説明

間接活線用照明装置の取付け具

【課題】照明灯が確実に保持される間接活線用照明装置の取付け具を提供する。
【解決手段】取付け具10は、ホットスティック9の先端部に設けた工具を照明できる。取付け具10は、C形クリップ1とバンド部材2を備える。C形クリップ1は、円柱状の照明灯3を外周方向から挿入可能な開口11を有し、照明灯3を弾性的に保持できる。バンド部材2は、ホットスティック9を構成する少なくとも操作棒91を把持できる。C形クリップ1は、外周方向に突出する短い第1アーム1aを有し、バンド部材2は、外周方向に突出する短い第2アーム2aを有する。第1アーム1aは、球状部1bを先端部に有し、第2アーム2aは、球状部1bを揺動自在に保持する保持室2bを有する。C形クリップ1をバンド部材2に近づけた状態では、開口11をバンド部材2により遮られる位置に配置できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間接活線用照明装置の取付け具に関する。特に、間接活線工法による夜間の配電工事に好適な間接活線用照明装置の取付け具の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
架空配電線を無停電で配電工事を行う活線作業には、直接活線工法と間接活線工法の二通りがある。直接活線工法は、高圧ゴム手袋などの保護具を着用した作業者が、通電中の架空配電線に直接触れて配電工事を行う。一方、間接活線工法は、ホットスティック(絶縁操作棒)などを用いて、作業者が通電中の架空配電線に直接触れることなく配電工事を行うことができる。近年では、作業環境の改善・本質安全化の観点から、直接活線工法から間接活線工法へと転換が進行している。
【0003】
ホットスティックは、先端部に配電工事を行う工具を備えており、この工具を手許の操作部で遠隔操作できる。配電工事を行う作業者は、ホットスティックを用いて、架空配電線を切断、又は接続する作業ができる。
【0004】
例えば、停電事故の復旧工事などにおいて、上述した間接活線工法による配電工事が夜間に行われることがある。そして、この夜間工事では、地上からの照明やキャップライト又は照明具を電柱に固定するなどして、作業を実施している。
【0005】
しかし、前述した照明では、作業者又は工具が影となって、作業箇所を見え難くしている。特に、ホットスティックを用いる場合は、工具の詳細が不明瞭であり、細かい配電工事を困難としているという不具合がある。
【0006】
このような不具合に対して、既存のホットスティックに着脱自在であり、夜間工事時の視界を改善することを実現した間接活線用照明装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
特許文献1による間接活線用照明装置は、光を出射するライト、ホットスティックの一部に着脱自在に固定するクリップ、及びライトを一端部に固定し、クリップを他端部に固定したフレキシブルシャフトを備え、ライトが工具に近接するように、クリップをホットスティックの上部に固定することが好ましいとしている。
【0008】
又、ホットスティックを構成するパイプ部材などに取り付け可能な作業用照明装置の取付け具としては、照明灯をねじ止めした連結棒と、パイプ部材を把持するクリップ部材と、照明灯が首振り自在になるように、連結棒とクリップ部材とを連結するジョイントと、を備えた作業用照明装置の取付け具が開示されている(例えば、特許文献2の実施例4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2011−76756号公報
【特許文献1】特開2007−134175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1による間接活線用照明装置は、クリップからライトまでの距離が長く、移動中にフレキシブルシャフトが変形して、ライトの光軸がずれ易いという心配がある。ライトが確実に保持される間接活線用照明装置が求められている。
【0011】
又、特許文献2による作業用照明装置の取付け具は、少なくともパイプ部材が延びる方向を照明することが困難である。ホットスティックを構成するパイプ部材が延びる方向を照明する間接活線用照明装置の取付け具が求められている。そして、以上のことが本発明の課題といってよい。
