流波形と第2の電流波形の比較による電動機11の負荷の変化の検出値に対応する断路器1の異常部位を特定することができる。
【0021】
(2)さらに、図5に示すように(なお、図5(a)は断路器1の投入操作時であり、図5(b)は断路器1の開放操作時である。)、前記第2の電流波形が前記第1の電流波形よりも時間的に遅れるときは、電動機11に電流を供給する電流供給手段12の始動不良と診断する。なお、この場合、第2の電流波形の立ち上がりが第1の電流波形の立ち上がりよりも約0.3秒遅れている。
これにより、前記第2の電流波形が前記第1の電流波形よりも時間的に遅れるときは、この遅れた時間だけ電動機11に電流を供給する電流供給手段12の第1リレー14のスイッチの接触不良等が発生していると推定することができる。
【0022】
(3)さらに、図6に示すように(なお、図6(a)は断路器1の投入操作時であり、図6(b)は断路器1の開放操作時である。)、電動機11が直流分巻電動機であるので、前記第2の電流波形が始動時の電流の最大電流の状態で時間が経過するときは、電動機11の界磁巻線11aに電流が流れていないと診断する。
これにより、電動機11が直流分巻電動機であるとき、前記第2の電流波形が始動時の電流の最大電流の状態で時間が経過するときは、電動機11の回転子が回転していないので逆起電力が発生していない状態であるため、界磁巻線11aに電流が流れていないため、界磁巻線11aに電流を供給する第2リレー15のスイッチの接触不良等と推定することができる。
【0023】
(4)さらに、図7に示すように(なお、図7(a)は断路器1の投入操作時であり、図7(b)は断路器1の開放操作時である。)、前記第2の電流波形が電流の流れていない状態を示すときは、電動機11を始動させる制御系16の断線が発生したと診断する。
これにより、前記第2の電流波形が電流の流れていない状態を示すときは、例えば、電動機11の運転・停止を制御する制御系16の電装品の異常、即ち制御系16のスイッチの不良、制御系16の断線等が発生したと推定することができる。
【0024】
(5)次に、断路器1を構成する機械的部品について、部品の摩擦係数を模擬することにより、断路器1の異常状態を模擬できる。図8に示すように(なお図8(a)は断路器1の投入操作時であり、図8(b)は断路器1の開放操作時である。)、電動機11の動力により回転する回転軸21がボールベアリング21aで支えられ、回転軸21の回転により、碍子31(スラストボールベアリング31aで支えられている。)および碍子32(スラストボールベアリング32aで支えられている。)が回転して、開閉動作を行っている。図8では、ボールベアリング21aおよびスラストボールベアリング31a、32aの摩擦係数が767倍に増加した場合を模擬したものを示している。模擬の結果は、電流値が増加し、断路器1の動作開始から終了までの時間が長くなっている。なお、この場合は、ボールベアリング21aおよびスラストボールベアリング31a、32aが動作不良となる直前まで固渋した場合である。
これにより、回転軸21、碍子31および碍子32の回転により、開閉動作を行う場合に、前記第2の電流波形にて電流値が増加し、前記第2の電流波形で表された断路器1の動作開始から終了までの時間が長くなるときは、前記ボールベアリング21aおよび各スラストボールベアリング31a、32aのいずれかが発錆または塵埃の混入等により回転しにくくなったと推定することができる。
【0025】
(6)さらに、図9に示すように、図9(a)は断路器1の投入操作時、図9(b)は断路器1の開放操作時について、2つの接触子36、37相互の摺動摩擦の増加を模擬したものである。なお、図9は接触子36、37間の摩擦係数が10倍に増加し、投入操作不能となる直前になった場合を示している。断路器1の接点35を構成する2つの接触子36、37が互いに摺動しながら接点35を開閉するので、模擬の結果は、断路器1の接点35の投入時(閉じる時)において、電流値が増加している。
これにより、断路器1の接点35を構成する2つの接触子36、37が互いに摺動しながら接点35を開閉する場合に、接点35の投入時において、前記第2の電流波形の電流値が増加したときは、前記2つの接触子36、37相互の摺動摩擦の増加の原因となる各接触子36、37の表面の摩耗等が発生したと推定することができる。
【0026】
(7)さらに、図10に示すように、図10(a)は断路器1の投入操作時、図10(b)は断路器1の開放操作時について、リンク機構22の連結ピン25の固渋を模擬したものである。なお、図10は、連結ピン25のカジリが動作不能となる直前まで進展し、連結ピン25の摩擦係数が120倍に増加した場合を示している。電動機11によりリンク機構22を介して断路器1の開閉動作をさせるので、模擬の結果は、断路器1の接点35の投入時およびその前において電流値が増加している。