【0012】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、ホットスティックを構成するパイプ部材が延びる方向にある工具を照明する間接活線用照明装置において、照明灯が確実に保持される取付け具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、ホットスティックの先端部に設けた工具を照明する間接活線用照明装置の取付け具であって、ホットスティックを構成する少なくとも操作棒を把持するバンド部材と、円柱状の照明灯を外周方向から挿入可能な開口を有するクリップと、を備え、このクリップとバンド部材は、互いに短いアームを突出して、これらのアームをその軸方向の交差角度が変化可能な自在継手で連結するように間接活線用照明装置の取付け具を構成することにより、この課題が解決できると考え、これに基づいて、以下のような新たな間接活線用照明装置の取付け具を発明するに至った。
【0014】
(1)本発明による間接活線用照明装置の取付け具は、ホットスティックの先端部に設けた工具を照明する間接活線用照明装置の取付け具であって、円柱状の照明灯を外周方向から挿入可能な開口を有し、前記照明灯を弾性的に保持するC形クリップと、前記ホットスティックを構成する少なくとも操作棒を把持するバンド部材と、を備え、前記C形クリップは、外周方向に突出する短い第1アームを有し、前記バンド部材は、外周方向に突出する短い第2アームを有し、前記第1アーム及び前記第2アームは、一方が球状部を先端部に有し、他方が前記球状部を揺動自在に保持する保持室を有し、前記C形クリップを前記バンド部材に近づけた状態では、前記開口を前記バンド部材により覆われる位置に配置できる。
【0015】
(2)前記保持室は、前記第2アームが延びる方向の端部が開口されて前記球状部が圧入されてもよい。
【0016】
(3)前記C形クリップは、前記第1アーム及び前記球状部を一体成形してもよい。
【0017】
(4)前記C形クリップは、硬質の合成樹脂からなってもよい。
【0018】
(5)前記バンド部材は、前記操作棒の外周を囲う円弧状のバンド部材本体と、このバンド部材本体の両端部が屈曲されて、対向するように外周方向に突出する一対の挟持片と、を有し、前記バンド部材本体が縮径するように、ボルト部材とナットで一対の前記挟持片を締結できることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明による間接活線用照明装置の取付け具は、照明灯を弾性的に保持するC形クリップとホットスティックを把持するバンド部材を備え、C形クリップとバンド部材とが短い第1アーム及び第2アームで揺動自在に連結しているので、ホットスティックを移動しても照明灯の光軸が容易に変化しないという利点がある。
【0020】
又、本発明による間接活線用照明装置の取付け具は、C形クリップが照明灯を外周方向から挿入可能な開口を有し、C形クリップを揺動して、この開口をバンド部材に近づけた状態では、開口がホットスティックに遮られて、照明灯が脱落し難いという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態による間接活線用照明装置の取付け具の構成を示す斜視図である。
【図2】前記実施形態による間接活線用照明装置の取付け具の構成を示す平面図である。
【図3】前記実施形態による間接活線用照明装置の取付け具の構成を示す正面図である。
【図4】前記実施形態による間接活線用照明装置の取付け具の使用状態を示す正面図である。
【図5】前記実施形態による間接活線用照明装置の取付け具を用いたホットスティックの操作例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
[間接活線用照明装置の取付け具の構成]
最初に、本発明の一実施形態による間接活線用照明装置の取付け具の構成を説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態による間接活線用照明装置の取付け具の構成を示す斜視図である。図2は、前記実施形態による間接活線用照明装置の取付け具の構成を示す平面図である。図3は、前記実施形態による間接活線用照明装置の取付け具の構成を示す正面図である。図4は、前記実施形態による間接活線用照明装置の取付け具の使用状態を示す正面図である。
【0024】
(全体構成)
図1から図4を参照すると、本発明の一実施形態による間接活線用照明装置の取付け具(以下、取付け具と略称する)10は、C形クリップ1とバンド部材2を備えている。C形クリップ1は、円柱状の照明灯3を外周方向から挿入可能な開口11を有し、照明灯3を弾性的に保持できる。一方、バンド部材2は、ホットスティック9を構成する少なくとも操作棒91を把持できる(図4参照)。
【0025】
図1から図3を参照すると、C形クリップ1は、外周方向に突出する短い第1アーム1aを有している。同様に、バンド部材2は、外周方向に突出する短い第2アーム2aを有している。そして、第1アーム1aは、球状部1bを先端部に有している。一方、第2アーム2aは、球状部1bを揺動自在に保持する保持室2bを有している。
【0026】
なお、取付け具10は、第2アーム2aの先端部に球状部1bを設け、第1アーム1aに球状部1bを揺動自在に保持する保持室2bを設ける構成としてもよい。又、保持室2bは、球状部1bを揺動自在に保持するとは、第1アーム1a及び第2アーム2aがそれらの軸方向の交差角度が変化可能な自在継手で連結されていることを意味しており、第1アーム1a及び第2アーム2aを任意の交差角度で停止状態を維持できる。
【0027】
図1から図3を参照すると、保持室2bは、第2アーム2aが延びる方向の端部が開口されており、球状部1bを圧入することができる。C形クリップ1は、例えば、硬質の合成樹脂からなり、第1アーム1a及び球状部1bを一体成形している。
【0028】
図1から図3を参照すると、照明灯3は、外周の直径が3cm程度の市販のLEDライトを用いることができる。照明灯3は、内部に電池を有し、前方を照明できるように、多灯のLEDを備えている。必要に応じて、LEDの搭載数が異なる照明灯3に交換することが好ましい。
【0029】
図1から図3を参照すると、バンド部材2は、円弧状のバンド部材本体21と一対の挟持片21a・21bを有している。バンド部材本体21は、ホットスティック9の操作棒91を囲うことができる(図4参照)。一対の挟持片21a・21bは、バンド部材本体21の両端部が屈曲されて、対向するように外周方向に突出している。
【0030】
図1から図3を参照すると、挟持片21aには、ボスを隆起させており、このボスにナット2nを埋め込んである。一方、挟持片21bにも、ボスを隆起させており、このボスに開口された穴に六角穴付きボルト2sを挿入して、ナット2nに螺合できる。そして、バンド部材本体21が縮径するように、六角穴付きボルト2sとナット2nで一対の挟持片21a・21bを締結できる。
【0031】
(ホットスティックの構成)
次に、実施形態による取付け具10が適用される、一例のホットスティックの構成を説明する。
【0032】
図4を参照すると、ホットスティック9は、長尺の操作棒91と把持工具92で構成している。又、ホットスティック9は、作動棒93を備えている。把持工具92は、操作棒91の先端部に着脱自在に取り付けられている。
【0033】
図4を参照すると、把持工具92は、開閉する一対の湾曲した把持片9a・9bで構成している。そして、一方の把持片9aは、基端部が固定された固定片であり、他方の把持片9bは、一方の把持片9aの基端部に設けた回動軸9cを中心に回動する可動片となっている。
【0034】
図4を参照すると、作動棒93は、操作棒91に沿って保持されている。作動棒93の先端部は、他方の把持片9bに回動可能に連結している。そして、作動棒93の基端部に設けた操作レバー94を操作すると、一方の把持片9aに対して、他方の把持片9bを開閉できる。ホットスティック9は、操作棒91及び作動棒93の中間部が絶縁性を有するプラスチックパイプなどで連結され、間接活線工法に好適なように、絶縁性が確保されている。
【0035】
図4に示されたホットスティック9は、高所に配置された架空配電線9w(図5参照)を一対の把持片9a・9bで把持できる、いわゆる「ヤットコ」になっている。又、一対の把持片9a・9bにカッター(切断工具)を取り付けて、架空配電線9wを切断することもでき、一対の把持片9a・9bにストリッパー(被膜剥離工具)を取り付けて、架空配電線9wの被覆を剥離することもできる。
【0036】
図4を参照すると、取付け具10は、バンド部材2が操作棒91を把持しており、C形クリップ1に保持された照明灯3が把持工具92を照明している。図4に示された実施形態では、可動しない操作棒91に取付け具10を固定した好適な例を示したが、可動する作動棒93に取付け具10を固定することを排除しない。
【0037】
[間接活線用照明装置の取付け具の作用]
次に、実施形態による取付け具10を用いたホットスティックの操作例を説明しながら、取付け具10の作用及び効果を説明する。図5は、前記実施形態による間接活線用照明装置の取付け具を用いたホットスティックの操作例を示す斜視図である。
【0038】