これにより、前記第2の電流波形において断路器1の接点35の投入時およびその前における電流値が増加したときは、リンク機構22の連結ピン25の固渋の原因となる連結ピン25のカジリの発生、塵埃の混入等が発生したと推定することができる。
【0027】
(8)このように、断路器1の上記摩擦係数を変化させた任意の部品の異常を模擬し、異常発生時の開閉動作の電動機11の電流波形のシミュレーションをすることができる。これにより、断路器1の各部位毎の摩擦係数およびリンク機構22の応答倍率等から、電動機11の負荷トルク・電流特性に基づき、断路器1の異常な開閉動作時の電動機11の電流波形のシミュレーションをすることができる。なお、上記応答倍率に反比例して電動機11の負荷トルクが変化する。
さらに、断路器1の動作停止に至る各部品の最大摩擦係数と正常時の摩擦係数の比を算出し、動作上の最弱点部の特定を可能とすることができる。
【0028】
なお、上記実施の形態において、開閉機器として断路器1が示されているが、これに限定されず断路器1以外の開閉機器でもよい。
また、断路器1の電動機11は、直流分巻電動機であるが、これに限定されず、これと同様の特性を有する電動機であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態に係る開閉機器の異常診断方法の診断対象となる断路器を示す斜視図である。
【図2】図1の断路器のリンク機構を示す部分図である。
【図3】図1の断路器の電動操作装置の内部を示す説明図である。
【図4】図1の断路器の接点を示す部分図である。
【図5】図1の断路器の異常診断方法の具体例を示す第1グラフである。
【図6】図1の断路器の異常診断方法の具体例を示す第2グラフである。
【図7】図1の断路器の異常診断方法の具体例を示す第3グラフである。
【図8】図1の断路器の異常診断方法の具体例を示す第4グラフである。
【図9】図1の断路器の異常診断方法の具体例を示す第5グラフである。
【図10】図1の断路器の異常診断方法の具体例を示す第6グラフである。
【符号の説明】
【0030】
1 断路器
11 電動機(開閉機器)
11a 界磁巻線
12 電流供給手段
16 制御系
21 回転軸
21a ボールベアリング
22 リンク機構
25 連結ピン
31a、32a スラストボールベアリング
35 接点
36、37 接触子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機を動力源として開閉動作させる断路器等の開閉機器の異常診断方法であって、
前記開閉機器が正常に動作しているときの前記動力源となる電動機の動作時の入力電流の時間的変化を第1の電流波形として予め測定して記録し、
前記開閉機器の動作の異常の有無を診断するときにおける前記動力源となる電動機の動作時の入力電流の時間的変化を第2の電流波形として測定し、
前記第1の電流波形と前記第2の電流波形を比較することにより前記開閉機器の異常の有無を診断することを特徴とする開閉機器の異常診断方法。
【請求項2】
請求項1記載の開閉機器の異常診断方法であって、
前記第2の電流波形が前記第1の電流波形よりも時間的に遅れるときは、前記電動機に電流を供給する電流供給手段の始動不良と診断することを特徴とする開閉機器の異常診断方法。
【請求項3】
請求項1記載の開閉機器の異常診断方法であって、
前記電動機が直流分巻電動機であるとき、前記第2の電流波形が始動時の電流の最大電流の状態で時間が経過するときは、前記界磁巻線に電流が流れていないと診断する開閉機器の異常診断方法。
【請求項4】
請求項1記載の開閉機器の異常診断方法であって、
前記第2の電流波形が電流の流れていない状態を示すときは、前記電動機を始動させる制御系の異常が発生したと診断する開閉機器の異常診断方法。
【請求項5】
電動機を動力源として開閉動作させる断路器等の開閉機器の異常診断方法であって、
前記開閉機器の動作の異常を模擬したときの前記動力源となる電動機の動作時の入力電流の時間的変化を第1の電流波形として予め記録し、
前記開閉機器の動作の異常の有無を診断するときにおける前記動力源となる電動機の動作時の入力電流の時間的変化を第2の電流波形として測定し、
前記第1の電流波形と前記第2の電流波形とを比較することにより前記開閉機器の異常の有無を診断することを特徴とする開閉機器の異常診断方法。
【請求項6】
請求項5記載の開閉機器の異常診断方法であって、
前記開閉機器の異常状態の模擬は、前記開閉機器の開閉動作に関係するボールベアリング等の部品の摩擦係数と応答倍率に基づき、前記動力源となる電動機の負荷トルク・電流特性から前記電流波形のシミュレーションをするものであって、前記摩擦係数を変化させることにより前記異常状態を模擬するものであることを特徴とする開閉機器の異常診断方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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