図5を参照すると、作業員Mは、図示しない高所作業車に装備されたバケットBに搭乗している。図5に示された状態では、取付け具10を取り付けたホットスティック9と共、バケットBを架空配電線9wの下の所定位置に移動させてある。
【0039】
図5を参照して、作業員Mは、照明灯3及びキャップライトCLを点灯させ、照明灯3の照明方向を調整した後、ホットスティック9を操作して、夜間の間接活線作業を実施する。この場合、キャップライトCLによる照明方向とは異なる方向から、照明灯3が把持工具92を照明するように、照明灯3の照明位置及び照明方向を予め調整しておくことが好ましく、相乗効果により、作業に支障にある影を把持工具92の近傍に作ることを低減できる。
【0040】
図1から図5を参照すると、実施形態による取付け具10は、照明灯3を弾性的に保持するC形クリップ1とホットスティック9を把持するバンド部材2を備え、C形クリップ1とバンド部材2とが短い第1アーム1a及び第2アーム2aで揺動自在に連結しているので、ホットスティック9を移動しても照明灯3の光軸が容易に変化しないという利点がある。
【0041】
又、図1から図5を参照すると、実施形態による取付け具10は、C形クリップ1が照明灯3を外周方向から挿入可能な開口11を有し、C形クリップ1を揺動して、開口11がバンド部材2により遮られる位置に配置できるので(図2の実線部分のC形クリップ1を参照)、照明灯3が脱落し難いという利点がある。
【0042】
本発明による間接活線用照明装置の取付け具は、以下の効果が期待できる。
(1)夜間作業における視界が改善される。
(2)市販の照明灯(いわゆる懐中電灯)を使用できる。
(3)作業対象物を確実に照明できる。
(4)作業中に照明灯が脱落することを抑制できる。
(5)夜間作業を効率化及び迅速化できる。
【0043】
本発明による間接活線用照明装置の取付け具は、C形クリップ1を硬質の合成樹脂で構成し、第1アーム1a及び球状部1bを一体成形した実施形態を開示したが、同様に、バンド部材2を硬質の合成樹脂で一体成形してもよい。C形クリップ1及びバンド部材2は、金属体で一体成形してもよく、C形クリップ1は、本体を硬質の合成樹脂で構成し、第1アーム1a及び球状部1bを金属体で構成し、本体に結合する変形例も考えることができる。
【符号の説明】
【0044】
1 C形クリップ
1a 第1アーム
1b 球状部
2 バンド部材
2a 第2アーム
2b 保持室
3 照明灯
9 ホットスティック
10 取付け具(間接活線用照明装置の取付け具)
11 開口
91 操作棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホットスティックの先端部に設けた工具を照明する間接活線用照明装置の取付け具であって、
円柱状の照明灯を外周方向から挿入可能な開口を有し、前記照明灯を弾性的に保持するC形クリップと、
前記ホットスティックを構成する少なくとも操作棒を把持するバンド部材と、を備え、
前記C形クリップは、外周方向に突出する短い第1アームを有し、
前記バンド部材は、外周方向に突出する短い第2アームを有し、
前記第1アーム及び前記第2アームは、一方が球状部を先端部に有し、他方が前記球状部を揺動自在に保持する保持室を有し、
前記C形クリップを前記バンド部材に近づけた状態では、前記開口を前記バンド部材により遮られる位置に配置できる間接活線用照明装置の取付け具。
【請求項2】
前記保持室は、前記第2アームが延びる方向の端部が開口されて前記球状部が圧入される請求項1記載の間接活線用照明装置の取付け具。
【請求項3】
前記C形クリップは、前記第1アーム及び前記球状部を一体成形している請求項1又は2記載の間接活線用照明装置の取付け具。
【請求項4】
前記C形クリップは、硬質の合成樹脂からなる請求項3記載の間接活線用照明装置の取付け具。
【請求項5】
前記バンド部材は、
前記操作棒の外周を囲う円弧状のバンド部材本体と、
このバンド部材本体の両端部が屈曲されて、対向するように外周方向に突出する一対の挟持片と、を有し、
前記バンド部材本体が縮径するように、ボルト部材とナットで一対の前記挟持片を締結できる請求項1から4のいずれかに記載の間接活線用照明装置の取付け具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−51792(P2013−51792A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187870(P2011−187870)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】